(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130927
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物及び接着構造体
(51)【国際特許分類】
C08L 71/02 20060101AFI20240920BHJP
C08K 5/12 20060101ALI20240920BHJP
C09J 171/02 20060101ALI20240920BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240920BHJP
C09K 3/10 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
C08L71/02
C08K5/12
C09J171/02
C09J11/06
C09K3/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040895
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】小川 彰
(72)【発明者】
【氏名】矢野 理子
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB15
4H017AC17
4H017AD02
4H017AE03
4J002CD052
4J002CD062
4J002CH051
4J002EH146
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD026
4J002FD040
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD340
4J002GG02
4J002GH01
4J002GJ00
4J002GJ01
4J002GJ02
4J002GL00
4J002GN00
4J040EE021
4J040GA31
4J040HB34
4J040HD30
4J040HD36
4J040HD42
4J040JB04
4J040KA05
4J040KA14
4J040KA25
4J040KA26
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA42
4J040MA06
4J040NA12
(57)【要約】
【課題】種々の基材との良好な接着性を示す硬化物を与える硬化性組成物、前述の硬化性組成物の硬化物、及び前述の硬化物を含む接着構造体を提供すること。
【解決手段】硬化性組成物に、末端に反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)、及び特定の構造のフタル酸エステル(B)を特定の比率で組み合わせて加える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)、及びフタル酸エステル(B)を含み、
前記ポリオキシアルキレン系重合体(A)が、分子鎖の末端に下記式(1):
-SiR1
3-aXa (1)
(式(1)中、R1は置換、又は非置換の炭素原子数1~20の炭化水素基、又はR0
3SiO-で表わされるトリオルガノシロキシ基を示し、3個のR0は、炭素原子数1~20の炭化水素基であり、それらは同じでもよく、異なっていてもよく、
Xは水酸基又は加水分解性基を示し、
aは1、2、又は3であり、
R1、Xのそれぞれについて、それらが複数存在するとき、それらは同じでもよく、異なっていてもよい。)
で表される反応性ケイ素基を有し、
前記フタル酸エステル(B)が、その構造中にシクロヘキサン環を有し、
前記フタル酸エステル(B)の含有量が、前記ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、30~200重量部である、硬化性組成物。
【請求項2】
前記フタル酸エステル(B)の含有量が、前記ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、40~100重量部である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記フタル酸エステル(B)が、ジシクロヘキシルフタレート、及び/又はジ(メチルシクロヘキシル)フタレートを含む、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
可塑剤として、前記フタル酸エステル(B)以外のフタル酸エステル、フタル酸エステルの水添化合物、及びポリオキシアルキレン系化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含む請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の硬化性組成物を硬化させた硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物と、前記硬化物に接着している被接着物とを含む接着構造体。
【請求項7】
1以上の前記硬化物と、2以上の前記被接着物とを含み、前記硬化物のうちの少なくとも1つが、2以上の前記被接着物と接着している、請求項6に記載の接着構造体。
【請求項8】
前記被接着物が、モルタル、又はコンクリートからなる請求項6に記載の接着構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端に反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、特定の構造のフタル酸エステルとを特定の比率で含む硬化性組成物、前述の硬化性組成物の硬化物、及び前述の硬化物を含む接着接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
分子中に少なくとも1個の反応性ケイ素基を有する有機重合体は、室温においても湿分等によるシリル基の加水分解反応等を伴うシロキサン結合の形成によって架橋し得る。反応性ケイ素基を有する有機重合体がかかる架橋反応によってゴム状硬化物を与える性質を有することが知られている。
【0003】
これらの反応性ケイ素基を有する有機重合体として、主鎖構造がポリオキシアルキレンやポリアクリル酸エステル、ポリイソブチレンである有機重合体は、既に工業的に生産され、シーリング材、接着剤、塗料、防水材等の用途に広く使用されている。具体的には、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアクリレート、ポリスルフィド、シリル化ポリウレタン、シリル化ポリウレア、シリル化ポリエーテル、シリル化ポリスルフィド、及びシリル末端化アクリレートの群から選択される少なくとも1つの化合物と、特定量の2-エチルヘキシル-メチルテレフタレートとを含有する接着剤、又は封止剤(シーリング材)が提案されている(特許文献1を参照)。
【0004】
反応性ケイ素基を有する有機重合体をシーリング材、接着剤、塗料、防水材等の硬化性組成物として使用する場合、硬化性や接着性、作業性、硬化物の機械特性、防水性等種々の特性が硬化性組成物に要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1等に記載される組成物を、接着剤やシーリング剤として使用する場合、組成物の硬化物が、種々の基材、特に、硬質塩化ビニル樹脂、モルタル、及びコンクリートのような基材に対して、必ずしも良好な接着性を示さない問題がある。
【0007】
したがって、本発明は、上記の問題を解決するために、種々の基材との良好な接着性を示す硬化物を与える硬化性組成物、前述の硬化性組成物の硬化物、及び前述の硬化物を含む接着構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題を解決するために、硬化性組成物に、末端に反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)、及び特定の構造のフタル酸エステル(B)を特定の比率で組み合わせて加えることにより上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、
ポリオキシアルキレン系重合体(A)、及びフタル酸エステル(B)を含み、
ポリオキシアルキレン系重合体(A)が、分子鎖の末端に下記式(1):
-SiR1
3-aXa (1)
(式(1)中、R1は置換、又は非置換の炭素原子数1~20の炭化水素基、又はR0
3SiO-で表わされるトリオルガノシロキシ基を示し、3個のR0は、炭素原子数1~20の炭化水素基であり、それらは同じでもよく、異なっていてもよく、
Xは水酸基又は加水分解性基を示し、
aは1、2、又は3であり、
R1、Xのそれぞれについて、それらが複数存在するとき、それらは同じでもよく、異なっていてもよい。)
で表される反応性ケイ素基を有し、
フタル酸エステル(B)が、その構造中にシクロヘキサン環を有し、
フタル酸エステル(B)の含有量が、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、30~200重量部である、硬化性組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、種々の基材との良好な接着性を示す硬化物を与える硬化性組成物、前述の硬化性組成物の硬化物、及び前述の硬化物を含む接着構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
≪硬化性組成物≫
硬化性組成物は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)、及びフタル酸エステル(B)を含む。
ポリオキシアルキレン系重合体(A)が、分子鎖の末端に下記式(1):
-SiR1
3-aXa (1)
(式(1)中、R1は置換、又は非置換の炭素原子数1~20の炭化水素基、又はR0
3SiO-で表わされるトリオルガノシロキシ基を示し、3個のR0は、炭素原子数1~20の炭化水素基であり、それらは同じでもよく、異なっていてもよく、
Xは水酸基又は加水分解性基を示し、
aは1、2、又は3であり、
R1、Xのそれぞれについて、それらが複数存在するとき、それらは同じでもよく、異なっていてもよい。)
で表される反応性ケイ素基を有する。
フタル酸エステル(B)は、その構造中にシクロヘキサン環を有する。
フタル酸エステル(B)の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、30~200重量部である。
また、硬化性組成物は、必要に応じて、種々のその他の添加剤を含む。
【0013】
以下、硬化性組成物が含み得る、必須、又は任意の成分について説明する。
【0014】
<ポリオキシアルキレン系重合体(A)>
ポリオキシアルキレン系重合体(A)(以下、単に「重合体(A)」という場合がある。)は、分子鎖の末端に上記式(1)で表される反応性ケイ素基を有する。重合体(A)は、重合体骨格と、該重合体骨格に結合した高分子鎖末端を有する。本出願の明細書、及び特許請求の範囲において、重合体骨格を「主鎖構造」ともいう。重合体骨格は、モノマーに由来する複数の構成単位が連続して結合した構造のことである。モノマーは1種類であっても複数種類であってもよい。
【0015】
