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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013096
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ベルト
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/38 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
B65G15/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115031
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000211156
【氏名又は名称】中興化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】川本 啓司
(72)【発明者】
【氏名】深草 孝郎
【テーマコード(参考)】
3F024
【Fターム(参考)】
3F024AA19
3F024BA05
3F024CA04
3F024CB02
3F024CB04
3F024CB05
(57)【要約】
【課題】ベルト基材を平易な方法で環状に接合することが可能なベルトを提供すること。
【解決手段】一実施形態によれば、ベルトが提供される。ベルトは、ベルト基材と棒状のピンとを備える。ベルト基材は、第1端部及び第2端部を有すると共に、第1端部及び第2端部が互いに向かい合って環状構造を成している。ピンは、第1端部及び第2端部を互いに接合している。第1端部は、ベルトの進行方向に沿って突出しており且つ進行方向と略直交する方向に沿って配列する、複数の第1ループを備える。第2端部は、ベルトの進行方向に沿って突出しており且つ進行方向と略直交する方向に沿って配列する、複数の第2ループを備える。第1端部及び第2端部は、複数の第1ループと複数の第2ループとが交互に配列するように噛み合わせられて連通口を構成している。ピンは、連通口に挿入されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部及び第2端部を有すると共に、前記第1端部及び前記第2端部が互いに向かい合って環状構造を成しているベルト基材であって、第1耐熱性織布と、前記第1耐熱性織布の表面の少なくとも一部を被覆する第1フッ素樹脂とを具備する、ベルト基材と、
前記第1端部及び前記第2端部を互いに接合する棒状のピンと
を備えるベルトであって、
前記第1端部は、前記ベルトの進行方向に沿って突出しており且つ前記進行方向と略直交する方向に沿って配列する、複数の第1ループを備え、
前記第2端部は、前記ベルトの前記進行方向に沿って突出しており且つ前記進行方向と略直交する方向に沿って配列する、複数の第2ループを備え、
前記第1端部及び前記第2端部は、複数の前記第1ループと複数の前記第2ループとが交互に配列するように噛み合わせられて連通口を構成しており、
前記ピンは、前記連通口に挿入されているベルト。
【請求項2】
前記ベルト基材は、前記第1耐熱性織布と前記第1フッ素樹脂とを含む第1基材からなり、
前記第1基材は、前記第1フッ素樹脂で被覆された複数の第1経糸と、前記第1フッ素樹脂で被覆された複数の第1緯糸とを備え、
前記第1端部において、複数の前記第1経糸のそれぞれが折り返されて複数の前記第1ループを形成しており、
前記第2端部において、複数の前記第1経糸のそれぞれが折り返されて複数の前記第2ループを形成している請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
複数の前記第1経糸の端部は、前記第1基材に絡みついている請求項2に記載のベルト。
【請求項4】
前記第1基材は、複数の前記第1経糸のそれぞれが複数の前記第1ループを形成するように、前記ベルトの前記進行方向に沿って折り返されてなる積層領域Aを含み、
前記積層領域Aに含まれる積層された前記第1基材は、互いに縫い合わされている請求項2に記載のベルト。
【請求項5】
