(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130899
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】トナー及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G03G9/097 371
G03G9/097 375
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040850
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】是松 和哉
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA09
2H500AA11
2H500CA17
2H500CA34
2H500CB04
2H500CB12
2H500EA42D
2H500EA43D
2H500EA45D
2H500EA52A
2H500EA53A
2H500EA55D
2H500FA02
(57)【要約】
【課題】微粉を多く含んだ小粒子径のトナー粒子を使用した場合であっても、カブリ及び現像メモリの発生を抑制できるトナーを提供する。
【解決手段】トナー粒子の表面に外添剤が付着したトナーであって、外添剤は、第1及び第2のシリカ基材をそれぞれ含む第1及び第2のシリカ粒子と、金属粒子とを含有する。第1及び第2のシリカ基材は、比表面積が180m
2/g以上320m
2/g以下である。第1のシリカ粒子は、炭素含有量が4質量%以上8.5質量%以下のジメチルポリシロキサンで、第1のシリカ基材が表面処理されたものである。第2のシリカ粒子は、ジメチルジクロロシラン又はヘキサメチルジシラザンで、第2のシリカ基材が表面処理されたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子の表面に外添剤が付着したトナーであって、
前記外添剤は、第1及び第2のシリカ基材をそれぞれ含む第1及び第2のシリカ粒子と、金属粒子とを含有し、
前記第1及び第2のシリカ基材は、比表面積が180m2/g以上320m2/g以下であり、
前記第1のシリカ粒子は、炭素含有量が4質量%以上8.5質量%以下のジメチルポリシロキサンで、前記第1のシリカ基材が表面処理されたものであり、
前記第2のシリカ粒子は、ジメチルジクロロシラン又はヘキサメチルジシラザンで、前記第2のシリカ基材が表面処理されたものであることを特徴とするトナー。
【請求項2】
請求項1に記載のトナーであって、
前記トナー粒子は、平均一次粒子径が4.5μm以上6.5μm以下であり、粒子径2μm未満の粒子の個数割合が5%以上18%以下であることを特徴とするトナー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のトナーであって、
前記第1のシリカ粒子の比表面積は、前記第1のシリカ基材の比表面積の35%以上55%以下であることを特徴とするトナー。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のトナーであって、
前記第2のシリカ粒子の比表面積は、前記第2のシリカ基材の比表面積の60%以上90%以下であることを特徴とするトナー。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のトナーであって、
前記第1のシリカ粒子の含有量は、前記トナー粒子100質量部に対して0.2質量部以上0.5質量部以下であることを特徴とするトナー。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のトナーであって、
前記第2のシリカ粒子の含有量は、前記トナー粒子100質量部に対して0.65質量部以上0.9質量部以下であることを特徴とするトナー。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載のトナーであって、
前記金属粒子として、チタン酸ストロンチウムにシリカを添加したコアの表面をシラン化物で疎水化した微粉体を含み、
前記微粉体中のチタン原子に対するケイ素原子のモル比は、0.03以上1.0以下であることを特徴とするトナー。
【請求項8】
請求項7に記載のトナーであって、
前記微粉体の含有量は、トナー粒子100質量部に対して0.2質量部以上0.6質量部以下であることを特徴とするトナー。
【請求項9】
感光体の表面に供給するトナーとして、請求項1又は請求項2に記載のトナーを用いる画像形成装置であって、
前記感光体を帯電させる帯電器が、帯電ローラ方式であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トナー及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ケミカルトナーの小粒子径化が進み、粉砕トナーにおいてもその流れを追う形となっている。しかし、粉砕トナーの場合、着色剤、離型剤等の内添剤を混練した樹脂を微粉砕したうえで分級して製造するという製造方法に起因して、トナー粒子を小粒子径化すると分級精度が追いつかず、製造したトナー粒子には微粉が多く含まれることとなる。
【0003】
このトナー粒子の微粉(以下、トナー微粉ともいう)は、クーロン力が小さいため静電気力の影響は少なく、ファンデルワールス力が支配的となり、電場における静電気力による移動性よりもキャリアや現像ローラに対する付着性が高くなる。キャリアへの付着はカブリが発生する原因となり、現像ローラへの付着は現像メモリが発生する原因となる。
【0004】
このファンデルワールス力によるトナーの付着性を抑制するために、
図2に示すように、基材の粒子径が100nm以上と大きいシリカ(以下、大粒子径シリカという)をトナー粒子に外添剤として添加する方法が従来採用されている。しかしながら、大粒子径シリカはトナー粒子の微粉に対する付着が困難であり、また、付着したとしても
図3に示すようにトナー粒子表面から離脱しやすいため、微粉の多いトナー粒子に対してこの方法を採用してもカブリ及び現像メモリが発生するという問題がある。
【0005】