高分子鎖末端とは、重合体(A)の末端に位置する部位である。重合体(A)の高分子鎖末端の数は、主鎖構造が直鎖状の場合、2であり、重合体骨格が分岐鎖状の場合、3以上である。重合体(A)が、直鎖状の主鎖構造を有する重合体と、分岐鎖状の主鎖構造を有する重合体との混合物である場合、高分子鎖末端の数は、平均値として2と3との間の数値である。
【0016】
反応性ケイ素基は、重合体骨格中及び高分子鎖末端中に存在しうる。また、高分子鎖末端中に2個以上の反応性ケイ素基が存在し得る。接着剤、シーリング材、弾性コーティング剤や粘着剤等に硬化性組成物を使用する場合には、重合体(A)において、反応性ケイ素基は、高分子鎖末端中に存在することが好ましい。
【0017】
<反応性ケイ素基>
反応性ケイ素基は、加水分解によりシラノール基を生成させ得る基である。反応性ケイ素基がシラノール基を生成させた場合、重合体(A)が、シラノール基間の縮合反応により架橋される。
前述の通り反応性ケイ素基は、下記式(1)で表される基である。
-SiR1
3-aXa (1)
【0018】
式(1)中、R1は置換、又は非置換の炭素原子数1~20の炭化水素基、又はR0
3SiO-で表わされるトリオルガノシロキシ基を示す。3個のR0は、炭素原子数1~20の炭化水素基であり、それらは同じでもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基又は加水分解性基を示す。aは1、2、又は3である。R1、Xのそれぞれについて、それらが複数存在するとき、それらは同じでもよく、異なっていてもよい。
【0019】
式(1)中のR1の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、及びn-ドデシル基等のアルキル基;ビニル基、イソプロペニル基、及びアリル基等の不飽和炭化水素基;メトキシメチル等のアルコキシメチル基;クロロメチル基等のハロゲン化メチル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トルイル基、及び1-ナフチル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。これらの基の中では、アルキル基、及びアリール基が好ましく、メチル基、エチル基、及びフェニル基がより好ましく、メチル基、及びエチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。式(1)中にR1が複数存在する場合、複数のR1は、同一の基であってよく、2種類以上の異なる基の組み合わせであってもよい。
【0020】
式(1)中のXは、水酸基、又は加水分解性基である。加水分解性基としては、特に限定されず、公知の加水分解性基であってよい。加水分解性基の具体例としては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、及びアルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの中では、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、及びアルケニルオキシ基が好ましく、加水分解性が穏やかで取扱いやすいことからメトキシ基、及びエトキシ基等のアルコキシ基がより好ましい。メトキシ基は硬化性組成物の硬化性の調整が容易な点から好ましい。
【0021】
式(1)で表される反応性ケイ素基としては、特に限定されない。式(1)で表される反応性ケイ素基の具体例としては、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシフェニルシリル基、メトキシメチルジメトキシシリル基、メトキシメチルジエトキシシリル基、トリイソプロペニロキシシリル基、及びトリアセトキシシリル基等が挙げられる。これらの中では、ジメトキシメチルシリル基、及びトリメトキシシリル基が、重合体(A)の合成が容易であることから好ましい。トリメトキシシリル基、及びメトキシメチルジメトキシシリル基は、硬化性に優れる点から好ましい。ジメトキシメチルシリル基は安定性に優れる点から特に好ましい。
【0022】
(重合体(A)の主鎖構造について)
重合体(A)はポリオキシアルキレン系重合体である。このため、重合体の主鎖構造は、ポリオキシアルキレン重合体からなる。重合体(A)の主鎖構造としては、具体的には、ポリオキシエチレン重合体、ポリオキシプロピレン重合体、ポリオキシブチレン重合体、ポリオキシテトラメチレン重合体、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体が挙げられる。
【0023】
透湿性が高いことに起因して1液型組成物としての深部硬化性が優れ、さらに接着性にも優れることから、主鎖構造としては、ポリオキシアルキレン系重合体の中でも、ポリオキシプロピレンが好ましい。
【0024】
ポリオキシアルキレン系重合体は、-R3-O-で表される繰り返し単位を有する重合体である。R3は、炭素原子数1~14の直鎖状、又は分岐鎖状のアルキレン基である。R3としては、炭素原子数2~4の直鎖状、又は分岐鎖状のアルキレン基がより好ましい。-R3-O-で表される繰り返し単位の具体例としては、-CH2O-、-CH2CH2O-、-CH2CH(CH3)O-、-CH2CH(C2H5)O-、-CH2C(CH3)(CH3)O-、及び-CH2CH2CH2CH2O-等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖構造は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特に、硬化性組成物がシーラント、接着剤等に使用される場合には、オキシプロピレンの繰り返し単位を重合体主鎖構造の50重量%以上、好ましくは80重量%以上有するポリオキシプロピレン系重合体が、ポリオキシアルキレン系重合体として好ましい。かかるポリオキシアルキレン系重合体が、非晶質であるとともに比較的低粘度であるからである。
【0025】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖構造は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
【0026】
ポリオキシアルキレン系重合体としては、開始剤の存在下、重合触媒を用いて、環状エーテル化合物の開環重合反応により得られる重合体が好ましい。
【0027】
環状エーテル化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの環状エーテル化合物は1種のみ使用されてもよく、2種以上を組合せて使用されてもよい。
これらの環状エーテル化合物の中では、非晶質で比較的低粘度なポリエーテル重合体を得られることから、プロピレンオキシドが特に好ましい。
【0028】
開始剤の具体例としては、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びソルビトール等のアルコール類;ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシエチレントリオール等のポリオキシアルキレン系重合体等が挙られる。
【0029】
ポリオキシアルキレン系重合体の合成方法は特に限定されない。ポリオキシアルキレン系重合体の合成方法としては、例えば、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、特開昭61-215623号公報に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物-ポルフィリン錯体触媒による重合法、特公昭46-27250号公報、特公昭59-15336号公報、米国特許3278457号、米国特許3278458号、米国特許3278459号、米国特許3427256号、米国特許3427334号、及び米国特許3427335号等に示される複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、特開平10-273512号公報に例示されるポリホスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法、及び特開平11-060722号公報に例示されるホスファゼン化合物からなる触媒を用いる重合法等が挙げられる。製造コストが低くいことや、分子量分布の狭い重合体が得られること等の理由から、複合金属シアン化物錯体触媒による重合法がより好ましい。
【0030】
重合体(A)の主鎖構造は、所望する効果が大きく損なわれない範囲で、ウレタン結合、及びウレア結合等のエーテル結合以外の他の結合を含んだポリオキシアルキレン系重合体を用いてもよい。このような主鎖構造を有する重合体の具体例としては、ポリウレタンプレポリマー、及びポリウレアプレポリマーを挙げることができる。
【0031】
ポリウレタンプレポリマーは、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させる方法等の公知の方法により得ることができる。ポリウレアプレポリマーは、ポリアミン化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させる方法等の公知の方法により得ることができる。
ポリオール化合物、及びポリアミン化合物を、ポリイソシアネート化合物と反応させて得られる、ウレタン結合とウレア結合とを組み合わせて有するプレポリマーが主鎖構造であってもよい。
【0032】
ポリオール化合物の具体例としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリエーテルポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0033】
ポリイソシアネート化合物の具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
ポリウレタンプレポリマーの末端は、水酸基、及びイソシアネート基のいずれであってもよい。ポリウレアプレポリマーの末端は、アミノ基、及びイソシアネート基のいずれであってもよい。
【0035】
重合体(A)として、主鎖構造中にウレタン結合、ウレア結合、及びエステル結合から選択される1種以上の結合を有する重合体を含む硬化性組成物の硬化物では、熱等による、主鎖構造中のウレタン結合、ウレア結合、又はエステル結合の開裂により硬化物の強度が低下する場合がある。
【0036】
主鎖構造中にアミド結合を含む重合体を有機重合体として用いる場合、硬化性組成物の硬化性が向上する場合がある。アミド結合は、例えば、-NR4-C(=O)-で表される。R4は、水素原子、又は置換基を有してもよい有機基である。主鎖構造中のアミド結合の量が適切な範囲内であると、重合体の粘度が低く、熱等によるアミド結合の開裂による硬化物の強度低下や、貯蔵による硬化性組成物の粘度上昇が起きにくく、硬化性組成物の作業性が良好である。
【0037】
重合体(A)が主鎖構造中にアミド結合を含む場合、アミド結合の数は、1分子あたりの平均数として、1~10個が好ましく、1.5~5個がより好ましく、2~3個がさらに好ましい。1分子あたりの平均数としてのアミド結合の数がかかる範囲内であると、硬化性組成物の硬化性が良好であり、重合体(A)の粘度が低く、重合体(A)及び硬化性組成物の取り扱いが容易である。
【0038】
