(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130935
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】火災受信機
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G08B17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040908
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】草木 洋一郎
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA06
5G405AB01
5G405AB02
5G405AB03
5G405AB05
5G405AB08
5G405CA01
5G405CA60
(57)【要約】
【課題】火災等の異常の有無を検出する学習装置で利用される学習情報を得ることのできる火災受信機を得る。
【解決手段】火災を検知すると発報信号を出力する火災感知器と回線で接続された火災受信機であって、火災感知器が検出対象を検出して出力した検出情報を取得する取得部と、火災感知器からの発報信号を受信したとき、取得部が取得した検出情報に対応する、実火災であるか非火災であるかを含む原因情報が正解データとして入力される正解データ入力部と、検出情報と正解データとを対応づける対応付け部と、を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災を検知すると発報信号を出力する火災感知器と回線で接続された火災受信機であって、
前記火災感知器が検出対象を検出して出力した検出情報を取得する取得部と、
前記火災感知器からの前記発報信号を受信したとき、前記取得部が取得した前記検出情報に対応する、実火災であるか非火災であるかを含む原因情報が正解データとして入力される正解データ入力部と、
前記検出情報と前記正解データとを対応づける対応付け部と、を備えた
火災受信機。
【請求項2】
前記検出情報は、煙濃度、温度、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、臭気濃度、及び赤外線量、のうちの一つ以上を含む
請求項1記載の火災受信機。
【請求項3】
前記実火災である場合の前記原因情報は、燃え草の種類を含み、
前記非火災である場合の前記原因情報は、タバコの煙、調理による煙、湯気、点検、塵埃、エアコンの風、加熱調理器、殺虫剤、照明、振動、及び衝撃のうちの一つ以上を含む
請求項1又は請求項2に記載の火災受信機。
【請求項4】
前記正解データ入力部は、前記火災感知器からの前記発報信号を受信したときに加えて、当該火災受信機による異常検出時に、前記正解データの入力を受け付ける
請求項1又は請求項2に記載の火災受信機。
【請求項5】
前記火災受信機はネットワークを介してサーバに接続可能であり、
前記対応付け部によって対応づけられた前記検出情報と前記正解データとを出力する出力部を更に備えた、
請求項1又は請求項2に記載の火災受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器と回線で接続された火災受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、煙濃度、温度、又は一酸化炭素濃度等の検出データを火災受信機に送るアナログ火災感知器と、火災を検出したアナログ火災感知器の検出データを火災の学習情報として使用する判定装置を備えたシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のシステムでは、予め準備された学習情報により学習された多層式のニューラルネットワークによって構成された、異常検出器の検出結果に基づき、監視領域の火災の有無を判定して警報する。さらに特許文献1のシステムでは、センサにより検出された物理量及び/又は撮像部により撮像された監視領域の画像を、さらに学習情報としてニューラルネットワークに入力して学習させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、センサにより検出された物理量及び撮像部により撮像された画像を学習情報として使用することが記載されているが、物理量及び画像だけでは、学習情報として不十分である。すなわち、火災の有無を判定するニューラルネットワーク等の学習装置で利用される学習情報としては、入力情報に対応する物理量及び画像に加えて、入力情報を元に推論装置が推論する推論結果(火災の有無等)に対応する正解データが必要となる。ところが、特許文献1には、この正解データを得る手段について開示されていない。
