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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131028
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】制御装置及び吐出システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/386 20170101AFI20240920BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240920BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20240920BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20240920BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240920BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B29C64/386
B33Y30/00
B29C64/209
B33Y50/00
B29C64/106
B28B1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041043
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】朴 宰弘
【テーマコード(参考)】
4F213
4G052
【Fターム(参考)】
4F213AR07
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL74
4F213WL85
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
(57)【要約】
【課題】積層物の外観が損なわれることを抑制することが可能な制御装置及び吐出システムを提供する。
【解決手段】制御装置は、複数の層を積層して積層物を形成する処理において、層の材料をノズルから吐出する吐出装置を制御する制御装置であって、複数の層を設定する第1設定部と、層の構造に応じて、各々の層内に、ノズルから材料が吐出される吐出領域とノズルから材料が吐出されない非吐出領域とを設定する第2設定部と、層毎に、吐出領域及び非吐出領域の上方をノズルが移動する際の移動経路を設定する第3設定部と、を備え、吐出領域が間隔を空けて配置された第1吐出領域及び第2吐出領域を有し、第1吐出領域及び第2吐出領域の各々の一部が積層物の外表面を構成する場合、第3設定部は、第1吐出領域中の第1点から第2吐出領域中の第2点に向かうように移動経路を設定し、第2点は、第2吐出領域において外表面を構成する部分以外の部分に位置する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層を積層して積層物を形成する処理において、前記層の材料をノズルから吐出する吐出装置を制御する制御装置であって、
前記複数の層を設定する第1設定部と、
前記層の構造に応じて、各々の前記層内に、前記ノズルから前記材料が吐出される吐出領域と前記ノズルから前記材料が吐出されない非吐出領域とを設定する第2設定部と、
前記層毎に、前記吐出領域及び前記非吐出領域の上方を前記ノズルが移動する際の移動経路を設定する第3設定部と、を備え、
前記吐出領域が間隔を空けて配置された第1吐出領域及び第2吐出領域を有し、前記第1吐出領域及び前記第2吐出領域の各々の一部が前記積層物の外表面を構成する場合、前記第3設定部は、前記第1吐出領域中の第1点から前記第2吐出領域中の第2点に向かうように前記移動経路を設定し、
前記第2点は、前記第2吐出領域において前記外表面を構成する部分以外の部分に位置する、制御装置。
【請求項2】
前記第1点は、前記第1吐出領域において、前記外表面を構成する部分以外の部分に位置する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第3設定部は、前記第1吐出領域において、前記外表面を構成する部分を避けて、前記ノズルが前記材料の吐出を終了した地点から前記第1点に向かうように前記移動経路を設定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第3設定部は、前記外表面を構成する部分を避けて前記第1点から前記第2点に向かうように前記移動経路を設定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1点は、前記第1吐出領域を画成する外周部のうちの前記第2吐出領域側に位置する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第2点は、前記第2吐出領域を画成する外周部のうちの前記第1吐出領域側に位置する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記第1吐出領域は、第1方向の両側に前記外表面を構成する部分を有し、
前記第1点は、前記第1吐出領域の重心を通り且つ前記第1方向と直交する線との交点である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記第2吐出領域は、第2方向の両側に前記外表面を構成する部分を有し、
前記第2点は、前記第2吐出領域の重心を通り且つ前記第2方向と直交する線との交点である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記第1吐出領域及び前記第2吐出領域の前記間隔は、前記ノズルが前記材料を吐出しながら移動する際の移動速度に応じた長さ以上である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の制御装置と、前記吐出装置とを備え、
前記吐出装置は、熱で溶融されたペレットを含む前記材料を前記ノズルから吐出する、吐出システム。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の制御装置と、前記吐出装置とを備え、
