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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131029
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20240920BHJP
   B05C 5/00 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041045
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】釜谷 学
(72)【発明者】
【氏名】中井 聡
(72)【発明者】
【氏名】栗原 尚実
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AA02
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA38
4F042AA02
4F042BA04
4F042BA06
4F042BA08
4F042DF05
4F042DF09
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】移動ユニットの移動制御を高精度に行うことが可能となる塗布装置を提供する。
【解決手段】塗布装置10は、基材Wに対して液を塗布する移動ユニット11と、移動ユニット11の移動を案内するガイド装置12と、移動ユニット11に電力供給する電力線14aを含むケーブル群14を支持するケーブルキャリア13とを有する。移動ユニット11は、ガイド装置12の案内方向に移動可能であって液を吐出する塗布ヘッド21を搭載する塗布ユニット16と、塗布ユニット16と独立して前記案内方向に移動可能であってケーブルキャリア13と接続された制御ユニット17と、制御ユニット17と塗布ユニット16との間をたるみを持たせて接続する可撓性ワイヤハーネス18とを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に対して液を塗布する移動ユニットと、
前記移動ユニットの移動を案内するガイド装置と、
前記移動ユニットに電力供給する電力線を含むケーブル群を支持するケーブルキャリアと、
を有し、
前記移動ユニットは、
前記ガイド装置の案内方向に移動可能であって液を吐出する塗布ヘッドを搭載する塗布ユニットと、
前記塗布ユニットと独立して前記案内方向に移動可能であって前記ケーブルキャリアと接続された制御ユニットと、
前記制御ユニットと前記塗布ユニットとの間をたるみを持たせて接続する可撓性ワイヤハーネスと、
を有する、塗布装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、信号線及びスイッチを含む電装品、及び、前記塗布ヘッド内の圧力を調整するためのレギュレータを搭載し、
前記移動ユニットは、前記制御ユニットと前記塗布ユニットとの間をたるみを持たせて接続する可撓性エア配管を有する、
請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記ワイヤハーネスは、前記制御ユニット及び前記塗布ユニットの少なくとも一方に対して着脱可能として接続するコネクタを有する、
請求項1又は請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記制御ユニットと前記塗布ユニットとの移動量の差を制限する制限部材を有する、
請求項1又は請求項2に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記ガイド装置は、前記制御ユニットを案内する第一ガイドと、前記塗布ユニットを案内する第二ガイドと、を有し、
前記第一ガイドと前記第二ガイドとは異なる仕様である、
