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特開2024-131057ブラックマトリックス用顔料分散組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131057
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ブラックマトリックス用顔料分散組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240920BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240920BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20240920BHJP
   C09C 1/48 20060101ALI20240920BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G03F7/004 505
G03F7/004 501
G03F7/004 504
G03F7/027 515
C09C1/48
C09D17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041084
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 朋樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 康人
(72)【発明者】
【氏名】平井 淳一
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
4J037
【Fターム(参考)】
2H148BE36
2H148BE37
2H148BF19
2H148BH01
2H148BH17
2H225AC36
2H225AC45
2H225AC54
2H225AC72
2H225AD06
2H225AM22P
2H225AM23P
2H225AM95P
2H225AN05P
2H225AN39P
2H225AN94P
2H225AN98P
2H225AP03P
2H225AP08P
2H225AP11P
2H225BA16P
2H225BA20P
2H225BA32P
2H225BA35P
2H225CA18
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J037AA02
4J037CC16
4J037CC23
4J037EE08
4J037FF01
(57)【要約】
【課題】得られるレジスト組成物の保存安定性が優れ、OD値(光学濃度)の低下を抑制することができ、得られるレジスト膜の反射率を低くすることができ、高精細なディスプレイが得られる、ブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供する。
【解決手段】ラクタムブラックと、シリカ系粒子と、塩基性基含有顔料分散剤と、アルカリ可溶性樹脂とを含み、下記条件A~条件Cの少なくともいずれかを満たす、ブラックマトリックス用顔料分散組成物。
(条件A)カーボンブラックを含まない。
(条件B)第1のカーボンブラックを含み、第1のカーボンブラックの平均一次粒子径が28nm以下である。
(条件C)第2のカーボンブラックを含み、第2のカーボンブラックの平均一次粒子径が30nm以上であり、かつ、塩基性基含有顔料分散剤のTgが10℃以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクタムブラックと、シリカ系粒子と、塩基性基含有顔料分散剤と、アルカリ可溶性樹脂とを含み、
下記条件A~条件Cの少なくともいずれかを満たす、ブラックマトリックス用顔料分散組成物。
(条件A)カーボンブラックを含まない。
(条件B)第1のカーボンブラックを含み、前記第1のカーボンブラックの平均一次粒子径が28nm以下である。
(条件C)第2のカーボンブラックを含み、
(C1)前記第2のカーボンブラックの平均一次粒子径が30nm以上であり、かつ、
(C2)前記塩基性基含有顔料分散剤のガラス転移温度(Tg)が10℃以下である。
【請求項2】
前記シリカ系粒子は、ポリマー/シリカ複合体である、請求項1記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項3】
前記塩基性基含有顔料分散剤は、アクリル系分散剤である、請求項1または2記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項4】
前記アルカリ可溶性樹脂は、アクリル系樹脂またはエポキシアクリレート系樹脂である、請求項1または2記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項5】
請求項1または2記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物を含む、ブラックマトリックス用レジスト組成物。
【請求項6】
請求項5記載のブラックマトリックス用レジスト組成物から形成された、ブラックマトリックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラックマトリックス用顔料分散組成物に関する。より詳細には、本発明は、得られるブラックマトリックス用レジスト組成物の保存安定性が優れ、基板へのレジスト塗布~プレベーク間での待機時間におけるOD値(光学濃度)の低下を抑制することができ、得られるレジスト膜の反射率を低くすることができ、高精細なディスプレイが得られる、ブラックマトリックス用顔料分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブルタイプのディスプレイ等には、反射防止に使用する円偏光板に代えて、反射防止のためにカラーフィルターが使用される。カラーフィルターに使用される黒色隔壁材は、従来よりも低反射率のものが求められる。そのような黒色隔壁材を得るためのブラックマトリックス用の顔料分散組成物は、着色剤としてラクタムブラックおよびカーボンブラックを含む(特許文献1参照)。ところで、パネルメーカーでは、ブラックマトリックスの作製を効率化するために、レジストを塗布したガラス基板をすぐにはプレベークせず、塗布後の基板が複数枚まとまってからプレベークする工程が採用される。そのため、複数の基板の中には、塗布直後にプレベークされるものと、塗布後10分程度の待機時間を経てからプレベークされるものとが混在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-177204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の顔料分散組成物を塗布した後に、長い待機時間を置いてからプレベークした基板は、塗布直後にプレベークした基板に比べて、光学濃度(OD値)が低下するという問題がある。また、特許文献1に記載の顔料分散組成物を用いてレジスト膜を作製すると、得られたレジスト膜は、反射率が大きくなり、かつ、高精細なディスプレイが得られにくい。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、得られるブラックマトリックス用レジスト組成物の保存安定性が優れ、基板へのレジスト塗布~プレベーク間での待機時間におけるOD値(光学濃度)の低下を抑制することができ、得られるレジスト膜の反射率を低くすることができ、高精細なディスプレイが得られる、ブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ラクタムブラックと、シリカ系粒子と、塩基性基含有顔料分散剤と、アルカリ可溶性樹脂とを含み、カーボンブラックを含まないか、または、所定のカーボンブラックおよび所定の塩基性基含有顔料分散剤を含むことにより、上記課題を同時に解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。上記課題を解決する本発明は、以下の構成を主に備える。
