(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130904
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】化合物、正孔輸送材料、およびそれを用いた光電変換素子
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20240920BHJP
H10K 30/86 20230101ALI20240920BHJP
H10K 30/50 20230101ALI20240920BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240920BHJP
H10K 30/40 20230101ALN20240920BHJP
【FI】
C07D487/04 140
C07D487/04 CSP
H10K30/86
H10K30/50
H10K85/60
H10K30/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040857
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊東 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀聡
(72)【発明者】
【氏名】林 祐一朗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋
【テーマコード(参考)】
3K107
4C050
5F251
【Fターム(参考)】
3K107AA03
3K107DD71
3K107DD78
3K107EE68
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB04
4C050CC08
4C050DD10
4C050EE03
4C050FF05
4C050GG01
4C050HH01
5F251AA11
5F251AA20
5F251CB13
5F251DA04
5F251FA04
5F251FA06
5F251GA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明が解決しようとする課題は、効率よく電流を取り出すことが可能な光電変換素子用の正孔輸送材料として有用な化合物、および該化合物を正孔輸送層に用いた、光電変換特性が良好な光電変換素子ならびに太陽電池を提供すること。
【解決手段】具体的化合物の例が下記に示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
[式中、R
1は、水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアシル基、
置換基を有する炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基を表し、
R
2~R
27は、それぞれ独立して、
水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のチオ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基、
置換基を有する炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基を表し、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基を表し、
R
2~R
5、R
8~R
12、R
13~R
17、R
18~R
22およびR
23~R
27は隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよく、R
6とR
7、R
12とR
13およびR
22とR
23は互いに結合して環を形成していてもよい。
X
1およびX
2は、2価基を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、X
1およびX
2は、それぞれ独立して下記一般式(2)で表される化合物。
【化2】
[式中、R
28~R
33は、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~20の複素環基を表し、
R
28とR
29、R
30とR
31およびR
32とR
33は互いに結合して環を形成していてもよい。
Yは酸素原子、硫黄原子またはセレン原子を表し、mおよびnは0~2の整数を表す。]
【請求項3】
前記一般式(2)のmが1である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)において、R1が、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有する炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記一般式(1)において、R8~R27が、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のチオ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1~請求項5いずれか一項に記載の化合物で表される正孔輸送材料。
【請求項7】
請求項6に記載の正孔輸送材料を用いた光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、正孔輸送材料、およびそれを用いた光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンエネルギーとして、太陽光発電が注目を浴びており、太陽電池の開発が盛んに行われている。その中でも、低コストかつ溶液プロセスで製造可能な次世代型の太陽電池として、ペロブスカイト材料を光電変換層に用いた太陽電池(以下、ペロブスカイト型太陽電池と表記)の開発が注目を集めている(例えば、特許文献1、非特許文献1~2)。
【0003】
ペロブスカイト型太陽電池では、素子中に正孔輸送材料を使用することが多い。使用する目的として、(1)正孔を選択的に輸送する機能を高めて光電変換効率を向上させる、(2)ペロブスカイト光電変換層と接合して水分や酸素からの影響を受けやすいペロブスカイト材料を保護する、ことが挙げられる(例えば、非特許文献3)。標準的な正孔輸送材料としてスピロビフルオレン系有機化合物のSpiro-OMeTADが使用されることが多いが、当該材料より光電変換特性に高く寄与する正孔輸送材料の報告は少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開番号第2017/104792号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society,2009年,131巻,P.6050-6051
【非特許文献2】Science,2012年,388巻,P.643-647
【非特許文献3】Chem. Sci.,2019年,10,P.6748-6769
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、効率よく電流を取り出すことが可能な光電変換素子用の正孔輸送材料として有用な化合物、および該化合物を正孔輸送層に用いた、光電変換特性が良好な光電変換素子ならびに太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、発明者らは、光電変換特性向上について鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物を設計開発し、正孔輸送層として光電変換素子に用いることにより、高い光電変換効率を示す光電変換素子ならびにペロブスカイト型太陽電池が得られることを見出した。すなわち、本発明は以下を要旨とするものである。
【0008】
1.下記一般式(1)で表される化合物。
【0009】
【0010】
[式中、R1は、水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアシル基、
置換基を有する炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、