請求項1又は請求項2に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の発明は、塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス又はフィルム等の基材上にインクジェット塗布装置により液を吐出し、線分又は矩形等の様々な形状の塗布膜(膜パターンともいう)を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-30739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような塗布装置は、ガラス又はフィルム等の基材を保持するステージと、その基材に対して液を塗布する塗布ガントリとを有する。塗布ガントリに搭載の移動ユニットは、移動しながら、基材に対して液を吐出する塗布動作を行い、基材に塗布膜(膜パターン)を形成する。
近年、前記のような塗布装置において、更に高品質の塗布を行うことが求められており、このために、移動ユニットの移動制御に高い精度が必要となる。
【0005】
塗布の対象となる基材が大きくなるほど、塗布ガントリ及び移動ユニットは大型化し、その質量は大きくなる。移動ユニットには、電力線を含むケーブル群が接続される。移動ユニットは、移動しながら、又は移動と停止を繰り返しながら、塗布動作を行う。そこで、前記ケーブル群を支持するために、ケーブルキャリアが用いられる。電力線等のケーブルは多数となることから、大型のケーブルキャリアが用いられ、また、複数のケーブルキャリアが用いられる場合がある。
【0006】
ケーブルキャリアが移動ユニットに連結されていることで、ケーブルキャリアからの外力(反力)が移動ユニットに作用する。その外力は、負荷となって、移動ユニットの移動に影響を与える。例えば、外力は、移動ユニットの直進性に悪影響を及ぼす。
移動ユニットは、液を吐出する塗布ヘッドの他に多くの電装品を搭載する。このため、移動ユニットを移動させる駆動装置の負荷は大きい。移動ユニットの移動制御においてゲインを上げ難く、位置制御の精度確保及び移動速度の向上が困難となる。
【0007】
そこで、本発明は、塗布ガントリに搭載される移動ユニットの移動制御を高精度に行うことが可能となる塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の塗布装置は、基材に対して液を塗布する移動ユニットと、前記移動ユニットの移動を案内するガイド装置と、前記移動ユニットに電力供給する電力線を含むケーブル群を支持するケーブルキャリアと、を有し、前記移動ユニットは、前記ガイド装置の案内方向に移動可能であって液を吐出する塗布ヘッドを搭載する塗布ユニットと、前記塗布ユニットと独立して前記案内方向に移動可能であって前記ケーブルキャリアと接続された制御ユニットと、前記制御ユニットと前記塗布ユニットとの間をたるみを持たせて接続する可撓性ワイヤハーネスと、を有する。
【0009】
前記構成を有する塗布装置によれば、移動ユニットの搭載機器は、制御ユニットと塗布ユニットとに分配され、塗布ユニットの軽量化が可能となる。このため、塗布ユニットの位置制御の精度確保及び移動速度の向上が可能となる。
基材に対して液を塗布する際、塗布ヘッドを搭載する塗布ユニットは、ケーブルキャリアが接続された制御ユニットと独立して、移動する。このため、実質的に塗布を行う塗布ユニットに対して、ケーブルキャリアが与える影響を抑えることが可能となる。
ワイヤハーネスのたるみにより、制御ユニットと塗布ユニットとに移動量の差が生じても、実質的に塗布を行う塗布ユニットに対して、制御ユニットが与える影響を抑えることが可能となる。
以上より、移動ユニットの移動制御を高精度に行うことが可能となる。
【0010】
(2)好ましくは、前記制御ユニットは、信号線及びスイッチを含む電装品、及び、前記塗布ヘッド内の圧力を調整するためのレギュレータを搭載し、前記移動ユニットは、前記制御ユニットと前記塗布ユニットとの間をたるみを持たせて接続する可撓性エア配管を有する。
前記構成によれば、制御ユニットが、前記電装品及び前記レギュレータを搭載する。このぶん、移動制御に高い精度が必要となる塗布ユニットの軽量化が可能となる。
前記エア配管は、レギュレータと塗布ヘッドとの間のエア流路の一部を構成する。レギュレータが調整したエアの圧力により、塗布ヘッド内が負圧に保たれる。
【0011】
(3)好ましくは、前記ワイヤハーネスは、前記制御ユニット及び前記塗布ユニットの少なくとも一方に対して着脱可能として接続するコネクタを有する。
