(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130972
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】卓上型シートディスペンサー
(51)【国際特許分類】
B65D 83/08 20060101AFI20240920BHJP
A47K 10/20 20060101ALI20240920BHJP
A47K 10/42 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B65D83/08 G
A47K10/20 A
A47K10/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040961
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 力
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014MC07
(57)【要約】
【課題】シートの引出し性に優れ、束の落ち込みが防止された卓上型シートディスペンサーを提供する。
【解決手段】
ケース本体が、背面側から前面側に向って下り傾斜する底板部と、底板部の前面側に立設された前方に傾斜する前板部と、前板部に設けられたシートを引き出すための内外に連通する取出口を有し、取出口が、前板部の幅方向に沿って細長部分を有し、前板部の内面側に、取出口の細長部分の上縁に沿って取出口の幅方向中央部に位置される第一凸条部と、取出口の細長部分の下縁に沿ってかつ取出口の中央を挟んで幅方向に離間して位置される一対の第二凸条部と、が設けられている、卓上型シートディスペンサーにより解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーパータオルの束を内部に収納するケース本体と、ケース本体を所定高さに支持する台座部と、を有する卓上型シートディスペンサーにおいて、
ケース本体は、背面側から前面側に向って下り傾斜する底板部と、底板部の前面側に立設された前方に傾斜する前板部と、前板部に設けられたペーパータオルを引き出すための内外に連通する取出口を有し、
取出口は、前板部の幅方向に沿って細長部分を有し、
前板部の内面側に、取出口の細長部分の上縁に沿って取出口の幅方向中央部に位置される第一凸条部と、取出口の細長部分の下縁に沿ってかつ取出口の中央を挟んで幅方向に離間して位置される一対の第二凸条部と、が設けられている、
ことを特徴とする卓上型シートディスペンサー。
【請求項2】
底板部の傾斜角度は、水平面に対して30度以上45度以下とされている、請求項1記載の卓上型シートディスペンサー。
【請求項3】
取出口は、第一凸条部間において下方に拡幅された部分を有している、請求項1記載の卓上型シートディスペンサー。
【請求項4】
第一凸条部と、各第二凸条部とが、前板部の上下方向において重なる位置に配置されている、請求項1記載の卓上型シートディスペンサー。
【請求項5】
第一凸条部の長さは、取出口の幅方向の52~72%とされ、第二凸条部の長さは、取出口の幅方向の12~32%とされている、請求項1記載の卓上型シートディスペンサー。
【請求項6】
第一凸条部の幅方向中央と、各第二凸条部の幅方向中央とを結ぶ仮想線間の角度が155~165度であり、かつ、第一凸条部の幅方向中央と各第二凸条部とを結ぶ仮想線と前板部の幅方向に沿う仮想線との間の角度が7.5~12.5度となるように、第一凸条部と第二凸条部とが設けられている、請求項1記載の卓上型シートディスペンサー。
【請求項7】
前板部の外面側に、取出口の細長の下縁に沿って第三凸条部が設けられている、請求項1記載の卓上型シートディスペンサー。
【請求項8】
第三凸条部は、第二凸条部に対して、第二凸条部の上縁から取出口の下縁を介して連接するように設けられている、請求項7記載の卓上型シートディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーパータオル等のシートを折り畳み積層した束を収納し、取出口から1枚ずつ取り出すシートディスペンサーに関し、特に卓上型のシートディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンペーパー、清拭用ワイプ等の所謂ペーパータオルと称されることもある紙製や不織布製のシート用のディスペンサーとして据え置き型、卓上型のものが知られている。この卓上型シートディスペンサーの中には、取出口が斜下方に向かって開口されており、シートを下方に向かって引き出すものがある(下記、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0003】