特許文献1には、ヘキサメチルジシラザンで表面処理されたシリカ、何ら表面処理されていないゾル-ゲルシリカ、及びポリジメチルシロキサンで表面処理されたシリカを外添剤として含むトナーが開示されているが、微粉を多く含んだ小粒子径のトナー粒子を使用した場合における上記の問題に関しては何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示のトナー及び画像形成装置は斯かる事情に鑑みて見出されたものであり、微粉を多く含んだ小粒子径のトナー粒子を使用した場合であっても、カブリ及び現像メモリの発生を抑制できるトナー及び画像形成装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本開示のトナーは、トナー粒子の表面に外添剤が付着したトナーであって、前記外添剤は第1及び第2のシリカ基材をそれぞれ含む第1及び第2のシリカ粒子と金属粒子とを含有し、前記第1及び第2のシリカ基材は比表面積が180m2/g以上320m2/g以下であり、前記第1のシリカ粒子は炭素含有量が4質量%以上8.5質量%以下のジメチルポリシロキサンで前記第1のシリカ基材が表面処理されたものであり、前記第2のシリカ粒子はジメチルジクロロシラン又はヘキサメチルジシラザンで前記第2のシリカ基材が表面処理されたものであることを特徴とする。
【0009】
上記のトナーにあっては、前記トナー粒子は、平均一次粒子径が4.5μm以上6.5μm以下であり、粒子径2μm未満の粒子の個数割合が5%以上18%以下であることが好ましい。
【0010】
上記のトナーにあっては、前記第1のシリカ粒子の比表面積は、前記第1のシリカ基材の比表面積の35%以上55%以下であることが好ましい。
【0011】
上記のトナーにあっては、前記第2のシリカ粒子の比表面積は、前記第2のシリカ基材の比表面積の60%以上90%以下であることが好ましい。
【0012】
上記のトナーにあっては、前記第1のシリカ粒子の含有量は、前記トナー粒子100質量部に対して0.2質量部以上0.5質量部以下であることが好ましい。
【0013】
上記のトナーにあっては、前記第2のシリカ粒子の含有量は、前記トナー粒子100質量部に対して0.65質量部以上0.9質量部以下であることが好ましい。
【0014】
上記のトナーにあっては、前記金属粒子として、チタン酸ストロンチウムにシリカを添加したコアの表面をシラン化物で疎水化した微粉体を含み、前記微粉体中のチタン原子に対するケイ素原子のモル比は0.03以上1.0以下であることが好ましい。
【0015】
上記のトナーにあっては、前記微粉体の含有量は、トナー粒子100質量部に対して0.2質量部以上0.6質量部以下であることが好ましい。
【0016】
上記課題を解決するためになされた本開示の画像形成装置は、感光体の表面に供給するトナーとして上記のトナーを用いる画像形成装置であって、前記感光体を帯電させる帯電器が、帯電ローラ方式であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本開示のトナー及び画像形成装置によれば、微粉を多く含んだ小粒子径のトナー粒子を使用した場合であっても、カブリ及び現像メモリの発生を抑制できる等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の一実施形態に係るトナーを示す模式図である。
【
図2】大粒子径シリカを添加した従来のトナーを例示する模式図である。
【
図3】大粒子径シリカが離脱する様子を説明する模式図である。
【
図4】第1のシリカ粒子を模式的に例示する断面図である。
【
図5】第1のシリカ粒子として不適な例を模式的に示す断面図である。
【
図6】第1のシリカ粒子として不適な例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示のトナーについて詳述する。
【0020】
1.トナー粒子(トナーコア)
本実施形態に係るトナー粒子は、着色剤等の内添剤と結着樹脂とで構成されており、内添剤は結着樹脂中に分散している。トナー粒子の表面には外添剤が付着している。さらに必要に応じて、本開示に係る効果を損なわない範囲において、任意成分を含有していてもよい。
【0021】
トナー粒子の平均一次粒子径は、例えば、4.5μm以上8μm以下が挙げられるが、上述したように、本開示のトナーは小粒子径のトナー粒子を用いた場合の課題を解決するのに好適であることから、4.5μm以上6.5μm以下であることが好ましい。
【0022】
トナー粒子の粒度分布は、粒子径2μm未満の粒子の個数割合が3%以上20%以下であることが好ましく、5%以上18%以下であることがより好ましい。このように微粉を多く含むトナー粒子を用いた場合にあっても、本開示のトナーはカブリ及び現像メモリの発生を抑制することができる。
【0023】
トナー粒子の製造方法は特に限定されないが、例えば、粉砕法によって製造することができる。粉砕法によるトナー粒子の製造は、例えば、着色剤等の内添剤と結着樹脂とを含む原料を混合機で乾式混合する混合工程と、得られた混合物を混練機によって溶融混練する溶融混練工程と、得られた溶融混練物を冷却固化した固化物を粉砕機で粉砕して微粉砕物を得る粉砕工程と、得られた微粉砕物を必要に応じて分級機等で粒度調整する分級工程とを行うことで実施できる。
【0024】
<結着樹脂>
本実施形態に係るトナー粒子に含まれる結着樹脂としては特に限定されず、電子写真分野で用いられる樹脂を用いることができ、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂のようなポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、ポリスチレン系樹脂及びポリエステル系樹脂が好適であり、ポリエステル系樹脂が特に好適である。
【0025】
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン-アクリル系樹脂(スチレンアクリル共重合樹脂)が好ましく、樹脂原料として使用できるスチレンモノマーとしては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン等のスチレン誘導体が挙げられる。アクリルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2-クロルエチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエステル等のアクリル酸誘導体及びメタクリル酸誘導体が挙げられる。
【0026】
さらに、樹脂原料として、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノフェニルエステル、マレイン酸モノアリルエステル、ジビニルベンゼン等のビニルモノマーを使用してもよい。
【0027】
