(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131048
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】圧電発振器
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20240920BHJP
H03H 9/02 20060101ALI20240920BHJP
H03H 9/09 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03H9/02 A
H03H9/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041070
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長牛 英雄
【テーマコード(参考)】
5J079
5J108
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA43
5J079BA49
5J079FA01
5J079FA14
5J079FA21
5J079HA06
5J079HA09
5J079HA12
5J079HA28
5J079HA29
5J079HA30
5J108BB02
5J108GG03
5J108GG07
5J108GG15
5J108JJ02
5J108JJ03
5J108JJ04
5J108KK03
(57)【要約】
【課題】圧電ユニットを筐体にゲルブッシュを利用して実装してある構造の圧電発振器であって、ゲルブッシュの効果をより発現できる新規な構造を有した圧電発振器を提供する。
【解決手段】圧電素子及び発振回路を搭載している配線基板と、配線基板を実装している筐体と、筐体の、配線基板が実装されている箇所で、筐体と配線基板との間に挿入されているゲルブッシュと、を備える圧電発振器において、ゲルブッシュに対し、所定圧力を加えている加圧部材を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電ユニットを搭載している配線基板と、前記配線基板を実装している筐体と、前記筐体の、前記配線基板が実装されている箇所で、前記筐体と前記配線基板との間に挿入されているゲルブッシュと、を備える圧電発振器において、
前記ゲルブッシュに対し、所定圧力を加えている加圧部材を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記筐体は蓋部材を備え、前記加圧部材は、前記蓋部材に設けられ、前記配線基板を加圧することによって、前記ゲルブッシュを加圧している押しつけピンであることを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器。
【請求項3】
前記押しつけピンの長さは、前記配線基板上面から前記筐体上面までの長さと、前記押しつけピンが配線基板上面に接して前記配線基板を前記筐体の底方向に所定深さ押し付けする長さとを合わせた長さに値することを特徴とする請求項2に記載の圧電発振器。
【請求項4】
前記筐体と前記配線基板との間に挿入されている前記ゲルブッシュは、ワッシャー及びボルトを用いてかつ非加圧の状態で挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相雑音特性の改善が可能な圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に圧電発振器には、位相雑音特性が規定されていることが多い。然も、航空機や飛翔体等の厳しい環境で使用される圧電発振器の場合は、位相雑音特性の規格が一般的なものより厳しい、加振時の位相雑音特性として規定されている。しかし、特に飛翔体に組み込まれた圧電発振器では、飛翔体の急旋回動作等によりバフェットを始めとする振動が圧電発振器に及ぶため、位相雑音特性の規格を満たせないことがあり、改善が望まれていた。
これを解決する1つの手段として特許文献1には、メイン基板とサブ基板から構成された基板において、水晶発振器が搭載されたサブ基板を、緩衝材(ゲルブッシュ)を介してメイン基板に固定するという構造が記載されている(特許文献1の段落0014、
図4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているゲルブッシュを用いる構造は、確かに振動低減の手段として有効と思えるが、この出願に係る発明者の調査によれば、ゲルブッシュの振動低減効果を高めるためには、ゲルブッシュを所定範囲の加圧状態に維持した状態で用いることが好ましいことが分かった(例えば、株式会社タイカ、ブッシュタイプ(ゲルブッシュ)、[online]、[令和5年3月9日検索]、インターネット
<URL:https://taica.co.jp/gel/product/vibration_damping/gelbush.html>)。
