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特開2024-131070解析装置、解析方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131070
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/20 20060101AFI20240920BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B01D61/20
G05B23/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041102
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】三上 大助
(72)【発明者】
【氏名】二之宮 成樹
【テーマコード(参考)】
3C223
4D006
【Fターム(参考)】
3C223AA05
3C223BA03
3C223CC02
3C223EB01
3C223FF13
3C223FF22
3C223FF26
3C223FF35
3C223FF46
3C223FF52
3C223GG01
3C223HH02
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA41
4D006JA51Z
4D006KA01
4D006KA16
4D006KB04
4D006KB11
4D006KB17
4D006KE30P
4D006MA01
4D006PA01
4D006PB02
4D006PC02
(57)【要約】
【課題】濾過膜の伸度保持率を簡易に算出することができる解析装置、解析方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】解析装置は、少なくとも、液体を濾過する濾過膜を有する濾過器の稼働期間を示す稼働期間情報と、濾過器における液体の流量に関する流量情報とを取得する取得部と、所定の濾過膜を有する濾過器の稼働期間情報及び流量情報が入力された場合に所定の濾過膜の伸度に関する伸度情報を出力するように学習された学習モデルに、取得部によって取得された稼働期間情報及び流量情報を入力して、学習モデルから出力された伸度情報に基づいて濾過膜の伸度保持率を算出する算出部と、伸度保持率に関する情報を出力する出力部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、液体を濾過する濾過膜を有する濾過器の稼働期間を示す稼働期間情報と、前記濾過器における液体の流量に関する流量情報とを取得する取得部と、
所定の濾過膜を有する濾過器の稼働期間情報及び流量情報が入力された場合に前記所定の濾過膜の伸度に関する伸度情報を出力するように学習された学習モデルに、前記取得部によって取得された稼働期間情報及び流量情報を入力して、前記学習モデルから出力された伸度情報に基づいて前記濾過膜の伸度保持率を算出する算出部と、
前記伸度保持率に関する情報を出力する出力部と、
を有することを特徴とする解析装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記濾過膜の濾過前の伸度を示す濾過前伸度情報を取得し、
前記学習モデルは、前記所定の濾過膜を有する濾過器の稼働期間情報及び流量情報に加えて、前記所定の濾過膜の濾過前伸度情報が入力された場合に、前記伸度情報として前記所定の濾過膜の伸度保持率を出力するように学習され、
前記算出部は、前記学習モデルに、前記取得部によって取得された稼働期間情報及び流量情報に加えて、前記取得部によって取得された濾過前伸度情報を入力して、前記学習モデルから出力された前記濾過膜の伸度保持率を取得する、
請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記濾過膜の濾過前の伸度を示す濾過前伸度情報を取得し、
前記学習モデルは、前記伸度情報として、前記所定の濾過膜の現在の伸度又は予測伸度を出力するように学習され、
前記算出部は、前記学習モデルから出力された前記濾過膜の現在の伸度又は予測伸度と前記取得部によって取得された前記濾過膜の濾過前の伸度とに基づいて前記伸度保持率を算出する、
請求項1に記載の解析装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記濾過器によって濾過される液体の温度を示す温度情報と、前記濾過器によって濾過される液体に掛かる圧力に関する圧力情報と、液体の水質を示す水質情報と、前記濾過器の洗浄に関する洗浄条件情報とのうちの少なくとも一つをさらに取得し、
