(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013100
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】モータユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 9/00 20060101AFI20240124BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H02K9/00 Z
H02K9/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115043
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 友和
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB01
5H609BB18
5H609PP02
5H609PP05
5H609PP06
5H609PP07
5H609QQ02
5H609QQ08
5H609RR51
5H609RR69
(57)【要約】
【課題】モータの冷却性能を向上する技術の提供。
【解決手段】モータユニットは、モータと、前記モータに気体を送風するファンと、前記モータに送風される気体を冷却する磁気冷却手段と、を備え、前記磁気冷却手段は、永久磁石と、前記永久磁石による磁場が印加される第一の位置と、前記第一の位置から離間し磁気熱量効果により温度が低下する第二の位置と、の間を移動する磁性体と、を備え、前記第二の位置は、前記モータと前記ファンとの間に設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータに気体を送風するファンと、
前記モータに送風される気体を冷却する磁気冷却手段と、を備え、
前記磁気冷却手段は、
永久磁石と、
前記永久磁石による磁場が印加される第一の位置と、前記第一の位置から離間し磁気熱量効果により温度が低下する第二の位置と、の間を移動する磁性体と、を備え、
前記第二の位置は、前記モータと前記ファンとの間に設定されている、
ことを特徴とするモータユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のモータユニットであって、
前記ファンは、前記モータのロータ軸の軸方向に送風し、
前記第二の位置は、前記第一の位置よりも前記ロータ軸の径方向で前記ロータ軸の側に位置している、
ことを特徴とするモータユニット。
【請求項3】
請求項1に記載のモータユニットであって、
前記磁性体は、前記モータの駆動力によって前記第一の位置と前記第二の位置との間とを移動する、
ことを特徴とするモータユニット。
【請求項4】
請求項2に記載のモータユニットであって、
前記磁気冷却手段は、
前記モータの前記ロータ軸の回転運動を、前記磁性体の前記径方向の往復直線運動に変換する変換手段を備える、
ことを特徴とするモータユニット。
【請求項5】
請求項4に記載のモータユニットであって、
前記磁気冷却手段は、
前記永久磁石と前記磁性体との組を複数組備え、
前記複数組は、前記軸方向に対する周方向に配置されている、
ことを特徴とするモータユニット。
【請求項6】
請求項1に記載のモータユニットであって、
前記モータユニットの内部空間を、前記第一の位置の側の空間と、前記第二の位置の側の空間とに仕切る仕切り壁を備える、
ことを特徴とするモータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータを備えたモータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
モータを冷却する技術として、ファンの送風によってモータを冷却する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ファンによるモータの冷却には改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、モータの冷却性能を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
モータと、
前記モータに気体を送風するファンと、
前記モータに送風される気体を冷却する磁気冷却手段と、を備え、
前記磁気冷却手段は、
永久磁石と、
前記永久磁石による磁場が印加される第一の位置と、前記第一の位置から離間し磁気熱量効果により温度が低下する第二の位置と、の間を移動する磁性体と、を備え、
前記第二の位置は、前記モータと前記ファンとの間に設定されている、
ことを特徴とするモータユニットが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モータの冷却性能を向上する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るモータユニットの断面図。
【
図2】(A)乃至(D)は磁気冷却ユニットの動作説明図。
【
図3】別の実施形態に係るモータユニットの断面図。
【
図4】更に別の実施形態に係るモータユニットの断面図。
【
図5】
図4の実施形態における磁気冷却ユニットの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
図1は本発明の一実施形態に係るモータユニット1の断面図である。モータユニット1は、電動モータMを備える。モータMは、ロータ2と、ロータ2を囲むステータ3とを備えたブラシレスモータである。ロータ2は円柱形状の永久磁石21と、永久磁石21の中心を通るロータ軸22とを備える。ステータ3は、ステータコア31とステータコア31に巻き回されたコイル32とを含む。コイル32に電力を供給することでロータ2が回転する。矢印Xはロータ軸22の軸方向を示し、矢印Rはロータ軸22に対する径方向(X方向と直交する任意の方向)を示す。
