(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131049
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】制動装置
(51)【国際特許分類】
B60T 11/16 20060101AFI20240920BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B60T11/16 C
B60T8/17 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041071
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 明弘
【テーマコード(参考)】
3D047
3D246
【Fターム(参考)】
3D047BB11
3D047CC07
3D047CC30
3D047FF22
3D246BA02
3D246DA06
3D246GA04
3D246GB37
3D246LA57A
(57)【要約】
【課題】ストロークシミュレータを備えた従来の制動装置は、ストロークシミュレータのヒステリシス特性のみを独立して調整することが困難であった。
【解決手段】ブレーキペダルPの操作に伴ってストロークシミュレータSに作動流体を供給するマスタシリンダMと、ストロークシミュレータSのマスタシリンダM側及びその反対側の少なくとも一方側に、ブレーキペダルPの踏み込み及び戻りの動作に伴って作動流体が流通し且つ踏み込み時と戻り時とで作動流体の流動抵抗の大きさを変える調整機構11を備えた制動装置とし、ストロークシミュレータSのヒステリシス特性を独立して調整することを可能にし、ブレーキペダルPの操作感覚の調整等も可能にした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルに反力を付与するストロークシミュレータを備えた制動装置であって、
前記ブレーキペダルの操作に伴って前記ストロークシミュレータに作動流体を供給するマスタシリンダと、
前記ストロークシミュレータの前記マスタシリンダ側及びその反対側の少なくとも一方側に、前記ブレーキペダルの踏み込み及び戻りの動作に伴って作動流体が流通する調整機構を備え、
前記調整機構が、前記ブレーキペダルの踏み込み時と戻り時とで前記作動流体の流動抵抗の大きさを変える機構であることを特徴とする制動装置。
【請求項2】
前記調整機構が、前記ブレーキペダルの踏み込み時と戻り時とで前記作動流体の流路面積を変化させることにより、前記作動流体の流動抵抗を変える機構であることを特徴とする請求項1に記載の制動装置。
【請求項3】
前記ストロークシミュレータの前記作動流体を貯えるリザーバを備え、
前記調整機構が、前記ストロークシミュレータと前記リザーバとの間に接続してあることを特徴とする請求項1又は2に記載の制動装置。
【請求項4】
前記調整機構が、その内部に、少なくとも第1及び第2の2つの流通部を備え、
前記第1流通部が、同第1流通部を開閉する開閉体を備え、
前記第2流通部が、常時開放されていることを特徴とする請求項2に記載の制動装置。
【請求項5】
前記調整機構が、その内部に、第3流通部を備え、
前記第3流通部が、同第3流通部を開閉する開閉体を備え、
前記第1流通部の前記開閉体が、前記ブレーキペダルの踏み込み時に同第1流通部を開放する往路用開閉体、及び前記ブレーキペダルの戻り時に同第1流通部を開放する復路用開閉体のいずれか一方であり、
前記第3流通部の前記開閉体が、前記往路用開閉体及び前記復路用開閉体の他方であることを特徴とする請求項4に記載の制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられる制動装置に関し、とくに、ストロークシミュレータを備えた電子制御方式の制動装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、電子制御方式の制動装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1には、ブレーキペダルの操作を電気信号に変換し、その電気信号によりアクチュエータを備えた摩擦ブレーキを作動させる制動装置が記載されている。このような電子制御方式の制動装置には、運転者にブレーキペダルの操作感覚を付与するためのストロークシミュレータが用いられている。
