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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131024
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】光位相変調器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/025 20060101AFI20240920BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G02F1/025
G02B6/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041034
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武 直矢
(72)【発明者】
【氏名】山下 達弥
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓
(72)【発明者】
【氏名】小田 敏宏
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H147AB02
2H147AB11
2H147AC01
2H147AC04
2H147BA05
2H147DA15
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147GA00
2K102AA17
2K102BA02
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA10
2K102DA05
2K102DC08
2K102DD03
2K102EA08
2K102EB23
(57)【要約】
【課題】、リブ部の温度と温度センス素子で検出される温度との差を小さくしつつ、設計が複雑になることを抑制する。
【解決手段】半導体層を有する半導体基板と、半導体層に、一方向を延設方向として延設され、光が伝搬されると共にPN接合を有する構成とされたリブ部22を有する変調部Mと、リブ部22の温度に基づいた検出信号を出力する温度センス素子40と、半導体層を覆い、半導体層よりも伝熱性が低い材料で構成された層間絶縁膜と、を備える。温度センス素子は、半導体層に不純物がドープされた不純物層41、42で構成されるPNダイオードとされ、変調部Mと温度センス素子40との間は、アンドープ層である半導体層で構成される絶縁部35が配置されるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光位相変調器であって、
半導体層(13)を有する半導体基板(10)と、
前記半導体層に、一方向を延設方向として延設され、光が伝搬されると共にPN接合を有する構成とされたリブ部(22)を有する変調部(M)と、
前記リブ部の温度に基づいた検出信号を出力する温度センス素子(40)と、
前記半導体層を覆い、前記半導体層よりも伝熱性が低い材料で構成された層間絶縁膜(50)と、を備え、
前記温度センス素子は、前記半導体層に不純物がドープされた不純物層(41、42)で構成されるPNダイオードとされ、
前記変調部と前記温度センス素子との間は、アンドープ層である前記半導体層で構成される絶縁部(35)が配置されている光位相変調器。
【請求項2】
前記変調部は、複数備えられている請求項1に記載の光位相変調器。
【請求項3】
前記温度センス素子は、隣合う前記変調部の間に配置されている請求項2に記載の光位相変調器。
【請求項4】
隣合う前記変調部は、対向する部分にそれぞれ窪み部(36、37)が形成されており、
前記温度センス素子は、隣合う前記変調部に形成されたそれぞれの前記窪み部を跨るように配置されている請求項3に記載の光位相変調器。
【請求項5】
前記温度センス素子は、隣合う前記変調部の間と異なる位置に配置されている請求項2に記載の光位相変調器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PN接合を有する光位相変調器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、PN接合を有するリブ部(すなわち、光導波路部)に電圧を印加して位相を変調させる光位相変調器が提案されている。そして、このような光位相変調器では、温度によっても位相が変化することが報告されている。このため、例えば、特許文献1には、光導波路部と、光導波路部を加熱する加熱部と、加熱部を挟んで光導波路部と反対側に配置されるサーミスタとを備え、サーミスタの温度を検出することで光導波路部の温度を導出する光位相変調器が提案されている。なお、サーミスタは、温度センス素子となるものである。また、光導波路部と加熱部との間の距離と、加熱部とサーミスタとの間の距離とは、等しくされている。
