(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130963
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】アキシャルギャップ型電動発電機、送風装置、空気調和装置、及び冷凍装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/20 20060101AFI20240920BHJP
H02K 1/32 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H02K1/20 Z
H02K1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040947
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土山 幸平
(72)【発明者】
【氏名】高山 佳典
(72)【発明者】
【氏名】石丸 純
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601CC01
5H601CC02
5H601CC15
5H601CC21
5H601DD12
5H601DD22
5H601DD29
5H601DD30
5H601DD47
5H601EE12
5H601EE18
5H601EE39
5H601GA02
5H601GA22
5H601GA45
5H601GB05
5H601GB12
5H601GE01
5H601GE11
5H601HH05
5H601KK25
(57)【要約】
【課題】アキシャルギャップ型電動発において、固定子から効率良く放熱させる。
【解決手段】アキシャルギャップ型電動発電機(10)は、コイル(22)が設けられた固定子コア(21)を有する固定子(20)と、磁石(31)が設けられた回転子(30)とを備える。回転子(30)の軸方向において固定子(20)と回転子(30)とは、ギャップ(G)を介して配置される。電動発電機(10)には、固定子コア(21)を軸方向に貫通する貫通孔(21a)が設けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル(22)が設けられた固定子コア(21)を有する固定子(20)と、
磁石(31)が設けられた回転子(30)と
を備え、
前記回転子(30)の軸方向において前記固定子(20)と前記回転子(30)とがギャップ(G)を介して配置され、
前記固定子コア(21)を前記軸方向に貫通する貫通孔(21a)が設けられる
アキシャルギャップ型電動発電機。
【請求項2】
請求項1のアキシャルギャップ型電動発電機(10)において、
前記貫通孔(21a)は、前記軸方向から見て前記固定子コア(21)の中央部を貫通する
アキシャルギャップ型電動発電機。
【請求項3】
請求項2のアキシャルギャップ型電動発電機(10)において、
前記貫通孔(21a)の開口面積は、前記固定子コア(21)における前記軸方向に垂直な断面の面積の20%以上30%以下である
アキシャルギャップ型電動発電機。
【請求項4】
請求項3のアキシャルギャップ型電動発電機(10)において、
前記貫通孔(21a)の開口形状は、略円形又は略台形である
アキシャルギャップ型電動発電機。
【請求項5】
請求項1のアキシャルギャップ型電動発電機(10)において、
前記固定子コア(21)は圧粉コアである
アキシャルギャップ型電動発電機。
【請求項6】
請求項1のアキシャルギャップ型電動発電機(10)において、
前記回転子(30)の内周側に、前記回転子(30)を前記軸方向に貫通する他の貫通孔(35)が設けられる
アキシャルギャップ型電動発電機。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項のアキシャルギャップ型電動発電機(10)であるモータ(10)と、
前記モータ(10)により駆動される遠心ファン(50)と
を備える
送風装置。
【請求項8】
請求項7の送風装置(100)において、
前記遠心ファン(50)はシロッコファン(50)であり、
前記シロッコファン(50)の外周を囲むハウジング(110)を備え、
前記固定子(20)の外周端は、前記ハウジング(110)に固定される
送風装置。
【請求項9】
請求項7の送風装置(100)を備える空気調和装置。
【請求項10】