前記吐出装置は、セメント及びモルタルの少なくとも一方を含む前記材料を前記ノズルから吐出する、吐出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び吐出システムに係り、特に、複数の層を積層して積層物を形成する処理において、層の材料をノズルから吐出する吐出装置を制御する制御装置及び吐出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複層を積層して積層物を形成する処理において、層の材料をノズルから吐出する吐出装置を制御する技術は、既に開発されており、特許文献1に記載された技術が、その一例として挙げられる。
【0003】
特許文献1に記載の3Dプリンタは、加熱して溶融させた樹脂材料を吐出する吐出部と、吐出部に向けて樹脂材料を供給する供給部と、供給部の供給速度を制御する制御部とを備えることにより、樹脂材料の吐出量を正確に制御し、精度のよい立体物を造形する。
特許文献1には、樹脂材料として、熱溶融性のフィラメント及びペレットが挙げられている。フィラメントを樹脂材料として用いる場合、フィラメントを搬送する搬送ローラをモータに接続し、搬送ローラの回転数をモータで制御することにより、フィラメントの供給速度を制御する。ペレットを樹脂材料として用いる場合、ペレットを溶融させて押し出すスクリューをモータに接続し、スクリューの回転数をモータで制御することにより、ペレットの供給速度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-138437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような制御装置では、各々の層を形成する工程において、ノズルを移動させながらノズルに対する材料の供給及び停止を繰り返すことにより、層内における予め設定された吐出領域に材料を吐出する。一方で、材料が吐出されない領域をノズルが通過する際は、ノズルに対する材料の供給は停止される。
【0006】
しかしながら、ノズルに対する材料の供給を停止しても、ノズル内に残存する材料が自重によりノズルの外に垂れてくる場合がある。
この場合、その後、吐出領域に対して材料の吐出を再び開始した際に、ノズル外に垂れた分の材料が積層物に付着する不具合が発生する虞がある。このような不具合が、例えば積層物の外表面を構成する箇所に対して発生すると、結果的に、積層物の外観が損なわれてしまう虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、積層物の外観が損なわれることを抑制することが可能な制御装置及び吐出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、本発明の制御装置によれば、複数の層を積層して積層物を形成する処理において、層の材料をノズルから吐出する吐出装置を制御する制御装置であって、複数の層を設定する第1設定部と、層の構造に応じて、各々の層内に、ノズルから材料が吐出される吐出領域とノズルから材料が吐出されない非吐出領域とを設定する第2設定部と、層毎に、吐出領域及び非吐出領域の上方をノズルが移動する際の移動経路を設定する第3設定部と、を備え、吐出領域が間隔を空けて配置された第1吐出領域及び第2吐出領域を有し、第1吐出領域及び第2吐出領域の各々の一部が積層物の外表面を構成する場合、第3設定部は、第1吐出領域中の第1点から第2吐出領域中の第2点に向かうように移動経路を設定し、第2点は、第2吐出領域において外表面を構成する部分以外の部分に位置することにより解決される。
【0009】
本発明の制御装置では、第1点から第2点に向かってノズルが移動する間、ノズル内に残存する材料が自重によりノズルの外に垂れた場合であっても、ノズル外に垂れた分の材料が第2点、すなわち、外表面以外の箇所に付着することとなる。このため、積層物の外観が損なわれることを抑制することができる。
【0010】
また、第1点は、第1吐出領域において外表面を構成する部分以外の部分に位置してもよい。
上記の構成であれば、第1吐出領域において、ノズルが材料の吐出を終了した地点から第1点に向かってノズルが移動する間、ノズル内に残存する材料が自重によりノズルの外に垂れた場合であっても、ノズル外に垂れた分の材料が第1点、すなわち、外表面以外の箇所に付着することとなる。このため、積層物の外観が損なわれることを抑制することができる。
【0011】
また、第3設定部は、第1吐出領域において、外表面を構成する部分を避けて、ノズルが材料の吐出を終了した地点から第1点に向かうように移動経路を設定してもよい。
上記の構成であれば、ノズルが材料の吐出を終了した地点から第1点に向かってノズルが移動する間、ノズル内に残存する材料が自重によりノズルの外に垂れた場合であっても、ノズル外に垂れた分の材料は、外表面以外の箇所に付着することとなる。このため、積層物の外観が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0012】
また、第3設定部は、外表面を構成する部分を避けて第1点から第2点に向かうように移動経路を設定してもよい。
上記の構成であれば、第1点から第2点に向かってノズルが移動する間、ノズル内に残存する材料が自重によりノズルの外に垂れた場合であっても、ノズル外に垂れた分の材料は、外表面以外の箇所に付着することとなる。このため、積層物の外観が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0013】
また、第1点は、第1吐出領域を画成する外周部のうちの第2吐出領域側に位置してもよい。
上記の構成であれば、第1点から第2点に向かってノズルが移動する期間がより短くなるので、ノズルの外に垂れた分の材料が外表面に付着する確率が低減する。これにより、積層物の外観が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0014】
また、第2点は、第2吐出領域を画成する外周部のうちの第1吐出領域側に位置してもよい。
上記の構成であれば、第1点から第2点に向かってノズルが移動する期間がより短くなるので、ノズルの外に垂れた分の材料が外表面に付着する確率が低減する。これにより、積層物の外観が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0015】
また、第1吐出領域は、第1方向の両側に外表面を構成する部分を有し、第1点は、第1吐出領域の重心を通り且つ第1方向と直交する線との交点であってもよい。
上記の構成であれば、外表面から離れた位置に第1点が設定されるので、積層物の外観が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0016】