【0011】
モータユニット1は、モータMに気体を送風するファン4とファン4によってモータMに送風される気体を冷却する磁気冷却ユニット5とを備える。ファン4は本実施形態の場合、ロータ軸22に固定されており、X方向に気体を送風する。本実施形態の場合、気体は空気である。
【0012】
モータユニット1は、中空のハウジング6を備え、モータM、ファン4及び磁気冷却ユニット5はハウジング6に収容されている。ハウジング6は、ロータ軸22と同軸の円筒形状を有する周壁6aと、周壁6aのX方向の両端部を塞ぐ端板6b、6cとを有する。端板6b、6cにはそれぞれロータ軸22を支持する軸受け64が設けられている。端板6bには、外気をハウジング6内に導入する通気口61が形成されている。端板6cには、ハウジング6内の空気を外部に排出する通気口62が設けられている。周壁6aにもハウジング6内の空気を外部に排出する通気口63が設けられている。
【0013】
モータMを駆動すると、ロータ軸22と共にファン4が回転する。ファン4の回転による送風で、ハウジング6内にはファン4からモータMへ向かう気流が生じ、通気口61を介して外気が矢印D1で示すようにハウジング6内に導入され、矢印D2で示すようにハウジング6内から通気口62を介して空気がハウジング6外へ排出される。この空気の気流によってモータMが冷却される。
【0014】
磁気冷却ユニット5はファン4からモータMへ向かう空気を磁気熱量効果を利用して冷却する。これによりモータMの冷却性能を向上することができる。磁気冷却ユニット5は、一対の永久磁石51と、磁性体52と、磁性体52を移動する移動機構53とを含む。一対の永久磁石51は、ハウジング6内においてロータ軸22からR方向に離間した位置において、互いにX方向に離間して配置されている。一対の永久磁石51は、その間の空間にX方向の磁場を発生させる。
【0015】
磁性体52は、例えば、ガドリニウム合金等であり、本実施形態の場合、一例として円柱形状を有している。磁性体52は、移動機構53によって位置P1と、位置P2との間を移動する。位置P1では、一対の永久磁石51の間に磁性体52が位置し、一対の永久磁石51による磁場が印加される。位置P2は位置P1から離間し、磁性体52が一対の永久磁石51の間から脱した位置である。位置P1と位置P2とはR方向に離間しており、ロータ軸22から見て位置P1は位置P2よりも外側である。磁気熱量効果によって、磁性体52は位置P2において温度が低下する。すなわち、磁性体52は位置P1において相対的に高温となり、位置P2において相対的に低温となる。
【0016】
位置P2は、モータMとファン4との間に設定されている。ファン4からモータMへ向かう気流が位置P2に位置する磁性体52により冷却され、モータMへより低温の空気を送風できる。モータMはその駆動により発熱して常温よりも高くなる一方、位置P1に比較的して位置P2はR方向でロータ軸22の側に位置していることから、モータMに向かう気流が位置P2において磁性体52により、より効率よく冷却される。周壁6aには位置P1に隣接して通気口63が形成されているため、位置P1付近の熱により加温されたハウジング6内の空気は通気口63を介して外部に排出されやすくなる。こうした位置P1における磁性体52の放熱機構によって、位置P2における磁性体52の温度をより低温にすることができ、ファン4の気流をより冷却することができる。
【0017】
移動機構53は、本実施形態の場合、モータMの駆動力によって磁性体52を位置P1と位置P2との間で往復させる。移動機構53が固有の駆動源を有していてもよいが、モータMの駆動力を利用することでモータユニット1のコンパクト化、低コスト化を図れる。本実施形態の移動機構53は、ロータ軸22の回転運動を磁性体52のR方向の往復直線運動に変換する変換機構である。
【0018】
具体的には、移動機構53は、ロータ軸22に一体に形成されたクランク部54、コネクティングロッド55、移動部材56、及び、シリンダ58を含む。移動部材56は磁性体52を支持する。移動部材56と磁性体52とはピストンを構成してシリンダ58の案内によってR方向に往復する。シリンダ58は円筒形状を有しており、不図示の支持部材を介してハウジング6に支持されている。シリンダ58は、例えば、アルミニウムや鉄等からなる。シリンダ58は、磁性体52から熱を奪う観点で、熱伝導率が高い材料であってもよい。コネクティングロッド55の一端部には、クランク部54が挿通する孔が形成されている。コネクティングロッド55の他端部には、移動部材56のピストンピン57が挿通する孔が形成されている。したがってコネクティングロッド55はクランク部54に対して回転自在であり、また、移動部材56に対して回転自在である。
【0019】
図2(A)~
図2(D)は磁気冷却ユニット5の動作説明図であり、
図1のA方向に磁気冷却ユニット5を見た図である。シリンダ58は断面形状で図示されている。
図2(A)~
図2(D)はロータ軸22の回転によりクランク部54が回転し、移動部材56がR方向に往復する様子を表している。
図2(A)は磁性体52が位置P2に位置している状態を示す。磁性体52は部分的にシリンダ58から脱している。
図2(B)は
図2(A)の状態からロータ軸22が90度回転した状態を示している。磁性体52が一対の永久磁石51の側へ移動している。
図2(C)は
図2(B)の状態からロータ軸22が90度回転した状態を示している。磁性体52が一対の永久磁石51の間に移動しており、位置P1に到達している。