または置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基を表し、
R2~R27は、それぞれ独立して、
水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のチオ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基、
置換基を有する炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基を表し、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基を表し、
R2~R5、R8~R12、R13~R17、R18~R22およびR23~R27は隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよく、R6とR7、R12とR13およびR22とR23は互いに結合して環を形成していてもよい。
X1およびX2は、2価基を表す。]
【0011】
2.前記一般式(1)において、X1およびX2は、それぞれ独立して下記一般式(2)で表される化合物。
【0012】
【0013】
[式中、R28~R33は、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~20の複素環基を表し、
R28とR29、R30とR31およびR32とR33は互いに結合して環を形成していてもよい。
Yは酸素原子、硫黄原子またはセレン原子を表し、mおよびnは0~2の整数を表す。]
【0014】
3.前記一般式(2)のmが1である化合物。
【0015】
4.前記一般式(1)において、R1が、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有する炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基を表し、または置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基である化合物。
【0016】
5.前記一般式(1)において、R8~R27が、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のチオ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基である化合物。
【0017】
6.前記記載の化合物で表される正孔輸送材料。
【0018】
7.前記記載の正孔輸送材料を用いた光電変換素子。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る化合物、該化合物を用いた正孔輸送層によれば、良好な光電変換効率を有する光電変換素子およびペロブスカイト型太陽電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明実施例および比較例の光電変換素子の構成を表す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明の化合物は正孔輸送材料として、光電変換素子ならびにペロブスカイト型の光電変換素子に用いられる。
【0022】
〈光電変換素子〉
本発明の光電変換素子は、典型的には、
図1の概略断面図に示すように、導電性支持体1、電子輸送層2、光電変換層3、正孔輸送層4、および対極5を有する。
【0023】
以下に、前記一般式(1)で表される化合物について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
一般式(1)において、R1は、水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアシル基、
置換基を有する炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基を表す。
【0025】
一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などをあげることができる。
【0026】
一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては具体的に、エテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-メチルエテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基などをあげることができる。
【0027】
一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」における「炭素原子数3~10のシクロアルキル基」としては、具体的に、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基などをあげることができる。
【0028】
一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアシル基」における「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアシル基」としては、具体的に、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイルアセチル基、ベンゾイル基などをあげることができ、アルキル鎖を含む場合、水素原子が完全にフッ素原子に置換(パーフルオロ化)されているものを含む。また、アミノ基と結合したもの(-CO-N<)であってもよい。
【0029】
一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」における「炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」としては具体的に、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基(アントリル基)、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などをあげることができる。なお、本発明において芳香族炭化水素基には、「縮合多環芳香族基」が含まれるものとする。
【0030】
一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基」における「環形成原子数5~36の複素環基」としては具体的に、ピリジル基、ピリミジリニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基(フラニル基)、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチルジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、オキサゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボニリル基などをあげることができる。
【0031】
一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアシル基」、「置換基を有する炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」、または「置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基」における「置換基」としては、具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;シアノ基;水酸基;ニトロ基;ニトロソ基;カルボキシル基;リン酸基;チオキソ基(>C=S);トリメチルシリル基;スルホン酸基;スルホン酸塩基(-SO3X:Xは水素以外のアルカリ金属カチオンを表す);
メチルエステル基、エチルエステル基などのカルボン酸エステル基;
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素原子数1~18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;
エテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、など炭素原子数2~18の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などの炭素原子数1~18のアルコキシ基;
フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などの炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基;
ピリジル基、ピリミジリニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基(フラニル基)、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチルジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、オキサゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボニリル基などの環形成原子数5~30の複素環基;
無置換アミノ基(―NH2)、エチルアミノ基、アセチルアミノ基、フェニルアミノ基などの一置換アミノ基、またはジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、アセチルフェニルアミノ基などの二置換アミノ基である、炭素原子数0~18のアミノ基;
無置換チオ基(チオール基:―SH)、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、フェニルチオ基、ビフェニルチオ基などの炭素原子数0~18のチオ基;
などをあげることができる。これらの「置換基」は、1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよく、隣り合う置換基同士で、単結合、酸素原子、硫黄原子、セレン原子を介した結合もしくは窒素原子を介した結合によって互いに結合して環を形成していてもよい。また、これら「置換基」はさらに前記例示した置換基を有していてもよい。
本発明において、一般式(1)のR1の置換基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、炭素原子数1~18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、または無置換アミノ基(―NH2)、一置換もしくは二置換の炭素原子数0~18のアミノ基であることが好ましい。
【0032】
本発明において、一般式(1)のR1は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有する炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基であることが好ましい。
【0033】
一般式(1)において、R2~R27は、それぞれ独立して、
水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のチオ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基、
置換基を有する炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基を表す。
【0034】
一般式(1)において、おいて、「ハロゲン原子」としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。
【0035】
一般式(1)において、R2~R27で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」と同じものをあげることができる。
【0036】
一般式(1)において、R2~R27で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」と同じものをあげることができる。
【0037】
一般式(1)において、R2~R27で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」における「炭素原子数3~10のシクロアルキル基」としては、一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」と同じものをあげることができる。
【0038】
一般式(1)において、R2~R27で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基」における「炭素原子数1~20のアルコキシ基」としては、具体的に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基、t-オクチルオキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基などをあげることができる。
【0039】
一般式(1)において、R2~R27で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルコキシ基」における「炭素原子数3~10のシクロアルコキシ基」としては、具体的に、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4-メチルシクロヘキシルオキシ基などをあげることができる。
【0040】
一般式(1)において、R2~R27で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアシル基」における「炭素原子数1~20のアシル基」としては、一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアシル基」と同じものをあげることができる。
【0041】
一般式(1)において、R2~R27で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のチオ基」における「炭素原子数1~20のチオ基」としては、具体的に、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、フェニルチオ基、ビフェニルチオ基などをあげることができる。
【0042】
一般式(1)において、R2~R27で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基」における「炭素原子数0~30のアミノ基」としては、一般式(1)において、具体的に、無置換アミノ基(―NH2)、一置換アミノ基としてエチルアミノ基、アセチルアミノ基、フェニルアミノ基など、また、二置換アミノ基としてジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、アセチルフェニルアミノ基などをあげることができる。
【0043】
一般式(1)において、R2~R27で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」における「炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」としては、一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」のうち「炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」と同じものをあげることができる。
【0044】
一般式(2)において、R2~R27で表される「置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基」における「環形成原子数5~36の複素環基」としては、一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基」のうち「環形成原子数5~36の複素環基」と同じものをあげることができる。
【0045】
