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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013101
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】冷凍焼売
(51)【国際特許分類】
   A23L 35/00 20160101AFI20240124BHJP
   A23L 3/365 20060101ALI20240124BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L3/365 A
A23L3/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115045
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100158724
【弁理士】
【氏名又は名称】竹井 増美
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐希
【テーマコード(参考)】
4B022
4B036
【Fターム(参考)】
4B022LA01
4B022LB02
4B022LQ07
4B036LC01
4B036LF11
4B036LP01
4B036LP17
(57)【要約】
【課題】冷凍焼売の表面に水を噴霧する、または冷凍焼売を食品用ラップフィルムで覆うといった処置または操作を行うことなく、冷凍庫から取り出した冷凍焼売を、マイクロ波調理器によりそのまま加熱した際にも、中具と接していない部分の皮の硬化が抑制され、喫食時における食感の低下が改善された冷凍焼売を提供する。
【解決手段】マイクロ波調理器にて、芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率が35重量%~80重量%である冷凍焼売とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波調理器にて、芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の、焼売の中具と接していない部分の皮の含水率が35重量%~80重量%である、冷凍焼売。
【請求項2】
マイクロ波調理器にて加熱する前の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率が37重量%~70重量%であり、前記含水率に対する、マイクロ波調理器にて、芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率の比([芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率]/[加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率]×100)が82%~105%である、請求項1に記載の冷凍焼売。
【請求項3】
冷凍焼売の表面に水を噴霧することなく、または冷凍焼売を食品用ラップフィルムで覆うことなく、マイクロ波調理器にてそのまま加熱するのに適する、請求項1または2に記載の冷凍焼売。
【請求項4】
冷凍焼売をマイクロ波調理器にて芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の、焼売の中具と接していない部分の皮の含水率を35重量%~80重量%とすることを含む、マイクロ波調理器にてそのまま加熱した際の冷凍焼売の食感の低下の改善方法。
【請求項5】
マイクロ波調理器にて加熱する前の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率を37重量%~70重量%とし、かつ、前記含水率に対する、マイクロ波調理器にて芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率の比([芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率]/[加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率]×100)を、82%~105%とすることを含む、請求項4に記載の改善方法。
【請求項6】
マイクロ波調理器による加熱が、冷凍焼売の表面に水を噴霧することなく、または冷凍焼売を食品用ラップフィルムで覆うことなく行われる、請求項4または5に記載の改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波調理器での加熱に適する冷凍焼売に関する。
【背景技術】
【0002】
焼売は、餃子や包子(パオズ)等と並ぶ代表的な点心の一つであり、家庭においても広く普及している。中具を皮で包み、成形し、一度加熱した後に冷凍して製造される冷凍焼売は、食品製造技術および食品冷凍技術の進歩に伴い、長期間の保存が可能で、喫食時に手軽に加熱して食することができる食品として、消費者の幅広い支持を得ている。単身者や共働き世帯の増加等により、調理においても簡便さおよび迅速さが求められる昨今では、冷凍焼売の加熱調理に、マイクロ波調理器が用いられることも多い。
しかし、冷凍焼売をマイクロ波調理器で加熱する際、加熱ムラの発生を防ぎ、均一に加熱するには、冷凍焼売表面に水を噴霧し、または冷凍焼売を食品用ラップフィルムで覆った後に加熱することが推奨されていた。かかる処置または操作を行うことなくマイクロ波調理器で加熱した場合には、焼売の上面部や側面部において、中具と接していない部分の皮が硬くなり、喫食時の食感が低下するという問題があった。
