(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131033
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】リニア振動モータ
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20240920BHJP
H02K 33/16 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B06B1/04 S
H02K33/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041049
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 良行
【テーマコード(参考)】
5D107
5H633
【Fターム(参考)】
5D107BB08
5D107CC09
5D107CC10
5H633BB08
5H633GG02
5H633GG05
5H633GG06
5H633GG09
5H633GG10
5H633GG11
5H633GG12
5H633GG17
5H633HH03
5H633HH09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】引出配線からコイルへの電力の供給不良の発生を抑制したリニア振動モータを提供する。
【解決手段】リニア振動モータは、コイル41A,41Bが接続される端子部70と、端子部70から外部まで引き出される引出配線90と、を備える。固定子30は、コイルを保持する保持溝部を有するコイルボビン33を含む。コイルボビン33は、筒状の胴部と、胴部の径方向に突出して設けられ保持溝部の側面を構成する複数の壁部40と、を有する。端子部70は、複数の壁部40のうちの一つの外周面に設けられている。複数の壁部40には、引出配線90を収容する複数の収容溝100A,100B,100C,100Dが設けられる。隣接する壁部に設けられる収容溝は、コイルボビンの外周方向で互いに異なる位置に配置されている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを有する固定子と、マグネットを有し前記固定子の内側で中心軸方向に往復運動する可動子と、を備えるリニア振動モータであって、
前記コイルが接続される端子部と、前記端子部から外部まで引き出される引出配線と、を備え、
前記固定子は、前記コイルを保持する保持溝部を有するコイルボビンを含み、
前記コイルボビンは、筒状の胴部と、前記胴部から当該胴部の径方向に突出して設けられ前記保持溝部の側面を構成する複数の壁部と、を有し、
前記端子部は、前記複数の壁部のうちの一つの外周面に設けられており、
前記複数の壁部には、前記引出配線を収容する複数の収容溝が設けられ、
隣接する前記壁部に設けられる前記収容溝は、前記コイルボビンの外周方向で互いに異なる位置に配置されている、
リニア振動モータ。
【請求項2】
請求項1に記載のリニア振動モータにおいて、
前記保持溝部は、複数の前記コイルがそれぞれ保持される複数のコイル溝部を含み、
前記壁部は、前記胴部の両端部に設けられる一対のフランジ壁部と、一対の前記フランジ壁部間に設けられる中間壁部と、を含み、
前記端子部が、一方の前記フランジ壁部の外周面に設けられ、
前記収容溝が、他方の前記フランジ壁部および前記中間壁部の外周面にそれぞれ設けられている、
リニア振動モータ。
【請求項3】
請求項1に記載のリニア振動モータにおいて、
前記端子部に隣接する前記収容溝は、前記コイルボビンの外周方向で、前記端子部と前記引出配線との接続部と同一位置に配置されている、
リニア振動モータ。
【請求項4】
請求項1に記載のリニア振動モータにおいて、
前記引出配線は、一対のリード線で構成され、
前記リード線の一方が収容される前記複数の収容溝が、前記コイルボビンの外周方向で互いに異なる位置に配置されている、
リニア振動モータ。
【請求項5】
請求項1に記載のリニア振動モータにおいて、
前記固定子は、前記コイルボビンが内包されるケースを含み、
前記端子部は、前記コイルボビンの前記壁部の外周面に設けられた段差部内に配置されて前記コイルボビンの外周面よりも内側に位置し、
前記端子部が、前記ケースによって覆われている、
リニア振動モータ。
【請求項6】
請求項5に記載のリニア振動モータにおいて、
前記固定子は、前記コイルボビンに対して前記ケースとは反対側に配置されて前記ケースに接着剤によって接着されるカバーを含み、
前記カバーの前記ケースに対向する対向面には、前記接着剤が溜まる接着溝部が設けられている、
リニア振動モータ。
【請求項7】
請求項6に記載のリニア振動モータにおいて、
前記ケースおよび前記カバーの材料は、樹脂材料である、
リニア振動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リニア振動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器等の振動発生装置として用いられるリニア振動モータが知られている。リニア振動モータは、振動アクチュエータとも呼ばれる。特許文献1には、コイルを有する固定体と、マグネットを有する可動体と、を備える振動アクチュエータが記載されている。振動アクチュエータのコイルは、コイルボビン部に巻回され、コイルの巻線の端部は、コイルボビン部の外周部に設けられる端子絡げ部に接続される。また、コイルに電力を供給するためのケーブルが、コイルボビン部の周方向に沿って設けられ、ケーブルの一端が端子絡げ部に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リニア振動モータにおいては、コイルに電力を供給するための引出配線に、引張方向の力が加わることが想定される。このため、リニア振動モータには、引出配線に引張方向の力が加わることに起因してコイルへの電力の供給不良が生じないように、何らかの対策が施されていることが望ましい。