【0007】
(1)ラクタムブラックと、シリカ系粒子と、塩基性基含有顔料分散剤と、アルカリ可溶性樹脂とを含み、下記条件A~条件Cの少なくともいずれかを満たす、ブラックマトリックス用顔料分散組成物。
(条件A)カーボンブラックを含まない。
(条件B)第1のカーボンブラックを含み、前記第1のカーボンブラックの平均一次粒子径が28nm以下である。
(条件C)第2のカーボンブラックを含み、
(C1)前記第2のカーボンブラックの平均一次粒子径が30nm以上であり、かつ、
(C2)前記塩基性基含有顔料分散剤のガラス転移温度(Tg)が10℃以下である。
【0008】
このような構成によれば、ブラックマトリックス用顔料分散組成物は、保存安定性が優れる。また、このようなブラックマトリックス用顔料分散組成物を用いて得られるブラックマトリックス用レジスト組成物は、基板へのレジスト塗布~プレベーク間での待機時間におけるOD値(光学濃度)の低下を抑制することができる。得られるレジスト膜は、反射率が低く、高精細なディスプレイが得られ得る。
【0009】
(2)前記シリカ系粒子は、ポリマー/シリカ複合体である、(1)記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【0010】
このような構成によれば、ブラックマトリックス用顔料分散組成物は、反射率が低いディスプレイが得られ得る。
【0011】
(3)前記塩基性基含有顔料分散剤は、アクリル系分散剤である、(1)または(2)記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【0012】
このような構成によれば、ブラックマトリックス用顔料分散組成物は、高精細なディスプレイが得られ得る。
【0013】
(4)前記アルカリ可溶性樹脂は、アクリル系樹脂またはエポキシアクリレート系樹脂である、(1)~(3)のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【0014】
このような構成によれば、ブラックマトリックス用顔料分散組成物は、高精細なディスプレイが得られ得る。
【0015】
(5)(1)~(4)のいずれかに記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物を含む、ブラックマトリックス用レジスト組成物。
【0016】
このような構成によれば、ブラックマトリックス用レジスト組成物は、保存安定性が優れる。また、ブラックマトリックス用レジスト組成物は、基板へのレジスト塗布~プレベーク間での待機時間におけるOD値(光学濃度)の低下を抑制することができる。得られたレジスト膜は、反射率が低く、高精細なディスプレイが得られ得る。
【0017】
(6)(5)記載のブラックマトリックス用レジスト組成物から形成された、ブラックマトリックス。
【0018】
このような構成によれば、ブラックマトリックスは、反射率が低く、高精細なディスプレイが得られ得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、得られるブラックマトリックス用レジスト組成物の保存安定性が優れ、基板へのレジスト塗布~プレベーク間での待機時間におけるOD値(光学濃度)の低下を抑制することができ、得られるレジスト膜の反射率を低くすることができ、高精細なディスプレイが得られる、ブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<ブラックマトリックス用顔料分散組成物>
本発明の一実施形態のブラックマトリックス用顔料分散組成物(以下、顔料分散組成物ともいう)は、ラクタムブラックと、シリカ系粒子と、塩基性基含有顔料分散剤と、アルカリ可溶性樹脂とを含む。顔料分散組成物は、下記条件A~条件Cの少なくともいずれかを満たす。以下、それぞれについて説明する。
(条件A)カーボンブラックを含まない。
(条件B)第1のカーボンブラックを含み、第1のカーボンブラックの平均一次粒子径が28nm以下である。
(条件C)第2のカーボンブラックを含み、
(C1)第2のカーボンブラックの平均一次粒子径が30nm以上であり、かつ、
(C2)塩基性基含有顔料分散剤のガラス転移温度(Tg)が10℃以下である。
【0021】
(ラクタムブラック)
ラクタムブラックは、以下の構造を有する公知のラクタムブラックである。具体的には、ラクタムブラックは、Irgaphor Black S 0100 CF(BASF社製)等である。
【0022】
【化1】
【0023】
本実施形態のラクタムブラックの体積基準粒径D50値は、70nm以上であることが好ましく、85nm以上であることがより好ましい。また、D50値は、130nm以下であることが好ましく、115nm以下であることがより好ましい。D50値が上記範囲内であることにより、得られる顔料分散組成物は、顔料が沈降しにくく、保存安定性が良い。また、顔料分散組成物は、得られるレジスト膜の直線性やラフネスが良い。
【0024】
ラクタムブラックの体積基準粒径D90値は、160nm以上であることが好ましく、180nm以上であることがより好ましい。また、D90値は、300nm以下であることが好ましく、280nm以下であることがより好ましい。D90値が上記範囲内であることにより、得られる顔料分散組成物は、顔料が沈降しにくく、保存安定性が良い。また、顔料分散組成物は、得られるレジスト膜の直線性やラフネスが良い。
【0025】
本実施形態において、体積基準粒径は、ナノトラック(UPA-EX150、日機装(株)製)を用いて、レーザー回析式粒度測定法により測定し得る。
【0026】
ラクタムブラックの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、ラクタムブラックの含有量は、顔料分散組成物中、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、ラクタムブラックの含有量は、顔料分散組成物中、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。ラクタムブラックの含有量が上記範囲内であることにより、顔料分散組成物は、得られるレジスト膜のOD値と現像密着性が良好となる。
【0027】
(シリカ系粒子)
シリカ系粒子は特に限定されない。一例を挙げると、シリカ系粒子は、フュームドシリカ、コロイダルシリカ、ポリマー/シリカ複合体等から選択される。本実施形態において、シリカ系粒子は、得られるレジスト膜の反射率を低下させるために配合される。また、シリカ系粒子は、表面をトリメチルシリル処理されていてよい。
【0028】
ポリマー/シリカ複合体は、有機ポリマー粒子とシリカ粒子を複合させた粒子である。本実施形態において、ポリマー/シリカ複合体は、得られるレジスト膜の反射率を低下させるために配合される。
【0029】