また、第2吐出領域は、第2方向の両側に外表面を構成する部分を有し、第2点は、第2吐出領域の重心を通り且つ第2方向と直交する線との交点であってもよい。
上記の構成であれば、外表面から離れた位置に第2点を設定することができるので、積層物の外観が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0017】
また、第1吐出領域及び第2吐出領域の間隔は、ノズルが材料を吐出しながら移動する際の移動速度に応じた長さ以上であってもよい。
上記の構成であれば、その間隔が移動速度に応じた長さ以上である場合には、第1点から第2点に向かうように移動経路を設定し、その間隔が移動速度に応じた長さ未満である場合には、積層物を形成する処理を効率的に実施するための移動経路を設定することができる。これにより、積層物の外観が損なわれることを抑制しつつ、積層物を形成する処理を効率的に実施することができる。
【0018】
また、本発明の吐出システムは、上記に記載の制御装置と、吐出装置とを備え、吐出装置は、熱で溶融されたペレットを含む材料をノズルから吐出する。
上記の構成であれば、熱で溶融されたペレットを含む材料によって形成された積層物の外観が損なわれることを抑制することができる。
【0019】
また、本発明の吐出システムは、上記に記載の制御装置と、吐出装置とを備え、吐出装置は、セメント及びモルタルの少なくとも一方を含む材料をノズルから吐出してもよい。
上記の構成であれば、セメント及びモルタルの少なくとも一方を含む材料によって形成された積層物の外観が損なわれることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、積層物の外観が損なわれることを抑制することが可能な制御装置及び吐出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一つの実施形態に係る吐出システムの概要を示す図である。
図2】本発明の一つの実施形態に係る吐出システムによって積層物を形成する様子を示す図である。
図3】本発明の一つの実施形態に係る吐出システムによって積層物を形成する様子を示す図である。
図4】本発明の一つの実施形態に係る制御装置の構成例を示す図である。
図5】本発明の一つの実施形態に係る制御装置の機能についての説明図である。
図6】層モデル40Aの層の構造についての説明図である。
図7】層モデル40Bの層の構造についての説明図である。
図8】層モデル40Cの層の構造についての説明図である。
図9】層モデル40Cに対して実行される処理の説明図である(その1)。
図10】層モデル40Cに対して実行される処理の説明図である(その2)。
図11】層モデル40Cに対して実行される処理の説明図である(その3)。
図12】層モデル40Cに対して実行される処理の説明図である(その4)。
図13】層モデル40Cに対して実行される処理の説明図である(その5)。
図14】移動経路の設定フローの手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)について、添付の図面に示す好適な実施形態を参照しながら、以下に詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例にすぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明の構成は、その趣旨を逸脱しない限り、下記の実施形態から変更又は改良され得る。
また、本明細書において、「装置」という概念には、特定の機能を一台で発揮する単一の装置が含まれるとともに、分散してそれぞれが独立して存在しつつも協働(連携)して特定の機能を発揮する複数の装置の組み合わせも含まれることとする。
【0023】
また、本実施形態の内容を実現するための基礎的な情報処理技術(通信/伝送技術、情報取得技術、情報記録技術、情報加工技術、情報解析技術、画像処理技術、及び可視化技術等)は、公知の技術であるため、それに関する説明については省略することとする。
【0024】
<<本実施形態に係る制御装置を含む吐出システムの概要について>>
図1~3を参照しながら本実施形態に係る制御装置(以下、制御装置10)を適用した吐出システム(以下、吐出システムS)について説明する。
吐出システムSは、図1に示すように、複数の層Lを積層して積層物Bを形成する。吐出システムSは、層Lの材料Mをノズル3から吐出する吐出装置1と、積層物Bを形成する処理において吐出装置1を制御する制御装置10とを備える。
【0025】
吐出装置1は、例えば、熱溶解積層方式(FDM方式)を採用した一般的な吐出装置と略同様の構成である。本実施形態では、吐出装置1は、いわゆるペレット式の吐出装置であり、熱で溶融されたペレットPを含む材料Mをノズル3から吐出する。材料Mは、FDM方式に用いられる一般的な材料であり、例えば、金属材料、非金属材料(無機又は有機材料)、及びこれらの複合材料のいずれであってもよい。材料Mは、例えば、セメント又はモルタル等であってもよい。
【0026】
吐出装置1は、図1に示すように、外筒2と、ノズル3と、スクリュー4と、加熱部5と、を有する。外筒2は、その軸方向が上下方向と平行になるように配置されている。外筒2は上端に開口を有し、外筒2の下端にはノズル3が設けられている。スクリュー4は、外筒2の上端の開口から外筒2の内部に挿入されている。スクリュー4は、不図示のモータにより回転する軸部と、軸部の周囲にらせん状に形成された板部とを有する。加熱部5は、外筒2の周囲に配置され、外筒2を加熱する。加熱部5は、段階的に外筒2を加熱するために複数のヒータを有する。複数のヒータは、下方に向かうにつれて設定温度が高くなるように設定されている。
【0027】
上記のように構成された吐出装置1は、外筒2の上端の開口から供給されたペレットPを、スクリュー4の軸部を回転させることにより外筒2の下方に向かって移動させる。外筒2は、下方に向かって段階的に加熱されているので、ペレットPは、外筒2の下方に向かうについて徐々に溶融する。ペレットPの温度は、最終的にはノズル3の出口(吐出口)で200℃~300℃に達する。
吐出装置1は、不図示のモータによりスクリュー4を回転させることにより材料Mを吐出し(押し出し)、不図示のモータを停止してスクリュー4の回転を停止することにより材料Mの吐出を停止する。不図示のモータの回転制御は、制御装置10からの指示により実施される。
【0028】
