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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130937
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】車両用トリム
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B60R13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040910
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田岡 裕司
(72)【発明者】
【氏名】三歩一 泰昭
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB01
3D023BC01
3D023BD02
3D023BE03
3D023BE35
(57)【要約】
【課題】トリム本体に対する補強部材の組み付け作業にかかる工程を簡略化する。
【解決手段】車両用トリムは、切欠き状の開口(13)が形成されたトリム本体(12)と、トリム本体の裏面の開口の周縁部分に取り付けられた補強部材(50)とを備える。トリム本体は、第1パネル部(18)と、第1パネル部(18)と曲げ部(19)を介して連続した、トリム本体の端縁部分を構成する第2パネル部(20)とを有する。開口は、第2パネル部(20)から第1パネル部(18)に亘って広がる。補強部材は、第1パネル部に設けられた溶着座(32)に宛がって固定され、且つ第2パネル部に設けられた被掛止め部(38)に掛け止められる。補強部材を第2パネル部に掛け止める方向は、補強部材を溶着部に宛がう方向と対応する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切欠き状の開口(13)が形成されたトリム本体(12)と、
前記トリム本体(12)の裏面の前記開口(13)の周縁部分に取り付けられた補強部材(50)と、を備え、
前記トリム本体(12)は、第1パネル部(18)と、該第1パネル部(18)と曲げ部(19)を介して連続した、当該トリム本体(12)の端縁部分を構成する第2パネル部(20)と、を有し、
前記開口(13)は、前記第2パネル部(20)から前記第1パネル部(18)に亘って広がり、
前記補強部材(50)は、前記第1パネル部(18)に設けられた固定部(32)に宛がって固定され、且つ前記第2パネル部(20)に設けられた被掛止め部(38)に掛け止められ、
前記補強部材(50)を前記第2パネル部(20)に掛け止める方向は、前記補強部材(50)を前記固定部(32)に宛がう方向と対応する
ことを特徴とする車両用トリム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用トリムにおいて、
前記補強部材(50)は、前記第1パネル部(18)に溶着されることで固定される、
ことを特徴とする車両用トリム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用トリムにおいて、
前記被掛止め部(32)は、前記第2パネル部(20)の端縁に設けられ、
前記補強部材(50)の前記被掛止め部(38)に掛け止められる掛止め部(62)は、前記第2パネル部(20)の端縁に固定される、
ことを特徴とする車両用トリム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用トリムにおいて、
前記第2パネル部(20)の前記被掛止め部(38)に対応する表側の部分には、当該第2パネル部(20)の裏面側に凹んだ凹部(40)が形成され、
前記掛止め部(62)は、前記第2パネル部(20)の表側に回り込むように前記被掛止め部(38)に掛け止められ、前記凹部(40)に収容される、
ことを特徴とする車両用トリム。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用トリムにおいて、
前記第2パネル部(20)のうち前記凹部(40)を含む端縁部分は、車両(1)のボディ(9)に装着されたシール部材(80)によって覆われる