前記ベルト基材は、前記第1耐熱性織布及び前記第1フッ素樹脂を含む第1基材と、第2耐熱性織布及び第2フッ素樹脂を含む第2基材とを備え、
前記第2基材は、前記第2フッ素樹脂で被覆された複数の第2経糸と、前記第2フッ素樹脂で被覆された複数の第2緯糸とを備え、
前記第2基材は、前記第1端部において、複数の前記第2経糸のそれぞれが折り返されて複数の前記第1ループを形成するように、前記第1基材を挟み込んでおり、
前記ベルト基材は、前記第1基材及び前記第2基材が積層された積層領域Bを含み、
前記積層領域Bに含まれる、前記第1基材及び前記第2基材は、互いに縫い合わされている請求項1に記載のベルト。
【請求項6】
前記ベルト基材は、第3耐熱性織布及び第3フッ素樹脂を含む第3基材を更に備え、
前記第3基材は、前記第3フッ素樹脂で被覆された複数の第3経糸と、前記第3フッ素樹脂で被覆された複数の第3緯糸とを備え、
前記第3基材は、前記第2端部において、複数の前記第3経糸のそれぞれが折り返されて複数の前記第2ループを形成するように、前記第1基材を挟み込んでおり、
前記ベルト基材は、前記第1基材及び前記第3基材が積層された積層領域Cを含み、
前記積層領域Cに含まれる、前記第1基材及び前記第3基材は、互いに縫い合わされている請求項5に記載のベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ベルト、特に製品等の製造に使用されるベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートシールなど、各種製品を製造する際に用いられるベルトは、例えば、ベルト基材の長さ方向の端部同士が接合された、無端状又は環状構造を有する。ベルト基材の接合方法として、オーバーラップ接合が知られている。
【0003】
また、ベルト基材としてメッシュ基材を用いた搬送用ベルトが知られている。メッシュ構造のベルトは通気性が良いため、製造工程に冷却や乾燥が含まれる場合に有利である。加熱の際は、ベルト上部からだけでなくベルト基材の裏側からも効率良く加熱することが可能になる。洗浄工程を含む場合には、水切りに使用できるという利点もある。さらには、メッシュベルトは蒸気乾燥を含む製造にも好適に使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-8361号公報
【特許文献2】国際公開番号2011/004848号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オーバーラップ接合を用いて製造されたベルトの一例を図13及び図14に示す。図13及び図14は、環状もしくは無端状のベルト基材90が、ロール2に取り付けられた状態を示す。図13は斜視図で、図14は、ベルト基材の進行方向に沿った断面図である。図14の破線で囲まれた領域中の断面図は、ベルト基材90の接合部の拡大断面図である。ベルト基材90は、ベルト基材の長さ方向の両端部91,92が重ね合わされて接合されたものである。ここでいう長さ方向は、ベルト基材90の進行方向99に沿う方向をいう。
【0006】
端部91と端部92とは、典型的には熱融着により接合される。端部91と端部92との間に、例えば、溶融樹脂を挟み込み加熱および冷却することで接合層93を形成して、ベルト基材を融着させる。溶融樹脂には、例えば、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)やテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(FEP)から成るメルト系フッ素樹脂製フィルムが用いられる。
【0007】