以上説明した重合体(A)としては、貯蔵安定性や作業性に優れた硬化性組成物を得るという点から、主鎖構造中に、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合、及び、アミド結合を含まないポリオキシアルキレン系重合体が最も好ましい。
【0039】
重合体(A)としては、下記(a)から(d)のいずれかの方法により反応性ケイ素基を重合体に導入して得られた重合体が好ましい。
(a)水酸基末端有機重合体の末端水酸基を炭素-炭素不飽和基に変換した後、炭素-炭素不飽和基を、HSiR1
3-aXaで表されるヒドロシランによりヒドロシリル化する方法。R1、X、及びaは、それぞれ一般式(1)中のこれらと同様である。
(b)水酸基末端有機重合体の末端水酸基に、OCN-W-SiR1
3-aXaで表されるイソシアネートアルキルシラン化合物を反応させる方法。Wは2価の有機基である。R1、X、及びaは、それぞれ一般式(1)中のこれらと同様である。
(c)水酸基末端有機重合体の末端水酸基を炭素-炭素不飽和基に変換した後、炭素-炭素不飽和基と、HS-W-SiR1
3-aXaで表されるメルカプトアルキルシラン化合物とのエン-チオール反応を行う方法。Wは2価の有機基である。R1、X、及びaは、それぞれ一般式(1)中のこれらと同様である。
(d)水酸基末端有機重合体をポリイソシアネート化合物と反応させてNCO基末端有機重合体を合成した後、末端NCO基を、HNR5-W-SiR1
3-aXa、又はHS-W-SiR1
3-aXaで表されるシラン化合物と反応させる方法。Wは2価の有機基である。R5は水素原子、又はアルキル基である。R1、X、及びaは、それぞれ一般式(1)中のこれらと同様である。
【0040】
上記(a)、及び(c)の方法において、末端の炭素-炭素不飽和基としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アレニル基、及びプロパルギル基等が例示できる。
【0041】
上記(b)~(d)のいずれかの方法において、Wがメチレンであるシラン化合物を用いて得られる重合体(A)は非常に高い硬化性を示す。
【0042】
(a)の方法は、貯蔵安定性が良好である重合体(A)を得やすい点で好ましい。(b)、(c)、及び(d)の方法は、比較的短い反応時間で高い転化率が得られることから好ましい。
【0043】
(a)の方法による反応性ケイ素基の導入方法としては、特公昭45-36319号、同46-12154号、特開昭50-156599号、同54-6096号、同55-13767号、同55-13468号、同57-164123号、特公平3-2450号、米国特許3632557号、米国特許4345053号、米国特許4366307号、及び米国特許4960844号等の各公報に提案されている方法、又は特開昭61-197631号、同61-215622号、同61-215623号、及び同61-218632号の各公報に提案されている数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いポリオキシプロピレン重合体にヒドロシリル化等により反応性ケイ素基を導入する方法や、特開平3-72527号公報に提案されている方法が例示できる。また、反応性ケイ素基を分子末端に1個を超えて導入する方法として、特許第6096320号に提案されている方法が挙げられる。
【0044】
重合体(A)の数平均分子量は、特に限定されない。重合体(A)の数平均分子量は、GPCにおけるポリスチレン換算分子量として、3,000~100,000が好ましく、3,000~50,000がより好ましく、3,000~30,000が特に好ましい。数平均分子量が上記の範囲内であると、反応性ケイ素基の導入量が適度であることにより、製造コストを適度な範囲内に抑えつつ、扱いやすい粘度を有し作業性に優れる重合体(A)を得やすい。
【0045】
反応性ケイ素基導入前の重合体前駆体を、JIS K 1557の水酸基価の測定方法と、JIS K 0070に規定されたよう素価の測定方法の原理に基づいた滴定分析により、直接的に末端基濃度を測定し、重合体の構造(使用した重合開始剤によって定まる分岐度)を考慮して求めた末端基換算分子量として、重合体(A)の分子量を示すことも出来る。重合体(A)の末端基換算分子量は、重合体前駆体の一般的なGPC測定により求めた数平均分子量と上記末端基換算分子量の検量線を作成し、重合体(A)のGPCにより求めた数平均分子量を末端基換算分子量に換算して求めることも可能である。
【0046】
重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されない。重合体(A)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的には、分子量分布は、好ましくは1.6以下であり、より好ましくは1.4以下であり、さらに好ましくは1.3以下であり、特に好ましくは1.2以下である。重合体(A)の分子量分布はGPC測定により得られる数平均分子量と重量平均分子量から求めることが出来る。
【0047】
良好なゴム状硬化物を得るためには、重合体(A)の反応性ケイ素基は、高分子鎖末端に存在することが好ましい。反応性ケイ素基の数は高分子鎖末端あたり平均して0.5個以上かつ3.0個以下であることが好ましく、0.6個以上かつ2.5個以下がより好ましく、0.7個以上かつ2.2個以下がさらに好ましく、0.8個以上かつ2.0個以下が特に好ましい。反応性ケイ素基の数が0.5個以上であると、重合体(A)及び硬化性組成物の硬化性が良好であり、硬化性組成物の硬化物が良好なゴム弾性を有する。
【0048】
1分子中の反応性ケイ素基の数は平均して1~7個が好ましく、1~4個がより好ましく、1~3個が特に好ましい。
【0049】
また、WO2013/180203号公報に記載されるように、高分子鎖末端に2つ以上の反応性ケイ素基を有する有機重合体も重合体(A)として用いることができる。このような重合体(A)は高い硬化性を示し、得られる硬化物が高い強度や高い復元性を有することを期待できる。
【0050】
重合体(A)の市販されている製品の具体例としては、カネカMSポリマー(登録商標)、及びカネカサイリル(登録商標)等の各種反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン製品が挙げられる。これらの市販の重合体(A)は、いずれも株式会社カネカの製品である。またAGC株式会社のエクセスター(登録商標)、WACKER社のGENIOSIL(登録商標)、RISUN POLYMER社のSTP等も使用することができる。
【0051】
<フタル酸エステル(B)>
硬化性組成物は、以下説明するフタル酸エステル(B)を含む。フタル酸エステル(B)は、硬化性組成物において可塑剤として作用する。フタル酸エステル(B)は、その構造中にシクロヘキサン環を有する。
つまり、フタル酸エステル(B)は、フタル酸(o-ベンゼンジカルボン酸)が有する2つのカルボキシ基に含まれる2つの水素原子のうちの少なくとも一方が、シクロヘキサン環を有する有機基で置換された構造を有する。
フタル酸エステル(B)が、フタル酸が有する2つのカルボキシ基に含まれる2つの水素原子の一方のみが、シクロヘキサン環を有する有機基で置換された構造を有する場合、他方の水素原子は、有機基で置換されていても、置換されていなくてもよい。
フタル酸エステル(B)は、フタル酸が有する2つのカルボキシ基に含まれる2つの水素原子の双方が、シクロヘキサン環を有する有機基で置換された構造を有するのが好ましい。
ここで、フタル酸が有する2つのカルボキシ基が有する2つの水素原子がともに有機基で置換されている場合、2つの有機基は、同一であっても異なっていてもよく、同一であるのが好ましい。ただし、2つの有機基のうちの1つは、シクロヘキサン環を有する有機基である。
【0052】
ここで、フタル酸エステル(B)に含まれるシクロヘキサン環は、置換基を有してもよい。シクロヘキサン環に結合する置換基の数は、所望する効果が損なわれない範囲で特に限定されない。シクロヘキサン環に置換基が結合する場合、置換基の数は、1、又は2が好ましく、1がより好ましい。
置換基の好適な例としては、炭素原子数1~3のアルキル基、炭素原子数1~3のアルコキシ基、及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0053】
フタル酸エステル(B)において、上記のシクロヘキサン環を有する有機基の炭素原子数は6~10が好ましく、6~8がより好ましく、6、又は7がさらに好ましい。
【0054】
フタル酸エステル(B)は、フタル酸が有する2つのカルボキシ基に含まれる2つの水素原子のうちの一方だけが、シクロヘキサン環を有する有機基で置換された構造を有する場合、他方の水素原子は、所望する効果が損なわれない範囲で、種々の有機基により置換され得る。
他方の水素原子を置換する有機基としては、炭化水素基が好ましい。炭化水素基の炭素原子数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
炭化水素基としては、アルキル基、シクロヘキシル基以外のシクロアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基、及びアラルキル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。炭化水素基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、ベンジル基、及びフェネチル基が挙げられる。これらの中では、メチル基、及びエチル基が好ましい。
【0055】
シクロヘキサン環を有する有機基の好適な例としては、シクロヘキシル基;2-メチルシクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、2-エチルシクロヘキシル基、3-エチルシクロヘキシル基、及び4-エチルシクロヘキシル基等のアルキルシクロヘキシル基;シクロヘキシルメチル基、2-シクロヘキシルエチル基、及び3-シクロヘキシルプロピル基等のシクロヘキシルアルキル基;2-メチルシクロヘキシルメチル基、3-メチルシクロヘキシルメチル基、及び4-メチルシクロヘキシルメチル基等のアルキルシクロヘキシルアルキル基;シクロヘキシルオキシメチル基、2-シクロヘキシルオキシエチル基、及び3-シクロヘキシルオキシプロピル基等のシクロヘキシルオキシアルキル基;2-メチルシクロヘキシルオキシメチル基、3-メチルシクロヘキシルオキシメチル基、及び4-メチルシクロヘキシルオキシメチル基等のアルキルシクロヘキシルオキシアルキル基が挙げられる。
【0056】
フタル酸エステル(B)の具体例としてはジシクロヘキシルフタレート、ジ(メチルシクロヘキシル)フタレート、フタル酸1-メチル2-シクロヘキシルエステル、フタル酸1-エチル2-シクロヘキシルエステル、フタル酸1-メチル-2-メチルシクロヘキシルエステル、及びフタル酸1-エチル2-メチルシクロヘキシルエステル等が挙げられる。
【0057】
上記のフタル酸エステル(B)の具体例の中では、ジシクロヘキシルフタレート、及びジ(メチルシクロヘキシル)フタレートが好ましく、ジシクロヘキシルフタレートがより好ましい。
特に、フタル酸エステル(B)が、ジシクロヘキシルフタレートを含む場合、硬化物の表面の光沢が抑制される。