図2(D)は
図2(C)の状態からロータ軸22が90度回転した状態を示している。磁性体52が位置P1から位置P2へ向かう方向に移動している。
図2(D)の状態からロータ軸22が90度回転すると、
図2(A)の状態に戻る。このように本実施形態ではロータ軸22が一回転すると、磁性体52が位置P1と位置P2との間を一往復する。
【0020】
このように本実施形態では、磁性体52がモータMの回転に伴って、繰り返し位置P2に移動するので、ファン4からモータMへ向かう気流をモータMの駆動中、継続的に冷却することができる。
【0021】
<第二実施形態>
構造的に、位置P1において相対的に高温となった磁性体52に触れた空気がモータMに流れにくくしてもよい。
図3はその一例を示す。
図3のモータユニット1では、ハウジング6の内部に仕切り壁7が設けられている。仕切り壁7はロータ軸22と同軸の円筒体であり、モータM側で大径、ファン4側で小径である。
【0022】
仕切り壁7によって、ハウジング6のモータM付近の内部空間は、仕切り壁7の外側の空間71と、内側の空間72とに仕切られる。線Lは仕切り壁7のファン4側の端部のR方向の位置を示しており、位置P1と位置P2との間に位置している。したがって、空間71は位置P1の側の空間であり、空間72は位置P2の側の空間である。
【0023】
ファン4からモータMへ流れる空気流のうち、位置P2の磁性体52と接触して冷却された空気は空間72に流れやすくなりモータMの冷却が促進される。一方、ファン4からモータMへ流れる空気流のうち、位置P1の磁性体52と接触して冷却されない空気は空間71に流れやすくなりモータMと接触せずにハウジング6の外部へ排出され易くなる。したがって、モータMの冷却効率を向上できる。
【0024】
<第三実施形態>
一対の永久磁石51、磁性体52及び移動機構53を複数組設けてもよい。
図4及び
図5はその一例を示す。
図4は本実施形態のモータユニット1の断面図を示し、
図5は
図4のB方向に磁気冷却ユニット5を見た図であり、シリンダ58は断面形状で図示されている。矢印Cはロータ軸22に対する周方向を示す。本実施形態の磁気冷却ユニット5は、一対の永久磁石51、磁性体52及び移動機構53を四組備えており、各組はC方向に90度ずつ離間している。
【0025】
四本のコネクティングロッド55は、共通のクランク部54に取り付けられている。各組の磁性体52の往復運動の位相は90度ずつずれている。
図5の例では、時計の文字盤で12時の位置の組の磁性体52は位置P2にあり、6時の位置の組の磁性体52は位置P1にある。また、3時の位置の組、及び、9時の位置の組の各磁性体52は位置P1と位置P2との中間の位置にある。第一実施形態の場合と同様に、各磁性体52はロータ軸22の一回転すると、位置P1と位置P2との間を一往復する。
【0026】
このように本実施形態では、4つの磁性体52がモータMの回転に伴って、順次位置P2に移動するので、ファン4からモータMへ向かう気流をモータMの駆動中、連続的に冷却することができる。
【0027】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は少なくとも以下のモータユニットを開示している。
【0028】
1.上記実施形態のモータユニット(1)は、
モータ(M)と、
前記モータに気体を送風するファン(4)と、
前記モータに送風される気体を冷却する磁気冷却手段(5)と、を備え、
前記磁気冷却手段(5)は、
永久磁石(51)と、
前記永久磁石による磁場が印加される第一の位置(P1)と、前記第一の位置から離間し磁気熱量効果により温度が低下する第二の位置(P2)と、の間を移動する磁性体(52)と、を備え、
前記第二の位置(P2)は、前記モータ(M)と前記ファン(4)との間に設定されている。
この実施形態によれば、モータの冷却性能を向上する技術を提供することができる。
【0029】
2.上記実施形態では、
前記ファン(4)は、前記モータ(M)のロータ軸(22)の軸方向に送風し、
前記第二の位置(P2)は、前記第一の位置(P1)よりも前記ロータ軸(22)の径方向で前記ロータ軸(22)の側に位置している。
この実施形態によれば、前記モータへの気流を効率よく冷却することができる。
【0030】
3.上記実施形態では、
前記磁性体(52)は、前記モータ(M)の駆動力によって前記第一の位置(P1)と前記第二の位置(P2)との間とを移動する。
この実施形態によれば、前記モータユニットの小型化、低コスト化を図れる。
【0031】
4.上記実施形態では、
前記磁気冷却手段(5)は、
前記モータ(M)の前記ロータ軸(22)の回転運動を、前記磁性体(52)の前記径方向の往復直線運動に変換する変換手段(53)を備え。
この実施形態によれば、前記モータ(M)の駆動力で前記磁性体(52)を繰り返し移動させることができる。
【0032】
5.上記実施形態では、
前記磁気冷却手段(5)は、
前記永久磁石(51)と前記磁性体(52)との組を複数組備え、
前記複数組は、前記軸方向に対する周方向に配置されている。
この実施形態によれば、前記モータの冷却性能を向上できる。
【0033】
6.上記実施形態のモータユニット(1)は、
前記モータユニット(1)の内部空間を、前記第一の位置(P1)の側の空間(71)と、前記第二の位置(P2)の側の空間(72)とに仕切る仕切り壁(7)を備える。
この実施形態によれば、前記モータの冷却効率を向上できる。
【0034】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 モータユニット、M モータ、4 ファン、5 磁気冷却ユニット