請求項7の送風装置(100)を備える冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アキシャルギャップ型電動発電機、送風装置、空気調和装置、及び冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軸方向にギャップを介して回転子と固定子とが配置されたアキシャルギャップ型の発電機が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
発電機や電動機(モータ)では、固定子を構成する巻線(コイル)のジュール損や固定子コアの鉄損を主な熱源として、構成部品の温度が上昇する。その結果、巻線の抵抗値の増大に起因する効率低下や、軸受グリスの熱劣化に起因する耐用期間の縮小等の問題が生じる。
【0004】
特許文献1に開示された発電機では、回転子の中央部に空気孔が設けられていると共に空気孔の側壁にブレードが設けられている。これにより、回転子が回転する際に、回転軸の軸方向に沿って発電機の外部から内部に向かう空気流れが生じるので、発電機を冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された発電機では、加熱した固定子からは、ギャップに面する表面でしか放熱しないので、発電機を十分に冷却させることができなかった。
【0007】
本開示の目的は、アキシャルギャップ型電動発において、固定子から効率良く放熱させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、コイル(22)が設けられた固定子コア(21)を有する固定子(20)と、磁石(31)が設けられた回転子(30)とを備え、前記回転子(30)の軸方向において前記固定子(20)と前記回転子(30)とがギャップ(G)を介して配置されたアキシャルギャップ型電動発電機であって、前記固定子コア(21)を前記軸方向に貫通する貫通孔(21a)が設けられる。
【0009】
第1の態様では、固定子コア(21)を軸方向に貫通する貫通孔(21a)が設けられるため、貫通孔(21a)の側壁面が空気に触れて当該側壁面からも放熱するので、固定子(30)から効率良く放熱させることができる。
【0010】
本開示の第2の態様は、前記第1の態様において、前記貫通孔(21a)は、前記軸方向から見て前記固定子コア(21)の中央部を貫通する。
【0011】
第2の態様では、放熱しにくく高温になりやすい固定子コア(21)の中央部に貫通孔(21a)を設けることによって、固定子コア(21)の放熱性がさらに向上するので、固定子(30)がさらに冷却しやすくなる。
【0012】
本開示の第3の態様は、前記第2の態様において、前記貫通孔(21a)の開口面積は、前記固定子コア(21)における前記軸方向に垂直な断面の面積の20%以上30%以下である。
【0013】
第3の態様では、貫通孔(21a)の開口面積が固定子コア(21)の断面積の20%以上であるため、放熱面である貫通孔(21a)の側壁面の面積が大きくなり、貫通孔(21a)による十分な放熱性が得られる。また、貫通孔(21a)の開口面積が固定子コア(21)の断面積の30%以下であるため、貫通孔(21a)に起因するトルクリップルを抑制できる。
【0014】
本開示の第4の態様は、前記第3の態様において、前記貫通孔(21a)の開口形状は、略円形又は略台形である。
【0015】
第4の態様では、貫通孔(21a)の開口形状が真円である場合と比べて、同じ開口面積での放熱面積(貫通孔(21a)の側壁面の面積)が大きくなるので、トルクリップルを抑制しながら固定子コア(21)の放熱性を向上させることができる。
【0016】
本開示の第5の態様は、前記第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、前記固定子コア(21)は圧粉コアである。
【0017】
第5の態様では、周方向や径方向に鋼板が積層された積層鋼板コアを用いる場合と比べて、固定子コア(21)の軸方向に貫通孔(21a)を形成しやすくなる。
【0018】
本開示の第6の態様は、前記第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、前記回転子(30)の内周側に、前記回転子(30)を前記軸方向に貫通する他の貫通孔(35)が設けられる。
【0019】