シリカ系粒子の粒子径は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。また、シリカ系粒子の平均一次粒子径は、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。粒子径が上記範囲内であることにより、顔料分散組成物から得られるブラックマトリックス用レジスト組成物は、顔料が沈降しにくく、保存安定性が優れる。なお、本実施形態において、粒子径は、電子顕微鏡観察による算術平均径の値を算出するか、または、市販品の場合はカタログ値を参考とし得る。
【0030】
シリカ系粒子のBET比表面積は、10m2/g以上であることが好ましく、20m2/g以上であることがより好ましい。また、BET比表面積は、200m2/g以下であることが好ましく、180m2/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が上記範囲内であることにより、得られるレジスト膜の反射率を低下させやすい。なお、本実施形態において、BET比表面積は、JIS Z8830:2013等の方法によって測定するか、または、市販品の場合はカタログ値を参考とし得る。
【0031】
(塩基性基含有顔料分散剤)
塩基性基含有顔料分散剤は特に限定されない。一例を挙げると、塩基性基含有顔料分散剤は、アクリル系分散剤、ウレタン系分散剤等である。これらの中でも、塩基性基含有顔料分散剤は、アクリル系分散剤であることが好ましい。これにより、顔料分散組成物は、高精細なディスプレイが得られやすい。
【0032】
・アクリル系分散剤
アクリル系分散剤は、ブロック型共重合体(アクリル系ブロック共重合体)を含む。アクリル系ブロック共重合体は特に限定されない。一例を挙げると、アクリル系ブロック共重合体は、アミン化合物を単量体として含むアクリル系ブロック共重合体である。
【0033】
アミン化合物である単量体を含むアクリル系ブロック共重合体を構成するブロックの種類は、2種であってもよく、3種以上であってもよい。そのうち1種以上のブロックは、アミン化合物であるラジカル重合性不飽和結合を有する単量体を含むブロックである。
【0034】
このブロックを構成する単量体は、非環式アミン化合物、複素環式アミン化合物、または4級アンモニウムカチオン化合物であり、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート等の非環式アミン化合物、ビニルピリジン、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート等の複素環式アミン化合物、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートを塩化ベンジルにより4級化しカチオン化してなる化合物等の4級アンモニウムカチオン化合物等であることが好ましい。これらの単量体のうちの1種の単量体からなるブロックでも良く、2種以上の単量体がランダム重合してなるブロックや、2種以上の単量体がブロック重合してなるブロックでも良い。また、ペンタメチルピペリジニルメタクリレートおよび/またはジメチルアミノプロピルアクリレートのブロックと、他の重合可能なエチレン性不飽和単量体からなるブロックとからなる構造を有するものが特に好ましい。
【0035】
アミン化合物である単量体に由来するブロックと共重合する他の重合可能なブロックは、1種の単量体からなるブロックであってもよく、2種以上の単量体がランダム重合したブロックであってもよい。アミノ基やピリジン環を含む単量体由来の単位を有しないことが好ましい。また、カルボン酸基、水酸基、チオール基、硫黄やリン含有の基を有しないことがさらに好ましい。なお、他の重合可能なエチレン性不飽和単量体からなるブロックは1種であってもよく、2種のブロックであってもよい。
【0036】
この他の重合可能なエチレン性不飽和単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロールモノアクリレート等のグリセロール(メタ)クリレート、N-フェニルマレイミド、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、カルボエポキシジアクリレート等のモノマー、オリゴマー類の群から選ばれる少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体との共重合体等である。ただし、N-ビニルピロリドン、硫黄元素含有モノマーは使用しない方が望ましい。
【0037】
ブロック共重合体は、リビングラジカル重合、アニオン重合にて合成されたブロック樹脂を採用し得る。
【0038】
上記アクリル系分散剤のアミン価は、0mgKOH/gを超え、100mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0039】
アクリル系分散剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アクリル系分散剤の含有量は、顔料分散組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。また、アクリル系分散剤の含有量は、顔料分散組成物中、30.0質量%以下であることが好ましく、25.0質量%以下であることがより好ましい。アクリル系分散剤の含有量が上記範囲内であることにより、顔料分散組成物は、分散安定性が優れる。
【0040】
・ウレタン系分散剤
ウレタン系分散剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に、分子内にヒドロキシ基を1個以上有する数平均分子量300~10,000の化合物および分子内にイソシアネート基と反応可能な官能基を有する塩基性基含有化合物を反応させて得られたものが利用できる。このようなウレタン系分散剤を得る方法は、特開昭60-166318号に記載されている方法等が利用できる。
【0041】
ウレタン系分散剤を構成するポリイソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を挙げることができる。一例を挙げると、2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物は、2,4-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートの2量体、2,6-トリレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4(または2,6)ジイソシアネート、1,3-(イソシアネートメチレン)シクロヘキサン等の脂肪族や脂環式ポリイソシアネート;ジイソシアネートをもとにしたイソシアヌル基を有するポリイソシアネート(ジイソシアネートが3量化して形成するイソシアヌル基を有するポリイソシアネート等)、ポリオールにジイソアネートを反応させて得られるポリイソシアネート、ジイソシアネート化合物のビウレット反応によって得られるポリイソシアネート等である。ポリイソシアネート化合物は、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートをもとにしたイソシアヌル基を有するポリイソシアネートであることが好ましい。
【0042】
ウレタン系分散剤を構成する分子内にヒドロキシ基を1個以上有する化合物は、ポリエーテル化合物、ポリエステル化合物等である。
【0043】
上記ポリエーテル化合物は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロパンジオール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等のアルキレングリコール類、メタノール、エタノール等の低分子モノオール類の、エチレンオキシド変性物、プロピレンオキシド変性物、ブチレンオキシド変性物、テトラヒドロフラン変性物等である。