制御装置10は、複数の層Lを積層して積層物Bを形成する処理において、層Lの材料Mをノズル3から吐出するように吐出装置1を制御する。制御装置10は、平坦なベース6に対してノズル3を相対的に移動させながら、材料Mを吐出させる動作と吐出を停止させる動作を吐出装置1に実施させる。これにより、ベース6上に所望の形状の層Lが形成され、一層ずつ繰り返し積層させることにより積層物Bが形成される。「相対的に移動」は、ベース6及びノズル3の少なくとも一方が移動して互いの相対位置が変化することを意味する。移動方向は、互いに直交する3方向であり、具体的には、ベース6の上面に沿う方向のうちの互いに直交する2方向と、ベース6の上面に直交する方向とである。本実施形態では、ノズル3(吐出装置1)が移動し、ベース6は移動しないものとして説明する。
【0029】
次に、図2及び3を参照しながら、ノズル3が移動する際の移動経路について、より具体的に説明する。
図2及び3は、積層物Bを形成する処理の途中経過を示す。図2及び3の例では、最も上側に位置する形成中の層Lが、間隔を空けて配置された第1吐出領域L1と第2吐出領域L2を有している。図2及び3に示す例では、積層物Bにおいて、所定方向の両側に外表面B1が位置している。「所定方向」は、例えば、ノズル3が移動する方向であって、ベース6の上面に沿う2方向のいずれか一方とする。外表面B1は、積層物Bが使用される状況において、積層物Bの外側に露出して視認可能である面である。
【0030】
このような積層物Bでは、第1吐出領域L1を形成した後、第2吐出領域L2の形成を開始することとなる。より詳しくは、ノズル3が、第1吐出領域L1から第2吐出領域L2に移動する。
ここで、本実施形態では、ノズル3が、第1吐出領域L1から第2吐出領域L2に移動する際、図2に示すように、第1吐出領域L1中の第1点A1から第2吐出領域L2中の第2点に向かう。
第1点A1は、第1吐出領域L1において外表面B1を構成する部分以外の部分に位置する。より詳しくは、第1点A1は、第1吐出領域L1を画成する外周部のうちの第2吐出領域L2側に位置する。
第2点A2は、第2吐出領域L2において外表面B1を構成する部分以外の部分に位置する。より詳しくは、第2点A2は、第2吐出領域L2を画成する外周部のうちの第1吐出領域L1側に位置する。
ノズル3は、外表面B1を構成する部分を避けて第1点A1から第2点A2に向かう。すなわち、ノズル3は、第1点A1から第2点A2に向かう間、外表面B1を構成する部分の上方を通過しない。
【0031】
より具体的に説明すると、ノズル3が第1点A1から第2点A2に向かう間、ノズル3に対する材料Mの供給は停止され、材料Mの吐出は停止される。しかしながら、ノズル3に対する材料Mの供給を停止しても、図3に示すように、ノズル内に残存する材料Mの一部が自重によりノズルの外に垂れてくる場合がある。ノズルの外に垂れた材料Mを、余剰部分M1と呼ぶこととする。
ノズル3が第2点A2に到達すると、第2吐出領域L2の形成が開始される。具体的には、第2点A2に対してノズル3から材料Mが吐出される。このとき、図3に示すように、第2点A2には、余剰部分M1が付着することとなる。
この点について、本実施形態では、第2点A2は、第2吐出領域L2において外表面B1を構成する部分以外の部分に位置するので、余剰部分M1は、外表面B1以外の箇所に付着することとなる。
また、本実施形態では、ノズル3が、第1点A1から第2点A2に向かう間、外表面B1を構成する部分を避けて移動する。このため、ノズル3の外に垂れた材料M(余剰部分M1)が、第2点A2に達するまでの間、外表面B1を構成する部分に付着することは無い。
【0032】
また、第1吐出領域L1において、ノズル3が材料Mの吐出を終了する地点が第1点A1と同じである場合と、ノズル3が材料Mの吐出を終了する地点が第1点A1と異なる場合とがある。
図2及び3に示す例は、ノズル3が材料Mの吐出を終了する地点が第1点A1と異なる場合を示す。ノズル3が材料Mの吐出を終了する地点を、第3点A3とする。
この場合、ノズル3は、第3点A3にて吐出を終了した後、第3点A3から第1点A1に向かい、その後、第1点A1から第2点A2に向かう。
ここで、ノズル3は、外表面B1を構成する部分を避けて、第3点A3から第1点A1に向かう。すなわち、ノズル3は、第3点A3から第1点A1に向かう間、外表面B1を構成する部分の上方を通過しない。
より具体的に説明すると、第3点A3から第1点A1に向かう間、ノズル3に対する材料Mの供給は停止され、材料Mの吐出は停止される。しかしながら、ノズル3に対する材料Mの供給を停止しても、ノズル内に残存する材料Mの一部が自重によりノズルの外に垂れてくる場合がある。ノズルの外に垂れた材料Mを、余剰部分M2と呼ぶこととする。
この余剰部分M2は、第3点A3から第1点A1に向かう間、図3に示すように、第1吐出領域L1、及び、第1点A1に向かう経路内の箇所に付着する虞がある。
この点について、本実施形態では、第1点A1は、第1吐出領域L1において外表面B1を構成する部分以外の部分に位置し、且つ、ノズル3は、第3点A3から第1点A1に向かう間、外表面B1を構成する部分を避けて移動するので、結果的に、余剰部分M2は、外表面B1以外の箇所に付着することとなる。
【0033】
<<本実施形態に係る制御装置の構成例について>>
本実施形態に係る制御装置10の構成例について、図4を参照しながら説明する。
制御装置10は、コンピュータからなり、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション又はサーバコンピュータ等によって構成される。制御装置10は、1台のコンピュータによって構成されてもよく、あるいは並列分散された複数台のコンピュータによって構成されてもよい。また、制御装置10を構成するコンピュータがサーバコンピュータである場合、ASP(Application Service Provider)、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)又はIaaS(Infrastructure as a Service)用のサーバコンピュータであってもよい。
【0034】
制御装置10を構成するコンピュータは、図4に示すように、プロセッサ21、メモリ22、通信用インタフェース23、記憶装置24、入力装置25、及び表示装置26を有する。
【0035】
プロセッサ21は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、TPU(Tensor Processing Unit)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成される。
