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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130939
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ウォーターポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/043 20060101AFI20240920BHJP
   F04D 29/046 20060101ALI20240920BHJP
   F04D 13/16 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F04D29/043 Z
F04D29/046 D
F04D13/16 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040913
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】藤本 征也
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB07
3H130AB22
3H130AB47
3H130AC13
3H130BA66D
3H130CA01
3H130CA21
3H130CB01
3H130CB06
3H130DA03X
3H130DB03X
3H130DC01Z
3H130DD03Z
3H130EA01A
3H130EA01C
3H130EA01D
3H130EA01E
3H130EA07A
3H130EA07C
3H130EA07D
3H130EA07E
3H130EB01A
3H130EB01C
3H130EB01D
3H130EB01E
(57)【要約】
【課題】ウォーターポンプの効率を向上させる。
【解決手段】シャフト(165)と、シャフトに対して回転可能なロータ(150)と、ロータと対向して設けられたステータ(160)と、シャフト(165)とロータ(150)とステータ(160)が収容されるハウジング(120,130)と、を備え、ハウジングは、流体を吸入する円筒状の吸入部(123)を有し、ロータ(150)は、シャフト(165)に対して回転可能に支持されたロータ本体(151)と、ロータ本体に結合されたインペラ(140)とを有し、吸入部は、その内側にインペラ(140)の回転軸の中心となる部位(142a)を支持する軸止部(124)を有し、ロータの回転軸の中心となる部位(142a)は、シャフト(165)の軸方向に沿って延在する断面が半球状の円柱体(142)を有し、円柱体は軸止部(124)の底面と接触している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトに対して回転可能なロータと、
前記ロータと対向して設けられたステータと、
前記シャフトと前記ロータと前記ステータが収容されるハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、流体を吸入する円筒状の吸入部を有し、
前記ロータは、前記シャフトに対して回転可能に支持されたロータ本体と、当該ロータ本体に結合されたインペラとを有し、
前記吸入部は、その内側に前記インペラの回転軸の中心となる部位を支持する軸止部を有し、
前記ロータの回転軸の中心となる部位は、前記シャフトの軸方向に沿って延在する断面が半球状の円柱体を有し、
前記円柱体は前記軸止部の底面と接触している、
ウォーターポンプ。
【請求項2】
前記軸止部の底面が円錐状であり前記円柱体とは斜面接触である、
請求項1に記載のウォーターポンプ。
【請求項3】
前記軸止部と前記円柱体とは点接触である、
請求項1に記載のウォーターポンプ。
【請求項4】
前記円柱体は前記インペラから延在している、請求項1~3のいずれか1項に記載のウォーターポンプ。
【請求項5】
前記円柱体は前記ロータ本体より延在している、請求項1に記載のウォーターポンプ。
【請求項6】
前記ロータ本体は、前記シャフトの軸方向に沿って延在するボス部を有し、前記ボス部と前記インペラの基部とが一体に結合され、
前記ボス部の前記基部から飛び出た凸部分の外周面が、凸状に湾曲した曲面を形成している、請求項4に記載のウォーターポンプ。
【請求項7】