【0044】
上記ポリエステル化合物は、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等のアルキレングリコール類、メタノール、エタノール等の低分子モノオール類の、ε-カプロラクトン変性物、γ-ブチロラクトン変性物、δ-バレロラクトン変性物、メチルバレロラクトン変性物;アジピン酸やダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸と、ネオペンチルグリコールやメチルペンタンジオール等のポリオールとのエステル化物である脂肪族ポリエステルポリオール;テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸と、ネオペンチルグリコール等のポリオールとのエステル化物である芳香族ポリエステルポリオール等のポリエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリテトラメチレンヘキサグリセリルエーテル(ヘキサグリセリンのテトラヒドロフラン変性物)等の多価ヒドロキシ基化合物と、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸等のジカルボン酸とのエステル化物;グリセリン等の多価ヒドロキシ基含有化合物と脂肪酸エステルとのエステル交換反応により得られるモノグリセリド等の多価ヒドロキシ基含有化合物等である。上記分子内にヒドロキシ基を1個以上有する化合物は、アルコール類のε-カプロラクトン付加物であることが好ましい。
【0045】
上記分子内にヒドロキシ基を1個以上有する化合物の数平均分子量は、300~10,000であることが好ましく、300~6,000であることがより好ましい。なお、数平均分子量は、カラムクロマトグラフィー法によって測定することができる。
【0046】
上記ウレタン系分散剤を構成する分子内にイソシアネート基と反応可能な官能基を有する塩基性基含有化合物は特に限定されない。一例を挙げると、ウレタン系分散剤を構成する分子内にイソシアネート基と反応可能な官能基を有する塩基性基含有化合物は、N,N-ジ置換アミノ基または複素環窒素原子を有するポリオール、ポリチオールおよびアミン類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物である。これらの化合物は、ツェレビチノフの活性水素原子と少なくとも1個の窒素原子含有塩基性基とを有するものである。そのような化合物は、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジエチル-1,4-ブタンジアミン、2-ジメチルアミノエタノール、1-(2-アミノエチル)-ピペラジン、2-(1-ピロリジル)-エチルアミン、4-アミノ-2-メトキシピリミジン、4-(2-アミノエチル)-ピリジン、1-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン、4-(2-ヒドロキシエチル)-モルフォリン、2-メルカプトピリミジン、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-アミノ-6-メトキシベンゾチアゾール、N,N-ジアリル-メラミン、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、1-(2-ヒドロキシエチル)-イミダゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール等であり、複素環窒素原子を有するアミン類が好ましい。
【0047】
上記ウレタン系分散剤の合成における反応は特に限定されない。また、上記ウレタン系分散剤のアミン価は、0mgKOH/gを超え、40mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0048】
ウレタン系分散剤の市販品は、Disperbyk(登録商標)-161(アミン価11mgKOH/g、ビックケミー社製)、Disperbyk(登録商標)-162(アミン価13mgKOH/g、ビックケミー社製)、Disperbyk(登録商標)-167(アミン価13mgKOH/g、ビックケミー社製)、Disperbyk(登録商標)-182(アミン価13mgKOH/g、ビックケミー社製)、Disperbyk(登録商標)-2163(アミン価10mgKOH/g、ビックケミー社製)、Disperbyk(登録商標)-2164(アミン価14mgKOH/g、ビックケミー社製)等である。
【0049】
ウレタン系分散剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、ウレタン系分散剤の含有量は、顔料分散組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。また、ウレタン系分散剤の含有量は、顔料分散組成物中、30.0質量%以下であることが好ましく、25.0質量%以下であることがより好ましい。ウレタン系分散剤の含有量が上記範囲内であることにより、顔料分散組成物は、分散安定性が優れる。
【0050】
(アルカリ可溶性樹脂)
アルカリ可溶性樹脂が含まれることにより、分散液は、アルカリ現像液で現像可能となり、隔壁等のパターンを作成し得る。アルカリ可溶性樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アルカリ可溶性樹脂は、アクリル系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂等である。これらの中でも、アルカリ可溶性樹脂は、アクリル系樹脂またはエポキシアクリレート系樹脂であることが好ましい。これにより、顔料分散組成物は、高精細なディスプレイが得られやすい。
【0051】
アルカリ可溶性樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基(-P(=O)(OH2))等のアニオン性基を含む樹脂等である。
【0052】
アクリル系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アクリル系樹脂は、綜研化学(株)製『フォレット』シリーズ、ZAH-106、ZAH-110、ZAH-115、ZAH-310等である。
【0053】
エポキシアクリレート系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、エポキシアクリレート系樹脂は、日本化薬(株)製『KAYARAD』シリーズ、CCR-1291H、CCR-1235、ZAR-1035、ZAR-2000、ZFR-1401H、ZFR-1491H、ZCR-1569H、ZCR-1601H、ZCR-1797H、ZCR-1798H、UXE-3000、UXE-3024等である。
【0054】
ウレタンアクリレート系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、ウレタンアクリレート系樹脂は、日本化薬(株)製『KAYARAD』シリーズ、UX-3204、UX-4101、UXT-6100、UX-8101、UX-0937、DPHA-40H、UX-5000等である。
【0055】
