(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130940
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】車両後部構造
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20240920BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20240920BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20240920BHJP
B60R 19/24 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01S7/03 240
G01S13/931
B62D25/08 L
B60R19/24 N
B60R19/24 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040914
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 剛志
【テーマコード(参考)】
3D203
5J070
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB76
3D203BC10
3D203CB19
3D203DA22
3D203DB17
5J070AF03
5J070BF08
(57)【要約】
【課題】簡潔な構成でレーダ装置のレイアウトの自由度を向上させることが可能な車両後部構造を提供することを目的とする。
【解決手段】車両後部構造100は、車両のバックパネル102と、バックパネル102を覆うように取り付けられるリヤバンパ104と、車両のうちリヤバンパ104に覆われる範囲に設けられて電磁波を利用して他の車両を検知すれるレーダ装置112とを備える。当該車両後部構造100はさらに、バックパネル102の少なくとも車幅方向外側であって車両のリヤホイール108の後方に設けられてリヤバンパ104に覆われるリヤライニング110と、リヤライニング110の後方に設けられて電磁波を遮断可能な電磁波遮断部材128とを備える。レーダ装置112は、電磁波遮断部材128の後方に配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のバックパネルと、該バックパネルを覆うように取り付けられるリヤバンパと、該車両のうち該リヤバンパに覆われる範囲に設けられて電磁波を利用して他の車両を検知するレーダ装置とを備える車両後部構造において、
当該車両後部構造はさらに、
前記バックパネルの少なくとも車幅方向外側であって前記車両のリヤホイールの後方に設けられて前記リヤバンパに覆われるリヤライニングと、
前記リヤライニングの後方に設けられて前記電磁波を遮断可能な電磁波遮断部材とを備え、
前記レーダ装置は、前記電磁波遮断部材の後方に配置されること特徴とする車両後部構造。
【請求項2】
前記車両後部構造はさらに、前記リヤライニングの後方に設けられて前記電磁波遮断部材が取り付けられるカバー部材を備え、
前記カバー部材は、前記リヤライニングのうち前記リヤホール側の壁面部から後方に離間して設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記リヤライニングの車幅方向外側の端部は、前記リヤバンパの車幅方向外側の端部に接合されていて、
前記電磁波遮断部材の車幅方向外側の端部は、前記リヤライニングの端部と前記リヤバンパの端部とに挟持されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記レーダ装置は、車両後方から見て前記電磁波遮断部材の範囲内に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両は、後方から接近する他の車両をレーダ装置によって検知し、所定の表示や音によって運転者に知らせる機能を搭載している場合がある。このようなレーダ装置は、主にリヤバンパの内側に設置されている。例えば、特許文献1の
図2には、リヤバンパ6の内側に設けたレーダ装置4が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、段落0024および
図3等に記載されているように、後車輪2を誤検知しないように、リヤバンパ6の内側に遮蔽板7が設けられている。しかしながら、リヤバンパ6から延びる遮蔽板7によってリヤエンドパネル5との間を完全に塞ぐことは難しく、例えば後車輪2の後方の範囲は後車輪2に送信波が直線的に届くため、レーダ装置4の設置可能な範囲は制限されるおそれがある。また、遮蔽板7のような構造物をリヤバンパと一体に設けることは、当該検知機能を有する車両と有さない車両とでリヤバンパの仕様を異ならせる必要が生じるため、コスト増大を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、簡潔な構成でレーダ装置のレイアウトの自由度を向上可能な車両後部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両後部構造の代表的な構成は、車両のバックパネルと、バックパネルを覆うように取り付けられるリヤバンパと、車両のうちリヤバンパに覆われる範囲に設けられて電磁波を利用して他の車両を検知すれるレーダ装置とを備える車両後部構造において、当該車両後部構造はさらに、バックパネルの少なくとも車幅方向外側であって車両のリヤホイールの後方に設けられてリヤバンパに覆われるリヤライニングと、リヤライニングの後方に設けられて電磁波を遮断可能な電磁波遮断部材とを備え、レーダ装置は、電磁波遮断部材の後方に配置されること特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡潔な構成でレーダ装置のレイアウトの自由度を向上可能な車両後部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施例に係る車両後部構造の概要を示した図である。
