(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131041
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】レーザ加工装置およびレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/04 20140101AFI20240920BHJP
B23K 26/382 20140101ALI20240920BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240920BHJP
【FI】
B23K26/04
B23K26/382
B23K26/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041062
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】市川 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】西部 達矢
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD12
4E168CA06
4E168CA11
4E168CB01
4E168CB07
4E168CB18
4E168DA23
4E168FC07
4E168HA01
4E168JA14
4E168JA15
4E168JA17
(57)【要約】
【課題】レーザを照射して孔加工される基板の加工品質を向上させる。
【解決手段】レーザ加工装置1は、基板10を支持可能なテーブル20と、テーブル20によって支持された基板10にレーザ40を照射するレーザ照射部30と、テーブル20によって支持された基板10の周辺の温度および湿度を測定する温湿度測定部60と、温湿度測定部60によって得られた温度および湿度の測定結果に基づいて基板10上のレーザ照射位置を求める制御部70と、を有する。制御部70は、温度および湿度の前記測定結果に基づいて、予め登録されたレーザ照射位置に対して基板10上のレーザ照射位置を補正して求める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にレーザを照射して孔の形成を行うレーザ加工装置であって、
前記基板を支持可能なテーブルと、
前記テーブルによって支持された前記基板にレーザを照射するレーザ照射部と、
前記テーブルによって支持された前記基板の周辺の温度および湿度を測定する温湿度測定部と、
前記温湿度測定部によって得られた温度および湿度の測定結果に基づいて前記基板上のレーザ照射位置を求める制御部と、
を有し、
前記制御部は、温度および湿度の前記測定結果に基づいて、予め登録されたレーザ照射位置に対して前記基板上のレーザ照射位置を補正して求める、レーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記制御部に、温度および湿度の前記測定結果に対応する前記基板の材料の伸縮率のデータが予め登録され、
前記制御部は、前記基板の材料の伸縮率のデータに基づいて前記基板上のレーザ照射位置を補正する、レーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記テーブルに、該テーブル上の設置位置の座標が予め登録された位置決めピンが設けられ、
前記制御部は、前記テーブル上で前記位置決めピンによって位置決めされた前記基板に対して、前記位置決めピンの位置を基準として前記基板上のレーザ照射位置を補正する、レーザ加工装置。
【請求項4】
基板にレーザを照射して孔を形成するレーザ加工方法であって、
(a)前記基板をテーブル上に配置する工程と、
(b)前記テーブルによって支持された前記基板の周辺の温度および湿度を測定する工程と、
(c)前記(b)工程の後、温度および湿度の測定結果に基づいて前記基板上のレーザ照射位置を求める工程と、
(d)前記(c)工程の後、前記(c)工程で求めた前記基板上のレーザ照射位置にレーザ照射部から前記レーザを照射して前記基板に前記孔を形成する工程と、
を有し、
前記(c)工程では、温度および湿度の前記測定結果に基づいて、予め登録されたレーザ照射位置に対して前記基板上のレーザ照射位置を補正し、
前記(d)工程では、補正された前記基板上のレーザ照射位置に前記レーザ照射部から前記レーザを照射する、レーザ加工方法。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ加工方法において、
前記(c)工程では、温度および湿度の前記測定結果と、予め登録された前記基板の材料の伸縮率のデータと、に基づいて前記基板上のレーザ照射位置を補正して求める、レーザ加工方法。
