(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013090
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】熱電発電ユニット及び熱発電装置
(51)【国際特許分類】
F01N 5/02 20060101AFI20240124BHJP
H10N 10/13 20230101ALI20240124BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
F01N5/02 B
F01N5/02 J
H01L35/30
H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115022
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】515135114
【氏名又は名称】株式会社Eサーモジェンテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川井 一起
(72)【発明者】
【氏名】馬島 菜緒
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 道生
(72)【発明者】
【氏名】南部 修太郎
(57)【要約】
【課題】多様な工場排熱でも広く利用可能で、発電効率が高く、コスト面でも有利な排気廃熱向け熱電発電ユニットを提供する。
【解決手段】熱電発電ユニット100は、内部に冷却水通路3を有するウォータージャケット1と、冷却水通路内に配設された複数の外管2と、外管内に配設され、外管を貫通・突出した排気パイプ20と、排気パイプの端部に配設され、排気パイプに連通する穴を有する管板30と、外管の内周面と排気パイプの外周面との間に密着して配設された熱電発電モジュール10とを備え、熱電発電モジュールは、フレキシブル基板上に設置された複数の熱電発電素子を備え、管板とウォータージャケットの主面と間であって、排気パイプの周囲に空隙部が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷却水通路を有するウォータージャケットと、
前記冷却水通路内に、前記ウォータージャケットの一方の主面から他方の主面に渡って配設された複数の外管と、
前記外管内に配設され、前記外管を貫通・突出した排気パイプと、
前記排気パイプの端部に配設され、前記排気パイプに連通する穴を有する管板と、
前記外管の内周面と前記排気パイプの外周面との間に、密着して配設された熱電発電モジュールと
を備え、
前記熱電発電モジュールは、フレキシブル基板上に設置された複数の熱電発電素子を備え、
前記管板と、前記ウォータージャケットの一方の主面及び他方の主面と間であって、前記排気パイプの周囲に空隙部が設けられている、熱電発電ユニット。
【請求項2】
前記ウォータージャケットの側面に、冷却水の導入口と排出口とが設けられ、
前記冷却水通路内であって、前記導入口と排出口とが設けられた位置の間に、水流板が配設されている、請求項1に記載の熱電発電ユニット。
【請求項3】
前記菅板は、角型形状で構成されている、請求項1に記載の熱電発電ユニット。
【請求項4】
前記熱電発電モジュールは、前記フレキシブル基板上に設置された複数の熱電発電素子と放熱シートとの積層体からなり、
前記放熱シートは、前記外管との接触面にグラファイトシートを備えている、請求項1に記載の熱電発電ユニット。
【請求項5】
前記管板の端部は、前記ウォータージャケットの外周面より突出し、前記ジャケットの外周面に、前記熱電発電素子の配線ターミナルが設けられている、請求項1に記載の熱電発電ユニット。
【請求項6】
前記排気パイプ内に、集熱コアが内装されている、請求項1に記載の熱電発電ユニット。
【請求項7】
排気源に接続された第1の排気管と、
前記第1の排気管に対向して配置された第2の排気管と、
請求項1~6の何れかに記載の熱電発電ユニットと
を備え、
前記熱電発電ユニットに配設された管板は、それぞれ、接続ダクトを介して、前記第1の排気管及び前記第2の排気管に接続されている、熱発電装置。
【請求項8】
前記接続ダクトは、角丸ダクトからなり、該角丸ダクトの丸型接続面は、それぞれ、前記第1の排気管及び前記第2の排気管に接続され、前記角丸ダクトの角型接続面は、それぞれ、前記管板に接続されている、請求項7に記載の熱発電装置。