前記学習モデルは、前記所定の濾過膜を有する濾過器の稼働期間情報及び流量情報に加えて、前記所定の濾過膜を有する濾過器の温度情報、圧力情報、水質情報及び洗浄条件情報のうちの少なくとも一つが入力された場合に前記伸度情報を出力するように学習され、
前記算出部は、前記学習モデルに、前記取得部によって取得された稼働期間情報及び流量情報に加えて、前記取得部によって取得された温度情報、圧力情報、水質情報及び洗浄条件情報のうちの少なくとも一つを入力し、前記学習モデルから出力された伸度情報に基づいて前記伸度保持率を算出する、
請求項1又は2に記載の解析装置。
【請求項5】
前記伸度保持率に基づいて、前記濾過膜の使用可能期間を推定する推定部をさらに有し、
前記出力部は、前記伸度保持率に関する情報として、前記濾過膜の使用可能期間を出力する、
請求項1又は2に記載の解析装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記濾過器の所有者による前記濾過器の交換希望時期を示す交換希望時期情報を取得し、
前記濾過器を前記交換希望時期まで使用可能とする設定パラメータを特定する特定部をさらに有し、
前記出力部は、前記特定部によって特定された設定パラメータをさらに出力する、
請求項4に記載の解析装置。
【請求項7】
前記濾過膜は、超純水製造又は製薬用水製造に使用される中空糸膜である、請求項1又は2に記載の解析装置。
【請求項8】
コンピュータにより、
液体を濾過する濾過膜を有する濾過器の稼働期間を示す稼働期間情報と、前記濾過器における液体の流量に関する流量情報とを取得し、
所定の濾過膜を有する濾過器の稼働期間情報及び流量情報が入力された場合に前記所定の濾過膜の伸度に関する伸度情報を出力するように学習された学習モデルに、前記取得された稼働期間情報及び流量情報を入力して、前記学習モデルから出力された伸度情報に基づいて前記濾過膜の伸度保持率を算出し、
前記伸度保持率に関する情報を出力する、
ことを特徴とする解析方法。
【請求項9】
出力部を有するコンピュータの制御プログラムであって、
液体を濾過する濾過膜を有する濾過器の稼働期間を示す稼働期間情報と、前記濾過器における液体の流量に関する流量情報とを取得し、
所定の濾過膜を有する濾過器の稼働期間情報及び流量情報が入力された場合に前記所定の濾過膜の伸度に関する伸度情報を出力するように学習された学習モデルに、前記取得された稼働期間情報及び流量情報を入力して、前記学習モデルから出力された伸度情報に基づいて前記濾過膜の伸度保持率を算出し、
前記伸度保持率に関する情報を前記出力部によって出力する、
ことを前記コンピュータに実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、解析装置、解析方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、濾過膜を有する濾過器を用いて、半導体又は医薬品等の製品を製造するために必要な半導体製造用水及び製薬用水等の液体を精製するシステムが利用されている。このようなシステムにおいて、液体を適切に製造するためには、濾過膜が適切な状態を維持している必要がある。一般に、濾過膜の状態を示す指標として、伸度保持率が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水処理装置への供給対象水を測定し、得られた測定値に基づいて供給水質を評価もしくは予測し、水処理装置の運転条件を決定する水処理装置の運転方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-221427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
濾過膜を有する濾過器では、濾過膜の伸度保持率を簡易に算出することが求められている。
【0006】
本開示は、濾過膜の伸度保持率を簡易に算出することができる解析装置、解析方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る解析装置は、少なくとも、液体を濾過する濾過膜を有する濾過器の稼働期間を示す稼働期間情報と、濾過器における液体の流量に関する流量情報とを取得する取得部と、所定の濾過膜を有する濾過器の稼働期間情報及び流量情報が入力された場合に所定の濾過膜の伸度に関する伸度情報を出力するように学習された学習モデルに、取得部によって取得された稼働期間情報及び流量情報を入力して、学習モデルから出力された伸度情報に基づいて濾過膜の伸度保持率を算出する算出部と、伸度保持率に関する情報を出力する出力部とを有することを特徴とする。