オーバーラップ接合は、メッシュベルトには適さない。その要因の一つとして、メッシュタイプの基材は、平織の基材と比べて融着可能な面積が狭く、また、糸に起因した凹凸が大きいため、基材同士を熱融着するのが難しいという理由が挙げられる。また、オーバーラップ接合を利用した場合には、接合部とその他の本体部分との間で、開口率などの基材状態が異なりやすいという問題がある。更には、融着可能な面積が狭いため、ベルトを使用する現場での熱融着が難しいという問題がある。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ベルト基材を平易な方法で環状に接合することが可能なベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によれば、ベルトが提供される。ベルトは、ベルト基材と棒状のピンとを備える。ベルト基材は、第1端部及び第2端部を有すると共に、第1端部及び第2端部が互いに向かい合って環状構造を成しており、第1耐熱性織布と、第1耐熱性織布の表面の少なくとも一部を被覆する第1フッ素樹脂とを具備する。ピンは、第1端部及び第2端部を互いに接合している。第1端部は、ベルトの進行方向に沿って突出しており且つ進行方向と略直交する方向に沿って配列する、複数の第1ループを備える。第2端部は、ベルトの進行方向に沿って突出しており且つ進行方向と略直交する方向に沿って配列する、複数の第2ループを備える。第1端部及び第2端部は、複数の第1ループと複数の第2ループとが交互に配列するように噛み合わせられて連通口を構成している。ピンは、連通口に挿入されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベルト基材を平易な方法で環状に接合することが可能なベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るベルトの一例を概略的に示す斜視図。
図2】実施形態に係るベルト基材の接合部の一部を概略的に示す拡大斜視図。
図3】実施形態に係るベルトのベルト基材の一例を概略的に示す斜視図。
図4】ベルト基材の両端が離間した状態を概略的に示す平面図。
図5】ベルト基材の両端が離間した状態を概略的に示す側面図。
図6】ベルト基材の両端が接合した状態を概略的に示す平面図。
図7】ベルト基材の両端が接合した状態を概略的に示す側面図。
図8】ベルト基材の第1端部が有する第1ループの一例を概略的に示す断面図。
図9】ベルト基材の第1端部の一例を模式的に示す断面図。
図10】ベルト基材の第1端部が有する第1ループの他の例を概略的に示す断面図。
図11】ベルト基材の第1端部の他の例を模式的に示す断面図。
図12】ベルト基材の第1端部が有する第1ループの他の例を概略的に示す断面図。
図13】オーバーラップ接合を用いて製造されたベルトの一例を概略的に示す斜視図。
図14図13に示すベルトのベルト基材の進行方向に沿う概略的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0013】
従来行われているオーバーラップ接合では、帯状のベルト基材の端部同士の接合は、主に熱融着によって行われる。例えば、図13及び図14には、オーバーラップ接合により得られる、参考例に係るベルト基材90を概略的に示している。
【0014】
前述の通り、接合層93を用いた接合は、熱融着によって行われる。熱融着は、ベルト基材の両端部91,92を、溶融性樹脂を挟み込んで重ね合わせ、溶融性樹脂の融点以上に加熱することにより行う。熱融着により、溶融性樹脂から接合層93が形成される。
【0015】
オーバーラップ接合などの熱融着は、アイロンまたは板状のヒーターを用いる方法であり、一般的に行われている方法である。しかしながら、熱融着作業には、作業者の高い技術を要し、また、専用の融着装置が必要となる場合がある。そのため、ユーザが所有している設備にベルトを取り付ける際は、例えば、持ち運びが可能な専用の融着装置(融着装置、アイロン、ヒーターなど)を持参し、現地にて接合作業を実施する必要がある。
【0016】
これに対して、実施形態に係るベルトによれば、ベルト基材を平易な方法で環状に接合することが可能である。ベルト基材を接合する際に、高い接合技術を持つ作業者を必要としないため、ユーザが任意のタイミングでベルト基材の取り外しを行うことができる。
【0017】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係るベルトについて説明する。
【0018】
図1は、実施形態に係るベルト100がロール2に装着された状態を示している。図2は、図1に係るベルト100の接合部30の一部を拡大して示す斜視図である。