メモリ22は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリによって構成される。
【0036】
通信用インタフェース23は、例えばネットワークインタフェースカード、又は通信インタフェースボード等によって構成されるとよい。制御装置10を構成するコンピュータは、通信用インタフェース23を介して、吐出装置1と通信する。
【0037】
記憶装置24は、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、FD(Flexible Disc)、MOディスク(Magneto-Optical disc)、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、SDカード(Secure Digital card)、又はUSBメモリ(Universal Serial Bus memory)等によって構成される。なお、記憶装置24は、制御装置10を構成するコンピュータ本体内に内蔵されてもよく、外付け形式でコンピュータ本体に取り付けてもよい。
【0038】
入力装置25は、例えばタッチパネル、キーボード、ボタン等を含み構成され、ユーザからの入力を受け付ける。表示装置26は、例えば液晶ディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置等を含み構成され、プロセッサ21により生成されるグラフィックデータに基づく画面を出力する。
【0039】
<<本実施形態に係る制御装置の機能について>>
次に、本実施形態に係る制御装置10の構成について機能面から改めて説明する。
制御装置10は、図5に示すように、図面データ取得部31、層設定部32(第1設定部に相当)、吐出領域設定部33(第2設定部に相当)、外表面設定部34、点設定部35、及び、移動経路設定部36(第3設定部に相当)を有する。
これらの機能部は、制御装置10を構成するコンピュータが備えるハードウェア機器と、そのコンピュータに搭載されたプログラム(すなわち、ソフトウェア)との協働によって実現される。
以下、それぞれの機能部について説明する。
【0040】
(図面データ取得部)
図面データ取得部31は、積層物Bの3次元形状を示す図面データ、すなわち3次元CADモデルを取得する。
【0041】
(層設定部)
層設定部32は、取得した積層物Bの3次元CADモデルを3次元メッシュモデル(例えばSTL(Stereolithography)形式のモデル)に変換した後、その3次元メッシュモデルに基づいて複数の層(層モデル)を設定する。
【0042】
(吐出領域設定部)
吐出領域設定部33は、層の構造に応じて、各々の層(層モデル)内に、ノズル3から材料Mが吐出される吐出領域とノズル3から材料Mが吐出されない非吐出領域とを設定する。
以下、図6~8を参照しながらより具体的に説明する。
図6は、図2に示す積層物Bに対応する3次元モデルにおいて、下方位置の層モデル40Aを示す。図7は、図2に示す積層物Bに対応する積層モデルにおいて、中間位置の層モデル40Bを示す。図8は、図2に示す積層物Bに対応する積層モデルにおいて、上方位置の層モデル40Cを示す。
層モデル40Aには、図6に示すように、吐出領域41と、吐出領域41Aを除く非吐出領域42Aとが設定される。層モデル40Bには、図7に示すように、吐出領域41Bと、吐出領域41Bを除く領域として非吐出領域42Bとが設定される。吐出領域41Bは、間隔Fを空けて配置された第1吐出領域43B及び第2吐出領域44Bを有する。間隔Fは、ノズル3が材料Mを吐出しながら移動する際の移動速度に応じた長さ未満とする。間隔Fは、一例としては、移動速度を5cm/secとした場合、単位時間における移動距離の2倍である、10cm未満とする。層モデル40Cには、図8に示すように、吐出領域41Cと、吐出領域41Cを除く領域として非吐出領域42Cとが設定される。吐出領域41Cは、間隔Gを空けて配置された第1吐出領域43C及び第2吐出領域44Cを有する。間隔Gは、ノズル3が材料Mを吐出しながら移動する際の移動速度に応じた長さ以上とする。間隔Gは、一例としては、移動速度を5cm/secとした場合、その単位時間における移動距離の2倍である、10cm以上とする。
【0043】
(外表面設定部)
外表面設定部34は、各々の層(層モデル)に対して、層内に外表面B1を構成する部分を設定する。
層モデル40Cを用いて具体的に説明すると、図9に示すように、第1吐出領域43C及び第2吐出領域44Cの各々の一部(部分45,46)が積層物Bの外表面B1を構成する。
より詳しくは、第1吐出領域43Cは、第1方向の両側に外表面B1を構成する部分45,45を有する。第2吐出領域44Cは、第2方向の両側に外表面B1を構成する部分46,46を有する。本実施形態では、第1方向及び第2方向は、同じ方向であり、より具体的には、ノズル3が移動する方向であって、ベース6の上面に沿う2方向のいずれか一方である。
【0044】
上記の構成例では、層モデル40Cについて説明したが、層モデル40A及び層モデル40Bについても、吐出領域が積層物Bの外表面B1を構成する部分を有する場合、同様の手順で、層内に外表面B1を構成する部分が設定される。
【0045】
(点設定部)
点設定部35は、各々の層(層モデル)に対して、複数の点(ノード)を設定する。複数の点は、後述する移動経路設定部36においてノズル3の移動経路を設定する際に用いられる。
ノズル3の移動経路は、複数の点間を結ぶことにより設定される。複数の点は、予め設定された設定条件に応じて、隣り合う点の間隔を空けて吐出領域及び非吐出領域にそれぞれ設定される。より詳しくは、複数の点を設定する際、各層モデルに対して、先ず、格子状のグリッド線が設定される。グリッド線の間隔及び本数は、層モデルのサイズに応じて設定される。そのグリッド線の交点に、各々の点が配置される。
なお、以下の(1)及び(2)の双方の条件を満たす層モデルに対しては、複数の点とともに、後述する第1点及び第2点を設定する。
層モデル内に複数の吐出領域が存在する。
層モデル内の隣り合う吐出領域の間隔が閾値以上である。
【0046】
点設定部35は、先ず、各々の層モデルに対して、上記(1)の条件である、層モデル内に複数の吐出領域が存在するか否かを判定する。図6~8を用いて具体的に説明すると、図6に示す層モデル40Aの場合、層モデル40A内に1つの吐出領域41Aしか存在しないため、上記(1)の条件を満たさない。一方で、図7に示す層モデル40Bの場合、層モデル40B内に第1吐出領域43B及び第2吐出領域44Bが存在するため、上記(1)の条件を満たす。また、図8に示す層モデル40Cの場合も、層モデル40C内に第1吐出領域43C及び第2吐出領域44Cが存在するため、上記(1)の条件を満たす。