前記凸部分は、周方向に所定の間隔で等配している、請求項6に記載のウォーターポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォーターポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンのシリンダブロックに取り付けられ、そのエンジンの各部に供給する冷却水(クーラント)を循環させる、モータを備えたウォーターポンプが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
この特許文献1のウォーターポンプでは、軸70の他端がケーシング41の軸支持部46に挿入されるように構成されている。
【0004】
この軸支持部46は、軸70の他端の頂面と側面の両方に面接触している構造が開示されている(特許文献1の図9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-202312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行文献1のウォーターポンプにおいては、上述したような構造のため、回転体と非回転体の接触抵抗が大きいことからポンプとしての効率が低下するおそれがあった。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、ウォーターポンプとしての効率を一段と向上させることを課題の一例とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のウォーターポンプは、シャフトと、前記シャフトに対して回転可能なロータと、前記ロータと対向して設けられたステータと、前記シャフトと前記ロータと前記ステータが収容されるハウジングと、を備え、前記ハウジングは、流体を吸入する円筒状の吸入部を有し、前記ロータは、前記シャフトに対して回転可能に支持されたロータ本体と、当該ロータ本体に結合されたインペラとを有し、前記吸入部は、その内側に前記インペラの回転軸の中心となる部位を支持する軸止部を有し、前記ロータの回転軸の中心となる部位は、前記シャフトの軸方向に沿って延在する断面が半球状の円柱部を有し、前記円柱部は前記軸止部の底面と接触している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一例である第1乃至第3の実施の形態にかかるウォーターポンプを上方から視た場合の外観構成(A)および下方から視た場合の外観構成(B)を示す斜視図である。
図2】本発明の一例である第1の実施の形態にかかるウォーターポンプの構成を示す縦断面図である。
図3】本発明の一例である第1および第3の実施の形態にかかるウォーターポンプのポンプハウジングの構成を示す底面図(A)、および、下方から視た場合の斜視図(B)である。
図4】本発明の一例である第1および第2の実施の形態にかかるウォーターポンプのインペラを上方から視た場合の外観構成(A)および下方から視た場合の外観構成(B)を示す斜視図である。
図5】本発明の一例である第1および第2の実施の形態にかかるウォーターポンプのロータ本体を上方から視た場合の外観構成(A)および下方から視た場合の外観構成(B)を示す斜視図である。
図6】本発明の一例である第1の実施の形態にかかるウォーターポンプのロータ本体およびインペラが一体となった場合の構成を示す斜視図である。
図7】本発明の一例である第2の実施の形態にかかるウォーターポンプの構成を示す縦断面図である。
図8】本発明の一例である第3の実施の形態にかかるウォーターポンプの構成を示す縦断面図である。
図9】本発明の一例である第3の実施の形態にかかるウォーターポンプのロータ本体とインペラとの結合状態を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態>
本発明においては、第1の実施の形態から第3の実施の形態まであり、以下順に説明する。但し、全体の外観構成については第1乃至第3の実施の形態において全て共通である。
【0011】
<ウォーターポンプの全体構成>
図1は、本発明の一例である第1乃至第3の実施の形態にかかるウォーターポンプ100(200,300)を上方から視た場合の外観構成(A)および下方から視た場合の外観構成(B)を示す斜視図である。以下では、第1の実施の形態におけるウォーターポンプ100として説明する。
【0012】