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、アルカリ現像性の観点から、10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、酸価は、300mgKOH/g以下であることが好ましく、200mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0056】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、レジスト膜の形成性の観点から、1,000以上であることが好ましく、3,000以上であることがより好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、溶解性を高める観点から、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてPLgel、5μ、MIXED-D(Polymer Laboratories社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0057】
アルカリ可溶性樹脂は、アクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、縮重合反応によって得られるポリエステル樹脂、アクリル酸とエポキシ化合物の付加重合反応によって得られるエポキシアクリレート樹脂、アクリル酸とポリオールとイソシアネート化合物の重合反応によって得られるウレタンアクリレート樹脂等である。これらの中でも、アルカリ可溶性樹脂は、現像性、細線密着性が優れる点から、アクリル系共重合樹脂またはエポキシアクリレート樹脂であることが好ましい。
【0058】
アルカリ可溶性樹脂の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルカリ可溶性樹脂の含有量は、顔料として配合されている成分の合計100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂の含有量は、顔料として配合されている成分の合計100質量部に対して、90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。ここで、顔料として配合されている成分には、ラクタムブラックとカーボンブラックと水酸化アルミニウムが該当する。
【0059】
(酸性基を有する顔料分散助剤)
本実施形態の顔料分散組成物は、顔料の分散性をより改善する目的で、酸性基を有する顔料分散助剤を含むことが好ましい。酸性基を有する顔料分散助剤は、ペリレン系化合物、ジケトピロロピロール系化合物、アゾナフトール系化合物、ジオキサジン系化合物、キナクリドン系化合物、フタロシアニン系化合物およびその金属錯体、アントラキノン、ナフタレン、アクリドン、またはトリアジン等の色素に、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性基が導入された化合物(酸性基を有する色素誘導体)や、それらを有機アミン等で中和した化合物等である。酸性基を有する色素誘導体は、ラクタムブラックや後述するカーボンブラックの分散性が良好である点から、スルホン酸基を有するフタロシアニン系色素誘導体であることが好ましい。
【0060】
酸性基を有する顔料分散助剤は、ラクタムブラック100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、0.2~10質量部であることがより好ましい。
【0061】
(カーボンブラック)
本実施形態の顔料分散組成物は、カーボンブラックの有無および種類に関連して、下記条件A~条件Cの少なくともいずれかを満たすことを特徴とする。
(条件A)カーボンブラックを含まない。
(条件B)第1のカーボンブラックを含み、第1のカーボンブラックの平均一次粒子径が28nm以下である。
(条件C)第2のカーボンブラックを含み、
(C1)第2のカーボンブラックの平均一次粒子径が30nm以上であり、かつ、
(C2)塩基性基含有顔料分散剤のガラス転移温度(Tg)が10℃以下である。
【0062】
・条件Aについて
条件Aは、顔料分散組成物が、カーボンブラックを含んでいないことを規定する。条件Aを満たす顔料分散組成物は、カーボンブラックを含んでいない場合であっても、得られるブラックマトリックス用レジスト組成物において、保存安定性が優れる。また、得られるブラックマトリックス用レジスト組成物は、基板へのレジスト塗布~プレベーク間での待機時間におけるOD値(光学濃度)の低下を抑制することができる。さらに、得られるレジスト膜は、反射率が低く、極めて高精細なディスプレイが得られ得る。
【0063】
・条件B
条件Bは、第1のカーボンブラックを含み、かつ、第1のカーボンブラックの平均一次粒子径が28nm以下であることを規定する。
【0064】
第1のカーボンブラックは、平均一次粒子径が28nm以下である点以外は特に限定されない。一例を挙げると、第1のカーボンブラックは、中性カーボンブラック、酸性カーボンブラック等である。
【0065】
第1のカーボンブラックの平均一次粒子径は、28nm以下であればよく、25nm以下であることがより好ましい。平均一次粒子径が28nm以下であることにより、顔料分散組成物は、塩基性基含有顔料分散剤のガラス転移温度(Tg)に依らずに、幅広い塩基性基含有顔料分散剤を採用し得る。
【0066】
中性カーボンブラックのpHは、pHが8~10の範囲であることが好ましい。
【0067】
酸性カーボンブラックは、pHが2~4の範囲であることが好ましい。
【0068】
なお、本実施形態において、pHは、市販品のカーボンブラックである場合はカタログ値を採用することができ、測定する場合には、炭酸を除いた蒸留水(pH7.0)20mLに、カーボンブラック1gを添加してマグネチックスターラーで混合して水性懸濁液を調製し、ガラス電極を使用して25℃で測定し得る(ドイツ工業品標準規格 DIN ISO 787/9)。また、本実施形態において、平均一次粒子径は、電子顕微鏡観察による算術平均径の値であるか、または、市販品のカーボンブラックである場合には、カタログ値を採用し得る。
【0069】
第1のカーボンブラックの比表面積は、64m2/g以上であることが好ましく、96m2/g以上であることがより好ましい。第1のカーボンブラックの比表面積が上記範囲内であることにより、顔料分散組成物は、基板へのレジスト塗布~プレベーク間での待機時間におけるOD値(光学濃度)の低下を抑制することができ、さらに、カーボンブラックを含まないレジスト組成物に比べ高いOD値(光学濃度)を実現できる。なお、本実施形態において、比表面積は、市販品のカーボンブラックである場合はカタログ値を採用することができ、測定する場合には、ASTM D6556に従って窒素吸着によって測定し得る。
【0070】
第1のカーボンブラックの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、第1のカーボンブラックの含有量は、顔料分散組成物中、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、第1のカーボンブラックの含有量は、顔料分散組成物中、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。第1のカーボンブラックの含有量が上記範囲内であることにより、顔料分散組成物は、第1のカーボンブラックの分散性が優れ、かつ、ブラックマトリックスを形成した際の遮光性が優れる。
【0071】
条件Bを満たす顔料分散組成物は、得られるブラックマトリックス用レジスト組成物において、保存安定性が優れる。また、得られるブラックマトリックス用レジスト組成物は、基板へのレジスト塗布~プレベーク間での待機時間におけるOD値(光学濃度)の低下を抑制することができる。さらに、得られるレジスト膜は、反射率が低く、高精細なディスプレイが得られ得る。
【0072】