【0047】
次に、点設定部35は、上記(1)の条件を満たす層モデルに対して、上記(2)の条件である、層モデル内の隣り合う吐出領域の間隔が閾値以上であるか否かを判定する。
「閾値」は、ノズル3が材料Mを吐出しながら移動する際の移動速度に応じた長さとする。閾値の一例としては、移動速度を5cm/secとした場合、単位時間における移動距離の2倍である、10cmとする。
図7及び8を用いて具体的に説明すると、図7に示す層モデル40Bの場合、層モデル40B内の第1吐出領域43B及び第2吐出領域44Bの間隔Fは閾値未満であるため、上記(2)の条件を満たさない。一方で、図8に示す層モデル40Cの場合、層モデル40C内の第1吐出領域43C及び第2吐出領域44Cの間隔Gは閾値以上であるため、上記(2)の条件を満たす。
【0048】
点設定部35は、上記の(1)及び(2)の条件を満たす層モデル40Cに対して、図10に示すように、第1吐出領域43C中に第1点47を設定し、第2吐出領域44C中に第2点48を設定する。
第1点47は、第1吐出領域43Cにおいて外表面B1を構成する部分45以外の部分に位置する。第1点47は、第1吐出領域43Cを画成する外周部のうちの第2吐出領域44C側、より具体的には、図10に示すように端49に位置する。また、第1点47は、第1吐出領域43Cの重心を通り且つ第1方向と直交する線C1との交点である。
第2点48は、第2吐出領域44Cにおいて外表面B1を構成する部分46以外の部分に位置する。第2点48は、第2吐出領域44Cを画成する外周部のうちの第1吐出領域43C側、より具体的には図10に示すように端50に位置する。また、第2点48は、第2吐出領域44Cの重心を通り且つ第2方向と直交する線C2との交点である。
【0049】
点設定部35は、第1点47及び第2点48を設定するとともに、図11に示すように、層モデル40C内に複数の点Nを設定する。複数の点Nの各々は、隣り合う点Nの間隔を空けて、吐出領域41C及び非吐出領域42Cに配置される。
点設定部35は、上記の(1)及び(2)の条件を満たさなかった層モデル40A及び層モデル40Bに対しては、第1点及び第2点を設定せずに、予め設定された設定条件に応じて、複数の点を設定する。
【0050】
(移動経路設定部)
移動経路設定部36は、層(層モデル)毎に、吐出領域及び非吐出領域の上方をノズル3が移動する際の移動経路を設定する。
移動経路設定部36は、層モデル40A及び層モデル40Bに対しては、第1点及び第2点が設定されていないので、第1点及び第2点を考慮することなく、各々の層Lの形成時間、及び材料Mの使用量等に基づいて最適な移動経路を設定する。
一方で、移動経路設定部36は、層モデル40Cに対しては、第1点47、第2点48、及び複数の点Nを結ぶ移動経路を設定する。
なお、移動経路には、図12に示す移動経路Xのように、第1吐出領域43Cにおいてノズル3が材料Mの吐出を終了する地点が第1点47である場合と、図13に示す移動経路Yのように、第1吐出領域43Cにおいてノズル3が材料Mの吐出を終了する地点(図13に示す点N1)が第1点47と異なる場合とがある。点N1は、複数の点Nの中の1つとする。
なお、図12及び13に示す移動経路X,Yは、説明に用いるための移動経路の一例であり、実際に設定される移動経路は、これに限られない。また、移動経路X,Yは、図12及び13には図示していないが、非吐出領域42Cに配置された各々の点Nまで延びている。また、図12及び13に示す移動経路X,Yでは、吐出を行う区間を実線で示し、吐出を行わない区間を破線で示す。
【0051】
移動経路Xでは、図12に示すように、第1吐出領域43Cにおいて、ノズル3が材料Mの吐出を終了する地点として第1点47が設定される。
移動経路Xは、第1吐出領域43C中の第1点47から第2吐出領域44C中の第2点48に向かうように設定される。より詳しくは、移動経路Xは、外表面B1を構成する部分45,46を避けて第1点47から第2点48に向かうように設定される。本実施形態では、第1点47から第2点48に延びる区間は、非吐出領域42Cとなっている。移動経路設定部36は、第1点47から第2点48に延びる区間以外については、層Lの形成時間、及び材料Mの使用量等に基づいて最適な区間を設定する。
【0052】
一方で、移動経路Yでは、図13に示すように、第1吐出領域43Cにおいて、ノズル3が材料Mの吐出を終了する地点として第1点47とは異なる点N1が設定される。
移動経路Yは、点N1から第1点47に向かうように設定される。より詳しくは、移動経路設定部36は、第1吐出領域43Cにおいて、外表面B1を構成する部分45を避けて、点N1から第1点47に向かうように移動経路Yを設定する。
移動経路Yの第1点47から第2点48に向かう区間については、移動経路Xと同様であるため説明を省略する。
【0053】
<<本実施形態に係る移動経路の設定フローについて>>
次に、上述した制御装置10を用いた移動経路の設定フローについて説明する。移動経路の設定フローは、図13に示す流れに沿って進行する。なお、図13に示すフローは、あくまでも一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、新たなステップを追加してもよい。
【0054】
移動経路の設定フローは、吐出システムSが起動することを契機として開始される。
先ず、プロセッサ21は、積層物Bの3次元形状を示す図面データ、すなわち3次元CADモデルを取得する(S001)。プロセッサ21は、取得した積層物Bの3次元CADモデルを3次元メッシュモデルに変換した後、その3次元メッシュモデルに基づいて複数の層(層モデル)を設定する(S002)。次に、プロセッサ21は、層n(n=1~k)内に、ノズル3から材料Mが吐出される吐出領域とノズル3から材料Mが吐出されない非吐出領域とを設定する(S003)。例えば、図8に示す層モデル40Cの場合、プロセッサ21は、吐出領域41Cと、非吐出領域42Cとを設定する。さらに、プロセッサ21は、吐出領域41Cの中に、間隔Gを空けて配置された第1吐出領域43C及び第2吐出領域44Cを設定する。
【0055】
次に、プロセッサ21は、吐出領域の一部が積層物Bの外表面B1を構成する場合、層n内に外表面B1を構成する部分を設定する(S004)。図8に示す層モデル40Cの場合、プロセッサ21は、第1吐出領域43Cに対して外表面B1を構成する部分45を設定し、第2吐出領域44Cに対して外表面B1を構成する部分46を設定する。