図1に示すように、ウォーターポンプ100は、例えばエンジンの冷却水を移送するものであり、当該ウォーターポンプ100をエンジンルームに取り付けるための3つのフランジ135、その内部にインペラ140(図2)等を収容する側面視略円錐形のポンプハウジング120、その内部に駆動源であるモータ170(図2)を収容する円筒形状または略円筒形状のモータハウジング130を有している。
【0013】
ウォーターポンプ100のフランジ135は、モータハウジング130の外周面に対して互いに120度間隔かつ放射状に3方へ延びる部分である。フランジ135は、先端の略円形の開口部135aを有している。したがって、ウォーターポンプの100は、フランジ135の開口部135aを介してホース等を中継してエンジン(図示せず)等に取り付けられる。
【0014】
ウォーターポンプ100のポンプハウジング120は、内部にポンプとして作用するためのインペラ140を収容するポンプハウジング本体部121からなり、そのポンプハウジング本体部121の外周面の中心にはX軸方向に突出しインペラ140に冷却水を吸入(導入)するための円筒形状の吸入部123と、その吸入部123とは直交する径方向へ突出し、インペラ140から吸入した冷却水を外部へ吐出するための円筒形状の吐出部125とを有している。
【0015】
ウォーターポンプ100のモータハウジング130は、後述するモータ170(図2)を収容する円筒形状のモータハウジング本体部131と、そのモータハウジング本体部131の底部を塞ぐカバー133とを有している。
【0016】
<第1の実施の形態>
続いて、本発明の一例である第1の実施の形態について図2乃至図6を参照しながら説明する。
【0017】
図2は、本発明の一例である第1の実施の形態にかかるウォーターポンプの構成を示す縦断面図である。図3は、本発明の一例である第1および第3の実施の形態にかかるウォーターポンプのポンプハウジングの構成を示す底面図(A)、および、下方から視た場合の斜視図(B)である。図4は、本発明の一例である第1および第2の実施の形態にかかるウォーターポンプのインペラを上方から視た場合の外観構成(A)および下方から視た場合の外観構成(B)を示す斜視図である。図5は、本発明の一例である第1および第2の実施の形態にかかるウォーターポンプのロータ本体を上方から視た場合の外観構成(A)および下方から視た場合の外観構成(B)を示す斜視図である。図6は、本発明の一例である第1の実施の形態にかかるウォーターポンプのロータ本体およびインペラが一体となった場合の構成を示す斜視図である。
【0018】
なお、第1の実施の形態において、説明の便宜上、軸Xに沿った矢印a方向を上側または一方側とする。軸Xに沿った矢印b方向を下側または他方側とする。ここで、矢印ab方向を上下方向またはX軸方向と称する。但し、上下方向は、鉛直方向とは必ずしも一致しない。また、矢印cd方向を径方向または水平方向と称し、軸Xから離れる矢印c方向を外側または径方向一方側、軸Xに近づく矢印d方向を内側または径方向他方側と称する。
【0019】
第1の実施の形態にかかるウォーターポンプ100は、図2に示すように、樹脂または金属等からなるポンプハウジング120と、樹脂または金属等からなるモータハウジング130とが一体に結合したハウジングを有している。
【0020】
ウォーターポンプ100では、ポンプハウジング120にはポンプ部として機能するインペラ140が収容され、モータハウジング130にはモータ部として機能するモータ170、および、モータ170を制御する制御部(図示せず)が収容されている。
【0021】
すなわちウォーターポンプ100は、主に、ポンプ部(インペラ140)、モータ部(モータ170)、および、制御部によって構成されている。制御部は、図示しないが、モータ170を回転駆動させるモータ駆動制御回路を構成する各種電子部品が実装された回路基板によって構成され、モータハウジング130の内部において例えばモータ170よりも下方のモータ収容空間130sに設けられている。
【0022】
<ポンプハウジング>
ポンプハウジング120は、図1乃至図3に示すように、側面視略円錐形のお椀形状からなるポンプハウジング本体部121と、そのポンプハウジング本体部121の頂部からX軸方向の上側(矢印a方向)に延びる吸入部123と、吸入部123とは直交する径方向の外側(矢印c方向)へ延びる吐出部125と、を有している。
【0023】
吸入部123は、例えば、水、冷却水等の流体を吸入する部位である。吐出部125は、吸入部123から吸入された流体がインペラ140の回転によって外部へ吐出(圧送)する部位である。すなわちウォーターポンプ100は、いわゆる遠心ポンプである。