【0005】
本開示の目的は、引出配線からコイルへの電力の供給不良の発生を抑制するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のリニア振動モータは、コイルを有する固定子と、マグネットを有し前記固定子の内側で中心軸方向に往復運動する可動子と、を備えるものである。リニア振動モータは、前記コイルが接続される端子部と、前記端子部から外部まで引き出される引出配線と、を備える。前記固定子は、前記コイルを保持する保持溝部を有するコイルボビンを含む。前記コイルボビンは、筒状の胴部と、前記胴部から当該胴部の径方向に突出して設けられ前記保持溝部の側面を構成する複数の壁部と、を有する。前記端子部は、前記複数の壁部のうちの一つの外周面に設けられている。前記複数の壁部には、前記引出配線が収容される複数の収容溝が設けられる。隣接する前記壁部に設けられる前記収容溝は、前記コイルボビンの外周方向で互いに異なる位置に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示のリニア振動モータによれば、引出配線に引張方向の力が加わった場合でも、引出配線からコイルへの電力の供給不良の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るリニア振動モータの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るリニア振動モータの断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る可動子の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る固定子の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る固定子の断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係るカバーの上面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係るコイルボビンの正面図である。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る端子部および引出配線を説明する図である。
【
図9】
図9は、一実施形態に係るコイルボビンの断面図である。
【
図10】
図10は、変形例1に係る収容溝および引出配線の構成を説明する図である。
【
図11】
図11は、変形例2に係る収容溝および引出配線の構成を説明する図である。
【
図12】
図12は、変形例3に係る収容溝および引出配線の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態を説明するために参照する全ての図面において、同一または実質的に同一の構成や要素には同一の符号を用いる。また、一度説明した構成や要素については、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0010】
<リニア振動モータの概要>
図1は、一実施形態に係るリニア振動モータの分解斜視図である。
図2は、一実施形態に係るリニア振動モータの断面図である。なお、
図2は、
図1中に示されるA方向に見たリニア振動モータの断面図である。
【0011】
一実施形態に係るリニア振動モータは、例えば、通信機器、入力機器、VR機器等に搭載される。これらの機器に搭載されたリニア振動モータは、例えば、使用感や臨場感等を与えるための振動を発生させる振動発生装置として機能する。なお、リニア振動モータの用途は、特に限定されるものではない。
【0012】
図1および
図2に示されるように、一実施形態に係るリニア振動モータ1は、可動子10と、固定子30と、一対の弾性体50,51と、を備えている。可動子10は、固定子30の内側に収容され、弾性体50,51を介して固定子30に固定されている。リニア振動モータ1は、固定子30の内側で中心軸Cの方向に可動子10を往復動させることよって、振動を発生させる。
【0013】
以下の説明では、中心軸Cの方向を「中心軸方向」、「上下方向」または「振動方向」と呼ぶ場合がある。もっとも、かかる呼称は説明の便宜上の呼称であり、中心軸Cの方向を上下方向や鉛直方向に限定するものではない。例えば、リニア振動モータ1が何らかの機器に搭載されたときに、中心軸Cの方向が水平方向になることもある。
【0014】
<可動子>
図3は、可動子の一例を示す分解斜視図である。
図1から
図3に示されるように、可動子10は、マグネット11と、一対の錘部12,13と、一対のポールピース14,15と、を備えている。マグネット11は、中心軸方向において、可動子10の中央部に配置される。一対の錘部12,13と、一対のポールピース14,15とは、中心軸方向において、マグネット11の両側にそれぞれ配置される。より特定的には、錘部12およびポールピース14が、中心軸方向におけるマグネット11の一方側に配置され、錘部13およびポールピース15が、マグネット11の他方側に配置されている。
【0015】
言い換えれば、錘部12,13は、中心軸方向において可動子10の両端に配置され、ポールピース14,15が、マグネット11と錘部12,13との間に配置されている。より特定的には、錘部12とマグネット11との間にポールピース14が配置され、錘部13とマグネット11との間にポールピース15が配置されている。
【0016】