一方、圧電発振器は、圧電素子や発振回路が搭載された圧電ユニットを内部に備えている。この圧電ユニットのサイズは一般にそれほど大きなものではないため自重も軽い。例えば、圧電ユニットのサイズは7×5×3(単位:mm)程度である。然も、飛翔体用途の圧電発振器では、圧電発振器自体に質量の規格が設けられていることが多いため、圧電発振器に錘を付加して自重を高めることもできない。従って、圧電発振器にゲルブッシュを用いた構成において、圧電発振器の自重でゲルブッシュを適正な加圧状態に維持することはできず、従って、何らかの加圧手段の検討が必要なことに、この出願に係る発明者は気づいた。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、従ってこの出願の目的は、圧電ユニットを筐体にゲルブッシュを利用して実装してある構造の圧電発振器であって、ゲルブッシュの効果をより発現できる新規な構造を有した圧電発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的の達成を図るため、この発明の圧電発振器によれば、圧電ユニットを搭載している配線基板と、前記圧電ユニット及び前記配線基板を内包し、実装している筐体と、前記筐体の、前記配線基板が実装されている箇所で、前記筐体と前記配線基板との間に挿入されているゲルブッシュと、を備える圧電発振器において、
前記ゲルブッシュに対し、所定圧力を加えている加圧部材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の圧電発振器によれば、圧電発振器の使用環境下で加えられる振動が、配線基板と筐体間に設けたゲルブッシュにより軽減され、位相雑音特性が改善することができる。然も、圧電発振器内にゲルブッシュに所定加圧できる加圧部材を備えているので、ゲルブッシュの有効な性能の発現を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(A)、(B)、(C)図は、本発明の圧電発振器の実施形態を説明するための図である。
【
図2】本発明の圧電発振器の実施形態の構造を説明するための斜視図である。
【
図3】(A)、(B)、(C)図は、ゲルブッシュ40に加圧する過程の図である。
【
図4】(A)、(B)図は、本発明の加圧部材の他の例である。
【
図5】(A)、(B)、(C)図は、本発明の圧電発振器の押しつけピンの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照してこの発明の圧電発振器10についてそれぞれ説明する。
なお、説明に用いる各図はこの発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の説明で述べる形状、材質等はこの発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0010】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態である圧電発振器10について説明する。
図1(A)は、蓋部材50を外した状態の圧電発振器10の上面図、
図1(B)は、
図1(A)のa-a’間の蓋部材50を外した状態の圧電発振器10の断面図、
図1(C)は、
図1(B)のゲルブッシュ40の拡大図、である。
図2は圧電発振器10の構造を示す斜視図である。
【0011】
圧電発振器10は、配線基板20と、筐体30と、ゲルブッシュ40と、蓋部材50(
図2参照)と、加圧部材60と、を備えている。
【0012】
配線基板20は、圧電ユニット21を上面(蓋部材50と対する面)に搭載している。圧電ユニット21は、圧電素子22及び発振回路23を含んでいる。本発明において、圧電素子22は、圧電発振器10の仕様に応じた任意のもので良く、例えば水晶を用いたもの、他の圧電材料を用いたもので良いが、高い周波数精度が必要とされる飛翔体用途の場合であれば、圧電素子22はATカットの水晶振動子やSCカットに代表される2回回転水晶片を用いた水晶振動子が良い。発振回路23は、コンデンサ、抵抗及びトランジスタ等で構成した発振回路でもよいし、発振回路を内蔵した1チップICでもよい。また、配線基板20は、筐体30にゲルブッシュ40を介して実装するための実装穴も開いている(図示せず)。また、配線基板20は、電源電圧及び出力のための端子も備えており、各端子と筐体30を配線等によって接続している(図示せず)。
【0013】
筐体30は、箱型形状のもので、1つの面が開口部となっていて、内部が凹部となっていて、この凹部内に配線基板20を後述する本発明に係る構造で実装できるものとしてある。筐体30は、上記開口部側の面の上部にネジ穴32を備えている。蓋部材50は、このネジ穴32にネジ53を挿入することで筐体30に接続でき、これによって、配線基板20を外部から保護と遮蔽できるものである。また筐体30は、底部に突起31を備えている。突起31は、配線基板20をゲルブッシュ40を介して筐体30に実装する際に、ゲルブッシュ40と接するものである。また、筐体30の内部には、配線基板20の各端子と接続するための端子、筐体30の外部には、内部の端子から繋がっており、外部機器に接続するための端子を備えている(図示せず)。筐体30は、突起31も含め、金属製であり、例えばアルミニウム製である。
【0014】
ゲルブッシュ40は、平面視で楕円形であり、上部41、下部42、カラー43の3つによって、構成されている。ゲルブッシュ40の断面の半分より上方向が上部41であり、平面視で楕円形の上部41は、中心に貫通孔44aが開いている。ゲルブッシュ40の断面の半分より下方向が下部42であり、下部42は、荷重がかかる部位(荷重部)42bと、荷重部42bの中心から上方向に円柱状に形成されている部位(円柱部)42aが一体になって構成されている。下部42の円柱部42aの中心には、貫通孔44bが開いており、円柱部42aの上面から荷重部42bの底面まで、穴が貫いている。その貫通孔44b内部には、金属製のカラー43を備えている。下部42の円柱部42aを上部41の貫通孔44aに挿入することで、ゲルブッシュ40は形成されている。