【
図2】
図1の車両後部構造を別方向から示した図である。
【
図3】
図2(b)のリヤライニングの構成を示した図である。
【
図4】本発明の第2実施例に係る車両後部構造の概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る車両後部構造は、車両のバックパネルと、バックパネルを覆うように取り付けられるリヤバンパと、車両のうちリヤバンパに覆われる範囲に設けられて電磁波を利用して他の車両を検知すれるレーダ装置とを備える車両後部構造において、当該車両後部構造はさらに、バックパネルの少なくとも車幅方向外側であって車両のリヤホイールの後方に設けられてリヤバンパに覆われるリヤライニングと、リヤライニングの後方に設けられて電磁波を遮断可能な電磁波遮断部材とを備え、レーダ装置は、電磁波遮断部材の後方に配置されること特徴とする。
【0010】
上記のリヤライニングは、リヤホイールのホイールハウスの内側を形成する部材である。上記構成によれば、リヤライニングの後方の電磁波遮断部材によってリヤホイールに向かう電磁波を遮断できるため、レーダ装置がリヤホイールの駆動を検知することを防ぎ、リヤホイールの後方の範囲にもレーダ装置を問題なく設置することができる。よって、上記構成によれば、簡潔な構成でレーダ装置の設置可能な範囲をバックパネルの車幅方向外側にまで広げることができ、レーダ装置のレイアウトの自由度を向上させることが可能になる。また、リヤバンパに部位や部材の追加が無いため、リヤバンパの構成を変更する必要が無く、リヤバンパの組付作業やコストへの影響を避けることが可能になる。
【0011】
上記の車両後部構造はさらに、リヤライニングの後方に設けられて電磁波遮断部材が取り付けられるカバー部材を備え、カバー部材は、リヤライニングのうちリヤホール側の壁面部から後方に離間して設けられる。
【0012】
上記構成によれば、リヤライニングの形状に影響されることなく、カバー部材を利用して電磁波遮断部材を電磁波の経路やレーダ装置との距離に応じて適宜配置することが可能になる。
【0013】
上記のリヤライニングの車幅方向外側の端部は、リヤバンパの車幅方向外側の端部に接合されていて、電磁波遮断部材の車幅方向外側の端部は、リヤライニングの端部とリヤバンパの端部とに挟持される。
【0014】
上記構成によれば、電磁波遮断部材をリヤライニングの後方に好適に配置することが可能になる。
【0015】
上記のレーダ装置は、車両後方から見て電磁波遮断部材の範囲内に配置される。
【0016】
上記構成によれば、レーダ装置からリヤホイールに向かう電磁波を十全に遮断することが可能になる。
【実施例0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(第1実施例)
図1は、本発明の第1実施例に係る車両後部構造100の概要を示した図である。以下、
図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(Upward)、D(Downward)で例示する。
【0019】
図1では、当該車両後部構造100が実施された車両後部の右側付近を、斜め上方から見て示している。バックパネル102は、車両後部に設けられる車幅方向に延びた部材であり、後述するリヤバンパ104(
図3参照)やランプ等が取り付けられる。
【0020】
ホイールハウスアウタパネル106は、リヤホイール108(
図3(b))のホイールハウスの天面を形成する部材であり、バックパネル102から見て車幅方向外側に設置されている。
【0021】
リヤライニング110は、ホイールハウスの内側を形成する部材であり、バックパネル102から見て車幅方向外側であって、ホイールハウスアウタパネル106の下側からリヤホイール(
図3(b)参照)の後方にかけて設置される。リヤライニング110は、主に樹脂で形成された部材であって、上述したバックパネル102と共にリヤバンパ104によって覆い隠される。
【0022】
図2は、
図1の車両後部構造100を別方向から示した図である。
図2(a)は、
図1の車両後部構造100を後方から見て示した図である。本実施形態では、車両のうちリヤバンパ104(
図3(b)参照)に覆われる範囲に、レーダ装置112が設置される。
【0023】
レーダ装置112は、電磁波を利用して他の車両を検知する装置である。レーダ装置112は、電磁シールド性能を持ったレーダブラケット114を利用して、車体に取り付けられる。
【0024】
図2(b)は、
図2(a)のレーダ装置112およびレーダブラケット114を取り外した図である。レーダブラケット114の上側固定部116a、116b(
図2(a)参照)は、ホイールハウスアウタパネルブラケット118の取付孔120a、120bに締結等して固定される。ホイールハウスアウタパネルブラケット118は、ホイールハウスアウタパネル106の後側の内側に取り付けられていて、取付孔120a、120bを有する部分がホイールハウスアウタパネル106の下端から下方に延びている。
【0025】
レーダブラケット114の車幅方向内側の内側固定部122(
図2(a)参照)は、バックパネル102に設けられたリヤバンパステイ124の取付孔126に締結等して固定される。リヤバンパステイ124は、リヤバンパ104(