別の見方をすると、可動子10を構成するマグネット11と、一対の錘部12,13と、一対のポールピース14,15とは、中心軸方向(
図3中上下方向)で、錘部12、ポールピース14、マグネット11、ポールピース15、錘部13の順で一列に配置されて一体化されている。
【0017】
マグネット11は、円盤型あるいは円柱型の永久磁石である。より特定的には、マグネット11は、中心軸方向の一方側がN極に着磁され、中心軸方向の他方側がS極に着磁された永久磁石である。
【0018】
錘部12,13は、例えば、金属合金等により所定の重さとなるように形成されている。錘部12は、ポールピース14とは反対側の第1面12aと、ポールピース14に対向する第2面12bと、を備える。言い換えれば、錘部12は、弾性体50に対向する第1面12aと、ポールピース14の第1面14aに対向する第2面12bと、を備える。
【0019】
錘部13は、ポールピース15とは反対側の第1面13aと、ポールピース15に対向する第2面13bと、を備える。言い換えれば、錘部13は、弾性体51に対向する第1面13aと、ポールピース15の第1面15aに対向する第2面13bと、を備える。
【0020】
また、錘部12,13は、弾性体50,51に固定される円筒形の固定部16,17をそれぞれ備える。より特定的には、固定部16は、錘部12の第1面12aから弾性体50に向かって突出して設けられる。また、固定部16は、錘部12の径方向中央部に錘部12の一部として一体的に設けられている。錘部12は、この固定部16によって弾性体50の径方向中央部に固定されている。なお、径方向とは、中心軸方向に対して直交する方向をいう。
【0021】
同様に、固定部17は、錘部13の第1面13aから弾性体51に向かって突出して設けられる。また固定部17は、錘部13の径方向中央部に、錘部13の一部として一体的に設けられる。錘部13は、この固定部17によって弾性体51の径方向中央部に固定される。
【0022】
ポールピース14,15は、磁性材料によって外形が円形の円盤型あるいは円柱型に形成され、マグネット11とは磁力により固定されている。より特定的には、ポールピース14,15は、マグネット11と略同一外径の円環状に形成されている。言い換えれば、ポールピース14の径方向中央部には、ポールピース14を厚さ方向に貫通する貫通孔18が形成されている。同様に、ポールピース15の径方向中央部には、ポールピース15を厚さ方向に貫通する貫通孔19が形成されている。
【0023】
また、ポールピース14に固定される錘部12は、第2面12bの径方向中央部に、第2面12bからポールピース14に向かって突出する円柱状の凸部20を有する。錘部12は、この凸部20がポールピース14の貫通孔18に係合された状態で、ポールピース14に接着固定されている。同様に、錘部13は、第2面13bの径方向中央部に、第2面13bからポールピース15に向かって突出する円柱状の凸部21を有する。錘部13は、この凸部21がポールピース15の貫通孔19に係合された状態で、ポールピース15に接着固定されている。なお、凸部20,21は、貫通孔18,19の内径よりも若干小さい外径で形成されている。
【0024】
<弾性体>
図1および
図2に示されるように、一対の弾性体50,51は、外形が円形の板金であり、所定形状に打ち抜かれている。別の見方をすると、弾性体50,51は、所定形状を有する外形が略円形の板ばねである。上述のように、弾性体50の径方向中央部には、可動子10を構成する錘部12の固定部16が固定される。また弾性体51の径方向中央部には、可動子10を構成する錘部13の固定部17が固定される。
【0025】
また、これら弾性体50,51は、後述するように、その周縁部において固定子30に固定されている。結果的に、可動子10は、これら弾性体50,51を介して固定子30に固定されている。
【0026】
<固定子>
図4は、一実施形態に係る固定子の分解斜視図であり、
図5は、一実施形態に係る固定子の断面図である。
図6は、一実施形態に係るカバーの上面図である。
図7は、一実施形態に係るコイルボビンの正面図である。
【0027】
図4および
図5に示されるように、固定子30は、ケース31と、カバー32と、これらケース31およびカバー32内に配置されるコイルボビン33と、を備え、コイルボビン33の内側に、上述した可動子10を往復動可能に収容する。
【0028】
<ケースおよびカバー>
ケース31は、非磁性材料、例えば、樹脂材料で形成された有底筒形の部材である。より特定的には、ケース31は、
図4および
図5に示されるように、円筒形の周壁部31aと、中心軸方向における周壁部31aの一端側に設けられる上壁部31bと、周壁部31aの他端側に設けられる開口部31cと、を有する。円形の上壁部31bの中央部には、上壁部31bを貫通する露出口31dが形成されている。
【0029】
なお、上壁部31bの周縁部には、上壁部31bの他の部分よりも厚さの厚い厚壁部31eが設けられている。一例として、上壁部31bの周縁部には、一対の切欠部31fが設けられ、これら一対の切欠部31fを挟んで2つの厚壁部31eが設けられている。すなわち上壁部31bの周縁部には、中心軸方向に見て円弧状を有する2つの厚壁部31eが形成されている。切欠部31fには、後述するコイルボビン33の突出部43aがはめ込まれる。
【0030】
カバー32は、ケース31の開口部31cを塞ぐ部材であり、ケース31と同様の樹脂材料によって円盤形に形成されている。より特定的には、カバー32は、
図4、
図5および
図7に示されるように、円形の蓋部34と、蓋部34の周囲に一体成形された縁部35と、を有する。円形の蓋部34の中央部には、蓋部34を貫通する露出口34aが形成されている。縁部35は、蓋部34の周縁部からケース31側に突出し、蓋部34の周囲に円環状に設けられている。
【0031】