ことを特徴とする車両用トリム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用トリムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両が前方や側方から衝撃を受けたときに、後席に居る乗員を保護すべく、エアバッグ装置を、リアサイドトリムなどの車両用トリムの裏側に組み込んで装備することが知られている。このことは、例えば特許文献1に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-79863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようにエアバッグ装置が車両用トリムの裏側に配置される構成では、エアバッグ装置の作動時に、エアバッグを車室内に向けて通すための開口が当該トリムに形成される。この開口は、トリムの側方に開放される切欠き状とされる場合がある。その場合、トリムの剛性が開口周りで低下し、トリムが開口の周縁部分で撓みやすくなる。
【0005】
そこで、車両用トリムを、トリム本体の裏面の開口の周縁部分に補強部材を取り付けた構成とすることが考えられる。しかし、トリム本体は、単なる平板状でなく、板厚方向が互いに異なる方向に向く複数のパネル部を含む。上記切欠き状の開口がトリム本体の端縁部分を構成するパネル部から隣り合うパネル部に亘って広がる場合、それら各パネル部に対して溶着により補強部材を固定する構成を採り得るが、互いに異なる方向への溶着作業を行う必要がある。そのため、トリム本体に対する補強部材の組み付け作業にかかる工程が複雑化する。
【0006】
本発明の目的は、トリム本体に対する補強部材の組み付け作業にかかる工程を簡略化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、トリム本体を構成する複数のパネル部のうち一のパネル部に対して補強部材を宛がうのに併せて、一のパネル部と隣り合う他のパネル部に補強部材を掛け止められるように、車両用トリムの構成を工夫した。
【0008】
具体的には、第1の発明は、車両用トリムを対象とする。第1の発明に係る車両用トリムは、切欠き状の開口が形成されたトリム本体と、前記トリム本体の裏面の前記開口の周縁部分に取り付けられた補強部材とを備える。前記トリム本体は、第1パネル部と、該第1パネル部と曲げ部を介して連続した、当該トリム本体の端縁部分を構成する第2パネル部とを有する。前記開口は、前記第2パネル部から前記第1パネル部に亘って広がる。前記補強部材は、前記第1パネル部に設けられた固定部に宛がって固定され、且つ前記第2パネル部に設けられた被掛止め部に掛け止められる。前記補強部材を前記第2パネル部に掛け止める方向は、前記補強部材を前記固定部に宛がう方向と対応する。
【0009】
第2の発明は、第1の発明の車両用トリムにおいて、前記補強部材が、前記第1パネル部に溶着されることで固定される、車両用トリムである。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明の車両用トリムにおいて、前記被掛止め部が、前記第2パネル部の端縁に設けられる、車両用トリムである。前記補強部材の前記被掛止め部に掛け止められる掛止め部は、前記第2パネル部の端縁に固定される。
【0011】
第4の発明は、第3の発明の車両用トリムにおいて、前記第2パネル部の前記被掛止め部に対応する表側の部分に、当該第2パネル部の裏面側に凹んだ凹部が形成される、車両用トリムである。前記掛止め部は、前記第2パネル部の表側に回り込むように前記被掛止め部に掛け止められ、前記凹部に収容される。
【0012】
第5の発明は、第4の発明の車両用トリムにおいて、前記第2パネル部のうち前記凹部を含む端縁部分が、車両のボディに装着されたシール部材によって覆われる、車両用トリムである。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、補強部材が第1パネル部に対しては固定部に固定される一方、第2パネル部に対しては被掛止め部に掛け止められる。そして、補強部材を第2パネル部に掛け止める方向は、補強部材を固定部に宛がう方向と対応する。このような車両用トリムの製造においては、トリム本体に補強部材を組み付けるときに、第1パネル部の固定部に補強部材を宛がうのに併せて、第2パネル部の被掛止め部に補強部材を掛け止めることができる。これにより、第2パネル部に補強部材を固定するための作業を、第1パネル部に補強部材を固定する作業とは別に行わずに済む。したがって、トリム本体に対する補強部材の組み付け作業にかかる工程を簡略化できる。
【0014】
第2の発明によれば、補強部材が第1パネル部に溶着されることで固定されるので、補強部材をトリム本体に強固に固定できる。このことは、車両用トリムの剛性を開口周りで好適に高めるのに有利である。