一般式(1)において、R2~R27で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルコキシ基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアシル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のチオ基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基」、「置換基を有する炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」、または「置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基」における「置換基」としては、一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」等における「置換基」と同じものをあげることができる。
【0046】
一般式(1)において、R2~R5、R8~R12、R13~R17、R18~R22およびR23~R27は隣り合う基同士で、単結合、酸素原子、硫黄原子、セレン原子を介した結合もしくは窒素原子を介した結合によって互いに結合して環を形成していてもよく、R6とR7、R12とR13およびR22とR23は、単結合、酸素原子、硫黄原子、セレン原子を介した結合もしくは窒素原子を介した結合によって互いに結合して環を形成していてもよい。
【0047】
本発明において、一般式(1)のR2~R7が、水素原子または置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基であることが好ましい。
【0048】
本発明において、一般式(1)のR8~R27が、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のチオ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基であることが好ましい。
【0049】
一般式(1)において、X1およびX2は、それぞれ独立して前記一般式(2)で表される2価基であることが好ましい。
【0050】
一般式(2)において、R28~R33は、それぞれ独立して、水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~20の複素環基を表す。
【0051】
一般式(2)において、R28~R33で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」のうち「炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」と同じものをあげることができる。
【0052】
一般式(2)において、R28~R33で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」のうち「炭素原子数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」と同じものをあげることができる。
【0053】
一般式(2)において、R28~R33で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」における「炭素原子数3~10のシクロアルキル基」としては、一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」と同じものをあげることができる。
【0054】
一般式(2)において、R28~R33で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」における「炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」としては、一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」のうち「炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」と同じものをあげることができる。
【0055】
一般式(2)において、R28~R33で表される「置換基を有していてもよい環形成原子数5~20の複素環基」における「環形成原子数5~20の複素環基」としては、一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい環形成原子数5~36の複素環基」のうち「環形成原子数5~20の複素環基」と同じものをあげることができる。
【0056】
一般式(2)において、R28~R33で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」または「置換基を有していてもよい環形成原子数5~20の複素環基」における「置換基」としては、一般式(1)において、R1で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」等における「置換基」のうち炭素原子数および環形成原子数に想到する範囲で同じものをあげることができる。
【0057】
一般式(2)において、R28とR29、R30とR31およびR32とR33は、単結合、酸素原子、硫黄原子、セレン原子を介した結合、もしくは窒素原子を介して互いに結合し、環を形成していてもよい。
【0058】
一般式(2)において、Yは酸素原子、硫黄原子またはセレン原子を表し、Yは、酸素原子または硫黄原子であることが好ましい。
【0059】
一般式(2)において、mおよびnはそれぞれ0~2の整数を表す。また、一般式(1)の中心骨格であるインドロキノキサリン誘導体部とは、一般式(2)で表されるフェニル基および5員環の複素環基のどちらから結合してもよいものとする。
【0060】
一般式(2)において、mが1であり、nが0または1であると好ましい。一般式(2)において、mが1であり、nが1である場合に、一般式(1)の中心骨格であるインドロキノキサリン誘導体部とは、5員環の複素環基が結合していると好ましい。
【0061】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の例示化合物は水素原子、炭素原子等を一部省略して記載しており、存在し得る異性体のうちの一例を示したものであり、その他すべての異性体を包含するものとする。また、それぞれ2種以上の異性体の混合物であってもよい。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
前記一般式(1)で表される本発明の化合物は、公知の方法によって合成することができる。
【0081】
下記一般式(3)で表される4,7-ジブロモ-2,1,3-ベンゾチアジアゾール誘導体と下記一般式(4)および(5)で表されるボロン酸体化合物または下記一般式(6)および(7)で表されるボロン酸エステル体化合物との鈴木・宮浦クロスカップリング反応、あるいはBuchwald反応を行い、さらに下記一般式(8)で表される化合物との還元脱水縮合反応により、前記一般式(1)において、R1が水素原子であるタイプの化合物を合成することができる。さらに、スルトンやハロゲン化アルキルなどを反応させることで、R1に官能基を導入することができる。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物の精製方法としては、カラムクロマトグラフィーによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土等による吸着精製、溶媒による再結晶や晶析等により行うことができる。あるいはこれらの方法を併用して、純度を高めた化合物を使用することが有効である。また、これらの化合物の同定は、核磁気共鳴分析(NMR)により行うことができる。
【0087】
以下、本発明の光電変換素子の好ましい態様について説明する。
【0088】
〈光電変換素子〉
本発明の光電変換素子は、典型的には、
図1の概略断面図に示すように、導電性支持体1、電子輸送層2、光電変換層3、正孔輸送層4、および対極5を有する。
【0089】
本発明の光電変換素子は、
図1に示す通り、導電性支持体1、電子輸送層2、光電変換層3、正孔輸送層4、および対極5を備えることが好ましいが、これに限定されるものではない。また、本発明の光電変換素子としては、太陽電池として用いることが好ましく、ペロブスカイト型の光電変換素子であることがより好ましいが、これに限定されない。本発明において、ペロブスカイト型の光電変換素子は、導電性支持体(電極)1、電子輸送層2、光電変換層(ペロブスカイト層)3、正孔輸送層4、および対極5をこの順に備えることが好ましい。また、導電性支持体、正孔輸送層、光電変換層(ペロブスカイト層)、電子輸送層、対極の順で構成されていてもよい。
