(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131051
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】焼成体
(51)【国際特許分類】
A41D 31/00 20190101AFI20240920BHJP
D01F 1/10 20060101ALI20240920BHJP
A41D 31/04 20190101ALI20240920BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A41D31/00 503M
D01F1/10
A41D31/04 Z
A41D13/00 102
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041075
(22)【出願日】2023-03-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】500254192
【氏名又は名称】小室 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】小室 俊夫
【テーマコード(参考)】
3B211
4L035
【Fターム(参考)】
3B211AB00
3B211AC01
3B211CE01
4L035JJ04
4L035JJ05
4L035JJ09
4L035KK05
(57)【要約】
【課題】フォトンを発生する焼成体を提供する。
【解決手段】本発明の焼成体は、(i)アルミナと、(ii)シリカ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種と、(iii)白金、白金化合物、パラジウム、パラジウム化合物、イリジウム、イリジウム化合物、ロジウム及びロジウム化合物からからなる群から選択される少なくとも1種と、(iv)窒化ケイ素とを含む組成物の焼成体であって、組成物100質量部中、(iv)窒化ケイ素を5~10質量部含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アルミナと、(ii)シリカ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種と、(iii)白金、白金化合物、パラジウム、パラジウム化合物、イリジウム、イリジウム化合物、ロジウム及びロジウム化合物からからなる群から選択される少なくとも1種と、(iv)窒化ケイ素とを含む組成物の焼成体であって、
組成物100質量部中、(iv)窒化ケイ素を5~10質量部含む焼成体。
【請求項2】
更に、(v)銀、銀化合物、金及び金化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の焼成体。
【請求項3】
更に、(vi)セルシアンを含む、請求項1に記載の焼成体。
【請求項4】
更に、(vii)ステアタイトを含む、請求項1に記載の焼成体。
【請求項5】
粒子状であって、平均粒子径が、0.1μm未満である請求項1に記載の焼成体。
【請求項6】
成分(iii)が、白金又は白金化合物を含む請求項1に記載の焼成体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の焼成体を含む繊維。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の焼成体を含むフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成体に関する。
【背景技術】
【0002】
白金を含む組成物は、遠赤外線を発生することが広く知られている。遠赤外線は、放射・輻射波長が数~約400μm領域の電磁波であって、加熱効果、乾燥効果に優れる。このため、遠赤外線放射体としてのセラミックスは、表面を過剰に加熱することなく内部まで均一に加熱できることから高品質の食品加工分野にも活用されてきた。また、遠赤外線放射材を繊維に練り込み又は表面に塗布した、遠赤外線効果を有する繊維は、寝具、洋服、下着等に幅広く用いられている。
【0003】
例えば、特開昭62-184088号公報には、アルミナとシリカとプラチナとを含む遠赤外線放射用の粉末が食品類の日持ちや食味の向上に効果を有することが記載されている。
【0004】
特開平3-190990号公報には、アルミナとチタンとプラチナとを含む赤外線微弱エネルギー放射用の粉末が食品類の日持ちに効果を有するとともに、この粉末を含む合成繊維が血行を促進させ、温熱効果を有し、冷え性や関節痛の症状に効果があることが記載されている。
【0005】
また、特開平3-241025号公報及び特開平4-73226号公報には、アルミナとシリカとプラチナとからなる遠赤外線放射用粉末をナイロン又はポリエステルに混合して得た糸から製造した織物が生体に対して極めて良好な保温性を奏することが記載されている。
【0006】
その後、白金を含む組成物であって、遠赤外線に加え、さらにフォトン(光子)及びマイナスイオンを発生する組成物が報告されている。
例えば、特許文献5には、アルミナと、シリカと、酸化チタンと、白金と、銀とを含む組成物が、遠赤外線及びフォトンを発生することが確認され、該組成物は、抗菌性・殺菌性に優れること、該組成物を繊維に混入した繊維製品は、除電性があることが記載されている。