【0003】
このような光位相変調器は、支持基板、埋込絶縁膜、半導体層が順に積層されたSOI(Silicon on Insulatorの略)基板を用いて構成され、半導体層が適宜パターニングされることで光導波路部が構成される。そして、この光位相変調器は、光導波路部を覆うように酸化膜で構成される層間絶縁膜が配置され、層間絶縁膜上に加熱部およびサーミスタが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-197627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の光位相変調器では、層間絶縁膜の伝熱性が低く、光導波路部の温度とサーミスタで検出される温度との間で差が発生し易い。このため、光導波路部と加熱部との間の熱抵抗と、加熱部とサーミスタとの間の熱抵抗とが等しくなるように、光導波路部と加熱部との間の距離と、加熱部とサーミスタとの間の距離を調整することが考えられる。しかしながら、この構成では、実際には、光導波路部と加熱部との間に位置する部分の材料と、加熱部とサーミスタとの間に配置される部分の材料とが異なるため、熱抵抗を等しくするための設計が複雑になり易い。そして、本発明者らは、リブ部を有する光導波路部について、リブ部と温度センス素子で検出される温度との差を小さくできる光位相変調器について検討している。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、リブ部の温度と温度センス素子で検出される温度との差を小さくしつつ、設計が複雑になることを抑制できる光位相変調器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1は、光位相変調器であって、半導体層(13)を有する半導体基板(10)と、半導体層に、一方向を延設方向として延設され、光が伝搬されると共にPN接合を有する構成とされたリブ部(22)を有する変調部(M)と、リブ部の温度に基づいた検出信号を出力する温度センス素子(40)と、半導体層を覆い、半導体層よりも伝熱性が低い材料で構成された層間絶縁膜(50)と、を備え、温度センス素子は、半導体層に不純物がドープされた不純物層(41、42)で構成されるPNダイオードとされ、変調部と温度センス素子との間は、アンドープ層である半導体層で構成される絶縁部(35)が配置されるようにする。
【0008】
これによれば、リブ部と温度センス素子との間に半導体層で構成される絶縁部が配置されている。そして、絶縁部は、層間絶縁膜よりも伝熱性が高くされている。このため、層間絶縁膜上にサーミスタ等を配置してリブ部の温度を検出する場合と比較して、リブ部の温度と温度センス素子で検出される温度との差を小さくできる。そして、温度センス素子は、半導体層に形成されて直接的にリブ部の温度を検出できるため、異なる2つの経路の熱抵抗等を特に考慮する必要もなく、設計が複雑になることを抑制できる。さらに、加熱部を別に備える必要もないため、部品点数が増加することも抑制できる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態における光位相変調器の平面模式図である。
図2図1中のII-II線に沿った断面図である。
図3】温度センス素子の温度特性を示す図である。
図4】第1実施形態における光位相変調器の温度に関するシミュレーション結果である。
図5】第2リブ部の温度上昇と位相シフト量との関係を示す図である。
図6】第2実施形態における光位相変調器の平面模式図である。
図7図6中のVII-VII線に沿った断面図である。
図8図6中のVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9】第3実施形態における光位相変調器の平面模式図である。
図10図9中のX-X線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図1および図2を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の光位相変調器は、光ファイバ用の通信デバイス等に利用されると好適である。
【0013】
本実施形態の光位相変調器は、支持基板11、絶縁膜12、半導体層13が積層されたSOI基板で構成される半導体基板10を用いて構成されている。本実施形態では、支持基板11がシリコン等で構成され、絶縁膜12が酸化膜等で構成され、半導体層13がシリコン等で構成されている。以下、半導体基板10の面方向に対する法線方向に沿った方向を厚さ方向ともいい、厚さ方向と交差する方向(すなわち、直交する方向)であって、後述する光導波路部20の延設方向と交差する方向を幅方向ともいう。また、厚さ方向に沿った長さを厚さともいい、幅方向に沿った長さを幅ともいう。なお、半導体基板10の面方向に対する法線方向とは、言い換えると、支持基板11、絶縁膜12、半導体層13の積層方向に沿った方向である。また、図1では、後述する層間絶縁膜50を省略して示しており、紙面上下方向が幅方向となる。