【請求項9】
前記第1の排気管からの排気は、前記熱電発電ユニットに配設された複数の排気パイプに分割されて導入され、
前記複数の排気パイプの内径断面積の総和は、前記第1の排気管の内径断面積より大きい、請求項7に記載の熱発電装置。
【請求項10】
前記熱電発電ユニットは、複数個並置されており、
各熱電発電ユニットに配設された管板は、共通の接続ダクトを介して、前記第1の排気管及び前記第2の排気管に接続されている、請求項7に記載の熱発電装置。
【請求項11】
前記熱電発電ユニットに配設された冷却水通路を通過して排出される温度上昇した冷却水は、熱水利用装置に供給される、請求項7に記載の熱発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気排熱機構向けに好適な熱電発電ユニット、及びこれを備えた熱発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、全一次エネルギー供給量の内、60%を越える膨大な廃熱が地球環境に排出されている。昨今の地球温暖に対する危機感から、発電所、化学プラント、食品、非鉄金属、自動車といった排熱源の存在する産業分野では、省エネに対する関心が高まっており、廃熱の削減・有効利用について多くの検討がされている。
【0003】
排気の熱抵抗は大きく、熱を効率よく熱電発電モジュールに伝えるのは困難である。また、排気の規模(パイプ径、流量)は様々であり、たとえば各種工場・作業場等に汎用的に適用可能で高効率な排気廃熱向け熱電発電システムの開発が課題である。
【0004】
排熱源の内、特に排気ガスに対しての熱回収は、エコノマイザーやバイナリー発電といった方法が既に実用化されているが、比較的大規模な熱源に適用が限られている。小規模な排気に対しては、主に自動車の排気ガスからの熱回収を目的に開発が行われている。
【0005】
例えば、特許文献1には、複数の熱電発電ユニットを排気ガス通路中に並列配置するエンジン向けの熱電発電装置が開示されている。また、特許文献2には、ケース内に、媒体(冷却水)路、及び熱電素子を有する複数の排ガス路を設け、ケース外に、排気管との接続用フランジを設けた車両用廃熱利用装置が開示されている。
【0006】
これらの文献に開示された装置は、排気の規模(パイプ径等)が様々な各種工場・作業場等向けへの適用は全く意図されていないとともに、このような用途での汎用的使用には不向きである。
【0007】
現在、多く見られる工場廃熱排気システムは、例えば、
図16に示すように、ガスオーブン200からの廃熱を、排気ファン201により、収集用ダクト202、排気管203、及び排気ダクト204を介して放出する排気システムがあり、このような排気システムに好適な排気廃熱向け熱電発電システムの実現が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-166555
【特許文献2】特開2018-109385
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来の排気廃熱からの熱回収システムは、比較的大規模な熱源に適応するものか、あるいは小規模であれば特定の熱源に適用を絞ったシステムに留まり、排熱源の場所・規模に関わらず利用可能なシステムは実現されていなかった。
【0010】
また、熱源の場所、規模は各々の工場により千差万別であり、それぞれに対応しようとする場合、同じ規格サイズの製品では対応できず、各熱源に専用の設計が必要となってしまう。そのため、コスト面で不利になるという問題があった。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、その主な目的は、多様な工場排熱でも広く利用可能で、かつ、汎用的に適用可能で、発電効率が高く、コスト面でも有利な排気廃熱向け熱電発電ユニットおよび熱発電システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る熱電発電ユニットは、内部に冷却水通路を有するウォータージャケットと、冷却水通路内に、ウォータージャケットの一方の主面から他方の主面に渡って配設された複数の外管と、外管内に配設され、外管を貫通・突出した排気パイプと、排気パイプの端部に配設され、排気パイプに連通する穴を有する管板と、外管の内周面と排気パイプの外周面との間に、密着して配設された熱電発電モジュールとを備え、 熱電発電モジュールは、フレキシブル基板上に設置された複数の熱電発電素子を備え、管板と、ウォータージャケットの一方の主面及び他方の主面と間であって、排気パイプの周囲に空隙部が設けられている。
