(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131042
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】フィルタ装置及びそれを備えた作業機械
(51)【国際特許分類】
B01D 29/11 20060101AFI20240920BHJP
B01D 35/02 20060101ALI20240920BHJP
F15B 21/041 20190101ALI20240920BHJP
【FI】
B01D29/10 510C
B01D29/10 530B
B01D35/02 E
F15B21/041
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041064
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 健司
(72)【発明者】
【氏名】秋田 秀樹
【テーマコード(参考)】
3H082
4D116
【Fターム(参考)】
3H082AA12
3H082CC02
3H082DB12
3H082DB37
3H082EE01
4D116AA07
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4D116QA26G
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4D116QA29G
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4D116QA52C
4D116QA52D
4D116QA52G
4D116TT02
4D116TT07
4D116UU09
4D116UU10
4D116VV05
(57)【要約】
【課題】異物を効率的に除去することができるとともに、フィルタ交換作業の負担軽減及び廃棄物削減を実現することができるフィルタ装置及びそれを備えた作業機械を提供する。
【解決手段】フィルタ装置60は、第1の配管6、8において液体の流れを第1の配管6、8から分岐させる分岐配管20と、分岐配管20によって第1の配管6、8から分岐される第2の配管10において液体中の異物Mを捕捉するフィルタ44とを備え、分岐配管20は、第1の配管6、8から第2の配管10への分岐部30を含みかつ分岐部30に第2の配管10への液体の入口10aが設けられ、液体中に気泡Bを発生させて異物Mに付着させる気泡発生部26、気泡Bが付着した異物Mを含む液体に旋回流Frを発生させる旋回流発生部28、及び分岐部30を備え、液体の入口10aは、分岐配管20よりも小さな内径を有し、旋回流発生部28は、分岐部30において液体の入口10aの径方向中央に旋回流Frの渦芯Fvを形成する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中の異物を捕捉して除去するフィルタ装置であって、
前記フィルタ装置は、
前記液体が流れる第1の配管に設けられて前記液体の流れを前記第1の配管から分岐させる分岐配管と、
前記分岐配管によって前記第1の配管から分岐される第2の配管に設けられて前記液体中の異物を捕捉するフィルタと、
を備え、
前記分岐配管は、前記第1の配管から前記第2の配管への分岐部を含みかつ前記分岐部に前記第2の配管への前記液体の入口が設けられるとともに、前記液体の上流側から順に、前記液体中に気泡を発生させて前記異物に付着させる気泡発生部、当該気泡が付着した前記異物を含む前記液体に旋回流を発生させる旋回流発生部、及び前記分岐部を備え、
前記液体の入口は、前記分岐配管よりも小さな内径を有し、
前記旋回流発生部は、前記分岐部において前記液体の入口の径方向中央に旋回流の渦芯を形成するように構成されている、ことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記気泡発生部は、オリフィスである、ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記気泡発生部は、超音波発生装置である、ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記気泡発生部は、電極装置である、ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記気泡発生部は、所定の表面粗さを有するヒータである、ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記旋回流発生部は、前記分岐配管の内周面の周方向に所定の間隔を存して配列された複数の羽根を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記羽根は、前記分岐配管の前記内周面から前記分岐配管の前記径方向中央に向けて立設され、且つ前記分岐配管の軸線方向に延設される、ことを特徴とする請求項6に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載のフィルタ装置を有する油圧回路を備えた作業機械であって、