図3は、ベルト100が備えるベルト基材1の一例を概略的に示す斜視図である。図3では、からみ織りによって織られたメッシュ基材を例示している。
【0019】
ベルト100は、環状もしくは無端状に接合されたベルト基材1を備える。環状のベルト基材1は、例えば進行方向Pに沿って走行する。図面におけるX軸は、ベルト100の進行方向(走行方向ともいう)Pと平行な方向である。Y軸は、X軸と直交する方向である。Z軸は、X軸及びY軸の双方と直交する方向であって、ベルト基材1の厚さ方向と平行な方向である。
【0020】
ベルト基材1は、例えば、第1端部10及び第2端部20を有する帯形状を有する。第1端部10及び第2端部20は、例えば、ベルト基材1において互いに対向する2つの短辺でありうる。第1端部10及び第2端部20は、ベルト基材1において互いに対向する2つの長辺であってもよい。ここでは、ベルト基材1の長辺が伸びる方向と進行方向Pとは平行である。第1端部10及び第2端部20は、互いに向かい合って接合することによりベルト基材は環状構造を成している。本願明細書及び特許請求の範囲において、環状構造を成しているベルト基材を第1基材とも呼ぶことができる。第1基材としてのベルト基材は、第1耐熱性織布及び第1フッ素樹脂を備える。
【0021】
図1図3では、ベルト基材1がメッシュ基材である場合を例示しているが、ベルト基材1はメッシュ基材でなくてもよい。即ち、ベルト基材1は、目開きを有していない平ベルトであってもよい。また、ベルト基材1の織組織はからみ織りに限られず、例えば平織りであってもよい。
【0022】
ベルト基材1は、例えば、複数の経糸101及び複数の緯糸102を含む。図3に示すように、緯糸102は、例えば耐熱性繊維103と、耐熱性繊維103を被覆するフッ素樹脂104とを備える。図示していないが、各経糸101も、緯糸102と同様に耐熱性繊維103と、耐熱性繊維103を被覆するフッ素樹脂104とを備え得る。経糸101の太さ(直径)と、緯糸102の太さ(直径)とは異なっていてもよい。図3では、ベルト基材1がからみ織りの織組織を有している。それ故、各経糸101の太さは緯糸102の太さと比較して小さい。
【0023】
複数の経糸101と複数の緯糸102とを用いて織られてなる基材がベルト基材1であるが、当該ベルト基材1に含まれる耐熱性繊維103で構成される織布を、本願明細書及び特許請求の範囲においては耐熱性織布と定義する。つまり、耐熱性織布は耐熱性繊維103のみで織られた織布を指す。ベルト基材1は、例えば、耐熱性織布にフッ素樹脂を塗布して作製することができる。
【0024】
フッ素樹脂104は、耐熱性織布が含む耐熱性繊維103の表面を全て被覆していてもよく、その一部を被覆していてもよい。例えば、耐熱性織布内で耐熱性繊維103同士が交差する接触面には、フッ素樹脂104の被膜が有っても無くてもよい。
【0025】
経糸101は、例えば、ベルト100のタテ方向に沿う。ここでいうタテ方向は、ベルト100の進行方向P、例えば、コンベアベルト等の搬送物を搬送する用途における搬送方向、つまりベルト100の機械方向(Machine Direction;MD)を指す。緯糸102は経糸101と交差しており、例えば、ベルト100のヨコ方向(Transverse Direction;TD)に沿う。ヨコ方向は、進行方向Pと直交又は略直交する方向である。複数の経糸101と複数の緯糸102とは、略直交するように交差している。
【0026】
図2に示すように、第1端部10は、ベルト100の進行方向Pに沿って突出しており且つ進行方向Pと略直交する方向に沿って配列する、複数の第1ループ11aを備える。第2端部20は、ベルト100の進行方向Pに沿って突出しており且つ進行方向Pと略直交する方向に沿って配列する、複数の第2ループ21aを備える。なお、複数の第1ループ11a及び複数の第2ループ21aの詳細は後述する。
【0027】
第1端部10と第2端部20とは、複数の第1ループ11aと複数の第2ループ21aとが交互に配列した連通口にピン5が挿入されることで接合している。ベルト基材1は、こうして接合された接合部30を有する。このようにベルト基材の両端を接合させる方法を、ループレーシング法と呼ぶ。
【0028】