【0003】
特許文献1に記載のストロークシミュレータは、ハウジング内に作動流体(ブレーキオイル)により押動されるピストンと、ピストンにより押圧されるばね部材とを収容すると共に、ばね部材を積層した多数の皿ばねで構成することにより、ブレーキペダルの踏み込み量と踏力の特性の調整、特に、ヒステリシス特性の調整を容易にしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来の制動装置は、ストロークシミュレータにおいて、ばね部材のばね定数によりブレーキペダルの踏力とペダルストロークとの関係が定まるので、ヒステリシス特性を調整するために皿ばねの数を変更すると踏力も変更されてしまうことになる。このため、従来の制動装置では、ストロークシミュレータのヒステリシス特性のみを独立して調整することが困難であり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、電子制御方式の制動装置において、ストロークシミュレータのヒステリシス特性を独立して調整することが可能である制動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わる制動装置は、ブレーキペダルに反力を付与するストロークシミュレータを備えた電子制御方式の制動装置である。上記制動装置は、ブレーキペダルの操作に伴ってストロークシミュレータに作動流体を供給するマスタシリンダと、ストロークシミュレータのマスタシリンダ側及びその反対側の少なくとも一方側に、ブレーキペダルの踏み込み及び戻りの動作に伴って作動流体が流通する調整機構を備えている。そして、制動装置は、調整機構が、ブレーキペダルの踏み込み時と戻り時とで作動流体の流動抵抗の大きさを変える機構であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係わる制動装置は、ストロークシミュレータを備えた電子制御方式の制動装置において、調整機構により、ブレーキペダルの踏み込み時と戻り時とで作動流体の流動抵抗の大きさを変えることで、踏み込み時及び戻り時の少なくとも一方の反力特性を変更する。これにより、上記制動装置は、ストロークシミュレータのヒステリシス特性を独立して調整することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係わる制動装置の第1実施形態を説明する図であって、要部の基本構成を示す断面説明図(上段)、踏み込み時の状態を示す断面説明図(中段)、戻り時の状態を示す断面説明図(下段)、及び踏力とストロークとの関係を示すグラフである。
【
図2】本発明に係わる制動装置の第2実施形態を説明する図であって、要部の基本構成を示す断面説明図(上段)、戻り時の状態を示す各々調整機構の断面説明図(下段)、及び踏力とストロークとの関係を示すグラフである。
【
図3】本発明に係わる制動装置の第3実施形態を説明する断面説明図(上段)、及び第4実施形態を説明する断面説明図(下段)である。
【
図4】本発明に係わる制動装置の第5実施形態を説明する図であって、要部の基本構成を示す断面説明図(上段)、戻り時の状態を示す各々調整機構の断面説明図(下段)、及び踏力とストロークとの関係を示すグラフである。
【
図5】本発明に係わる制動装置の第6実施形態を説明する断面説明図である。
【
図6】本発明に係わる制動装置の第7実施形態を説明する図であって、要部の基本構成を示す断面説明図(上段)、戻り時の状態を示す各々調整機構の断面説明図(下段)、及び踏力とストロークとの関係を示すグラフである。
【
図7】本発明に係わる制動装置の第8実施形態を説明する断面説明図である。
【