【0024】
図3に示すように、ポンプハウジング120のポンプハウジング本体部121は、外周側の底面に環状の溝121mを有すると共に、その溝121mの内側にはインペラ140を収容可能な円錐状のインペラ収容空間120sを有している。ポンプハウジング本体部121の溝121mは、例えばOリング等のシール部材126(図2)が収容される空間である。
【0025】
ポンプハウジング本体部121は、吸入部123からインペラ収容空間120sに所定の長さだけ突出する軸止部124を有している。軸止部124は、吸入部123の内周面に対して、120度間隔で設けられた3本の腕部124aによって吸入部123と一体に結合されている。
【0026】
3本の腕部124aの中心には、円柱状の本体部124pが設けられ、その本体部124pの下側(矢印b方向)の端部には、後述するインペラ140の半球状の円柱体142の頭部142aと接触する円錐状の内周面124c(図2および図3)を有する円錐体部124bが一体に設けられている。すなわち、吸入部123の内側には、インペラ140の回転軸の中心となる部位である円柱体142の頭部142aを支持する軸止部124が設けられている。
【0027】
軸止部124の円錐体部124bは、その外周端に径方向(矢印cd方向)の外側へ延びた環状のフランジ部124dを有している。フランジ部124dは、吸入部123から吸入した流体をインペラ140の羽根149(図2)へ導く機能を有する方向変換部位である。
【0028】
<インペラ>
図2図4(A)および(B)に示すように、インペラ140は、熱可塑性樹脂材である例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)の射出成形により形成された成型品である。インペラ140は、円盤状の主板141と、その主板141の中心に上側(矢印a方向)に突出した円柱体142と、その主板141の上に立設された複数の羽根149とを有している。
【0029】
主板141は、薄い円盤状の部材であり、その中心に向かって上側(矢印a方向)へ凸の山状に盛り上がった基部としての膨出部141p(図2)を有している。膨出部141pにおいては、平坦な天面141pt(図4(A))の中心から上側(矢印a方向)へ向かって円柱体142の頭部142aが突出している。この円柱体142の頭部142aは、インペラ140の回転軸の中心となる部位であり、上述した軸止部124の円錐状の内周面124cと斜面接触する部分である。インペラ140の主板141、膨出部141p、円柱体142、および、羽根149は全て一体に形成されている。
【0030】
膨出部141pは、円柱体142の頭部142aを中心として、その膨出部141pの端縁に沿って弧状に湾曲した3個の貫通孔からなる長孔145hを有している。3個の長孔145hは、それぞれ独立して形成されており、円柱体142の中心(X軸)に対して120度の間隔で設けられている。なお、長孔145hは、3個に限るものではなく、2個、4個以上であってもよい。
【0031】
円柱体142は、膨出部141pよりも下側(矢印b方向)へ突出した所定長さの円柱状のシャフト支持部147(図2)を有している。シャフト支持部147は、シャフト165の上側(矢印a方向)の先端部と接触して支持する部材である。
【0032】
シャフト支持部147は、その周囲に設けられた3個の支持片147a(図4(B))によって膨出部141pと一体に支持されている。支持片147aは、周方向において互いに隣り合う長孔145hと長孔145hとの間の部分である。
【0033】
シャフト支持部147の外径は、円柱体142の外径よりも大きい。シャフト支持部147の下側(矢印b方向)の端部には、上側(矢印a方向)に凹んだ円錐状のすり鉢状面147mが形成されている。
【0034】
すり鉢状面147mは、シャフト165の上側(矢印a方向)の半球状からなる先端部が斜面接触する部分である。ここで斜面接触とは、インペラ140が回転した際に、このような傾斜したすり鉢状面147mとシャフト165の先端部とが水平方向(矢印cd方向)に円を描くように線接触することをいう。
【0035】
シャフト支持部147の外径は、後述するロータ本体151(図2および図5(A))における円錐台部153の貫通孔153h(図2)の内径と同じであり、シャフト支持部147が円錐台部153の貫通孔153hに圧入されることにより、両者の軸心が一致することになる。
【0036】