この縁部35には、後述するコイルボビン33の突出部44aがはめ込まれる一対の切欠部35aが設けられている。これらの切欠部35aは、蓋部34の中央部に設けられた露出口34aを挟んで相対向する位置に設けられている。別の見方をすれば、蓋部34の周囲には、切欠部35aを挟んで円弧状の二つの縁部35が設けられている。
【0032】
カバー32は、主に、この縁部35の外周面においてケース31と接着固定されている。すなわち、縁部35の外周面は、ケース31に対向する対向面であり、ケース31に対して接着されるカバー32の接着面となっている。そして、縁部35の外周面には、ケース31とカバー32とを接着するための接着剤が流れ込む複数(例えば、4つ)の接着溝部35bが設けられている。各接着溝部35bは、中心軸方向で縁部35の全体に亘って連続して設けられている。また、これら複数の接着溝部35bは、縁部35の円周方向において一定間隔で配置されている。言い換えれば、複数の接着溝部35bは、蓋部34の半径方向において他の接着溝部35bと相対向する位置に配置されている。
【0033】
このように、カバー32を構成する縁部35に複数の接着溝部35bが設けられていることで、ケース31とカバー32とがより強固に接着される。ケース31とカバー32とを接着するための接着剤が、これらの接着溝部35b内にも塗布されて接着溝部35b内に溜まっていることで、ケース31とカバー32との接着面積が増加し、ケース31とカバー32との接着強度が高められる。
【0034】
なお、縁部35には、後述する引出配線90を外部に引き出すための引出溝部35cが設けられている。引出溝部35cは、接着溝部35bと同様、縁部35の外周面に開口して中心軸方向に亘って連続して設けられている。一実施形態として、2つの引出溝部35cが、蓋部34の半径方向において相対向する位置に設けられている。言い換えれば、2つの引出溝部35cは、露出口34aを挟んで相対向する位置に設けられている。引出配線90は、一方の引出溝部35cを介してリニア振動モータ1の外部に引き出される。
【0035】
<コイルボビン>
コイルボビン33は、
図4および
図7に示すように、円筒状の胴部39と、胴部39から径方向外側に突出する複数の円環状の壁部40と、を有する。胴部39と壁部40とは、合成樹脂などの絶縁材料によって一体成形されている。また、コイルボビン33は、これら胴部39と壁部40で形成され、コイル41を保持する空間である保持溝部42を有する。
【0036】
壁部40は、ケース31内に収容できる大きさで形成されている。具体的には、壁部40は、ケース31の内径と同程度の大きさで形成されている。壁部40は、保持溝部42の側面を構成し、一例として、胴部39の両端部に設けられる一対のフランジ壁部43,44と、これらフランジ壁部43,44の間に設けられる中間壁部45と、を含む。
【0037】
別の見方をすれば、保持溝部42は、フランジ壁部43と中間壁部45とで形成されるコイル溝部46と、フランジ壁部44と中間壁部45とで形成されるコイル溝部47と、を含む。すなわち、コイルボビン33は、中心軸方向で並設される2つのコイル溝部46,47を含む保持溝部42を外周部に備える。コイル溝部46,47は、胴部39の全周に亘って形成されている。
【0038】
これら2つのコイル溝部46,47は、2つのコイル41A,41Bをそれぞれ保持する(
図1等参照)。これら2つのコイル41A,41Bは、コイル溝部46,47に巻かれた導線によって形成されている。より特定的には、コイル41Aは、フランジ壁部43と中間壁部45との間の胴部39に巻かれた導線によって形成されている。一方、コイル41Bは、フランジ壁部44と中間壁部45との間の胴部39に巻かれた導線によって形成されている。なお、2つのコイル41A,41Bを総称してコイル41と呼ぶ場合がある。
【0039】
一例として、これら2つのコイル41A,41Bは、コイル溝部46,47に巻かれる一本の導線によって形成されている。ただし、コイル溝部46の導線の巻方向と、コイル溝部47の導線の巻方向とは、逆方向となっている。つまりコイル溝部46が保持するコイル41Aの巻方向と、コイル溝部47が保持するコイル41Bの巻方向とは、逆方向となっている。
【0040】
なお、コイルボビン33は、ケース31の切欠部31fにはめ込まれる突出部43aを有する。突出部43aは、フランジ壁部43から中心軸方向に突出して設けられる。また、コイルボビン33は、カバー32の切欠部35aにはめ込まれる突出部44aを有する。突出部44aは、フランジ壁部44から中心軸方向に突出して設けられる。
【0041】
<固定子の組み立て>
固定子30を構成する各部材は、それぞれ位置決めされた状態で組み立てられている。具体的には、コイルボビン33がケース31内に収容されると、コイルボビン33の突出部43aがケース31の切欠部31fにはめ込まれた状態となる。さらに、カバー32がケース31内に収容されると、コイルボビン33の突出部44aがカバー32の切欠部35aにはめ込まれた状態となる。カバー32は、この状態でケース31に接着固定される。これにより、固定子30を構成するケース31と、コイルボビン33と、カバー32とは、所定位置に位置決めされて一体化される。
【0042】
なお、このように固定子30を構成する各部材が一体化される際、可動子10が固定された弾性体50,51も固定子30に固定される。より特定的には、
図5に示されるように、弾性体50の周縁部が、ケース31の厚壁部31eと、コイルボビン33のフランジ壁部43とによって挟持される。また、弾性体51の周縁部が、コイルボビン33のフランジ壁部44とカバー32とによって挟持される。結果として、可動子10は、これら弾性体50,51を介して固定子30に固定される(
図2参照)。
【0043】
<リニア振動モータの動作>