【0090】
〈導電性支持体〉
本発明の光電変換素子において、
図1に示す導電性支持体1は、光電変換に寄与する光を透過可能な透光性を有する必要がある。また、導電性支持体は、光電変換層より電流を取り出す機能を有する部材であることから、導電性基板であることが好ましい。導電性材料の具体例としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛をドープしたインジウム酸化物(IZO)、タングステンをドープしたインジウム酸化物(IWO)、亜鉛とアルミニウムとの酸化物(AZO)、フッ素ドープの酸化スズ(FTO)、酸化インジウム(In
2O
3)、インジウム-スズ複合酸化物などの導電性透明酸化物半導体などをあげることができるが、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープの酸化スズ(FTO)などを用いることが好ましい。
【0091】
〈電子輸送層〉
本発明の光電変換素子において、
図1に示す電子輸送層2は、前記導電性支持体1と光電変換層(ペロブスカイト層)3との間に位置する層であり、導電性支持体1の上に電子輸送層2が形成されることが好ましいが、特に限定されない。電子輸送層は、光電変換層から電極への電子の移動効率を向上させ、また、正孔の移動をブロックさせるために用いる。
【0092】
本発明において、電子輸送層を形成する半導体の具体例としては、酸化スズ(SnO、SnO2、SnO3等)、酸化チタン(TiO2等)、酸化タングステン(WO2、WO3、W2O3等)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb2O5等)、酸化タンタル(Ta2O5等)、酸化イットリウム(Y2O3等)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3等)などの金属酸化物;硫化チタン、硫化亜鉛、硫化ジルコニウム、硫化銅、硫化スズ、硫化インジウム、硫化タングステン、硫化カドミウム、硫化銀などの金属硫化物;セレン化チタン、セレン化ジルコニウム、セレン化インジウム、セレン化タングステンなどの金属セレン化物;シリコン、ゲルマニウムなどの単体半導体などをあげることができ、これらの半導体は1種または2種以上を用いるのが好ましい。本発明においては、半導体として酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛から選択される1種または2種以上を用いるのが好ましい。
【0093】
本発明において、電子輸送層を形成するために市販品の前記半導体微粒子を含むペーストを用いてもよく、市販の半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製したペースト(電子輸送層用塗布液)などを用いてもよい。ペーストを調製する際に使用する溶媒の具体例としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;n-ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒をあげることができるが、これらに限定されない。また、これらの溶媒は1種または2種以上の混合溶媒として使用することができる。
【0094】
本発明において半導体微粉末を溶媒中に分散させる方法としては、粉末を乳鉢などですりつぶしてから行ってもよく、ボールミル、ペイントコンディショナー、縦型ビーズミル、水平型ビーズミル、アトライターなどの分散機を用いてもよい。ペーストを調製する際には、半導体微粒子の凝集を防ぐために界面活性剤などを添加するのが好ましく、増粘させるためにポリエチレングリコールなどの増粘剤を添加するのが好ましい。
【0095】
本発明において、電子輸送層は、形成する材料に応じて、公知の製膜方法を用いて得ることができる。電子輸送層の製膜方法としては、塗布液を用いて被覆する任意の塗布方法を用いることができる。スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、スキージ法、スクリーン印刷法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法などの湿式塗布法で導電性基板上に塗布した後、焼成により溶媒や添加物を除去して製膜する方法や、スパッタリング法、蒸着法、電着法、電析法、マイクロ波照射法などがあげられるが、これらに限定されない。本発明においては、前記方法により調製した電子輸送層用塗布液を用いてスピンコート法により製膜することが好ましいが、これに限定されない。なお、スピンコートの条件は、適宜設定することができる。製膜する雰囲気は特に制限されなく、大気中でもよい。
【0096】
電子輸送層の膜厚は、光電変換効率をより向上させる観点から、緻密な電子輸送層が用いられる場合は、電子輸送層の厚みは通常5nm~100nmであることが好ましく、また10nm~50nmであることがより好ましい。本発明において、緻密な層に加えて、多孔質(メソポーラス)な金属酸化物が用いられる場合は、その膜厚は通常20~200nmであることが好ましく、また50~150nmであることがより好ましい。
【0097】
〈光電変換層〉
本発明の光電変換素子において、
図1に示す前記電子輸送層2の上に、光電変換層(ペロブスカイト層)3が形成されることが好ましい。
【0098】
本発明において、ペロブスカイト型光電変換素子として用いる場合、光電変換層であるペロブスカイト材料は、一般式ABX3で表される構造を持つ一連の材料を表す。ここで、A、B、およびXとしては、それぞれ、有機カチオンあるいは1価の金属カチオン、金属カチオン、およびハロゲン化物アニオンを表し、例として、A=K+、Rb+、Cs+、CH3NH3
+(以下、MA:メチルアンモニウム)、NH=CHNH2
+(以下、FA:ホルムアミジニウム)、CH3CH2NH3
+(以下、EA:エチルアンモニウム);B=Pb、Sn;X=I-、Br-があげられる。さらに、具体的には、MAPbI3、FAPbI3、EAPbI3、CsPbI3、MASnI3、FASnI3、EASnI3、MAPbBr3、FAPbBr3、EAPbBr3、MASnBr3、FASnBr3、EASnBr3の任意の組成で表されるペロブスカイト材料、及びFAMA)Pb(IBr)3、K(FAMA)Pb(IBr)3、Rb(FAMA)Pb(IBr)3、Cs(FAMA)Pb(IBr)3の任意の組成で表される混合カチオン、混合アニオンのペロブスカイト材料を含有する層を用いることができるが、これらに限定されない。これらのペロブスカイト材料は、1種または2種以上を用いることが好ましい。また、ペロブスカイト材料以外の光吸収剤を含んでいてもよい。
【0099】
本発明の光電変換素子の光電変換層(ペロブスカイト層)の製膜方法としては、塗布液を用いて被覆する任意の塗布方法を用いることができ、電子輸送層の製膜方法と同じ方法が挙げられる。
【0100】
ペロブスカイト前駆体は、市販の材料を用いてもよく、本発明においては、鉛ハロゲン化物、メチルアンモニウムハロゲン化物、ホルムアミジンハロゲン化物、セシウムハロゲン化物からなる前駆体を任意の組成により用いることが好ましいが、これに限定されない。
【0101】
本発明のペロブスカイト前駆体溶液の溶媒は、前駆体の溶解性の観点から、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン等があげられるが、これらに限定されない。これらの溶媒は、1種または2種以上を混合して使用してもよく、N,N-ジメチルホルムアミドとジメチルスルホキシドの混合溶液を使用することが好ましい。また、水分含有量が10ppm以下の脱水された溶媒を用いることが好ましい。
【0102】
本発明において、光電変換層(ペロブスカイト層)の製膜時の雰囲気は、水分の混入を防ぐことにより再現よく高効率ペロブスカイト型太陽電池を製造できる観点から、乾燥雰囲気下が好ましく、グローブボックス等の乾燥不活性気体雰囲気下がより好ましい。また、モレキュラーシーブ等で脱水を行い、水分含量が少ない溶媒を用いることが好ましい。