この種の卓上型シートディスペンサーは、取出口が下方に向いているため取出口から水や埃が進入し難く、また、濡れた手でシートを引き出した際等に、手からの雫が次のシートに付着したり、取出口から内包される束にかからないため、衛生面において優れている。
【0004】
その一方で、内部のシートの枚数が多い場合には、取出口が設けられている全面への荷重が高くなり、シートを引き出す際の抵抗が高くなりやすく、また、内部のシートの枚数が少ない場合には、ディスペンサー内部で束自体が動いたり折れ曲がりやすいという欠点がある。
【0005】
特許文献1、特許文献2に示される卓上型ペーパータオル用ディスペンサーは、束と取出口が設けられている前板部との当接状態を維持させる押え板を設けることで、内部のシートの枚数が少なくなった際に、ディスペンサー内部で束自体が動いたり折れ曲がったりしないようにしている。
【0006】
特許文献3に示される卓上型ペーパータオル用ディスペンサーは、取出口の両端側から中央側に向かう一対の突起部を設けることで、束と取出口が設けられている前板部との接触面積を小さくして、シートの枚数が多い場合の引き出し抵抗を低下させ、さらに、シートの枚数が少なくなった際に束の前板部がわが凸となるように、束を湾曲されるようにして、ディスペンサー内部で束自体が動いたり折れ曲がり難くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-27601号公報
【特許文献2】特開2019-058327号公報
【特許文献3】特開2013-135772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の技術は、別体の押え板が必要であり束のセットに煩雑な操作を有し、また、内部のシートの枚数が多い場合における、シートの引き出す際の抵抗が高くなりやすいという問題に十分に対応できていない。そのため、内部のシートの枚数が多い場合に、特に濡れた手でシートを引き出した際に、シートの摘まんだ部分がちぎれてしまうことがあった。
【0009】
特許文献3の技術においては、シートの枚数が少なくなった際に、シートの物性や大きさによっては、十分に束の湾曲が発現せずに束の折れや動きが生じたり、意図しない過度の複数枚が取出口から一度に引き出されてしまうことがあった。また、特許文献3の技術では、束に十分にシートが残っている状態で束の湾曲が意図せずに生ずる場合があり、このような場合に引き出し抵抗が過度となって、特に、特許文献1や特許文献2の技術と同様に、濡れた手でシートを引き出した際等にシートが破れてしまうことがあった。
【0010】
さらに、特許文献3の技術は、突起部の突出長によって突起部間の距離が定まるため、例えば、中判サイズのペーパータオル用のディスペンサーに、小判サイズのペーパータオルの束を入れた際に、突起部で束が十分に支持されず突起部の機能しないことがあるなど、シートのサイズが限定されてしまうという問題点があった。
【0011】
そこで、本発明の主たる課題は、シートの枚数が少なくなった際においても、束が動いたり折れ曲がったりし難く、また、ディスペンサー内の束の枚数によらず、シートの引き出し性に優れ、さらに、サイズの異なるシートにも対応できる卓上型シートディスペンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決した第一の手段は、
シートの束を内部に収納するケース本体と、ケース本体を所定高さに支持する台座部と、を有する卓上型シートディスペンサーにおいて、
ケース本体は、背面側から前面側に向って下り傾斜する底板部と、底板部の前面側に立設された前方に傾斜する前板部と、前板部に設けられたシートを引き出すための内外に連通する取出口を有し、
取出口は、前板部の幅方向に沿って細長部分を有し、
前板部の内面側に、取出口の細長部分の上縁に沿って取出口の幅方向中央部に位置される第一凸条部と、取出口の細長部分の下縁に沿ってかつ取出口の中央を挟んで幅方向に離間して位置される一対の第二凸条部と、が設けられている、