ここで、リニア振動モータ1の動作について簡単に説明する。固定子30が保持するコイル41に電流(駆動電流)が流れていないとき、可動子10は、中心軸方向(上下方向)において、ケース31の中央部(初期位置)に位置している。
【0044】
固定子30が備える各コイル41A,41Bに駆動電流が流れると、駆動電流が可動子10を構成するマグネット11の磁界と作用する。これにより、各コイル41A,41Bには、弾性体50に向かう方向(以下、上方向という)、または弾性体51に向かう方向(以下、下方向という)の電磁力(ローレンツ力ともいう)が発生する。
【0045】
上述のように一実施形態として、コイル溝部46が保持するコイル41Aの巻方向(導線の巻方向)と、コイル溝部47が保持するコイル41Bの巻方向とは、逆方向となっている。このため、コイル41に電力が供給される際、各コイル41A,41Bに流れる駆動電流の向きは、逆向きとなる。その結果、各コイル41A,41Bには、上方向または下方向の同一方向の電磁力が発生する。
【0046】
コイル41を備える固定子30は固定されて変位しないため、コイル41A,41Bに電磁力が発生すると、コイル41A,41Bの内側に配置されている可動子10には、電磁力の反作用として上方向または下方向の推力が作用する。そして、弾性体50,51がたわみ変形することで、可動子10は上方向または下方向に変位する。したがって、コイル41に流れる駆動電流の向きが交互に変化すると、可動子10は、上方向、下方向に交互に変位する。その結果、可動子10は、固定子30を構成するコイルボビン33の内側で連続的に変位して、振動が発生する。
【0047】
<端子部および引出配線>
図8は、一実施形態に係る端子部および引出配線を説明する図であり、端子部および引出配線が取り付けられた状態を示すコイルボビンの正面図である。
図9は、一実施形態に係るコイルボビンの断面図であり、
図8のA-A´線に対応する断面図である。
【0048】
図1および
図8に示されるように、リニア振動モータ1は、固定子30を構成するコイルボビン33の外周部に保持されたコイル(導線)41に接続される端子部70と、この端子部70から外部に引き出される引出配線90と、を備えている。すなわち、リニア振動モータ1では、これら引出配線90および端子部70を介して各コイル41A,41Bに電力が供給される。
【0049】
端子部70は、例えば、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)等で形成され、コイルボビン33の壁部40の外周面に配置されている。一例として、端子部70は、一方のフランジ壁部43の外周面に配置されている。フランジ壁部43の外周面には、その一部を窪ませた段差部48が設けられている。端子部70は、この段差部48に設けられている。より特定的には、端子部70は、
図9に示されるように、段差部48内に配置され、コイルボビン33の外周面(図中に二点鎖線で示す)よりも内側に位置している。なお、段差部48は、中心軸方向において、フランジ壁部43の全体に亘って設けられている。
【0050】
また、段差部48内には、一対の突起部49が設けられている。上述のようにコイル41は一本の導線によって形成されており、コイル41の両端部は、一対の突起部49にそれぞれ固定されて、端子部70と電気的に接続されている。
【0051】
これらの突起部49は、端子部70を挟んで段差部48の両端部付近に配置され、コイルボビン33の径方向に突出して設けられている。突起部49は、例えば、合成樹脂等によりコイルボビン33と一体的に形成されている。なお、突起部49も、端子部70と同様に、段差部48内に設けられている。すなわち突起部49の先端は、コイルボビン33の外周面と同一平面であるか、あるいはそれよりも内側に位置している。
【0052】
このため、コイルボビン33は、端子部70が取り付けられた状態であっても、ケース31に内包される。すなわち、リニア振動モータ1において、コイルボビン33に取り付けられた端子部70は、ケース31によって覆われている。したがって、端子部70に外力が加わることが抑えられて、例えば、端子部70と引出配線90との接続不良の発生が抑制される。その結果、引出配線90からコイル41への電力の供給不良の発生が抑制される。
【0053】
<収容溝について>
また、コイルボビン33が備える複数の壁部40には、端子部70から引き出される引出配線90が収容される複数の収容溝100が設けられている(
図4、
図7等参照)。一例として、複数の収容溝100は、コイルボビン33のフランジ壁部44および中間壁部45に設けられている。
【0054】
引出配線90は、例えば、一対のリード線91,92で構成される。複数の収容溝100は、これらの各リード線91,92に対応して設けられる。具体的には、中間壁部45には、リード線91に対応する収容溝100Aと、リード線92に対応する収容溝100Bと、が設けられる。また、フランジ壁部44には、リード線91に対応する収容溝100Cと、リード線92に対応する収容溝100Dと、が設けられる。なお、複数の収容溝100A~100Dを総称して収容溝100と呼ぶ。
【0055】
収容溝100の大きさおよび形状は特に限定されず、リード線91,92を収容できる大きさおよび形状であればよい。言い換えれば、収容溝100は、収容溝100にリード線91,92が収容された状態で、コイルボビン33をケース31に挿入できる大きさおよび形状で形成されていればよい。
【0056】
そして、リード線91に対応して中間壁部45に設けられる収容溝100Aと、リード線91に対応してフランジ壁部44に設けられる収容溝100Cとは、例えば、
図8に示されるように、コイルボビン33の外周方向(中心軸方向と直交する方向とも言える)で互いに異なる位置に配置されている。言い換えれば、隣接する壁部40に設けられる2つの収容溝100A,100Cは、コイルボビン33の外周方向(以下、「ボビン外周方向」ともいう)で互いに異なる位置に配置されている。