特許文献6には、アルミナと、シリカと、酸化チタンと、白金と、銀とを含む組成物が、マイナスイオンを発生し、抗菌性を奏されるとともに、該組成物を含む繊維を使用した衣服又は寝具を使用することにより抗血栓性が奏されることが記載されている。
【0007】
特許文献7には、アルミナと、シリカ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種と、白金、白金化合物、パラジウム、パラジウム化合物、イリジウム、イリジウム化合物、ロジウム及びロジウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、セルシアンと、ステアタイトとを含む組成物の焼成体が、フォトン及びイオンを発生し、血液中の乳酸塩濃度を減少させる、免疫力を高める、過酸化脂質を減少させるといった健康増進効果が奏されることが記載されている。
【0008】
しかしながら、フォトンの発生量を高めることが望まれた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭62-184088号公報
【特許文献2】特開平3-190990号公報
【特許文献3】特開平3-241025号公報
【特許文献4】特開平4-73226号公報
【特許文献5】特許4195562号公報
【特許文献6】特許4712378号公報
【特許文献7】特許6606213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、フォトンを発生する焼成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、例えば以下の[1]~[8]が挙げられる。
[1](i)アルミナと、(ii)シリカ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種と、(iii)白金、白金化合物、パラジウム、パラジウム化合物、イリジウム、イリジウム化合物、ロジウム及びロジウム化合物からからなる群から選択される少なくとも1種と、(iv)窒化ケイ素とを含む組成物の焼成体であって、
組成物100質量部中、(iv)窒化ケイ素を5~10質量部含む焼成体。
[2]更に、(v)銀、銀化合物、金及び金化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]の焼成体。
[3]更に、(vi)セルシアンを含む、[1]の焼成体。
[4]更に、(vii)ステアタイトを含む、[1]の焼成体。
[5]粒子状であって、平均粒子径が、0.1μm未満である[1]の焼成体。
[6]成分(iii)が、白金又は白金化合物を含む[1]の焼成体。
[7][1]~[6]のいずれかの焼成体を含む繊維。
[8][1]~[6]のいずれかの焼成体を含むフィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の焼成体は、フォトンを発生する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1で得られた焼成体(平均粒子径0.1μm未満)のフォトンの発生を示す図である。
【
図2】比較例1で得られた焼成体(平均粒子径0.1μm未満)のフォトンの発生を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、(i)アルミナと、(ii)シリカ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種と、(iii)白金、白金化合物、パラジウム、パラジウム化合物、イリジウム、イリジウム化合物、ロジウム及びロジウム化合物からからなる群から選択される少なくとも1種と、(iv)窒化ケイ素とを含む組成物の焼成体であって、
組成物100質量部中、(iv)窒化ケイ素を5~10質量部含む焼成体である。
本発明の組成物は、更に、(v)銀、銀化合物、金及び金化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0015】
<成分(i)アルミナ>
本発明の焼成体となる組成物は、アルミナを含む。
「アルミナ」(Al2O3)は、焼結性に優れる純度99.9%以上の高純度アルミナ(酸化アルミニウム)を用いるのが好ましい。アルミナとして、上市されている粉末状の高純度アルミナを用いることができる。アルミナは、多孔質であることから、その成分自体の物性に加え、成分(iii)及び任意成分の(vi)を担持する効果があると考えられる。
【0016】
また、成分(i)の平均粒子径は、本発明の焼成体を使用する製品及び使用する態様に依存するが、通常の粒子径、例えば数μm以下のものを用いることができる。繊維に混入させて用いる場合は、成分(i)の平均粒子径は、その繊維径に依存して、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm未満、例えば約0.3μmの粒子径に調整することが好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折散乱法により求めた値である。
【0017】