【0008】
本開示の一側面に係る解析装置において、取得部は、濾過膜の濾過前の伸度を示す濾過前伸度情報を取得し、学習モデルは、所定の濾過膜を有する濾過器の稼働期間情報及び流量情報に加えて、所定の濾過膜の濾過前伸度情報が入力された場合に、伸度情報として所定の濾過膜の伸度保持率を出力するように学習され、算出部は、学習モデルに、取得部によって取得された稼働期間情報及び流量情報に加えて、取得部によって取得された濾過前伸度情報を入力して、学習モデルから出力された濾過膜の伸度保持率を取得することが好ましい。
【0009】
本開示の一側面に係る解析装置において、取得部は、濾過膜の濾過前の伸度を示す濾過前伸度情報を取得し、学習モデルは、伸度情報として、所定の濾過膜の現在の伸度又は予測伸度を出力するように学習され、算出部は、学習モデルから出力された濾過膜の現在の伸度又は予測伸度と取得部によって取得された濾過膜の濾過前の伸度とに基づいて伸度保持率を算出することが好ましい。
【0010】
本開示の一側面に係る解析装置において、取得部は、濾過器によって濾過される液体の温度を示す温度情報と、濾過器によって濾過される液体に掛かる圧力に関する圧力情報と、液体の水質を示す水質情報と、濾過器の洗浄に関する洗浄条件情報とのうちの少なくとも一つをさらに取得し、学習モデルは、所定の濾過膜を有する濾過器の稼働期間情報及び流量情報に加えて、所定の濾過膜を有する濾過器の温度情報、圧力情報、水質情報及び洗浄条件情報のうちの少なくとも一つが入力された場合に伸度情報を出力するように学習され、算出部は、学習モデルに、取得部によって取得された稼働期間情報及び流量情報に加えて、取得部によって取得された温度情報、圧力情報、水質情報及び洗浄条件情報のうちの少なくとも一つを入力し、学習モデルから出力された伸度情報に基づいて伸度保持率を算出することが好ましい。
【0011】
本開示の一側面に係る解析装置において、伸度保持率に基づいて、濾過膜の使用可能期間を推定する推定部をさらに有し、出力部は、伸度保持率に関する情報として、濾過膜の使用可能期間を出力することが好ましい。
【0012】
本開示の一側面に係る解析装置において、取得部は、濾過器の所有者による濾過器の交換希望時期を示す交換希望時期情報を取得し、濾過器を交換希望時期まで使用可能とする設定パラメータを特定する特定部をさらに有し、出力部は、特定部によって特定された設定パラメータをさらに出力することが好ましい。
【0013】
本開示の一側面に係る解析装置において、濾過膜は、超純水製造又は製薬用水製造に使用される中空糸膜であることが好ましい。
【0014】
本開示の一側面に係る解析方法は、コンピュータにより、液体を濾過する濾過膜を有する濾過器の稼働期間を示す稼働期間情報と、濾過器における液体の流量に関する流量情報とを取得し、所定の濾過膜を有する濾過器の稼働期間情報及び流量情報が入力された場合に所定の濾過膜の伸度に関する伸度情報を出力するように学習された学習モデルに、取得された稼働期間情報及び流量情報を入力して、学習モデルから出力された伸度情報に基づいて濾過膜の伸度保持率を算出し、伸度保持率に関する情報を出力することを特徴とする。
【0015】
本開示の一側面に係る制御プログラムは、出力部を有するコンピュータの制御プログラムであって、液体を濾過する濾過膜を有する濾過器の稼働期間を示す稼働期間情報と、濾過器における液体の流量に関する流量情報とを取得し、所定の濾過膜を有する濾過器の稼働期間情報及び流量情報が入力された場合に所定の濾過膜の伸度に関する伸度情報を出力するように学習された学習モデルに、取得された稼働期間情報及び流量情報を入力して、学習モデルから出力された伸度情報に基づいて濾過膜の伸度保持率を算出し、伸度保持率に関する情報を出力部によって出力することをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、解析装置、解析方法及び制御プログラムは、濾過膜の伸度保持率を簡易に算出することができる。
【0017】
本開示の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され、且つ、得られる。前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本開示を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】解析システムの概略構成の一例を示す図である。