第6の態様では、ギャップ(G)における空気の流入出が回転子(30)の貫通孔(35)経由でも可能となる。このため、固定子コア(21)の貫通孔(21a)を通過する空気の流量がさらに増えるので、固定子コア(21)の放熱性をより一層向上させることができる。
【0020】
本開示の第7の態様は、前記第1~第6の態様のいずれか1つのアキシャルギャップ型電動発電機(10)であるモータ(10)と、前記モータ(10)により駆動される遠心ファン(50)とを備える送風装置である。
【0021】
第7の態様では、遠心ファン(50)の回転よって、固定子コア(21)の貫通孔(21a)を通過する空気の流量が増えるので、さらに効率良く固定子(30)から放熱させることができる。
【0022】
本開示の第8の態様は、前記第7の態様において、前記遠心ファン(50)はシロッコファン(50)であり、前記シロッコファン(50)の外周を囲むハウジング(110)を備え、前記固定子(20)の外周端は、前記ハウジング(110)に固定される。
【0023】
第8の態様では、ハウジング(110)により形成される圧力差を利用して、固定子コア(21)の貫通孔(21a)を通過する空気の流量がさらに増えるので、より一層効率良く固定子(30)から放熱させることができる。
【0024】
本開示の第9の態様は、前記第7又は第8の態様の送風装置(100)を備える空気調和装置である。
【0025】
第9の態様では、送風装置(100)のモータ(10)の放熱性が向上するので、コイル(22)の抵抗値の増大に起因する効率低下や、軸受グリスの熱劣化に起因する耐用期間の縮小などを抑制することができる。
【0026】
本開示の第10の態様は、前記第7又は第8の態様の送風装置(100)を備える冷凍装置である。
【0027】
第10の態様では、送風装置(100)のモータ(10)の放熱性が向上するので、コイル(22)の抵抗値の増大に起因する効率低下や、軸受グリスの熱劣化に起因する耐用期間の縮小などを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施形態の送風装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態の送風装置の縦断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の送風装置の要部の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態のモータ及びその周辺の断面構成を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態のモータの固定子コアの外観を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態のモータの固定子コアに設ける貫通孔の開口形状のバリエーションを模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、固定子コアの断面積に対する貫通孔の開口面積の比率と、トルクリップルとの関係を示す図である。
【
図8】
図8は、変形例のモータ及びその周辺の断面構成を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態の送風装置を用いた空気調和装置の冷媒回路の構成図である。
【
図10】
図10は、実施形態の送風装置を用いた冷凍装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施形態)
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、図面において、同一の符号は同一の構成要素を表わすが、長さ、幅、厚さ、深さ等の図面上の寸法は、図面の明瞭化及び簡略化のために実際の尺度から適宜変更されており、実際の相対寸法と対応しない場合がある。
【0030】
<送風装置の構成>
以下、本開示のアキシャルギャップ型電動発電機がモータ(10)として送風装置(100)に適用される場合を例示する。尚、本開示において、「電動発電機」とは、「モータ(電動機)」及び「発電機」の両方を含む概念である。
【0031】
図1~
図3に示すように、送風装置(100)は、アキシャルギャップ型電動発電機であるモータ(10)と、モータ(10)により駆動される遠心ファン(50)とを備える。本例では、遠心ファン(50)はシロッコファン(50)であり、シロッコファン(50)の外周を囲むようにハウジング(110)が設けられる。