ことを特徴とする卓上型シートディスペンサーである。
【0013】
第二の手段は、
底板部の傾斜角度は、水平面に対して35度以上45度以下とされている、上記第一の手段に係る卓上型シートディスペンサーである。
【0014】
第三の手段は、
取出口は、第一凸条部間において下方に拡幅された部分を有している、上記第一の手段に係る卓上型シートディスペンサーである。
【0015】
第四の手段は、
第一凸条部と、各第二凸条部とが、前板部の上下方向において重なる位置に配置されている、上記第一の手段に係る卓上型シートディスペンサーである。
【0016】
第五の手段は、
第一凸条部の長さは、取出口の幅方向の52~72%とされ、第二凸条部の長さは、取出口の幅方向の12~32%とされている、上記第一の手段に係る卓上型シートディスペンサーである。
【0017】
第六の手段は、
第一凸条部の幅方向中央と、各第二凸条部の幅方向中央とを結ぶ仮想線間の角度が155~165度であり、かつ、第一凸条部の幅方向中央と各第二凸条部とを結ぶ仮想線と前板部の幅方向に沿う仮想線との間の角度が7.5~12.5度となるように、第一凸条部と第二凸条部とが設けられている、上記第一の手段に係る卓上型シートディスペンサーである。
【0018】
第七の手段は、
前板部の外面側に、取出口の細長の下縁に沿って第三凸条部が設けられている、上記第一の手段に係る卓上型シートディスペンサーである。
【0019】
第八の手段は、
第三凸条部は、第二凸条部に対して、第二凸条部の上縁から取出口の下縁を介して連接するように設けられている、上記第七の手段に係る卓上型シートディスペンサーである。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、省スペースとすることができ、引き出し性やシート束のケース本体内への落ち込み等の問題を改善した、衛生的で使用しやすい卓上型シートディスペンサーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る卓上型シートディスペンサーの正面図である。
【
図2】本発明に係る卓上型シートディスペンサーの側面図である。
【
図3】本発明に係る卓上型シートディスペンサーのケース本体部の説明図である。
【
図4】本発明に係る卓上型シートディスペンサーの台座部の説明図である。
【
図5】本発明に係る卓上型シートディスペンサーの前板部の内面側の図である。
【
図6】本発明に係る卓上型シートディスペンサーの前板部の外面側の図である。
【
図7】本発明に係る卓上型シートディスペンサーの
図6におけるVII- VII位置の前板部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次いで、本発明の実施の形態を
図1~7を参照しながら以下に詳述する。
本実施形態のディスペンサーX1は、シートの束1を収納するケース本体10が台座部20によって所定高さに支持されており、キッチン台、洗面台、手洗い場台、作業台、床などに載置して使用する据え置き型、卓上型のシートディスペンサーX1(以下、単にディスペンサーX1ともいう)である。
【0023】
この本実施形態のディスペンサーX1は、ケース本体10が、前板部11、底板部12、背板部13、側板部14A,14B及び天板部15とで構成され、収納可能な束1の大きさよりも大きい収納空間10Aを有している。図示の形態では、概ね直六面体形状の箱形形状の外観をなしているが、ディスペンサーX1の外観は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜の意匠とすることができる。また、この実施形態の収納箱は、束を背面側から押える押え材は、有していない。この実施形態の収納箱は、内部のシートの枚数が少なくなった際に、ディスペンサー内部で束自体が動いたり折れ曲がったりすることを防止できる。
【0024】
ケース本体10は、特に、背面側から前面側に向って下り傾斜する底板部12と、底板部12の前面側に立設された前方に傾斜する前板部11と、前板部11に設けられたシートを引き出すための内外に連通する取出口16を有している。図示の形態では、底板部12に対して前板部11が垂直に立設されており、その前板部11が設置時において前方に向って傾斜するようにして所定高さでケース本体10が台座部20に固定されることで、底板部12が背板部側から前板部側に向って下り傾斜されているとともに、取出口16が手前側斜め下方に向って開口されている。このディスペンサーX1は、このように取出口16が下方に向いていることで、取出口16から埃や塵が入り難くなっている。