【0057】
より特定的には、中間壁部45に設けられる収容溝100Aと、フランジ壁部44に設けられる収容溝100Cとは、平面視において所定間隔S1を空けて配置されている。別の見方をすれば、収容溝100A,100Cは、収容溝100Aの中心線CL1と、収容溝100Cの中心線CL3とが、平面視において重ならないように配置されている。
【0058】
同様に、リード線92に対応する収容溝100B,100Dは、ボビン外周方向で互いに異なる位置に配置されている。より特定的には、中間壁部45に設けられる収容溝100Bと、フランジ壁部44に設けられる収容溝100Dとは、平面視において所定間隔S2を空けて配置されている。別の見方をすれば、収容溝100B,100Dは、収容溝100Bの中心線CL2と、収容溝100Dの中心線CL4とが、平面視において重ならないように配置されている。なお、間隔S1と間隔S2とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0059】
そして、リード線91,92は、所定の各収容溝100内に収容されて、端子部70からリニア振動モータ1の外部まで引き出される。一例として、
図8に示されるように、リード線91は、端子部70の接続部71からリニア振動モータ1の中心軸方向に沿って直線的に設けられ、まずは中間壁部45に設けられた収容溝100Aに収容される。言い換えれば、端子部70に隣接する収容溝100Aは、ボビン外周方向で、端子部70とリード線91との接続部71と同一位置に配置されている。
【0060】
このリード線91は、収容溝100Aの外側(端子部70とは反対側)で屈曲され、収容溝100Cの中心線CL3と交差する位置まで、中間壁部45に沿って設けられる。そしてリード線91は、中心線CL3と交差する位置で屈曲されて中心軸方向に沿って設けられ、収容溝100Cに収容される。また、リード線91は、収容溝100Cから中心軸方向に沿ってそのまま直線的に設けられ、カバー32の引出溝部35cを通ってリニア振動モータ1の外部まで引き出される。
【0061】
同様に、リード線92は、端子部70の接続部72から中心軸方向に沿って直線的に設けられ、収容溝100Bに収容される。言い換えれば、端子部70に隣接する収容溝100Bは、ボビン外周方向で、端子部70とリード線92との接続部72と同一位置に配置されている。
【0062】
リード線92は、収容溝100Bの外側(端子部70とは反対側)で屈曲され、収容溝100Dの中心線CL4と交差する位置まで、中間壁部45に沿って設けられる。そして、リード線92は、中心線CL4と交差する位置で屈曲されて中心軸方向に沿って設けられ、収容溝100Dに収容される。また、リード線92は、収容溝100Dから中心軸方向に沿ってそのまま直線的に設けられ、カバー32の引出溝部35cを通ってリニア振動モータ1の外部まで引き出される。
【0063】
以上説明したように、一実施形態に係るリニア振動モータ1では、コイルボビン33の壁部40に、引出配線90が収容される複数の収容溝100が設けられ、これら複数の収容溝100がボビン外周方向で互いに異なる位置に配置されている。
【0064】
別の見方をすれば、端子部70から外部まで引き出される引出配線90(リード線91,92)は、上述のように複数の収容溝100に収容されることで、これら収容溝100の間に、引出方向(この例では、中心軸方向)とは交差する方向に延びる交差部90aを備える。
【0065】
これにより、引出配線90が引っ張られた際、その引張力が端子部70と引出配線90との接続部71,72に集中的に加わることが抑制される。ボビン外周方向で互いに異なる位置に配置された複数の収容溝100に引出配線90が収容されていることで、引張力が加わる箇所は、引出配線90の複数個所に分散される。したがって、引出配線90(例えば、リード線91,92)が引っ張られた場合でも、引出配線90が端子部70から外れることが抑制される。すなわち、引出配線90と端子部70との接続不良の発生が抑制される。ひいては、コイル41への給電不良の発生が抑制される。
【0066】
さらに、一実施形態に係るリニア振動モータ1では、上述のように引出配線90がコイルボビン33に設けられた複数の収容溝100に収容されており、端子部70はコイルボビン33の段差部48内に設けられている。すなわち、引出配線90および端子部70は、コイルボビン33の外周面よりも内側に配置されている。このため、コイルボビン33は、端子部70および引出配線90が取り付けられた状態でケース31に内包される。
【0067】
これにより、端子部70および引出配線90に対する衝撃が抑制される。したがって、衝撃に伴う端子部70等の破損が抑制され、リニア振動モータ1の耐久性が向上する。さらに、端子部70を接着剤等によって保護する必要性が低くなるため、リニア振動モータ1の小型化が実現される。
【0068】
また、一実施形態に係るリニア振動モータ1では、固定子30を構成するケース31とカバー32とが接着剤によって固定されるが、上述のようにカバー32には、接着剤が流入する複数の接着溝部35bが設けられている。
【0069】
これにより、カバー32のケース31との接着面積が増加し、樹脂材料によって形成されるケース31とカバー32との接着強度が向上する。さらに、カバー32に接着溝部35bが設けられていることで、カバー32は、ケース31だけでなく、コイルボビン33のフランジ壁部44に対しても接着固定される。したがって、固定子30全体としての強度も高められる。
【0070】