【0032】
ハウジング(110)は、シロッコファン(50)を収容する円筒部(110a)と、円筒部(110a)から外側に延びる吹出部(110b)とを有する。円筒部(110a)の一端には、吸込口(111)を有するフランジ(113)が設けられ、吸込口(111)の周縁に沿ってベルマウス(114)が設けられる。円筒部(110a)の他端には、外周に沿って環状のモータ固定部(110c)が設けられる。吹出部(110b)は、外方に向かって徐々に広がる四角錐形状を有し、吹出部(110b)の外端に吹出口(115)が設けられる。
【0033】
シロッコファン(50)は、円板状の端板(51)と、端板(51)の一方の面に周方向に間隔をあけて配列された複数の羽根(52)と、複数の羽根(52)における端板(51)の反対側を連結する環状部材(53)とを有する。端板(51)は、モータ(10)の回転軸(11)に取り付けられたEリング(12)と固定部材(54)とによって回転軸(11)に連結される。
【0034】
<モータの構成>
図3及び
図4に示すように、モータ(10)は、回転軸(11)の軸方向にギャップ(G)を介して配置された、それぞれ円板状の固定子(20)及び回転子(30)を有する。本例では、モータ(10)は、固定子(20)が一対の回転子(30)によって挟まれたダブルロータ型モータとして構成される。
【0035】
固定子(20)は、周方向に間隔をあけて配置された固定子コア(21)と、固定子コア(21)に巻回されたコイル(22)と、固定子(21)及びコイル(22)を樹脂モールドする円板状のモールド部(23)とを有する。固定子コア(21)は、圧粉コアであってもよい。モールド部(23)は、例えばBMC(Bulk Molding Compound)で構成されてもよい。モールド部(23)の外周端(23a)は、ハウジング(110)のモータ固定部(110c)に固定される。モールド部(23)の軸方向の両面に、ギャップ(G)へ塵埃等の流入を防止する突起構造を設けてもよい。固定子(20)の内周には、回転軸(11)を周方向に囲むように軸受(24)が設けられる。軸受(24)は、モールド部(23)の内周に向けられた軸受ハウジング(25)によって保持される。固定子コア(21)とコイル(22)との間には、両者を絶縁するインシュレータ(26)が配置される。
【0036】
回転子(30)には磁石(31)が設けられる。本例では、磁石(31)は、極異方配向のプラスチックマグネットで構成され、周方向にS極とN極とが交互に配置されるが、これに限定されず、永久磁石を周方向に配置してもよい。回転子(30)の中央部には固定部(32)が設けられ、磁石(31)は、固定部(32)の外周に沿って円環状に配置される。固定部(32)の内周には、回転軸(11)に固定するためのボス部(33)が設けられる。ボス部(33)の中心には、回転軸(11)が貫通する軸穴(34)が設けられ、軸穴(34)の内周に回転軸(11)が固定される。回転子(30)の磁石(31)は、回転軸(11)の軸方向つまり回転子(30)の軸方向にギャップ(G)を介して固定子コア(21)と対向する。
【0037】
<固定子コアの構成>
図3~
図5に示すように、モータ(10)には、固定子コア(21)を軸方向に貫通する貫通孔(21a)が設けられる。貫通孔(21a)は、軸方向から見て固定子コア(21)の中央部を貫通してもよい。固定子コア(21)の軸方向の両側に、周方向に延出する鍔部(21b)を設け、固定子コア(21)を周方向に配置しやすくしてもよい。
【0038】
固定子コア(21)に貫通孔(21a)を設けることにより、ギャップ(G)に面する固定子コア(21)の表面からの放熱に加え、貫通孔(21a)の側壁面からも放熱が可能となる。
【0039】
本実施形態の送風装置(100)では、モータ(10)によりシロッコファン(50)が駆動されると、ハウジング(110)内においてシロッコファン(50)によって圧力差が生じる。具体的には、
図4に示すように、空気が吸い込まれるシロッコファン(50)の内周側の空間は低圧となり、ハウジング(110)内においてシロッコファン(50)の外周側の空間は、シロッコファン(50)から径方向外側に吹き出される空気により高圧となる。このため、シロッコファン(50)に近い方のギャップ(G)に流入した空気が、固定子コア(21)の貫通孔(21a)を通過し、シロッコファン(50)から遠い方のギャップ(G)を経由して送風装置(100)の外部へ放出される。その結果、固定子コア(21)の貫通孔(21a)を通過する空気の流量がさらに増えるので、より一層効率良く固定子(30)から放熱させて固定子(30)を冷却することができる。