【0025】
また、取出口16が手前側斜め下方に向いているため、そこから露出されたシートの一部が、下方に垂れ下がる態様となる。したがって、手でシートを引き出す操作を行なう際には、取出口16より下方からシートを掴むことになるため、濡れたり汚れたりした手でシートを引き出す操作を行なっても、手に付着した水や汚れが落下して取出口からケース本体に進入することがなくなり、ケース本体10内のシートの束1を水や汚れで汚染することがなく、衛生的に使用できる。
【0026】
このディスペンサーX1が対象とするシートの束1は、複数の方形のシートを二つ折りにし、各折り返し片の縁を上下に隣接するシートの折り返し内面に位置するようにして互い違いに重なり合うように積層し、積層最上部又は積層最下部の一枚の折り返し片を引っ張ると、シート表面の摩擦等によって、隣接するシートの折り返し片がつられて引き出されるようにしたものである。このような束はポップアップ式の束とも称される。本発明に係る束1は、必ずしも限定されないが、好ましくは坪量20~100g/m2の複数の方形の紙製又は不織布製のペーパータオルの束である。特に紙製のペーパータオルの束である。このようなポップアップ式の束1はインターフォルダと称される折り機によって製造することができ、積層に伴う若干のずれはあるものの概ね直方体形状をなす。なお、本実施形態においては、シートが引き出されていくことになるシートの束1の積層最上面或いは積層最下面の何れかの面を引き出し側面1Aと称することがある。
【0027】
このディスペンサーX1は、束をケース本体内に、底板部の上に上記の折り返し縁が並ぶ面1Bが対面するようにして載置して収納する。底板部12は、背面側から前面側に向って下り傾斜されているため、前板部11に設けられた取出口16からシートを引き出すと、束1が下り傾斜する底板部12に沿って束1の引き出し側面1Aが前板部11の内面に向かうように引き寄せられる。
【0028】
背板部13は、前板部11との間に束1が介在可能な適宜の間隔を空けて位置され、その間隔は、市販の一般的な束1の厚さ(高さ)を考慮すれば50~110mm程度である。なお、図示例では、ケース本体10が略直六面体形状であるため背板部13は前板部11と全体として平行に配されているが、背板部13は、必ずしも傾斜している必要はなく、例えば、背板部13が、垂直又は前板部11よりも垂直に近い傾斜としてもよい。
【0029】
天板部15は、底板部12との間に束1が介在可能な適宜の間隔を空けて位置される。天板部15と底板部12とが実質的に平行をなし、それらの間が束1の奥行方向の長さとほぼ同等、少なくとも30mm以内の間隔とすると、束1の上下方向の過度の移動が規制され、ケース本体内で束1が崩れたり、倒れたりし難くなる。
【0030】
側板部14A,14Bは、ケース本体の幅方向の側部に位置して、所定の間隔で配置されてケース本体に収めた束1の幅方向への移動を規制して、取出口16からのスムーズなシートの取り出しに寄与するとともに、汚液・埃・塵などの汚れから束1を保護する。図示の形態のケース本体は、側板部14A,14Bが、前板部11及び底板部12に連接する下部側板部14Aと、天板部15と背板部13に連接する上部側板部14Bとで構成されており、下部側板部14Aの上縁部と、上部側板部14Bの下縁部とが重なることでケース本体の側板部14A,14Bを構成している。側板部間の距離は、収納するシートの大きさによって適宜に設計することができる。但し、この実施形態の収納箱は、側板部から突出する突起部は有していない。この実施形態の収納箱は、突起部による束の幅方向の湾曲がなくとも、内部のシートの枚数が少なくなった際に、ディスペンサー内部で束自体が動いたり折れ曲がったりすることを防止でき、また、内部のシートの枚数が多い場合にも過度の引き出し抵抗とならないようにすることができる。
【0031】
ここで、図示のケース本体10は、特に、背板部13、天板部15及び上部側板部14Bが、ケース本体10の前板部11、底板部12及び下部側板部14Aと台座部20とから分離自在の別体とされた蓋体となっており、