【0014】
半導体層13には、光導波路部20、光導波路部20の周囲に配置されるスラブ導波路部30、温度センス素子40が形成されている。
【0015】
具体的には、光導波路部20は、光が主に伝搬される部分であり、半導体基板10の面方向における一方向を延設方向(以下では、単に延設方向ともいう)として延設されている。本実施形態では、光導波路部20は、第1~第3リブ部21~23を有する構成とされると共に、第1~第3リブ部21~23が延設方向に順に配置された構成とされ、第1リブ部21、第2リブ部22、第3リブ部23の順に光が伝搬されるようになっている。
【0016】
第1リブ部21および第3リブ部23は、半導体層13に不純物がドープされていないアンドープ層とされている。第2リブ部22は、半導体層13に不純物がドープされたN型リブ部221およびP型リブ部222を有し、N型リブ部221とP型リブ部222との間にPN接合を有する構成とされている。なお、第1~第3リブ部21~23は、同じ厚さとされている。
【0017】
スラブ導波路部30は、第1スラブ部31、第2スラブ部32、第1コンタクト部33、および第2コンタクト部34を有している。なお、第1スラブ部31、第2スラブ部32、第1コンタクト部33、および第2コンタクト部34は、半導体層13に不純物がドープされて構成されている。また、スラブ導波路部30は、半導体層13に不純物がドープされていないアンドープ層の絶縁部35を有している。
【0018】
第1スラブ部31は、N型とされており、N型リブ部221と接続されるように、N型リブ部221を挟んでP型リブ部222と反対側に配置されている。また、第1スラブ部31は、N型リブ部221と同じ不純物濃度とされている。第2スラブ部32は、P型とされており、P型リブ部222と接続されるように、P型リブ部222を挟んでN型リブ部221と反対側に配置されている。また、第2スラブ部32は、P型リブ部222と同じ不純物濃度とされている。なお、第1スラブ部31および第2スラブ部32は、第2リブ部22よりも厚さが薄くされ、第2リブ部22と延設方向の長さが同じとされている。
【0019】
第1コンタクト部33は、不純物濃度が第1スラブ部31よりも高くされたN型とされ、第1スラブ部31を挟んでN型リブ部221と反対側に配置されて第1スラブ部31と接続されている。第2コンタクト部34は、不純物濃度が第2スラブ部32よりも高くされたP型とされ、第2スラブ部32を挟んでP型リブ部222と反対側に配置されて第2スラブ部32と接続されている。なお、第1コンタクト部33および第2コンタクト部34は、第1スラブ部31および第2スラブ部32と延設方向の長さおよび厚さが同じとされている。
【0020】
そして、第2リブ部22は、後述するように、第1スラブ部31、第2スラブ部32、第1コンタクト部33、第2コンタクト部34を介して所定の電圧が印加されることで光の屈折率を変化させる。以下、第2リブ部22、第1スラブ部31、第2スラブ部32、第1コンタクト部33、第2コンタクト部34をまとめて変調部Mともいう。つまり、本実施形態では、変調部Mに第1リブ部21および第3リブ部23が備えられているともいえる。
【0021】
絶縁部35は、いわゆるI(intrinsicの略)層であり、第1リブ部21における第2リブ部22側の周囲に配置されていると共に、第3リブ部23における第2リブ部22側の周囲に配置されている。また、絶縁部35は、後述する温度センス素子40の周囲に配置されている。本実施形態では、第1リブ部21における第2リブ部22側の周囲に配置されている絶縁部35は、第1リブ部21から第2リブ部22へ光が伝搬する際の損失を低減できるように、第1リブ部21側から第2リブ部22側に向かって幅が広くなるテーパ状とされている。同様に、第3リブ部23における第2リブ部22側の周囲に配置されている絶縁部35は、第2リブ部22から第3リブ部23へ光が伝搬する際の損失を低減できるように、第2リブ部22側から第3リブ部23側に向かって幅が狭くなるテーパ状とされている。なお、絶縁部35は、第1スラブ部31および第2スラブ部32等と厚さが同じとされている。
【0022】
温度センス素子40は、N型層41とP型層42とが直列に接続されたPNダイオードで構成され、変調部Mの近傍に配置されて第2リブ部22(すなわち、変調部M)の温度に基づいた検出信号を出力する。また、温度センス素子40は、N型層41と接続され、不純物濃度がN型層41よりも高いN型とされた第3コンタクト部43と、P型層42と接続され、不純物濃度がP型層42よりも高いP型とされた第4コンタクト部44と、を備えている。