【0040】
固定子コア(21)の放熱性を向上させるためには、貫通孔(21a)の開口面積を大きくして、放熱面となる貫通孔(21a)の側壁面の面積を大きくした方が良い。一方、貫通孔(21a)の開口面積を大きくすると、コイル(22)が巻回される固定子コア(21)の断面積(軸方向に垂直な断面の面積)が小さくなって磁気飽和が起こりやすくなるので、トルクリップルが増大してしまう。
【0041】
図6は、貫通孔(21a)の開口形状のバリエーションを示す。貫通孔(21a)の開口形状が真円(
図6の(A))である場合と比べて、貫通孔(21a)の開口形状が略円形(
図6の(B))又は略台形(
図6の(C))であると、同じ開口面積での放熱面積(貫通孔(21a)の側壁面の面積)が約8%前後大きくなる。これにより、トルクリップルを抑制しながら固定子(30)の放熱性を向上させることができる。尚、
図6の(B)では、略円形として、トラック形状を例示しているが、これに代えて、楕円形状としてもよい。
【0042】
図7は、
図6の(A)~(C)に示す開口形状の貫通孔(21a)を設けた場合における、固定子コア(21)の断面積に対する貫通孔の開口面積(21a)の比率(以下、貫通孔サイズという)と、トルクリップルとの関係を、本願発明者が磁場解析によって調べた結果を示す。
図7に示すように、貫通孔(21a)の各開口形状について、貫通孔サイズが30%程度以下であれば、トルクリップルに悪い影響は生じなかった。尚、固定子コア(21)の放熱性を向上させるためには、貫通孔サイズは10%程度以上であることが好ましく、20%程度以上であることがより好ましい。
【0043】
<モータの変形例>
図8に示すように、モータ(10)において、固定子(20)を挟む一対の回転子(30)のそれぞれの内周側に、回転子(30)を軸方向に貫通する貫通孔(35)を設けてもよい。これにより、シロッコファン(50)に近い方のギャップ(G)には、回転子(30)の外周側に加えて内周側からも空気が流入すると共に、シロッコファン(50)から遠い方のギャップ(G)からは、回転子(30)の外周側に加えて内周側からも空気が流出する。その結果、固定子コア(21)の貫通孔(21a)を通過する空気の流量がさらに増えるので、固定子コア(21)の放熱性をより一層向上させることができる。
【0044】
回転子(30)において、貫通孔(35)は固定部(32)に設けてもい。このようにすると、磁石(31)に貫通孔(35)を設ける場合と比べて、磁力低下に起因する性能低下を抑制できる。或いは、貫通孔(35)はボス部(33)に設けてもよい。この場合、ボス部(33)を複数の梁から構成し、梁同士の間の空隙を貫通孔(35)として利用してもよい。
【0045】
図8に示す変形例では、一対の回転子(30)の両方に貫通孔(35)を設けたが、一方の回転子(30)のみに貫通孔(35)を設けてもよい。
【0046】
<送風装置の用途>
本実施形態の送風装置(100)の用途は特に限定されないが、例えば、
図9に示す空気調和装置(200)や、
図10に示す冷凍装置(300)に用いてもよい。
【0047】
図9に示す空気調和装置(200)は、調和された空気を室内に供給するための装置である。空気調和装置(200)は、室内の壁面などに取り付けられる室内機(210)と、室外に設置される室外機(220)とを備える。室内機(210)内には室内熱交換器(211)が収納され、室外機(220)内には室外熱交換器(221)が収納される。各熱交換器(211)、(221)が冷媒配管により接続されることによって冷媒回路が構成される。具体的には、空気調和装置(200)の冷媒回路は、主として、室内熱交換器(211)、アキュムレータ(222)、圧縮機(223)、四路切換弁(224)、室外熱交換器(221)、及び電動膨張弁(225)から構成される。
【0048】
室内機(210)に設けられる室内熱交換器(211)は、接触する空気との間で熱交換を行う。室内機(210)には、室内空気を吸い込んで室内熱交換器(211)に通すと共に熱交換が行われた後の空気を室内に排出するためのクロスフローファン(212)が設けられる。クロスフローファン(212)は室内ファンモータ(213)によって回転駆動される。