【0003】
冷凍された点心類を加熱調理する際、加熱状態が不均一となったり、部分的に乾燥や硬化が生じたりして、喫食時の食感が低下することは、従来より問題点として多々報告されており、かかる問題を解決するための取り組みも多くなされている。
たとえば、長径が20μm~50μmの澱粉粒子が多数存在し、かつ該澱粉粒子周囲に厚みが0.5μm~2.5μmの隙間を有する穀粉加工食品とすることにより、食品組織内において水分子の高度均一分散構造の形成を可能として、特にマイクロ波加熱の際に、食品組織内の水分の不均一状態により、マイクロ波の集中が生じて引き起こされる部分的な乾燥や硬化を抑制する技術(特許文献1)や、密封包装された冷凍点心類において、該点心類を構成する皮を、穀物粉と糖類とを少なくとも含み、開封して取り出す段階における水分含有量が、33重量%以上38.5重量%以下であるものとして、フライパンで加熱調理する際に、蓋をせずに加熱調理しても食感の損なわれない点心類を提供する技術(特許文献2)が提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1では、特にマイクロ波調理器での加熱による食感の低下を改善するために、食品組織内における水分子の不均一な分散状態の解消が重要であることが開示されているものの、包皮食品を構成する皮の水分量には着目されていない。また、マイクロ波調理器での加熱による食感の低下の改善効果が実証されているのは餃子についてのみであり、不定形に皮が折りたたまれた角の部分の多い形状を有する焼売においても、耳部の皮が合わさった構造を有する餃子と同様の効果が見られるかどうかは不明である。
また、特許文献2に記載された冷凍点心類はフライパンで加熱調理されるものであるため、点心類の羽根形成剤(バッター)からの水分で皮が蒸され、マイクロ波調理器での加熱の場合に比べて皮が軟化されるため、特許文献2に開示された技術をそのままマイクロ波調理器で加熱される冷凍焼売に応用することはできない。
それゆえ、冷凍焼売表面への水の噴霧や、冷凍焼売を食品用ラップフィルムで覆うといった処置や操作を行わずに、マイクロ波調理器により加熱した際に、皮の硬化が抑制され、喫食時の食感の低下が改善された冷凍焼売が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-262364号公報
【特許文献2】国際公開第2020/036226号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、冷凍焼売表面に水を噴霧する、または冷凍焼売を食品用ラップフィルムで覆うといった処置または操作を行うことなく、マイクロ波調理器によりそのまま加熱した際にも、中具と接していない部分の皮の硬化が抑制され、喫食時における食感の低下が改善された冷凍焼売を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、マイクロ波調理器にて、冷凍焼売を芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の、焼売の中具と接していない部分の皮の含水率を35重量%~80重量%とすることにより、マイクロ波調理器にて加熱した後に、焼売の中具と接触していない部分の皮の硬化が抑制され、喫食時の食感の低下を改善することができることを見出し、さらに検討して本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]マイクロ波調理器にて、芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の、焼売の中具と接していない部分の皮の含水率が35重量%~80重量%である、冷凍焼売。
[2]マイクロ波調理器にて加熱する前の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率が37重量%~70重量%であり、前記含水率に対する、マイクロ波調理器にて、芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率の比([芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率]/[加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率]×100)が82%~105%である、[1]に記載の冷凍焼売。
[3]冷凍焼売の表面に水を噴霧することなく、または冷凍焼売を食品用ラップフィルムで覆うことなく、マイクロ波調理器にてそのまま加熱するのに適する、[1]または[2]に記載の冷凍焼売。
[4]冷凍焼売をマイクロ波調理器にて芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の、焼売の中具と接していない部分の皮の含水率を35重量%~80重量%とすることを含む、マイクロ波調理器にてそのまま加熱した際の冷凍焼売の食感の低下の改善方法。
[5]マイクロ波調理器にて加熱する前の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率を37重量%~70重量%とし、かつ、前記含水率に対する、マイクロ波調理器にて芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率の比([芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率]/[加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率]×100)を、82%~105%とすることを含む、[4]に記載の改善方法。