図8】本発明に係わる制動装置の第9実施形態を説明する図であって、要部の基本構成を示す断面説明図(上段)、戻り時の状態を示す各々調整機構の断面説明図(下段)、及び踏力とストロークとの関係を示すグラフである。
【
図9】本発明に係わる制動装置の第10実施形態を説明する断面説明図である。
【
図10】本発明に係わる制動装置の第11実施形態を説明する図であって、要部の基本構成を示す断面説明図(上段)、戻り時の状態を示す各々調整機構の断面説明図(下段)、及び踏力とストロークとの関係を示すグラフである。
【
図11】本発明に係わる制動装置の第12実施形態を説明する図であって、要部の基本構成を示す断面説明図(上段)、踏み込み時の状態を示す調整機構の断面説明図(下段左)、戻り時の状態を示す調整機構の断面説明図(下段右)、及び踏力とストロークとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係わる制御装置の要部を示す断面説明図である。この制御装置は、ブレーキペダルPの操作を電気信号に変換し、その電気信号によりアクチュエータを備えた摩擦ブレーキ(図示せず)を作動させるものであり、電子制御方式の制動装置、若しくはブレーキ・バイ・ワイヤ方式の制御装置として周知である。なお、
図1の上段に示すブレーキペダルP及びマスタシリンダMは、他の図では省略している。
【0011】
本発明に係わる制動装置は、
図1の上段に示すように、ブレーキペダルPに反力を付与するストロークシミュレータSと、ブレーキペダルPの操作に伴ってストロークシミュレータSに作動流体(ブレーキオイル)を供給するマスタシリンダMと、ストロークシミュレータSの作動流体を貯えるリザーバRを備えている。リザーバRに貯えた作動流体は、マスタシリンダMにも供給される。
【0012】
図示例のストロークシミュレータSは、ブレーキペダルPに反力を付与することにより、運転者にブレーキペダルPの操作感覚を与えるもので、筒状のハウジング1内に、軸線方向に往復動可能なピストン2と、ばね3及びばね受け4を収容した構造である。ピストン2は、マスタシリンダM側の第1圧力室5Aと、その反対側の第2圧力室5Bとを区画し、往復動に伴って両圧力室5A,5Bの容積を反比例的に変化させる。
【0013】
図示例のばね3は、コイルばねであり、ピストン2との間に介装したばね受け4とともに第2圧力室5Bに収容してあり、ピストン2をマスタシリンダM側へ付勢している。ストロークシミュレータSの第1圧力室5Aは、配管6AによりマスタシリンダMに接続してあり、第2圧力室5Bは、配管6Bを介してリザーバRに接続してある。
【0014】
そして、上記の制動装置は、ストロークシミュレータSのマスタシリンダM側及びその反対側の少なくとも一方側に、ブレーキペダルPの踏み込み及び戻りの動作に伴って作動流体が往復流通する調整機構11を備えている。この実施形態の調整機構は、ストロークシミュレータSに対して、マスタシリンダMの反対側に配置してあり、ストロークシミュレータSとリザーバRとを接続する配管6Bの中間に設けてある。
【0015】
上記の調整機構11は、ブレーキペダルPの踏み込み時と戻り時とで作動流体の流動抵抗の大きさを変える機構である。とくに、この実施形態の調整機構11は、ブレーキペダルPの踏み込み時と戻り時とで作動流体の流路面積を変化させることにより、作動流体の流動抵抗を変える機構である。
【0016】
上記の調整機構11は、より具体的に説明すると、ストロークシミュレータSとリザーバRとの間に接続してあって、配管6B内の作動流体が流通するハウジング11Aを備えると共に、ハウジング11Aの内部に、第1及び第2の2つの流通部F1,F2を備えた流路形成部材11Bが収容してある。第1及び第2の流通部F1,F2は、板状の流路形成部材11Bに形成した貫通孔であり、開口面積が同一であっても良いし、開口面積が異なるものでも構わない。
【0017】
上記の調整機構11は、第1流通部F1を開閉する開閉体V1を備え、第2流通部F2が常時開放されている構造である。図示例の開閉体V1は、第1流通部F1のリザーバR側に配置してあり、