【0005】
本発明は、上記課題を背景としてなされたものであり、火災等の異常の有無を検出する学習装置で利用される学習情報を得ることのできる火災受信機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る火災受信機は、火災を検知すると発報信号を出力する火災感知器と回線で接続された火災受信機であって、前記火災感知器が検出対象を検出して出力した検出情報を取得する取得部と、前記火災感知器からの前記発報信号を受信したとき、前記取得部が取得した前記検出情報に対応する、実火災であるか非火災であるかを含む原因情報が正解データとして入力される正解データ入力部と、前記検出情報と前記正解データとを対応づける対応付け部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、火災感知器からの発報信号を受信したときに、検出情報に対応する、実火災であるか非火災であるかを含む原因情報が正解データとして入力され、検出情報と正解データとが対応付けられる。このため、検出情報と正解データとを対応付けた情報を、学習装置の学習情報として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る火災受信機を備えた学習システムの構成図である。
【
図2】実施の形態1に係る対応付けデータの構成例を説明する図である。
【
図3】実施の形態1に係る火災受信機の正解データ入力部の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、図面に示す装置は、本発明の装置の一例を示すものであり、図面に示された装置によって本発明の装置が限定されるものではない。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る火災受信機1を備えた学習システム100の構成図である。学習システム100は、機械学習を行う学習装置20と、学習装置20の学習結果に基づいて生成された推論モデル24を利用して、入力情報に対応する推論結果を得る推論装置30とを備える。さらに学習システム100は、学習情報を取得する装置として、学習装置20にネットワーク300を介して接続された火災受信機1を備える。火災受信機1は、建物に設置され、火災を監視するとともに火災が検知されると報知等を行う火災報知システム200の一部を構成している。
【0011】
(火災報知システム200)
火災報知システム200は、火災受信機1と、感知器回線2を介して火災受信機1に接続された火災感知器3、発信機4及び地区音響装置5と、移報回線6を介して火災受信機1に接続された防排煙装置7とを備える。図示された感知器回線2及び移報回線6の数は一例であり、数は図示のものに限定されない。また、火災受信機1は、P型とR型のいずれであってもよい。
【0012】
火災感知器3は、例えば、煙感知器、熱感知器、ガスセンサ、臭気センサ、及び炎感知器のいずれか一種以上である。火災感知器3は、火災により発生する物理量の変化が閾値を超えたことを検出すると、火災を検知したことを示す発報信号と、検出情報を示す検出信号とを出力する。これ以降では、検出情報と検出信号とを区別せず、単に検出情報と称する。検出情報は、火災感知器3が検出した物理量に対応したアナログデータである。なお、火災感知器3が検出情報を出力し、検出情報を取得した火災受信機1が火災の有無を検知する構成である場合には、火災感知器3から発報信号は出力されず、火災検知のための閾値を超えた検出情報の信号が、発報信号として機能する。
【0013】
火災感知器3が煙感知器である場合には、検出情報は煙濃度である。火災感知器3が熱感知器である場合には、検出情報は温度である。火災感知器3がガスセンサである場合には、検出情報は一酸化炭素濃度又は二酸化炭素濃度である。火災感知器3が臭気センサである場合には、検出情報は臭気化合物濃度である。火災感知器3が炎感知器である場合には、検出情報は赤外線量である。発報信号及び検出情報は、感知器回線2を介して火災受信機1によって取得される。
【0014】