その後、プロセッサ21は、層n内に複数の吐出領域が存在するか否かを判定する(S005)。図8に示す層モデル40Cの場合、プロセッサ21は、層モデル40C内に複数の吐出領域、すなわち、第1吐出領域43C及び第2吐出領域44Cが存在すると判定する。
【0056】
プロセッサ21は、層n内に複数の吐出領域が存在する場合、層n内の隣り合う吐出領域の間隔が閾値以上であるか否かを判定する(S006)。図8に示す層モデル40Cの場合、プロセッサ21は、層モデル40C内の第1吐出領域43C及び第2吐出領域44Cの間隔Gが閾値以上であると判定する。
【0057】
プロセッサ21は、隣り合う吐出領域の間隔が閾値以上であった場合、外表面B1を構成する部分以外の部分に第1点及び第2点を設定する(S007)。図8に示す層モデル40Cの場合、プロセッサ21は、第1吐出領域43C中に第1点47を設定し、第2吐出領域44C中に第2点48を設定する。
次に、プロセッサ21は、第1点及び第2点を設定するとともに、層n内に複数の点を設定する(S008)。図8に示す層モデル40Cの場合、プロセッサ21は、第1点47及び第2点48を設定するとともに、図11に示すように、層モデル40C内に複数の点Nを設定する。
次に、プロセッサ21は、第1点、第2点、及び複数の点を結ぶ移動経路を設定する。図8に示す層モデル40Cの場合、プロセッサ21は、図12及び13に示すように、第1点47、第2点48、及び複数の点Nを結ぶ移動経路を設定する。
【0058】
なお、プロセッサ21は、ステップS005において、層n内に複数の吐出領域が存在しないと判定された場合、ステップS006~007をスキップする。この場合、プロセッサ21は、ステップS008に進み、第1点及び第2点を設定することなく、層n内に複数の点を設定し(S008)、複数の点を結ぶ移動経路を設定する(S009)。図6に示す層モデル40Aの場合、プロセッサ21は、層モデル40A内に複数の吐出領域が存在しないと判定する。そして、プロセッサ21は、第1点及び第2点を設定することなく、層モデル40A内に複数の点を設定し、複数の点を結ぶ移動経路を設定する。
【0059】
また、プロセッサ21は、ステップ006において、隣り合う吐出領域の間隔が閾値未満であった場合、ステップ007をスキップする。プロセッサ21は、ステップS008に進み、第1点及び第2点を設定することなく、層n内に複数の点を設定し(S008)、複数の点を結ぶ移動経路を設定する(S009)。図7に示す層モデル40Bの場合、プロセッサ21は、隣り合う吐出領域の間隔が閾値未満であると判定する。そして、プロセッサ21は、第1点及び第2点を設定することなく、層モデル40B内に複数の点を設定し、複数の点を結ぶ移動経路を設定する。
【0060】
プロセッサ21は、層nがk番目の層kに達するまでステップS003~009を繰り返す(S010)。プロセッサ21は、層kに達した時点で、移動経路の設定フローを終了する。
<<本実施形態の有効性について>>
以上までに説明したように、制御装置10では、図2及び3に示すように、第1点A1から第2点A2に向かってノズル3が移動する間、ノズル3内に残存する材料が自重によりノズル3の外に垂れた場合であっても、ノズル3外に垂れた分の材料(余剰部分M1)が第2点A2、すなわち、外表面B1以外の箇所に付着されることとなる。このため、積層物Bの外観が損なわれることを抑制することができる。
【0061】
また、図10に示すように、第1点47は、第1吐出領域43Cにおいて、外表面B1を構成する部分45以外の部分に位置するように設定される。
このため、図2及び3に示すように、第1吐出領域L1において、第3点A3から第1点A1に向かってノズル3が移動する間、ノズル3内に残存する材料が自重によりノズル3の外に垂れた場合であっても、ノズル3外に垂れた分の材料が第1点A1、すなわち、外表面B1以外の箇所に付着することとなる。このため、積層物Bの外観が損なわれることを抑制することができる。
【0062】
また、移動経路設定部36は、図13に示すように、第1吐出領域43Cにおいて、外表面B1を構成する部分45,45を避けて、ノズル3が材料Mの吐出を終了した地点(点N1)から第1点47に向かうように移動経路Yを設定する。
このため、図2及び3に示すように、第3点A3から第1点A1に向かってノズル3が移動する間、ノズル3内に残存する材料が自重によりノズル3の外に垂れた場合であっても、ノズル3外に垂れた分の材料は、外表面B1以外の箇所に付着することとなる。これにより、積層物Bの外観が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0063】
また、移動経路設定部36は、図12及び13に示すように、外表面B1を構成する部分45,46を避けて、第1点47から第2点48に向かうように移動経路Xを設定する。
このため、図2及び3に示すように、第1点A1から第2点A2に向かってノズル3が移動する間、ノズル3内に残存する材料が自重によりノズル3の外に垂れた場合であっても、ノズル3外に垂れた分の材料は、外表面B1以外の箇所に付着することとなる。これにより、積層物Bの外観が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0064】
また、図10に示すように、第1点47は、第1吐出領域43Cを画成する外周部のうちの第2吐出領域44C側、より具体的には端49に位置するように設定される。
このため、図2及び3に示すように、第1点A1から第2点A2に向かってノズル3が移動する期間がより短くなるので、ノズル3の外に垂れた分の材料が外表面B1に付着する確率が低減する。これにより、積層物Bの外観が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0065】
また、図10に示すように、第2点48は、第2吐出領域44Cを画成する外周部のうちの第1吐出領域43C側、より具体的には端50に位置するように設定される。
このため、図2及び3に示すように、第1点A1から第2点A2に向かってノズル3が移動する期間がより短くなるので、ノズル3の外に垂れた分の材料が外表面B1に付着する確率が低減する。これにより、積層物Bの外観が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0066】