ここで、図4図7を参照しながら、複数の第1ループ11aと複数の第2ループ21aとが交互に配列した連通口を形成する際の手順を例示する。図4は、第1端部10及び第2端部20が離間した状態を概略的に示す平面図である。図5は、第1端部10及び第2端部20が離間した状態を概略的に示す側面図である。図6は、第1端部10及び第2端部20が接合した状態を概略的に示す平面図である。図7は、第1端部10及び第2端部20が接合した状態を概略的に示す側面図である。
【0029】
まず、図4及び図5に示すように、複数の第1ループ11aを備える第1端部10と、複数の第2ループ21aを備える第2端部20とを用意する。第1端部10は、ベルト基材1の一端部であって、複数の経糸11及び複数の緯糸12を備える。第2端部は、ベルト基材1の他端であって、複数の経糸21及び複数の緯糸22を備える。複数の経糸11と複数の経糸21とは、それぞれが互いに繋がっていても良い。また、図4及び図5に示す複数の緯糸12と複数の緯糸22は、繋がっていないが、同じ種類の糸であっても良い。なお、図4及び図5では、経糸がベルト100のタテ方向(進行方向P)に沿っているが、緯糸がベルト100のタテ方向(進行方向P)に沿っている場合には、複数の緯糸12と複数の緯糸22とは、それぞれが互いに繋がっていても良い。また、この場合、複数の経糸11と複数の経糸21は、繋がっていないが、同じ種類の糸であっても良い。
【0030】
次に、図6及び図7に示すように、複数の第1ループ11aと複数の第2ループ21aとが交互に配列するように噛み合わせる。こうして、第1端部10及び第2端部20が連通口40を構成する。連通口40は、例えば、交互に配列した複数の第1ループ11aと複数の第2ループ21aとからなる。第1ループ11aの形状は、輪(ループ)であれば特に制限されず、円形又は楕円形でありうる。第2ループ21aの形状は、輪(ループ)であれば特に制限されず、円形又は楕円形でありうる。
【0031】
図6及び図7では示していないが、連通口40には棒状のピンが挿入される。ピン5が連通口40に挿入された状態を示しているのが図1及び図2である。図1に示すように、ピン5は、第1端部10及び第2端部20を互いに接合している。連通口40にピン5が挿入されることで、第1端部10及び第2端部20が互いに接合されて、環状構造のベルト基材1を備えたベルト100が得られる。なお、図1に示すように、ピン5の両端部は、連通口40から抜け落ちないように任意の方向に折り曲げてもよい。例えば、ピン5の両端部は、ベルト100の進行方向Pと平行な方向に沿うように折り曲げられる。
【0032】
実施形態に係るベルト100では、ベルト基材1の第1端部10と第2端部20とを、熱融着ではなく、複数の第1ループ11a及び複数の第2ループ21aで構成される連通口40にピン5を挿入することで接合できる。それ故、専用の融着装置が不要になる。従って、ユーザが任意のタイミングでベルト100をロール2等の装置に取り付けることが可能となる。加えて、ループレーシング法の場合、ベルト基材の両端を熱融着しないため、ベルト基材の両端を接合した場合であっても基材の開口率に影響がないという利点がある。
【0033】
以下、図面を参照しながら、複数の第1ループ11a及び複数の第2ループ21aに関して詳細に説明する。図8図12では、第1端部10が備える複数の第1ループ11aについて説明する。ベルト基材1の第2端部20は、第1端部10と同一の構造を有しているため、その説明を省略する。本願明細書及び特許請求の範囲において、便宜上、ベルト基材1の一方の端部を第1端部10と呼び、他方の端部を第2端部20と呼んでいるが、これらは上記の通り同一の構造を有し得る。
【0034】
図8は、第1ループ11aの一例を概略的に示す断面図である。図8では、第1端部10に存在する、複数の第1ループ11aのうちの1つが示されている。図9は、図8に示す第1ループ11aを複数備えた第1端部10を模式的に示す平面図である。
【0035】
複数の第1ループ11aは、例えば、第1端部10における経糸11の端部を、ループが形成されるように折り返して形成されている。折り返された経糸11の一部は、当該経糸11自体に絡みついている。図9に示しているように、折り返された経糸11の一部は、当該経糸11自体に加えて、緯糸とも交差するように絡みついていてもよい。即ち、折り返された経糸11の端部は、当該ベルト基材1に絡みついている。