なお、上述の実施形態では、リード線91が収容される収容溝100A,100Cと、リード線92が収容される収容溝100B,100Dとのそれぞれが、ボビン外周方向で異なる位置に設けられた構成を例示したが、収容溝100の配置はこれに限定されるものではない。リード線91が収容される収容溝100A,100C、またはリード線92が収容される収容溝100B,100Dの一方が、ボビン外周方向で互いに異なる位置に設けられていてもよい。言い換えれば、リード線91が収容される収容溝100A,100C、またはリード線92が収容される収容溝100B,100Dの一方は、ボビン外周方向で同一位置に設けられていてもよい。
【0071】
別の見方をすれば、上述の実施形態では、引出配線90を構成するリード線91,92のそれぞれが、交差部90aを備える構成を説明したが、引出配線90を構成するリード線91,92は、いずれか一方のみが交差部90aを備えていてもよい。つまり、リード線91,92の一方は、端子部70から外部まで中心軸方向に沿って直線的に引き出されていてもよい。
【0072】
<変形例1>
図10は、変形例1に係る収容溝および引出配線の構成を説明する図であり、コイルボビンの正面図である。
【0073】
上述の実施形態では、端子部70の接続部71,72は、ボビン外周方向における端子部70の両端部付近にそれぞれ設けられている。また、リード線91,92は、ボビン外周方向において離間された状態を維持して、互いに異なる経路でリニア振動モータ1の外部まで引き出されている。言い換えれば、収容溝100A,100Bが、互いに離間して中間壁部45に設けられ、かつ収容溝100C,100Dが互いに離間してフランジ壁部44に設けられ、収容溝100A,100Bの間隔が、収容溝100C,100Dの間隔とは異なっている。ただし、リニア振動モータ1の構成は、これに限定されるものではない。
【0074】
図10に示される例では、端子部70の接続部71,72が互いに近接して設けられ、リード線91,92が、互いに近接した状態のまま実質的に同一経路で、リニア振動モータ1の外部まで引き出されている。言い換えれば、固定子30を構成するコイルボビン33の中間壁部45に、収容溝100A,100Bが互いに近接して設けられ、かつ収容溝100C,100Dが互いに近接してフランジ壁部44に設けられ、収容溝100A,100Bの間隔が、収容溝100C,100Dの間隔とほぼ一致している。
【0075】
このような構成としても、隣接する壁部40に設けられる収容溝100がボビン外周方向で互いに異なる位置に配置されていることで、引出配線90と端子部70との接続不良の発生が抑制される。ひいては、コイル41(41A,41B)への給電不良の発生が抑制される。
【0076】
<変形例2>
図11は、変形例2に係る収容溝および引出配線の構成を説明する図であり、コイルボビンの正面図である。
【0077】
上述の実施形態では、引出配線90が一対のリード線91,92で構成され、各リード線91,92が、例えば、フレキシブル基板(FPC)で形成される端子部70と接続部71,72において接続された構成を例示した。ただし、リニア振動モータ1の構成は、これに限定されるものではない。
【0078】
図11に示される例では、引出配線90Aは、フレキシブル基板(FPC)によって端子部70と一体的に形成されている。また、引出配線90Aが収容される収容溝101Aが、固定子30を構成するコイルボビン33の中間壁部45に設けられ、収容溝101Bがフランジ壁部44に設けられている。
【0079】
このような構成としても、上述の実施形態と同様、収容溝101A,101Bが、ボビン外周方向において互いに異なる位置に配置されていることで、引出配線90Aが引っ張られた際、引張力が加わる箇所が引出配線90Aの複数個所に分散される。これにより、引出配線90Aと端子部70との接続不良の発生が抑制され、ひいてはコイル41への給電不良の発生が抑制される。さらに、引出配線90Aと端子部70とが一体的に形成されていることで、コイル41(41A,41B)への給電不良の発生がより確実に抑制される。
【0080】
<変形例3>
図12は、変形例3に係る収容溝および引出配線の構成を説明する図であり、コイルボビンの正面図である。
【0081】
上述の実施形態では、複数の収容溝100が、固定子30を構成するコイルボビン33の中間壁部45およびフランジ壁部44に設けられた構成について説明したが、リニア振動モータ1の構成は、これに限定されるものではない。より詳しくは、上述の実施形態では、複数の収容溝100が、コイルボビン33を構成する2つの壁部40(中間壁部45およびフランジ壁部44)に設けられた構成を例示したが、複数の収容溝100は、コイルボビン33を構成する3つ以上の壁部40に設けられていてもよい。
【0082】
図12に示される例では、複数の収容溝100が、コイルボビン33の壁部40のそれぞれに設けられている。上述の実施形態と同様に、中間壁部45には、収容溝100A,100Bが設けられ、フランジ壁部44には、収容溝100C,100Dが設けられている。この例では、さらに、コイルボビン33のフランジ壁部43に、収容溝100E,100Fが設けられている。
【0083】
より詳しくは、フランジ壁部43には、端子部70が配置される段差部48Aが設けられている。この段差部48Aは、中心軸方向において、フランジ壁部43のコイル41A側の一部を残して形成されている。収容溝100E,100Fは、このフランジ壁部43に、段差部48Aからコイル41Aが保持されるコイル溝部46に亘って中心軸方向に連続して設けられている。
【0084】
そして、リード線91に対応する収容溝100A,100C,100Eは、収容溝100Aの中心線CL1と、収容溝100Cの中心線CL3と、収容溝100Eの中心線CL5とが、平面視において重ならないように配置されている。同様に、リード線92に対応する収容溝100B,100D,100Fは、収容溝100Bの中心線CL2と、収容溝100Dの中心線CL4と、収容溝100Fの中心線CL6とが、平面視において重ならないように配置されている。
