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  • 特開-ニッケル水素二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131037
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ニッケル水素二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/24 20060101AFI20240920BHJP
   H01M 10/34 20060101ALI20240920BHJP
   H01M 4/52 20100101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M4/24 J
H01M10/34
H01M4/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041057
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聡真
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 知志
(72)【発明者】
【氏名】山口 同通
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 武
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 賢大
【テーマコード(参考)】
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5H028AA06
5H028CC08
5H028CC12
5H028EE01
5H028EE04
5H028EE05
5H050BA14
5H050CA03
5H050CB16
5H050DA03
5H050DA09
5H050EA02
5H050FA02
5H050FA17
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】 セパレータの機能を妨げずに、正極板に均一且つ迅速に亜鉛化合物を供給できるニッケル水素電池を提供する。
【解決手段】 ニッケル水素二次電池1は、水酸化ニッケルを正極活物質として含む正極板3と、水素吸蔵合金粉末を含む負極板4と、正極板と負極板との間に介在するセパレータ5と、を有し、アルカリ電解液が注入される。負極板は、水素吸蔵合金粉末を含む負極合剤により形成される負極合剤層と、前記負極合剤層の表面に設けられて金属亜鉛及び亜鉛化合物の一方を含む亜鉛化合物層と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化ニッケルを正極活物質として含む正極板と、水素吸蔵合金粉末を含む負極板と、前記正極板と前記負極板との間に介在するセパレータと、を有し、アルカリ電解液が注入されたニッケル水素二次電池であって、
前記負極板は、
前記水素吸蔵合金粉末を含む負極合剤により形成される負極合剤層と、
前記負極合剤層の表面に設けられて金属亜鉛及び亜鉛化合物の一方を含む亜鉛化合物層と、を有する、ニッケル水素二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル水素二次電池に関し、特にニッケル水素二次電池に使用される負極に関する。
【背景技術】
【0002】
水素吸蔵合金を負極に使用したアルカリ蓄電池は、高容量であることや、鉛やカドミウムを用いた場合に比べクリーンであるなどの特徴を有することから、民生用電池として大きな需要がある。
【0003】
電池に用いられる正極には、焼結式ニッケル電極と、非焼結式ニッケル電極とがある。焼結式ニッケル電極は、活物質となるニッケル粒子を焼結基板内の細孔に含浸させて充填して作製される。非焼結式ニッケル電極は、活物質である水酸化ニッケルを結着剤、増粘剤などとともに水または溶剤に分散させてペースト状にし、それを集電体となる導電性の多孔性基板に充填して作製される。
【0004】
焼結式ニッケル電極は、焼結基板の導電性が高いために、活物質の利用率が優れている。しかし、焼結式ニッケル電極は、焼結基板の多孔度を増加させることが困難なために、活物質の充填量を増加させることが難しく、高容量化の点では劣っていた。また、活物質粒子間の結合力が弱いため、焼結基板の多孔度が大きいと、焼結基板から活物質が脱落することがあった。
【0005】
そこで、最近では、非焼結式ニッケル電極がニッケル水素電池用の正極として主流を占めるようになってきた。
【0006】
非焼結式ニッケル電極では、活物質となる水酸化ニッケルの充填密度を高くして電池の高容量化を実現できるとともに、電極の作製も簡単且つ容易であるという利点を有する。
【0007】
しかしながら、電池ケースは、容積が限られているために、従来の電池と比較すると、正極活物質などの固体材料をより多く収容するために電池内の空き容量が減少し、高容量化を実現するために必要な量の電解液を封入することができないことがあった。
【0008】