【0103】
本発明において、光電変換層(ペロブスカイト層)をホットプレート等により加熱する際の温度は、前駆体よりペロブスカイト材料を生成する観点から、50~200℃が好ましく、70~150℃がより好ましい。また、加熱時間は、10~90分程度が好ましく、10~60分程度がより好ましい。
【0104】
本発明の光電変換層(ペロブスカイト層)の膜厚は、欠陥や剥離による性能劣化をより抑制する観点、および光電変換層が十分な光吸収率を持つとともに、素子抵抗が高くなりすぎないようにするために、50~1000nmが好ましく、300~700nmがより好ましい。
【0105】
〈正孔輸送層〉
本発明の光電変換素子において、
図1に示す正孔輸送層4は、正孔を輸送する機能を有する層であり、光電変換層(ペロブスカイト層)3と対極5との間に位置する層である。正孔輸送層は、光電変換層から電極への正孔の移動効率を向上させ、また、電子の移動をブロックさせるために用いる。正孔輸送層には、例えば、導電体、半導体、有機正孔輸送材料などを用いることができ、正孔輸送特性をさらに向上させることを目的として、添加剤が含まれていてもよい。
【0106】
本発明の正孔輸送層は、前記一般式(1)で表される化合物を正孔輸送材料として含有する層である。本発明の正孔輸送層には、前記一般式(1)で表される化合物を1種または2種以上を併用してもよく、本発明に属さない他の正孔輸送材料等と併用することもできる。
【0107】
本発明の正孔輸送材料に属さない他の正孔輸送材料の具体例としては、例えば、CuI、CuInSe2、CuS等の1価銅を含む化合物半導体;GaP、NiO、CoO、FeO、Bi2O3、MoO2、Cr2O3等の銅以外の金属を含む化合物があげられ、これらの酸化物金属は正孔輸送層中に混合してもよく、正孔輸送材料の上に積層されていてもよい。有機の正孔輸送材料としては、例えば、ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA)等のトリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等があげられる。
【0108】
本発明の光電変換素子の正孔輸送層の製膜方法としては、塗布液を用いて被覆する任意の塗布方法を用いることができ、電子輸送層の製膜方法と同じ方法が挙げられる。
【0109】
本発明において、製膜の際、正孔輸送層用塗布液に使用される溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン(1,2,3,4‐テトラヒドロナフタレン)、モノクロロベンゼン(クロロベンゼン)、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族系有機溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系有機溶媒;ベンゾニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、c-ペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;メタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、シクロヘキサノール、2-n-ブトキシエタノール等のアルコール系溶媒等があげられるが、これらに限定されない。また、上記溶媒は、1種または2種以上を混合して使用してもよく、構造により使用する溶媒を選択することができる。特に、芳香族系有機溶媒およびハロゲン化アルキル系有機溶媒を使用することが好ましい。
【0110】
本発明において、正孔輸送層の膜厚は、光電変換効率をより向上させる観点から、5~500nmであることが好ましく、10nm~250nmであることがより好ましい。
【0111】
本発明において、正孔輸送層の製膜時の雰囲気は、水分の混入を防ぐことにより再現よく高効率ペロブスカイト型太陽電池を製造できる観点から、乾燥雰囲気下が好ましい。また、水分含有量が10ppm以下の脱水された溶媒を用いることが好ましい。
【0112】
〈添加剤〉
本発明では、正孔輸送層の添加剤として、ドーパント(あるいは、酸化剤)や塩基性化合物(あるいは、塩基性添加剤)を含有していてもよい。正孔輸送層に添加剤を含有させ、正孔輸送層における正孔輸送材料のキャリア濃度を向上させること(ドーピング)は、光電変換素子の光電変換効率向上につながる。本発明において、正孔輸送層に添加剤であるドーパントおよび塩基性添加剤を含有する場合、正孔輸送材料1当量に対して、添加剤4当量以下であることが好ましい。
【0113】
本発明において、ドーパントを含有させる場合、ドーパントの具体例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド銀、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド亜鉛(II)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド銅(II)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドマグネシウム(II)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカルシウム(II)、トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリ[ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド](FK209)、NOSbF6、SbCl5、SbF5などをあげることができる。本発明において、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)を用いることが好ましいが、これに限定されない。
【0114】
本発明において、ドーパントを使用する場合、正孔輸送層に含有する正孔輸送材料1当量に対して、2.0当量以下が好ましく、0.5当量以下であることがより好ましい。正孔輸送層に添加剤を含有させることは、光電変換素子の光電変換効率向上につながる一方で、添加剤であるドーパントを使用することは、有機化合物を用いた光電変換素子の耐久性を下げ、素子全体の寿命を短くしてしまうことが懸念されている(例えば、非特許文献3)。このため、ドーパントの含有量を低減した正孔輸送層を有する光電変換素子の開発が望まれている。また、含有量を低減することができれば、添加剤コストの削減や、製造プロセスコストの削減が可能となる。
【0115】
また、本発明において、正孔輸送層の添加剤として塩基性化合物(塩基性添加剤)を含有してもよい。本発明において、塩基性化合物を含有させる場合、具体例としては、4-tert-ブチルピリジン(tBP)、2-ピコリン、2,6-ルチジンなどがあげられる。塩基性化合物は、ドーパントを使用する際に併用して用いられることが多い。本発明においても、ドーパントを使用する際には併用することが望ましく、4-tert-ブチルピリジンを用いることが好ましい。
【0116】
本発明において、塩基性化合物を使用する場合、本発明の正孔輸送材料1当量に対して、5当量以下であることが好ましく、3.5当量以下であることがさらに好ましい。
【0117】
〈対極〉
本発明において、
図1に示す対極5は、導電性支持体1に対向配置され、正孔輸送層4の上に形成されることで、正孔輸送層と電荷のやり取りが可能である。本発明の光電変換素子においては、正孔輸送層4上に対極として金属電極を備えることが好ましいが、正孔輸送層4と対極5との間に有機材料もしくは無機化合物半導体からなる電子ブロッキング層を追加することもできる。
【0118】
本発明において、対極に使用される材料としては具体的に、白金、チタン、ステンレス、アルミニウム、金、銀、ニッケル、マグネシウム、クロム、コバルト、銅などの金属又はこれらの合金があげられる。これらのなかでも、薄膜においても高い電気伝導性を示す点で金、銀または銀の合金を用いることが好ましい。なお、銀の合金としては、硫化又は塩素化の影響を受けにくく薄膜としての安定性を向上させるために、銀と金の合金、銀と銅の合金、銀とパラジウムの合金、銀と銅とパラジウムの合金、銀と白金の合金などがあげられる。
【0119】