・条件C
条件Cは、第2のカーボンブラックを含み、(C1)第2のカーボンブラックの平均一次粒子径が30nm以上であり、かつ、(C2)塩基性基含有顔料分散剤のガラス転移温度(Tg)が10℃以下であることを規定する。
【0073】
第2のカーボンブラックは、平均一次粒子径が異なる点以外は、条件Bにおいて上記した第1のカーボンブラックと同様である。
【0074】
第2のカーボンブラックの平均一次粒子径は、30nm以上であればよく、31nm以上であることがより好ましい。第2のカーボンブラックの平均一次粒子径が30nm以上であることにより、顔料分散組成物は、得られるレジスト膜の細線密着性が良くなる。
【0075】
第2のカーボンブラックが含まれる場合において、塩基性基含有顔料分散剤のガラス転移温度(Tg)は、10℃以下であればよく、0℃以下であることが好ましい。塩基性基含有顔料分散剤のTgが上記範囲内であることにより、顔料分散組成物は、基板へのレジスト塗布~プレベーク間での待機時間におけるOD値(光学濃度)の低下を抑制することができる。
【0076】
第2のカーボンブラックの比表面積は、64m2/g未満であることが好ましく、60m2/g以下であることがより好ましい。第2のカーボンブラックの比表面積が上記範囲内であることにより、顔料分散組成物は、得られるレジスト膜の細線密着性が良くなる。
【0077】
(溶剤)
本実施形態の顔料分散組成物は、溶剤を含んでもよい。溶剤は特に限定されない。一例を挙げると、溶剤は、ラクタムブラックを安定的に分散させ、アルカリ可溶性樹脂等を充分に溶解させることができる観点から、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、エーテルエステル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、含窒素系溶剤等が好ましい。
【0078】
エステル系溶剤は、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エステル、蟻酸n-アミル等である。
【0079】
エーテル系溶剤は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等である。
【0080】
エーテルエステル系溶剤は、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等である。
【0081】
ケトン系溶剤は、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、δ-ブチロラクトン等である。
【0082】
芳香族炭化水素系溶剤は、トルエン、キシレン、アルキルナフタレン等である。
【0083】
含窒素系溶剤は、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等である。
【0084】
溶剤が含まれる場合、溶剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、溶剤の含有量は、顔料分散組成物中、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、溶剤の含有量は、顔料分散組成物中、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、顔料分散組成物は、ラクタムブラックの分散安定性が優れる。
【0085】
(水酸化アルミニウム)
本実施形態の顔料分散組成物は、得られるレジスト膜の細線密着性が良くなるという理由により、水酸化アルミニウムを含むことが好ましい。
【0086】
水酸化アルミニウムが含まれる場合、水酸化アルミニウムの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水酸化アルミニウムの含有量は、顔料分散組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、水酸化アルミニウムの含有量は、顔料分散組成物中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。水酸化アルミニウムの含有量が上記範囲内であることにより、顔料分散組成物は、保存安定性が良く、得られるレジスト膜の細線密着性が良くなる。
【0087】
顔料分散組成物全体の説明に戻り、本実施形態の顔料分散組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、顔料分散組成物は、各種材料を混合し、ビーズミル等で一昼夜練肉することにより調製し得る。
【0088】
本実施形態の顔料分散組成物を用いて得られるブラックマトリックス用レジスト組成物は、保存安定性が優れる。また、得られるブラックマトリックス用レジスト組成物は、基板へのレジスト塗布~プレベーク間での待機時間におけるOD値(光学濃度)の低下を抑制することができる。得られるレジスト膜は、反射率が低く、高精細なディスプレイが得られ得る。
【0089】
<ブラックマトリックス用レジスト組成物>
本発明の一実施形態のブラックマトリックス用レジスト組成物(以下、レジスト組成物ともいう)は、上記したブラックマトリックス用顔料分散組成物を含む。
【0090】
レジスト組成物における顔料分散組成物の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、顔料分散組成物の含有量は、27質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、顔料分散組成物の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、37質量%以下であることがより好ましい。顔料分散組成物の含有量が上記範囲内であることにより、細線密着性とOD値を両立できる。
【0091】
本実施形態のレジスト組成物は、上記顔料分散組成物のほか、従来レジスト組成物として配合されている任意成分を含み得る。たとえば、レジスト組成物は、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、表面改質剤、溶剤等を含んでもよい。
【0092】
(アルカリ可溶性樹脂)
アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像液による現像性を向上させるために好適に配合される。アルカリ可溶性樹脂は特に限定されず、例えば、顔料分散組成物に関連して上記したアルカリ可溶性樹脂を含有できる。これらの中でも、アルカリ可溶性樹脂は、現像性、細線密着性が優れる点から、アクリル系共重合樹脂またはエポキシアクリレート樹脂であることが好ましい。
【0093】
アルカリ可溶性樹脂が含まれる場合、アルカリ可溶性樹脂の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルカリ可溶性樹脂の含有量は、レジスト組成物中、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂の含有量は、レジスト組成物中、15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましい。アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、レジスト組成物は、アルカリ現像液による現像性が適正範囲になる。
【0094】
(光重合性化合物)
光重合性化合物は特に限定されない。一例を挙げると、光重合性化合物は、光重合性不飽和結合を有するモノマー、オリゴマー等である。
【0095】