図3に示すように、蓋体を持ち上げることで、ケース本体10内に束1を収納することができるようになっている。但し、本発明のディスペンサーにおける束収納のための構造は、この例に限定されない。図示はしないが、例えば、蓋体、背板部又は天板部をそれぞれが連接する各板部にヒンジ接続して開閉自在な蓋とするようにしてもよい。
【0032】
前板部11は、束1の引出しがわ面1Aよりも大きい範囲を有している。前板部11の具体的な大きさは必ずしも限定されないが、この種のディスペンサーX1では、束1の幅が210~230mm程度となる中判のペーパータオル、束の幅が210~230mm程度の小判のペーパータオル、束の幅が155~165mm程度の小小判のペーパータオルに使用される多いことから、これらのサイズのシートの束が収納可能となるように、前板部の幅L1は、210~250mm、より好ましくは229~233mmとするのが望ましい。また、サイズに関係なく束1の奥行方向の長さは85~115mm程度であることから、前板部の高さ方向の長さL2は90~130mmとするのが望ましい。
【0033】
取出口16は、前板部11の高さ方向の中央部に設けられており、幅方向に延在する細長状に開口する部分16Aを有している。また、取出口16は、幅方向中央部の下縁が下方に湾曲して幅広に拡幅されている拡幅部16Bを有している。このように、幅方向中央部が拡幅されていると、シートの露出部分の中央部を摘みやすくなるため望ましい。
【0034】
取出口16の幅方向の長さL3は、収納することを想定する束1の幅の90~120%の長さとするのが望ましい。図示の形態では、前板部11の幅方向のほぼ全幅に渡って設けられている。なお、90%未満であるとシートの引き出し時に取出口16の両端部とシートが過度に摺れてスムーズな引き出しが行えなくなるおそれがある。また、取出口16の下縁16Uから底板部12までの距離は20~50mmとするのがよい。底板部12に束1を載置した際に取出口近傍に束1を構成するシートの折り返し片を位置させやすくなる。
【0035】
取出口16の幅L4は、細長状に開口する部分で5~15mmとするのが望ましく、拡幅部の最大に広い部分においても35mm以下とするのが望ましい。この幅L4が過度に狭かったり広かったりすると、引き出し抵抗が高くなったり、複数枚が一度に引き出されることがあり、本発明の所望の効果が得られない場合がある。なお、本発明における取出口16の幅L4とは図中の符号L4で示す開口幅をいい、ケース本体10或いは前板部11の幅と直行する方向であり意味を異にする。
【0036】
ここで、このディスペンサーX1は、特徴的に、前板部11の内面側に、取出口16の細長部分16Aの上縁16Tに沿って取出口16の幅方向中央部に位置される第一凸条部50と、取出口16の細長部分16Aの下縁16Dに沿ってかつ取出口16の幅方向中央を挟んで離間して位置される一対の第二凸条部60,60と、が設けられている。取出口16の拡幅部16Bは、この第二凸条部60,60間において下方に拡幅されているのが望ましい。また、第一凸条部50及び第二凸条部60は、取出口16の細長部分16Aの縁16T,16Dから少なくとも5mm以内の位置から凸となっているのが望ましい。特には、
図7に示すように、第一凸条部50は、取出口16の細長部分16Aの上縁位置16Tから連続的に凸となっているのが望ましく、第二凸条部60は、取出口16の細長部分16Aの下縁位置16Dから連続的に凸となっているのが望ましい。
【0037】
このディスペンサーX1は、底板部12の上に、束1の折り返し縁が並ぶ面1Bを載置し、その傾斜を利用して束1の引出しがわ面1Aが第一凸条部50、第二凸条部60に凭れるようにして当接され、引出しがわ面1Aから取出口16を介してシートの一部がケース本体外へ露出される。シートの引き出しは、取出口16から露出するシートの一枚を摘み、上方、下方、前方又は前板部11に対して直行する方向に引き出す操作により行なわれる。
【0038】
凸条部がない場合、シート束が前板部内面全体に凭れかかることになり、特に、ケース本体内のシートの枚数が多い際や強くシートを引き出した際に、前板部内面との摩擦が高く、シートに皺が入ったり、破れたり過度の力が必要であったりとスムーズな引出しが阻害されやすくなるが、この実施形態のディスペンサーX1では、第一凸条部50、第二凸条部60によって、束1の引出しがわ面1Aが前板部11の内面側全体に接触しなくなり、引き出し時には、主に第一凸条部50、第二凸条部60と擦れることになりため、シートの引出し抵抗が小さくなり、スムーズな引出しが可能となる。