また、ニッケル電極の容積が増加することにより、電極単位面積あたりの電流密度が増大する。そのため、ニッケル電極は、充電中にβ型オキシ水酸化ニッケルよりもγ型オキシ水酸化ニッケルを生じやすい。γ型オキシ水酸化ニッケルは、膨張率が大きいために正極を膨張させて、セパレータを圧縮する。したがって、充放電サイクルの繰り返しにより、セパレータおよび負極中の電解液が正極内部に吸収されて、電池内の電解液分布が変化することがある。これは、電池の内部抵抗の増加につながる。
【0009】
この正極の膨張を抑制するために、正極に正極活物質とともに亜鉛化合物を含有させることが提案されている。
【0010】
さらに、亜鉛化合物を効率的に利用するために、正極と負極とを隔てるセパレータに亜鉛化合物を塗布することも提案されている。この構成により、正極内部に均一に亜鉛化合物が供給されるので、サイクル寿命を向上させることができる。
【0011】
セパレータは、内部の空孔中に、充放電反応に必要な電解液及び水酸化物イオンを保持し、正極や負極に電解液及び水酸化物イオンを供給する機能を有する。しかしながら、セパレータへの亜鉛化合物の塗布は、セパレータの空孔を埋めることになる。空孔が亜鉛化合物により埋められてしまうと、充放電反応を妨げることになる。また、亜鉛化合物は、半導体であるため、セパレータに塗布されると正極と負極とを電子的に連結して短絡させてしまうこともある。
【0012】
そこで、正極へ亜鉛化合物を均一に供給し、かつセパレータの働きを阻害しないために、負極内に亜鉛化合物を添加することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平07-073876号公報
【特許文献2】特開平05-314972号公報
【特許文献3】特開平03-285270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
負極に亜鉛化合物を添加すると、正極に均一に亜鉛化合物を供給できるが、正極への亜鉛化合物の供給速度が遅いという問題があった。
【0015】
本発明の目的は、セパレータの機能を妨げずに、正極に均一且つ迅速に亜鉛化合物を供給できるニッケル水素電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明のニッケル水素二次電池は、水酸化ニッケルを正極活物質として含む正極板と、水素吸蔵合金粉末を含む負極板と、前記正極板と前記負極板との間に介在するセパレータと、を有し、アルカリ電解液が注入されたニッケル水素二次電池であって、前記負極板は、前記水素吸蔵合金粉末を含む負極合剤により形成される負極合剤層と、前記負極合剤層の表面に設けられて金属亜鉛及び亜鉛化合物の一方を含む亜鉛化合物層と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のニッケル水素二次電池によれば、電池のサイクル寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施の形態に係るニッケル水素電池の一部を破断した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施の形態に係るニッケル水素電池を円筒形電池に適用した場合について説明する。
1.アルカリ蓄電池の構成
ニッケル水素電池(以下、「電池」と称す)1は、例えば図1に示すように、FAサイズの円筒形の外装缶2に、渦巻状の電極群6がアルカリ電解液と共に収容されている。外装缶2は、上端が開口した有底円筒形状を有し、その上端は封口体7にて封止されている。
【0020】
外装缶2は、底壁8が導電性を有して負極端子として機能する。封口体7は、蓋板9及び正極端子10を含む。蓋板9は、導電性を有して中央にガス抜き孔11を有し、蓋板9の外面上には、ガス抜き孔11を塞ぐゴム製の弁体12が配置される。蓋板9は、外装缶2の開口端部にリング形状のガスケット13を介して配置され、外装缶2の開口縁をかしめ加工することにより当該開口を閉塞する。蓋板9には、正極端子10が取付けられる。
【0021】
電極群6は、それぞれ帯状の正極板3、負極板4及びセパレータ5からなり、正極板3と負極板4との間に、セパレータ5が挟み込まれた状態で渦巻状に巻回され、ほぼ円柱形状をなしている。すなわち、正極板3及び負極板4は、セパレータ5を介して対向し、外装缶2の径方向に重ね合わせられている。
【0022】
外装缶2内では、電極群6の一端と蓋板9との間に正極リード14が配置され、正極リード14の各端部は、それぞれ正極板3及び蓋板9に電気的に接続される。
【0023】
正極板3は、多孔質構造を有する導電性の正極芯体と、正極芯体の表面及び空孔内に塗布された正極合剤とからなる。正極芯体としては、例えば、ニッケルめっきが施された網状、スポンジ状若しくは繊維状の金属体や発泡ニッケルが用いられている。
【0024】
正極合剤は、正極活物質粒子、導電材、正極添加剤及び結着剤を含む。正極活物質粒子は、水酸化ニッケル(Ni(OH))粒子又は高次水酸化ニッケル粒子である。また、導電材として、水酸化コバルト(Co(OH))を用いる。正極添加剤としては、Y、Nb、TiO、ZnO、Ybが用いられる。