【0013】
本発明に係る熱発電装置は、排気源に接続された第1の排気管と、第1の排気管に対向して配置された第2の排気管と、上記熱電発電ユニットとを備え、熱電発電ユニットに配設された管板は、それぞれ、接続ダクトを介して、第1の排気管及び第2の排気管に接続されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多様な工場排熱でも広く利用可能で、かつ、汎用的に適用可能で、発電効率が高く、コスト面でも有利な排気廃熱向け熱電発電ユニットおよび熱発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態における熱電発電ユニットの構成を模式的に示した外観図である。
【
図6】管板を除いた熱電発電ユニットの外観図である。
【
図8】ウォータージャケットの他の形状を示した平面図である。
【
図9A】本発明の一実施形態における熱発電装置の構成を模式的に示した分解図である。
【
図10】熱発電装置を工場に設置した例を示した図である。
【
図11A】熱電発電ユニットを2並列に4個使用した熱発電装置を示した分解図である。
【
図11C】冷却水管を配置した熱発電装置の正面図である。
【
図11D】配線を配置した熱発電装置の正面図である。
【
図12A】熱電発電ユニットを4個並列し、4行4列の構成とした熱発電装置を示した分解図である。
【
図12C】冷却水管を配置した熱発電装置の正面図である。
【
図12D】配線を配置した熱発電装置の正面図である。
【
図13】熱電発電ユニットを2段に積層した状態を示した図である。
【
図14】4個の熱電発電ユニットを2段に積層した状態を示した図である。
【
図15】16個の熱電発電ユニットを2段に積層した状態を示した図である。
【
図16】従来工場で設置されている排気廃熱システムの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0017】
図1~
図6は、本発明の一実施形態における熱電発電ユニットの構成を模式的に示した図である。
図1は、熱電発電ユニット100の外観図で、
図2は、熱電発電ユニット100の正面図である。また、
図3は、
図1のA-A線断面図で、
図4は、
図1のB-B線断面図で、
図5は、
図1のC-C線断面図である。
【0018】
図1~
図6に示すように、熱電発電ユニット100は、ウォータージャケット1、外管2、熱電発電モジュール10、排気パイプ20、管板30等の主要部材を有する。本実施形態における熱電発電ユニット100は、排気パイプ20内の高温の排気ガスの廃熱と、内部の冷却機構により、熱電発電モジュール10の発電機能を発揮させるものである。なお、熱電発電ユニット100は、外部の排気管に接続される。
【0019】
ウォータージャケット1は、金属板を折り曲げ・溶接加工して形成された6面体構造で、側面が4角形状をなしており、内部に冷却水通路3が設けられている。通路3内には、金属製の4本の外管2が、上下主面に渡って取り付けられている。ウォータージャケット1の上下主面には、外管2に対応する4個の穴が形成されており、外管2の両端部は、この穴の周囲に溶接等で固着されている。4本の外管2内には、それぞれ、外管2を貫通し、両端部が、外管2およびウォータージャケット1の上下主面から突出した排気パイプ20が設置されている。排気パイプ20の外周面には、熱電発電モジュール10が巻き付けられている。この状態で、排気パイプ20は、
図6に示すように、外管2内に挿入され、熱電発電モジュール10は、外管2の内周面と、排気パイプ20の外周面間に密着固定される。
【0020】
排気パイプ20の両端部には、4角形状の管板30が取り付けられ、管板30には、排気パイプ20の端部に応じた穴4個が形成されており、排気パイプ20を通った排気Xは、外部の排気管に排出される。
【0021】