【請求項6】
請求項4に記載のレーザ加工方法において、
前記(a)工程では、予め設置位置の座標が登録された位置決めピンによって前記テーブル上で前記基板を位置決めし、
前記(c)工程では、前記テーブル上で前記位置決めピンによって位置決めされた前記基板に対して、前記位置決めピンの位置を基準として前記レーザ照射位置を求める、レーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にレーザを照射して孔を形成するレーザ加工技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板にレーザを照射して孔を形成するレーザ加工装置の一例として、基板を支持するXYテーブルと、レーザを発振するレーザ光源と、前記レーザ光源を駆動するレーザ光源駆動手段と、前記XYテーブルを移動させるテーブル駆動手段と、を備えたレーザ加工装置が知られている。
【0003】
上述のようなレーザ加工装置を用いた基板の加工方法として、例えば、特許文献1には、レーザをレーザ光源の近傍に配置された回折格子を通過させて複数個に分光した後、分光されたレーザを基板に照射する加工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に記載された基板の加工方法の場合、基板にレーザを照射する際に、XYテーブルによって支持された基板上の雰囲気の影響による基板の変形については特に考慮されていない。基板にレーザを照射して孔を形成する加工においては、基板の周辺の温度や湿度の変化の影響により、例えば、基板が10~15%程度伸縮して変形する場合もあることが知られている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の基板の加工方法では、温度および湿度の変化の影響によって基板が変形してもレーザを照射する位置を補正することはできないため、孔の形成位置がずれてしまい、基板の加工品質が低下することが懸念される。
【0007】
本発明の目的は、基板の加工品質を向上させたレーザ加工技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一様態は、基板にレーザを照射して孔の形成を行うレーザ加工装置であって、前記基板を支持可能なテーブルと、前記テーブルによって支持された前記基板にレーザを照射するレーザ照射部と、前記テーブルによって支持された前記基板の周辺の温度および湿度を測定する温湿度測定部と、前記温湿度測定部によって得られた温度および湿度の測定結果に基づいて前記基板上のレーザ照射位置を求める制御部と、を有し、前記制御部は、温度および湿度の前記測定結果に基づいて、予め登録されたレーザ照射位置に対して前記基板上のレーザ照射位置を補正して求める、ものである。
【0009】
本発明の他の一様態は、基板にレーザを照射して孔を形成するレーザ加工方法であって、(a)前記基板をテーブル上に配置する工程と、(b)前記テーブルによって支持された前記基板の周辺の温度および湿度を測定する工程と、(c)前記(b)工程の後、温度および湿度の測定結果に基づいて前記基板上のレーザ照射位置を求める工程と、(d)前記(c)工程の後、前記(c)工程で求めた前記基板上のレーザ照射位置にレーザ照射部から前記レーザを照射して前記基板に前記孔を形成する工程と、を有し、前記(c)工程では、温度および湿度の前記測定結果に基づいて、予め登録されたレーザ照射位置に対して前記基板上のレーザ照射位置を補正し、前記(d)工程では、補正された前記基板上のレーザ照射位置に前記レーザ照射部から前記レーザを照射する、ものである。
【発明の効果】
【0010】
一様態のレーザ加工技術によれば、基板の加工品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態のレーザ加工装置の一例を示す構成図である。
【
図2】
図1のレーザ加工装置のテーブルによる基板の支持形態を示す模式図である。
【
図3】
図1のレーザ加工装置のテーブルにおける基板の位置決め状態を示す平面図である。
【
図4】
図1のレーザ加工装置によるレーザ加工の手順の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
<レーザ加工装置について>
図1に示される本実施形態のレーザ加工装置1は、基板10にレーザ40を照射して基板10に孔を形成する装置である。本実施形態では、基板10に貫通孔10aを形成する場合について説明する。
【0014】