発信機4は、火災を発見した人が操作部である押しボタンを押すことにより、火災受信機1に火災信号を発信する装置である。地区音響装置5は、火災が検出されたときに火災受信機1からの信号に基づいて鳴動する装置である。地区音響装置5は、地区ベルとも称される。地区音響装置5は、建物の区画ごとに設置されている。防排煙装置7は、防排煙装置7は、防火扉、防火ダンパ、防火シャッター、排煙機、排煙口の開閉扉等である。
【0015】
(火災受信機1)
火災受信機1は、制御部10と、伝送回路11と、移報回路12と、操作装置13と、表示装置14と、記憶部15と、対応付けデータ16と、対応付け部17と、通信装置18とを備える。
【0016】
伝送回路11は、火災感知器3及び発信機4が接続された感知器回線2のそれぞれに対して設けられており、感知器回線2からの発報信号及び検出情報並びに発信機4からの火災信号を受信し、受信した信号を制御部10に送る。
【0017】
移報回路12は、防排煙装置7が接続された移報回線6に対応して設けられている。移報回路12は、制御部10から出力される指示に基づき、連動動作を指示する動作信号を、防排煙装置7に送る。
【0018】
操作装置13は、ユーザからの操作を受け付け、操作に対応した信号を制御部10に送る。操作装置13は、火災受信機1の筐体に設けられたハードウェアボタンと、表示装置14のディスプレイに重ねて設けられたタッチパネルの、いずれか又は両方を含む。
【0019】
表示装置14は、火災受信機1の筐体に設けられた液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー又はランプを含む。表示装置14は、発報信号が発生した感知器回線2又は火災感知器3を表示する。
【0020】
記憶部15は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、若しくはメモリカード等の外部記憶媒体、又はそれらの組み合わせである。記憶部15は、後述する対応付けデータ16を記憶している。
【0021】
通信装置18は、学習装置20、推論装置30又は図示しないスマートフォン、タブレットパソコン、ノートパソコン又は専用端末等の端末装置と通信する通信回路である。
【0022】
制御部10は、火災感知器3から発報信号が入力されると、地区音響装置5及び防排煙装置7等の連動機器を動作させる。地区音響装置5又は他の報知装置によって火災の発生が報知されると、火災受信機1の管理者等が目視で火災発生の有無を確認する。火災が発生していることを確認した管理者または火災発生を目視で確認した者等が、発信機4の押しボタンを押すと、発信機4からの火災信号を受けて火災受信機1は火災の発生と断定する。また、1つの感知器回線2に対して複数台の火災感知器3から発報信号が送信された場合に、火災の発生が断定されてもよい。
【0023】
制御部10は、感知器回線2に接続され、火災感知器3内の情報を出力させるように火災感知器3に要求信号を送信し、火災感知器3から定期的に情報を取得する定期監視の機能を有する。また、火災受信機1からの要求信号がなくとも、火災感知器3側から検出情報となるアナログ信号を定期的に送出するようにしてもよい。この定期監視においては、制御部10は、火災感知器3に対し、監視情報の送信を要求する要求信号を送出する。要求信号を受信した火災感知器3は、自機の異常の有無を判定するとともに、自機を特定する情報及び検出情報を含む信号を、応答信号として送信する。火災感知器3は、自機に異常がなければ定常信号を応答信号として送信し、自機に異常があれば異常信号を応答信号として送信する。制御部10は、火災感知器3から異常信号を受信した場合には、表示装置14において異常が発生したことを表示させる。火災感知器3が自機の異常の有無を判定することに代えて、火災受信機1の制御部10が、受信した火災感知器3の情報に基づいて、火災感知器3における異常の有無を判定してもよい。
【0024】
制御部10は、専用の制御回路、又はメモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)若しくはこれらの組み合わせにより構成される。制御部10がCPUである場合、制御部10が実行する各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。
【0025】
以上、火災受信機1の火災の検出及び報知に係る構成及び機能を説明した。続けて、学習装置20及び推論装置30で利用される学習情報を取得する装置としての、火災受信機1の構成及び機能を説明する。
【0026】