管板30は、排気パイプ20の両端部に、溶接等で固着される。冷却水通路3は、4本の排気パイプ20の共通冷却部であり、中央付近に水流板4が設けられている。ウォータージャケット1の側面には、冷却水の導入口4aと排出口5aとが設けられ、 導入口4aと排出口5aとが設けられた位置の間に、水流板4が配設されている。冷却水の導入口4aから冷却水(たとえば工場での水道水等)が導入され、排出口5aから排出される。
【0022】
本実施形態では、4個の外管2と、4個の排気パイプ20とで構成された発電機構部分が、ウォータージャケット内の共通化された冷却水通路3内に設置され、水流板4を設置することで、冷却水が滞りなく循環する構造になっている。このような構造により、冷却効率を高める事が出来る。なお、外管2、排気パイプ20の本数は、4本に限らず、適宜変更可能である。
【0023】
ウォータージャケット1の下部には、突起部1bが設けられており、通常時は、突起部1bは、管板30と接触していない。経年劣化により、排気パイプ20と熱電発電モジュール10、外管2の密着力が低下して、ウォータージャケット1が重力により下がった場合に、この突起部1bにより、管板30とウォータージャケット1が接触して、熱源の温度低下と冷却源の温度上昇を防ぐことができる。突起部1bの先端は、半球状であり、管板30と接触しても点接触になるため、排気の熱リークを最低限にすることができる。
【0024】
本実施形態において、ウォータージャケット1の上下面と、管板30との間で、排気パイプ20の周囲に空隙部40が形成されている。これにより、排気熱が直接伝わる排気パイプ20および管板30と、冷却部となるウォータージャケット1および外管2との接触が防止され、いわば、空隙部40は断熱効果を発揮している。この構造は、高温の排気パイプ20の排熱排気(たとえば約200℃)が、冷却機能を果たす管板30、ウォータージャケット1およびその冷却水(たとえば約20℃)に伝導することを極力少なくしており、温度差生成に寄与している。
【0025】
排気パイプ20には、集熱コア21が装着されている。これにより、集熱部の表面積を格段に大きくすることができ、効率よく熱を伝える事が可能になる。集熱コア21は、例えば、セラミック製のハニカム、金属製の円筒フィン等を使用することができる。
【0026】
熱電発電モジュール10は、例えば、
図7A及び
図7Bに示す本願出願人が開発した配管巻き付けに適したフレキシブル基板仕様が好適である。ここで、
図7Aは、熱電発電モジュール10の部分概略図で、
図7Bは、
図7AのPで示した部分の拡大図である。
【0027】
熱電発電モジュール10は、フレキシブル基板12上に、電極19aを有する複数の熱電素子19が実装され、熱電素子19の両面に、放熱シート11、13が形成されている。このような構成の熱電発電モジュール10は、排気パイプ20の円筒状外周面に容易に密接固着することができ、この状態で外管2に挿入することにより、パイプ20の外周面と、外管2の内周面との間を密着固定することができる。これにより、熱電発電モジュール10における温度差を高めることができ、熱電発電モジュール10の発電効率を向上させることができる。さらに、放熱シート13の外管2に接する面に、グラファイトシートを張り合わせることが好ましい。これにより、高い密接性を保持しつつ、外管2に排気パイプ20をスムーズに挿入することができる。
【0028】
図9A及び
図9Bは、本実施形態における熱電発電ユニットを備えた熱発電装置90の構成を模式的に示した図である。ここで、
図9Aは、熱発電装置90の分解図で、
図9Bは、熱発電装置90の正面図である。また、
図10は、熱発電装置90を、工場に5個設置した例を示す図である。
【0029】
本実施形態における熱発電装置90は、排気源に接続された第1の排気管50aと、第1の排気管50aに対向して配置された第2の排気管50bと、熱電発電ユニット100とを備え、熱電発電ユニット100に配設された管板30は、それぞれ、接続ダクト60を介して、第1の排気管50a及び第2の排気管50bに接続されている。
【0030】
図9Aに示すように、接続ダクト60の接続面に、熱電発電ユニット100の管板30が固着されている。上述したように、管板30は、4個の排気パイプ20と接合されており、第1の排気管50aからの排気Xを、4本の排気パイプ20へ分岐させる役割をなしている。排気パイプ20を通過した排気Xは、接続ダクト60、第2の排気管50bから、