レーザ加工装置1は、基板10を支持可能なテーブル20と、テーブル20によって支持された基板10にレーザ40を照射するレーザ照射部30と、テーブル20によって支持された基板10の周辺の温度および湿度を測定する温湿度測定部60と、温湿度測定部60によって得られた温度および湿度の測定結果に基づいて基板10上のレーザ照射位置を求める制御部70と、を有する。
【0015】
レーザ加工装置1は、例えば、クリーンルーム内に設置され、基板10への孔加工は、このクリーンルーム内でレーザ加工装置1によって実施される。
【0016】
レーザ加工装置1によって貫通孔10aが形成される基板10としては、例えば、セラミックグリーンシートであり、平面形状が四角形を成す薄板状の部材である。ただし、基板10は、セラミックグリーンシートに限定されるものではなく、例えば、ガラス基板やガラスエポキシ樹脂を主成分とする樹脂基板等であってもよい。
【0017】
テーブル20は、基板10を支持可能である。
図2に示されるように、テーブル20の上面には吸着治具90が取り付けられており、基板10は、吸着治具90上に載置される。吸着治具90には、複数の吸着孔90aが設けられており、これら複数の吸着孔90aを介して真空排気が行われる。これにより、基板10は、吸着治具90を介してテーブル20に吸着保持される。なお、テーブル20は、
図3に示されるように、X方向およびY方向に移動自在に設けられている。
【0018】
また、
図1に示されるように、テーブル20には、テーブル20上の設置位置の座標が予め登録された位置決めピン50が設けられており、基板10は、テーブル20上において、位置決めピン50によって位置決めされる。なお、基板10は、基板10の周囲の温度や湿度の変化の影響を受けて、主に基板10の中心付近からX方向およびY方向に沿って伸縮して変形することが知られている。
【0019】
そこで、レーザ加工装置1では、
図3に示されるように、基板10のX方向とY方向のそれぞれの辺10d,10eの中心に位置決めピン50が配置されるように、位置決めピン50が設置されている。具体的には、基板10のY方向に沿って設けられた辺10eの中心を通る中心線10c上に位置決めピン50aが設けられ、一方、基板10のX方向に沿って設けられた辺10dの中心を通る中心線10b上に位置決めピン50bが設けられている。
【0020】
そして、基板10がテーブル20上に載置される際には、これら位置決めピン50a,50bによって位置決めされて載置される。これにより、基板10は、該基板10の辺10d,10eのそれぞれの中心線10b,10c上に配置された位置決めピン50a,50bによって位置決めされる。
【0021】
また、
図2に示されるように、レーザ照射部30は、レーザ発振器30a、光学変調器30b、ガルバノスキャナ30cおよび集光レンズ30d等を備えている。そして、レーザ照射部30は、基板10の所望の位置にレーザ40を照射する。詳細には、、レーザ照射部30のレーザ発振器30aから発振されたレーザ40は、光学変調器30bおよびガルバノスキャナ30cを通過した後、さらに集光レンズ30dを通って基板10に照射され、これにより、基板10に対して孔加工が行われる。
【0022】
なお、レーザ40は、例えば、炭酸ガス(CO2)レーザであるが、炭酸ガスレーザに限定されるものではない。
【0023】
また、レーザ照射部30は、レーザ40の照射位置を撮像可能な手段としてカメラ80を備えている。
【0024】
また、レーザ加工装置1には、テーブル20の上方に温湿度測定部60が設置されている。これにより、基板10にレーザ40を照射して孔加工を施す際に、テーブル20によって支持された基板10の周辺の温度および湿度を測定することが可能である。温湿度測定部60によって得られる温度および湿度の測定結果は、制御部70に送信される。
【0025】
ここで、制御部70には、予めレーザ照射位置が登録されている。そして、制御部70は、予め登録されたレーザ照射位置に対して、温湿度測定部60によって得られた温度および湿度の測定結果に基づいて基板10上のレーザ照射位置を補正する。さらに、制御部70によって、補正された基板10上のレーザ照射位置にレーザ照射部30からレーザ40を照射する制御が行われ、基板10に孔加工が施される。
【0026】
具体的には、制御部70は、温湿度測定部60によって得られた温度および湿度の測定結果のデータに基づいて、予め登録されたレーザ照射位置を補正するための補正データを読み出し、基板10上のレーザ照射位置を補正する。
【0027】
なお、