前記構成によれば、コネクタによりワイヤハーネスを外すことで、制御ユニットと塗布ユニットとの位置を大きくずらすことが可能となる。移動ユニットのメンテナンスが容易となる。
【0012】
(4)好ましくは、前記(1)から(3)の塗布装置は、更に、前記制御ユニットと前記塗布ユニットとの移動量の差を制限する制限部材を有する。
前記構成によれば、通常運転では、制御ユニットと塗布ユニットとは同期するようにして一体的となって移動するが、例えば制御エラー等によって、両ユニットの移動量が大きく異なる可能性がある。このような場合であっても、制限部材により、その移動量の差が制限される。このため、制御ユニットと塗布ユニットとの間のワイヤハーネス等に負荷を与えないで済む。
【0013】
(5)好ましくは、前記(1)から(4)の塗布装置において、前記ガイド装置は、前記制御ユニットを案内する第一ガイドと、前記塗布ユニットを案内する第二ガイドと、を有し、前記第一ガイドと前記第二ガイドとは異なる仕様である。
塗布ユニットは、移動制御に高い精度が必要となるのに対して、制御ユニットは、塗布ユニットと比較して、低い精度で済む。前記構成によれば、第一ガイドに要するコストを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、移動ユニットの移動制御を高精度に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の塗布装置の一例を示す斜視図である。
図2図2は、塗布ガントリの一部を説明するための斜視図である。
図3図3は、塗布ガントリの一部を案内方向に沿って見た概略説明図である。
図4図4は、メンテナンス状態にある塗布ガントリの一部の説明図である。
図5図5は、制限部材の一例を示す説明図である。
図6図6は、移動ユニットの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔塗布装置の全体構成〕
図1は、本発明の塗布装置の一例を示す斜視図である。本実施形態の塗布装置10は、テーブル30aに保持された状態にあるガラス又はフィルム等の基材Wに液の塗布を行う装置である。塗布装置10は、基材W上にインクジェット方式により液を吐出し、線分又は矩形等の様々な形状の塗布膜(膜パターンともいう)を形成する。そのために、塗布装置10は、塗布ガントリ20と、ステージ30とを有する。
【0017】
ステージ30は、基材Wを吸着して保持するテーブル30aと、テーブル30aを搬送する搬送装置30bとを有する。ステージ30は、基材Wをエア浮上させて搬送する構成であってもよい。塗布ガントリ20は、テーブル30aに保持されている基材Wを上に跨ぐ構成を有する。
【0018】
塗布ガントリ20は、移動しながら、又は移動と停止を繰り返しながら、基材Wに対して液を塗布する移動ユニット11、ガイド装置12、及び、ケーブルキャリア13を有する。図2は、塗布ガントリ20の一部を説明するための斜視図である。移動ユニット11は、塗布ユニット16と、制御ユニット17とを有する。本実施形態の場合、移動ユニット11において、制御ユニット17は上側に位置する上部ユニットとなり、塗布ユニット16は下側に位置する下部ユニットとなる。塗布ユニット16と制御ユニット17とは、それぞれ独立して、ガイド装置12による案内方向に移動可能である。
【0019】
前記案内方向は、水平の直線に沿った方向であり、前後方向とも言う。案内方向に直交する水平の方向を、左右方向と定義する。案内方向と左右方向との双方に直交する方向を上下方向(鉛直方向)と定義する。ステージ30における基材Wの搬送方向は、左右方向となる。
【0020】
塗布ガントリ20と移動ユニット11との動作の例は、次のとおりである。
塗布ガントリ11が塗布位置に移動し、停止する。ステージ30が移動(往路移動)しながら、移動ユニット11により、基材Wに塗布が行われる。塗布ガントリ11が次の塗布位置に移動し、停止する。ステージ30が移動(復路移動)しながら、移動ユニット11により、基材Wに塗布が行われる。以上の動作が繰り返される。
【0021】