図10に示す排気ダクト204に排出される。
【0031】
熱電発電ユニット100を排熱源に設置する際は、接続ダクト60を使用して接続しているが、接続元の排気管50a、50bのパイプ径pより、熱電発電ユニット100の排気部サイズh4の方を大きくし、更に、排気が通過する4本の排気パイプ20の内径断面の総断面積を、排気管50a、50bの内径断面積よりも大きくしている。
【0032】
排気の流れ方は、
図9A中の破線矢印(X1~X4)のように、通路の面積の拡大(4本の排気パイプ)に伴って広がりながら進み、熱電発電ユニット100の4本の排気パイプ20内に流れていく。このとき、排気の流速は、流路拡大と共に小さくなるため、熱電発電ユニット100での圧損を減らす効果を得ることができる。
【0033】
このように、排気管50aの排気を分割して排気パイプ20に導入しており、排気の流れは、広がりながら4本の排気パイプ20を進むため、流速の低下が可能となる。これにより、流速増が生じた場合に問題となる圧損を減らすことができるため、排気パイプ20内での熱収集効果を高め、熱発電用の温度差形成に効果的となる。管板30は四角形で、ボルトを通す穴31が設けてあるため、接続ダクト60を角丸ダクトにすることにより、角丸ダクト60を介して排気管50と接続可能になっている。接続は、角丸ダクト60の端部62のネジ穴63と管板の穴31を利用してネジ止めして行う。
【0034】
管板30のサイズは、ウォータージャケット1より大きく、管板30の端部がウォータージャケット1の側面部よりはみ出す構造であり、
図1に示すように、ウォータージャケット1側面の空きスペースに、ターミナル設置台16及びターミナル15を設置する。ターミナル15は、熱電発電モジュール10から伸びる配線17をまとめ、配線18の取り付けるために利用する。
【0035】
水冷部となるウォータージャケット1の形状は、軽量化に有利で作成も容易な多角柱(四角柱や六角柱)の形状が有効である。また、管板30の形状は、複数個並べて熱電発電ユニット100を拡張利用するときに、円筒型より角形、特に四角であると対称性よく熱電発電ユニットを並べる事が容易になる。
【0036】
ウォータージャケット1は、
図8に示すように、円形状のウォータージャケット1aを用いても良い。この場合、ターミナル設置台16は、曲面を有する設置台16aを用いれば良い。また、上記実施形態では、ウォータージャケット1は六面体の形状を持つが、適宜多面体(六角柱)なども可能である。また、管板30の形状は四角形であったが、六角形なども可能である。
【0037】
図10に示すように、従来の排気の熱源に、熱電発電ユニット100を取り付けて発電させることが可能である。例として、オーブン200から発生する排気をブロアで排出する場合を示す。排気ダクト204の煙道(排気管50)を分断し、熱電発電ユニット100を取り付けるスペースを確保する。この時、排気管50の径と熱電発電ユニット100の管板30のサイズが異なる場合は、
図9Aに示すように角丸ダクト60などを用いて接続する。
【0038】
熱電発電ユニット100には、冷却水をホース等で送水する。冷却水は工場内に完備されている工業用水等が使用可能である。オーブン200が運転を開始すると、ブロアが動作し高温の排気が排出される。その排気が熱電発電ユニット100の排気パイプ20内を通過し、集熱コア21によって熱が熱電発電モジュール10高温面へと伝えられる。同時にウォータージャケット1に送水された冷却水によって、熱電発電モジュール10の低温面を冷却する事が可能であり、熱電発電モジュール10の高温面と低温面に生じる温度差によって発電が実行される。
【0039】
一般に、工場で使用される排気配管のサイズは様々であるが、排気の規模が小さい場合、配管径がφ100mm~φ150mm程度の範囲の物が使用されることが多い。そのため、熱電発電ユニット100のサイズを決めるにあたり、最も頻繁に用いられる排気配管のサイズをターゲットにして、
図1、
図2、及び
図6に示すように、管板30の穴の内径D、及びウォータージャケット1の各部分のサイズh1~h4、V1、V2を決定すればよい。
【0040】