図2に示されるように、制御部70には、例えば、貫通孔10aが形成される基板10の材料の伸縮率等のデータが登録データ70aとして予め登録されている。この登録データ70aは、測定された温度および湿度に対応した基板10の材料の伸縮率である。一例として、基板10の主成分がセラミック材である場合、読み出す伸縮率は、測定された温度および湿度に対応するセラミック材の伸縮率である。あるいは、基板10の主成分がガラスエポキシ樹脂である場合、読み出す伸縮率は、測定された温度および湿度に対応するガラスエポキシ樹脂の伸縮率である。
【0028】
これにより、制御部70は、温湿度測定部60による温度および湿度の測定結果に基づいて、予め登録された基板10の材料の伸縮率等の登録データ70a(補正データ)を読み出し、基板10の材料の伸縮率に基づいて基板10の伸縮量を算出する。そして、基板10の伸縮量の算出結果に基づいて基板10上のレーザ照射位置を補正する。すなわち、レーザ照射位置を求める。
【0029】
また、制御部70には、基板10の厚みや基板10の面積(大きさ)等の基板10の情報が登録されていてもよい。さらに、制御部70には、位置決めピン50の位置の座標等が登録データ70aとして登録されている。加えて制御部70には、基板10に孔加工を施す際に用いられる加工プログラム70bが格納されている。
【0030】
これにより、制御部70は、基板10に孔加工を施す際に、テーブル20上で位置決めピン50によって位置決めされた基板10に対して、予め登録データ70aとして登録された位置決めピン50の位置(座標)を基準10fとして、加工プログラム70bにより基板10上のレーザ照射位置を補正して求める。
【0031】
このときの位置決めピン50の位置は、基板10のX方向とY方向のそれぞれの辺10d,10eの中心線10b,10c上の位置となっており、その結果、基板10の加工面の中央部分の位置がレーザ40を照射する位置を補正する際の基準10fとなる。
【0032】
<レーザ加工方法について>
図4は、本実施形態のレーザ加工の手順の一例を示すフロー図である。
図4を参照しながら本実施形態のレーザ加工の手順について説明する。
【0033】
図4のステップS1に示される加工開始を実行する。具体的には、基板10へレーザ40を照射して基板10への孔加工を開始する。まず、基板10をテーブル20上に配置する。詳細には、テーブル20上に設けられた吸着治具90上に基板10を載置し、吸着治具90に設けられた複数の吸着孔90aを介して真空排気し、テーブル20によって基板10を吸着保持する。その際、
図3に示されるように、基板10を位置決めピン50a,50bに当接させ、位置決めピン50a,50bによって基板10のX方向とY方向を位置決めする。なお、位置決めピン50a,50bの設置位置の座標は、予め制御部70に登録されている。
【0034】
次に、
図4のステップS2に示される温湿度測定を実行する。具体的には、テーブル20の上方に設けられた温湿度測定部60により、テーブル20によって支持された基板10の周辺の温度および湿度を測定する。この温度および湿度の測定結果は、制御部70に送信される。
【0035】
次に、
図4のステップS3に示される登録データより伸縮率決定を実行する。具体的には、温湿度測定部60による温度および湿度の測定結果に基づいて基板10に照射するレーザ40の位置を求める。ここでは、温湿度測定部60による温度および湿度の測定結果と、予め制御部70に登録された基板10の材料の伸縮率のデータと、に基づいて基板10上のレーザ照射位置を補正する。
【0036】
詳細には、温湿度測定部60による温度および湿度の測定結果に基づいて、制御部70に登録された登録データ70aより基板10の材料の伸縮率を読み出し、さらに、読み出された伸縮率に基づいて、基板10上のレーザ照射位置を補正する。すなわち、予め設定されている孔あけの位置を、読み出された基板10の材料の伸縮率のデータに基づいて補正する。
【0037】
例えば、基板10が主にセラミック材からなる場合、制御部70において、温湿度測定部60による温度および湿度の測定結果に対応したセラミック材の伸縮率を読み出し、予め登録されたレーザ照射位置に対して、上記読み出されたセラミック材の伸縮率に基づいて基板10上のレーザ照射位置を補正する。
【0038】
そして、上記補正の際には、
図4のステップS4に示される加工プログラムに伸縮率反映を実行して補正する。具体的には、制御部70は、温度および湿度の測定結果に基づいて登録データ70aより基板10の材料の伸縮率を読み出し、この読み出された基板10の材料の伸縮率のデータを、制御部70に格納されている加工プログラム70bに反映させることで基板10上のレーザ照射位置を補正する。
【0039】
このとき、加工プログラム70bでは、テーブル20上で位置決めピン50によって位置決めされた基板10に対して、位置決めピン50の位置を基準10fとしてレーザ照射位置を求める。すなわち、読み出された基板10の材料の伸縮率を用いて補正すべきX方向とY方向の距離を算出する。そして、この補正すべき距離の算出結果に基づいて、位置決めピン50の位置を基準10fとして孔あけのための基板10上のレーザ照射位置を補正する。