[6]マイクロ波調理器による加熱が、冷凍焼売の表面に水を噴霧することなく、または冷凍焼売を食品用ラップフィルムで覆うことなく行われる、[4]または[5]に記載の改善方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、マイクロ波調理器による加熱に適し、冷凍焼売の表面に水を噴霧する、冷凍焼売を食品用ラップフィルムで覆う、といった処置や操作を行わずにマイクロ波調理器で加熱した際にも、焼売の上面部や側面部において中具と接していない部分の皮の硬化が抑制され、喫食時における食感の低下が改善された冷凍焼売を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、マイクロ波調理器による加熱に適する冷凍焼売(以下、本明細書において「本発明の冷凍焼売」とも称する)を提供する。
本発明の冷凍焼売は、マイクロ波調理器にて、芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の、焼売の中具と接していない部分の皮の含水率が、35重量%~80重量%であることを特徴とする。
【0011】
本発明において、「冷凍焼売」とは、後述するように、一般的に中華料理の点心の1種として製造される焼売を、食品の分野で一般的に採用される冷凍手段により冷凍したものであれば、特に限定されない。
また、本明細書において「マイクロ波調理器にてそのまま加熱する」とは、冷凍庫から取り出した冷凍焼売に対し、その表面に水を噴霧する、食品用ラップフィルムで覆うといった処置または操作を行うことなく、マイクロ波調理器により加熱することをいう。
マイクロ波調理器による加熱の条件は、冷凍食品の加熱調理に通常採用される条件であって、焼売の芯温が50℃~90℃になるまで加熱できる条件であれば特に限定されないが、冷凍焼売3個~4個あたり、500W~1400Wにて30秒間~6分間程度とすることができる。
さらにまた、本明細書において、「焼売の中具と接していない部分の皮の含水率」とは、焼売の上面部や側面部において、中具と接していない部分の皮における含水率をいう。
【0012】
本発明の冷凍焼売においては、マイクロ波調理器にて、芯温が50℃~90℃になるまで上記したようにそのまま加熱した後、焼売の中具と接していない部分の皮の含水率が35重量%~80重量%である。
上記含水率は、38重量%以上であることが好ましく、39重量%以上であることがより好ましい。また、上記含水率は、70重量%以下であることが好ましく、65重量%以下であることがより好ましく、60重量%以下であることがさらに好ましく、55重量%以下であることがさらにより好ましい。
さらに、本発明の冷凍焼売においては、マイクロ波調理器にて加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率が37重量%~70重量%であり、かつ、前記加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率に対する、マイクロ波調理器にて芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率の比([芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率]/[加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率]×100)が、82%~105%であることが好ましく、マイクロ波調理器にて加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率が39重量%~60重量%であり、かつ、前記加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率に対する、マイクロ波調理器にて芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率の比([芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率]/[加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率]×100)が、82%~103%であることがより好ましく、マイクロ波調理器にて加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率が39重量%~57重量%であり、かつ、前記加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率に対する、マイクロ波調理器にて芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率の比([芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率]/[加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率]×100)が、82%~103%であることがさらに好ましい。
なお、焼売の中具と接していない部分の皮の含水率は、後述するように、乾燥減量法により求めることができる。
【0013】