【0025】
負極板4は、帯状をなす導電性の負極芯体を有し、この負極芯体に負極合剤が塗布される。負極芯体は、貫通孔が分布されたシート状の金属材からなり、例えば、表面にニッケルメッキを施した鉄製のパンチドメタルシートを用いる。負極合剤は、負極芯体に塗布されると負極合剤層を構成する。負極合剤は、水素吸蔵合金の粒子、負極添加剤、導電材及び結着剤を含む。
【0026】
さらに、負極芯体に形成された負極合剤層の表面及び裏面に、金属亜鉛又は亜鉛化合物からなる亜鉛化合物層を形成する。この構成により、負極板4の表面は、金属亜鉛又は亜鉛化合物にて覆われるので、負極板4の厚み方向において、表層近傍の亜鉛濃度は高くなる。
【0027】
水素吸蔵合金は、負極活物質である水素を吸蔵及び放出可能な合金である。水素吸蔵合金としては、一般的な水素吸蔵合金を用いることができる。ここで、本開示においては、希土類元素、Mg、Niを含む希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金を用いることが好ましい。
【0028】
セパレータ5は、例えば、フッ素処理やスルホン化処理が施されたポリプロピレン繊維からなる不織布からなる。
【0029】
外装缶2内には、アルカリ電解液が注入される。アルカリ電解液は、正極板3、負極板4及びセパレータ5に含浸され、正極板3と負極板4との間の電気化学反応、いわゆる充放電反応に寄与する。アルカリ電解液は、KOH、NaOH及びLiOHを含む水溶液である。
【0030】
2.電池の製造方法
次に、上記電池1の製造方法について以下に説明する。
(1)正極板の作製
硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム及び硫酸コバルトを所定の組成に計量し、計量した硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム及び硫酸コバルトを1mol/Lの硫酸水溶液に加えて混合水溶液を作製する。この混合水溶液に、撹拌しながら10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に徐々に添加して反応中の水溶液のpHを13~14に安定させて、水酸化ニッケルを主体としてAl及びCoを固溶させた水酸化ニッケル粒子を生成する。これにより、Al及びCoが固溶された水酸化ニッケル粒子の混合体である水酸化ニッケル粉末が、正極活物質粉末として得られる。
【0031】
この水酸化ニッケル粒子の表面に導電層を形成する場合は、以下に示す処理を行う。
【0032】
まず、上記のように得られた水酸化ニッケル粒子をアンモニア水溶液中に投入し、この水溶液中に硫酸コバルト水溶液を加える。これにより、水酸化ニッケル粒子を核として、この核の表面に水酸化コバルトが析出し、水酸化コバルトからなる導電層を備えた活物質が形成される。
【0033】
得られた水酸化ニッケルに対して、X線回折(XRD)分析を行った。分析には、粉末XRD装置(Rigaku社製MiniFlex600)を用いた。分析の条件は、X線源はCuKα、管電圧は40keV、管電流は15mA、スキャンスピードは5度/分、ステップ幅は0.02度であった。
【0034】
上記正極活物質粉末の100質量部に対し、水酸化コバルトの3.5質量部と、ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropyl Cellulose,HPC)の0.2質量部の粉末とを混合する。そして、水の30質量部と、PTFEの0.3質量部とを添加して正極活物質スラリーを作製する。正極活物質スラリーを発泡ニッケルからなるテープ状の正極芯体に充填して乾燥させる。その後、スラリーが乾燥された正極芯体をロール圧延し裁断して、FAサイズ用の正極板3を作製する。
【0035】
(2)負極板の作製
最初に、30質量%のランタン(La)、70質量%のサマリウム(Sm)を含む希土類成分を調製し、得られた希土類成分、Mg、Ni、Alを計量して、これらがモル比で0.90:0.10:3.33:0.17の割合となる混合物を作製する。この混合物は、誘導溶解炉で溶解され、その溶湯が鋳型に流し込まれて室温まで冷却されると、水素吸蔵合金のインゴットになる。インゴットより採取したサンプルに対し、高周波プラズマ分光分析法(ICP)により組成を分析すると、水素吸蔵合金の組成は、La0.30Sm0.70Mg0.10Ni3.33Al0.17であった。
【0036】
上記水素吸蔵合金のインゴットに対し、アルゴンガス雰囲気中、温度1000℃の熱処理を10時間施す。熱処理後、室温まで冷却されたインゴットをアルゴンガス雰囲気中で機械的に粉砕し、水素吸蔵合金粒子からなる水素吸蔵合金粉末を得る。水素吸蔵合金粉子の粒径を、レーザー回折・散乱式粒径分布測定装置を用いて測定したところ、水素吸蔵合金粒子の体積平均粒径(Mean Volume Diameter)は60μmであった。
【0037】