ガイド装置12は、移動ユニット11の移動を案内する装置である。ガイド装置12は、制御ユニット17を案内する第一ガイド51と、塗布ユニット16を案内する第二ガイド52とを有する。第一ガイド51及び第二ガイド52それぞれは、リニアガイドであるが、本実施形態の場合、第一ガイド51と第二ガイド52とは異なる仕様である。
【0022】
前記異なる仕様とは、支持対象となる塗布ユニット16及び制御ユニット17の支持形式が異なる場合の他に、支持形式が同じであっても支持の精度等級が異なる場合を含む。本実施形態の場合、第一ガイド51及び第二ガイド52それぞれは、支持形式が、支持対象を浮上させるフローティング形式であるが、精度等級については、第二ガイド52の方が、第一ガイド51よりも高い。これは、実質的に塗布動作を行うユニットは、塗布ユニット16であり、塗布ユニット16を支持する第二ガイド52は高い移動制御を要するためである。
なお、第一ガイド51と第二ガイド52とは、同じ仕様、同じ精度等級であってもよい。
【0023】
移動ユニット11に電力供給するため、塗布装置10と別に設置されている電源装置47から延びる複数の電力線14aが、移動ユニット11と接続される。
移動ユニット11の動作制御のため、塗布装置10と別に設置されている制御装置46から延びる複数の信号線14bが、移動ユニット11と接続される。
電力線14a及び信号線14bは、ケーブルキャリア13により保護される。
【0024】
ケーブルキャリア13は、複数のケーブルが束ねられて成るケーブル群14を支持する。ケーブル群14に、移動ユニット11に電力供給する複数の電力線14a、及び、動作制御のための複数の信号線14bが含まれる。
移動ユニット11は、ガイド装置12の案内方向に移動することから、ケーブルキャリア13は、ケーブル群14を支持する屈曲可能な構成であり、ケーブルダクトとも呼ばれる。本実施形態の場合、ケーブル群14に含まれるケーブル(電力線14a及び信号線14b)は多数となるため、塗布装置10は、2つのケーブルキャリア13を有する。
【0025】
〔移動ユニット11について〕
前記のとおり、移動ユニット11は、それぞれが独立して移動可能である制御ユニット17と塗布ユニット16とを有する。図3は、塗布ガントリ11の一部を案内方向に沿って見た概略説明図である。
制御ユニット17と塗布ユニット16とを電気的に接続する必要がある。そこで、移動ユニット11は、制御ユニット17と塗布ユニット16とを電気的に接続する複数のワイヤハーネス18を有する。
後に説明するが、上部の制御ユニット17にレギュレータ32が搭載されており、そのレギュレータ32は、下部の塗布ユニット16が有する塗布ヘッド21内の圧力を調整する。そこで、移動ユニット11は、制御ユニット17と塗布ユニット16とを繋ぐエア配管19を有する。エア配管19は、レギュレータ32と塗布ヘッド21との間のエア流路の一部を構成する。
【0026】
塗布ユニット16は、ガイド装置12の案内方向に移動可能である。塗布ユニット16は、第二ガイド52に沿ってエア浮上して移動する。そのために、塗布ユニット16は、リニアモータ28と、エア浮上機構29とを有する。エア浮上機構29は、複数のエアパッド29aを有する。エアパッド29aからエアが噴射されることで、塗布ユニット16は浮上し、リニアモータ28により、塗布ユニット16は案内方向の一方及び他方に移動する。
【0027】
塗布ユニット16は、液を吐出する塗布ヘッド21を搭載する。塗布ヘッド21は、吐出機構22及びタンク23を搭載する。吐出機構22は、図示しないが、液を吐出するノズル、ピエゾアクチュエータ、及び、ピエゾアクチュエータにより動作する駆動隔壁を有する。ピエゾアクチュエータは、制御装置46からの信号によって駆動し、駆動隔壁を動作させる。駆動隔壁の動作により、ノズルは液を押し出し、液が基材Wに塗布される。タンク23は、液を溜める。タンク23の液が吐出機構22に供給される。
【0028】
制御ユニット17は、塗布ユニット16と独立して、ガイド装置12の案内方向に移動可能である。制御ユニット17は、第一ガイド51に沿ってエア浮上して移動する。そのために、制御ユニット17は、リニアモータ38と、エア浮上機構39とを有する。エア浮上機構39は、複数のエアパッド39aを有する。エアパッド39aからエアが噴射されることで、制御ユニット17は浮上し、リニアモータ38により、制御ユニット17は案内方向の一方及び他方に移動する。