【0015】
第3の発明によれば、被掛止め部が第2パネル部の端縁に設けられ、補強部材が第2パネルの端縁に固定される。そのことで、当該トリムの開口の周縁部分の剛性を、開口の開放端に対応する位置に至るまで補強部材により補強できる。これにより、当該トリムの開口の周縁部分に生じる変形を効果的に抑制できる。
【0016】
第4の発明によれば、掛止め部が、第2パネル部の被掛止め部に対応する表側の部分に形成された凹部に収容される。それにより、乗員が掛止め部の表側に対応する部分に触れたときの引っ掛かりを抑制または無くすことができる。また、車内側から補強部材の掛止め部が見えたとしても、当該トリムの見栄えを良くできる。
【0017】
第5の発明によれば、第2パネル部のうち凹部を含む端縁部分がシール部材によって覆われる。そのことで、補強部材の掛止め部は、凹部と共にシール部材により隠蔽される。これにより、補強部材の掛止め部が当該トリムの表側に露出しても、車両内装の見栄えが損なわれないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、車両用トリムが適用される車両を示す側面図である。
図2図2は、車両用トリムが設けられた車両を車室内から見た図である。
図3図3は、図2のIII-III線における断面図である。
図4図4は、車両用トリムを表側から例示する斜視図である。
図5図5は、車両用トリムを裏側から例示する斜視図である。
図6図6は、車両用トリムを裏側から例示する分解斜視図である。
図7図7は、図5のVIIで囲んだ車両用トリムの要部を角度を変えて示す斜視図である。
図8図8は、トリム本体の要部を例示する斜視図である。
図9図9は、車両用トリムの要部を例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
なお、以下の実施形態では、便宜上、車両前後方向における前側を「前」、後側を「後」と称し、車両前方を向いて車幅方向における左側を「左」、右側を「右」と称し、車高方向における上側を「上」、下側を「下」と称する。また、第1、第2、第3…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられ、その語句の数や何らかの順序までも限定するものではない。
【0021】
《実施形態》
この実施形態では、本発明に係る車両用トリムとして、タイヤハウストリム10を例に挙げて説明する。タイヤハウストリム10は、図1に破線で示すように、車両1の後部における両側部にそれぞれ設けられる。タイヤハウストリム10は、後輪2のタイヤハウス(不図示)を覆う内装部材である。図2に示すように、タイヤハウストリム10は、概ね後部座席3とリアドア4との間に配置される。
【0022】
タイヤハウストリム10は、タイヤハウス外周の上側を覆うべく車室内へアーチ状をなすように形成される。タイヤハウストリム10は、前端がフロアパネル5側に位置し、後側に向かうほど上方へ延び、後端が当該タイヤハウストリム10の上端部を構成する。タイヤハウストリム10の前端には、スカッフプレート6が接続される。タイヤハウストリム10の上端部には、ピラートリム7が接続される。タイヤハウストリム10の後部には、トランクサイドトリム8が接続される。
【0023】
車両1には、サイドエアバッグ装置100が装備される。サイドエアバッグ装置100は、車両1の側面衝突時などに作動して乗員への衝撃を軽減するための装置であり、図3に示すように、タイヤハウストリム10の裏側に備え付けられる。タイヤハウストリム10は、サイドエアバッグ装置100のための切欠き状の開口13を有する。具体的には、図4図6に示すように、タイヤハウストリム10は、トリム本体12と、補強部材50とを備える。
【0024】
トリム本体12は、樹脂製の部材であり、前後方向においても左右方向においても湾曲した形状に形成される。トリム本体12は、ポリプロピレン(PP)などの合成樹脂からなり、例えば射出成形により成形される。トリム本体12の前端部には、スカッフプレート6と接続される第1接続部14が設けられる。トリム本体12の上端部には、ピラートリム7と接続される第2接続部16が設けられる。トリム本体12は、第1パネル部18と、第2パネル部20と、第3パネル部22とを有する。
【0025】