具体寸法の一例として、管板30の穴の内径Dは85.1mm、ウォータージャケット1の各部分のサイズは、h1、h2は295mm、h3は227mm、h4は227mm、V1は190mm、V2は150mmである。
【0041】
ウォータージャケット1は、厚み2mmのアルミ板を箱型に加工整形したもの、外管2は外径101.1mm、厚み3mmのアルミ管、排気パイプ20は外径89.1mm、厚み2mmのステンレス管、管板30は厚み2mのステンレス板を用いる。
【0042】
以上の仕様で作成した熱電発電ユニット100の重量は、作業の負担が少ない12.8kg(冷却水込み)に抑えることができた。熱電発電ユニット100を、排気温度180℃、流量300m3/hの熱源に設置して、導入口4aから導入される冷却水の温度20℃、流量5L/minで、熱電発電ユニット100に流した場合、得られる発電量は50W~60Wである。また、熱電発電ユニット100の排出口5aから排出される冷却水の温度は約25℃となる。
【0043】
図10示すように、例えば、熱電発電ユニット100を5個並置することで、工場用等に優れた熱発電システムを構築することが出来る。
図10は、
図16に示した工場排気システム(オーブン200に5箇所の排気源がある場合)に、熱電発電ユニット100を5箇所の排気源にそれぞれ取り付けたものである。給水ホース71からの冷却水は、熱電発電ユニット100を抜けた後、直列で隣接する熱電発電ユニット100の冷却水導入口へ繋ぎ、排出口から隣接する熱電発電ユニット100の冷却水導入口に繋ぐ。これを5台目の熱電発電ユニット100まで繰り返し、5台目の熱電発電ユニット100の冷却水排出口から排出される冷却水は、排水管72でボイラー73の給水管等に接続する。
【0044】
オーブン200からの排煙排気は、5台のブロア(排気ファン201)で排出され、各熱電発電ユニット100の排気パイプ20を通り、排出される。同時に、冷却水を流すことで、各排気パイプ20内の熱電発電モジュール10に温度差が生じ、発電が行われる。熱電発電ユニット100に取り付けたターミナル15より配線をとりつけ、熱電発電ユニット100の外部に電流を引き出す。配線の接続方法によって、適宜、5台の熱電発電ユニット100を直列、並列接続を選択することが可能であり、使用する電源回路の特性に応じて接続方式を選択する。冷却に用いた水は、ウォータージャケット1内で温まり排水管72より排出される。
【0045】
このとき、5台の熱電発電ユニット100を通過した冷却水の温度は、20℃~30℃程度上昇するため、ボイラー73等の給水に用いることで、水の加熱に必要な燃料代の節約も可能である。このように、工業用水バルブから給水ホース71で、5個の熱電発電ユニット100に給水し、熱電発電ユニット100の排水管72からの温水を、ボイラー73の用水として導入することにより、ボイラー73の効率向上が可能となる。なお、熱電発電ユニット100の排水管72からの温水は、他の熱水利用装置に供給することができる。
【0046】
次に、本実施形態における熱電発電ユニット100を、大型の配管を有する廃熱排気システムに使用する例を説明する。四角状の管板30を有する熱電発電ユニット100は、容易に複数個並列設置することが可能である。
【0047】
【0048】
図11Aに示すように、各熱電発電ユニット100に配設された管板は、共通の接続ダクト60aを介して、第1の排気管及び第2の排気管(共に不図示)に接続される。
【0049】
排熱源の配管が円形である場合は、角丸ダクト60aを配管に取り付ける。取り付けた角丸ダクト60aの角部に、格子目の板80を設置する。角丸ダクト60aと格子目の板80との間には、ガスケット(通常のペースト状のシール材:図示せず)を用いてガス漏れを防ぐ。熱電発電ユニット100と格子目の板80の隙間にも、ガスケットを用いることで、ガス漏れを防ぐ。
【0050】
角丸ダクト60aのネジ穴63aを用いて、角丸ダクト60a、熱電発電ユニット100、及び格子目の板80をボルトで締結する。熱電発電ユニット100の管板30サイズはウォータージャケット1よりも大きいため、設置した熱電発電ユニット100のウォータージャケット間には、隙間65a(空きスペース)が生じる。各熱電発電ユニット100への冷却水ホース70の接続と、発電した電力を引き出す配線18は、隙間65aを通して行う。
【0051】