結着樹脂に用いられるポリエステル系樹脂は、通常、2価のアルコール成分及び3価以上の多価アルコール成分から選ばれる1種以上と、2価のカルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸から選ばれる1種以上とを、公知の方法により、エステル化反応又はエステル交換反応を介して重縮合反応させることにより得られる。
【0028】
縮重合反応における条件は、モノマー成分の反応性により適宜設定すればよく、また重合体が好適な物性になった時点で反応を終了させればよい。例えば、反応温度は170℃~250℃程度、反応圧力は5mmHg~常圧程度である。
【0029】
2価のアルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA;ビスフェノールAのプロピレン付加物;ビスフェノールAのエチレン付加物;水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0030】
3価以上の多価アルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、スクロース(蔗糖)、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0031】
本実施形態に係るトナーにおいては、上記の2価のアルコール成分及び3価以上の多価アルコール成分のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
2価のカルボン酸として、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0033】
3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0034】
本実施形態に係るトナーにおいては、上記の2価のカルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
ポリエステル系樹脂の重量平均分子量は、3,000以上50,000以下であることが好ましい。重量平均分子量が上記下限未満では、定着可能領域(非オフセット域)の高温側における剥離性が悪くなることがある。一方、重量平均分子量が上記上限を超えると、低温定着性が悪くなることがある。
【0036】
また、ポリエステル系樹脂は、5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下の酸価を有するのが好ましい。酸価が上記下限未満では、ポリエステル系樹脂の帯電特性が低下し、また帯電制御剤がポリエステル系樹脂中に分散しにくくなるため、帯電立ち上がり性や連続使用時の帯電安定性に悪影響を及ぼすことがある。一方、酸価が上記上限を超えると、吸湿性が高くなり帯電性が不安定になることがある。
【0037】
<内添剤>
-ワックス-
本実施形態に係るトナー粒子は、離型剤としてワックスを含んでいてもよい。ワックスとしては、電子写真分野で用いられるワックスを使用でき、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナウバワックス、合成エステルワックス等が挙げられる。これらのワックスは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。トナー粒子中のワックスの含有量は特に限定されないが、0.5質量%~10質量%であるのが好ましい。
【0038】
-着色剤-
本実施形態に係るトナー粒子は、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、電子写真分野で用いられる有機系顔料、有機系染料、無機系顔料、無機系染料等を使用できる。
【0039】
黒色の着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライト、マグネタイト等が挙げられる。
【0040】
イエローの着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
【0041】
マゼンタの着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0042】
シアンの着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60等が挙げられる。
【0043】
着色剤の含有量は特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対して5質量部以上15質量部以下であるのが好ましい。なお、着色剤は、結着樹脂中に均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。
【0044】
-帯電調整剤-
本実施形態に係るトナー粒子は、帯電調整剤を含んでいてもよい。帯電調整剤は、トナーに好ましい帯電性を付与するために添加される。帯電制御剤としては、特に限定されず、電子写真分野で用いられる正電荷制御用及び負電荷制御用の帯電制御剤を使用できる。
【0045】
正電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、四級アンモニウム塩、ピリミジン化合物、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩等が挙げられる。
【0046】
負電荷制御用の電荷制御剤としては、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、サリチル酸及びその誘導体の金属錯体や金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウム等)、有機ベントナイト化合物、ホウ素化合物等が挙げられる。
【0047】
2.外添剤
本実施形態に係るトナーは、外添剤として、シリカ基材を異なる表面処理剤で表面処理した第1及び第2のシリカ粒子と、金属粒子と含む。これにより、微粉を多く含んだ小粒子径のトナー粒子を使用した場合であっても、カブリ及び現像メモリの発生を抑制できる。なお、本明細書において、シリカ基材とは表面処理がされていないシリカのことを示す。また、第1及び第2のシリカ粒子中のシリカ基材を、それぞれ第1及び第2のシリカ基材と呼ぶ。
【0048】
<シリカ基材>