第1パネル部18は、車幅方向における内側に臨む面を含む部分であり、トリム本体12の大半を構成する。第2パネル部20は、第1パネル部18と曲げ部19を介して連続し、トリム本体12の車幅方向における外側の端縁部分を構成する。第1パネル部18および第2パネル部20は、トリム本体12の長手方向における両端に亘って延びる。第3パネル部22は、フロアパネル5に沿って配置される部分であり、第1パネル部18における第1接続部14側の部分および第1接続部14に連続して設けられる。
【0026】
第1パネル部18は、車幅方向においてうねるような形状に形成される。第1パネル部18は、第1サブパネル部18aと、第2サブパネル部18bと、第3サブパネル部18cとを有する。第1サブパネル部18aは、第1パネル部18における第2パネル部20側の部分を構成し、板厚方向が概ね左右方向に対応する。第2サブパネル部18bは、第1サブパネル部18aの第2パネル部20とは反対側に連続し、板厚方向が概ね上下方向に対応する。第3サブパネル部18cは、第2サブパネル部18bの第1サブパネル部18aとは反対側に連続し、板厚方向が概ね左右方向に対応する。
【0027】
切欠き状の開口13は、第2パネル部20の車幅方向における外側(図4等に示す例では右側)に開放され、第2パネル部20から第1パネル部18に亘って広がる。この開口13は、平面視でトリム本体12の長手方向に沿って長い概ね長方形状に、車幅方向における第2パネル部20の外側端縁から第1パネル部18の略中央に至る幅で形成される。当該開口13は、サイドエアバッグ装置100の作動時にエアバッグ104が車室内に向けて通るためのものである。
【0028】
図2および図3に示すように、トリム本体12には、開口13を閉塞するようにリッドパネル108が取り付けられる。リッドパネル108には、エアバッグドア110が設けられる。エアバッグドア110は、片開きタイプのものであり、コ字状の破断予定部112によって区画して形成される。破断予定部112は、サイドエアバッグ装置100の作動時に破断する部分であり、破断されることでエアバッグドア110の外縁を構成する。
【0029】
リッドパネル108の裏面には、V字状の溝114が、破断予定部112に対応するように形成される。破断予定部112は、溝114に対応する薄肉部分(脆弱部分)により構成される。また、リッドパネル108の裏面には、筒状のガイド壁116が一体に設けられる。ガイド壁116は、エアバッグ104の膨出を案内するガイドとして機能する。サイドエアバッグ装置100は、リッドパネル108の裏側に配置され、ガイド壁116の内側に位置する。
【0030】
サイドエアバッグ装置100は、ケース102と、エアバッグ104と、インフレータ106とを備える。ケース102は鋼鉄製の部材である。ケース102の開放端は、リッドパネル108の裏面に向けられる。サイドエアバッグ装置100は、車両1のボディ9に固定されたブラケット118に支持される。エアバッグ104は、折り畳まれてケース102内に収容される。インフレータ106は、エアバッグ104を膨張させるためのガスを発生するガス発生器であって、詳細な図示は省略するが、ケース102の底面に取り付けられる。
【0031】
図5および図6に示すように、トリム本体12の裏面には、複数の第1取付座24が設けられる。複数の第1取付座24は、トリム本体12の長手方向における開口13の両側に分けて配置される。例えば、第1取付座24は、開口13よりも前側に2つ、開口13よりも後側に1つ設けられる。前側に設けられた2つの第1取付座24のうち、一の第1取付座24は第2パネル部20寄りに位置し、他の第1取付座24は第1パネル部18における第2パネル部20とは反対側の端縁寄りに位置する。後側に設けられた第1取付座24は、第1パネル部18における車幅方向における略中央に位置する。
【0032】
各第1取付座24は、トリム本体12の裏側に突出し、トリム本体12の裏面に沿う方向における一方側の側面が開放されたドッグハウス形状の構造部である。各第1取付座24の突出端面を構成する着座部26には、取付孔27が形成される。取付孔27は、第1取付座24の側方に開放される。各第1取付座24には、第1クリップ70が取り付けられる。第1クリップ70は、ブロック状のアンカー部を有する留め具である。第1クリップ70は、取付孔27の開放端から奥側へスライド挿入することで、着座部26に組み付けられる。
【0033】
トリム本体12の裏面には、複数の補強リブ30が設けられる。補強リブ30は、第3パネル部22に格子状に形成される。補強リブ30は、第1パネル部18と第2パネル部20とに亘って曲げ部19に跨がるように複数形成される。補強リブ30は、トリム本体12における開口13の周縁部分に形成される。補強リブ30は、開口13を除く外縁部分にも形成される。これら各補強リブ30は、その形成箇所に応じた態様で延びる。