伝送回路11及び制御部10は、本実施の形態では、火災感知器3が検出対象を検出して出力した検出情報及び発報信号を取得する取得部として機能する。火災感知器3が出力した検出情報及び発報信号は、伝送回路11によって取得され、取得された情報が制御部10に入力される。なお、取得部の具体的構成は、伝送回路11及び制御部10に限定されず、例えば伝送回路11からの信号を受信する制御部10とは異なる通信回路を備えていてもよい。
【0027】
操作装置13は、本実施の形態では、正解データ入力部として機能する。正解データ入力部は、火災感知器3からの発報信号を取得部が取得したとき、検出情報に対応する、実火災であるか非火災であるかを含む原因情報が正解データとして入力される装置である。なお、火災受信機1の通信装置18を介して通信接続されたスマートフォン、タブレットパソコン、ノートパソコン又は専用端末等の他の端末から正解データの入力を受け付ける場合には、通信装置18が正解データ入力部として機能する。
【0028】
対応付け部17は、火災感知器3から取得した検出情報と、正解データ入力部に入力された正解データとを対応付ける。対応付け部17は、 専用の制御回路、又はメモリに格納されるプログラムを実行するCPU若しくはこれらの組み合わせにより構成される。対応付け部17は、制御部10の機能部として実現されてもよい。対応付け部17が対応付けたデータは、対応付けデータ16として記憶部15に記憶される。
【0029】
図2は、実施の形態1に係る対応付けデータ16の構成例を説明する図である。対応付けデータ16は、検出情報161と、正解データである原因情報162とが対応づけられたデータである。
【0030】
検出情報161は、火災感知器3から出力され、取得部によって取得された情報であり、煙濃度、温度、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、臭気濃度、及び赤外線量のいずれかの値である。
【0031】
原因情報162は、正解データ入力部によって入力された原因情報であり、本実施の形態では、実火災/非火災情報163と詳細情報164とで構成されている。実火災/非火災情報163は、火災感知器3の発報原因が、実火災であるか非火災であるかを示す情報である。詳細情報164は、実火災/非火災情報163が実火災である場合の燃え草の種類の情報を含む。燃え草の情報は、例えば、カーテン、段ボール、木屑、紙屑等の燃え草の種類の情報を含み、さらに燃え草の量及び燃え草の位置の情報のうち一つ以上を含んでいてもよい。詳細情報は、詳細情報164は、実火災/非火災情報163が非火災である場合の非火災発報原因の情報を含む。非火災発報原因の情報は、タバコの煙、調理による煙、湯気、点検、塵埃、エアコンの風、加熱調理器、殺虫剤、照明、振動、及び衝撃のうちの一つ以上を含む。詳細情報164を入力することで、火災感知器3の発報に対する正解データを得ることができる。
【0032】
図1に戻り、学習装置20及び推論装置30の説明を続ける。
【0033】
(学習装置20)
学習装置20は、火災受信機1から送信された学習情報を用いて機械学習を行う装置である。学習装置20は、ネットワーク300を介して火災受信機1及び推論装置30と通信接続されており、火災受信機1から取得した学習情報に基づいて推論モデル24を生成し、推論モデル24を推論装置30に送信する。学習装置20は、通信装置21と、モデル生成部22と、記憶部23と、推論モデル24とを備える。
【0034】
通信装置21は、火災受信機1と通信する通信回路と、推論装置30と通信する通信回路とを備える。
【0035】
モデル生成部22は、火災受信機1から送信された対応付けデータ16、及び予め記憶されたデータを学習情報として用いて、火災感知器3が出力した検出情報から、その原因情報を推論するための推論モデル24を生成及び/又は更新する。モデル生成部22が用いる学習アルゴリズムは、特に限定されず、例えばニューラルネットワークを用いた学習アルゴリズムを用いることができる。モデル生成部22は、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU又はGPU(Graphics Processing Unit)により構成される。
【0036】
記憶部23は、火災受信機1から送信された対応付けデータ16及びモデル生成部22が生成した推論モデル24を記憶する。記憶部23は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、若しくはメモリカード等の外部記憶媒体、又はそれらの組み合わせである。
【0037】
(推論装置30)