【0049】
室外機(220)には、圧縮機(223)と、圧縮機(223)の吐出側に接続される四路切換弁(224)と、圧縮機(223)の吸入側に接続されるアキュムレータ(222)と、四路切換弁(224)に接続された室外熱交換器(221)と、室外熱交換器(221)に接続された電動膨張弁(225)とが設けられる。室外機(220)には、室外熱交換器(221)での熱交換後の空気を外部に排出するために、本実施形態の送風装置(100)が設けられる。電動膨張弁(225)は、フィルタ(226)及び液閉鎖弁(227)を介して配管(201)の一端に接続され、配管(201)の他端は室内熱交換器(211)の一端に接続される。四路切換弁(224)は、ガス閉鎖弁(228)を介して配管(202)の一端に接続され、配管(201)の他端は室内熱交換器(211)の他端に接続される。
【0050】
図10に示す冷凍装置(300)は、冷却対象である庫内、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、ショーケース等の空気を冷却する装置である。冷凍装置(300)は、室外ユニット(310)と、冷設ユニット(320)とを備える。
【0051】
冷設ユニット(320)は庫内に設けられる。冷設ユニット(320)は、利用熱交換器(321)と庫内ファン(322)とを備える。利用熱交換機(321)には、室外ユニット(310)から配管(301)を介して供給された冷媒が流れる。これにより、庫内の空気が冷却される。庫内ファン(322)は、利用熱交換機(321)により冷却された空気を庫内に送風する。
【0052】
室外ユニット(310)は、庫外に設けられる。室外ユニット(310)は、圧縮装置(311)と、室外熱交換器(312)と、本実施形態の送風装置(100)とを備える。圧縮装置(311)は、冷媒を圧縮する圧縮機構を有し、当該圧縮機構によって、冷設ユニット(320)から配管(301)を介して供給された冷媒を圧縮する。室外熱交換器(312)には、圧縮装置(311)によって圧縮された冷媒が流れる。これにより、冷媒の熱が外気へ放出される。送風装置(100)は、室外熱交換器(312)によって熱せられた外気を送風する。
【0053】
<実施形態の特徴>
以上に説明したように、本実施形態では、モータ(10)に、固定子コア(21)を軸方向に貫通する貫通孔(21a)が設けられる。このため、貫通孔(21a)の側壁面が空気に触れて当該側壁面からも放熱するので、固定子(30)から効率良く放熱させることができる。従って、コイル(22)の抵抗値の増大に起因する効率低下や、軸受グリスの熱劣化に起因する耐用期間の短縮などを抑制することができる。
【0054】
本実施形態において、貫通孔(21a)は、軸方向から見て固定子コア(21)の中央部を貫通してもよい。放熱しにくく高温になりやすい固定子コア(21)の中央部に貫通孔(21a)を設けることによって、固定子コア(21)の放熱性がさらに向上するので、固定子(30)がさらに冷却しやすくなる。
【0055】
本実施形態において、貫通孔(21a)の開口面積は、固定子コア(21)における軸方向に垂直な断面の面積の20%以上30%以下であってもよい。貫通孔(21a)の開口面積が固定子コア(21)の断面積の20%以上であると、放熱面である貫通孔(21a)の側壁面の面積が大きくなり、貫通孔(21a)による十分な放熱性が得られる。貫通孔(21a)の開口面積が固定子コア(21)の断面積の30%以下であると、貫通孔(21a)に起因するトルクリップルを抑制できる。
【0056】
本実施形態において、貫通孔(21a)の開口形状は、略円形又は略台形であってもよい。このようにすると、貫通孔(21a)の開口形状が真円である場合と比べて、同じ開口面積での放熱面積(貫通孔(21a)の側壁面の面積)が大きくなるので、トルクリップルを抑制しながら固定子コア(21)の放熱性を向上させることができる。
【0057】
本実施形態において、固定子コア(21)は圧粉コアであってもよい。このようにすると、周方向や径方向に鋼板が積層された積層鋼板コアを用いる場合と比べて、固定子コア(21)の軸方向に貫通孔(21a)を形成しやすくなる。
【0058】
本実施形態において、回転子(30)の内周側に、回転子(30)を軸方向に貫通する他の貫通孔(35)が設けらてもよい。このようにすると、ギャップ(G)における空気の流入出が回転子(30)の貫通孔(35)経由でも可能となるため、固定子コア(21)の貫通孔(21a)を通過する空気の流量がさらに増えるので、固定子コア(21)の放熱性をより一層向上させることができる。