例えば、硬化性組成物が建築物においてシーラントとして使用される場合、硬化性組成物がモルタルやコンクリートの周辺部位や、外壁用タイル等の外壁材の隙間等に硬化性組成物が施工され、硬化性組成物の硬化物が形成される。
この場合、光沢のないモルタル、コンクリート、外壁用タイルの周辺部位に、光沢のある硬化物が形成されると、建築物の外観の点で好ましくない。
しかし、フタル酸エステル(B)としてジシクロヘキシルフタレートを含む硬化性組成物を用いると、表面の光沢が抑制された硬化物を形成できる。
【0058】
フタル酸エステル(B)は、異なる2種類以上のフタル酸エステルを組み合わせて含んでいてもよい。
フタル酸エステル(B)の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、30~200重量部が好ましく、40~100重量部がより好ましい。
【0059】
<その他の添加剤>
硬化性組成物は所望する効果が損なわれない範囲で、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及びフタル酸エステル(B)を含む硬化性組成物以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、硬化触媒、充填剤、接着性付与剤、可塑剤、溶剤、希釈剤、チキソ性付与剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、物性調整剤、粘着付与樹脂、エポキシ基を含有する化合物、光硬化性物質、酸素硬化性物質、エポキシ樹脂、その他の樹脂、表面性改良剤、発泡剤、硬化性調整剤、難燃剤、シリケート、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、及び防かび剤等が挙げられる。
【0060】
(硬化触媒)
硬化性組成物は、重合体(A)が有する反応性ケイ素基間の加水分解縮合反応を促進し、重合体を鎖延長又は架橋させる目的で、硬化触媒としてシラノール縮合触媒を含むのが好ましい。
シラノール縮合触媒としては、例えば有機錫化合物、カルボン酸金属塩、アミン化合物、カルボン酸及びアルコキシ金属等が挙げられる。
【0061】
有機錫化合物の具体例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジオクチル錫ジアセチルアセトナート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジオクチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、及びジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等が挙げられる。
【0062】
カルボン酸金属塩の具体例としては、カルボン酸錫、カルボン酸ビスマス、カルボン酸チタン、カルボン酸ジルコニウム、およびカルボン酸鉄等が挙げられる。また、カルボン酸金属塩としては下記のカルボン酸と各種金属を組み合わせた塩を用いることができる。
【0063】
アミン化合物の具体例としては、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、およびステアリルアミン等のアミン類;ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)、及び1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5(DBN)等の含窒素複素環式化合物;グアニジン、フェニルグアニジン、及びジフェニルグアニジン等のグアニジン類;ブチルビグアニド、1-o-トリルビグアニド、及び1-フェニルビグアニド等のビグアニド類;アミノ基含有シランカップリング剤;ケチミン化合物等が挙げられる。
【0064】
カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ネオデカン酸、及びバーサチック酸等が挙げられる。
【0065】
アルコキシ金属の具体例としては、テトラブチルチタネート、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトセテート)等のチタン化合物や、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等のアルミニウム化合物類、並びにジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)等のジルコニウム化合物類が挙げられる。
その他のシラノール縮合触媒としては、フッ素アニオン含有化合物、光酸発生剤、及び光塩基発生剤も使用できる。
シラノール縮合触媒は、異なる2種類以上の触媒を併用して使用してもよい。
シラノール縮合触媒の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、0.001~20重量部が好ましく、0.01~15重量部がより好ましく、0.01~10重量部が特に好ましい。
【0066】
(充填剤)
硬化性組成物には、種々の充填剤が配合されてもよい。充填剤としては、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、及びカーボンブラック等の補強性充填剤;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、及び樹脂粉末等の充填剤;石綿、ガラス繊維、及びフィラメントのような繊維状充填剤等が挙げられる。
樹脂粉末としては、PVC粉末、及びPMMA粉末等が挙げられる。
充填剤を使用する場合、充填剤の使用量は、重合体(A)100重量部に対して1~300重量部が好ましく、10~200重量部がより好ましい。
【0067】
これらの充填剤の使用により強度の高い硬化物を得たい場合には、主にヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー、及び活性亜鉛華等から選ばれる充填剤が好ましく使用できる。
硬化物の強度の点で好ましいこれらの充填剤の使用量は、重合体(A)100重量部に対し、1~200重量部が好ましい。また、低強度で破断伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛、及びシラスバルーン等から選ばれる充填剤が好ましく使用できる。硬化物の破断伸びの点で好ましいこれらの充填剤の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、5~200重量部が好ましい。
【0068】
一般的に、炭酸カルシウムの比表面積の値が大きいほど、硬化物の破断強度、破断伸び、接着性の改善効果は大きい。これらの充填剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。脂肪酸表面処理膠質炭酸カルシウムと、表面処理がされていない重質炭酸カルシウム等の粒径が1μm以上の炭酸カルシウムとを併用できる。
【0069】
硬化性組成物は、硬化物の軽量化(低比重化)の目的でバルーンのような球状中空体を含んでいてもよい。
バルーンとは、内部が中空の球状充填剤である。バルーンの材料としては、ガラス、シラス、及びシリカ等の無機系の材料、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、サラン、及びアクリルニトリル等の有機系の材料が挙げられる。バルーンの材料は、これら材料に限定されない。バルーンの材料は、無機系の材料と有機系の材料とからなる複合材料であってもよい。また、バルーンの材料として、複数の層が積層されていてもよい。また、バルーンは、1種を単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。バルーンの表面は、表面加工されていたり、コーティングされていたり、各種の表面処理剤で処理されていたりしてもよい。例えば、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等でコーティングされた有機系のバルーンや、シランカップリング剤で表面処理された無機系のバルーンを用いることができる。
【0070】
バルーンの粒径は、3μm~200μmであることが好ましく、特に10μm~110μmであることが好ましい。バルーンの粒径が上記の範囲内であると、適度な量のバルーンの使用により所望する程度に硬化物を軽量化でき、表面における凹凸の発生や、伸びの低下を抑制しつつ硬化物を形成できる。
【0071】
バルーンを用いる際には、特開2000-154368号公報に記載されているようなスリップ防止剤、特開2001-164237号公報に記載されているような硬化物の表面を凹凸状態に加えて艶消し状態にするためのアミン化合物を硬化性組成物に添加できる。前述のアミン化合物として、特に融点35℃以上の第一級、及び/又は第二級アミンが好ましい。
【0072】
バルーンの具体例は、特開平2-129262号公報、特開平4-8788号、特開平4-173867号公報、特開平5-1225号公報、特開平7-113073号公報、特開平9-53063号公報、特開平10-251618号、特開2000-154368号公報、特開2001-164237号公報、WO97/05201号等の各公報に記載されている。
【0073】
球状中空体(バルーン)の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、0.01~30重量部が好ましい。下限は0.1重量部がより好ましく、上限は20重量部がより好ましい。上記の範囲内の量の球状中空体を用いると、硬化性組成物の良性が良好であり、伸びと破断強度とに優れる硬化物を形成しやすい。
【0074】
(接着性付与剤)
硬化性組成物は、接着性付与剤を含んでいてもよい。接着性付与剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。
シランカップリング剤は、分子内に加水分解性ケイ素基と、加水分解性ケイ素基以外の官能基とを有する化合物である。シランカップリング剤を使用することで、ガラス、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、銅、及びモルタル等の無機基材や、塩化ビニル、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリカーボネート等の有機基材である各種被着体に、硬化性組成物を適用した場合に、ノンプライマー条件、又はプライマー処理条件下で、著しい接着性改善効果を示す。ノンプライマー条件下で硬化性組成物を使用した場合には、各種被着体に対する接着性を改善する効果が特に顕著である。シランカップリグン剤は、上記の機能の他にも脱水剤、物性調整剤、無機充填材の分散性改良剤等としての機能を奏し得る。
【0075】
シランカップリング剤が有する加水分解性ケイ素基における加水分解性基としては、特に限定されない。加水分解性基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、及びメルカプト基等が挙げられる。これらの中では、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、及びアリールオキシ基が、活性が高い点で好ましい。塩素原子、及びアルコキシ基は、シランカップリング剤への導入が容易であり好ましい。加水分解性が穏やかで取扱いやすいことからメトキシ基、及びエトキシ基等のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、及びエトキシ基が特に好ましい。また、エトキシ基やイソプロペニルオキシ基は、反応により脱離する化合物がそれぞれエタノール、アセトンであり、安全性の点で好ましい。シランカップリング剤中のケイ素原子と結合する加水分解性基の個数は、良好な接着性を確保するために3個が好ましい場合がある。また、硬化性組成物の貯蔵安定性を確保するためには2個が良い場合がある。