光重合性不飽和結合を1個有するモノマーは、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等のアルキルメタクリレートまたはアクリレート;ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアラルキルメタクリレートまたはアクリレート;ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレートまたはアクリレート;N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルメタクリレートまたはアクリレート;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル;ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアリールエーテルのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル;イソボニルメタクリレートまたはアクリレート;グリセロールメタクリレートまたはアクリレート;2-ヒドロキシエチルメタクリレートまたはアクリレート等である。
【0096】
光重合性不飽和結合を2個以上有するモノマーは、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等である。
【0097】
光重合性不飽和結合を有するオリゴマーは、上記したモノマーを適宜重合させて得られたもの等である。
【0098】
光重合性化合物が含まれる場合、光重合性化合物の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、光重合性化合物の含有量は、レジスト組成物中、1質量%以上であることが好ましく、2.5質量%以上であることがより好ましい。また、光重合性化合物の含有量は、レジスト組成物中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。光重合性化合物の含有量が上記範囲内であることにより、レジスト組成物は、レジスト膜の硬化性とアルカリ現像性を両立できる。
【0099】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は特に限定されない。一例を挙げると、光重合開始剤は、ベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2,3-ジクロロアントラキノン、3-クロル-2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、トリアジン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤等である。
【0100】
光重合開始剤が含まれる場合、光重合開始剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、光重合開始剤の含有量は、レジスト組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、レジスト組成物中、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲内であることにより、レジスト組成物は、レジスト膜の硬化性と細線密着性を両立できる。
【0101】
また、レジスト組成物は、必要に応じて、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤等の添加剤が添加されてもよい。
【0102】
本実施形態のレジスト組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、レジスト組成物は、各種材料を攪拌装置等を用いて、攪拌混合することにより調製し得る。
【0103】
本実施形態のレジスト組成物は、保存安定性が優れる。また、レジスト組成物は、基板へのレジスト塗布~プレベーク間での待機時間におけるOD値(光学濃度)の低下を抑制することができる。得られたレジスト膜は、反射率が低く、高精細なディスプレイが得られ得る。
【0104】
<ブラックマトリックス>
本発明の一実施形態のブラックマトリックスは、上記したレジスト組成物から形成された、ブラックマトリックスである。
【0105】
ブラックマトリックスの形成方法は特に限定されない。一例を挙げると、ブラックマトリックスの形成方法は、基板上に上記実施形態のブラックマトリックス用レジスト組成物を塗布し、乾燥して塗膜を形成した後、塗膜上にフォトマスクを置き、フォトマスクを介して画像露光、現像、必要に応じて光硬化等の方法である。
【0106】
基板は特に限定されない。一例を挙げると、基板は、ガラス基板、シリコン基板、ポリカーボネート基板、ポリエステル基板、ポリアミド基板、ポリアミドイミド基板、ポリイミド基板、アルミニウム基板、プリント配線基板、アレイ基板等である。
【0107】
レジスト組成物を塗布、乾燥、露光および現像する方法は、公知の方法を適宜選択することができる。
【0108】
一例を挙げると、レジスト組成物の塗布方法は、スクリーン印刷法、ロールコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、スピンコート法等である。また、レジスト組成物の塗布後、必要に応じて、循環式オーブン、赤外線ヒーター、ホットプレート等の加熱手段を用いて加熱することにより、樹脂層に含まれる溶剤を揮発させてもよい。加熱条件は、使用するレジスト組成物の組成に応じて適宜設定すればよい。一般には、加熱条件は、50℃~120℃の温度で、30秒~30分である。
【0109】
塗膜の厚み(乾燥後)は特に限定されない。一例を挙げると、塗膜の厚みは、0.2~10μmであることが好ましく、0.5~6μmであることがより好ましく、1~4μmであることがさらに好ましい。塗膜の厚みが上記範囲内であることにより、得られるブラックマトリックスは、所定のパターンが好適に現像されやすく、所定の光学濃度を示しやすい。
【0110】
露光方法は特に限定されない。一例を挙げると、露光方法は、紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線の照射である。エネルギー線量は、レジスト組成物の組成に応じて適宜設定すればよい。一例を挙げると、エネルギー染料は、30~2000mJ/cm2である。露光に用いられる光源は特に限定されない。一例を挙げると、光源は、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等である。
【0111】
現像に用いられるアルカリ現像液は特に限定されない。一例を挙げると、現像液は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液;エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン系化合物の水溶液;テトラメチルアンモニウム、3-メチル-4-アミノ-N,N-ジエチルアニリン、3-メチル-4-アミノ-N-エチル-N-β-ヒドロキシエチルアニリン、3-メチル-4-アミノ-N-エチル-N-β-メタンスルホンアミドエチルアニリン、3-メチル-4-アミノ-N-エチル-N-β-メトキシエチルアニリンおよびこれらの硫酸塩、塩酸塩またはp-トルエンスルホン酸塩等のp-フェニレンジアミン系化合物の水溶液等である。なお、アルカリ現像液は、必要に応じて、消泡剤、界面活性剤等が添加されてもよい。
【0112】