【0036】
なお、経糸11を折り返すためには、或る程度の長さを有する経糸11の端部が必要となる。第1端部10において経糸11を折り返す際には、第1端部10の端部において、少なくとも一本の緯糸を抜き取ればよい。少なくとも一本の緯糸を抜き取ることで、或る程度の長さの経糸11の端部を確保できる。
【0037】
第1端部10において、経糸11が絡みついた部分を、第1編込み領域14と呼ぶ。第1編込み領域14は、第1端部10において、例えば1本~10本の緯糸と交差する幅で形成され得る。或いは、第1編込み領域14の幅(X軸方向に沿った長さ)は、例えば25mm~100mmの範囲内にあり得る。第1編込み領域14の幅は、ベルト基材1の幅(Y軸方向に沿った長さ)が広くなるほど大きくすることが好ましい。第1編込み領域14の幅を大きくすることにより当該領域の強度を高めることができるため、幅広なベルト基材1を接合する場合でも十分な強度を達成することができる。
【0038】
図9では一例として、経糸11が5本の緯糸12と交差するように第1編込み領域14が形成されている。各経糸11についての折り返された長さは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0039】
複数の経糸11により第1編込み領域14が形成されているため、ベルト基材1を接合した場合に、複数の第1ループ11aに掛かる応力を分散することができる。例えば、ベルト基材1の第1端部10及び第2端部20を接合後に、接合部に引張応力が掛かった場合であっても、その応力がそれぞれの第1ループ11a及び第1編込み領域14の全体に分散される。それ故、ベルト基材1の接合部は高い強度を示す。
【0040】
図10は、第1ループ11aの他の例を概略的に示す断面図である。図10では、第1端部10に存在する、複数の第1ループ11aのうちの1つが示されている。図11は、図10に示す第1ループ11aを複数備えた第1端部10を模式的に示す平面図である。
【0041】
図10及び図11では、複数の第1経糸11のそれぞれが複数の第1ループ11aを形成するように、ベルト基材1(第1基材)がベルトの進行方向に沿って折り返されている。ベルト基材1は、当該ベルト基材1が折り返されてなる積層領域Aを含む。積層領域Aは、積層された下側基材及び上側基材の2枚の基材を備える。これら基材は、例えば、別途用意した縫製用糸15により縫い合わされている。折り返された2枚の基材を縫い合わせることにより、複数の第1ループ11aが形成されたままの形状を維持することができる。縫製用糸15が伸びる方向に特に制限はないが、図11に例示しているように、縫製用糸15は、緯糸12と平行又は略平行に伸びていることが好ましい。
【0042】
積層領域Aが設けられる幅(X軸方向に平行な幅)は、例えば、隣り合う緯糸間の距離の1倍~10倍であり得る。或いは、積層領域Aの幅(X軸方向に沿った長さ)は、例えば25mm~100mmの範囲内にあり得る。前述した第1編込み領域14の幅と同様に、積層領域Aの幅を大きくすることで当該領域の強度を高めることができる。
【0043】
縫製用糸15としては、例えば、耐熱性繊維としてのアラミド糸の表面上にフッ素樹脂を塗布したものを使用することができる。このとき、耐熱性繊維で縫い合わせた後に、フッ素樹脂を塗布して焼き付け加工を施すことが好ましい。こうすることで、積層領域A又は複数の第1ループ11aにおいて、ほつれ及び剥がれが生じにくくなるため好ましい。
【0044】
図12は、第1ループ11aの更に他の例を概略的に示す断面図である。図12に示す例では、ベルト基材1が第1基材71及び第2基材72の2枚の基材を備えている。第1基材71は、前述のベルト基材1と同一の材料から構成され得る。第2基材72は、第1基材71と同一の基材であってもよく、異なる基材であってもよい。第2基材は、第2耐熱性織布及び第2フッ素樹脂を備えうる。
【0045】
第2基材72は、例えば、矩形又は正方形の帯状の基材である。第1基材71のヨコ方向(Y軸方向)の幅と、第2基材72のヨコ方向(Y軸方向)の幅は、同一であるか又は略同一であることが好ましい。Y軸方向の幅が互いに略同一の第1基材71及び第2基材72を用いて、例えば図12に示す第1ループ11aが形成されている。図12に示す例においては、第1ループ11aは第2基材72により形成されている。