【0023】
なお、N型層41、P型層42、第3コンタクト部43、および第4コンタクト部44は、半導体層13に所定の不純物がイオン注入されることで構成される。そして、温度センス素子40は、変調部Mと同じ半導体層13を用いて構成され、不純物がドープされていない絶縁部35を挟んで変調部Mと反対側に形成されている。また、N型層41、P型層42、第3コンタクト部43、および第4コンタクト部44は、第1スラブ部31、第2スラブ部32、第1コンタクト部33、第2コンタクト部34と同じ厚さとされている。本実施形態では、N型層41およびP型層42が不純物層に相当している。
【0024】
半導体層13上には、半導体層13を覆うように、半導体層13(すなわち、シリコン)よりも伝熱性の低い酸化膜で構成される層間絶縁膜50が配置されている。層間絶縁膜50には、第1コンタクト部33を露出させる第1コンタクトホール51が形成されていると共に、第2コンタクト部34を露出させる第2コンタクトホール52が形成されている。層間絶縁膜50には、第3コンタクト部43を露出させる第3コンタクトホール53が形成されていると共に、第4コンタクト部44を露出させる第4コンタクトホール54が形成されている。
【0025】
なお、本実施形態の第1コンタクトホール51は、第1コンタクト部33の延設方向に沿って形成されている。同様に、第2コンタクトホール52は、第2コンタクト部34の延設方向に沿って形成されている。なお、第1コンタクトホール51は、第1コンタクト部33の延設方向に沿って点在するようにドット状に形成されていてもよいし、矩形状に1つのみ形成されていてもよい。同様に、第2コンタクトホール52は、第2コンタクト部34の延設方向に沿って点在するようにドット状に形成されていてもよいし、矩形状に1つのみ形成されていてもよい。
【0026】
第1コンタクトホール51には、第1コンタクト部33と電気的に接続される第1電極61が配置されている。第2コンタクトホール52には、第2コンタクト部34と電気的に接続される第2電極62が配置されている。第3コンタクトホール53には、第3コンタクト部43と電気的に接続される第3電極63が配置されている。第4コンタクトホール54には、第4コンタクト部44と電気的に接続される第4電極64が配置されている。
【0027】
層間絶縁膜50上には、第1パッド部71、および第1パッド部71と第1電極61とを接続する第1配線部81が形成されている。層間絶縁膜50上には、第2パッド部72、および第2パッド部72と第2電極62とを接続する第2配線部82が形成されている。層間絶縁膜50上には、第3パッド部73、および第3パッド部73と第3電極63とを接続する第3配線部83が形成されている。層間絶縁膜50上には、第4パッド部74、および第4パッド部74と第4電極64とを接続する第4配線部84が形成されている。
【0028】
以上が本実施形態における光位相変調器の構成である。次に、光位相変調器の作動について説明する。
【0029】
本実施形態の光位相変調器では、主に光導波路部20の延設方向に沿って光が伝搬する。そして、光位相変調器では、第1パッド部71に第2パッド部72より高い電圧(すなわち、第2リブ部22に逆バイアス電圧)が印加されることにより、N型リブ部221とP型リブ部222のPN接合で空乏層が広がり、キャリア密度が減少する。これにより、光の実効屈折率が変化し、光の位相が変化する。なお、光の実効屈折率は、第1パッド部71および第2パッド部72に印加される電圧の大きさによって所望の値に調整される。
【0030】
また、本実施形態では、温度センス素子40としてのPNダイオードが構成されている。そして、PNダイオードは、図3に示されるように、温度に応じて順方向電圧が変化する。このため、順方向電圧を検出することにより、第2リブ部22の温度を導出することができる。したがって、温度に応じて第1パッド部71および第2パッド部72に印加する電圧を補正することにより、光の実効屈折率を所望の値に維持することができる。
【0031】
この場合、本実施形態の温度センス素子40は、変調部Mと同じ半導体層13で構成され、変調部Mの近傍に配置されている。そして、変調部Mと温度センス素子40との間に配置されるのは、酸化膜で構成される層間絶縁膜50よりも伝熱性の高い絶縁部35(すなわち、シリコンで構成される半導体層13)である。このため、第2リブ部22の温度と温度センス素子40で検出される温度との差を小さくでき、温度の検出精度が低下することを抑制できる。
【0032】
本発明者らが実際に検討したところ、図4および図5に示される結果が得られた。なお、図4および図5は、第2リブ部22(すなわち、光導波路部20)の幅を500nmとし、第2リブ部22から2μm離れたところに温度センス素子40を配置した結果である。
【0033】