本発明において対極は、蒸着等の方法で形成できる材料が好ましい。
【0120】
対極として金属電極を用いる場合は、その膜厚は、良好な導電性を得るために10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。
【0121】
本発明の光電変換素子においては、導電性支持体が陰極となり、対極が陽極となる。太陽光などの光は導電性支持体側から照射する方が好ましい。太陽光などの照射により、光電変換層(ペロブスカイト層)が光を吸収して励起状態となって電子と正孔が生成する。この電子が電子輸送層を、正孔が正孔輸送層を経由して電極へ移動することにより電流が流れ、光電変換素子として機能するようになる。
【0122】
本発明の光電変換素子の性能(特性)を評価する際には、短絡電流密度、開放電圧、フィルファクター、光電変換効率の測定を行う。短絡電流密度とは、出力端子を短絡させたときの両端子間に流れる1cm2あたりの電流を表し、開放電圧とは、出力端子を開放させたときの両端子間の電圧を表す。また、フィルファクターとは最大出力(電流と電圧の積)を、短絡電流密度と開放電圧の積で割った値であり、主に内部抵抗に左右される。光電変換効率は、最大出力(W)を1cm2あたりの光強度(W)で割った値に100を乗じてパーセント表示した値として求められる。
【0123】
本発明の光電変換素子は、太陽電池や各種光センサーなどに応用できる。本発明の太陽電池はペロブスカイト型太陽電池であると好ましく、ペロブスカイト型太陽電池は、前記一般式(1)で表される化合物を含有する正孔輸送材料を正孔輸送層として含む光電変換素子がセルとなり、そのセルを必要枚数配列してモジュール化し、所定の電気配線を設けることによって得られる。
【0124】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内で適宜変更してもよい。
【実施例0125】
以下、本発明を実施例により図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、合成実施例において得られた化合物の同定は、1H-NMR(日本電子株式会社製核磁気共鳴装置、JNM-ECZ400S/L1型)により行った。
【0126】
[合成実施例1]化合物(A-1)の合成
反応容器に上記一般式(3)で表される4,7-ジブロモ-2,1,3-ベンゾチアジアゾール(1.0g、東京化成社製)、下記式(9)の化合物(3.10g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.20g、東京化成社製)、炭酸カリウム(1.65g、関東化学社製)、ジメチルホルムアミド(25mL)、水(5.0mL)を投入し、減圧下、脱気を行った。アルゴン雰囲気下、2時間加熱還流下で撹拌した。反応終了後、水(400mL)へ投入し、トルエン(800mL)を用いて抽出した。分液した有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、これをろ過して得たろ液を減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラム(トルエン)で精製し、精製物フラクションを減圧濃縮した。得られた固体をクロロホルム/シクロヘキサンで再結晶し、減圧乾燥することで、下記式(10)の化合物を赤色固体(収量:2.26g、収率:88%)として得た。
【0127】
1H-NMR(400MHz、DMSO-d6):δ(ppm)=3.70-3.76(12H)、6.84-6.86(4H)、6.92(8H)、7.03-7.11(8H)、7.78-7.84(6H)。
【0128】
【0129】
反応容器に上記式(10)の化合物(0.20g)、トルエン(10mL)を投入し、容器内を不活性ガスで置換した。反応液に水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(65%トルエン溶液、0.770g、関東化学社製)を滴下して投入し、2時間加熱還流下で撹拌した。反応液へ水(20mL)を投入して反応を停止し、反応液を水(100mL)へ投入した。クロロホルム(100mL)を用いて分液抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水した後、ろ過したろ液を減圧濃縮した。濃縮物にトルエン(10mL)、イサチン(0.040g、東京化成社製)、パラトルエンスルホン酸一水和物(0.10g、関東化学社製)を投入し、4時間加熱還流下で撹拌した。反応液へ炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(20mL)を投入して反応を停止し、反応液を水(150mL)へ投入した。トルエン(200mL)を用いて分液抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水した後、ろ過して得たろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(トルエン)で精製し、精製物フラクションを減圧濃縮した。得られた固体をテトラヒドロフラン/メタノールで再結晶し、減圧乾燥することで、下記式(A-1)の化合物をオレンジ色固体(収量:0.140g、収率:68%)として得た。
【0130】
【0131】
[合成実施例2]化合物(A-12)の合成
反応容器に上記式(A-1)の化合物(0.15g)、ジメチルホルムアミド(5.0mL)、水素化ナトリウム(純度55%、0.024g)を投入し、室温(±25℃)で1時間攪拌した。反応液へ2,4-ブタンスルトン(38μL、富士フィルム和光純薬社製)を滴下し、2時間90℃で加熱撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧濃縮することで留去し、得られた残渣をトルエンに溶かし、ろ過して得たろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をメタノールで分散洗浄した後、ろ取した固体を減圧乾燥することで下記式(A-12)をオレンジ色固体(収量:0.066g、収率:37%)として得た。
【0132】
1H-NMR(400MHz、DMSO-d6):δ(ppm)=1.09-1.13(3H)、1.78(1H)、2.26-2.34(2H)、3.73(12H)、4.48(2H)、6.88-6.96(13H)、7.11(8H)、7.32-7.36(1H)、7.71(7H)、7.82(1H)、8.21(1H)。
【0133】
【0134】
[合成実施例3]化合物(A-2)の合成
反応容器に上記式(A-1)の化合物(0.10g)、ジメチルホルムアミド(3.0mL)、炭酸セシウム(0.087g、キシダ化学社製)、ヨードエタン(0.025mL、富士フィルム和光純薬社製)を投入し、70℃で2時間攪拌した。反応終了後、水(20mL)を投入し、析出した固体を吸引ろ過で回収した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(トルエン:酢酸エチル=5:1)で精製し、精製物フラクションを減圧濃縮した。得られた固体をメタノールで分散洗浄した後、ろ取した固体を減圧乾燥することで下記式(A-2)をオレンジ色固体(収量:0.090g、収率:87%)として得た。
【0135】
1H-NMR(400MHz、DMSO-d6):δ(ppm)=1.41(3H)、3.77(12H)、4.45(2H)、6.92(4H)、6.97(8H)、7.15(8H)、7.38(1H)、7.72(2H)、7.74-7.80(5H)、7.86(1H)、8.25(1H)。
【0136】
【0137】
[合成実施例4]化合物(A-3)の合成
反応容器に上記式(A-1)の化合物(0.10g)、トルエン(3.0mL)、4-ブロモアニソール(0.016mL、東京化成工業社製)を投入し、20分間アルゴンバブリングを行った。反応液へナトリウムtert-ブトキシド(0.023g、関東化学社製)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.008g、東京化成社製)、トリ-tert-ブチルホスフィン(0.010g、富士フィルム和光純薬社製)を投入し、105℃で4時間加熱撹拌した。反応終了後、水(30mL)、酢酸エチル(20mL)を用いて分液抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水した後、ろ過して得たろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(トルエン:酢酸エチル=20:1)で精製し、精製物フラクションを減圧濃縮した。得られた固体をメタノールで分散洗浄した後、ろ取した固体を減圧乾燥することで下記式(A-3)を黄色固体(収量:0.105g、収率:93%)として得た。