本発明において、焼売は、一般的な組成および方法に従って具材を細切、擂潰等し、混合して調製される中具を、主として小麦粉等の穀物粉により調製される皮で包み、円柱形等の形状に成形した後、蒸して製造される。
【0014】
焼売の中具に含有される具材は特に限定されず、豚肉、鶏肉等の畜肉;エビ、カニ、イカ、白身魚、アサリ、ホタテ等の魚介類;ハクサイ、キャベツ、タマネギ、タケノコ、ネギ、ショウガ等の野菜類;シイタケ等のキノコ類等が含有され得る。
また、中具の調製に際し、食塩、砂糖、醤油、アミノ酸塩、核酸塩、酵母エキス、畜肉エキス等の調味料;澱粉および加工澱粉;卵白、ゼラチン、カゼイン等の動物性タンパク質;前記動物性タンパク質の加水分解物および部分分解物;有機酸塩(フマル酸塩等)等のpH調整剤;重合リン酸塩等のキレート剤;色素;酸味料;香料等の一般的な食品添加物を添加することもできる。
【0015】
焼売の皮は、小麦粉(薄力粉および強力粉)と水(ぬるま湯)を混合して生地を生成し、薄く伸ばして適宜カットして調製することができる。焼売の皮を調製する際、食塩等の塩類;小麦タンパク質;酒精;植物性油脂等の油脂;澱粉、加工澱粉(酢酸澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉等)、キシロース、トレハロース、還元水あめ等の糖質等を添加することができる。
【0016】
焼売の皮の調製に際して添加される水の量の他、皮に添加される食品添加物のうち、水分を保持する性質を有する添加物、たとえば油脂や、澱粉、加工澱粉、キシロース、トレハロース、還元水あめ等の糖質は、上記したマイクロ波調理器による加熱後の皮の含水率や、上記したマイクロ波調理器による加熱前の含水率に対する加熱後の含水率の比に影響し得る。それゆえ、焼売の皮を調製する際の水の添加量や、上記した水分を保持する性質を有する添加物の添加量により、マイクロ波調理器による加熱後の皮の含水率および、マイクロ波調理器による加熱前の皮の含水率に対する加熱後の皮の含水率の比が制御され得る。
また、焼売の皮に添加される塩類や小麦タンパク質は、グルテンの形成により、皮の硬化を促進するため、皮の食感(硬さ)に影響し得る。
【0017】
焼売の皮の大きさおよび厚さとしては、焼売を調製する際、中具を包むのに適する大きさおよび厚さを採用することができる。
焼売の皮は、上記したマイクロ波調理器による加熱後の皮の含水率や、上記したマイクロ波調理器による加熱前後の皮の含水率の比を満たすように調製して用いることができ、また、かかる含水率や含水率の比を満たし得る市販の皮を用いることもできる。
【0018】
焼売の形状および大きさについても、通常採用される形状(たとえば円柱状、球状、楕円球状等)および大きさ(たとえば直径および高さがそれぞれ約2cm~約5cm)を採用することができる。
また、焼売の全重量に対する皮の重量の比の影響は少ないものの、焼売の上面部や側面部における皮の形状や、中具の包み方等は、上記したマイクロ波調理器による加熱後の皮の含水率や、上記したマイクロ波調理器による加熱前後の皮の含水率の比に影響を与え得る。
【0019】
成形した焼売は、蒸し器やスチームコンベクションオーブン等を用いて蒸すことができ、その際の条件も、焼売の加熱に通常採用される条件とすることができるが、蒸し加熱の条件は、マイクロ波調理器による加熱前の皮の含水率に影響を及ぼし得る。蒸した焼売は、冷却した後、冷凍される。
冷却する手段としては、食品の製造において採用される通常の冷却手段、たとえば室温にて放冷、送風冷却、流水冷却等の冷却手段を用いることができる。
また、冷凍する手段としても、食品の製造において採用される通常の冷凍手段、たとえばフリーザー中、-18℃~-40℃程度における冷凍、急速冷凍等の冷凍手段を採用することができる。保存期間中、焼売の品質を維持するという観点からは、急速冷凍を行うことが好ましい。
急速冷凍は、エアブラスト冷凍機、液化ガス冷凍機、コンタクト冷凍機等、通常食品の分野で用いられる急速冷凍機を用いて行うことができる。
【0020】
本発明の冷凍焼売においては、冷凍焼売の表面に水を噴霧する、冷凍焼売を食品用ラップフィルムで覆うといった処置や操作を行うことなく、冷凍庫から取り出し、そのままマイクロ波調理器により加熱しても、焼売の上面部や側面部の中具と接していない部分の皮の硬化が抑制され、喫食時における食感の低下が改善される。
【0021】
なお、マイクロ波調理器による加熱後の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率や、加熱前の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率および加熱前後の前記含水率の比が、上記したように制御された本発明の冷凍焼売では、トレイに収容することなく包装材で直接包装した状態において、輸送による皮の割れが低減されることが認められる。
【0022】
また本発明は、冷凍焼売をマイクロ波調理器によりそのまま加熱した際の食感の低下を改善する方法(以下、本明細書にて「本発明の改善方法」ということがある)を提供する。
【0023】
本発明の改善方法は、マイクロ波調理器にて、冷凍焼売を芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の、焼売の中具と接していない部分の皮の含水率を、35重量%~80重量%とすることを含む。
本発明の改善方法において、「冷凍焼売」、「焼売の皮」、「そのまま加熱」および「焼売の中具と接していない部分の皮の含水率」、ならびにマイクロ波調理器による加熱の条件については、本発明の冷凍焼売において上記した通りである。
【0024】
