(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130919
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】芯補充機構及び芯補充機構を有するシャープペンシル
(51)【国際特許分類】
B43K 21/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B43K21/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040881
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 成雄
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353FA04
2C353FC13
2C353FE06
(57)【要約】
【課題】芯補充機構の前側芯補充部材の本体部の先端に突設された筒状の突設部を有する構成にすることにより、芯脱落防止構造全体としての芯脱落防止効果を向上することができる芯補充機構及び芯補充機構を有するシャープペンシルを提供することを課題とする。
【解決手段】前側芯補充部材と後側芯補充部材と芯脱落防止部材を備え、前側芯補充部材は、その先端から後端まで挿通する芯挿通孔が形成されており、後側芯補充部材は、前側筒部と後側部を有し、前側筒部の底部は、漏斗形状に形成されていて、その中心部に後側部まで貫通する芯補充孔が形成されており、芯脱落防止部材は、前側芯補充部材の後端部と、後側芯補充部材の前側筒部の底部との間の空間に収納されていて、芯脱落防止部材は球であり、その直径は芯挿通孔の内径及び芯貫通孔の内径より大きく、前側補充部材は、本体部と該本体部の先端に突設された筒状の突設部を有することを特徴とする芯補充機構。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側芯補充部材と後側芯補充部材と芯脱落防止部材を備え、
前側芯補充部材は、その先端から後端まで挿通する芯挿通孔が形成されており、
後側芯補充部材は、前側筒部と後側部を有し、
前記前側筒部の底部は、漏斗形状に形成されていて、その中心部に前記後側部まで貫通する芯補充孔が形成されており、
前記芯脱落防止部材は、前記前側芯補充部材の後端部と、前記後側芯補充部材の前記前側筒部の底部との間の空間に収納されていて、
前記芯脱落防止部材は球であり、その直径は前記芯挿通孔の内径及び前記芯貫通孔の内径より大きく、
前記前側補充部材は、本体部と該本体部の先端に突設された筒状の突設部を有することを特徴とする芯補充機構。
【請求項2】
前記突設部の外周面の先端には、先細り状のテーパー部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載された芯補充機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された芯補充機構を有することを特徴とするシャープペンシル。
【請求項4】
芯タンクを有し、
前記芯補充機構は一体的に前記芯タンクに着脱できるようにユニット化されていることを特徴とする請求項3に記載されたシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯補充機構及び芯補充機構を有するシャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シャープペンシルの芯タンクの後端の芯補充孔からシャープ芯が脱落しないように、芯脱落部防止構造を備えたシャープペンシルが知られている。(特許文献1)
この芯脱落防止構造は、芯タンクの後端部に、細い連通孔を有する芯規制部材と芯ストッパ部材を備え、芯ストッパ部材の先端側は連通孔を軸とする漏斗状部が形成されており、芯規制部材と芯ストッパ部材の間の空間に、球状の芯脱落防止材が収納されている。シャープペンシルの後端側を下向きにすると、芯脱落防止材が漏斗状部を転がって、連通孔を塞ぎ、シャープ芯の脱落を防止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の芯脱落防止構造では、芯規制部材の前端面が若干凸状になっていて、その中心に連通孔が開口した形状になっていて、芯タンクから連通孔にシャープ芯が進入しやすくなっていた。この構成により、芯脱落防止構造全体としての芯脱落防止効果が十分に発揮されないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、芯補充機構の前側芯補充部材の本体部の先端に突設された筒状の突設部を有する構成にすることにより、芯脱落防止構造全体としての芯脱落防止効果を向上することができる芯補充機構及び芯補充機構を有するシャープペンシルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