前記油圧回路は、アクチュエータを駆動するための前記液体としての作動油が循環するとともに、
前記作動油が貯留されるリザーブタンクと、
前記リザーブタンクと前記アクチュエータとに接続され、前記リザーブタンクから前記作動油を吸引して前記アクチュエータに供給するサクション配管と、
前記アクチュエータと前記リザーブタンクとに接続され、前記アクチュエータの駆動に供した前記作動油を前記リザーブタンクに戻す前記第1の配管としてのフルフロー配管と、
前記フルフロー配管から分岐されて前記リザーブタンクに接続され、前記アクチュエータの駆動に供した前記作動油を前記リザーブタンクに戻すとともに、前記フィルタとしてのバイパスフィルタが設けられた前記第2の配管としてのバイパス配管と、
を備え、
前記フルフロー配管には、前記分岐配管で分岐されずに前記フルフロー配管を通って前記リザーブタンクに戻る前記作動油中の異物を捕捉して除去するフルフローフィルタが設けられ、
前記バイパスフィルタは、前記フルフローフィルタよりも細かいメッシュを有する、ことを特徴とする作業機械。
【請求項9】
請求項1から7の何れか一項に記載のフィルタ装置を有する油圧回路を備えた作業機械であって、
前記油圧回路は、アクチュエータを駆動するための前記液体としての作動油が循環するとともに、
前記作動油が貯留されるリザーブタンクと、
前記リザーブタンクと前記アクチュエータとに接続され、前記リザーブタンクからポンプにより前記作動油を吸引して前記アクチュエータに供給する前記第1の配管としてのサクション配管と、
前記アクチュエータと前記リザーブタンクとに接続され、前記アクチュエータの駆動に供した前記作動油を前記リザーブタンクに戻すフルフロー配管と、
前記サクション配管から分岐されて前記リザーブタンクに接続され、前記ポンプを通過し且つ前記アクチュエータに供給する前の前記作動油を前記リザーブタンクに戻すとともに、前記フィルタとしてのバイパスフィルタが設けられた前記第2の配管としてのバイパス配管と
を備え、
前記サクション配管は、前記リザーブタンクの側である前記作動油の上流側から順に、前記ポンプを通過する前の前記作動油中の異物を捕捉して除去するサクションフィルタと、前記ポンプと、前記気泡発生部、前記旋回流発生部、及び前記分岐部とを備え、
前記フルフロー配管には、前記作動油中の異物を捕捉して除去するフルフローフィルタが設けられ、
前記バイパスフィルタは、前記フルフローフィルタよりも細かいメッシュを有する、ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ装置及びそれを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機械は、油圧シリンダなどのアクチュエータを駆動する油圧回路を備えている。アクチュエータの駆動時には、駆動部に形成された密封シールの隙間から油圧回路を循環する作動油に異物となる粉塵などが取り込まれる。また、アクチュエータの駆動時に生じる熱の影響により、作動油に粘性の高いスラッジと称される異物が発生することもある。粉塵やスラッジのような作動油中の異物は、アクチュエータの駆動部を摩耗劣化させたり、或いは、駆動部を固着させたりする要因となる。従って、油圧回路には、このような異物を捕捉して除去するためのフィルタが備えられている。
【0003】
特許文献1には、建設機械などの作動油中に含まれる不純物を除去する油圧回路が開示されている。この油圧回路は、タンクへ通じるとともにフルフローフィルタを内蔵するフルフロー配管に、チェック弁とオイルクーラとがパラレル接続される。チェック弁及びオイルクーラの上流側には、フルフロー配管から分岐したバイパス配管が設けられる。バイパス配管には、絞り弁(流量制御弁)及びバイパスフィルタが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイパスフィルタは、フルフローフィルタ(リターンフィルタとも称される)よりも細かいメッシュを有し、例えば1ミクロン程度の微細な異物、例えば砂などを捕捉して除去可能な高清浄フィルタである。また、バイパスフィルタは、一般にフルフローフィルタよりも小型であり、固定方法も簡素な構造となっている。このため、バイパスフィルタは、フルフローフィルタの場合に比してフィルタ交換作業が容易である。従って、バイパスフィルタを有効に活用することにより、油圧回路において異物を効率的に除去するとともに、油圧回路におけるフィルタ交換作業の負担軽減及び廃棄物の削減を実現することが求められている。