第1及び第2のシリカ基材は、比表面積が180m2/g以上320m2/g以下であることが好ましく、180m2/g以上300m2/g以下であることがより好ましく、180m2/g以上250m2/g以下であることがさらに好ましい。シリカ基材の比表面積が上記下限未満の場合、このシリカ基材を表面処理した第1及び第2のシリカ粒子のトナー微粉に対する付着性が低くなるおそれがある。シリカ基材の比表面積が上記上限を超える場合、シリカ基材が小さすぎることに起因して、その表面処理及びトナー粒子への付着(外添)が難しくなるおそれがある。また、基材としての凝集力が強くなりすぎるおそれがある。
【0049】
第1及び第2のシリカ基材は、乾式法(気相法)、湿式法、ゾルゲル法等の公知の方法により製造することができ、溶媒を用いない点で、気相法が好ましい。気相法は、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化によりシリカ基材を生成する方法であり、例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素炎中における熱分解酸化反応(基礎反応:SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl)により、乾式法(気相法)シリカ又はヒュームドシリカと称されるシリカ基材を製造できる。
【0050】
<第1のシリカ粒子>
第1のシリカ粒子は、第1のシリカ基材を、炭素含有量が4質量%以上8.5質量%以下のジメチルポリシロキサン(PDMS)で表面処理したものである。この炭素含有量は、4.5質量%以上7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上6質量%以下であることがさらに好ましい。上記の比表面積を有する第1のシリカ基材を粘度の高いPDMSにて表面処理することにより、第1のシリカ粒子を
図1,4に例示するような適度な凝集体とすることができる。この凝集体は現像によりトナーに加わる機械的ストレスを緩和することができ、またトナー粒子に対して複数点で接触するためトナー粒子表面から離脱しにくい。そのため、第1のシリカ粒子を外添剤として用いることで、トナー粒子の微粉に対する付着性を高めつつ、トナー粒子表面への外添剤の埋没を抑制できる。
【0051】
PDMSの炭素含有量が上記下限未満の場合、凝集体が形成されにくくなり、トナー粒子表面への外添剤の埋没を抑制できず、カブリが発生しやすくなるおそれがある。炭素含有量が上記上限を超える場合、凝集体が大きくなりすぎるため、トナー粒子表面からの離脱が発生し、カブリが発生しやすくなるおそれがある。
【0052】
第1のシリカ粒子の比表面積は、第1のシリカ基材の比表面積の35%以上55%以下であることが好ましく、40%以上55%以下であることがより好ましく、45%以上53%以下であることがさらに好ましい。比表面積の比率が上記下限未満の場合、
図5に例示するように第1のシリカ粒子が球状に近い状態となり、従来の大粒子径シリカと効果に差がなくなるおそれがある。また、第1のシリカ粒子としての凝集体が大きすぎる状態となり、トナー粒子表面からの離脱が発生し、カブリが発しやすくなるいおそれがある。比表面積の比率が上記上限を超える場合、
図6に例示するようにPDMSによるコーティングが不十分で凝集体が形成されない状態となり、トナー粒子表面への外添剤の埋没を抑制できず、カブリが発生しやすくなるおそれがある。
【0053】
第1のシリカ粒子の含有量は、トナー粒子100質量部に対して0.2質量部以上0.5質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上0.3質量部以下であることがより好ましい。第1のシリカ粒子の含有量が上記下限未満の場合、第1のシリカ粒子としての凝集体が備える立体構造による効果が十分に得られないおそれがある。第1のシリカ粒子の含有量が上記上限を超える場合、トナーの流動性が悪化することにより、適切な摩擦帯電が行われず、カブリ及び現像メモリの抑制効果を発揮できないおそれがある。
【0054】
第1のシリカ粒子は、シリコーンオイルにてシリカ基材をコーティングすることで製造できる。このコーティングの方法は特に限定されないが、例えば、シリコーンオイルを適当な溶媒で希釈してシリカ基材に吹きつけた後に、熱処理を行うことによって製造できる。熱処理を行うときは、安全上、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしてはヘリウム、窒素、アルゴン等が用いられるが、コスト面から窒素ガスが好ましい。熱処理の温度としては、200℃以上400℃以下が好ましく、250℃以上350℃以下が好ましい。熱処理の温度が150℃より低いと、シリコーンオイルのシリカ基材への固定化が十分に行われず、十分な疎水性及びシリコーンオイルの固定化率が得られないおそれがある。熱処理の温度が400℃より高いと、十分なクリーニング特性が得られにくい。
【0055】
希釈する溶媒は、シリコーンオイルが溶解するものであれば特に限定されないが、極性の高い溶媒はシリカ基材が表面処理中に凝集する傾向にあるため、シリカ基材があまり凝集していないものを得たい場合には非極性溶媒を用いることが好ましい。具体的な溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、(ノルマル)ヘキサン、ヘプタン、オクタン、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジイソプロピルエーテル、1,4-ジオキサン等が挙げられる。溶媒による希釈割合も特に限定されないが、粘度の高いシリコーンオイルを使用する場合、シリカ基材をむらなくコーティングするために希釈割合を高くするのが好ましく、具体的な質量割合としては、シリコーンオイル:溶媒で1:0.3~1:5程度が挙げられる。
【0056】
シリコーンオイルにてシリカ基材をコーティングする方法としては、上記の方法以外にも、例えば、シリカ基材を流動層にて懸濁浮遊させながらシリコーンオイルを導入する方法等、様々の方法を用いることができる。
【0057】
<第2のシリカ粒子>
第2のシリカ粒子は、第2のシリカ基材を、ジメチルジクロロシラン(DDS、ジメチルシリル)又はヘキサメチルジシラザン(HMDS、トリメチルシリル)で表面処理したものである。トナー粒子に添加する外添剤が第1のシリカ粒子のみの場合にはトナーの流動性が悪く、適切な摩擦帯電が行われないが、この第2のシリカ粒子を合わせて添加することで、トナーの流動性を確保することができる。なお、トナー粒子に添加する外添剤が第2のシリカ粒子のみの場合には、現像における機械的ストレスによりトナー粒子表面に第2のシリカ粒子が埋没してしまうため、連続印刷におけるカブリの発生を十分に抑制することはできない。