本発明の改善方法においては、マイクロ波調理器による上記加熱後の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率は、38重量%以上とすることが好ましく、39重量%以上とすることがよりに好ましい。また、上記加熱後の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率は、70重量%以下とすることが好ましく、65重量%以下とすることがより好ましく、60重量%以下とすることがさらに好ましく、55重量%以下とすることがさらによりに好ましい。
また、本発明の改善方法においては、マイクロ波調理器にて加熱する前の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率を37重量%~70重量%とし、かつ、前記加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率に対する、マイクロ波調理器にて芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率の比([芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率]/[加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率]×100)を、82%~105%とすることが好ましく、マイクロ波調理器にて加熱する前の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率を39重量%~60重量%とし、かつ、前記加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率に対する、マイクロ波調理器にて芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率の比([芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率]/[加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率]×100)を、82%~103%とすることがより好ましく、マイクロ波調理器にて加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率を39重量%~57重量%とし、かつ、前記加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率に対する、マイクロ波調理器にて芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率の比([芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率]/[加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率]×100)を、82%~103%とすることがさらに好ましい。
なお、焼売の中具と接していない部分の皮の含水率の測定方法については、本発明の冷凍焼売において上記した通りである。
【0025】
本発明の改善方法においては、上記加熱後の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率や、上記した加熱前の中具と接していない部分の皮の含水率に対する加熱後の中具と接していない部分の皮の含水率の比は、本発明の冷凍焼売において上記した通り、皮を調製する際の水の添加量や、水分を保持する性質を有する添加物の添加量、焼売の上面部や側面部における皮の形状や、中具の包み方、蒸し加熱の条件等により、影響され得る。
また、本発明の冷凍焼売において上記した通り、本発明の改善方法において改善される焼売の皮の食感は、皮に含有される塩類や小麦タンパク質によるグルテン形成を介した硬化促進の影響を受け得る。
【0026】
本発明の改善方法により、冷凍焼売の表面に水を噴霧する、冷凍焼売を食品用ラップフィルムで覆うといった処置や操作を行うことなく、冷凍庫から取り出した冷凍焼売を、そのままマイクロ波調理器により加熱しても、焼売の上面部や側面部の中具と接していない部分の皮の硬化が抑制され、焼売の皮のこのような部分的な硬化による喫食時における焼売の食感の低下が改善され得る。
【実施例0027】
以下、本発明について、実施例によりさらに詳細に説明する。
【0028】
[実施例1~9、比較例1~4]冷凍焼売
実施例1~9および比較例1~4の冷凍焼売について、1個あたりの重量、大きさ(直径×高さ)、皮の厚さ、中具の種類および全重量に対する皮の重量の比を、表1に示した。これら実施例および比較例の各焼売は、表1に示す種類の中具をそれぞれ皮で包み、円柱状に成形し、蒸した後冷凍して製造され、-18℃で冷凍保存されたものである。
なお、焼売の全重量に対する皮の重量の比は、上記実施例および比較例の各焼売を、食品用ラップフィルムで覆い、約30分間常温で静置して半解凍し、それぞれ総重量が150g以上となる個数(3~8個)の焼売について、ピンセットにて中具から皮を剥がし、皮の重量を測定して求めた。
実施例および比較例の各冷凍焼売について、以下の通り、中具と接していない部分の皮の含水率の測定、マイクロ波調理器による加熱、マイクロ波調理器による加熱後の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率の測定、および焼売の食感(皮の硬さ)の評価を行った。
【0029】