【0034】
トリム本体12の裏面にはさらに、複数の溶着座32が設けられる(図6参照)。溶着座32は、固定部の一例である。複数の溶着座32は、トリム本体12における開口13の外周に互いに間隔をあけて配置される。例えば、溶着座32は開口13よりも前側に1つ、開口13よりも後側に1つ、開口13に対して車幅方向における内側に4つ設けられる。開口13に対して前後に設けられた各溶着座32は、第2パネル部20寄りに位置し、第1サブパネル部18aおよび曲げ部19と一体に形成される。他の4つの溶着座32は、開口13寄りに位置し、第2サブパネル部18bおよび第3サブパネル部18cと一体に形成される。
【0035】
各溶着座32は、トリム本体12の裏側に突出し、トリム本体12の裏面に沿う方向における一方側の面が開放されたドッグハウス形状の構造部である。各溶着座32の突出端面を構成する固定面部34には、板状の第1溶着片36が設けられる。各第1溶着片36は、トリム本体12に補強部材50を溶着するためのものである。本例において、第1溶着片36の板厚方向は、全ての溶着座32で揃えられる。第1溶着片36の板厚方向は、全ての溶着座32で揃っていなくてもよい。
【0036】
また、トリム本体12の第2パネル部20には、2つの被掛止め部38が設けられる。2つの被掛止め部38は、第2パネル部20の端縁のうち開口13の前側と後側において当該開口13の開放端寄りの位置に形成される。図8に示すように、第2パネル部20の各被掛止め部38に対応する表側の部分には、当該第2パネル部20の裏面側に凹んだ凹部40が形成される。凹部40は、第2パネル部20の外縁をなす端面で開放される。
【0037】
被掛止め部38は、トリム本体12の裏側にやや迫り出すように設けられた板状部である。被掛止め部38は、支持板部42と、突片44とを有する。支持板部42は、凹部40の底面を構成する。突片44は、支持板部42から凹部40の開放側に突出する部分である。突片44は、支持板部42のうち凹部40の開放側の端縁における中程に設けられる。被掛止め部38は、支持板部42および突片44を合わせた態様で凸形に形成される。
【0038】
補強部材50は、トリム本体12の開口13の周縁部分を補強する樹脂製の部材である。図5および図6に示すように、補強部材50は、トリム本体12の裏面における開口13の周縁部分に取り付けられる。補強部材50は、トリム本体12の開口13の周縁部分に沿うように略コ字状に形成される。補強部材50は、ポリプロピレン(PP)などの合成樹脂からなり、例えば射出成形により成形される。補強部材50の剛性は、トリム本体12の剛性よりも高い。補強部材50は、複数の溶着部52を有する。
【0039】
溶着部52は、補強部材50における各溶着座32に対応する部分に設けられる。図7に示すように、各溶着部52は、一対の第2溶着片54からなる。一対の第2溶着片54は、それぞれ板状に形成され、板厚方向を揃えて互いに間隔をあけて並ぶ。一対の第2溶着片54の間には、挿通孔56が形成される。挿通孔56には、第1溶着片36が挿通される。第1溶着片36は、挿通孔56に挿通されると、一対の第2溶着片54の間に位置する。各第2溶着片54は、振動溶着により、第1溶着片36と共に溶融して潰れ、一体化される(図7では便宜上、溶着前の状態を示す)。
【0040】
補強部材50には、複数の第2取付座58が設けられる。複数の第2取付座58は、補強部材50の長さ方向に沿って互いに間隔をあけて配置される。各第2取付座58は、溶着部52の付近に配置される。例えば、第2取付座58は、補強部材50の両端寄りの位置にそれぞれ1つずつ設けられる。また、第2取付座58は、補強部材50の中程にある4つの溶着部52において隣り合う溶着部52の間にそれぞれ1つずつ設けられる。
【0041】
補強部材50における各第2取付座58の基部は、表側に開放されたボックス形状に形成される。各第2取付座58は、補強部材50の裏側に突出し、被装着板60を有する。被装着板60は、第2取付座58の突出方向と直交する方向に板厚方向が向く。本例において、被装着板60の板厚方向は、全ての第2取付座58で揃えられる。被装着板60の板厚方向は、全ての第2取付座58で揃っていなくてもよい。
【0042】
各第2取付座58には、第2クリップ72が取り付けられる。第2クリップ72は、一対の挟持片を有する留め具である。第2クリップ72は、被装着板60に被せてその被装着板60を一対の挟持片で挟み込ませることで、第2取付座58に装着される(図7参照)。