複数の羽根149は、回転軸となる円柱体142の頭部142aを中心として放射状に配置されている。羽根149は、弧状に湾曲しており、頭部142aから径方向の外側へ離れるに連れてその高さが次第に低くなっている。この場合、羽根149は7枚設けられているが、これに限るものではなく、他の枚数であってもよい。
【0037】
<モータハウジング>
図2に示すように、モータハウジング130は、円筒形状のモータハウジング本体部131と、そのモータハウジング本体部131の上側(矢印a方向)の端部から径方向の外側(矢印c方向)へ向かって延びた環状のフランジ部分132と、モータハウジング本体部131の底部を塞ぐカバー133とを有している。
【0038】
モータハウジング本体部131のフランジ部分132は、ポンプハウジング本体部121の溝121m(図3)と対向配置される部位である。モータハウジング本体部131のフランジ部分132の外径とポンプハウジング本体部121の外径とは同じである。
【0039】
モータハウジング本体部131の底部には、カバー133が取り付けられており、これによりモータ170を収容可能なモータ収容空間130sを形成している。モータ収容空間130sは、モータ170のステータ160を収容した状態で樹脂180によりモールド成形する空間である。
【0040】
モータ収容空間130sは、樹脂180で完全に封止されるのではなく、カバー133の上側(矢印a方向)の部分であって、樹脂180の下側(矢印b方向)に当該樹脂180で封止されていない空間を有し、そこにモータ駆動制御回路を構成する各種電子部品が実装された回路基板(図示せず)が配置される。
【0041】
なお、金属等からなる所定の長さのシャフト165については、モータハウジング本体部131において軸Xを中心とした位置に配置され、その下側(矢印b方向)の端部が樹脂180によって一体にモールド成形されている。
【0042】
すなわち、シャフト165は、樹脂180によって回転不能な固定状態でモータ収容空間130sに取り付けられている。このため、シャフト165は、非回転であり、モータハウジング本体部131と一体に固定されている。なお、シャフト165の上側(矢印a方向)の先端部は、その外周面が断面半円状の曲面となっている。
【0043】
<ステータ>
モータ収容空間130sに固定されたシャフト165の外周側には、樹脂180によって封止されたステータ160が配置されている。
【0044】
このステータ160においては、インシュレータ(図示せず)を介してコイル162の巻回されたステータコア161が樹脂180によってモールド成形された状態で配置されている。つまり、ステータコア161およびコイル162は、樹脂180を介してモータハウジング本体部131と一体化されている。
【0045】
ステータコア161は、軟磁性材からなる電磁鋼板を複数枚積層された積層体によって形成されている。因みに、シャフト165の軸心はX軸であり、ステータコア161の軸心もX軸であり、両者は一致している。
【0046】
<ロータ>
図2に示すように、ロータ150は、シャフト165の周囲であって、シャフト165とステータ160との間に配置されている。
【0047】
ロータ150は、樹脂180によってモールド成形されておらず、モータ収容空間130sの内部であって、樹脂180によって封止されていない内側のロータ収容空間180sに配置されている。
【0048】
ロータ150は、シャフト165に対して回転可能に支持されたロータ本体151、そのロータ本体151に結合されたインペラ140、および、マグネット159を有している。図5に示すように、ロータ本体151は、熱可塑性樹脂材である例えばPPSの射出成形によって形成されている。因みに、インペラ140は、主にポンプハウジング120に収容され、ロータ本体151およびマグネット159は主にモータハウジング130に収容されている。
【0049】
ロータ本体151は、全体的に円筒形状を有するロータ本体部151a、そのロータ本体部151aの上側(矢印a方向)の端部から更に上側(矢印a方向)へ向かうに連れて次第に縮径する円錐台部153を有している。
【0050】
ロータ本体部151aは、軸Xを中心とした貫通孔151ahを有している。この貫通孔151ahの内径は、シャフト165の外径よりも僅かに大きく形成されている。この場合、ロータ本体部151aにおける貫通孔151ahの内周面と、シャフト165の外周面とはスリーブ軸受として機能する。
【0051】