前側芯補充部材と後側芯補充部材と芯脱落防止部材を備え、前側芯補充部材は、その先端から後端まで挿通する芯挿通孔が形成されており、後側芯補充部材は、前側筒部と後側部を有し、前記前側筒部の底部は、漏斗形状に形成されていて、その中心部に前記後側部まで貫通する芯補充孔が形成されており、前記芯脱落防止部材は、前記前側芯補充部材の後端部と、前記後側芯補充部材の前記前側筒部の底部との間の空間に収納されていて、前記芯脱落防止部材は球であり、その直径は前記芯挿通孔の内径及び前記芯貫通孔の内径より大きく、前記前側補充部材は、本体部と該本体部の先端に突設された筒状の突設部を有することを特徴とする芯補充機構。
【発明の効果】
【0007】
本発明の芯補充機構は、芯補充機構の前側芯補充部材の本体部の先端に突設された筒状の突設部を有する構成にすることにより、芯脱落防止構造全体としての芯脱落防止効果を向上することができる芯補充機構及び芯補充機構を有するシャープペンシルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る実施形態のシャープペンシル1の部分縦断面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の芯補充機構3の縦断面図である。
【
図5】本発明に係る実施形態の芯補充機構3の芯タンク2への取付を説明する図である。
【
図6】本発明に係る実施形態の芯補充機構3の分解図である。
【
図7】本発明に係る実施形態の前側芯補充部材4の斜視図である。
【
図8】本発明に係る実施形態の後側芯補充部材5の前側筒部底部512の切断斜視図である。
【
図9】本発明に係る実施形態のシャープペンシル1へのシャープ芯9の補充を説明する図である。
【
図10】本発明に係る実施形態のシャープペンシル1へのシャープ芯9の補充を説明する図である。
【
図11】本発明に係る実施形態の芯補充機構3を横に傾けた状態の図である。
【
図12】本発明に係る実施形態の芯補充機構3の後端部を下に向けた状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態]
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態のシャープペンシル1を説明する。
以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0010】
[全体構成]
図1は、本実施形態におけるシャープペンシル1の芯タンク2と芯補充機構3の縦断面図であり、シャープペンシル1のおおよその外形を2点鎖線で示している。
なお、シャープペンシル1は、図示していないが、軸筒、芯操出機構などの公知のシャープペンシルが備える各種部材を備えている。
シャープペンシル1の長軸方向を、単に「軸方向」といい、また、軸方向で、シャープ芯9が出没する側を前又は先、その反対側を後という。
【0011】
[芯タンク]
芯タンク2は、芯操出機構(図示していない)の後側に配置されており、複数のシャープ芯9を収納可能な長尺円筒状に形成され、その後端部を、軸筒(図示していない)の後端開口部(図示していない)の近くに配置している。
芯タンク2の内周面の後端には、雌ネジが形成されており、後述する芯補充機構3が取り付けられる。
【0012】
[芯補充機構]
図2は、本発明に係る実施形態の芯補充機構3の縦断面図であり、
図3は
図2のA-A線での横断面図、
図4は
図2のB-B線での横断面図である。
図3、
図4の二点鎖線は、芯脱落防止部材6の外形を示す。
図5は、本発明に係る実施形態の芯補充機構3の芯タンク2への取付を説明する図であり、
図6は芯補充機構3の分解図、
図7は後側芯補充部材5の後側から見た斜視図であり、