【0043】
補強部材50にはさらに、2つの掛止め部62が設けられる。2つの掛止め部62は、補強部材50の長さ方向における両端に設けられる。各掛止め部62は、補強部材50の裏側に突出し、トリム本体12の被掛止め部38に対応する位置まで延びる。各掛止め部62は、補強部材50がなすコ字状の開放側および表側に開放された概ね扁平なボックス状に形成される。各掛止め部62の先端部分には、引掛け片64が設けられる。
【0044】
図7および図9に示すように、引掛け片64は、補強部材50がなすコ字状の開放側に突出する部分であり、掛止め部62の基部側に若干折り返す断面L字状に形成される。引掛け片64には、嵌合孔66が形成される。掛止め部62は、被掛止め部38の突片44を嵌合孔66に嵌合させ、引掛け片64の折り返し部分を支持板部42の表側、つまり凹部40内に挿入することにより、被掛止め部38と係合される。このようにして、掛止め部62は、第2パネル部20の表側に回り込むように被掛止め部38に掛け止められ、凹部40に収容される。
【0045】
補強部材50の各掛止め部62を第2パネル部20の対応する被掛止め部38に掛け止める方向は、補強部材50を各溶着座32に宛がう方向と対応する。そのため、補強部材50をトリム本体12に取り付けるときには、トリム本体12の各第1溶着片36を補強部材50の対応する挿通孔56に挿通させて補強部材50を各溶着座32に宛がうのに併せて、各掛止め部62を第2パネル部20の対応する被掛止め部38に掛け止めることができる。そして、各溶着部52で一対の第2溶着片54を第1溶着片36と振動溶着することにより、補強部材50をトリム本体12に取り付けられる。
【0046】
上記構成のタイヤハウストリム10を車両1のボディ9に組み付けるときには、まず、各第1取付座24に第1クリップ70を取り付け、各第2取付座58に第2クリップ72を取り付ける。そして、これら各第1クリップ70および各第2クリップ72を、車両1のボディ9の対応する取付孔(不図示)に挿入することで、タイヤハウストリム10を当該ボディ9に留めることができる。
【0047】
車両1のボディ9は、多重パネル構造を有し、金属製の車体パネル9aを複数枚重ね合わせて構成される。複数枚の車体パネル9aは、タイヤハウストリム10の車幅方向における外側の近傍位置で互いに接合される。その車体パネル9aの接合部分には、ウェザストリップと呼ばれるシール部材80が装着される。シール部材80は、車両1のボディ9とタイヤハウストリム10との間の隙間を覆うように設けられる。
【0048】
図3に示すように、シール部材80は、リッドパネル108のうち車幅方向における外側の端縁部分の表側に密着するように重ねられる。また、図9に示すように、シール部材80は、トリム本体12の第2パネル部20のうち車幅方向における外側の端縁部分の表側にも密着するように重ねられる。そのことで、第2パネル部20のうち凹部40を含む端縁部分は、補強部材50の掛止め部62(引掛け片64)もろともシール部材80によって覆われる。よって、それら凹部40および掛止め部62は、シール部材80により隠蔽されて乗員から視認されない。
【0049】
-実施形態の特徴-
この実施形態のタイヤハウストリム10では、補強部材50が第1パネル部18に対しては溶着座32に固定される一方、第2パネル部20に対しては被掛止め部38に掛け止められる。そして、補強部材50を第2パネル部20に掛け止める方向は、補強部材50を溶着座32に宛がう方向と対応する。このようなタイヤハウストリム10の製造においては、トリム本体12に補強部材50を組み付けるときに、第1パネル部18の溶着座32に補強部材50を宛がうのに併せて、第2パネル部20の被掛止め部38に補強部材50を掛け止めることができる。これにより、第2パネル部20に補強部材50を固定するための作業を、第1パネル部18に補強部材50を固定する作業とは別に行わずに済む。したがって、トリム本体12に対する補強部材50の組み付け作業にかかる工程を簡略化できる。
【0050】
この実施形態のタイヤハウストリム10では、補強部材50が第1パネル部18に溶着されることで固定されるので、補強部材50をトリム本体12に強固に固定できる。このことは、タイヤハウストリム10の剛性を開口13周りで好適に高めるのに有利である。
【0051】