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、異物を効率的に除去することができるとともに、フィルタ交換作業の負担軽減及び廃棄物削減を実現することができる、フィルタ装置及びこのフィルタ装置を備えた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するべく、本発明のフィルタ装置は、液体中の異物を捕捉して除去するフィルタ装置であって、フィルタ装置は、液体が流れる第1の配管に設けられて液体の流れを第1の配管から分岐させる分岐配管と、分岐配管によって第1の配管から分岐される第2の配管に設けられて液体中の異物を捕捉するフィルタと、を備え、分岐配管は、第1の配管から第2の配管への分岐部を含みかつ分岐部に第2の配管への液体の入口が設けられるとともに、液体の上流側から順に、液体中に気泡を発生させて異物に付着させる気泡発生部、当該気泡が付着した異物を含む液体に旋回流を発生させる旋回流発生部、及び分岐部を備え、液体の入口は、分岐配管よりも小さな内径を有し、旋回流発生部は、分岐部において液体の入口の径方向中央に旋回流の渦芯を形成するように構成されている、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の作業機械は、前述したフィルタ装置を有する油圧回路を備えた作業機械であって、油圧回路は、アクチュエータを駆動するための液体としての作動油が循環するとともに、作動油が貯留されるリザーブタンクと、リザーブタンクとアクチュエータとに接続され、リザーブタンクから作動油を吸引してアクチュエータに供給するサクション配管と、アクチュエータとリザーブタンクとに接続され、アクチュエータの駆動に供した作動油をリザーブタンクに戻す第1の配管としてのフルフロー配管と、フルフロー配管から分岐されてリザーブタンクに接続され、アクチュエータの駆動に供した作動油をリザーブタンクに戻すとともに、フィルタとしてのバイパスフィルタが設けられた第2の配管としてのバイパス配管と、を備え、フルフロー配管には、分岐配管で分岐されずにフルフロー配管を通ってリザーブタンクに戻る作動油中の異物を捕捉して除去するフルフローフィルタが設けられ、バイパスフィルタは、フルフローフィルタよりも細かいメッシュを有する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の別形態に係る作業機械は、前述したフィルタ装置を有する油圧回路を備えた作業機械であって、油圧回路は、アクチュエータを駆動するための液体としての作動油が循環するとともに、作動油が貯留されるリザーブタンクと、リザーブタンクとアクチュエータとに接続され、リザーブタンクからポンプにより作動油を吸引してアクチュエータに供給する第1の配管としてのサクション配管と、アクチュエータとリザーブタンクとに接続され、アクチュエータの駆動に供した作動油をリザーブタンクに戻すフルフロー配管と、サクション配管から分岐されてリザーブタンクに接続され、ポンプを通過し且つアクチュエータに供給する前の作動油をリザーブタンクに戻すとともに、フィルタとしてのバイパスフィルタが設けられた第2の配管としてのバイパス配管とを備え、サクション配管は、リザーブタンクの側である作動油の上流側から順に、ポンプを通過する前の作動油中の異物を捕捉して除去するサクションフィルタと、ポンプと、気泡発生部、旋回流発生部、及び分岐部とを備え、フルフロー配管には、作動油中の異物を捕捉して除去するフルフローフィルタが設けられ、バイパスフィルタは、フルフローフィルタよりも細かいメッシュを有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフィルタ装置及びフィルタ装置を備えた作業機械によれば、異物を効率的に除去することができるとともに、フィルタ交換作業の負担軽減及び廃棄物削減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る作業機械に設けられる油圧回路の構成図である。
【
図2】交換作業時におけるフルフローフィルタの分解斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る分岐配管の構成図である。
【
図5】(a)から(g):異物に付着した気泡が成長する過程を示す図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る分岐配管の構成図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る分岐配管の構成図である。
【
図9】本発明の第4実施形態に係る分岐配管の構成図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るフィルタ装置の構成図である。
【
図11】本発明の変形例に係る作業機械に設けられる油圧回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る作業機械について図面を参照して説明する。