図1の上段に示す常態では、スプリングS1により第1流通部F1を塞ぐ位置に付勢されている。この開閉体V1は、ブレーキペダルPの踏み込み時に同第1流通部F1を開放する往路用開閉体である。
【0018】
上記構成を備えた制動装置は、ブレーキペダルPを踏み込むと、
図1の中段に示すように、ストロークシミュレータSの第1圧力室5Aに作動流体が供給され、ばね3を圧縮しつつピストン2が往動し、第2圧力室5B内の作動流体が押し出されて調整機構11に流入する。
【0019】
この際、調整機構11では、作動流体の圧力によりスプリングS1を圧縮しつつ開閉体V1を押圧し、第1流通部F1を開放する。つまり、調整機構11は、常時開放の第2流通部F2に、第1流通部F1の開放を加えることで、流路面積を大きくして、作動流体の流動抵抗を小さくする。
【0020】
また、上記の制動装置は、ブレーキペダルPの戻し時には、ばね3の反発力でピストン2がマスタシリンダM側へ復動する。このとき、調整機構11は、
図1の下段に示すように、ストロークシミュレータS側へ流れる作動流体の圧力と、スプリングS1の反発力によって開閉体V1が押圧され、第1流通部F1を閉塞する。これにより、調整機構11は、第2流通部F2のみが開放状態となり、ブレーキペダルPの踏み込み時よりも流路面積を小さくして、作動流体の流動抵抗を大きくする。
【0021】
上記の制動装置は、ストロークシミュレータSのヒステリシス特性に影響するばね3のばね定数が一定であるが、これに加えて調整機構11を用いることで、踏み込み時に比べて戻り時の作動流体の流動抵抗が大きくなる。その結果、上記の制動装置は、
図1中のグラフに示すように、調整機構11の無い従来例(点線)に比べて、戻り時の反力特性を変更することができる。
【0022】
このようにして、上記の制動装置は、調整機構11を採用することで、ストロークシミュレータSのヒステリシス特性を独立して調整することが可能であり、これによりブレーキペダルPの操作感覚の調整等も可能になる。
【0023】
また、上記の制動装置は、ブレーキペダルPの踏み込み時と戻り時とで作動流体の流路面積を変化させることにより、作動流体の流動抵抗を変える調整機構11を採用したことにより、調整機構11の簡略化を図ることができ、制動装置全体の簡略化や製造コストの低減などに貢献することができる。
【0024】
さらに、上記の制動装置は、ストロークシミュレータSとリザーバRとの間に調整機構11を接続した構成にすることで、調整機構11を耐高圧構造にする必要がなく、調整機構11に簡単で廉価な構造を採用することができる。
【0025】
さらに、上記の制動装置は、調整機構11が、開閉体V1を備えた第1流通部F1と、常時開放された第2流通部F2とを有する調整機構11を採用することで、仮に、開閉体V1に不具合が生じたとしても、作動流体の流通が確実に行われ、ストロークシミュレータSの機能を維持することができる。
【0026】
図2~
図11は、本発明に係わる制動装置の第2~第12の実施形態を説明する図である。以下の各実施形態では、第1実施形態と同一の構成部位に同一符号を付して、詳細な説明を省略する。また、
図2~
図11では、
図1の上段に示すブレーキペダルP及びマスタシリンダMを省略しているが、要部の構成は
図1の上段に示すものと同等である。
【0027】
<第2実施形態>
図2の上段に要部を示す制動装置は、ストロークシミュレータSとリザーバRとの間に調整機構11を備えている。この調整機構11は、ハウジング11Aの内部に、第1~第3の流通部F1~F3を有する流路形成部材11Bを備えている。
【0028】
上記の調整機構11は、第1流通部F1を開閉する開閉体V1及びスプリングS1を備えると共に、第2流通部F2が常時開放されている構造であり、さらに、第3流通部F3を開閉する開閉体V3及びスプリングS3を備えている。第1流通部F1は、第1実施形態と同様に、リザーバR側に、開閉体V1及びスプリングS1が配置してある。これに対して、第3流通部F3は、ストロークシミュレータS側に、開閉体V3及びスプリングS3が配置してある。
【0029】