【0076】
シランカップリング剤を接着性付与剤として使用する場合、加水分解性ケイ素基と、置換あるいは非置換のアミノ基とを有するアミノシランカップリング剤が、接着性改善効果が大きいことから好ましい。置換アミノ基における置換基としては、特に限定されない。当該置換基としては、例えばアルキル基、アラルキル基、及びアリール基等が挙げられる。
【0077】
アミノシランカップリング剤の具体例としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-(2-(2-アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-エチルアミノ)-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N-フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、(2-アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N,N’-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、及びビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン等のアミノ基含有シラン類;N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン等のケチミン型シラン類を挙げることができる。
【0078】
これらのうち、硬化物の良好な接着性の点で、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。アミノシランカップリング剤は1種類のみ使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランは、他のアミノシランに比べて刺激性があることが指摘されている。γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを減量する代わりに、γ-アミノプロピルトリメトキシシランを併用することで刺激性を緩和させることができる。また、加水分解性ケイ素基を部分的に縮合させてオリゴマー化させたシランカップリング剤も安全性、安定性の点で好適に使用できる。縮合させるシランカップリング剤は単一でも複数種でもよい。オリゴマー化させたシランカップリング剤としては、Evonik社のDynasylan1146等が挙げられる。硬化性組成物の良好な貯蔵安定性の点では、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
【0079】
アミノシランカップリング剤以外のシランカップリング剤の具体例としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及びβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、(イソシアネートメチル)トリメトキシシラン、及び(イソシアネートメチル)ジメトキシメチルシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、及びメルカプトメチルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;β-カルボキシエチルトリエトキシシラン、β-カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、及びN-β-(カルボキシメチル)アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、及びγ-アクリロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シランカップリング剤;γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シランカップリング剤;トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシランカップリング剤等を挙げることができる。また、上記のシランカップリング剤を部分的に縮合した縮合体も使用できる。かかる縮合体としては、例えば、Evonik社のDynasylan6490、及びDynasylan6498等が挙げられる。さらに、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、及びシリル化ポリエステル等もシランカップリング剤として用いることができる。
【0080】
これらのうち、硬化物の良好な接着性の点で、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、及びγ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
【0081】
上記シランカップリング剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。
シランカップリング剤の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。
【0082】
(可塑剤)
硬化性組成物は、前述したフタル酸エステル(B)以外の可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤の添加により、硬化性組成物の粘度、及びスランプ性や、硬化物の引張り強度、及び伸び等の機械特性を調整できる。
【0083】
可塑剤の具体例としては、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート(DIDP)、及びブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル(B)以外のフタル酸エステル化合物;ビス(2-エチルヘキシル)-1,4-ベンゼンジカルボキシレート等のテレフタル酸エステル化合物;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル等のフタル酸エステルの水添化合物;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジイソデシル、及びアセチルクエン酸トリブチル等の脂肪族多価カルボン酸エステル化合物;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル等の不飽和脂肪酸エステル化合物;アルキルスルホン酸フェニルエステル;トリクレジルホスフェート、及びトリブチルホスフェート等のリン酸エステル化合物;トリメリット酸エステル化合物;塩素化パラフィン;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油;プロセスオイル;エポキシ化大豆油、及びエポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤等を挙げることができる。
テレフタル酸エステル化合物の具体例としては、EASTMAN168(商品名、EASTMAN CHEMICAL製)が挙げられる。非フタル酸エステル化合物の具体例としては、Hexamoll DINCH(商品名、BASF製)が挙げられる。アルキルスルホン酸フェニルエステルの具体例としては、Mesamoll(商品名、LANXESS製)が挙げられる。
【0084】
高分子可塑剤を使用することもできる。高分子可塑剤を使用すると、低分子可塑剤を使用した場合に比較して、硬化物の初期の物性を長期にわたり維持することができる。さらに、該硬化物にアルキド塗料を塗付した場合の乾燥性(塗装性)が改良される。
【0085】
高分子可塑剤の具体例としては、ビニル系モノマーの重合体であるビニル系重合体;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、及びペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールやポリオールのエステル類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、及びフタル酸等の2塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコール等の2価アルコールとから得られるポリエステル系可塑剤;数平均分子量500以上、さらには1,000以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール(ポリオキシアルキレン系化合物);これらポリエーテルポリオールのヒドロキシ基をエステル基、エーテル基等に変換した誘導体;ポリスチレンやポリ-α-メチルスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン-アクリロニトリル、ポリクロロプレン等が挙げられる。高分子可塑剤は、これらに限定されない。
【0086】
高分子可塑剤は、重合体(A)と相溶するのが好ましい。この点から、ポリエーテル類やビニル系重合体が好ましい。ポリエーテル類を可塑剤として使用すると、表面硬化性、及び深部硬化性が改善され、貯蔵後の硬化遅延も起こらない。ポリエーテル類の中では、ポリプロピレングリコールがより好ましい。また、ビニル計重合体は、重合体(A)との相溶性の点と、硬化物の耐候性、及び耐熱性の点とから好ましい。ビニル系重合体の中では、アクリル系重合体、及び/又はメタクリル系重合体が好ましく、ポリアクリル酸アルキルエステル等のアクリル系重合体がさらに好ましい。ビニル系重合体の合成法としては、分子量分布が狭く、低粘度の重合体が得られることから、リビングラジカル重合法が好ましく、原子移動ラジカル重合法がさらに好ましい。また、特開2001-207157号公報に記載されている、アクリル酸アルキルエステル系単量体を高温・高圧で連続塊状重合する、いわゆるSGOプロセスも、ビニル系重合体の製造方法として好ましい。
【0087】
高分子可塑剤の数平均分子量は、500~15,000が好ましく、800~10,000がより好ましく、1,000~8,000がさらに好ましく、1,000~5,000が特に好ましく、1,000~3,000が最も好ましい。
高分子可塑剤の数平均分子量が上記の範囲内であると、熱や降雨等による硬化物からの可塑剤の経時的な流出を抑制しつつ、硬化物の初期の物性を長期にわたり維持でき、硬化性組成物が適度な粘度を有し、硬化性組成物の作業性が良好である。
高分子可塑剤の分子量分布は特に限定されないが、狭いことが好ましい。具体的には、分子量分布は、1.80未満が好ましく、1.70以下がより好ましく、1.60以下がなお好ましく、1.50以下がさらに好ましく、1.40以下が特に好ましく、1.30以下が最も好ましい。