図1は、作業機械に設けられる油圧回路1の構成図を示す。油圧回路1は、作業機械(例えば油圧ショベル)のアクチュエータ(例えば油圧シリンダ)2を駆動するための作動油が循環し、リザーブタンク4、サクション配管(第1の配管)6、フルフロー配管(第1の配管)8、及びバイパス配管(第2の配管)10を備えている。
【0013】
リザーブタンク4には作動油が貯留され、リザーブタンク4の上部にはエアブリーザ12が取り付けられている。エアブリーザ12は、リザーブタンク4内の作動油の液面レベルの上下に伴ってリザーブタンク4内への空気の侵入を許容し、侵入する空気を濾過することで作動油中に空気中の粉塵や水分などが入り込むことを抑制する。エアブリーザ12は、リザーブタンク4内に作動油を供給するためにも用いられる。
【0014】
サクション配管6は、リザーブタンク4とアクチュエータ2とに接続され、リザーブタンク4から作動油を吸引してアクチュエータ2に供給する。詳しくは、サクション配管6は、リザーブタンク4の側である作動油の上流側から順に、サクションフィルタ14、及びポンプ16を備えている。ポンプ16は、モータ18により駆動され、サクション配管6においてリザーブタンク4から作動油を吸引してアクチュエータ2に供給する。
【0015】
サクションフィルタ14は、リザーブタンク4内に位置するサクション配管6の入口部に設けられ、ポンプ16を通過する前の作動油を濾過することで作動油中の異物を捕捉して除去する。フルフロー配管8は、アクチュエータ2とリザーブタンク4とに接続され、アクチュエータ2の駆動に供した作動油をリザーブタンク4に戻す。詳しくは、フルフロー配管8は、アクチュエータ2の側である作動油の上流側から順に、分岐配管20、オイルクーラ22、及びフルフローフィルタ24を備えている。
【0016】
分岐配管20には、作動油の上流側から順に、気泡発生部26、旋回流発生部28、及び分岐部30が配置されている。オイルクーラ22は、分岐配管20を通過した後の作動油を冷却する。フルフローフィルタ24は、フルフロー配管8の入口部に設けられるとともにリザーブタンク4に内蔵され、オイルクーラ22を通過した後の作動油を濾過することで作動油中の異物を捕捉して除去する。
【0017】
図2は、交換作業時におけるフルフローフィルタ24の分解斜視図を示す。フルフローフィルタ24は、カバー32、シールリング34、及びスペーサ(ばね)36を介して、リザーブタンク4内に収容した状態でリザーブタンク4の筐体に複数のボルト38により固定される。フルフローフィルタ24の交換作業の際には、各ボルト38、カバー32、シールリング34、及びスペーサ(ばね)36を順に取り外した後、リザーブタンク4からフルフローフィルタ24のフィルタカートリッジ40を取り出して交換する。
【0018】
フルフローフィルタ24のフィルタカートリッジ40は、例えば、直径200mm、高さ500mmの円柱形状をなし、使用済みのものは廃棄する。一方、
図1に示すように、バイパス配管10は、分岐配管20の分岐部30において分岐されてリザーブタンク4に接続され、アクチュエータ2の駆動に供した作動油をリザーブタンク4に戻す。詳しくは、バイパス配管10は、アクチュエータ2の側である作動油の上流側から順に、流量制御弁42、及びバイパスフィルタ(フィルタ)44を備えている。
【0019】
バイパス配管10は、分岐配管20よりも小となる内径を有し、バイパス配管10の入口は分岐部30に位置付けられている。分岐部30は、バイパス配管10の入口において作動油中の微細な異物の凝集を可能とするべく分岐配管20に確保されたスペースである。バイパスフィルタ44は、フルフローフィルタ24よりも細かいメッシュで作動油を濾過することで作動油中の例えば1ミクロン程度の微細な砂などの異物を捕捉して除去する。バイパスフィルタ44を通過する作動油の通液抵抗は大きくなるため、流量制御弁42はバイパス配管10を流れる作動油の流量を制御して作動油の流量を低減する。
【0020】
図3は、バイパスフィルタ44の斜視図を示す。バイパスフィルタ44は、細かいメッシュで作動油を濾過するため、フルフローフィルタ24に比して高い耐圧性能を有し、フルフローフィルタ24よりも小型である。具体的には、バイパスフィルタ44のフィルタカートリッジ46は、例えば、直径150mm、高さ300mmの円柱形状をなし、バイパスフィルタ44の交換作業の際には、フィルタカートリッジ46を取り外して、使用済みのものは廃棄する。
【0021】
<第1実施形態>
図4は、本発明の第1実施形態に係る分岐配管20の構成図を示す。作動油は、分岐配管20において実線矢印で示す方向に流れ、バイパス配管10において破線矢印で示す方向に流れる。気泡発生部26は、作動油中に気泡Bを発生させて異物Mに付着させる。本実施形態の場合、気泡発生部26は、オリフィス50から構成され、作動油がオリフィス50のオリフィス孔50aで縮流されて減圧されることにより、作動油中に溶け込んでいた気体が過飽和状態となって気化する、いわゆるキャビテーション現象によって作動油中に気泡Bを発生させる。