【0029】
制御ユニット17は、信号線及びスイッチを含む電装品31、及び、塗布ヘッド21内の圧力を調整するためのレギュレータ32を搭載する。電装品31の信号線及びスイッチは、制御ユニット17及び塗布ユニット16を動作制御するための通信制御に用いられる。電装品31は、制御装置46(図1参照)から延びる信号線14bと接続されている。
【0030】
塗布ユニット16は、インクジェット方式によるため、塗布ヘッド21の吐出機構22は、多くのノズル及び多くのピエゾアクチュエータを有する。これらピエゾアクチュエータは個々で制御されることから、制御ユニット17に、多くの信号線及びスイッチを含む電装品31が搭載される。
【0031】
レギュレータ32は、塗布ユニット16が有する塗布ヘッド21内の圧力を調整するための機器である。レギュレータ32は、前記ノズルそれぞれと繋がるキャビティの圧力を調整する。レギュレータ32が調整したエアの圧力により、塗布ヘッド21内(前記キャビティ)を負圧に保つ。塗布ユニット16は、インクジェット方式によるため、塗布ヘッド21は、多くの前記ノズル及び前記キャビティを有する。多数の前記ノズルによる液の吐出は個々で制御されることから、制御ユニット17に、多くのレギュレータ32が搭載される。
【0032】
制御ユニット17は、ケーブルキャリア13と機械的に接続されている。制御ユニット17の移動にあわせてケーブルキャリア13は折れ曲がり動作する。このため、制御ユニット17に、ケーブルキャリア13からの直接的な外力(反力)が及ぶ。これに対して、塗布ユニット16に、ケーブルキャリア13は機械的に接続されていないので、ケーブルキャリア13からの直接的な外力(反力)は及ばない。
【0033】
ワイヤハーネス18は、可撓性を有する。ワイヤハーネス18は、制御ユニット17と塗布ユニット16との間を、たるみを持たせて接続する(図3参照)。
前記のとおり、制御ユニット17に、多くの信号線及びスイッチを含む電装品31が搭載され、塗布ユニット16に、多くのピエゾアクチュエータを含む吐出機構22が搭載される。これら電装品31と吐出機構22とを電気的に接続するため、制御ユニット17と塗布ユニット16との間に、多くの可撓性を有するワイヤハーネス18が存在する。
【0034】
塗布動作を行う通常運転では、制御ユニット17と塗布ユニット16とは、同期するようにして一体的となって移動するように制御される。しかし、制御ユニット17は、塗布ユニット16に対して少しの遅れが生じるなど、僅かの移動量の差を許容する。
制御ユニット17と塗布ユニット16とに移動量の差が生じても、ワイヤハーネス18のたるみにより、実質的に塗布を行う塗布ユニット16に対して、制御ユニット17が与える影響を抑えることが可能となる。ワイヤハーネス18のたるみは、制御ユニット17と塗布ユニット16との移動量の差を許容する余長を有する。
【0035】
図4は、メンテナンス状態にある塗布ガントリ11の一部の説明図である。
各ワイヤハーネス18は、制御ユニット17及び塗布ユニット16の少なくとも一方に対して着脱可能として接続するコネクタ41を有する。コネクタ41によりワイヤハーネス18を、制御ユニット17又は塗布ユニット16から外すことで、図4に示すように、制御ユニット17と塗布ユニット16との位置を大きくずらすことが可能となる。これにより、移動ユニット11のメンテナンスが容易となる。
【0036】
本実施形態の場合、ワイヤハーネス18は、上部の制御ユニット17と着脱可能として接続するコネクタ41を有する。この構成により、ワイヤハーネス18が、制御ユニット17から垂れ下がらず、コネクタ41を外したワイヤハーネス18を、塗布ユニット16上に仮置きすればよい。
【0037】
エア配管19は、可撓性を有する。エア配管19は、制御ユニット17と塗布ユニット16との間をたるみを持たせて接続する(図3参照)。
前記のとおり、制御ユニット17に、多くのレギュレータ32が搭載され、塗布ユニット16に、多くのノズルを含む吐出機構22が搭載される。これらレギュレータ32と吐出機構22とを配管で接続するため、制御ユニット17と塗布ユニット16との間に、多くの可撓性を有するエア配管19が存在する。
【0038】