図8は前側芯補充部材4の前側筒部底部512部分を一部切断した斜視図である。
芯補充機構3は、前側芯補充部材4、後側芯補充部材5、芯脱落防止部材6、消しゴム7、ノックキャップ8を有する。
芯補充機構3の後端部にはノックキャップ8が取り付けられ、ノックキャップ8の後端側は、ノック操作が可能なように軸筒の後端開口部から後方へ突出している。
そして、ノックキャップ8をノックすることにより、芯操出機構がシャープペンシルの1の先端からシャープ芯9を繰り出し、筆記可能になる。
【0013】
[前側芯補充部材]
前側芯補充部材4は、本体部41と、本体部41の先端に突設された筒状の突設部42と、本体部41の外周面に形成された前側芯補充部材鍔部43を有する。
本体部41の前側芯補充部材鍔部43より前側の外周面には雄ネジが形成されており、芯タンク2の内周面の後端に形成された雌ネジに螺合されることにより、前側芯補充部材4が、芯タンク2に取付られる。なお、芯タンク2と前側芯補充部材4の取り付けは、螺合に限らず、圧入(摩擦による固定)、係合による固定などの公知の他の手段でもよい。
本体部41の前側芯補充部材鍔部43より後側の外周面には、環状溝と環状突起からなる前側芯補充部材係合部411が形成されており、後述する後側芯補充部材5が取り付けられる。また、本体部41の前側芯補充部材鍔部43より後側の外周面には、軸方向に延びる溝部412が形成されており、後述する後側芯補充部材5の係合リブ514と係合する。(
図3、
図7参照)
前側芯補充部材4が芯タンク2に取り付けられた状態で、前側芯補充部材鍔部43の前面は芯タンク2の後端面に当接する。
【0014】
本体部41の後端から、突設部42先端まで挿通する芯挿通孔44が形成されており、芯挿通孔44は、突設部42に対応する箇所に形成された前側芯挿通孔441と、本体部41に対応する箇所に形成された後側芯挿通孔442に分けられる。
前側芯挿通孔441は、シャープ芯9の直径より大きい径を有し、シャープ芯9は、この中を挿通されて、芯タンク2内に補充される。
突設部42は、芯タンク2から芯挿通孔44にシャープ芯9が進入しにくくなるように、細長く形成されている。突設部42の外径は、本体部41の前側芯補充部材鍔部43より前側部分の外径及び芯タンク2の後端部分の内径より小さく形成されていて、芯タンク2の内周面と、突設部42の外周面の間には、複数のシャープ芯9が入り込める程度のスペースが形成されている。(
図11、
図12参照)
突設部42の外周面の先端側には、先細りになるようなテーパー部421が設けられていて、芯タンク2内のシャープ芯9が前側芯挿通孔441内にさらに進入しにくくなっている。
【0015】
後側芯挿通孔442は、内周面に5つの溝4421が形成された形状に形成されている。そして、後側芯挿通孔442の後端は、5つの溝4421の間の5つの突条4422が、本体部41の後端面45よりも突出するように形成されており、5つの突条4422に囲まれた中心部Cの開口は、芯脱落防止部材6の直径より小さくなるように形成されている。これにより、芯脱落防止部材6が後側芯挿通孔442内に進入できないようになっている。(
図7、
図9、
図10参照)
5つの突条4422の頂部を形成する線は、それぞれ、前側芯挿通孔441の内周面と連続するように形成されている。(
図2参照)
5つの溝4421は、本体部41の肉厚を部分的に薄くするために形成されたものであり、前側芯補充部材4の射出成形時の不良を防止することができる。
中心部Cの開口の中心は、前側芯補充部材4の前側芯挿通孔441の軸心、後述する後側芯補充部材5の芯補充孔54等の軸心から少しずれるように形成されている。この構成について、
図3において、2点鎖線で描いた円(芯脱落防止部材6の外形を示す円)の中心が、本体部41の外周を示す円や前側筒部51を示す円の中心とずれていることを参照することができる。また、
図10において、点線で示す後側芯挿通孔442の軸心が、一点鎖線で示す芯補充孔54の軸心とずれていることも参照することができる。
【0016】
[後側芯補充部材]
後側芯補充部材5は、前側部の前側筒部51と、後側部の後側筒部52と、前側筒部51と後側筒部52の境界付近の外周面に形成された後側芯補充部材鍔部53を有する。
前側筒部51は、前端に前側筒部開口511が、後端に前側筒部底部512を有する有底筒形状に形成されている。(
図9参照)