上記の調整機構11では、第1流通部F1の開閉体V1が、ブレーキペダル(P)の踏み込み時に第1流通部F1を開放する往路用開閉体であり、第3流通部F3の開閉体V3が、ブレーキペダル(P)の戻り時に第3流通部F3を開放する復路用開閉体である。
【0030】
上記の調整機構11は、第1及び第3の流通部F1,F3におけるスプリングS1,S3のばね定数を適宜選択することができ、一例として、第3流通部F3のスプリングS3のばね定数を相対的に大きくする。これにより、第1流通部F1の開閉体V1の開弁圧よりも、第3流通部F3の開閉体V3の開弁圧が大きくなる。すなわち、踏み込み時の開弁圧よりも、戻り時の開弁圧が大きくなる。
【0031】
上記の調整機構11を備えた制動装置は、ブレーキペダルPを踏み込むと、ストロークシミュレータS側からの圧力により、第1流通部F1におけるスプリングS1を圧縮しつつ開閉体V1が押動され、第1流通部F1を開放する。これにより、調整機構11では、作動流体が、第1及び第2の流通部F1,F2を通してリザーバR側に流通する。
【0032】
また、上記の制動装置における調整機構11は、ブレーキペダルPの戻し時には、作動流体がストロークシミュレータS側へ流通する。この際、調整機構11は、先述したように、第1流通部F1の開弁圧(踏み込み時の開弁圧)よりも第3流通部F3の開弁圧(戻り時の開弁圧)を大きく設定しているので、ブレーキペダル(P)の戻り速度が小さい場合には、
図2の下段左側に示すように、常時開放の第2流通部F2を通して作動流体が流通する。このとき、調整機構11は、第1及び第2の流通部F1,F2が開放状態になる踏み込み時に比べて、流路面積が小さくなり、作動流体の流動抵抗が大きくなる。
【0033】
さらに、上記の制動装置は、ブレーキペダル(P)の戻り速度が速い場合には、調整装置11において、
図2の下段右側に示すように、第3流通部F3を開放する。これにより、調整装置11では、流路面積が拡大されて作動流体の流動抵抗が小さくなる。
【0034】
上記の制動装置は、第1実施形態と同等の効果を得ることができるうえに、第1~第3の流通部F1~F3を有する調整機構11を採用すると共に、踏み込み時の開弁圧よりも戻り時の開弁圧を大きく設定しているので、
図2のグラフに示すように、ブレーキペダル(P)の戻り速度に応じたヒステリシス特性を独自に設定することが可能になり、良好なブレーキの効き感覚を実現することができる。
【0035】
<第3,第4実施形態>
図3の上段は、本発明に係わる制動装置の第3実施形態を示す図である。図示の制動装置における調整機構11は、ストロークシミュレータSとリザーバRとの間に配置してあり、配管6Bの中間を形成する2本の分岐管により第1及び第2の流通部F1,F2を構成している。この調整機構11は、第1流通部F1内に、往路用の開閉体V1として、ストロークシミュレータS側の圧力が所定値に達したときに開放されるチェックバルブが配置してあり、第2流通部F2を常時開放している。この調整機構11を備えた制動装置は、第1実施形態(
図1参照)と同等の効果を得ることができる。
【0036】
図3の下段は、本発明に係わる制動装置の第4実施形態を示す図である。図示の制動装置における調整機構11は、ストロークシミュレータSとリザーバRとの間に配置してあり、配管6Bの中間を形成する3本の分岐管により第1~第3の流通部F1~F3を構成している。この調整機構11は、第1流通部F1内に、往路用の開閉体V1として、ストロークシミュレータS側の圧力が所定値に達したときに開放されるチェックバルブが配置してあり、第2流通部F2を常時開放している。
【0037】
そして、調整機構11は、第3流通部F3内に、復路用の開閉体V3として、リザーバR側の圧力が所定値に達したときに開放されるチェックバルブが配置してあり、この際、一例として、第1流通部F1の開弁圧よりも第3流通部F3の開弁圧を大きく設定している。この調整機構11を備えた制動装置は、第2実施形態(
図2参照)と同等の効果を得ることができる。
【0038】
<第5実施形態>