【0022】
図5(a)から
図5(g)は、異物Mに付着した気泡Bが成長する過程を示す。
図5(a)に示すように、作動油中の異物Mの表面には少なからず凹所Dが存在し、この凹所Dに、
図5(b)に示すように、気泡発生部26で発生した核となる気泡Bが付着する。
図5(c)から
図5(f)に示すように、凹所Dに付着した気泡Bの核は、作動油の減圧の加速によって徐々に膨張し、
図5(g)に示すように気泡Bは異物Mよりも大きな体積に成長して異物Mと一体化する。これにより、異物Mには気泡Bによる浮力が作用する。
【0023】
図6は、旋回流発生部28の斜視図を示す。旋回流発生部28は、分岐配管20の内周面20aの周方向に所定の間隔を存して配列された複数の羽根52を有する。詳しくは、各羽根52は、分岐配管20の内周面20aから分岐配管20の径方向中央に向けて立設され、且つ分岐配管20の軸線方向に延設される。このような各羽根52を有する旋回流発生部28を作動油が
図6の矢印方向に通過することにより、各羽根52によって作動油の流れに
図4に示す旋回流Frが発生する。旋回流Frの流れの作用により旋回流Frの旋回中心は圧力が低下し、分岐配管20の径方向中央に
図4に示す渦芯(渦流の中心)Fvが形成される。
【0024】
図4に示すように、分岐部30では、分岐配管20の径方向中央にバイパス配管10の入口10aが位置付けられる。
図5(f)に示したように、気泡Bは異物Mよりも大きな体積に成長して異物Mと一体化し、異物Mに気泡Bによる浮力が作用する。これにより、異物Mは分岐配管20の径方向中央に形成される渦芯Fvとともにバイパス配管10に円滑に誘導される。
【0025】
気泡Bによる浮力が作用する異物Mは、例えば1ミクロン程度の微細で軽い異物Mであり、このような異物Mは、旋回流Frに乗って移動し、渦芯Fvが形成される分岐配管20の径方向中央に凝集され、分岐部30においてバイパス配管10を流れ、バイパスフィルタ44で捕捉されて除去される。
【0026】
一方、微細ではない比較的大きくて重い異物Mに気泡Bが付着したとしても、気泡Bによる浮力は異物Mに有効に作用しない。このような異物Mは、分岐配管20の径方向中央に凝集されることはなく、分岐部30においてバイパス配管10の外周側を流れながら分岐配管20を通過した後、オイルクーラ22を通過してフルフローフィルタ24で捕捉されて除去される。
【0027】
以上のように本実施形態の作業機械は、フルフロー配管8に設けられた分岐配管20に気泡発生部26、旋回流発生部28、及び分岐部30が配置され、また、バイパス配管10は、分岐配管20よりも小となる内径を有して分岐部30に入口10aが位置付けられる。分岐部30では、分岐配管20の径方向中央にバイパス配管10の入口10aが位置付けられる。
【0028】
これにより、気泡Bが付着した異物Mは、渦芯Fvとともにバイパス配管10に誘導され、微細な異物Mをバイパスフィルタ44において選択的に且つ効率的に捕捉して除去することができる。従って、バイパスフィルタ44を従前よりもさらに有効に活用することができるため、油圧回路1全体において異物Mを効率的に除去可能となる。
【0029】
また、バイパスフィルタ44はフルフローフィルタ24に比して小型であることから取り扱いが容易であり、また、バイパスフィルタ44の交換作業は、フルフローフィルタ24の交換作業に比して作業工程が少ない。従って、バイパスフィルタ44を従前よりも有効に活用することにより、油圧回路1におけるフィルタ交換作業の負担を軽減することができる。
【0030】
また、バイパスフィルタ44の場合、フィルタ交換作業時に生じる廃棄物は小型のフィルタカートリッジ46であるため、フルフローフィルタ24のフィルタカートリッジ40を廃棄する場合に比して廃棄物も少なくて済む。従って、油圧回路1におけるフィルタ交換作業時における廃棄物を削減することができる。
【0031】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係る分岐配管20の構成図を示す。なお、以降の各実施形態の説明において、第1実施形態と同様の構成は第1実施形態の場合と同じ符号を図面に付して説明を省略することがある。本実施形態の場合、気泡発生部26は、超音波発生装置54から構成され、作動油が超音波により加振されることにより、作動油中に溶け込んでいた気体が過飽和状態となって気化する、いわゆる超音波キャビテーション現象によって作動油中に気泡Bを発生させる。
【0032】