推論装置30は、学習装置20からネットワーク300を介して推論モデル24を取得し、取得した推論モデル24に入力情報を入力することで、推論結果を得る。入力情報は、本実施の形態では、火災感知器3の検出情報161に相当する情報、すなわち、煙濃度、温度、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、臭気濃度、及び赤外線量、のうちの一つ以上である。推論結果は、原因情報162に相当する情報であり、実火災であるか非火災であるかの情報を含む。さらに好ましくは、推論結果は、実火災及び非火災それぞれの詳細情報を含む。
【0038】
図3は、実施の形態1に係る火災受信機1の正解データ入力部の一例を説明する図である。本実施の形態の正解データ入力部は、表示装置14に重ねて設けられたタッチパネルである操作装置13によって実現される。
図3では、表示装置14に表示される、正解データの入力を受け付ける際の正解データ入力画面140を示している。正解データ入力画面140は、検出情報表示141と、実火災入力142と、非火災入力143と、実火災詳細入力144と、非火災詳細入力145とを含む。
【0039】
検出情報表示141は、発報信号を出力した火災感知器3に関する情報であり、例えば、火災感知器3の種別、設置フロア、又は設置場所等の情報を含むことができる。火災感知器3に関する情報に代えて、あるいはこれに加えて、発報信号を出力した火災感知器3が接続された感知器回線2の情報が検出情報表示141として表示されてもよい。
【0040】
実火災入力142は、火災感知器3の発報原因が実火災であったことを入力する領域である。非火災入力143は、火災感知器3の発報原因が非火災であったことを入力する領域である。実火災入力142及び非火災入力143に入力された情報は、実火災/非火災情報163(
図2参照)として記憶される。
【0041】
実火災詳細入力144は、火災感知器3の発報原因が実火災であった場合に、その燃え草等に関する情報を入力する領域である。非火災詳細入力145は、火災感知器3の発報原因が非火災であった場合に、その発報原因の情報を入力する領域である。実火災詳細入力144及び非火災詳細入力145に入力された情報は、詳細情報164(
図2参照)として記憶される。実火災詳細入力144及び非火災詳細入力145の入力方式は、予め定められた入力候補の中から1つ以上のものを選択する方式であってもよいし、ユーザが自由入力する方式であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【0042】
(学習システム100の動作)
火災受信機1は、火災感知器3からの発報信号及び検出情報を取得すると、正解データ入力部である操作装置13にて、ユーザからの原因情報の入力を受け付ける。具体的には、火災受信機1は、発報信号及び検出情報を取得した後、発報状態から復旧すると、
図3で例示した正解データ入力画面140を表示装置14に表示する。さらに、火災受信機1は、表示装置14による表示及び/又は図示しないスピーカからの音声により、原因情報の入力をユーザに促す報知を行ってもよい。
【0043】
ユーザは、火災受信機1の表示装置14に表示された正解データ入力画面140を見て、正解データ入力部である操作装置13に、発報の原因となった情報を正解データとして入力する。
【0044】
正解データ入力部に原因情報が入力されると、対応付け部17は、検出情報と、入力された原因情報とを対応付ける。対応付けられたデータは、本実施の形態では、記憶部15に対応付けデータ16として記憶される。記憶部15に記憶された対応付けデータ16は、定期的に、学習装置20からの要求に応じて、又は火災受信機1に対するユーザからの指示により、ネットワーク300を介して学習装置20に送信される。なお、対応付けデータ16を記憶部15に記憶することに代えて、あるいはこれに加えて、通信装置18を介して学習装置20に送信されてもよい。この場合、通信装置18が、対応付け部17によって対応づけられた検出情報と正解データとを出力する出力部として機能し、学習装置20の記憶部23が、対応付けデータ16を記憶する。
【0045】
対応付けデータ16を取得した学習装置20は、対応付けデータ16を用いて推論モデル24を作成又は更新する。推論モデル24は、ネットワーク300を介して推論装置30に送信される。本発明では、火災発報時に都度原因情報の入力をユーザに促し、対応付けデータ16を記憶部23に数多く蓄積することが重要である。対応付けデータ16が増えることで推論モデル24の作成に使えるデータも増えるので、新たな検出情報が入力された段階で、蓄積データまたは類似のデータから、実火災または非火災、燃え草は何であるかを推論することができる。さらにその推論結果に対する正解データが入力されるので、実火災、非火災問わず火災発報のタイミングで発報理由を火災受信機1に学ばせることができ、正確な推論結果を出力することが可能になる。