【0088】
ビニル系重合体の数平均分子量は、GPC法で測定される。ポリエーテル系重合体の数平均分子量は、末端基分析法で測定される。また、分子量分布(Mw/Mn)はGPC法(ポリスチレン換算)で測定される。
【0089】
高分子可塑剤は、反応性ケイ素基を有していても、有していなくてもよい。高分子可塑剤が反応性ケイ素基を有する場合、高分子可塑剤が反応性可塑剤として作用し、硬化物からの可塑剤の移行を防止できる。高分子可塑剤が反応性ケイ素基を有する場合、反応性ケイ素基の数は、1分子に対し平均して1個以下が好ましく、0.8個以下がより好ましい。反応性ケイ素基有する可塑剤、特に反応性ケイ素基を有するポリエーテル系重合体を使用する場合、その数平均分子量は、重合体(A)より低いことが必要である。
【0090】
以上説明した可塑剤の中では、フタル酸エステル(B)以外のフタル酸エステル、フタル酸エステルの水添化合物、及びポリオキシアルキレン系化合物からなる群より選択される少なくとも1つを、フタル酸エステル(B)と併用されるのが好ましい。
【0091】
可塑剤の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、5~150重量部が好ましく、10~120重量部がより好ましく、20~100重量部がさらに好ましい。可塑剤の使用量が上記の範囲内であると、可塑剤の使用による所望する効果を十分に得つつ、機械的強度に優れる硬化物を形成できる。可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。低分子可塑剤と高分子可塑剤とを併用してもよい。これらの可塑剤は、重合体(A)を製造する際に、重合体(A)に配合されてもよい。
【0092】
(溶剤、希釈剤)
硬化性組成物は、溶剤、又は希釈剤を含んでいてもよい。溶剤、及び希釈剤としては、特に限定されない。溶剤、及び希釈剤としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、及びエーテル等を使用できる。溶剤、又は希釈剤を使用する場合、硬化性組成物を屋内で使用した時の空気への汚染の問題から、溶剤の沸点は、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、250℃以上が特に好ましい。上記溶剤、又は希釈剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0093】
(チキソ性付与剤)
硬化性組成物は、必要に応じてタレを防止し、作業性を良くするためにチキソ性付与剤を含んでいてもよい。チキソ性付与剤としては特に限定されない。チキソ性付与剤としては、例えば、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類等が挙げられる。商品名としては、ディスパロン6500、ディスパロン308、ディスパロン6300、Crayvallac SL、及びCrayvallac SLT等が挙げられる。これらのチキソ性付与剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
チキソ性付与剤の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましい。
【0094】
(酸化防止剤)
硬化性組成物は、酸化防止剤(老化防止剤)を含んでいてもよい。酸化防止剤を使用すると、硬化物の耐候性を高めることができる。酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物が例示でき、特にヒンダードフェノール系が好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、イルガノックス245,イルガノックス1010,イルガノックス1035,イルガノックス1076,イルガノックス1135,イルガノックス1330,イルガノックス1520(以上いずれもBASF製);SONGNOX1076(SONGWON製)、BHTが挙げられる。
チヌビン622LD,チヌビン144,チヌビン292,CHIMASSORB944LD,CHIMASSORB119FL(以上いずれもBASF製);アデカスタブLA-57,アデカスタブLA-62,アデカスタブLA-67,アデカスタブLA-63,アデカスタブLA-68(以上いずれも株式会社ADEKA製);サノールLS-2626,サノールLS-1114,サノールLS-744(以上いずれも三共ライフテック株式会社製);ノクラックCD(大内新興化学工業株式会社製)等のヒンダードアミン系光安定剤を使用することもできる。
他に、SONGNOX4120,ナウガード445,OKABEST CLX050等の酸化防止剤も使用できる。
酸化防止剤の具体例は特開平4-283259号公報や特開平9-194731号公報にも記載されている。
酸化防止剤の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。
【0095】
(光安定剤)
硬化性組成物は、光安定剤を含んでいてもよい。光安定剤を使用すると硬化物の光酸化劣化を防止できる。光安定剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、及びベンゾエート系化合物等が挙げられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物が特に好ましい。
光安定剤の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。
光安定剤の具体例は、例えば、特開平9-194731号公報に記載されている。
【0096】
硬化性組成物に光硬化性物質を配合する場合、特に不飽和アクリル系化合物を用いる場合、特開平5-70531号公報に記載されているように、ヒンダードアミン系光安定剤として第三級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤を用いるのが硬化性組成物の保存安定性改良のために好ましい。第三級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤としては、チヌビン123,チヌビン144,チヌビン249,チヌビン292,チヌビン312,チヌビン622LD,チヌビン765,チヌビン770,チヌビン880,チヌビン5866,チヌビンB97,CHIMASSORB119FL,CHIMASSORB944LD(以上いずれもBASF製);アデカスタブLA-57,LA-62,LA-63,LA-67,LA-68(以上いずれも株式会社ADEKA製);サノールLS-292,LS-2626,LS-765,LS-744,LS-1114(以上いずれも三共ライフテック株式会社製),SABOSTAB UV91,SABOSTAB UV119,SONGSORB CS5100,SONGSORB CS622,SONGSORB CS944(以上いずれもSONGWON製),ノクラックCD(大内新興化学工業株式会社製)等を例示できる。
【0097】
(紫外線吸収剤)
硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤を使用すると硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチレート系化合物、トリアジン系化合物、置換トリル系化合物、及び金属キレート系化合物等を例示できる。これらの中では、ベンゾトリアゾール系化合物が特に好ましい。ベンゾトリアゾール系化合物の具体例としては、チヌビン234,チヌビン326,チヌビン327,チヌビン328,チヌビン329,チヌビン350,チヌビン571,チヌビン900,チヌビン928,チヌビン1130,チヌビン1600(以上いずれもBASF製);SONGSORB3290(SONGWON製)が挙げられる。トリアジン系化合物の具体例としては、チヌビン400,チヌビン405,チヌビン477,チヌビン1577ED(以上いずれもBASF製);SONGSORB CS400,SONGSORB1577(SONGWON製)が挙げられる。ベンゾフェノン系化合物の具体例としては、SONGSORB8100(SONGWON製)が挙げられる。
紫外線吸収剤の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。フェノール系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤と、ヒンダードアミン系光安定剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを併用するのが好ましい。
酸化防止剤、光安定剤、及び紫外線吸収剤が混合された製品として、AddworksIBC760(Clariant製)を使用できる。
【0098】
(物性調整剤)
硬化性組成物は、必要に応じて、硬化物の引張特性を調整する物性調整剤を含んでいてもよい。物性調整剤としては、特に限定されない。物性調整剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等のアルキルイソプロペノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類等が挙げられる。物性調整剤を用いることにより、硬化物の硬度を上げたり、逆に硬化物の硬度を下げ、破断伸びを出したりし得る。上記物性調整剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0099】
特に、加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物は硬化物の表面のべたつきを悪化させずに硬化物のモジュラスを低下させる作用を有する。加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物としては、特にトリメチルシラノールを生成する化合物が好ましい。加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物としては、特開平5-117521号公報に記載されている化合物が挙げられる。また、加水分解によりトリメチルシラノール等のトリアルキルシラノールを生成する、ヘキサノール、オクタノール、及びデカノール等のアルキルアルコールの誘導体、特開平11-241029号公報に記載されている、加水分解によりトリメチルシラノール等のトリアルキルシラノールを生成する、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、又はソルビトール等の水酸基数が3以上の多価アルコールの誘導体を挙げることができる。
特開平7-258534号公報に記載されているような、加水分解によりトリメチルシラノール等のトリアルキルシラノールを生成するシリコン化合物を生成するオキシアルキレン重合体の誘導体も挙げることができる。さらに特開平6-279693号公報に記載されている架橋可能な加水分解性ケイ素含有基と、加水分解によりモノシラノール含有化合物となりうるケイ素含有基とを有する重合体を使用することもできる。
物性調整剤は重合体(A)100重量部に対して、0.1~20重量部、好ましくは0.5~10重量部の範囲で使用される。
【0100】
(粘着付与樹脂)