これにより、第1実施形態の場合と同様に、微細な異物Mを渦芯Fvによって分岐配管20の径方向中央に凝集してバイパス配管10に流し、バイパスフィルタ44で捕捉して除去可能である。従って、本実施形態に場合にも、微細な異物Mをバイパスフィルタ44において選択的に且つ効率的に捕捉して除去することができ、油圧回路1における異物Mの効率的な除去、フィルタ交換作業の負担軽減及び廃棄物の削減を実現することができる。
【0033】
<第3実施形態>
図8は、本発明の第3実施形態に係る分岐配管20の構成図を示す。本実施形態の場合、気泡発生部26は、電極装置56から構成される。電極装置56は、電子を放出し、当該電子によって作動油中に気泡Bを発生させる。例えば、電極装置56は、電子が放出され易いように、当該電子放出部の少なくとも一部が尖った先端形状を有することが好ましい。このように気泡発生部26を構成した場合でも、第1及び第2実施形態の場合と同様に、微細な異物Mをバイパスフィルタ44において選択的に且つ効率的に捕捉して除去することができ、油圧回路1における異物の効率的な除去、フィルタ交換作業の負担軽減及び廃棄物の削減を実現することができる。
【0034】
<第4実施形態>
図9は、本発明の第4実施形態に係る分岐配管20の構成図を示す。本実施形態の場合、気泡発生部26は、ヒータ58から構成され、作動油に接するヒータ58の表面は微細な凹凸処理が施されて所定の表面粗さを有している。ヒータ58は、作動油を加熱するとともに微細な凹凸に衝突させることにより、作動油中に気泡Bを発生させる。これにより、第1から第3実施形態の場合と同様に、微細な異物Mをバイパスフィルタ44において選択的に且つ効率的に捕捉して除去することができ、油圧回路1における異物Mの効率的な除去、フィルタ交換作業の負担軽減及び廃棄物の削減を実現することができる。
【0035】
図10は、本発明の実施形態に係るフィルタ装置60の構成図を示す。フィルタ装置60は、筐体62に分岐配管20、流量制御弁42、及びバイパスフィルタ44を収容することにより形成される。分岐配管20に接続されるフルフロー配管8と、バイパスフィルタ44に接続されるバイパス配管10とは、筐体62から接続ポート64として突出されている。すなわち、フィルタ装置60は、フルフロー配管8、バイパス配管10を備え、フルフロー配管8は分岐配管20を備え、分岐配管20には、上記各実施形態で説明した気泡発生部26、旋回流発生部28、及び分岐部30が配置される。
【0036】
このようにユニット化されたフィルタ装置60は、各接続ポート64において接続することにより油圧回路1への適用が容易である。従って、前述した微細な異物の効率的な除去、フィルタ交換作業の負担軽減及び廃棄物の削減を容易に実現することができる。なお、フィルタ装置60は、作業機械の油圧回路1に限らず、種々の装置の作動油以外の種々の液体が流れる流路に適用可能である。
【0037】
以上で本発明の実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。例えば、気泡発生部26は、作動油中に気泡Bを発生させて、気泡Bを異物Mに付着させることができるのであれば、各実施形態において説明した構成に限定されない。また、旋回流発生部28は、作動油に旋回流Frを発生させ、分岐配管20の径方向中央に渦芯Fvを形成することができるのであれば、前述した羽根52を有する構成に限定されない。
【0038】
また、フィルタ装置60は、前述した油圧ショベルの油圧シリンダの駆動に限らず、種々の作業機械の種々のアクチュエータ2の駆動に適用可能であり、また、前述とは異なる形態で油圧回路1に適用可能である。例えば、
図11に変形例として示すように、サクション配管6に、気泡発生部26、旋回流発生部28、及び分岐部30を配置した分岐配管20を設けても良い。
【0039】
この場合には、サクション配管6に、リザーブタンク4の側である作動油の上流側から順に、サクションフィルタ14、ポンプ16、分岐配管20が配置される。また、バイパス配管10は、サクション配管6に設けられた分岐配管20の分岐部30において分岐されてリザーブタンク4に接続され、ポンプ16を通過し且つアクチュエータ2に供給する前の作動油をリザーブタンク4に戻す。
【0040】
また、フルフロー配管8は、フルフローフィルタ24及びオイルクーラ22のみを備える。本変形例の場合においても、作動油からの微細な異物Mの効率的な除去、フィルタ交換作業の負担軽減及び廃棄物の削減を実現することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 油圧回路
2 アクチュエータ
4 リザーブタンク
6 サクション配管(第1の配管)
8 フルフロー配管(第1の配管)
10 バイパス配管(第2の配管)
10a 入口
20 分岐配管
20a 内周面
24 フルフローフィルタ
26 気泡発生部
28 旋回流発生部
30 分岐部
44 バイパスフィルタ(フィルタ)
50 オリフィス
52 羽根
54 超音波発生装置
56 電極装置
58 ヒータ
60 フィルタ装置
B 気泡
M 異物
Fr 旋回流
Fv 渦芯