【0046】
具体的には、ベルト基材1の第1端部10において、第1基材71の表面及び裏面は、第2基材72によって挟まれている。第2基材72に含まれる経糸721は、第1基材71の端部において、第1基材71の表面及び裏面を挟み込むことによって第1ループ11aを構成している。
【0047】
ベルト基材1は、第1基材71と第2基材72とが積層した積層領域Bを含む。積層領域Bにおいて、第1基材71の表面上には、第2基材72の一部が積層されており、第1基材71の裏面上には第2基材72の他の一部が積層されている。三層構造を有する積層領域Bは、例えば、別途用意した縫製用糸15により縫い合わされている。3枚の基材を縫い合わせることにより、複数の第1ループ11aが形成されたままの形状を維持することができる。縫製用糸15は、緯糸12と平行又は略平行に伸びていることが好ましい。
【0048】
積層領域Bが設けられる幅(X軸方向に平行な幅)は、例えば、隣り合う緯糸間の距離の1倍~10倍であり得る。或いは、積層領域Bの幅(X軸方向に沿った長さ)は、例えば25mm~100mmの範囲内にあり得る。積層領域Bの幅を大きくすることで当該領域の強度を高めることができる。
【0049】
図示していないが、第1基材71が有する第2端部20も、図12を参照しながら説明した第1端部10と同様の構造を有しうる。この場合、ベルト基材1は、第3基材を更に備えうる。第3基材は、例えば、矩形又は正方形の帯状の基材である。第1基材71のヨコ方向(Y軸方向)の幅と、第3基材のヨコ方向(Y軸方向)の幅は、同一であるか又は略同一であることが好ましい。
【0050】
第3基材は、上述した第2基材72と同様に、第1基材71の第2端部20において、複数の第2ループ21aを形成するように第1基材71を挟み込んでいる。第3基材は、第1基材71と同一の基材であってもよく、異なる基材であってもよい。第3基材は、第3耐熱性織布及び第3フッ素樹脂を備えうる。
【0051】
図1及び図4図7で説明した、ベルト基材1の第1端部10が備える複数の第1ループ11aは、図8図10及び図12を参照しながら説明した何れの態様でループが形成されていてもよい。また、ベルト基材1の第2端部20が備える複数の第2ループ21aも、図8図10及び図12を参照しながら説明した何れの態様でループが形成されていてもよい。例えば、図1に示すベルト100において、第1端部10は図8に示した態様の複数の第1ループ11aを有しており、また、第2端部20は図10に示した態様の複数の第2ループ21aを有していてもよい。
【0052】
(ベルト基材)
ベルト基材に含まれる材料について説明する。上述した第1基材、第2基材及び第3基材は、それぞれ独立して、以下に説明する材料で構成され得る。
【0053】
第1基材は、ベルト基材を主に構成する基材である。一方、第2基材及び第3基材は、いずれも、第1基材の第1端部及び第2端部において複数のループを作製するために用いられる基材である。第1基材に含まれる耐熱性織布及びフッ素樹脂を、それぞれ第1耐熱性織布及び第1フッ素樹脂と呼ぶ。第1基材を構成する複数の経糸及び複数の緯糸を、それぞれ複数の第1経糸及び複数の第1緯糸とも呼ぶことができる。同様に、第2基材に含まれる耐熱性織布及びフッ素樹脂を、それぞれ第2耐熱性織布及び第2フッ素樹脂と呼ぶ。第2基材を構成する複数の経糸及び複数の緯糸を、それぞれ複数の第2経糸及び複数の第2緯糸とも呼ぶことができる。第3基材に含まれる耐熱性織布及びフッ素樹脂を、それぞれ第3耐熱性織布及び第3フッ素樹脂と呼ぶ。第3基材を構成する複数の経糸及び複数の緯糸を、それぞれ複数の第3経糸及び複数の第3緯糸とも呼ぶことができる。
【0054】
耐熱性織布は、撚り糸としての耐熱性繊維103が織られてなる。前述の通り、耐熱性繊維103は、例えばフッ素樹脂104で被覆されている。耐熱性繊維103の例として、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、及びガラス繊維とアラミド繊維とを混合したものなどが挙げられる。ガラス繊維は、不燃性であり、かつ電気絶縁性を有する。一方、アラミド繊維は、強度に優れ、かつ耐薬品性を有する。