【0040】
なお、薄板状の基板10では、基板10の周囲の温度や湿度の変化の影響を受けて、主に基板10の中心付近からX方向およびY方向に沿って均一性を有して伸縮し変形することが知られているため、基板10の縦と横のそれぞれの辺10d,10eの中心線10b,10c上に設置された位置決めピン50の位置を基準10fとしてレーザ40を照射すべき位置を求めることができる。
【0041】
制御部70では、上述のような温湿度測定部60によって得られる温度および湿度の測定結果に基づいた基板10の材料の伸縮率と、この伸縮率を反映させる加工プログラム70bと、を用いた方法により、基板10上のレーザ照射位置を求める。
【0042】
次に、
図4のステップS5に示される加工実施を行う。すなわち、加工プログラム70bによって求められた基板10上のレーザ照射位置に対してレーザ照射部30からレーザ40を照射し、これにより、基板10の所望の位置に貫通孔10aを形成する。その際、レーザ照射部30に設けられたカメラ80によって基板10を撮像し、求められたレーザ照射位置までテーブル20もしくはレーザ照射部30を移動させ、その後、基板10の所望の位置にレーザ40を照射する。
【0043】
以上のように本実施形態のレーザ加工方法では、基板10上のレーザ照射位置を、基板10の周辺の温度および湿度の測定結果に基づいて補正し、補正された基板10上のレーザ照射位置にレーザ照射部30からレーザ40を照射して基板10に貫通孔10aを形成する。
【0044】
本実施形態のレーザ加工装置1およびレーザ加工方法によれば、基板10の周辺の温度および湿度の変化の影響により、基板10が変形した場合であっても基板10上のレーザ照射位置が温度および湿度に応じて補正され、変形した基板10に対して適切な位置にレーザ40を照射することができる。
【0045】
これにより、基板10が変形した場合であってもレーザ40の照射によって形成される貫通孔10aの位置がずれることを抑制できる。その結果、基板10に形成する貫通孔10aの位置精度を高めることができ、孔加工が行われる基板10の加工品質を向上させることができる。
【0046】
また、基板10にレーザ40を照射する際の位置補正用の登録データ70aとして基板10の材料の伸縮率を用いることで、温度および湿度の変化に応じた基板10の変形量を適切に算出することができる。その結果、温度および湿度の変化による基板10の変形に応じたレーザ照射位置の補正の精度をより高めることができる。
【0047】
また、予め設置位置が登録された位置決めピン50の位置を基準10fとして孔あけのためのレーザ照射位置を補正することにより、容易に、かつ、高い精度でレーザ照射位置を補正することができる。
【0048】
なお、制御部70に登録されている登録データ70aとして基板10の厚みや基板10の面積(大きさ)等の情報が登録されている場合、基板10上のレーザ照射位置を補正する際に、基板10の材料の伸縮率に加えて基板10の厚みや基板10の面積等の情報も加工プログラム70bに反映させてレーザ照射位置を求めてもよい。これにより、基板10上のレーザ照射位置の補正精度をより高めることができる。
【0049】
以上、一実施形態のレーザ加工装置およびレーザ加工方法について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、加工プログラム70bが制御部70に格納されている場合を説明したが、加工プログラム70bは、制御部70とは異なる第2の制御部等に格納されていてもよい。
【0050】
この場合、制御部70と第2の制御部との間での信号の送受信を可能にすることで、制御部70に登録された基板10の伸縮率のデータ(情報)を読み出すとともに、伸縮率のデータを第2の制御部に送信し、第2の制御部で加工プログラム70bに基板10の伸縮率のデータを反映させて基板10上のレーザ照射位置を求める。そして、制御部70もしくは第2の制御部の制御により、基板10上の補正された位置にレーザ40を照射し、これにより、基板10に貫通孔10aを形成する。
【符号の説明】
【0051】
1…レーザ加工装置、10…基板、10a…貫通孔(孔)、10b,10c…中心線、10d,10e…辺、10f…基準、20…テーブル、30…レーザ照射部、30a…レーザ発振器、30b…光学変調器、30c…ガルバノスキャナ、30d…集光レンズ、40…レーザ、50,50a,50b…位置決めピン、60…温湿度測定部、70…制御部、70a…登録データ、70b…加工プログラム、80…カメラ、90…吸着治具、90a…吸着孔