塗布動作を行う通常運転では、制御ユニット17と塗布ユニット16とは、同期するようにして一体的となって移動するように制御される。しかし、制御ユニット17は、塗布ユニット16に対して少しの遅れが生じるなど、僅かの移動量の差を許容する。
エア配管19のたるみにより、制御ユニット17と塗布ユニット16とに移動量の差が生じても、実質的に塗布を行う塗布ユニット16に対して、制御ユニット17が与える影響を抑えることが可能となる。エア配管19のたるみは、制御ユニット17と塗布ユニット16との移動量の差を許容する余長を有する。
【0039】
各エア配管19は、制御ユニット17及び塗布ユニット16の少なくとも一方に対して着脱可能として接続するコネクタ42を有する。コネクタ42によりエア配管19を、制御ユニット17又は塗布ユニット16から外すことで、図4に示すように、制御ユニット17と塗布ユニット16との位置を大きくずらすことが可能となる。これにより、移動ユニット11のメンテナンスが容易となる。
【0040】
本実施形態の場合、エア配管19は、制御ユニット17と着脱可能として接続するコネクタ42を有する。この構成の場合、エア配管19が、制御ユニット17から垂れ下がらず、コネクタ42を外したエア配管19を、塗布ユニット16上に仮置きすればよい。
【0041】
塗布動作を行う通常運転では、制御ユニット17と塗布ユニット16とは同期するようにして一体的となって移動する。しかし、例えば制御エラー等によって、両ユニットの移動量が大きく異なる可能性がある。この場合、ワイヤハーネス18及びエア配管19が損傷する可能性がある。
そこで、本実施形態の塗布装置10は、制御ユニット17と塗布ユニット16との移動量の差を制限する制限部材45を有する(図5参照)。
【0042】
図5は、制限部材45の一例を示す説明図である。図5に示す制限部材45は、ストッパ56と、一対の接触部材57とを有する。制御ユニット17の第一フレーム36と、塗布ユニット16の第二フレーム37とのうちの一方に、ストッパ56が固定されている。第一フレーム36と第二フレーム37とのうちの他方に、一対の接触部材57が固定されている。一対の接触部材57は、案内方向に間隔をあけて第二フレーム37に位置する。ストッパ56は、一対の接触部材57の間に位置する。
【0043】
制御ユニット17が、塗布ユニット16に対して案内方向の一方側(例えば、図5の右側)に位置ずれして、これらの移動量の差が大きくなると、ストッパ56は、一対の接触部材57の一方(例えば、図5の右)の接触部材57と接触する。
制御ユニット17が、塗布ユニット16に対して案内方向の他方側(例えば、図5の左側)に位置ずれして、これらの移動量の差が大きくなると、ストッパ56は、一対の接触部材57の他方(例えば、図5の左)の接触部材57と接触する。
ストッパ56が接触部材57に接触することで、制御ユニット17と塗布ユニット16との移動量の差が制限される。
【0044】
制限部材45は、図5に示す形態以外であってもよく、制御ユニット17と塗布ユニット16との移動量の差を制限する構成であればよい。例えば、制限部材45は、図示しないが、制御ユニット17と塗布ユニット16とを結ぶチェーン又はベルト等の連結部材であってもよい。塗布動作を行う通常運転では、チェーン等の連結部材はたるみを有する。移動量の差が制限値を超えると、チェーン等の連結部材が延びきった状態となり、その制限値以上、移動量に差を生じさせない。
【0045】
制限部材45により、制御ユニット17と塗布ユニット16との移動量の差が制限される。制限部材45は、制御ユニット17と塗布ユニット16との移動量の差を、ワイヤハーネス18及びエア配管19の前記たるみにより得られる余長未満に、制限する。このため、ワイヤハーネス18及びエア配管19等に負荷を与えないで済む。
【0046】
図2及び図3に示す移動ユニット11は、ワイヤハーネス18及びエア配管19それぞれが制御ユニット17の下部(下面)と塗布ユニット16の上部(上面)とを繋ぐ構成である。図6は、移動ユニット11の変形例を示す説明図である。図6に示す移動ユニット11は、ワイヤハーネス18及びエア配管19それぞれが制御ユニット17の側部(側面)と塗布ユニット16の側部(側面)とを繋ぐ構成である。