【0058】
本実施形態に係るトナーにあっては、第2のシリカ粒子がDDS及びHMDSのどちらで表面処理されたものであってもよいが、DDSで表面処理されたものであることがより好ましい。第2のシリカ粒子が、帯電量の立ち上がり特性がよいDDSで表面処理されたものであることで、カブリの発生をより一層抑制することができる。
【0059】
第2のシリカ粒子の比表面積は、第2のシリカ基材の比表面積の60%以上90%以下であることが好ましく、70%以上85%以下であることがより好ましく、75%以上85%以下であることがさらに好ましい。比表面積の比率が上記下限未満の場合、トナーの流動性が悪化して、摩擦帯電時に帯電が弱いものが多くなるため、カブリが発生しやすくなるおそれがある。比表面積の比率が上記上限を超える場合、表面処理を十分に施せていないことでシリカ基材が露出して吸湿が進み、トナーが帯電できなくなり、カブリが発生しやすくなるおそれがある。
【0060】
第2のシリカ粒子の含有量は、トナー粒子100質量部に対して0.65質量部以上0.9質量部以下であることが好ましく、0.7質量部以上0.8質量部以下であることがより好ましい。第2のシリカ粒子の含有量が上記下限未満の場合、第2のシリカ粒子がトナー粒子表面を十分に被覆できず流動性が悪化するため、カブリが発生しやすくなるおそれがある。第2のシリカ粒子の含有量が上記上限を超える場合、トナーの流動性が高すぎて十分な摩擦帯電が行われなくなり、カブリ及びトナー飛散が発生しやすくなるおそれがある。あるいは、トナーの帯電量が高くなりすぎて、現像槽に後から補給されたトナーが混ざりにくくなり十分帯電されずに現像されることで、カブリ及びトナー飛散が発生しやすくなるおそれがある。
【0061】
第2のシリカ粒子のうち、DDSで表面処理されたシリカ粒子は、例えば、流動床型反応槽を反応装置として用いて、DDSを加熱してガス化したものを不活性ガスととともにシリカ基材と混合することで製造できる。この反応温度としては、十分な反応率が得られつつ有機基が分解しない温度である450℃以上600℃以下が好ましく、430℃以上550℃以下がより好ましい。この不活性ガスにはコスト面から窒素ガスが好適である。この混合の際、ガス化したDDSはインジェクター等によって流動層内に導入するとよく、そのガス速度は適宜調節可能であるが、5.0cm/sec以上のガス速度で導入することで、シリカ粒子の凝集をほぐすことができる。このシリカ基材とDDSとを混合して得たシリカ粒子をジェットミル等の粉砕機に投入することで、シリカ粒子の凝集をさらにほぐしてもよい。
【0062】
第2のシリカ粒子のうち、HMDSで表面処理されたシリカ粒子は、例えば、循環ガスでシリカ基材を浮遊させた状態で、水を噴霧し混合してシラノール基を活性化させた後、HMDSを噴霧し混合すること(流動層による気流混合)で製造できる。これにより、凝集が少ない状態で表面処理を行うことができる。水の噴霧量はシリカ基材100質量部に対し0.5質量部以上5質量部以下であるのが好ましく、HMDSの噴霧量はシリカ基材100質量部に対し1質量部以上5質量部以下であるのが好ましい。また、両者の噴霧量の質量比は、水:ヘキサメチルジシラザンで1:5~1:1であるのが好ましい。HMDSの噴霧量が上記下限未満の場合、シリカ基材を十分に表面処理することができず、HMDSの噴霧量が上記上限を超える場合、凝集が多く発生するおそれがある。
【0063】
<金属粒子>
本実施形態に係るトナーは、外添剤として金属粒子を含むことで、第1及び第2のシリカ粒子のみでは上昇してしまうトナーの帯電量を、適切な範囲に制御することができる。
【0064】
本実施形態にあっては、金属粒子として、チタン酸ストロンチウムにシリカを添加したコアの表面をシラン化物で疎水化した微粉体を含むことが好ましい。この微粉体のことを、以下において「シリカチタン酸ストロンチウム粒子」ともいう。この微粉体は、チタン酸ストロンチウムの表面にシリカが付着した構造(シリカ修飾された構造)を有する。
【0065】
このシリカチタン酸ストロンチウム粒子におけるチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)は、ペロブスカイト型チタン酸化合物であり、Srの一部がLa、Mg、Ca,Sn及びSiから選択される金属成分で置換されたものであってもよい。
【0066】
シリカチタン酸ストロンチウム粒子の形状は、特に限定されず、球状、針状、非球形状等が挙げられる。また、シリカチタン酸ストロンチウム粒子は、一次粒子のみによる粒子構造であってもよく、複数の一次粒子が凝集した粒子構造であってもよい。
【0067】
シリカチタン酸ストロンチウム粒子において、シリカによるチタン酸ストロンチウムの修飾の程度は、チタン原子に対するケイ素原子のモル比(Si/Ti)で表すことができる。このモル比は、SEM-EDSのX線分析を用いて、炭素ピーク強度を基準としたTiのピーク強度に対するSiのピーク強度の比率から測定することができる。
【0068】
シリカチタン酸ストロンチウム粒子中のチタン原子に対するケイ素原子のモル比は0.03~10.0程度であり、0.03以上1.0以下であることが好ましく、0.4以上0.6以下であることがより好ましい。モル比が上記下限未満の場合、カブリが発生しやすくなるおそれがある。モル比が上記上限を超える場合、負帯電性が強くなり、低湿環境下での帯電上昇によりトナーとキャリアとの付着力が増加し、現像槽に後から補給されたトナーが混ざりにくくなり十分帯電されずに現像されることで、カブリ及びトナー飛散が発生するおそれがある。
【0069】
シリカチタン酸ストロンチウム粒子は、平均一次粒子径が30nm以上100nm以下であることが好ましく、30nm以上70nm以下であることがより好ましく、30nm以上50nm以下であることがより好ましい。平均一次粒子径が上記下限未満の場合、トナー粒子への付着性が高くなり、フィルミングが発生しやすくなることがある。平均一次粒子径が上記上限を超える場合、感光体ドラム表面に研磨による凹状の傷が発生することでクリーニング性が悪化し、延いてはフィルミングが発生しやすくなるおそれがある。
【0070】
シリカチタン酸ストロンチウム粒子は、常温湿式法等の公知の方法により製造することができ、例えば、次の(1)~(5)に示す手順で製造することができる。
(1)硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9.0とし脱硫処理した後、塩酸でpH5.8まで中和し、ろ過水洗を経て洗浄済みケーキを得る。