また、図10に示すように、第1吐出領域43Cは、第1方向の両側に外表面B1を構成する部分45,45を有する。また、第1点47は、第1吐出領域43Cの重心を通り且つ第1方向と直交する線C1との交点に設定される。
このため、図2及び3に示すように、外表面B1から離れた位置に第1点A1が設定されるので、積層物Bの外観が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0067】
また、図10に示すように、第2吐出領域44Cは、第2方向の両側に外表面B1を構成する部分46,46を有する。また、第2点48は、第2吐出領域44Cの重心を通り且つ第2方向と直交する線C2との交点に設定される。
このため、図2及び3に示すように、外表面B1から離れた位置に第2点A2が設定されるので、積層物Bの外観が損なわれることを効果的に抑制することができる。
【0068】
また、第1吐出領域及び第2吐出領域の間隔は、ノズル3が材料Mを吐出しながら移動する際の移動速度に応じた長さ以上に設定される。
このため、図8に示す層モデル40Cのように、第1吐出領域43C及び第2吐出領域44Cの間隔Gが移動速度に応じた長さ以上である場合には、第1点47から第2点48に向かうように移動経路を設定し、図7に示す層モデル40Bのように、第1吐出領域43B及び第2吐出領域44Bの間隔Fが移動速度に応じた長さ未満である場合には、第1点及び第2点を考慮せず、積層物Bを形成する処理を効率的に実施するための移動経路を設定することができる。これにより、積層物Bの外観が損なわれることを抑制しつつ、積層物Bを形成する処理を効率的に実施することができる。
【0069】
また、吐出システムSは、制御装置10と、吐出装置1とを備える。吐出装置1は、熱で溶融されたペレットPを含む材料Mをノズル3から吐出する。
このため、熱で溶融されたペレットPを含む材料Mを用いて構成される積層物Bについて、その外観が損なわれることを抑制することができる。特に、ペレット方式の吐出装置の場合、フィラメント方式の吐出装置と比べて、ノズルから材料が垂れやすいので、本発明に係る制御装置及び吐出システムがより有効に機能する。
【0070】
また、吐出システムSは、制御装置10と、吐出装置1とを備える。吐出装置1は、セメント及びモルタルの少なくとも一方を含む材料Mをノズル3から吐出する。
このため、セメント及びモルタルの少なくとも一方を含む材料Mを用いて構成される積層物Bについて、その外観が損なわれることを抑制することができる。特に、セメント及びモルタルの少なくとも一方を含む材料を用いた場合、ノズルから材料が垂れやすく、外表面に付着する余剰部分がより目立つので、本発明に係る制御装置及び吐出システムがより有効に機能する。
【0071】
<<その他の実施形態について>>
上記の実施形態では、図10に示すように、第1点47は、第1吐出領域43Cにおいて外表面B1を構成する部分45以外に位置するとしたが、これに限られず、外表面B1を構成する部分45に位置してもよい。
【0072】
また、上記の実施形態では、移動経路設定部36は、第1吐出領域43Cにおいて、外表面を構成する部分45を避けて、点N1から第1点47に向かうように移動経路Yを設定したが、これに限られず、外表面を構成する部分45を通過するように点N1から第1点47に向かうように移動経路Yを設定してもよい。
【0073】
また、上記の実施形態では、移動経路設定部36は、外表面B1を構成する部分45,46を避けて第1点47から第2点48に向かうように移動経路X,Yを設定するとしたが、これに限られず、外表面B1を構成する部分45,46を通過するように移動経路X,Yを設定してもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、第1点47は、第1吐出領域43Cを画成する外周部のうちの第2吐出領域44C側に位置していたが、これに限られず、第1吐出領域43Cの内部、又は、第1吐出領域43Cを画成する外周部のうちの第2吐出領域44Cとは反対側に位置してもよい。
【0075】
また、上記の実施形態では、第2点48は、第2吐出領域44Cを画成する外周部のうちの第1吐出領域43C側に位置していたが、これに限られず、第2吐出領域44Cの内部、又は、第2吐出領域44Cを画成する外周部のうちの第1吐出領域43Cとは反対側に位置してもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、図9に示すように、第1吐出領域43Cは、第1方向の両側に外表面B1を構成する部分45,45を有するとしたが、これに限られず、例えば第1方向の一方側のみに外表面B1を構成する部分45を有してもよい。
【0077】
また、上記の実施形態では、図9に示すように、第2吐出領域44Cは、第2方向の両側に外表面B1を構成する部分46,46を有するとしたが、これに限られず、例えば第2方向の一方側のみに外表面B1を構成する部分46を有してもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、いわゆるペレット式の吐出装置1を用いたが、これに限られず、例えばフィラメント式の吐出装置を用いてもよい。この場合、吐出装置は、フィラメントを搬送する搬送ローラと、搬送ローラを回転させるモータとを有する。フィラメント式の吐出装置では、モータにより搬送ローラを回転させることにより材料が吐出され、モータを停止して搬送ローラの回転を停止することにより材料の吐出が停止する。モータの回転制御は、制御装置からの指示により実施される。
【符号の説明】
【0079】
1 吐出装置
2 外筒
3 ノズル
4 スクリュー
5 加熱部
6 ベース
10 制御装置
21 プロセッサ
22 メモリ
23 通信用インタフェース
24 記憶装置
25 入力装置
26 表示装置
31 図面データ取得部
32 層設定部(第1設定部)
33 吐出領域設定部(第2設定部)
34 外表面設定部
35 点設定部
36 移動経路設定部(第3設定部)
40A,40B,40C 層モデル
41A,41B,41C 吐出領域
42A,42B,42C 非吐出領域
43B,43C,L1 第1吐出領域
44B,44C,L2 第2吐出領域
45,46 部分
47,A1 第1点
48,A2 第2点
49,50 端
A3 第3点
B 積層物
B1 外表面
C1,C2 線
F,G 間隔
L 層
M 材料
M1 余剰部分
M2 余剰部分
N,N1 点
P ペレット
S 吐出システム
X,Y 移動経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14