前側筒部51は、内周面に環状溝と環状突起からなる後側芯補充部材係合部513が形成されていて、前側芯補充部材4の本体部41の後端部に外嵌されると、前側芯補充部材4の前側芯補充部材係合部411に係合して、前側芯補充部材4と後側芯補充部材5が固着されるようになっている。(
図2参照)
また、前側筒部51の内周面には、軸方向に延びる係合リブ514が形成されており、前側芯補充部材4の溝部412と係合して、前側芯補充部材4と後側芯補充部材5が軸心周りに相対的に回転することを防止している。(
図3参照)
【0017】
前側芯補充部材4と後側芯補充部材5が固着された状態で、後側芯補充部材5の先端部が、前側芯補充部材4の前側芯補充部材鍔部43の後面に当接するようになっている。
また、前側芯補充部材4と後側芯補充部材5が固着された状態で、前側芯補充部材4の後端部と、後側芯補充部材5の前側筒部底部512の間には、空間Sが生じるようになっていて、この空間Sには、後述するように、芯脱落防止部材6が収納される。
後側芯補充部材5の前側筒部底部512は、漏斗形状に形成されていて、その中心部に後側筒部52の後側筒部底部522まで貫通する芯補充孔54が形成されている。芯補充孔54の、少なくとも前側筒部51側の開口の径は、芯脱落防止部材6の直径よりも小さく形成されている。これにより、芯脱落防止部材6が芯補充孔54内に進入できないようになっている。なお、本実施形態では、前側筒部底部512は、傾斜角度が一定の円錐面、すなわち、母線が直線になる曲面で形成されているが、これに限らず、傾斜角度が段階的及び/又は連続的に変化する円錐面、すなわち、母線が折れ線及び/又は曲線になる曲面であってもよい。
【0018】
後側筒部52は、後端に後側筒部開口521を、前端に後側筒部底部522を有する有底筒形状に形成されており、軸筒の後端の開口から突出するように配置される。
後側筒部52の外側には、ノックキャップ8が外嵌されるようになっており、ノックキャップ8は、後側部分に嵌合された状態で、先端部が後側芯補充部材鍔部53の後面に当接するようになっている。
後側筒部52の内側には、消しゴム7が収納されるようになっている。その内径は、後側筒部開口521側よりも後側筒部底部522側が小さく、後側筒部底部522側の内径が消しゴム7の外径より小さくなっていて、消しゴム7を圧入固定するようになっている。
【0019】
[消しゴム、ノックキャップ]
上述のとおり、後側筒部52の内側には消しゴム7が収納され、外側にはノックキャップ8が外嵌される。
消しゴム7は、公知の円柱状の消しゴムであるが、本実施形態では、軸心に貫通孔71が形成されている。
ノックキャップ8は、前端に開口を、後端に底部を有する有底筒形状に形成されている。ノックキャップ8の後端の底部の軸心には、貫通穴81が形成されている。
これら貫通孔71と貫通穴81は、シャープ芯9を挿通することができるような径で形成されており、消しゴム7、ノックキャップ8を外すことなく、シャープ芯9を補充することができる。消しゴム7、ノックキャップ8に、それぞれ、貫通孔71、貫通穴81が形成されていても、芯脱落防止構造がシャープ芯9の脱落を防止するので、芯タンク2からシャープ芯9が脱落することはない。
さらに、貫通孔71、貫通穴81を、乳幼児などが消しゴム7、ノックキャップ8を誤飲して喉に詰まったときでも呼吸を可能にするための通気路として機能するような径で形成すると、安全性を向上することができる。
【0020】
[ユニット化]
前側芯補充部材4、後側芯補充部材5、芯脱落防止部材6、消しゴム7、ノックキャップ8を有する芯補充機構3は、一体的に芯タンク2に着脱できるように、ユニット化されている。
すなわち、上述のとおり、後側芯補充部材5は、前側芯補充部材4の後端部に外嵌され、後側芯補充部材係合部513が前側芯補充部材係合部411に係合して、前側芯補充部材4に固着され、また、消しゴム7は後側筒部52に収納され、ノックキャップ8は後側筒部52に外嵌されることにより、ユニット化されている。
このユニット化された芯補充機構3は、前側芯補充部材4の本体部41の外周面に形成された雄ネジと、芯タンク2の後端に形成された雌ネジにより、一体的に、芯タンク2に着脱可能になっている。(
図5参照)
この構成により、芯タンク2に一度に多くのシャープ芯9を補充したいとき、芯タンク2内や芯補充機構3に芯詰まりなどの不具合が生じたときなどに、芯補充機構3全体を一体的に芯タンク2から容易に着脱することができ、シャープペンシル1の芯補充性、メンテナンス性が向上する。