(2)得られたケーキに水を加えてスラリーとした後、塩酸を加えてpH1.4とし、解膠処理する。得られたメタチタン酸の溶液(溶液1)と、塩化ストロンチウム水溶液(溶液2)と、ケイ酸ナトリウム水溶液(溶液3)とを、(Sr+Si)/Tiのモル比が1.18~2.10の範囲内になる割合で混合する。
(3)得られた混合溶液を窒素ガス雰囲気下で90℃に加熱し、10N水酸化ナトリウム水溶液を添加しながら2時間撹拌し、その後、温度95℃で1時間撹拌して反応させる。
(4)反応を終えた混合溶液(スラリー)を50℃に冷却し、pH5.0になるまで塩酸を加えて1時間撹拌して生じた沈殿物を洗浄、ろ過により固液分離する。
(5)得られた固形物にシラン化物による疎水化処理をし、その後、ろ過により固液分離し、得られた固形物を温度120℃、大気中で10時間乾燥させて、シリカチタン酸ストロンチウム粒子を得る。
【0071】
シラン化物(シランカップリング剤)としては、ジメチルジクロロシラン(DDS、ジメチルシリル)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS、トリメチルシリル)、オクチルシラン(オクチルシリル)、ジメチルポリシロキサン(PDMS)等が挙げられる。
【0072】
シリカチタン酸ストロンチウム粒子の含有量は、トナー粒子100質量部に対して0.2質量部以上0.6質量部以下であることが好ましく、0.4質量部以上0.5質量部以下であることがより好ましい。含有量がこの範囲内であることで、カブリの発生を一層抑制することができる。この含有量が上記下限未満の場合、チャージアップを抑制する効果が不十分となり、現像槽に後から補給されたトナーが混ざりにくくなり十分帯電されずに現像されることで、カブリ及びトナー飛散が発生するおそれがある。この含有量が上記上限を超える場合、チャージをリークする効果が高いことでトナーの弱帯電化が顕著となり、カブリ及びトナー飛散が発生するおそれがある。
【実施例0073】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本開示のトナーを具体的に説明する。まず、各種測定方法及び評価方法について説明する。
【0074】
<測定方法>
-平均一次粒子径の測定-
電解液(ベックマン・コールター株式会社製、商品名:ISOTON-II)50mlに、試料20mgとアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlとを加え、超音波分散器(アズワン株式会社製、卓上型2周波超音波洗浄器、型式:VS-D100)を用いて周波数20kHzで3分間分散処理して測定試料を得た。得られた測定試料を、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、型式:Multisizer3)を用いて、アパーチャ径:100μm、測定粒子数:50000カウントの条件下で測定し、試料粒子の体積粒度分布から平均一次粒子径(μm)を求めた。
【0075】
-粒度分布の測定-
フロー式粒子像分析装置(マルバーン社製、FPIA-3000)を用いて測定したが、測定原理が同じであれば特に限定されない。この装置の測定原理は、分散媒中の粒子をCCDカメラにて静止画像を撮像し、その画像から円形度計算等の計算を行うものである。チャンバーから投入された試料は、フラットシースフローセルに送られてシース液に挟まれて扁平な流れを形成する。セル内を通過する試料にストロボ光を照射しながら静止画像をCCDカメラで撮影する。撮像画像の画像処理により各粒子の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長L等が計測される。これから円相当径が計算される。この実施例では、HPF測定モードにて、トータルカウントで10000個のトナーを計測し、円相当径の値が2μm未満の粒子の個数割合を求めた。
【0076】
-炭素含有量の測定-
微量窒素炭素測定装置(株式会社住化分析センター製、SUMIGRAPH NC-TR22)を用い、燃焼法により測定を実施した。具体的には、表面処理したシリカ粉末(第1のシリカ粒子)0.1gを測定試料として、秤量を完了した標準試料及び測定試料の入ったボートを上記測定装置にセットし、電気炉を約1000℃で燃焼し、炭素含有量を測定した。なお、この測定では、上記測定装置が備える測定データ処理プログラムにて最終結果まで自動計算される。
【0077】
-比表面積の測定-
BET法(好ましくはBET多点法)に従って、動的定圧法による低温ガス吸着法により求めることができる。この実施例では、比表面積測定装置(マウンテック社製、Macsorb model-1280)を用いて、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定することにより、BET比表面積(m2/g)を算出した。具体的には、以下のような手順(1)~(3)に沿って測定した。
【0078】
(1)空のサンプルセルの質量を測定した後、サンプルセルに測定試料を1.0g充填する。
(2)脱ガス装置に、試料が充填されたサンプルセルをセットし、窒素雰囲気下で200℃、20分間の乾燥脱気を行った後、室温まで冷却する。サンプルセル全体の質量を測定し、空サンプルセルとの差から測定試料の正確な質量を算出する。
(3)サンプルセルを液体窒素で冷却しつつ、サンプルセル内に測定ガスを流し、測定ガスのサンプルへの吸着量を測定する。これにより、BET比表面積を算出する。
【0079】
<評価方法>
カブリ及び現像メモリの評価は、デジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:BP-70M65)を用いて行った。
【0080】
-カブリの評価-
白度計(日本電色工業株式会社製、型式:ZE6000)を用いて、印刷後の用紙中の非画像形成部の白色度を測定し、予め測定しておいた印刷前の用紙の白色度との差分を求め、この差分に基づいてカブリを評価した。
【0081】
具体的には、A4用紙に低印字率(紙面上のカバレージが平均1%)にて3000枚印刷した後に、高印字率(紙面上のカバレージが平均25%)にて5000枚印刷した。この5000枚について、100枚目、200枚目・・・というように、100枚毎に白色度を測定し、これらのなかで白色度の差分が最大のものに基づいて、以下の基準でカブリを評価した。
【0082】
◎(優秀):白色度の差分が1.0%以下である。
○(良好):白色度の差分が1.0%超2.0%以下である。
△(可) :白色度の差分が2.0%超2.5%以下である。
×(不可):白色度の差分が2.5%超である。