この実施形態のタイヤハウストリム10では、被掛止め部38が第2パネル部20の端縁に設けられ、補強部材50が第2パネル部20の端縁に係合される。そのことで、当該トリム10の開口13の周縁部分の剛性を、開口13の開放端に対応する位置に至るまで補強部材50により補強できる。これにより、当該トリム10の開口13の周縁部分に生じる変形を効果的に抑制できる。
【0052】
この実施形態のタイヤハウストリム10では、掛止め部62が、第2パネル部20の被掛止め部38に対応する表側の部分に形成された凹部40に収容される。それにより、乗員が掛止め部62の表側に対応する部分に触れたときの引っ掛かりを抑制または無くすことができる。また、車内側から補強部材50の掛止め部62が見えたとしても、当該トリム10の見栄えを良くできる。
【0053】
この実施形態のタイヤハウストリム10では、第2パネル部20のうち凹部40を含む端縁部分がシール部材80によって覆われる。そのことで、補強部材50の掛止め部62は、凹部40と共にシール部材80により隠蔽される。これにより、補強部材50の掛止め部62が当該トリム10の表側に露出しても、車両1内装の見栄えが損なわれないようにできる。
【0054】
《その他の実施形態》
上記実施形態では、補強部材50がトリム本体12の第1パネル部18に溶着により固定されるとしたが、これに限らない。例えば、補強部材50は、トリム本体12の第1パネル部18に爪片による引っ掛け構造を用いて固定されてもよい。
【0055】
具体的な構成を例示すると、トリム本体12の第1パネル部18には固定部として複数の爪片が設けられ、補強部材50には爪片に対応する複数の係合孔が形成される。そして、補強部材50は、爪片を係合孔に挿入し、係合孔の周縁部分に爪片を引っ掛けることで、トリム本体12の第1パネル部18に固定される。補強部材50は、その他の任意の手法または構造を利用してトリム本体12の第1パネル部18に固定されてもよい。
【0056】
上記実施形態では、被掛止め部38が第2パネル部20の端縁に設けられるとしたが、これに限らない。被掛止め部38は、第2パネル部20の幅方向における中途部分の裏面に突出させて設けられてもよい。被掛止め部38は、補強部材50により第1パネル部18から第2パネル部20にかけて効果的に補強する観点から、第2パネル部20の端縁寄りに位置することが好ましい。被掛止め部38は、補強部材50の掛止め部62が掛け止められるのであれば、如何なる態様で設けられてもよい。
【0057】
上記実施形態では、トリム本体12の開口13の周縁部分が1つの補強部材50によって全長に亘り補強される構成を例示したが、これに限らない。補強部材50は、複数に分割して設けられてもよい。この場合、複数の補強部材のうち少なくとも1つの補強部材が掛止め部62を有し、その掛止め部62によりトリム本体12の第2パネル部20に設けられた被掛止め部38に掛け止められていればよい。
【0058】
上記実施形態では、トリム本体12に形成された切欠き状の開口13がサイドエアバッグ装置100の作動時にエアバッグ104が車室内に向けて通るためのものであるとしたが、これに限らない。当該開口13は、例えば、シートベルト装置やポケット(物入れ)、エアコンの吹出口、日よけ用シェードなどの装備に利用されるものであってもよい。
【0059】
上記実施形態では、本発明に係る車両用トリムについてタイヤハウストリム10を例に挙げて説明したが、これに限らない。タイヤハウストリム10は、車両用トリムの一例に過ぎず、ピラートリムやドアトリム、トランクサイドトリムなど、タイヤハウストリム10以外の車両用トリムにも適用することが可能である。
【0060】
以上のように、本発明の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。上記実施形態について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においてさらに色々な変形が可能なこと、またそうした変形も本開示の技術の範囲に属することは、当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明は、車両用トリムについて有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 車両
9 ボディ
10 タイヤハウストリム(車両用トリム)
12 トリム本体
13 開口
18 第1パネル部
20 第2パネル部
32 溶着部(固定部)
38 被掛止め部
40 凹部
50 補強部材
62 掛止め部
80 シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9