硬化性組成物は、硬化物の基材への接着性や密着性を高める等の目的で、粘着付与樹脂を含んでいてもよい。粘着付与樹脂としては、特に制限はなく、種々の硬化性組成物において通常使用されている粘着付与樹脂を用いることが出来る。
粘着付与樹脂の具体例としては、テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、キシレン-フェノール樹脂、シクロペンタジエン-フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、キシレン樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、スチレン共重合体樹脂、スチレン系ブロック共重合体、スチレン系ブロック共重合体の水素添加物、石油樹脂、水添石油樹脂、及びDCPD樹脂等が挙げられる。石油樹脂としては、例えば、C5炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、及びC5C9炭化水素共重合樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
粘着付与樹脂の使用量は、重合体(A)100重量部に対して2~100重量部が好ましく、5~50重量部がより好ましく、5~30重量部がさらに好ましい。かかる範囲内の量の粘着付与樹脂を用いると、基材への接着性、密着性が良好な硬化物を形成できる。硬化性組成物が適度な粘度を有し、硬化性組成物の取り扱い性が良好である。
【0101】
(エポキシ基を含有する化合物)
硬化性組成物は、エポキシ基を含有する化合物を含んでいてもよい。エポキシ基を有する化合物を使用すると硬化物の復元性を高めることができる。エポキシ基を有する化合物としては、エポキシ化不飽和油脂類、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル類、脂環族エポキシ化合物類、エピクロルヒドリン誘導体、及びこれらの混合物等が例示できる。エポキシ基を有する化合物の具体例としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油、ビス(2-エチルヘキシル)-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカーボキシレート(E-PS)、エポキシオクチルステアレ-ト、及びエポキシブチルステアレ-ト等が挙げられる。
エポキシ基を含有する化合物の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、0.5~50重量部が好ましい。
【0102】
(エポキシ樹脂)
硬化性組成物にはエポキシ樹脂を含んでいてもよい。エポキシ樹脂を含む硬化性組成物は、接着剤、特に外壁タイル用接着剤として好ましい。エポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂類や、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
重合体(A)の重量と、エポキシ樹脂の重量との比率は、重量比で(重合体(A)の重量)/(エポキシ樹脂の重量)として、100/1~1/100の範囲が好ましい。重合体(A)とエポキシ樹脂とが上記の比率で使用されると、衝撃強度や強靭性に優れる高強度の硬化物を形成しやすい。
エポキシ樹脂を用いる場合、硬化性組成物は、エポキシ樹脂とともに硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤の種類は特に限定されず、一般に使用される硬化剤を用いることができる。
硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂100重量部に対し、0.1~300重量部が好ましい。
【0103】
(光硬化性物質)
硬化性組成物は、光硬化性物質を含んでいてもよい。光硬化性物質を使用すると硬化物表面に光硬化性物質の皮膜が形成され、硬化物のべたつきや硬化物の耐候性を改善できる。光硬化性物質としては、有機単量体、オリゴマー、及び樹脂等の種々の化合物が知られている。また、光硬化性物質を含む組成物も多数知られている。代表的な光硬化性物質としては、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類、及びアジド化樹脂等がえる。不飽和アクリル系化合物としては、アクリル系不飽和基、又はメタクリル系不飽和基を1以上有するモノマー、オリゴマー、又はこれらの混合物が挙げられる。
光硬化性物質の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。かかる範囲内の量の光硬化性物質が使用されると、耐候性に優れ、ひび割れの発生が抑制された柔軟な硬化物を形成しやすい。
【0104】
(酸素硬化性物質)
硬化性組成物は、酸素硬化性物質を含んでいてもよい。酸素硬化性物質としては、空気中の酸素と反応し得る不飽和化合物を例示できる。硬化性物質が酸素硬化性物質を含むと、酸素硬化性物質が空気中の酸素と反応して硬化物の表面付近に硬化皮膜が形成される。硬化物の表面に硬化被膜が形成されることにより、硬化物表面における、べたつきや、ゴミやホコリの付着を防止できる。酸素硬化性物質の具体例としては、キリ油、及びアマニ油等の乾性油;乾性油を変性して得られる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体、エポキシ系樹脂、及びシリコン樹脂;ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、又は1,3-ペンタジエン等のジエン系化合物を重合又は共重合させて得られる1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン、又はC5~C8ジエンの重合体等の液状重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
酸素硬化性物質の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。かかる範囲内の量の酸素硬化性物質を用いると、表面がゴミやホコリにより汚染されにくく、引張り特性等の機械的特性に優れる硬化物を形成しやすい。特開平3-160053号公報に記載されるように、酸素硬化性物質は、好ましくは光硬化性物質と併用される。
【0105】
<硬化性組成物の調製>
硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1成分型として調製することが可能である。硬化剤組成物が硬化触媒を含む場合、硬化性組成物を、硬化触媒、及び水等の成分とが配合された硬化剤としての配合材と、別途調製された重合体(A)を含む組成物とを使用前に混合する2成分型として調製することもできる。作業性の点からは、1成分型が好ましい。
硬化性組成物が1成分型の場合、すべての配合成分が予め配合されるため、水分を含有する配合成分は予め脱水乾燥してから使用するか、また配合混練中に減圧等により脱水されるのが好ましい。脱水乾燥法に加えてメチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、及びγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物を添加することにより、さらに貯蔵安定性は向上する。脱水剤としては、Evonik社のDynasylan6490等の部分的に縮合したシラン化合物等も、安全性、安定性の観点で好適に使用できる。
脱水剤、特にビニルトリメトキシシラン等の水と反応し得るケイ素化合物の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。
【0106】
硬化性組成物は、建築用シーリング材や工業用接着剤、防水塗膜形成用組成物、粘着剤原料等として使用することができる。また、建造物、船舶、自動車、及び道路等の密封剤として硬化性組成物を使用することができる。さらに、硬化性組成物は、単独あるいはプライマーの助けをかりてガラス、磁器、木材、金属、及び樹脂成形物等の広範囲の基材に密着し得る。このため、硬化性組成物は、種々のタイプの密封組成物及び接着組成物としても使用することができる。硬化性組成物は、通常の接着剤のほかに、コンタクト接着剤としても使用可能である。さらに、硬化性組成物は、食品包装材料、注型ゴム材料、型取り用材料、塗料としても有用である。上記の硬化性組成物の硬化物は低吸水性を示す。このため、上記の硬化性組成物、及びその硬化物は、特にシーリング材、防水用接着剤、防水塗膜等の防水材料の用途に好適である。
【0107】
<硬化物の製造方法>
硬化性組成物は、硬化に先だって、塗布、注型、又は充填等の方法によって、所望の形状に整えられる。
【0108】
塗布、注型、又は充填され、形状を整えられた硬化性組成物は、例えば、常温、常湿のような所望の環境下において硬化される。
【0109】
このように形成される硬化物は、種々の被接着物に対して良好な接着性を示す。特に、硬化物は、硬質塩化ビニル樹脂、モルタル、及びコンクリート等の、建築材料として汎用される材料に対して優れた接着性を示す。
【0110】
<接着構造体>
接着構造体は、前述の硬化性組成物の硬化物と、当該硬化物に接着している被接着物とを含む。
前述の硬化性組成物の硬化物は、前述の通り、種々の被接着物に対して良好に接着する。
接着構造体に含まれる硬化物の数と、被接着物の数とは特に限定されない。
硬化物は、複数の被接着物の隙間に充填されるシーリング材として使用されることも多い。このため、接着構造体において、1以上の硬化物と、2以上の被接着物とが接着しているのも好ましい。
基材との接着性の観点では、被接着物が、硬質塩化ビニル樹脂、モルタル、又はコンクリートからなるのが好ましい。
【0111】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0112】
すなわち、本発明の一態様は、以下を含む。
<1>ポリオキシアルキレン系重合体(A)、及びフタル酸エステル(B)を含み、
ポリオキシアルキレン系重合体(A)が、分子鎖の末端に下記式(1):
-SiR1
3-aXa (1)
(式(1)中、R1は置換、又は非置換の炭素原子数1~20の炭化水素基、又はR0
3SiO-で表わされるトリオルガノシロキシ基を示し、3個のR0は、炭素原子数1~20の炭化水素基であり、それらは同じでもよく、異なっていてもよく、
Xは水酸基又は加水分解性基を示し、
aは1、2、又は3であり、
R1、Xのそれぞれについて、それらが複数存在するとき、それらは同じでもよく、異なっていてもよい。)
で表される反応性ケイ素基を有し、
フタル酸エステル(B)が、その構造中にシクロヘキサン環を有し、
フタル酸エステル(B)の含有量が、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、30~200重量部である、硬化性組成物。
<2>フタル酸エステル(B)の含有量が、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、40~100重量部である、<1>に記載の硬化性組成物。
<3>フタル酸エステル(B)が、ジシクロヘキシルフタレート、及び/又はジ(メチルシクロヘキシル)フタレートを含む、<1>又は<2>に記載の硬化性組成物。