【0039】
また、第一凸条部50と、各第二凸条部60は、特に、前板部11の上下方向において一部が重なるように配置されているのが望ましい。このように配されていると、取出口16の中央部において前板部11の上下方向において第一凸条部50も第二凸条部60も存在しない間隙部分が存在しなくなるため、シートを引き出す際に、当該間隙に沿ってシートが変形することはなく、意図しない皺が発生し難くなり、よりシートをスムーズに引き出しやすくなる。重なり幅は、限定されないが、10~50mmが望ましい。
【0040】
また、第一凸条部50及び第二凸条部60は、
図7に示すように、特に前板部の上下方向側の各縁が角取されて曲面となっているのが望ましい。シートの引き出し時における引き出し抵抗がより小さくなり、スムーズにシートを引き出せるようになる。
【0041】
また、このディスペンサーX1では、取出口16の内面側と第一凸条部50,第二凸条部60の突出長の分、特に、束1の引出しがわ面1Aが取出口近傍において、離間して位置されるため、シートの束の枚数が少なくなると、束1が上下方向にやや湾曲するようになり、束1が底板部12にずり落ち難くなる。
【0042】
第一凸条部50及び第二凸条部60の前板部側の基端からの突出長は、必ずしも限定されないが、既述の中判、小判、小小判のペーパータオルのサイズのシートを使用する場合は、第一凸条部50及び第二凸条部60の前板部側の基端からの突出長は、3~10mmとするのが望ましい。束1が上記のとおり、上下方向にやや湾曲する形状となりやすい。また、特に、第二凸条部60の突出長L6を、第一凸条部50の突出長L5より1~3mm短くするのが望ましい。前板部11の下方側に位置する第二凸条部60の突出長を短くすることで、取出口16より下方位置に束1の荷重が受けやすくなり、シートを引き出す際等に複数枚が重なったまま排出され難くなる。
【0043】
また、第一凸条部50の幅方向長さL7は、取出口16の幅方向の52~72%とされ、第二凸条部60の幅方向長さL8は、取出口16の幅方向の12~32%とされているのが望ましい。これらの割合とすると、束1の大きさによらずシートを引き出しやすくなる。さらに、第一凸条部50の幅方向長さL7は、取出口16の幅方向の57~68%とされているのがより望ましく、取出口16の幅方向の59~65%とされているのが特に望ましい。第二凸条部60の幅方向長さL8は、取出口16の幅方向の17~28%とされているのが望ましく、取出口16の幅方向の20~24%とされているのが特に望ましい。また、第一凸条部50及び第二凸条部60の前板部11の幅方向に沿う方向の長さ及び前板部の上下方向に沿う方向の長さは、必ずしも限定されないが、既述の中判、小判、小小判のペーパータオルのサイズのシートを使用する場合は、第一凸条部50の取出口上縁16Tに沿う方向の長さL7は、130~160mm、第二凸条部60の取出口下縁16Dに沿う方向の長さL8は、40~80mmとするのが望ましい。第二凸条部の間の距離は、80~120mm、特に90~110mmとするのが望ましい。
【0044】
また、第一凸条部50と第二凸条部60との位置に関して、特に、
図5に示すように、第一凸条部50の幅方向中央の取出口下縁側端と、各第二凸条部60の幅方向中央の取出口上縁側端とを結ぶ仮想線間の角度∠Bが155~165度であり、かつ、第一凸条部50の幅方向中央の取出口下縁側端と、各第二凸条部60の幅方向中央の取出口上縁側端とを結ぶ仮想線と前板部11の幅方向に沿う仮想線との間の角度∠Cが7.5~12.5度となるように配されているのが望ましい。シートの束1の引き出しがわ面1Aと適度に分散して支持するようになり、シートの引き出し性がより好ましくなり、束1の折れ等の問題もより発生しがたくなる。
【0045】
また、このディスペンサーX1は、ケース本体10の前板部11の外面側に、取出口16の細長部分16Aの下縁16Dに沿って第三凸条部70が設けられているのが望ましい。このディスペンサーX1では、既述のとおり、取出口16が手前側斜め下方に向いているため、そこから露出されたシートの一部が、下方に垂れ下がる態様となる。したがって、第三凸条部70を設けることで、取出口16から露出するシートの一部が第三凸条部70の上の載り、シートの端部がより手前側に位置することになり、特に引き出し性が向上する。
【0046】