これによりロータ本体部151aは、シャフト165に対して回転可能とすることができる。なお、これに限るものではなく、ロータ本体部151aに円筒状の焼結軸受を設けるようにしてもよい。
【0052】
ロータ本体部151aには、その外周面から径方向の外側へ突出する円盤状のフランジ部152が一体に形成されている。フランジ部152の外径は、ロータ収容空間180sの内径よりも小さく、ロータ本体151が回転した際にロータ収容空間180sを形成している樹脂180と接触することのない大きさである。フランジ部152と、ロータ本体部151aの下端面との距離は、ステータコア161の上下方向(矢印ab方向)における高さとほぼ等しい。
【0053】
円錐台部153は、軸Xを中心とした貫通孔153h(図2および図5)を有している。円錐台部153の貫通孔153hは、ロータ本体部151aの貫通孔151ahと軸心が一致しており、かつ、同じ内径を有し、互いに連通している。
【0054】
円錐台部153は、貫通孔153hの周囲であって、その貫通孔153hの周囲に形成された平坦な環状の周端面153tと、その周端面153tとロータ本体部151aの外周面とを繋ぎ、下側(矢印b方向)に向かって縮径する円錐状面153kとを有している。
【0055】
円錐台部153は、周端面153tおよび円錐状面153kの双方に跨ると共に、シャフト165のX軸方向に沿って上側(矢印a方向)へ延在する3個のボス部154が一体に設けられている。これら3個のボス部154は、軸Xを中心として互いに120度の間隔だけ離れて配置(等配)されている。なお、3個のボス部154は全て同じ構成を有している。
【0056】
ボス部154は、円錐台部153の周端面153tに沿った弧状に湾曲している。ボス部154は、図2および図5に示すように、周端面153tから上側(矢印a方向)へ所定の長さだけ延びた壁状の柱部分(以下、これを「壁柱部分」と呼ぶ。)154aと、ボス部154の基部である壁柱部分154aの上側(矢印a方向)の先端に形成された断面半球状の凸部分154bとによって形成されている。
【0057】
特に、凸部分154bは、周方向において所定の間隔だけ離れて等配され、長手方向に対して弧状に延び、かつその形状は断面半球状(図2)である。すなわち凸部分154bの外周面は、上側(矢印a方向)に向かって凸状に湾曲した半円状の曲面となって湾曲している。
【0058】
実際上、凸部分154bは、製造過程において、インペラ140の基部である膨出部141pの長孔145hに対して、ロータ本体151におけるボス部154の壁柱部分154aが下側(矢印b方向)から挿通された後、長孔145hから上側(矢印a方向)に飛び出た壁柱部分154aを熱カシメすることにより形成される。すなわち凸部分154bは、壁柱部分154aの一部であるが、熱カシメにより壁柱部分154aよりも径方向に大きくなっていることで、インペラ140の抜け止め作用が働くようになっている。
【0059】
この場合、図6に示すように、ロータ本体151におけるボス部154の凸部分154bだけがインペラ140の基部である膨出部141pから上側へ飛び出た状態になる。これにより、インペラ140とロータ本体151とは結合されて一体化され、ロータ本体部151aからインペラ140が上側(矢印a方向)に外れてしまうことが防止される。
【0060】
因みに、インペラ140およびロータ本体151は、双方ともに同系統のPPSの射出成形により形成されているため、溶着によってお互い強固に一体化されるが、必ずしも同系統の樹脂材に限るものではない。
【0061】
ロータ本体151のロータ本体部151aの外周面には、図2に示すように、フランジ部152の下端面と接触するように環状のマグネット159が固定されている。マグネット159は、所定の厚さを有する永久磁石からなり、ロータ本体部151aの下端面とマグネット159の下端面とは面一である。
【0062】
マグネット159の外径は、ロータ収容空間180sの内径よりも小さく、ロータ150が回転したときにマグネット159がロータ収容空間180sを形成している樹脂180と接触することはない。
【0063】
このようにモータ170は、ステータ160とロータ150によって構成されたインナーロータ型の三相のブラシレスDCモータである。但し、モータ170は、三相のブラシレスDCモータに限るものではなく、例えば単相ブラシレスDCモータ等、その他のモータであってもよい。
【0064】
<ウォーターポンプの動作>