【0046】
推論モデル24を取得した推論装置30は、取得した推論モデル24に入力情報を入力することで、推論結果を得る。例えば、火災感知器3により検出された火災による物理量の検出情報が推論装置30に入力されると、火災発生の可能性が推論結果として出力され、火災受信機1においてその推論結果が表示される。火災受信機1に表示された推論結果は、火災報知システム200の管理者等により、早期避難又は火災予防に利用されうる。
【0047】
学習装置20及び推論装置30は、一台のサーバ装置によって実現されてもよいし、クラウドサーバによって実現されてもよい。また、
図1では1台の火災受信機1が学習装置20に接続された例を示すが、複数台の火災受信機1が学習装置20に接続されていてもよい。この場合、複数の火災受信機1からの対応付けデータ16に基づいて、学習装置20によって推論モデル24が生成される。
【0048】
以上のように、本実施の形態の火災受信機1は、取得部としての伝送回路11及び制御部10と、正解データ入力部としての操作装置13と、対応付け部17とを備える。取得部は、火災感知器3が検出対象を検出して出力した検出情報を取得する。正解データ入力部は、火災感知器3からの発報信号を受信したとき、取得部が取得した検出情報に対応する、実火災であるか非火災であるかを含む原因情報の正解データとして入力を受け付ける。対応付け部17は、検出情報と正解データとを対応づける。
【0049】
このため、検出情報と正解データとを対応付けた情報を、学習装置20の学習情報として利用することができる。また、本実施の形態の正解データ入力部は、火災受信機1に設けられているので、火災感知器3が発報したときに現場にいる管理者等のユーザは、正解データを入力しやすい。管理者は、火災感知器3が発報したときに発報現場に行って目視で火災発生の有無及びその状況を確認するため、この管理者が監視する火災受信機1に正解データ入力部を設けることで、速やかかつ正確な入力を管理者に促すことができる。
【0050】
(変形例)
火災受信機1は、火災感知器3からの発報信号を取得したときに加えて、異常検出時に、正解データ入力部である操作装置13にて、ユーザからの原因情報の入力を受け付けてもよい。火災受信機1による異常検出時とは、例えば、定期監視において、火災感知器3から異常信号を受信したとき、又は火災感知器3からの情報に基づいて異常の発生を検出したとき、である。火災受信機1は、異常検出時に、
図3で例示した正解データ入力画面140に相当する入力画面を、表示装置14に表示する。ここで表示される入力画面は、火災ではなく実際の異常発生の有無と、その詳細情報とを入力する画面である。
【0051】
対応付け部17は、異常検出時の検出情報とその正解データとを対応づけ、対応付けデータ16を生成する。対応付けデータ16には、火災感知器3から送信された物理量の値が、検出情報161として記憶される。そして、正解データ入力部にユーザによって入力された異常発生の有無が、実火災/非火災情報163に相当する情報として記憶され、入力された異常の詳細情報が、詳細情報164に相当する情報として記憶される。
【0052】
このように、火災受信機1による異常検出時に、検出情報と正解データとを対応付けた対応付けデータ16が生成されることで、対応付けデータ16を学習装置20の学習情報として利用することができる。異常検出時に生成された対応付けデータ16は、推論装置30によって、火災感知器3の故障予知又はメンテナンス時期のユーザへの報知等に利用されうる。
【符号の説明】
【0053】
1 火災受信機、2 感知器回線、3 火災感知器、4 発信機、5 地区音響装置、6 移報回線、7 防排煙装置、10 制御部、11 伝送回路、12 移報回路、13 操作装置、14 表示装置、15 記憶部、16 対応付けデータ、17 対応付け部、18 通信装置、20 学習装置、21 通信装置、22 モデル生成部、23 記憶部、24 推論モデル、30 推論装置、100 学習システム、140 正解データ入力画面、141 検出情報表示、142 実火災入力、143 非火災入力、144 実火災詳細入力、145 非火災詳細入力、161 検出情報、162 原因情報、163 非火災情報、164 詳細情報、200 火災報知システム、300 ネットワーク。