前記成分(i)の含有量は、組成物100質量部中、好ましくは20~60質量部、より好ましくは25~50質量部である。成分(i)の含有量が上記範囲にあると、フォトンの発生を向上させることができる。
【0018】
<成分(ii)シリカ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種>
本発明の焼成体となる組成物は、シリカ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
「シリカ」(SiO2)は、純度99.8%以上の高純度シリカが好ましく、上市されている、例えば超微粒子状無水シリカを用いることができる。シリカの平均粒子径は、成分(i)と同様である。
「酸化チタン」は、酸化チタン(IV)(TiO2)をいう。酸化チタンの平均粒子径は、成分(i)と同様である。
【0019】
シリカ及び酸化チタンは、多孔質であることから、その成分自体の物性に加え、成分(iii)及び任意成分の(vi)を担持する効果があると考えられる。酸化チタンは、光触媒としても機能していると考えられる。
成分(ii)としてはシリカと酸化チタンとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0020】
成分(ii)の含有量は、組成物100質量部中、好ましくは30~70質量部、より好ましくは40~65質量部含有される。成分(ii)の含有量が上記範囲にあると、フォトンの発生を向上させることができる。
【0021】
<成分(iii)白金、白金化合物、パラジウム、パラジウム化合物、イリジウム、イリジウム化合物、ロジウム及びロジウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種>
本発明の焼成体となる組成物は、白金、白金化合物、パラジウム、パラジウム化合物、イリジウム、イリジウム化合物、ロジウム及びロジウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。これらの中でも、少なくとも白金及び白金化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0022】
白金、白金化合物、パラジウム、パラジウム化合物、イリジウム、イリジウム化合物、ロジウム及びロジウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種は、本発明の焼成体において、フォトン発生のための主となる成分と考えられる。
【0023】
白金化合物、パラジウム化合物、イリジウム化合物、ロジウム化合物における化合物の形態としては、有機酸塩、無機酸塩、ハロゲン化物、酸化物、水酸化物、アンモニア化合物等が挙げられる。
【0024】
成分(iii)は、好ましくは、コロイドの形態で添加される。酸素と水素とを吸着するいわゆるコロイド活性化を期待できるからである。成分(iii)としては、平均粒子径約0.7~4nm(7~40Å)の成分(iii)を、例えば塩酸溶液中にコロイド分散させた、成分(iii)の分散コロイドを用いることが好ましい。成分(iii)のコロイドの調製方法は、慣用の方法を用いることができる。成分(iii)のコロイドは、例えば、商業的に上市されている、例えば白金1質量%含有の白金コロイド溶液を用いることができる。
【0025】
成分(iii)はコロイド中に、コロイド活性化の観点から、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.5~2質量%、さらに好ましくは0.8~1.2質量%含有されるものが用いられる。
【0026】
成分(iii)は、本発明の組成物100質量部中、金属の量として、好ましくは0.0015~0.0500質量部、より好ましくは0.003~0.030質量部含まれる。成分(iii)の含有量が上記範囲にあると、健康増進効果等を発現するのに十分なフォトンを発生することができる。
【0027】
<成分(iv)窒化ケイ素>
本発明の焼成体となる組成物は、窒化ケイ素を含む。
任意成分の窒化ケイ素は、Si3N4の組成を有するセラミックスである。セラミックスは、好ましくは1780℃で焼結して得られる。窒化ケイ素は、水素の働きをよくし、水素イオンの移動方向を特定の方向に規制する役割をするものと考えられている。また、その成分自体の物性に加え、成分(iii)及び任意成分の(v)を担持する効果があると考えられる。
【0028】
成分(iv)は、本発明の組成物100質量部中、5~10質量部、好ましくは5~7質量部含まれる。成分(iv)の含有量が上記範囲にあると、フォトンの発生を向上させることができる。
【0029】
<成分(v)銀、銀化合物、金及び金化合物からなる群から選択される少なくとも1種>
本発明の焼成体となる組成物は、銀、銀化合物、金及び金化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
任意成分(v)は、粉末の形態で用いることが好ましく、上市されている銀又は金およびそれらの化合物の粉末を用いることができる。任意成分(v)は、銀及び銀化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0030】