図6に示す形態では、図2及び図3に示す形態と同様、ワイヤハーネス18は、可撓性を有しており、制御ユニット17と塗布ユニット16との間をたるみを持たせて接続する。エア配管19は、可撓性を有しており、制御ユニット17と塗布ユニット16との間をたるみを持たせて接続する。ワイヤハーネス18は、上部の制御ユニット17と着脱可能として接続するコネクタ41を有する。エア配管19は、上部の制御ユニット17と着脱可能として接続するコネクタ42を有する。
【0047】
〔本実施形態の塗布装置10について〕
以上のように、前記各実施形態の塗布装置10は、基材Wに対して液を塗布する移動ユニット11と、移動ユニット11の移動を案内するガイド装置12と、ケーブルキャリア13とを有する。ケーブルキャリア13は、移動ユニット11に電力供給する電力線を含むケーブル群14を支持する。
【0048】
移動ユニット11は、ガイド装置12の案内方向に移動可能である塗布ユニット16と、塗布ユニット16と独立して前記案内方向に移動可能である制御ユニット17と、制御ユニット17と塗布ユニット16との間をたるみを持たせて接続する可撓性ワイヤハーネス18とを有する。塗布ユニット16は、液を吐出する塗布ヘッド21を搭載する。制御ユニット17は、ケーブルキャリア13と接続されている。
【0049】
前記構成を有する塗布装置10によれば、移動ユニット11の搭載機器は、制御ユニット17と塗布ユニット16とに分配され、塗布ユニット16の軽量化が可能となる。このため、塗布ユニット16の位置制御の精度確保及び移動速度の向上が可能となる。
基材Wに対して液を塗布する際、塗布ヘッド21を搭載する塗布ユニット16は、ケーブルキャリア13が接続された制御ユニット17と独立して、移動する。このため、実質的に塗布を行う塗布ユニット16に対して、ケーブルキャリア13が与える影響を抑えることが可能となる。
ワイヤハーネス18のたるみにより、制御ユニット17と塗布ユニット16とに移動量の差が生じても、実質的に塗布を行う塗布ユニット16に対して、制御ユニット17が与える影響を抑えることが可能となる。
以上より、移動ユニット11の移動制御を高精度に行うことが可能となる。
【0050】
本実施形態の場合、制御ユニット17は、電装品31、及び、塗布ヘッド21内の圧力を調整するためのレギュレータ32を搭載する。このぶん、移動制御に高い精度が必要となる塗布ユニット16の軽量化が可能となる。
移動ユニット11は、制御ユニット17と塗布ユニット16との間をたるみを持たせて接続する可撓性エア配管19を有する。エア配管19は、レギュレータ32と塗布ヘッド21との間のエア流路の一部を構成する。
エア配管19のたるみにより、制御ユニット17と塗布ユニット16とに移動量の差が生じても、実質的に塗布を行う塗布ユニット16に対して、制御ユニット17が与える影響を抑えることが可能となる。
【0051】
塗布ユニット16は、移動制御に高い精度が必要となるのに対して、制御ユニット17は、塗布ユニット16と比較して、低い精度で済む。そこで、本実施形態の場合、ガイド装置12は、制御ユニット17を案内する第一ガイド51と、塗布ユニット16を案内する第二ガイド52とを有し、第一ガイド51と第二ガイド52とは異なる仕様である。異なる仕様として、第一ガイド51の精度等級を第二ガイド52よりも低くした場合、第一ガイド51に要するコストを低減することが可能となる。
【0052】
〔その他〕
本実施形態の場合、塗布装置10は、2つのケーブルキャリア13を有するが、1つであってもよい。ガイド装置12は、図示した形態以外であってもよい。
【0053】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0054】
10 塗布装置
11 移動ユニット
12 ガイド装置
13 ケーブルキャリア
14 ケーブル群
14a 電力線
14b 信号線
16 塗布ユニット
17 制御ユニット
18 ワイヤハーネス
19 エア配管
21 塗布ヘッド
31 電装品
32 レギュレータ
41 コネクタ
45 制限部材
51 第一ガイド
52 第二ガイド
W 基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6