さらに、第三凸条部70は、第二凸条部60に対して、第二凸条部60の上縁から取出口16の下縁16Rを介して連接するように設けられているのが望ましい。ケース本体10に収納された束1の引き出し側面1Aに位置するシートが第二凸条部60から取出口16の細長部分16Aの下縁16Dを介して第三凸条部70に沿って連続的に擦れながら引き出されるようになり、よりスムーズにシートを引き出せるようになる。
【0047】
ここで、前板部11の好適な傾斜具合は、台座部20を介してディスペンサーX1を水平面上に載置したときに、前記前板部11の傾斜角∠Aが水平面に対して30度以上45度以下とするのが望ましく、35度以上42度以下とするのが特に望ましい。この傾斜角は、従来のこの種の卓上型シートディスペンサーよりも前板部11がより前傾となっているとともに、限定された範囲となっている。本実施形態のディスペンサーは、特に、このような前板部11の傾きとすると、特に、束を背面側から押える押え材がなくとも束1がケース本体10内で折れる事情が発現しがたくなるとともに、第一凸条部50及び第二凸条部60に載るように束1が位置されて、上下方向の湾曲が好適になされ、束の枚数が少ない場合にも複数枚が一度により排出され難く、さらに、第一凸条部50及び第二凸条部60に対する適度な束荷重によって、よりスムーズな引き出し性が得られるようになる。なお、本発明における「傾斜」、「角度」は、
図3に示すように、台座部20を介して水平面上にディスペンサーX1を載置したときを基準とする。
【0048】
なお、ケース本体10の素材については、特に限定されないが、アクリル樹脂、ユリア樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂素材、ステンレス材やアルミ材等の金属素材、段ボール紙やコートボール紙等の紙素材、木材等適宜の素材を選択することができる。特に好ましくは、耐水性、成型性に優れる合成樹脂素材である。前板部11、底板部12、側板部14、天板部15を透明なABS樹脂やAS樹脂により適宜の部材毎に成型したものとし、ケース本体10の一部又は全部を透明として内部を視認可能とすると、ケース本体内における束1の状況が理解でき、束1の適切な補充時期を確認することができる。
【0049】
他方で、本形態のディスペンサーX1を構成する台座部20は、ケース本体10を特に前板部11の傾斜を維持した状態で所定高さに支持するとともに作業台等の任意の面に載置可能にするためのものである。その形状は、特に限定はされない。但し、本ディスペンサーX1では、露出するシートの一部を取出口16の下方から掴む操作態様となるため、上記取出口16の高さ位置L9が台座部20に設置した状態で90~120mmの高さとなるようにケース本体10を支持する形状とするのが望ましい。90~120mmの高さがあれば、取出口16の下方に手を挿入するだけの十分な空間が確保できる。
【0050】
図示の形態の台座部20は、平行に配置した二枚一対の台座側板部21,21と、台座側板間を繋ぐ補強板部22と、各台座側板から対面する他の台座部に向かって延在するリブ板部を有している。ケース本体10は、その側板部、図示の形態では特に下部側板部14Aが各台座側板部21,21に対して固定され、さらに、前板部11が、補強板部22及びリブ板部23に当接するようにして固定されて、一体化されている。この形態では、台座側板間に広い空間が形成されるため、シートが引き出しやすく望ましい。ケース本体10を台座部20に固定するには、接着剤や既知の係止構造など適宜固定手段を採ることができる。また、台座部20の素材は特に限定されないが、上記のケース本体10と同様の素材から選択することができる。
【試験例】
【0051】
第一凸条部及び第二凸条部を有する本発明に係る卓上型シートディスペンサー(実施例)と、第一凸条部及び第二凸条部を有さない従来の小判サイズ用の卓上型シートディスペンサー(従来例)におけるシートの引き出し性について試験した。また、実施例については、小判のペーパータオルと中判のペーパータオルを用いサイズの異なるシートの引き出し性についても検討した。試験結果は、下記表1に示す。
【0052】
ケース本体の形状は、直六面体形状とし、前板部の水平面に対する角度は、各実施例及び従来例で異なるようにした。試験に用いたペーパータオルは、坪量30g/m
2、紙厚165μm、プライ数1プライ、寸法170mm×幅210mmの小判製品(大王製紙株式会社製:エルヴェール ペーパータオルエコスマートシングル200枚、小判)と坪量30g/m