また、成分(v)の平均粒子径は、本発明の焼成体を使用する製品及び使用する態様に依存するが、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下、例えば0.7μmの粒子径に調整することが好ましい。
【0031】
本発明の組成物100質量部中に、金又は銀の量として、0~30.0質量部、好ましくは1.5~30.0質量部、より好ましくは1.5~15.0質量部、さらに好ましくは2.1~6.0質量部含まれる。成分(v)の含有量が上記範囲にあると、フォトンの発生を向上させることができる。
【0032】
本発明の焼成体となる組成物は、更に、成分(vi)セルシアン及び/又は成分(vii)ステアタイトを含んでいてもよい。
<成分(vi)セルシアン>
任意成分セルシアンは、BaO・Al2O3・2SiO2の構造を有するセラミックスである。セルシアンの製造方法としては、公知の製造方法が挙げられるが、たとえば、BaCO3、α-Al2O3、及びSiO2を原料として用いて、焼成を行なうことが挙げられる。
成分(vi)は、本発明の組成物100質量部中、好ましくは0.1~5.0質量部、より好ましくは1.0~2.5質量部含まれる。
【0033】
<成分(vii)ステアタイト>
任意成分ステアタイトは、MgO・SiO2の構造を有するセラミックスであり、プロトエンスタタイトであることが好ましい。ステアタイトの製造方法としては、公知の製造方法が挙げられるが、たとえば、タルクを原料として用いて、焼成を行なうことが挙げられる。
成分(vii)は、本発明の組成物100質量部中、好ましくは0.1~5.0質量部、より好ましくは1.0~2.5質量部含まれる。
【0034】
<その他の成分>
本発明の焼成体となる組成物は、上記成分の他に結合剤、安定化剤等の添加剤等を含んでいてもよい。
【0035】
<製造方法>
本発明の焼成体は、
(工程1)成分(i)、(ii)及び(iv)を混合して第1混合物を得る工程と、
(工程2)前記工程1で得られた第1混合物に、成分(iii)及び任意の成分を加えて第2混合物を得る工程と、
(工程3)前記工程2で得られた第2混合物を800~1000℃で加熱し、焼成体を得る工程とを有する製造方法により製造することができる。
【0036】
最初に(工程1)混合工程を行なう。具体的には、成分(i)、(ii)及び(iv)とを、混合して第1混合物を得る。
【0037】
次に、(工程2)混合工程を行なう。具体的には、工程1でえられた第1混合物に、成分(iii)及び任意の成分を混合して第2混合物を得る。この工程では、成分(iii)及び任意の成分(v)を加熱して第1混合物に接触させてもよく、その際の温度、圧力を調整することにより、成分(i)、(ii)及び(iv)の細孔及び/又は表面に、成分(iii)及び任意の成分(v)を担持させることも好ましい。
【0038】
最後に(工程3)焼成工程を行なう。具体的には、上記工程2で得られた第2混合物を800~1000℃で15~20分間加熱し、焼成体を得る。
【0039】
さらに、本発明の焼成体は、微粒子粉末として製造することができる。本発明の焼成体は、粒子状であって、平均粒子径が0.1μm未満が好ましい。平均粒子径が上記範囲にあることで、フォトンの発生量が向上すると考えられる。なお、平均粒子径は、レーザー回折散乱法により求めた値である。
【0040】
上記平均粒子径にする方法としては、原料の粒子径を調整すること、及びビーズミルを用いて、上記焼成体を、アルミナボールの存在下湿式粉砕を行なうことが挙げられる。
【0041】
<特性>
図1に示すように、本発明の焼成体は発光する。すなわちフォトンを発生する。
【0042】
<用途>
本発明の焼成体は、健康増進用途に用いられる。
より具体的には、血行が良くなる、過酸化脂質が抑制できる、運動後の乳酸の生成を抑制できる、免疫力が安定するといった健康増進用途が挙げられる。さらに具体的には、生理痛、冷え性、肩こり、リウマチ、動脈硬化、高コレステロール、糖尿病、疲労回復、流感予防、微小血栓等の改善に役立つと期待される。
【0043】
本発明の焼成体は、上述のように、フォトンを発生するため、本発明の焼成体を用いると、人間の体内でNOが発生すると考えられ、発生したNOが血管を弛緩させ、血行などに影響を与えるため、上記の健康増進用途に好適に用いることができると考えられる。
【0044】
〈製品〉
本発明の焼成体は、繊維及びフィルム等に含ませることができる。
化学繊維及びフィルムに含ませる場合は、本発明の焼成体を含むマスターバッチを使用することもできる。マスターバッチを製造する方法は、本発明の焼成体を、粉体状にして合成高分子材料に練り込む方法又は分散液の状態にして合成高分子材料に混合する方法等が挙げられる。このとき、マスターバッチ中の本発明の焼成体は0.1~25質量%とすることができる。
【0045】
1.繊維
本発明の焼成体は、繊維に含ませた製品とすることができる。
繊維としては、天然繊維、化学繊維が挙げられ、天然繊維としては、コットン、ウール、シルク、麻等が挙げられ、化学繊維としては、セルロース系、ナイロン等のポリアミド系、ビニロン等のポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。たとえば、天然繊維と本発明の焼成体を含む化学繊維とを混紡してもよい。
【0046】