図4の上段に示す制動装置は、ストロークシミュレータSとリザーバRとの間に調整機構11が配置してある。調整機構11は、
図4の下段に示すように、第2実施形態(
図2参照)と同様の構成を備えると共に、第3流通部F3に対して、開閉体V3の反対側でスプリングS3を受けるばね座12と、ばね座12を進退可能に案内するガイド13と、ハウジング11Aを貫通するシャフト14及びナット15を備えている。ばね座12とガイド13の間には、作動流体の流入を抑制するシール16が設けてある。シャフト14は、ハウジング11A内となる一端部が、ばね座12に連結してあり、ハウジング11A外となる他端部に操作部17が設けてある。
【0039】
これにより、調整機構11は、操作部17をハウジング11Aに向けて前進させる(操作部17とハウジング11Aとの距離aを小さくする)と、スプリングS3を圧縮させて第3流通部F3への開閉体V3の圧接力を増すことができる。また、調整機構11は、操作部17を後退させる(距離aを大きくする)と、第3流通部F3に対する開閉体V3の圧接力を減少させ、さらには、第3流通部F3を開放することができる。
【0040】
上記調整機構11を備えた制動装置は、第2実施形態と同等の効果を得ることができ、操作部17を操作して戻り側の開閉体V3のセット荷重や第3流通部F3の開度を選択することで、
図4のグラフに示すように、ブレーキペダル(P)の戻り速度に応じたヒステリシス特性を運転者の好み等に応じて設定することができる。
【0041】
<第6実施形態>
図5に示す制動装置は、上記第4実施形態(
図4参照)と同様の構成を備えると共に、調整機構11が、操作部17を駆動するモータ18と、モータ18のコントローラ19を備えた構成である。コントローラ19は、ブレーキペダル(P)の操作速度、車速感応、及び横G感応を選択するモードスイッチを備えている。
【0042】
上記調整機構11を備えた制動装置は、第4実施形態と同様に、ブレーキペダル(P)の戻り速度に応じたヒステリシス特性を運転者の好み等に応じて設定することができ、その際、コントローラ19を用いることで、調整の自動化や利便性の向上を実現することができる。
【0043】
<第7実施形態>
図6に示す制動装置は、第5実施形態(
図4参照)と同等の構成を備えており、調整機構11が、第5実施形態では第3流通部F3に対して開閉体V3を進退可能にしたのに対して、操作部17により開閉体V3を回動操作して、第3流通部F3を開閉すると共に、第3流通部F3の開度調整を可能にしたものである。
【0044】
上記調整機構11を備えた制動装置は、第5実施形態と同等の効果を得ることができ、開閉体V3の回動位置を選択することで、戻り側の第3流通部F3の開度を変化させ、
図6のグラフに示すように、ブレーキペダル(P)の戻り速度に応じたヒステリシス特性を運転者の好み等に応じて設定することができる。
【0045】
<第8実施形態>
図7に示す制動装置は、上記第7実施形態(
図6参照)と同様の構成を備えると共に、調整機構11が、操作部17を駆動するモータ18と、モータ18のコントローラ19を備えた構成である。コントローラ19は、ブレーキペダル(P)の操作速度、車速感応、及び横G感応を選択するモードスイッチを備えている。
【0046】
上記調整機構11を備えた制動装置は、第7実施形態と同様に、ブレーキペダル(P)の戻り速度に応じたヒステリシス特性を運転者の好み等に応じて設定することができ、その際、コントローラ19を用いることで、調整の自動化や利便性の向上を実現することができる。
【0047】
<第9実施形態>
図8に示す制動装置は、調整機構11が、第5実施形態(
図4参照)の構成と第7実施形態(
図6参照)の構成を併せ持つものである。この実施形態の調整機構11は、
図8における下段左側の2図に示すように、第3流通部F1に開閉体V3を接触させた状態にして、操作部17により開閉体V3を回動させることで、第3流通部F3の開度(流路面積)を調整すると共に、ハウジング11Aとの距離aが変化するように操作部17を操作することで、第3流通部F3に対する開閉体V3の押圧力すなわち開弁圧を調整する。
【0048】