2、紙厚165μm、プライ数1プライ、寸法170mm×幅210mmの中判製品(大王製紙株式会社製:エルヴェール ペーパータオルエコスマートシングル200枚、中判)とした。実施例における前板部の形状は、
図5~
図7に示す形状と同様である。従来例における前板部の形状は、凸条部がない平面となっているとともに、取出口の形状が、特に拡幅部が細長部分から急激に拡幅し、全体として略T字型の拡幅部を有するものとなっている。取出口の幅等、各例における取出口の構造は、表1のとおりである。
【0053】
試験は、「シートの落ち込み」、「複数枚排出時の枚数」、「引き出し性」とした。「シートの落ち込み」は、ディスペンサーに開封した200組の束を収納し、最初から最後まで引き出す操作を行い、最後の一枚までにディスペンサー内部に向かって束が倒れ、取出口からシートの内部に落ち込む事象の回数を確認し、その落ち込んだ回数をカウントした。なお、落ち込む事象が生じた場合は、再度、取出口からペーパータオルが露出するようにセットしなおして操作を再開した。
【0054】
「複数枚排出時の枚数」は、ディスペンサーに開封した200組の束を収納し、最初から最後まで引き出す操作を行い、複数枚が同時に引き出される事象の有無を確認し、確認できた際には引き出された枚数をカウントした。
【0055】
「引き出し性」は、ディスペンサーに開封した200組の束を収納し、最初から9組を引き出した後、10~15組までの「引出抵抗」を測定し、その測定値から評価した。「引出抵抗」の測定方法は、取出口から露出するペーパータオルの幅方向中央にクリップ(KOKUYO社製:クリ33)を介してプッシュプルゲージ(株式会社イマダ社製 OPS20)を接続し、床と水平面と平行に引っ張る操作をしてペーパータオルをケース本体から完全に引き出すようにして行なった。評価は、5組(5回)の平均値が、0.30kg以上を×、0.25kg以上0.30kg未満を〇、0.25kg未満を◎と評価した。
【0056】
【0057】
表1に示されるように、従来例と各実施例とを比較すると、本発明に係る実施例は、引出抵抗が、小判サイズのペーパータオルで従来例よりも有意に低くなっている。さらに、サイズの大きい中判サイズにおいても、従来例の小判サイズより引出抵抗が低くなっている。凸条部によって、スムーズな引き出し性が得られていると評価できる。
【0058】
また、「シートの落ち込み」については、傾斜角度が45度の従来例が200組のペーパータオルを全量取り出すまでに3回ディスペンサー内部に落ち込んでいたのに対し、本発明の実施例では、傾斜角度51度の実施例5でも落ち込み回数は1回となっており、有意に減少している。特に、傾斜角度が38度以下の実施例1~実施例3では、落ち込みが生じなかった。凸条部を設けることで「シートの落ち込み」も有意に改善されているといえる。なお、「シートの落ち込み」については、従来例は、14枚を残して一回目の落ち込みが発生したのに対して、実施例では、5枚まで落ち込みが発生しなかった。さらに、各実施例においては、小判、中判においてほとんど差がない結果となっている。
以上のことから、本発明にしたがって凸条部を設けることで、引き出し性やシート束のケース本体内への落ち込み等の問題が改善される。
【符号の説明】
【0059】
X1…卓上型シートディスペンサー、1…シート束、1A…シート束の引出し側面、1B…折り返し縁が並ぶ面であって載置面に接する側の面、10…ケース本体、10A…ケース本体の内部空間、11…前板部、12…底板部、13…背板部、14A…下部側板部、14B…上部側板部、15…天板部、16…取出口、16A…取出口の細長部分、16B…拡幅部分、16U…取出口の下縁、16T…取出口の細長部分の上縁、16D…取出口の細長部分の下縁、20…台座部、21…台座側板、22…補強板部、23…リブ板部、 50…第一凸条部、60…第二凸条部、70…第三凸条部、
L1…前板部の幅、L2…前板部の高さ方向長さ、L3…取出口の幅方向長さ、L4…取出口の幅、L5…第一凸条部の突出長、L6…第二凸条部の突出長、L7…第一凸条部の幅方向長さ、L8…第二凸条部の幅方向長さ、L9…取出口の高さ位置、∠A…前板部の傾斜角、∠B…各第二凸条部60の幅方向中央の取出口上縁側端とを結ぶ仮想線間の角度、∠C…各第二凸条部60の幅方向中央の取出口上縁側端とを結ぶ仮想線間の角度。