【0021】
また、上述のとおり、前側芯補充部材4の溝部412と後側芯補充部材5の係合リブ514が係合しており、前側芯補充部材4と後側芯補充部材5が軸心周りに相対的に回転しないように組み立てられており、後側芯補充部材5を回転すると、前側芯補充部材4も回転する。すると、芯タンク2とユニット化された芯補充機構3の着脱の際、軸筒の後端の開口から突出している後側芯補充部材5を軸筒に対して回転するだけで、芯補充機構3を芯タンク2に着脱することができる。(なお、芯タンク2は、別途、軸筒に対して、軸心周りに回転しないように固定されている。)
【0022】
なお、芯補充機構3に、消しゴム7、ノックキャップ8は必須のものではない。本実施形態では、芯補充機構3は芯脱落防止構造を有しており、消しゴム7、ノックキャップ8がなくても、シャープ芯9は芯タンク2から脱落しない。ただし、消しゴム7、ノックキャップ8の両方がない場合は、後側芯補充部材5の後端部をノックすることにより、シャープ芯9をシャープペンシル1の先端から突出させることになるので、後側芯補充部材5の後側部の配置、形状などの設計に際して、ノック操作の操作性を考慮する必要がある。そして、この場合、後側芯補充部材5の後側部は、後側筒部52のような筒状である必要はなく、ノック操作と芯補充ができるような形状であればよい。
【0023】
[芯脱落防止構造]
芯脱落防止構造は、前側芯補充部材4の本体部41の後端部、後側芯補充部材5の前側筒部底部512、これら2つの間の空間S、芯脱落防止部材6を有する。
芯脱落防止部材6は、金属や樹脂などで形成した球である。
前側芯補充部材4の本体部41の後端部は、上述のとおり、後側芯挿通孔442の後端が開口しており、後側芯挿通孔442の5つの突条4422に囲まれた中心部Cの開口は、芯脱落防止部材6の直径より小さくなるように形成されている。
後側芯補充部材5の前側筒部底部512は、上述のとおり、漏斗形状に形成されていて、芯補充孔54は、芯脱落防止部材6の直径より小さくなるように形成されている。
空間Sに収納された芯脱落防止部材6は、中心部Cの開口と芯補充孔54に進入することができないため、空間S内に閉じ込められている。
そして、前側筒部底部512の漏斗形状の内周面には、軸方向に延びるガイドリブ5121が複数形成されている。
複数のガイドリブ5121は、それぞれ、その芯補充孔54側の端部が、芯補充孔54上に位置する芯脱落防止部材6の表面と接触する位置又はこの接触位置よりも前側筒部開口511側に位置するように形成されている。
【0024】
[芯の補充]
図9、
図10は、本発明に係る実施形態のシャープペンシル1へのシャープ芯9の補充を説明する図であり、
図9は、芯脱落防止部材6が中心部Cの開口からずれた状態の図、
図10は、芯脱落防止部材6が中心部Cの開口上に位置する状態の図である。
上述のとおり、本実施形態では、消しゴム7、ノックキャップ8に、それぞれ、貫通孔71、貫通穴81が形成されているので、消しゴム7、ノックキャップ8を外さなくても、芯タンク2にシャープ芯9を補充することができる。なお、ノックキャップ8の貫通穴81、消しゴム7の貫通孔71、後側芯補充部材5の芯補充孔54の軸心は、一直線上に位置するように形成されている。
上述のとおり、前側芯補充部材4の後側芯挿通孔442の中心部Cの開口は、本体部41の後端面45よりも突出しているので、シャープペンシル1を普通に使用していると、シャープペンシル1が傾いたり、揺れたりすることにより、芯脱落防止部材6は、中心部Cの開口からずれた箇所に位置していることが多くなる。この状態では、シャープ芯9をノックキャップ8の貫通穴81から挿入していくと、中心部Cの開口を介して、芯タンク2内に挿入して、補充することができる。
【0025】
しかし、芯脱落防止部材6が中心部Cの開口上に位置している場合もあり得る。このように、芯脱落防止部材6が中心部Cの開口を塞いでいる状態でも、シャープ芯9をノックキャップ8の貫通穴81から挿入していくと、シャープ芯9が芯脱落防止部材6上面の曲面を押圧するため、芯脱落防止部材6を横に移動させる力(
図10の矢印参照)が作用する。すると、芯脱落防止部材6が中心部Cの開口から移動して、シャープ芯9を、中心部Cの開口を介して、芯タンク2内に挿入して、補充することができる。