実際にウォーターポンプ100が作動し、ロータ150とステータ160との電磁気的作用によりシャフト165を中心としてロータ本体151が回転すると、ロータ本体151と一体に固定されたインペラ140が回転し、吸入部123から吸入した流体を複数の羽根149の作用により径方向の外側(矢印c方向)の吐出部125から圧送することができる。
【0065】
このウォーターポンプ100では、吸入部123から吸入した流体がインペラ140の膨出部141pの天面141ptから飛び出したロータ本体151におけるボス部154の凸部分154bに衝突する。
【0066】
また、ウォーターポンプ100では、インペラ140における円柱体142の頭部142aが吸入部123と一体に設けられた軸止部124における円錐体部124bの内周面124c(底面)と斜面接触している。
【0067】
これにより、ウォーターポンプ100では、インペラ140における円柱体142の頭部142aと吸入部123の軸止部124との接触抵抗が小さくなり、かつ、インペラ140の円柱体142と吸入部123とを自動的に調心させることができる。すなわち、インペラ140における円柱体142の頭部142aは、インペラ140の回転中心となる部位となる。
【0068】
かくしてウォーターポンプ100は、インペラ140の軸心と吸入部123の軸心とが一致するので、最も効率の良い状態で流体を吸入部123から吐出部125へ流すことができる。
【0069】
なお、ウォーターポンプ100においては、インペラ140におけるシャフト支持部147のすり鉢状面147mに対してシャフト165の上側(矢印a方向)の断面半円形状の先端部が斜面接触しているため、インペラ140とシャフト165との間でも自動的に調心することができる。
【0070】
<第2の実施の形態>
続いて、本発明の一例である第2の実施の形態について図7を参照しながら説明する。図7は、本発明の一例である第2の実施の形態にかかるウォーターポンプの構成を示す縦断面図である。
【0071】
なお、第2の実施の形態においても、説明の便宜上、軸Xに沿った矢印a方向を上側または一方側とする。軸Xに沿った矢印b方向を下側または他方側とする。ここで、矢印ab方向を上下方向またはX軸方向と称する。但し、上下方向は、鉛直方向とは必ずしも一致しない。また、矢印cd方向を径方向または水平方向と称し、軸Xから離れる矢印c方向を外側または径方向一方側、軸Xに近づく矢印d方向を内側または径方向他方側と称する。
【0072】
図2との対応部分に同一符号を付した図7において、ウォーターポンプ200は、第1の実施の形態における軸止部124に代えて異なる形状の軸止部224が設けられており、それ以外の構成は共通である。
【0073】
軸止部224は、吸入部123の内周面に対して、120度間隔で設けられた3本の腕部224aによって吸入部123と一体に結合されている。
【0074】
3本の腕部224aの中心には、円柱状の本体部224pが設けられ、その本体部224pの下側(矢印b方向)の端部には、インペラ140の円柱体142の頭部142aと接触する、径方向と平行な平坦面224cが形成されている。
【0075】
この場合、軸止部224における本体部224pの平坦面224c(底面)とインペラ140の円柱体142の頭部142aとは点接触となる。これによりウォーターポンプ200では、インペラ140が回転する際の接触抵抗が小さくなるので、インペラ140が効率的に回転し得、かくして流体を効率的に圧送することができる。
【0076】
また、軸止部224の本体部224pにおいては、平坦面224cの外周側の端部から下側(矢印b方向)および外側(矢印c方向)へ傾斜して延びる傘部224dを有している。
【0077】
<第3の実施の形態>
続いて、本発明の一例である第3の実施の形態について図8および図9を参照しながら説明する。図8は、本発明の一例である第3の実施の形態にかかるウォーターポンプの構成を示す縦断面図である。図9は、本発明の一例である第3の実施の形態にかかるウォーターポンプのロータ本体とインペラとの結合状態を拡大して示す縦断面図である。
【0078】
図2との対応部分に同一符号を付した図8において、ウォーターポンプ300は、第1および第2の実施の形態とは異なるインペラ240およびロータ本体251を有しており、それ以外の構成は共通である。
【0079】