【0085】
なお、隣接する壁部40に設けられる収容溝100同士が、ボビン外周方向で互いに異なる位置に配置されていれば、他の収容溝100同士は、ボビン外周方向で同じ位置に配置されていてもよい。例えば、リード線91に対応する収容溝100C,100Eは、ボビン外周方向で同じ位置に配置されていてもよい。言い換えれば、収容溝100Cの中心線CL3と、収容溝100Eの中心線CL5とは、平面視において重なっていてもよい。
【0086】
また、例えば、リード線92に対応する収容溝100D,100Fは、ボビン外周方向で同じ位置に配置されていてもよい。言い換えれば、収容溝100Dの中心線CL4と、収容溝100Fの中心線CL6とは、平面視において重なっていてもよい。
【0087】
以上のように、複数の収容溝100は、コイルボビン33を構成する3つの壁部40(フランジ壁部43,44および中間壁部45)に設けられていてもよい。さらに、コイルボビン33が4つ以上の壁部40を備える場合、複数の収容溝100は、4つ以上の壁部40に設けられていてもよい。
【0088】
このような構成としても、隣接する壁部40に設けられる収容溝100が、ボビン外周方向で互いに異なる位置に配置されていることで、引出配線90と端子部70との接続不良の発生が抑制される。ひいては、コイル41(41A,41B)への給電不良の発生が抑制される。
【0089】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0090】
例えば、固定子30を構成するケース31およびカバー32の材料は、特に限定されるものではなく、例えば、磁性材料によって形成されてもよい。また、ケース31とカバー32とは異なる材料で形成されていてもよい。
【0091】
リニア振動モータ1として、略円筒型の外形を有するものを例示したが、リニア振動モータ1の形状は、特に限定されるものではなない。
【0092】
また、上述の実施形態で説明した可動子10の構成は、あくまで一例である。固定子30の内側に収容される可動子10の構成は、特に限定されるものではない。また固定子30内に収容される弾性体50の構成も特に限定されるものではない。
【0093】
本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1)
コイルを有する固定子と、マグネットを有し前記固定子の内側で中心軸方向に往復運動する可動子と、を備えるリニア振動モータであって、
前記コイルが接続される端子部と、前記端子部から外部まで引き出される引出配線と、を備え、
前記固定子は、前記コイルを保持する保持溝部を有するコイルボビンを含み、
前記コイルボビンは、筒状の胴部と、前記胴部から当該胴部の径方向に突出して設けられ前記保持溝部の側面を構成する複数の壁部と、を有し、
前記端子部は、複数の前記壁部のうちの一つの外周面に設けられており、
複数の前記壁部には、前記引出配線が収容される複数の収容溝が設けられ、
隣接する前記壁部に設けられる前記収容溝は、前記コイルボビンの外周方向で互いに異なる位置に配置されている、リニア振動モータ。
【0094】
(2)
前記保持溝部は、複数の前記コイルがそれぞれ保持される複数のコイル溝部を含み、
前記壁部は、前記胴部の両端部に設けられる一対のフランジ壁部と、一対の前記フランジ壁部間に設けられる中間壁部と、を含み、
前記端子部が、一方の前記フランジ壁部の外周面に設けられ、
前記収容溝が、他方の前記フランジ壁部および前記中間壁部の外周面にそれぞれ設けられている、(1)に記載のリニア振動モータ。
【0095】
(3)
前記端子部に隣接する前記収容溝は、前記コイルボビンの外周方向で、前記端子部と前記引出配線との接続部と同一位置に配置されている、(1)または(2)に記載のリニア振動モータ。
【0096】
(4)
前記引出配線は、一対のリード線で構成され、
前記リード線の一方が収容される複数の前記収容溝が、前記コイルボビンの外周方向で互いに異なる位置に配置されている、(1)から(3)の何れか一つに記載のリニア振動モータ。
【0097】
(5)
前記固定子は、前記コイルボビンが内包されるケースを含み、
前記端子部は、前記コイルボビンの前記壁部の外周面に設けられた段差部内に配置されて前記コイルボビンの外周面よりも内側に位置し、
前記端子部が、前記ケースによって覆われている、(1)から(4)の何れか一つに記載のリニア振動モータ。
【0098】
(6)
前記固定子は、前記コイルボビンに対して前記ケースとは反対側に配置されて前記ケースに接着剤によって接着されるカバーを含み、
前記カバーの前記ケースに対向する対向面には、前記接着剤が溜まる接着溝部が設けられている、(5)に記載のリニア振動モータ。
【0099】
(7)
前記ケースおよび前記カバーの材料は、樹脂材料である、(6)に記載のリニア振動モータ。
【符号の説明】
【0100】
1…リニア振動モータ、 10…可動子、 11…マグネット、 12,13…錘部、 12a,13a…第1面、 12b,13b…第2面、 14,15…ポールピース、 14a,15a…第1面、 16,17…固定部、 18,19…貫通孔、 20,21…凸部、 30…固定子、 31…ケース、 31a…周壁部、 31b…上壁部、 31c…開口部、 31d…露出口、 31e…厚壁部、 31f…切欠部、 32…カバー、 33…コイルボビン、 34…蓋部、 34a…露出口、 35…縁部、 35a…切欠部、 35b…接着溝部、 35c…引出溝部、 39…胴部、 40…壁部、 41…コイル、 42…保持溝部、 43,44…フランジ壁部、 43a,44a…突出部、 45…中間壁部、 46,47…コイル溝部、 48…段差部、 49…突起部、 50,51…弾性体、 70…端子部、 71,72…接続部、 90…引出配線、 91,92…リード線、 100,101…収容溝