【0083】
-現像メモリの評価-
A4サイズの現像メモリ確認用のチャートを用意し印刷した。このチャート上には、通紙方向の先端に、通紙方向と垂直な方向に帯状に延びるベタ部が設けられている。この帯状のベタ部は通紙方向に幅が5cmあり、このベタ部中には直径約3cmの円形の白抜き(非印字部)が3個設けられており、この白抜きはベタ部の中央付近と両端付近に位置する。またこのチャート上には、ベタ部の通紙方向後ろ側にハーフトーン画像が設けられている。ベタ部に設けられた白抜きに対応する現像メモリが発生した場合には、ハーフトーン画像上に残像画像(ハーフトーンよりも濃く印字される円形の画像)が現れる。このハーフトーン画像上の残像画像の個数を確認して、以下の基準で現像メモリを評価した。なお、この残像画像がぼんやりと現れたものの全体像までは見えなかった場合には0.5個と数えた。
【0084】
◎(優秀):残像画像が0.5個以下である。
○(良好):残像画像が0.5個超1.5個以下である。
△(可) :残像画像が1.5個超2.5個以下である。
×(不可):残像画像が2.5個超である。
【0085】
<トナーの製造例>
[実施例1]
トナー粒子の作製には、以下の原料を使用した。
・結着樹脂
ポリエステル系樹脂 5000g
・着色剤
カーボンブラック#44(三菱ケミカル株式会社製) 500g
・帯電調整剤
LR147(商品名、日本カーリット株式会社製) 50g
・ワックス
ポリエチレンワックス(三井化学株式会社製、商品名:400P) 200g
ポリプロピレンワックス(三井化学株式会社製、商品名:NP-505) 100g
【0086】
上記の原料を気流混合機(日本コークス工業株式会社製、ヘンシェルミキサ、型式:FM20C)を用いて回転数1500rpmにて5分間混合した。得られた混合物を二軸押出機(株式会社池貝製、型式:PCM-30)により溶融混練して溶融混練物を得た。
【0087】
得られた溶融混練物を冷却固化した後、流動層式対向型ジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製、型式:カウンタージェットミルAFG)を用いて粉砕して微粉砕物を得た。得られた微粉砕物をロータリー式分級機(ホソカワミクロン株式会社製、型式:TSPセパレータ)により分級(粒度調整)して、トナー粒子を得た。
【0088】
得られたトナー粒子1000gに対し以下の外添剤を加えて、気流混合機(日本コークス工業株式会社製、ヘンシェルミキサ、型式:FM20C)を用いて回転数3000rpmにて3分間混合して、実施例1のトナーを得た。
・第1のシリカ粒子(PDMSで表面処理されたシリカ粒子)
RY300(商品名、日本アエロジル株式会社製) 2.5g
・第2のシリカ粒子(DDSで表面処理されたシリカ粒子)
R976s(商品名、日本アエロジル株式会社製) 7.5g
・金属粒子
シリカチタン酸ストロンチウム粒子(チタン酸ストロンチウムにシリカを添加したコアの表面をシラン化物で疎水化した微粉体) 4.5g
【0089】
なお、金属粒子として添加した上記微粉体は、次のようにして作製した。
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱硫漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えpH9.0とし、脱硫処理を行った。脱硫処理後、塩酸でpH5.8まで中和し、ろ過水洗を行って、洗浄済みケーキを得た。洗浄済みケーキに水を加え、スラリーとした後、塩酸を加えpH1.4とし、解膠処理を行った。このメタチタン酸を反応容器に投入し、塩化ストロンチウム溶液とケイ酸ナトリウムとを加えた。次に、撹拌しながら90℃に加温した後、10N水酸化ナトリウム水溶液を2時間かけて添加し、その後、95℃で1時間撹拌を続け反応を終了した。
【0090】
当該反応終了スラリーを50℃まで冷却し、pH5.0となるまで塩酸を加え1時間撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄した後、50℃に調整し、塩酸を加えpHを2.5とし、疎水化処理を行った。次いで、水酸化ナトリウム溶液を加えpH6.5に調整し、1時間撹拌保持を続けた後、ろ過洗浄を行い得られたケーキを120℃大気中で10時間乾燥することで、チタン酸ストロンチウムにシリカを添加したコアの表面をシラン化物で疎水化処理した微粉体を得た。一次粒子の個数平均粒子径は40nmであった。
【0091】
[実施例2]
第2のシリカ粒子について、DDSで表面処理されたシリカ粒子に代えて、HMDSで表面処理されたシリカ粒子であるRX300(商品名、日本アエロジル株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0092】
[実施例3~4、比較例3~4]
第1のシリカ粒子として、PDMSの炭素含有量が表2,3に示す値となるように変更したものを用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0093】
[実施例5]
第1及び第2のシリカ粒子について、シリカ基材の比表面積が200m2/gであるものを用いた。具体的には、第1のシリカ粒子としてRY200(商品名、日本アエロジル株式会社製)を用い、第2のシリカ粒子としてR974(商品名、日本アエロジル株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0094】
[実施例6]
第2のシリカ粒子について、DDSで表面処理されたシリカ粒子に代えて、HMDSで表面処理されたシリカ粒子であるRX200(商品名、日本アエロジル株式会社製)を用いた以外は、実施例5と同様にしてトナーを得た。
【0095】
[実施例7~8、比較例5~6]
第1のシリカ粒子として、PDMSの炭素含有量が表2,3に示す値となるように変更したものを用いた以外は、実施例5と同様にしてトナーを得た。
【0096】
[実施例9~10]
第1のシリカ粒子として、「表面処理前(シリカ基材)の比表面積」に対する「表面処理後(シリカ粒子)の比表面積」の比率が表2に示す値となるように変更したものを用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0097】
[実施例11~12]
第2のシリカ粒子として、「表面処理前(シリカ基材)の比表面積」に対する「表面処理後(シリカ粒子)の比表面積」の比率が表2に示す値となるように変更したものを用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0098】