アルカリ現像の後、ポストベークされることにより、樹脂の硬化が促進され得る。ポストベークの条件は特に限定されない。一例を挙げると、ポストベークの条件は、80℃~250℃の温度で、10分~4時間である。
【0113】
以上、本実施形態のブラックマトリックスは、上記した顔料分散組成物を含むレジスト組成物を用いて得られる。そのため、ブラックマトリックスは、反射率が低く、高精細なディスプレイが得られ得る。したがって、ブラックマトリックスは、高精細なディスプレイが使用される画像表示装置やタッチパネル等に好適に用いられる。
【実施例0114】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0115】
使用した原料を以下に示す。
<ラクタムブラック>
ラクタムブラック:IrgaphorS100CF(BASF社製)
<カーボンブラック>
以下の表1に記載のカーボンブラックを用いた。
【0116】
【表1】
【0117】
<水酸化アルミニウム>
C-302A:粒子径:2,400nm、住友化学(株)製)
<シリカ系粒子>
ATLAS100:ポリマー/シリカ複合体粒子、トリメチルシリル処理、粒子径100nm、BET比表面積60m2/g、キャボット社製
AEROSIL RX200:フュームドシリカ粒子、トリメチルシリル処理、粒子径12nm、BET比表面積115-165m2/g、日本アエロジル(株)製
AEROSIL RX50:フュームドシリカ粒子、トリメチルシリル処理、粒子径40nm、BET比表面積25-45m2/g、日本アエロジル(株)製
<酸性基含有顔料分散助剤>
SS5000S:スルホン酸基を有するフタロシアニン系色素誘導体、ソルスパース5000S、ルブリゾール社製
<塩基性基含有顔料分散剤>
分散剤1:3級アミン系高分子分散剤、固形分のアミン価120mgKOH/g、Tg72.8℃、重量平均分子量約3,900、メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体
分散剤2:3級アミン系高分子分散剤、固形分のアミン価70mgKOH/g、Tg-38.6℃、重量平均分子量約7,300、メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、エーテル基含有
<アクリル系樹脂>
ZAH-110:アルカリ可溶性アクリル樹脂、フォレット ZAH-110、綜研化学(株)製、酸価100mgKOH/g、重量平均分子量約15,000、固形分35質量%
ZCR-1569H:エポキシアクリレート樹脂、KAYARAD ZCR-1569H、日本化薬(株)製、酸価98mgKOH/g、重量平均分子量約4,500、固形分70質量%
<光重合性化合物>
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
<光重合開始剤>
イルガキュア OXE02:オキシムエステル系光重合開始剤、IRGACURE OXE02、BASFジャパン(株)製
<表面改質剤>
MF-554:メガファック F-554、含フッ素基・親油性基含有オリゴマー、固形分100%、DIC(株)製
<溶剤>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0118】
<ブラックマトリックス用顔料分散組成物の調製>
(調製例1~14、比較調製例1~7)
表1の組成(単位は質量%)となるように各種材料を混合し、ビーズミルで一昼夜練肉し、調製例1~14、および、比較調製例1~7のブラックマトリックス用顔料分散組成物を調製した。得られた顔料分散組成物の粒子径は、ナノトラック(UPA-EX150、日機装(株)製)を使用し、D10粒径、D50粒径、D90粒径を、レーザー回析式粒度測定法により測定した。結果を表2に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
<実施例1~14、比較例1~7>
(ブラックマトリックス用レジスト組成物)
表2の組成(単位は質量%)となるように各種材料を混合し、高速攪拌機を用いて均一に混合した後、孔径3μmのフィルターでろ過して、実施例1~14、比較例1~7のブラックマトリックス用レジスト組成物を得た。
【0121】
得られたレジスト組成物を用いて、以下の方法により、光学濃度(OD値)の変化量、550nm反射率、ブレイクポイント、細線密着性および安定性を評価した。結果を表3に示す。
【0122】
<OD値(光学濃度)>
それぞれのレジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(コーニング社製、EagleXG)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯で露光し、更に230℃で3時間ポストベークを行い、ベタ部のみで形成されたレジストパターンを得た。得られた各ベタ部のレジストパターンのOD値(光学濃度)をマクベス濃度計(TD-931、商品名、マクベス社製)で測定した。OD値を8カ所測定し膜厚、顔料濃度で補正し最大値、最小値を除くOD値の平均値を光学濃度とした。また、塗膜をカッターナイフで削り、OD値測定点の膜厚を測定した。
補正OD値=実測OD値×15.0/顔料濃度×1.0/実測膜厚値
待機時間1分後のOD値と、待機時間10分後のOD値との差が-0.10以内のものを合格とした。
<550nm反射率>
上記の各それぞれのレジスト組成物を、スピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯を用いてUV積算光量100mJ/cm2で露光した。更に230℃で3時間ポストベークを行い、ベタ部のみで形成されたレジスト膜を得た。得られた各ベタ部のレジスト膜面での波長360nm~740nmの反射率(単位は%)を反射率計(大塚電子(株)製、photal MC-7300:SC)で平均値を測定した。反射率の平均値が小さいほど好ましい。
<ブレイクポイントおよび細線密着性>
それぞれの実施例および比較例で作製したレジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板(EAGLE XG)上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。次いで、1μmから100μmの線幅についてラインパターンを有するフォトマスクを用いて、高圧水銀灯を用い、UV積算光量100mJ/cm2で露光した。その後、23℃、0.05%水酸化カリウム水溶液中、1kgf/cm2圧のシャワー現像にて現像パターンが現れ始める時間をブレイクポイントとした。細線密着性の評価においては、ブレイクポイントの1.3倍の時間になったところで現像を終了した。その後、1kgf/cm2圧のスプレー水洗を行い、ガラス基板上に残存する最小のラインパターンのサイズ(μm)を評価した。
<安定性>
それぞれの実施例および比較例で作製した顔料分散組成物をガラス瓶に採り、密栓して60℃で1週間保管した。保管前後において、E型粘度計(東機産業(株)製、型式RE100L)を用いて25℃における粘度を測定し、粘度変化率を求め、下記評価基準で評価した。
粘度変化率=[(1週間保存後の粘度-保存前の粘度)/(保存前の粘度)]
・評価基準
○:粘度変化率は、10%以下であった。
△:粘度変化率は、10%を超え、20%以下であった。
×:粘度変化率は、20%を超えた。
【0123】
【表3】
【0124】
表2および表3に示されるように、本発明の調製例1~14の顔料分散組成物、および、それらを用いた実施例1~14のレジスト組成物は、保存安定性が優れた。また、レジスト組成物は、OD値の低下が抑制された。さらに、得られたレジスト膜は、反射率が低く、細線密着性が優れた。