図3(b)参照)を取り付けるために利用される部材である。なお、取付孔126は、バックパネル102に設けることも可能である。
【0026】
図3は、
図2(b)のリヤライニング110の構成を示した図である。
図3(a)は、
図2(b)のリヤライニング110を単独で示した図である。
【0027】
本実施例では、リヤライニング110の車両後側には、電磁波遮断部材128がリベット136等を利用して取り付けられる。電磁波遮断部材128は、レーダ装置112からの電磁波を遮断可能な弾性を有する部材であって、例えば熱可塑性エラストマーにステンレス繊維を付与した材料によって構成されている。
【0028】
図3(b)は、
図2(a)の車両後部構造100のA-A断面図である。車両後部構造100では、リヤバンパ104が、バックパネル102およびリヤライニング110を覆うようにして取り付けられる。
【0029】
レーダ装置112は、電磁波遮断部材128の後方であって、車両後方から見て電磁波遮断部材128の範囲E1内に配置される。すなわち、レーダ装置112の前方には電磁波遮断部材128が存在し、レーダ装置112から前方のリヤホイール108に向かう経路は塞がれた状態になっている。この構成によって、レーダ装置112からリヤホイール108に向かう電磁波を十全に遮断することができる。
【0030】
車両後部構造100では、レーダ装置112からリヤホイール108に向かう電磁波をリヤライニング110の後方の電磁波遮断部材128によって遮断できるため、レーダ装置112がリヤホイール108の駆動を検知することを防ぎ、リヤホイール108の後方の範囲にもレーダ装置112を問題なく設置することができる。
【0031】
当該車両後部構造100によれば、電磁波遮断部材128を利用した簡潔な構成で、レーダ装置112の設置可能な範囲をバックパネル102の車幅方向外側にまで広げることができ、レーダ装置112のレイアウトの自由度を向上させることが可能になる。また、リヤバンパ104に部位や部材の追加が無いため、リヤバンパ104の構成を変更する必要が無く、リヤバンパ104の組付作業やコストへの影響を避けることが可能になる。
【0032】
リヤライニング110の車幅方向外側の端部130は、リヤバンパ104の車幅方向外側の端部132に接合されている。電磁波遮断部材128は、車幅方向外側の端部134がリヤライニング110の端部130とリヤバンパ104の端部132とに挟持された状態で設置される。この構成によっても、リヤバンパ104の構成を変更することなく、電磁波遮断部材128をリヤライニング110の後方に好適に配置することが可能になる。
【0033】
(第2実施例)
図4は、本発明の第2実施例に係る車両後部構造150の概要を示した図である。
図4では、上記第1実施例にて既に説明した構成要素と同じものには同じ符号を付していて、これによって既出の構成要素については説明を省略する。また、以下の説明において、既に説明した構成要素と同じ名称のものについては、例え異なる符号を付していても、特に明記しない場合は同じ機能を有しているものとする。
【0034】
図4(a)は、
図3(a)に対応して車両後部構造150が備えるカバー部材152を示した図である。カバー部材152は樹脂製であって、電磁波遮断部材154を取り付けるために利用される。電磁波遮断部材154は、カバー部材152の後側にリベット136等を利用して取り付けられる。
【0035】
カバー部材152は、リベットや樹脂クリップなどを使用してリヤライニング110の後方に設置することができる。また、カバー部材152は、各所に孔部を設けて、リヤライニング110に設けたボスと噛み合わせて溶着させることも可能である。なお他の例として、カバー部材152は、2色成形によって、リヤライニング1と一体に成形することも可能である。
【0036】
図4(b)は、
図3(b)に対応した車両後部構造150の断面図である。レーダ装置112は、車両後方から見て電磁波遮断部材154の範囲E2内に配置される。本実施形態においても、レーダ装置112から前方のリヤホイール108に向かう電磁波を電磁波遮断部材154によって十全に遮断することができる。よって、本実施形態においても、レーダ装置112の設置可能な範囲をバックパネル102の車幅方向外側にまで広げることができるなど、レーダ装置112のレイアウトの自由度を向上させることが可能になる。
【0037】
カバー部材152は、リヤライニング110のうちリヤホイール108側の壁面部156から後方に離間して設置することができる。すなわち、カバー部材152を利用することで、電磁波遮断部材154のリヤライニング110に対する設置位置を調節することができる。この構成によれば、リヤライニング110の形状に影響されることなく、カバー部材152によって電磁波遮断部材154を電磁波の経路やレーダ装置112との距離に応じて適宜配置することが可能になる。
【0038】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
100…車両後部構造、102…バックパネル、104…リヤバンパ、106…ホイールハウスアウタパネル、108…リヤホイール、110…リヤライニング、112…レーダ装置、114…レーダブラケット、116a、116b…上側固定部、118…ホイールハウスアウタパネルブラケット、120a、120b…取付孔、122…内側固定部、124…リヤバンパステイ、126…取付孔、128…電磁波遮断部材、130…端部、132…端部、134…端部、136…リベット、E1…範囲、150…車両後部構造、152…カバー部材、154…電磁波遮断部材、E2…範囲