【0138】
1H-NMR(400MHz、DMSO-d6):δ(ppm)=3.74(6H)、3.75(6H)、3.83(3H)、6.80(2H)、6.90(2H)、6.95(8H)、7.05(4H)、7.11(2H)、7.14(4H)、7.42(1H)、7.59(1H)、7.63(2H)、7.70-7.75(6H)、7.82(1H)、8.29(1H)。
【0139】
【0140】
[合成実施例5]化合物(A-4)の合成
反応容器に上記式(A-1)の化合物(0.10g)、トルエン(3.0mL)、4-ブロモピリジン塩酸塩(0.072mg、Alfa Aesar社製)を投入し、20分間アルゴンバブリングを行った。反応液へナトリウムtert-ブトキシド(0.023g、関東化学社製)を投入した。続いて、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.005g、東京化成社製)、トリ-tert-ブチルホスフィン(0.007g、富士フィルム和光純薬社製)を1時間毎、4回に分けて投入し、4時間105℃で加熱撹拌した。反応終了後、水(30mL)、酢酸エチル(20mL)を用いて分液抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水した後、ろ過して得たろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製し、精製物フラクションを減圧濃縮した。得られた固体をメタノールで分散洗浄した後、ろ取した固体を減圧乾燥することで下記式(A-4)をオレンジ色固体(収量:0.054g、収率:49%)として得た。
【0141】
1H-NMR(400MHz、DMSO-d6):δ(ppm)=3.80(6H)、3.82(6H)、6.94(2H)、6.98-7.00(10H)、7.10(4H)、7.18(4H)、7.53(1H)、7.66(2H)、7.78(3H)、7.85(1H)、7.90(2H)、7.97(2H)、8.35(1H)、8.74(2H)。
【0142】
【0143】
[実施例1]光電変換素子の作製および電流-電圧特性評価
FLAT ITO膜付きガラス(導電性支持体1、ジオマテック社製)をイソプロピルアルコールで超音波洗浄後、UVオゾン処理した。
相対湿度10%RH以下の乾燥雰囲気下にて、Tin(IV) oxide,15% in H2O colloidal dispersion(Alfa Aesar社製)と精製水を体積比で1:7とした酸化スズ分散液(電子輸送層用塗布液)をITO膜上にスピンコートした。その後、ホットプレートで150℃にて30分加熱することで膜厚が約20nmの酸化スズ層(電子輸送層2)を形成した。
【0144】
相対湿度10%RH以下の乾燥雰囲気下にて、ホルムアミジンよう化水素酸塩(1M、東京化成工業社製)、よう化鉛(II)(1.1M、東京化成工業社製)、メチルアミン臭化水素酸塩(0.2M、東京化成工業社製)、および臭化鉛(II)(0.2M、東京化成工業社製)を、ジメチルホルムアミドとジメチルスルホキシドを体積比で4:1とした混合溶媒に溶解させた。そこへよう化セシウム(1.5M、東京化成工業社製)のジメチルスルホキシド溶液を、セシウムの仕込み量が組成比で5%となるよう添加し、ペロブスカイト前駆体溶液を調製した。
相対湿度10%RH以下の乾燥雰囲気下にて、調製したペロブスカイト前駆体溶液を酸化スズ層上に滴下、スピンコートし、スピンコート中にクロロベンゼンを0.35mL滴下することでペロブスカイト前駆体を製膜した。その後、ホットプレートを用いて100℃で1時間加熱することで、膜厚が約500nmのCs(MAFA)Pb(IBr)3層(光電変換層3)を形成した。
【0145】
相対湿度10%RH以下の乾燥雰囲気下にて、ドーパントとしてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを1.8Mの濃度でアセトニトリルに溶解させ、ドーパント溶液とした。また、合成実施例1で得た正孔輸送材料である化合物(A-1)を50mMの濃度でクロロベンゼンに溶解させた。そこへ化合物(A-1)に対してビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムが0.5当量となるようドーパント溶液を添加した。さらに、化合物(A-1)に対して4-tert-ブチルピリジンが3.3当量となるよう添加し、正孔輸送層用塗布溶液とした。
相対湿度10%RH以下の乾燥雰囲気下にて、Cs(MAFA)Pb(IBr)3層(光電変換層3)上に正孔輸送層用塗布溶液をスピンコートし、膜厚が約200nmの正孔輸送層4を形成した。
【0146】
正孔輸送層上に、真空蒸着法にて真空度1×10-4Pa程度で、金を80nm程度製膜することで金電極(対極5)を形成し、光電変換素子を作製した。
【0147】
白色光照射装置(分光計器株式会社製、OTENTO-SUN SH型)で発生させた疑似太陽光(AM1.5、1000W/m2)を前記光電変換素子の導電性支持体側から照射し、ソースメータ(KEITHLEY社製、Model 2400 Series SourceMeter)を用いて電流-電圧特性を測定することで初期光電変換効率を得た。得られた初期光電変換効率を表1に示す。
【0148】
[実施例2]
化合物(A-1)に代えて化合物(A-12)を30mMの濃度で100℃にてクロロベンゼンに溶解させ、スピンコートしたこと以外は実施例1と同様に光電変換素子を作製した。実施例1と同様に電流-電圧特性を測定することで初期光電変換効率を得た。得られた初期光電変換効率を表1に示す。
【0149】
電流-電圧特性の測定後、窒素雰囲気下のグローブボックスにて、前記光電変換素子をチャック付きラミネート袋(株式会社生産日本社、AL-8)に封入した。封入した光電変換素子を真空定温乾燥器(東京理科器械、VOS-310C)に入れ、85℃で1,000時間保管し、疑似太陽光照射下において再び電流-電圧特性を測定することで加熱1,000時間後の光電変換効率を得た。加熱1,000時間後の光電変換効率を表2に示す。
【0150】
得られた初期光電変換効率と加熱1,000時間後の光電変換効率を用いて、下記式(a-1)より算出した保持率(%)を表2に示す。
【0151】
【0152】
[比較例1]
化合物(A-1)に代えて上記式(B-1)で表される標準的な正孔輸送材料のSpiro-OMeTAD(Sigma-Aldrich社製)を70mMの濃度でクロロベンゼンに溶解させ使用したこと以外は実施例2と同様に光電変換素子を作製した。実施例2と同様に電流-電圧特性を測定することで初期光電変換効率、および加熱1,000時間後の光電変換効率を得た。得られた初期光電変換効率を表1に、加熱1,000時間後の光電変換効率を表2に示す。また、得られた初期光電変換効率と加熱1,000時間後の光電変換効率を用いて式(a-1)より算出した保持率(%)を表2に示す。
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
表1の結果から、本発明のインドロキノキサリン骨格を有する化合物(A-1)を正孔輸送材料として用いた光電変換素子が、標準的な正孔輸送材料を用いた光電変換素子と比較して優れた光電変換効率を示すことがわかる。また、表2の結果から、本発明のインドロキノキサリン骨格を有する化合物(A-12)を正孔輸送材料として用いた光電変換素子は十分な光電変換効率を示し、かつ、標準的な正孔輸送材料を用いた光電変換素子と比較して優れた耐熱性を示すことがわかる。
本発明によるインドロキノキサリン骨格を有する化合物は、該化合物を正孔輸送材料として用いることにより、良好な光電変換効率を有する光電変換素子として太陽光エネルギーを電気エネルギーへと効率良く変換でき、太陽電池としてクリーンエネルギーを提供することが可能である。