ロータ本体251は、その上側(矢印a方向)の端部に円錐台部253を有し、その円錐台部253の頂部から上側(矢印a方向)に突出した円柱体部分254と、その円柱体部分254の周囲に配置された3個のボス部154(壁柱部分154a、および、凸部分154b)とを有している。ボス部154については、第1および第2の実施の形態と同じである。
【0080】
また、ロータ本体251は、円柱体部分254の中心から上側(矢印a方向)に突出した軸体部分255a、および、その軸体部分255aの上側端部に形成された半球状の軸体頭部255bからなる回転軸255を有している。
【0081】
この場合、すなわち、回転軸255の軸体頭部255bは、インペラ240の回転軸の中心となる部位である。これにより、インペラ240は、一体に結合されたロータ本体251のように軸体頭部255bを回転軸の中心として軸止部124の円錐状の内周面124c(底面)と斜面接触した状態で回転することができる。
【0082】
一方、インペラ240は、図9に示すように、ロータ本体251の回転軸255を挿通するための貫通孔256hが形成された基部としての円筒状の回転軸保持部256、その回転軸保持部256の周囲に環状に配置された3個の長孔145h(図4参照)を有している。
【0083】
ロータ本体251とインペラ240とは、溶着によって一体に形成されている。具体的には、インペラ240における回転軸保持部256の貫通孔256hにロータ本体251の軸体部分255aを挿通すると共に、3個のボス部154の壁柱部分154aをインペラ240の3個の長孔145hに挿通した後に、それぞれ飛び出た部分を熱カシメすることにより結合する。
【0084】
このようにウォーターポンプ300では、ロータ本体251の軸体頭部255bがインペラ240の回転軸の中心となる。第1および第2の実施の形態におけるウォーターポンプ100,200では、インペラ140の円柱体142の頭部142aが回転軸の中心となっている。したがってインペラ140,240の回転軸の中心は、インペラ140の一部であってもよく、ロータ本体251の一部であってもよい。
【0085】
<他の実施の形態>
以上、本発明のモータについて、好ましい第1乃至第3の実施の形態を挙げて説明したが、本発明のモータは上記第1乃至第3の実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0086】
なお、第1乃至第3の実施の形態におけるウォーターポンプ100,200,300においては、エンジンルームに取り付けられる場合を一例として説明したが、本発明はこれに限らず、近年普及したハイブリッド車や電気自動車において、インバータ等の電動機器やバッテリに対して冷却水を強制循環させる場合に用いるようにしてもよい。
【0087】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のウォーターポンプを適宜改変し、また各種構成の組み合わせを変更することができる。かかる変更によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
100,200,300…ウォーターポンプ、120…ポンプハウジング、120s…インペラ収容空間、121…ポンプハウジング本体部、121m…溝、123…吸入部、124,224…軸止部、124a,224a…腕部、124d…フランジ部、124p…本体部、125…吐出部、126…シール部材、130…モータハウジング、130s…モータ収容空間、131…モータハウジング本体部、132…フランジ部分、133…カバー、135…フランジ、140,240…インペラ、141…主板、141p…膨出部(基部)、141pt…天面、142…円柱体、142a…頭部、142b…円錐体部、142c…内周面、145h…長孔、147…シャフト支持部、147a…支持片、147m…すり鉢状面、149…羽根、150…ロータ、151,251…ロータ本体、151a…ロータ本体部、151ah…貫通孔、152…フランジ部、153,253…円錐台部、153h…貫通孔、153k…円錐状面、153t…周端面、154…ボス部、154a…壁柱部分、154b…凸部分、159…マグネット、160…ステータ、161…ステータコア、162…コイル、165…シャフト、170…モータ、180…樹脂、180s…ロータ収容空間、224p…本体部、224c…平坦面、224d…傘部、254…円柱体部分、255…回転軸、255a…軸体部分、255b…軸体頭部、256…回転軸保持部、256h…貫通孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9