また、中心部Cの開口は、後側芯補充部材5の芯補充孔54等の軸心から少しずれているため、シャープ芯9がこれらの軸心に沿って挿入された場合でも、芯脱落防止部材6を横に移動させる力が作用して、芯脱落防止部材6を移動させることができる。
また、芯脱落防止部材6が中心部Cの開口を塞いでいて、シャープ芯9が挿入できない場合、シャープペンシル1を少し揺らしたり、傾けたりすれば、芯脱落防止部材6が中心部Cの開口から移動するため、シャープ芯9を、中心部Cの開口を介して、芯タンク2内に挿入して、補充することができる。
【0026】
[脱落防止動作]
図11は、本発明に係る実施形態の芯補充機構3を横に傾けた状態の図であり、
図12は、本発明に係る実施形態の芯補充機構3の後端部を下に向けた状態の図である。
図11に示すように、シャープペンシル1を横に傾けると、シャープ芯9は、芯タンク2内を滑って、前側芯補充部材4の突設部42の外周面と芯タンク2の内周面との間のスペースに入り込む。このまま、シャープペンシル1を上下逆に逆立ちさせても、シャープ芯9は前側芯補充部材4の前側芯挿通孔441へ進入しないので、シャープ芯9が芯タンク2から外部へ脱落することはない。
このように、前側芯補充部材4の先端側に細長く形成された突設部42の存在により、前側芯補充部材4の前側芯挿通孔441へのシャープ芯9の進入が妨げられるので、芯タンク2からのシャープ芯9の脱落を抑止することができる。
【0027】
上述のように、突設部42により、シャープ芯9が前側芯挿通孔441へ進入することが抑止されるものの、シャープ芯9の前側芯挿通孔441への進入を完全に防止できるわけではない。
しかし、シャープペンシル1をある程度の角度で後端側が下向きになるように傾けると、球である芯脱落防止部材6が、後側芯補充部材5の前側筒部底部512の漏斗形状の内周面を転がり、芯補充孔54を塞ぐ。このまま、シャープペンシル1を逆立ちさせても、芯脱落防止部材6が、芯補充孔54へのシャープ芯9の進入を防ぐので、シャープ芯9の芯タンク2からの脱落が防止される。
球である芯脱落防止部材6が、後側芯補充部材5の前側筒部底部512の漏斗形状の内周面を芯補充孔54に向けて転がる際、芯脱落防止部材6に芯タンク2の径方向の力が加わるため、芯脱落防止材が漏斗状部の円錐面を周回しようとする。しかし、本実施形態では、前側筒部底部512の漏斗形状の内周面に、軸方向に延びるガイドリブ5121が形成されているから、芯脱落防止部材6の漏斗状部の円錐面を周回しようとする動作が抑制されて、芯脱落防止部材6は芯補充孔54を速やかに塞ぐことができる。
【0028】
また、ガイドリブ5121の芯補充孔54側の端部が、芯補充孔54上に位置する芯脱落防止部材6の表面と接触する位置又はこの接触位置よりも前側筒部開口511側に位置するように形成されていることにより、ガイドリブ5121の芯補充孔54側の端部が芯補充孔54の開口で跳ね返ろうとする芯脱落防止部材6に当接して、芯脱落防止部材6の芯補充孔54の開口での跳ね返りを抑制したり、ガイドリブ5121の芯補充孔54側の端部が芯補充孔54の開口で跳ね返った芯脱落防止部材6に当接して、大きく跳ね返ることを抑制したりすることができる。
このため、本実施形態では、芯脱落防止部材6が芯補充孔54を塞ぐ前に、シャープ芯9が芯補充孔54に進入して芯タンク2から脱落することを、より確実に防止することができる。
【0029】
以上、本発明に係る実施形態のシャープペンシル1を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1 シャープペンシル
2 芯タンク
3 芯補充機構
4 前側芯補充部材
41 本体部
411 前側芯補充部材係合部
412 溝部
42 突設部
421 テーパー部
43 前側芯補充部材鍔部
44 芯挿通孔
441 前側芯挿通孔
442 後側芯挿通孔
4421 溝
4422 突条
45 後端面
5 後側芯補充部材
51 前側筒部
511 前側筒部開口
512 前側筒部底部
5121 ガイドリブ
513 後側芯補充部材係合部
514 係合リブ
52 後側筒部
521 後側筒部開口
522 後側筒部底部
53 後側芯補充部材鍔部
54 芯補充孔
6 芯脱落防止部材
7 消しゴム
71 貫通孔
8 ノックキャップ
81 貫通穴
9 シャープ芯
C 中心部
S 空間