図4に示されるように、第2リブ部22の温度が318.5Kである場合、温度センス素子40から検出される温度が313.3Kであった。つまり、本実施形態によれば、光導波路部20の温度と温度センス素子40で検出される温度との差を5.2℃とすることができる。
【0034】
ここで、本実施形態のような第2リブ部22を有する光位相変調器を構成する場合、位相シフト量を2πにすることが望まれ、少なくとも10%の解像度(すなわち、0.2π)を満たすことが望まれる。また、本実施形態のような第2リブ部22を有する光位相変調器では、図5のように第2リブ部22の温度上昇と位相シフト量との関係が示される。そして、図5に示されるように、0.2πの解像度を満たすためには、第2リブ部22の温度と温度センス素子40で検出される温度との差を8.6℃以下にすることが望まれる。したがって、本実施形態では、第2リブ部22の温度と温度センス素子40で検出される温度との差を5.2℃とすることができるため、10%の解像度を十分に満たすことができる。
【0035】
なお、比較例として、本発明者らは、層間絶縁膜50の厚さを3μmとし、層間絶縁膜50上にサーミスタを配置してサーミスタの温度を検出した。そして、第2リブ部22の温度が318.5Kである場合、サーミスタで検出される温度が300Kであることを確認した。つまり、サーミスタで温度を検出した場合には、第2リブ部22の温度とサーミスタで検出される温度との差が18.5℃となり、10%の解像度を満たすことが困難であることが確認された。
【0036】
以上説明した本実施形態によれば、光位相変調器は、半導体層13に形成された温度センス素子40を有し、第2リブ部22(すなわち、変調部M)と温度センス素子40との間に半導体層13で構成される絶縁部35が配置されている。そして、絶縁部35は、層間絶縁膜50よりも伝熱性が高くされている。このため、層間絶縁膜50上にサーミスタ等を配置して第2リブ部22の温度を検出する場合と比較して、第2リブ部22の温度と温度センス素子40で検出される温度との差を小さくできる。そして、温度センス素子40は、半導体層13に形成されて直接的に第2リブ部22の温度を検出できるため、異なる2つの経路の熱抵抗等を特に考慮する必要もなく、設計が複雑になることを抑制できる。さらに、加熱部を別に備える必要もないため、部品点数が増加することも抑制できる。
【0037】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、複数の変調部Mを備えたものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0038】
本実施形態の光位相変調器は、図6図8に示されるように、2つの変調部M1、M2を備え、各変調部M1、M2に第1リブ部21および第3リブ部23が備えられている。つまり、本実施形態の光位相変調器は、2つの光導波路部20を備えている。以下、一方の変調部を第1変調部M1ともいい、他方の変調部を第2変調部M2ともいう。なお、図6では、紙面上側が第1変調部M1となり、紙面下側が第2変調部M2となる。
【0039】
第1変調部M1および第2変調部M2は、幅方向において隣合うように配置されている。より詳しくは、第1変調部M1の第1コンタクト部33と、第2変調部M2の第2コンタクト部34とが隣合うように配置されている。
【0040】
そして、本実施形態では、第1変調部M1には、第1コンタクト部33および第1スラブ部31が延設方向において分離して配置されている。言い換えると、第1変調部M1には、第1コンタクト部33および第1スラブ部31を延設方向に分離する窪み部36が形成されている。
【0041】
同様に、第2変調部M2には、第2コンタクト部34および第2スラブ部32が延設方向において分離して配置されている。言い換えると、第2変調部M2には、第2コンタクト部34および第2スラブ部32には、第2コンタクト部34および第2スラブ部32を延設方向に分離する窪み部37が形成されている。
【0042】
なお、第2変調部M2の窪み部37は、第1変調部M1の窪み部36と対向するように形成されている。つまり、第2変調部M2の窪み部37は、第1変調部M1の窪み部36を通り、幅方向に延びる仮想線上に形成されている。
【0043】
第1変調部M1における第2コンタクト部34と接続される第2電極62と、第2変調部M2における第2コンタクト部34と接続される第2電極62は、共通の第2パッド部72と接続されている。一方、第1変調部M1における第1コンタクト部33と接続される第1電極61と、第2変調部M2における第1コンタクト部33と接続される第1電極61は、別々の第1パッド部71に接続されている。つまり、本実施形態では、第1パッド部71が2つ備えられ、第1変調部M1における第1コンタクト部33、および第2変調部M2における第1コンタクト部33には、別々の電圧を印加できるようになっている。これにより、第1変調部M1に印加される電圧と第2変調部M2に印加される電圧を別々に制御でき、各変調部M1、M2で光の屈折率をそれぞれ異なる値に設定できる。