冷却水ホース70の接続は、工場内の工業用水バルブより給水ホース71を伸ばし、2本に分岐させて行う。分岐させた冷却水ホース70は、2列ある熱電発電ユニット100の冷却水導入口4aにそれぞれ接続し、排出口5aより直列で、2行目の熱電発電ユニット100の冷却水導入口4aに、冷却水ホース70を接続する。これにより、熱電発電ユニット100の2並列2直列接続体が作成出来る。
【0052】
冷却水の排水は、2行目の2つの熱電発電ユニット100から伸びる冷却水ホース70を束ねて排水管72に接続し、それぞれ、排水口や、
図10に示したボイラー73の給水管等に適宜接続する。このとき、2行目の2つの熱電発電ユニット100から伸びる冷却水ホース70を束ねて、排水管72に接続し、個別に排水することも可能である。
【0053】
熱電発電ユニット100間の配線18の接続は、冷却水ホース70の接続に合わせ、1行目に2つある熱電発電ユニット100の配線18を、それぞれ、2行目の熱電発電ユニット100のターミナル15に直列で接続する。直列接続された熱電発電ユニット100は2列分できる事になり、これらを並列接続し電源回路に接続する。配線18の接続も、冷却水ホース70の接続と同じく、2列2直列とすることができる。
【0054】
なお、冷却水ホース70や配線18の接続を、2並列2直列に構成する以外に、全ての熱電発電ユニット100を直列にする全直列や、全ての熱電発電ユニット100に、個別で接続する個別接続方式など多数の接続方式が可能である。また、熱電発電ユニット100の構成を、2行2列の4並列構成にする以外に、例えば、4行4列の16並列構成、4行2列の8並列構成など適宜構成を選択可能である。
【0055】
図12A~
図12Dは、熱電発電ユニット100を4個並列し4行4列の構成とした例を示す。ここで、
図12Aは、分解図、
図12Bは、正面図、
図12Cは、冷却水管を配置した平面図、
図11Dは、配線を配置した平面図である。なお、熱電発電ユニット100と角丸ダクト60aとの取り付け、及び熱電発電ユニット100間の冷却水ホース70や配線18の接続は、
図11A~
図11Dに示した熱電発電ユニット100を2行2列に構成した場合と同じであるので、説明は省略する。
【0056】
熱電発電ユニット100を接続したとき、許容圧損に余裕がある場合は、熱電発電ユニット100を積層して利用することも可能である。
【0057】
図13は、熱電発電ユニット100を2つ積層した例を示す。排気管に接続した熱電発電ユニット100の上に、もう一台の熱電発電ユニット100を重ねて設置する。このとき、熱電発電ユニット100の管板30間には、ガスケットを設置し、ガス漏れを防ぐ。また、熱電発電ユニット100間は、ボルトで締結する。冷却水ホースは、1段目の熱電発電ユニット100に接続し、直列で2段目の熱電発電ユニット100に接続する。熱電発電ユニット100の配線は、1段目の熱電発電ユニット100と、2段目の熱電発電ユニット100を直列に接続して電源回路に接続する。このような構成で、熱源から排気が送られると、1段目の熱電発電ユニット100の排気パイプ20を通過し、そのまま2段目の排気パイプ20を通過して排気される。このとき、冷却水も同時に送ることで、熱電発電モジュール10の発電が行われる。
【0058】
なお、熱電発電ユニット100を2つ積層する以外に、許容圧損の許す限り、積層数を増やすことが可能である。また、積層構造は、熱電発電ユニット100を並列に並べる構造と組み合わせることが可能である。例えば、
図14に示すように、2行4列の積層構造や、
図15に示すように、4行4列の16並列構成の積層構造にすることも可能である。
【0059】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 ウォータージャケット
2 外管
3 冷却水通路
4 水流板
4a 冷却水導入口
5a 冷却水排出口
10 熱電発電モジュール
11、13 放熱シート
12 フレキシブル基板
15 ターミナル
16 ターミナル設置台
18 配線
19 熱電素子
20 排気パイプ
21 集熱コア
30 管板
31 穴
40 空隙部
50a 第1の排気管
50b 第2の排気管
60、60a 角丸ダクト(接続ダクト)
70 冷却水ホース
71 給水ホース
72 排水管
73 ボイラー
90 熱発電装置
100 熱電発電ユニット