(1)マイクロ波調理器による加熱前の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率の測定
実施例および比較例の各冷凍焼売を冷凍庫から取り出し、解凍されないよう速やかに、中具と接していない部分の皮(目安重量=焼売全体の重量の1.0重量%~4.5重量%)をハサミで切り取り、乾燥しないように迅速に重量を測定した後、乾燥機にて105℃で6時間乾燥した。乾燥後の重量を測定し、乾燥前後の重量の差から、中具と接していない部分の皮の含水率を算出した。
(2)マイクロ波調理器による加熱後の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率の測定
実施例および比較例の各冷凍焼売を冷凍庫から取り出し、3個~4個を皿に載せ、食品用ラップフィルムをかけないで、マイクロ波調理器(「NE-1901」、パナソニック株式会社)により1400Wにて、芯温が50℃~90℃(8割前後は約80℃)になるまで加熱した。なお、芯温は、各焼売についてそれぞれ2箇所測定した。加熱後、約10分間放冷し、中具と接していない部分の皮(目安重量=焼売全体の重量の1.0重量%~4.5重量%)をハサミで切り取り、乾燥しないように迅速に重量を測定した後、乾燥機にて105℃で6時間乾燥した。乾燥後の重量を測定し、乾燥前後の重量の差から、中具と接していない部分の皮の含水率を算出した。
(3)マイクロ波調理器による加熱後の焼売の食感(皮の硬さ)の評価
冷凍焼売を上記(2)と同様に加熱した後放冷し、焼売の食感(皮の硬さ)について、5名のパネリストによる官能評価を実施した。焼売を喫食した際の皮の硬さについては、下記評価基準に従って評価させ、評価結果は、5名の協議により決した。評価点が3点または2点である場合に、喫食時の焼売の皮の食感は良好であると判定した。
<評価基準>
軟らかい;3点
やや硬い;2点
硬くてバリバリとしている;1点
(4)結果
上記測定結果および評価結果を、表1に併せて示した。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示されるように、実施例1~9の冷凍焼売では、マイクロ波調理器により、芯温が50℃~90℃になるまで加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率が35.79重量%~53.33重量%であった。また、加熱前の中具と接していない部分の皮の含水率が39.27重量%~56.56重量%で、加熱前の中具と接していない部分の皮の含水率に対する加熱後の中具と接していない部分の皮の含水率の比([加熱後の中具と接していない部分の皮の含水率]/[加熱前の中具と接していない部分の皮の含水率]×100)が82.54%~102.75%であった。かかる実施例1~9の冷凍焼売については、マイクロ波調理器による加熱後の皮の硬さは、軟らかいまたはやや硬いと評価され、喫食時の焼売の皮の食感は良好であると判定された。
これに対し、比較例1の冷凍焼売では、加熱前の中具と接していない部分の皮の含水率が35.18重量%であり、加熱後の中具と接していない部分の皮の含水率は32.15重量%と、35重量%未満であった。比較例2~4の冷凍焼売では、いずれも、加熱前の中具と接していない部分の皮の含水率は37重量%以上であったが、加熱前の中具と接していない部分の皮の含水率に対する加熱後の中具と接していない部分の皮の含水率の比([加熱後の中具と接していない部分の皮の含水率]/[加熱前の中具と接していない部分の皮の含水率]×100)は、70.03%~78.01%であり、加熱後の中具と接していない部分の皮の含水率は、すべて35重量%未満であった。そして、比較例1~4の冷凍焼売の加熱後の皮の硬さについては、いずれも「硬くてバリバリとしている」と評価され、喫食時の焼売の皮の食感が低下していることが認められた。
【0032】
上記の結果から、マイクロ波調理器により芯温が50℃~90℃になるまでそのまま加熱した後の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率が35重量%以上である場合に、マイクロ波加熱による焼売の中具と接していない部分の皮の硬化が抑制され、喫食時の焼売の食感の低下が改善されることが示唆された。
また、マイクロ波加熱による焼売の中具と接していない部分の皮の硬化の抑制、および喫食時の焼売の食感の低下の改善効果の観点からは、マイクロ波調理器にて加熱する前の焼売の中具と接していない部分の皮の含水率が39重量%~57重量%であり、かつ、マイクロ波調理器により加熱する前の中具と接していない部分の皮の含水率に対する、マイクロ波調理器により加熱した後の中具と接していない部分の皮の含水率の比([加熱後の中具と接していない部分の皮の含水率]/[加熱前の中具と接していない部分の皮の含水率]×100)が、82%~103%であることがより好ましいことが示唆された。
また、表1に示された結果からは、マイクロ波調理器による加熱後の焼売の食感(皮の硬さ)に対し、冷凍焼売の大きさや皮の厚さ、焼売の全重量に対する皮の重量の比の影響は少ないことが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上、詳述したように、本発明により、マイクロ波調理器による加熱に適し、冷凍焼売の表面に水を噴霧する、冷凍焼売を食品用ラップフィルムで覆うといった処置や操作を行うことなく、冷凍庫から取り出した冷凍焼売をマイクロ波調理器にてそのまま加熱した際にも、焼売の上面部や側面部において中具と接していない部分の皮の硬化が抑制され、喫食時における食感の低下が改善された冷凍焼売を提供することができる。