<4>可塑剤として、フタル酸エステル(B)以外のフタル酸エステル、フタル酸エステルの水添化合物、及びポリオキシアルキレン系化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<5><1>~<4>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を硬化させた硬化物。
<6><5>に記載の硬化物と、硬化物に接着している被接着物とを含む接着構造体。
<7>1以上の硬化物と、2以上の被接着物とを含み、硬化物のうちの少なくとも1つが、2以上の被接着物と接着している、<6>に記載の接着構造体。
<8>被接着物が、モルタル、又はコンクリートからなる<6>又は<7>に記載の接着構造体。
【実施例0113】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0114】
(重合体(A)の合成例)
以下、数平均分子量は以下の条件で測定したGPC分子量である。
送液システム:東ソー製HLC-8120GPC
カラム:東ソー製TSKーGEL Hタイプ
溶媒:THF
分子量:ポリスチレン換算
測定温度:40℃
【0115】
実施例中の末端基換算分子量は、水酸基価をJIS K 1557の測定方法により、ヨウ素価をJIS K 0070の測定方法により求め、重合体の構造を考慮して求めた分子量である。重合体の構造について考慮されたのは、使用した重合開始剤によって定まる分岐度である。
【0116】
実施例に示す重合体の末端1個あたりの反応性ケイ素基の平均数は1H-NMR(ブルカー製AVANCE III HD-500を用いて、CDCl3溶媒中で測定)による測定により算出した。
【0117】
(調製例1:重合体(A-1))
分子量が約3,000のポリオキシプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、数平均分子量16,500の水酸基末端ポリオキシプロピレンを得た。
【0118】
得られた水酸基末端ポリオキシプロピレンの水酸基に対して、1.2モル当量のナトリウムメトキシドを28%メタノール溶液として添加した。反応液からメタノールを留去した後、反応液に、さらに塩化アリルを添加して末端の水酸基をプロパルギル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去した。得られた未精製のアリル基末端ポリオキシプロピレン100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部とを混合した後、撹拌した。次いで、遠心により混合物を水相と、ヘキサン相とに分離させた後、水相を除去した。得られたヘキサン相に、再度水300重量部を混合した後、撹拌した。次いで、遠心により混合物を水相と、ヘキサン相とに分離させた後、水相を除去した。その後、回収されたヘキサン相からヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、末端がアリル基であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約16,500のポリオキシプロピレンを得た。
【0119】
得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン100重量部に対して、白金ビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)150ppm、及びメチルジメトキシシラン1.3重量部を添加し、ヒドロシリル化反応を実施した。90℃で2時間、ヒドロシリル化反応を行い、一分子中に平均約1.2個のメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(A-1)を得た。
【0120】
(調製例2:重合体(A-2))
分子量が約3,000のポリオキシプロピレントリオールと分子量が約3,000のポリオキシプロピレングリコールとの混合物を開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、数平均分子量19,700の水酸基末端ポリオキシプロピレンを得た。
【0121】
得られた水酸基末端ポリオキシプロピレンの水酸基に対して、1.2モル当量のナトリウムメトキシドを28%メタノール溶液として添加した。反応液からメタノールを留去した後、反応液に、さらに塩化アリルを添加して末端の水酸基をプロパルギル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去した。得られた未精製のアリル基末端ポリオキシプロピレン100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部とを混合した後、撹拌した。次いで、遠心により混合物を水相と、ヘキサン相とに分離させた後、水相を除去した。得られたヘキサン相に、再度水300重量部を混合した後、撹拌した。次いで、遠心により混合物を水相と、ヘキサン相とに分離させた後、水相を除去した。その後、回収されたヘキサン相からヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、末端がアリル基であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約19,700のポリオキシプロピレンを得た。
【0122】
得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン100重量部に対して、白金ビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)150ppm、及びメチルジメトキシシラン1.3重量部を添加し、ヒドロシリル化反応を実施した。90℃で2時間、ヒドロシリル化反応を行い、一分子中に平均約1.7個のメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(A-2)を得た。
【0123】
(実施例1~4、及び比較例1~4)
表1に示した組成(重量比)に従って、重合体(A-1)、及び重合体(A-2)に対して、フタル酸エステル(B)、可塑剤、顔料、炭酸カルシウム、チキソ性付与剤、光安定剤、及びUV吸収剤を混合し、混錬した。その後、混錬物を3本ペイントロール((株)小平製作所製)に3回通して均一に分散した混合物を得た。
混合物に、脱水剤、接着付与剤、及び硬化触媒を表1に記載の割合で加えて混錬し、硬化性組成物を得た。混錬は、自転・公転方式ミキサー(商品名:あわとり練太郎、(株)シンキー製)を使用した。なお、表1中の各成分の配合量は、重量部を示す。
【0124】
表1中の各成分は以下の通りである。
重合体(A-1)(調製例1で得た重合体(A-1))
重合体(A-2)(調製例2で得た重合体(A-2))
ジシクロヘキシルフタレート(下記構造の化合物(B-1))(東京化成工業(株)製)
【化1】
ジ(メチルシクロヘキシル)フタレート(下記構造の化合物(B-2))(商品名:Efka PL 5544、BASF(株)製)
【化2】
ジイソデシルフタレート(商品名:DIDP、(株)ジェイ・プラス製)
ポリプロピレングリコール(分子量3,000のプロピレングリコール)(商品名:アクトコールP-23、三井化学ファイン(株)製)
顔料(酸化チタン)(商品名:タイペークR820、石原産業(株)製)
炭酸カルシウム(膠質炭酸カルシウム)(商品名:ネオライトSP、竹原化学工業(株)製)
炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム)(商品名:LM2200、丸尾カルシウム(株)製)
チキソ性付与剤(アマイドワックス)(商品名:Crayvallc SL、Crayvalley社製)
光安定剤(ヒンダードアミン系光安定剤)(商品名:Tinuvin770、BASF社製)
紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)(商品名:Tinuvin326、BASF社製)
脱水剤(ビニルトリメトキシシラン)(商品名:A171、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
接着付与剤(N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)(商品名:A1120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
硬化触媒(ジブチル錫ジアセチルアセトネート)(商品名:ネオスタンU220H、日東化成(株)製)
【0125】
【0126】
実施例1~4及び比較例1~4で得られた硬化性組成物について、硬化後の残留タックと、硬化物の表面状態と、記載との接着性とを以下の方法により評価した。評価結果を、表1に示す。
【0127】
(残留タック)
得られた硬化性組成物を型枠に充填し、23℃50%RHで7日間養生させて、厚さ約3mmのシート状の硬化物を作製した。硬化物の表面を指で軽く触り、べたつきの程度を8段階で評価した。評価基準は、硬化物が持ち上がるほどべたつきが多きものを1、まったくべたつきが無いものを8とした。
【0128】
(表面状態)
上述した残留タックと同様の硬化物を用いて、硬化物の表面の艶の有無を目視で判定した。
【0129】
(引張物性)
得られた硬化性組成物を型枠に充填し、23℃50%RHで3日間、さらに50℃で4日間養生させて、厚さ約3mmのシート状の硬化物を作製した。得られた硬化物をJIS K 6251に従って3号ダンベル型に打ち抜いて試験片を得た。得られた試験片を、23℃50%RHで、オートグラフ(商品名:AGS-J、(株)島津製)用いて引張試験(引張速度200mm/分)を行い、50%モジュラス及び破断強度を測定した。
【0130】
(密着性)
得られた硬化性組成物を、硬質塩化ビニル基材の表面とモルタル基材の表面それぞれに密着するように塗布し、23℃50%RHで7日間養生させた。これにより、硬化性組成物から作製した硬化物により、硬質塩化ビニル基材表面と、モルタル基材表面と接着している接着構造体得られた。接着構造体における硬化物と基材の界面にカミソリ刃で切り込みを入れ、手で硬化物を90度方向に引張り、その破壊状態を目視により観察した。破壊状態について、凝集破壊した場合をCとし、界面破壊した場合をAとした。凝集破壊の状態について、Cの直後に、接着面の面積に対する凝集破壊した部分の面積の比率を記載した。例えば、接着面の面積のうちの50%の領域で凝集破壊が生じた場合、破壊状態はC50である。界面破壊の状態について、Aの直後に、接着面の面積に対する界面破壊した部分の面積の比率を記載した。例えば、接着面の面積のうちの50%の領域で界面破壊が生じた場合、破壊状態はA50である。例えば、C100は凝集破壊率が100%であることから良好な密着性を意味する。一方、A100は界面破壊率が100%であることから密着性が悪いことを意味する。
【0131】
表1によれば、実施例1~実施例4の硬化性組成物の硬化物は、低い残留タック、及び高い密着性を示すことが分かる。また、フタル酸エステル(B)としてジシクロヘキシルフタレートを含む実施例1~実施例3の硬化性組成物の硬化物の表面に艶が無いことが分かる。
対して、フタル酸(B)を含まない比較例1~比較例4の硬化性組成物の硬化物は、高い残留タック、及び低い密着性を示し、その表面に艶があることが分かる。