【0059】
本実施形態の送風装置(100)は、以上に述べたモータ(10)と、モータ(10)により駆動される遠心ファン(50)とを備える。このため、遠心ファン(50)の回転よって、固定子コア(21)の貫通孔(21a)を通過する空気の流量が増えるので、さらに効率良く固定子(30)から放熱させることができる。
【0060】
本実施形態の送風装置(100)において、遠心ファン(50)はシロッコファン(50)であり、シロッコファン(50)の外周を囲むハウジング(110)を備え、固定子(20)の外周端は、前記ハウジング(110)に固定されてもよい。このようにすると、ハウジング(110)により形成される圧力差を利用して、固定子コア(21)の貫通孔(21a)を通過する空気の流量がさらに増えるので、より一層効率良く固定子(30)から放熱させることができる。また、シロッコファン(50)を用いているので、シロッコファン(50)の内周側と外周側との間の圧力差が大きくなるので、固定子コア(21)の貫通孔(21a)やギャップ(G)が小さくても、固定子(20)の冷却に十分な空気を流すことができる。
【0061】
本実施形態の送風装置(100)は、空気調和装置(200)や冷凍装置(300)などに用いてもよい。このようにすると、送風装置(100)のモータ(10)の放熱性が向上するので、コイル(22)の抵抗値の増大に起因する効率低下や、軸受グリスの熱劣化に起因する耐用期間の縮小などを抑制することができる。
【0062】
(その他の実施形態)
前記実施形態(変形例を含む。以下同じ。)では、本開示のアキシャルギャップ型電動発電機としてモータ(10)について説明したが、モータ(10)と同様の構成を発電機に適用してもよい。
【0063】
前記実施形態では、モータ(10)を送風装置(100)に適用する場合を例示したが、モータ(10)の用途は送風装置に限定されない。モータ(10)を送風装置以外に適用する場合、例えば、回転子(30)にブレードを設けて、固定子コア(21)の貫通孔(21a)を通過する空気の流量を増大させてもよい。
【0064】
前記実施形態では、送風装置(100)を空気調和装置(200)や冷凍装置(300)に適用する場合を例示したが、これに限定されず、換気装置やダクト用送風装置などに送風装置(100)を適用してもよい。いずれの用途でも、送風装置(100)による送風の一部を利用して、前記実施形態のようにモータ(10)を効率良く冷却することが好ましい。
【0065】
前記実施形態では、送風装置(100)の遠心ファン(50)として、シロッコファンを用いたが、これに代えて、ターボファンなどの他の遠心ファンを用いてもよい。また、遠心ファン(50)を回転軸(11)の一端に固定したが、遠心ファン(50)による送風の一部をモータ(10)の冷却に利用できる構成であれば、遠心ファン(50)を一方又は両方の回転子(30)に取り付けてもよい。
【0066】
前記実施形態では、固定子(20)が一対の回転子(30)によって挟まれたダブルロータ型のモータ(10)を例示したが、これに代えて、シングルロータ型のモータにおいて、固定子コア(21)を軸方向に貫通する貫通孔(21a)を設けてもよい。シングルロータ型のモータは、固定子及び回転子をそれぞれ1個ずつ有する構成でもよいし、或いは、回転子が一対の固定子によって挟まれる構成でもよい。
【0067】
前記実施形態では、回転子(30)を回転軸(11)に固定して、回転子(30)と共に回転軸(11)を回転させたが、これに代えて、固定子(20)にシャフトを固定し、当該シャフト周りに軸受を介して回転子(30)を回転させてもよい。
【0068】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上に説明したように、本開示は、アキシャルギャップ型電動発電機、送風装置、空気調和装置、及び冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0070】
10 モータ(アキシャルギャップ型電動発電機)
20 固定子
21 固定子コア
21a 貫通孔
22 コイル
30 回転子
35 貫通孔(他の貫通孔)
50 シロッコファン(遠心ファン)
100 送風装置
110 ハウジング
200 空気調和装置
300 冷凍装置
G ギャップ