この水素吸蔵合金粉末100質量部に対し、カルボキシメチルセルロースの粉末0.05質量部、カーボンブラックの粉末0.5質量部、及び水25質量部を添加して混練し負極合剤ペーストを作製する。このペーストを、テープ状の鉄製のパンチドメタルシートの両面に、それぞれ厚さが一定となるように塗布する。パンチドメタルシートの貫通孔内にも負極合剤のペーストは充填される。パンチドメタルシートの表面にはニッケルめっきが施されている。
【0038】
ペーストを乾燥させた後、パンチドメタルシートをロール圧延して負極合剤の単位体積当たりの合金量を高めて裁断し、FAサイズ用の負極板4を作製する。
【0039】
さらに、負極合剤層の表面に亜鉛化合物層を形成するために、酸化亜鉛の粉末100質量部に水100質量部を加えて混練し、酸化亜鉛のペーストを作製する。この酸化亜鉛ペーストを裁断済みの負極板4の全面、すなわち長方形状の負極板4の表面及び裏面のどちらにも刷毛により塗布して乾燥させて、負極板4の表面に亜鉛化合物層を形成する。本実施形態では、酸化亜鉛ペーストの塗布量は、裁断した負極板4に含まれる水素吸蔵合金に対し、酸化亜鉛の重量比が0.01g/gとなるように塗布した。このとき、マイクロメータで測定した酸化亜鉛塗布層の厚みは約3μmであった。なお、上記ペーストは、酸化亜鉛に代えて、酸化物以外の亜鉛化合物または金属亜鉛を用いることもできる。亜鉛化合物としては水酸化物(水酸化亜鉛)も利用可能であり、酸化亜鉛と水酸化物との混合物でも利用可能である。
【0040】
(3)電池の組立
正極板3及び負極板4をそれぞれの長手方向が同一となるように重ね合わせ、両電極板間にセパレータ5を挟んだ状態で渦巻状に巻回して電極群6を形成する。本実施の形態において、セパレータ5は、厚みは0.1mm(目付量53g/m)のスルホン化処理が施されたポリプロピレン繊維製不織布である。
【0041】
電極群6は、負極板4が外装缶2の底壁8に接するように外装缶2に収容される。電極群6を外装缶2に収容した後、アルカリ電解液を注入する。本実施形態では、アルカリ電解液には、KOH、NaOH及びLiOHが、KOH:NaOH:LiOH=0.8:7.0:0.02の比で含まれる。
【0042】
その後、封口体7で外装缶2の開口を塞いで、FAサイズのニッケル水素電池1(理論容量4000mAh、1C=4000mA)を組み立てた。
【0043】
3.電池の初期活性化処理
組立てた電池に対し、温度25℃の環境下にて、0.1Itで16時間の充電を行った後に、0.2Itで電池電圧が1.0Vになるまで放電させる。この充電及び放電からなる操作を1サイクルとし、この充放電サイクルを2回繰り返すことにより初期活性化処理を行い、電池を使用可能状態にする。
【0044】
4.電池の特性評価
上記構成、すなわち、亜鉛化合物層を負極合剤層の表面に形成して負極板4を作製した電池を実施例とする。この電池のサイクル特性を調べた。
【0045】
比較例として、負極合剤層を形成するときに、上述の負極合剤のペーストに、酸化亜鉛の粉末を1質量部添加して混錬したペーストを用いて負極合剤層を形成する。比較例の電池では、亜鉛化合物は、負極合剤層の内部に含まれて分布する。したがって、電池は、亜鉛化合物層の無い負極板4を用いて作製される。比較例の電池では、負極合剤層の厚み方向において、一方の面側から他方の面側にかけて、負極芯体を除いた部分において、酸化亜鉛の濃度はほぼ均一に分布すると推定される。
【0046】
(1)サイクル寿命特性
25℃の環境において、電池を、充電電流4Aで充電し、電池電圧が最大値から10mV低下したところで充電を終了させた。その後、同一の環境下にて放電電流15A、終止電圧0.8Vになるまで放電させる。この充電及び放電サイクルを1サイクルとして充放電を繰り返し、放電容量が初期サイクル(1サイクル)目の容量に対し、60%以下になるまでのサイクル数を計測した。
【0047】
その結果を以下の表1に示す。なお、電池寿命は、比較例のサイクル数を100として表した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1からは、酸化亜鉛粉末を負極合剤層に混ぜ込んだ比較例の電池寿命を100とする場合、負極合剤層の表面に酸化亜鉛層を設けた実施例の電池寿命は130であった。すなわち、実施例の電池寿命は、比較例の電池寿命に対し30%も延びていることが分かる。このように、酸化亜鉛を、負極合剤層の内部に分布させるよりも、負極合剤層の表面近傍に高い濃度の酸化亜鉛を配置することにより、正極板の膨張を抑制すると共に、セパレータ5に充放電反応に必要な電解液及び水酸化物イオンを保持させて、電池のサイクル寿命を延ばすことができる。
【0050】
このように、負極芯体に充填形成された負極合剤層の表面に酸化亜鉛層を形成することにより、負極合剤層の内部に酸化亜鉛を分布させた負極板を用いた電池に比較して、電池とニッケル水素二次電池のサイクル寿命を延ばすことができる。
【0051】
上記実施の形態では、酸化亜鉛の粉末を負極合剤層の表面に塗布したが、酸化亜鉛に代えて、金属亜鉛や他の亜鉛酸化物の粉末、水酸化物(水酸化亜鉛)の粉末、または酸化亜鉛と水酸化物との混合物の粉末を負極合剤層の表面に塗布して作製される負極板を用いた電池でも、同様な効果を期待できる。
【符号の説明】
【0052】
1 ニッケル水素二次電池
3 正極板
4 負極板
5 セパレータ

図1