【0055】
耐熱性繊維の形状および寸法は、特に制限されるものではない。例えば、耐熱性繊維は、0.5mm以上2.0mm以下の範囲内の径を有する丸紐形状を有し得る。或いは、耐熱性繊維は、0.5mm以上2.0mm以下の範囲内の厚みを有する平紐形状を有し得る。
【0056】
フッ素樹脂の例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(FEP)などが挙げられる。フッ素樹脂の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
【0057】
ベルト基材は、フッ素樹脂に混合または分散されている充填材を含有していてもよい。充填材の例として、炭素材料、無機物(酸化チタン、窒化ホウ素、酸化ケイ素、酸化亜鉛など)、各種顔料を挙げることができる。使用する充填材の種類は、1種類または2種類以上にすることができる。充填材の形態は、特に限定されず、粒状、繊維状、針状などにすることができる。
【0058】
ベルト基材の厚さは、特に制限されるものではないが、例えば0.075mm~1.0mmの範囲内にありうる。
【0059】
また、ベルト基材の長辺に沿って補強部材を設けてもよい。ベルトの縁に補強部材を設けることにより、例えば、ベルトの強度を高めてハンドリングを良好にしたり搬送物による荷重への耐性を向上させたりすることができる。また、補強部材はベルトと搬送機構との接触部分を保護し得る。補強部材としては、例えば、耐熱テープを用いることができる。また、ベルト基材の本体部分と同様のメッシュ基材をベルト長辺の縁に重ねて、補強部材としてもよい。
【0060】
(ピン)
ピンの例としては、金属を含む棒、金属を含むワイヤー、樹脂を含む棒などが挙げられる。ピンの表面は平滑でもよく、又は凹凸があってもよい。金属の例には、ステンレス(Steel Use Stainless、SUS)が挙げられる。樹脂の例には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(Poly Ether Ether Ketone、PEEK)が挙げられる。特に、樹脂を含むピンであることが好ましい。樹脂を含むピンであると、金属を嫌う用途にも使用できるベルトを製造できる。
【0061】
ピンは、ベルト基材から露出している両端部が加工されていても良い。ピンが金属を含む棒である場合の加工の例には、ピンの両端部をベルト進行方向と平行な方向に折り曲げる加工(具体的には、ピンの軸に対して90度以上180度以下の角度で折り曲げる)、又は、ピンの両端部にピンの径方向に沿って突出した突出部を設ける加工等がある。突出部の例は、ピンの両端部に巻き付けられたテープ、又は、ピンの両端部に取り付けられた圧着端子等がある。上記のような加工が施されたピンであると、ピンが貫通孔から脱落しにくい。そのため、ベルト基材の接合部の強度を向上できる。
【0062】
実施形態のベルトは、例えば、ヒートシール機用ベルト、食品製造ライン、冷凍食品製造ライン、プラスチックフィルム及び床材などの製造ライン等に使用されるコンベアベルトとして、製品の製造に使用され得る。
【0063】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0064】
1…ベルト基材、2…ロール、5…ピン、10…第1端部、11…複数の経糸、11…複数の第1経糸、11…経糸、11a…複数の第1ループ、11a…第1ループ、12…緯糸、14…領域、15…縫製用糸、20…第2端部、21a…複数の第2ループ、21a…第2ループ、21…経糸、22…緯糸、30…接合部、40…連通口、71…第1基材、72…第2基材、90…ベルト基材、91…端部、92…端部、93…接合層、99…進行方向、100…ベルト、101…複数の経糸、101…経糸、102…複数の緯糸、102…緯糸、103…耐熱性繊維、104…フッ素樹脂、721…経糸、A…積層領域、B…積層領域。
図1
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