本発明のゲルブッシュは、タイカ製のブッシュタイプ「S」を使用している(https://taica.co.jp/gel/product/vibration_damping/gelbush.html)。「S」は、適正荷重0.2~0.75kgをかけることで、防振効果を発揮する。
【0015】
図2に示すように、蓋部材50は、平面視で矩形状であり、四隅に筐体30に固定するためのネジ穴51が開いている。また、蓋部材50は、筐体30と対する面に押しつけピン52を備えている。蓋部材50及び押しつけピン52は、金属製であり、例えばアルミニウム製である。
【0016】
加圧部材60は、この場合、筐体30と、蓋部材50と、蓋部材50を筐体30に固定するネジ53と、蓋部材50に設けた押しつけピン52と、によって構成されている。加圧部材60の詳細は、下記の実装例の項にて説明する。
【0017】
配線基板20は筐体30に下記のように実装される。
まず、配線基板20に開いている実装穴の基板下面から基板上面方向に、ゲルブッシュの下部42の円柱部42aを挿入する。次に、実装穴から基板上面に出ているゲルブッシュの下部42の円柱部42aを、ゲルブッシュの上部41の貫通孔44aに挿入する。その後、ゲルブッシュの上部41の上面にワッシャー45を設置し、ワッシャー45の穴及びゲルブッシュの上部41の貫通孔、ゲルブッシュの下部42の貫通孔44bにボルト46を挿入し、突起31に実装する。この時、ワッシャー45及びボルト46は、ゲルブッシュ40に非加圧の状態で挿入しており、ゲルブッシュ40は荷重されていない。
また、本実施例では突起31上にゲルブッシュ40を接する方法により、配線基板20を実装したが、筐体30の底部に直接ゲルブッシュを接する方法により、配線基板20を実装してもよい。
【0018】
図3の圧電発振器10の断面図を参照して、ゲルブッシュ40に所定圧力を加える過程を説明する。
図3(A)は、蓋部材50を筐体30に固定していない図、
図3(B)は、押しつけピン52が配線基板20の上面に接している図、
図3(C)は、蓋部材50がネジ53によって、筐体30に固定されている図である。
ゲルブッシュ40への所定圧力(以降、適正荷重と言う。)の加圧は、加圧部材60によって行う。
蓋部材50は、ネジ53を筐体30の開口部側の面の上部にネジ穴32に挿入することで固定される。蓋部材50を筐体30に固定することで、押しつけピン52は、配線基板20を所定深さだけ筐体30の底方向へ押しつける。配線基板20が筐体30の底方向へ押しつかれたことで、ゲルブッシュの下部42も所定深さだけ、筐体30の底方向へ押しつけられ、潰れた状態になる。このように配線基板20及びゲルブッシュの下部42が所定深さ押しつけられることで、ゲルブッシュ40に適正荷重を加えることができる。つまり、所定深さとは、適正荷重を表現したものであって、この適正荷重を加えることに作用している加圧部材60は、筐体30と、蓋部材50と、蓋部材50を筐体30に固定するネジ53と、蓋部材50に設けた押しつけピン52と、で構成されている。
蓋部材50に設けられた押しつけピン52の長さは、ゲルブッシュ40に適正荷重が加わる長さに設定している。本発明において、配線基板20の上面から筐体30の上面までの長さH1と、押しつけピン52が配線基板20を筐体30の底方向に所定深さ押しつける長さH2(このH2の長さが荷重となる)を合わせた長さが押しつけピン52の長さになっている。従って、押しつけピン52が配線基板20を筐体30の底方向に所定深さ押しつける長さであるH2に相当する部分を長くする程、ゲルブッシュ40に対する荷重を大きくできる。ゲルブッシュ40に適正荷重が加わるよう、予め押しつけピン52の長さを設定し、蓋部材50に設けておく。
【0019】
配線基板20をゲルブッシュ40で挟み、筐体30に実装している構造であるため、圧電発振器10に振動が加えられた場合においても、その振動をゲルブッシュ40が吸収して緩和することができ、圧電発振器10への振動の影響が低減し、位相雑音特性が悪化することを防げる。また、ゲルブッシュ40に荷重を加えるために、蓋部材50に加圧部材60を設けた構造を取っているため、ゲルブッシュ40の有効な性能の発現を期待できる。
【0020】
また、今回は加圧部材60を蓋部材50に設けた例で説明したが、加圧部材60は、
図4に示すような他の例であってもよい。
図4(A)は、筐体30の壁部に加圧部材60が備えられた例、
図4(B)は、筐体30の底部に加圧部材60が備えられた例である。どちらも、加圧部材60に、例えば、配線基板20を筐体30の底方向に押し付けることができるようにネジ穴が設けられており(図示せず)、ネジを締めることによって、加圧をすることができる。
【0021】
図5に押しつけピン52の配置のいくつかの例を示す。
図5(A)は、蓋部材50の短辺側2辺の中央部にそれぞれ押しつけピン52が備えられている例、
図5(B)は、平面視で矩形形の蓋部材50の4つの辺それぞれの中央部に押しつけピン52が備えられている例、
図5(C)は、平面視で矩形状の蓋部材50の四隅と中央に押しつけピン52が備えられている例、である。
【符号の説明】
【0022】
10:圧電発振器 20:配線基板
21:圧電ユニット 22:圧電素子
23:発振回路 30:筐体
31:突起 32:筐体のネジ穴
40:ゲルブッシュ 41:ゲルブッシュの上部
42:ゲルブッシュの下部 42a:円柱部
42b:荷重部 43:カラー
44a:上部の貫通孔 44b:下部の貫通孔
45:ワッシャー 46:ボルト
50:蓋部材 51:蓋部材のネジ穴
52:押しつけピン 53:蓋部材のネジ
60:加圧部材