【0044】
なお、第1変調部M1における第1コンタクト部33は、分離した各部分にそれぞれ第1電極61が配置されている。そして、第1変調部M1における紙面右側の第1電極61は、図示を省略しているが、紙面左側の第1電極61が接続される第1パッド部71と第1配線部81を介して電気的に接続されている。同様に、第2変調部M2における第2コンタクト部34は、分離した各部分にそれぞれ第2電極62が配置されている。そして、第2変調部M2における紙面右側の第2電極62は、図示を省略しているが、紙面左側の第2電極62が接続される第2パッド部72と第2配線部82を介して電気的に接続されている。
【0045】
温度センス素子40は、第1変調部M1と第2変調部M2との間に形成されている。本実施形態では、温度センス素子40は、第1変調部M1に形成された窪み部36、および第2変調部M2に形成された窪み部37を跨るように配置されている。なお、第1変調部M1および第2変調部M2と温度センス素子40との間には、絶縁部35が配置されている。
【0046】
以上説明した本実施形態では、光位相変調器は、第2リブ部22と温度センス素子40との間に配置されるのが半導体層13(すなわち、絶縁部35)であるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
(1)本実施形態では、第1変調部M1および第2変調部M2を備え、第1変調部M1および第2変調部M2で光の実効屈折率をそれぞれ調整できるようにしている。このため、光位相変調器の適用対象を拡大できる。
【0048】
(2)本実施形態では、第1変調部M1に窪み部36が形成されると共に第2変調部M2窪み部37が形成され、温度センス素子40が各窪み部36、37を跨るように配置されている。このため、例えば、窪み部36、37が形成されていない場合と比較して、光位相変調器における幅方向の大きさを縮小でき、小型化を図ることができる。
【0049】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、温度センス素子40の配置場所を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0050】
本実施形態の光位相変調器は、図9および図10に示されるように、第2実施形態と同様に、第1変調部M1および第2変調部M2が幅方向に並べて配置されている。但し、本実施形態では、第1変調部M1に窪み部36が形成されておらず、第2変調部M2に窪み部37が形成されていない。
【0051】
そして、温度センス素子40は、第1変調部M1および第2変調部M2との間と異なる位置に形成されている。
【0052】
以上説明した本実施形態では、光位相変調器は、第2リブ部22と温度センス素子40との間に配置されるのが半導体層13(すなわち、絶縁部35)であるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
(1)本実施形態では、温度センス素子40は、第1変調部M1および第2変調部M2の間と異なる位置に形成されている。このため、温度センス素子40が第1変調部M1および第2変調部M2の間に配置されている場合と比較して、第1~第4配線部81~84の引き回しを容易にし易くでき、設計の簡略化を図ることができる。
【0054】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0055】
例えば、上記各実施形態では、N型リブ部221とP型リブ部222とが幅方向に配列されている例について説明した。しかしながら、N型リブ部221とP型リブ部222とは、厚さ方向に積層されていてもよい。
また、上記第2実施形態では、温度センス素子40が窪み部36、37を跨るように配置されている例について説明した。しかしながら、上記第2実施形態では、第1変調部M1に窪み部36が形成されず、第2変調部M2に窪み部37が形成されていなくてもよい。そして、温度センス素子40は、第1変調部M1と第2変調部M2との間に配置されるようにしてもよい。
【0056】
そして、上記第2、第3実施形態では、第1変調部M1および第2変調部M2を備える例について説明したが、さらに複数の変調部Mを備えるようにしてもよい。この場合は、それぞれ隣合う変調部Mの間に温度センス素子40を配置することが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
10 半導体基板
13 半導体層
35 絶縁部
41 N型層
42 P型層
50 層間絶縁膜
M 変調部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10