また、上記調整機構11は、
図8における下段右側の2図に示すように、第3流通部F1から開閉体V3を離間させた状態にして、操作部17により開閉体V3を回動させることで、第3流通部F3の開度(流路面積)を調整すると共に、ハウジング11Aとの距離aが変化するように操作部17を操作することで、第3流通部F3に対する開閉体V3の押圧力すなわち開弁圧を調整する。
【0049】
上記調整機構11を備えた制動装置は、第5及び第7の実施形態と同等の効果を得ることができ、操作部17を操作して戻り側の開閉体V3のセット荷重や第3流通部F3の開度(流路面積)を選択することで、
図8のグラフに示すように、ブレーキペダル(P)の戻り速度に応じたヒステリシス特性を運転者の好み等に応じて設定することができる。
【0050】
<第10実施形態>
図9に示す制動装置は、上記第9実施形態(
図8参照)と同様の構成を備えると共に、調整機構11が、操作部17を回転駆動するモータ18Aと、操作部17を進退駆動するモータ18Bと、両モータ18A,18Bのコントローラ19を備えた構成である。コントローラ19は、ブレーキペダル(P)の操作速度、車速感応、及び横G感応を選択するモードスイッチを備えている。
【0051】
上記調整機構11を備えた制動装置は、第7実施形態と同様に、ブレーキペダル(P)の戻り速度に応じたヒステリシス特性を運転者の好み等に応じて設定することができ、その際、コントローラ19を用いることで、調整の自動化や利便性の向上を実現することができる。
【0052】
<第11実施形態>
図10に示す制動装置は、第1実施形態(
図1参照)と同等の構成を備えたものであり、ストロークシミュレータSとリザーバRとの間に調整機構11を配置した第1実施形態に対して、ストロークシミュレータSとマスタシリンダ(
図1の符号M)との間に調整機構11を配置した構成である。
【0053】
上記の制動装置にあっても、第1実施形態と同様に、ブレーキペダル(P)の踏み込み時には、
図10の下段左側に示すように、開閉体V1を押圧して第1流部F1を開放し、常時開放の第2流通部F2と合わせて流路面積を大きくし、作動流体の流動抵抗を小さくする。また、調整機構11は、ブレーキペダル(P)の戻り時には、
図10の下段右側に示すように、開閉体V1で第1流通部F1を閉塞して、第2流通部F2のみを開放状態にし、作動流体の流動抵抗を大きくする。
【0054】
これにより、上記の制動装置は、
図10中のグラフに示すように、調整機構11の無い従来例(点線)に比べて、戻り時の反力特性を変更することができ、ストロークシミュレータSのヒステリシス特性を独立して調整することが可能であり、これによりブレーキペダルPの操作感覚の調整等も可能になる。
【0055】
<第12実施形態>
図11に示す制動装置は、上記の第11実施形態(
図10参照)と同等の構成を備えたものであり、ストロークシミュレータSとマスタシリンダ(
図1の符号M)との間に調整機構11を配置すると共に、ストロークシミュレータSの第1圧力室5A内にのみ作動流体が供給される構成である。ストロークシミュレータSの第2圧力室5Bは、ばね3及びばね受け4を収容したドライタイプの構成である。
【0056】
上記の制動装置にあっても、第11実施形態と同様に、
図11中のグラフに示すように、調整機構11の無い従来例(点線)に比べて、戻り時の反力特性を変更することができ、ストロークシミュレータSのヒステリシス特性を独立して調整することができる。
【0057】
本発明に係わる制動装置は、その構成が上記各実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱為ない範囲で適宜変更することが可能であり、例えば、流通部の数及び配置関係や、開閉体の往路及び復路の配置関係などを変更することができる。
【符号の説明】
【0058】
11 調整機構
F1 第1流通部
F2 第2流通部
F3 第3流通部
M マスタシリンダ
S ストロークシミュレータ
P ブレーキペダル
R リザーバ
V1 開閉体(往路用開閉体)
V3 開閉体(復路用開閉体)