本発明の焼成体を繊維に含ませるためには、本発明の焼成体を繊維に練り込む、又は繊維表面に付着させることができる。本発明の焼成体を繊維に練り込む方法としては、繊維に対し、本発明の焼成体を例えば0.1~25質量%、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.3~1.5質量%混合し、繊維溶融して混合物として、この混合物を慣用の紡糸法、例えば溶融紡糸、乾式紡糸、湿式紡糸を用いて紡糸することが挙げられる。本発明の焼成体を含むマスターバッチを製造してから紡糸することも好ましい。本発明の焼成体を繊維表面に付着させる方法としては、スプレー、ディッピング又はコーティングする方法を採用することができる。
繊維には、本発明の焼成体の他、酵素、ヒアルロン酸等の保湿剤等を練り込むことができる。
本発明の焼成体を含む繊維は、寝具、衣類等に好適に用いられる。
【0047】
2.フィルム
本発明の焼成体は、フィルムに含ませた製品とすることができる。
フィルムの樹脂としては、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタラート、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
本発明の焼成体をフィルムに含ませる方法としては、溶融状態の上記樹脂に粉末状の本発明の焼成体を添加し混合した後、公知の方法にて成形することが挙げられる。本発明の焼成体を含むマスターバッチを上記熱可塑性樹脂と混合し成形することもできる。
本発明の焼成体を含むフィルムは、サージカルテープに好適に用いられる。
【0048】
なお、上記繊維及びフィルムの製造において、必要に応じて、例えば、酸化マグネシウム、マイカ、炭酸カルシウム、ゼオライト等の触媒、可塑材、紫外線吸収剤、充填剤、着色剤、着色防止剤、難燃剤、ブリードアウト防止剤、安定剤、耐熱剤、蛍光増白剤等の各種の添加剤を配合することができる。
【実施例0049】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0050】
[実施例1]焼成体の製造(1)
市販のアルミナ、シリカ、酸化チタン(チタニア)及び窒化ケイ素を、いずれも粒度1μm未満になるように粒度調整した。次いで、アルミナ、シリカ及び酸化チタン(チタニア)をそれぞれ30質量部ずつ、窒化ケイ素を5質量部混合し、第1混合物を得た。
第1混合物に白金1%含有の白金コロイド液(平均粒子径40オングストローム)を2.5質量部(白金の量として0.025質量部)及び粒子径0.2~1.0μm、平均粒子径0.7μmの銀粉末2.5質量部を加えた第2混合物を得た。第2混合物を800℃で20分間加熱して焼成体を得た。
得られた焼成体をビーズミルという装置を用いて、アルミナボールの存在下湿式粉砕により粉砕した。得られた粉砕された焼成体のレーザー回折散乱法により求めた平均粒子径は、0.1μm未満であった。
この平均粒子径0.1μm未満の焼成体の発光量を測定した。結果を
図1に示す。
【0051】
[比較例1]焼成体の製造(2)
実施例1において、窒化ケイ素を使用しないで、アルミナ、シリカ及び酸化チタン(チタニア)をそれぞれ31.67質量部ずつ混合して第1混合物を得たこと以外は実施例1と同様にして、平均粒子径0.1μm未満の焼成体を得た。
この窒化ケイ素を含まない平均粒子径0.1μm未満の焼成体の発光量を測定した。結果を
図2に示す。
【0052】
[応用例1]
実施例1の焼成体を、ポリエステル100質量部に対して6質量部混合してマスターバッチを製造した。このマスターバッチをポリエステルに対して10質量%混合し、溶融紡糸することにより、75デニールの糸及び30デニールの糸を製造した。
【0053】
[応用例2]
応用例1で得られた繊維を用いて、以下の布を製造した。
繊維混率:応用例1の繊維30%、綿70%
【0054】
[応用例3]
応用例1で得られた繊維を用いて、以下の布を製造した。
繊維混率:応用例1の繊維100%、
【0055】
実施例における各測定値は、以下の方法で測定した。
[発光量の測定]実施例1の焼成体を、ポリエステル100質量部に対して6質量部混合してマスターバッチを製造し、測定に用いた。
測定装置:極微弱発光分光装置CLA-FS4(東北電子産業株式会社製)及び試料室CLS-ST4(東北電子産業株式会社製)を用いた。
測定条件:上記マスターバッチ2gをφ50ステンレスシャーレに入れ、空気中、100℃で発光量を10分間測定した。
測定は3回行い、その平均値を
図1及び
図2に示す。
【0056】
[平均粒子径の測定]
レーザー回折散乱法により求めた。
【0057】
図1と
図2とを比較すると、
図1に示す本願の焼成体は、窒化ケイ素を含まない
図2の焼成体よりも、フォトンの発光量のピークの値が1.3倍も高いことがわかる。
(i)アルミナと、(ii)シリカ及び酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種と、(iii)白金、白金化合物、パラジウム、パラジウム化合物、イリジウム、イリジウム化合物、ロジウム及びロジウム化合物からからなる群から選択される少なくとも1種と、(iv)窒化ケイ素と、(v)銀、銀化合物、金及び金化合物からなる群から選択される少なくとも1種とを含む組成物の焼成体であって、
組成物100質量部中、(iv)窒化ケイ素を5~10質量部含む焼成体。