[実施例13~16]
第1及び第2のシリカ粒子の添加量を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0099】
[実施例17~18]
金属粒子としての「シリカチタン酸ストロンチウム粒子」中の原子のモル比(Si/Ti)を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0100】
[実施例19~20]
金属粒子としての「シリカチタン酸ストロンチウム粒子」の添加量を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0101】
[実施例21]
複写機において、感光体を帯電させる帯電方式を帯電ローラ方式からスコトロン方式に変更した以外は上記した評価方法と同様にして、実施例2で得たトナーを用いて評価を行った。
【0102】
[実施例22]
複写機において、感光体を帯電させる帯電ローラをDC帯電方式からAC帯電方式に変更した以外は上記した評価方法と同様にして、実施例2で得たトナーを用いて評価を行った。
【0103】
[比較例1]
第1のシリカ粒子として、シリカ基材の比表面積が150m2/gであるR202(商品名、日本アエロジル株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0104】
[比較例2]
第1のシリカ粒子として、シリカ基材の比表面積が50m2/gであるRY50(商品名、日本アエロジル株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0105】
[比較例7]
第2のシリカ粒子を添加しないように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0106】
[比較例8]
第1のシリカ粒子を添加しないように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0107】
[比較例9]
第1のシリカ粒子として、DDSで表面処理されたシリカ粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0108】
[比較例10]
第2のシリカ粒子として、オクチルエトキシシラン(OTES)で表面処理されたシリカ粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
表1は、外添剤が有する物性を示したものであり、表2,3は、実施例及び比較例にて用いた外添剤の種類、物性及び添加量と、評価結果とを示したものである。
【0113】
表2,3によれば、トナー粒子の表面に外添剤が付着したトナーであって前記外添剤は第1及び第2のシリカ基材をそれぞれ含む第1及び第2のシリカ粒子と、金属粒子とを含有し、前記第1及び第2のシリカ基材は、比表面積が180m2/g以上320m2/g以下であり、前記第1のシリカ粒子は、炭素含有量が4質量%以上8.5質量%以下のジメチルポリシロキサンで前記第1のシリカ基材が表面処理されたものであり、前記第2のシリカ粒子は、ジメチルジクロロシラン又はヘキサメチルジシラザンで前記第2のシリカ基材が表面処理されたものである実施例1~22のトナーは、カブリ及び現像メモリの発生を抑制できるものであった。
【0114】
これに対して、これらの要件を満たさない比較例1~10は、カブリ及び現像メモリの評価が実施例に対して劣っていた。
【0115】
なお、実施例及び比較例にて使用したトナー粒子は、平均一次粒子径が6.0μmであり、粒子径2μm未満の粒子の個数割合が17%である。したがって、平均一次粒子径が4.5μm以上6.5μm以下であり、粒子径2μm未満の粒子の個数割合が5%以上18%以下であるトナー粒子を使用した場合、換言すると、微粉を多く含んだ小粒子径のトナー粒子を使用した場合であっても、カブリ及び現像メモリの発生を抑制できることがわかる。
【0116】
第1のシリカ粒子の比表面積が、第1のシリカ基材の比表面積の35%以上55%以下である実施例1~6は、この比表面積の比率が上記範囲外である実施例9,10よりも、カブリ及び現像メモリの発生をより抑制できることがわかる。
【0117】
第2のシリカ粒子の比表面積が、第2のシリカ基材の比表面積の60%以上90%以下である実施例1~6は、この比表面積の比率が上記範囲外である実施例11,12よりも、カブリ及び現像メモリの発生をより抑制できることがわかる。
【0118】
第1のシリカ粒子の含有量が、トナー粒子100質量部に対して0.2質量部以上0.5質量部以下である実施例1~6は、この含有量が上記範囲外である実施例13,14よりも、カブリ及び現像メモリの発生をより抑制できることがわかる。
【0119】
第2のシリカ粒子の含有量が、トナー粒子100質量部に対して0.65質量部以上0.9質量部以下である実施例1~6は、この含有量が上記範囲外である実施例15,16よりも、カブリ及び現像メモリの発生をより抑制できることがわかる。
【0120】
金属粒子として、チタン酸ストロンチウムにシリカを添加したコアの表面をシラン化物で疎水化した微粉体を含み、この微粉体中のチタン原子に対するケイ素原子のモル比(Si/Ti)が0.03以上1.0以下である実施例1~6は、モル比が上記範囲外である実施例17,18よりも、カブリ及び現像メモリの発生をより抑制できることがわかる。
【0121】
この微粉体の含有量がトナー粒子100質量部に対して0.2質量部以上0.6質量部以下である実施例1~6は、この含有量が上記範囲外である実施例19,20よりも、カブリ及び現像メモリの発生をより抑制できることがわかる。
【0122】
感光体を帯電させる帯電器として、帯電ローラ方式の帯電器はオゾンの発生がなく環境に配慮されたものである一方、ドラムを均一に帯電させる能力はスコトロン方式の帯電器には劣るため、カブリがより顕著に発生しやすいという問題があるが、実施例1~6と実施例21との比較からわかるように、本実施形態に係るトナーは、帯電ローラ方式の帯電器を用いた場合でも遜色なくカブリを抑制できていることがわかる。
【0123】
また、帯電ローラの帯電方式について、DC帯電方式の方がAC帯電方式よりもカブリが発生しやすいという問題があるが、実施例1~6と実施例22との比較からわかるように、本実施形態に係るトナーは、DC帯電方式を用いた場合でも遜色なくカブリを抑制できていることがわかる。
【0124】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。