図2】濾過装置の概略構成の一例を示す図である。
図3】濾過装置の概略構成を示すブロック図である。
図4】解析装置の概略構成を示すブロック図である。
図5】解析装置の解析処理の一例を示すフローチャートである。
図6】半導体製造用水である超純水の製造用の濾過膜における稼働期間と伸度保持率との関係を示すグラフである。
図7】半導体製造用水である超純水の製造用の濾過膜における単位時間あたりの濾過流量と伸度保持率との関係を示すグラフである。
図8】半導体製造用水である超純水の製造用の濾過膜における洗浄回数と伸度保持率との関係を示すグラフである。
図9】濾過膜の稼働期間と伸度保持率との関係について説明するためのグラフである。
図10】製薬用水である純水の製造用の濾過膜における稼働期間と伸度保持率との関係を示すグラフである。
図11】製薬用水である純水の製造用の濾過膜における単位時間あたりの濾過流量と伸度保持率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本開示の様々な実施形態について説明する。本開示の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0020】
図1は、解析システム1の概略構成の一例を示す図である。
【0021】
図1に示すように、解析システム1は、一又は複数の濾過装置2及び解析装置3を有する。各濾過装置2の所有者は、半導体又は医薬品等の製品を製造する製造業者である。
【0022】
濾過装置2は、ネットワーク4を介して各々解析装置3と電気的又は光学的に接続され、データ及び情報を送受信する。濾過装置2は、半導体又は医薬品等の製品を製造するために必要な半導体製造用水及び製薬用水を精製するために用いられる。半導体製造用水及び製薬用水は、例えば、超純水又は純水である。濾過装置2は、濾過装置2を構成する各部の運転条件を収集する。
【0023】
解析装置3は、ネットワーク4を介して濾過装置2によって収集された情報を受信する。解析装置3は、受信した濾過装置2の各部の運転条件に基づいて、濾過装置2が有する濾過膜216の寿命を推定する。
【0024】
図2は、濾過装置2の概略構成の一例を示す図である。以降の実施形態では、半導体製造用水及び製薬用水として超純水を精製する濾過装置2の概略構成の一例を示す。
【0025】
図2に示すように、濾過装置2は、タンク201、第1ポンプ202、熱交換装置203、水温計204、有機物分解装置205、脱気装置206、第2ポンプ207、イオン交換装置208、第1圧力計209、第1流量計210、濾過器211、第2圧力計212、第3圧力計213、水質計214及び第2流量計215を有する。
【0026】
タンク201、第1ポンプ202、熱交換装置203、有機物分解装置205、脱気装置206、第2ポンプ207、イオン交換装置208及び濾過器211は、配管を介して相互に接続される。水温計204、第1圧力計209、第1流量計210、第2圧力計212、第3圧力計213、水質計214及び第2流量計215は、配管に流れる液体の状態を計測可能に、配管に接続される。
【0027】
濾過装置2は、超純水を精製する。濾過装置2で精製された超純水は、ユースポイントUPで使用される。ユースポイントUPは、半導体製造工程に含まれる各工程の前後に実施される洗浄作業を行う箇所、又は、半導体製造工程において半導体ウェハの研磨及び切断を行う箇所等である。また、ユースポイントUPは、製薬工程において、医薬品の洗浄作業を行う箇所又は薬品を希釈する箇所等である。
【0028】
タンク201は、超純水の原料となる一次純水を溜めるために用いられる。タンク201は、一次純水として、純水製造装置(不図示)において原水から精製された純水を溜める機能を有する。また、タンク201は、ユースポイントUPへ供給した超純水の一部が返送された水を受け入れる機能を有する。
【0029】
第1ポンプ202は、タンク201及び熱交換装置203に接続される。第1ポンプ202は、タンク201から一次純水を吸引し、熱交換装置203へ供給する。第1ポンプ202は、非容積ポンプ、容積ポンプ又は特殊ポンプ等の超純水製造で使用されるポンプである。第1ポンプ202は、液体の単位時間あたりの吸込量及び吐出量(例えば第1ポンプ202を駆動するモータの回転速度)を設定(変更)可能に設けられてもよい。
【0030】
熱交換装置203は、第1ポンプ202及び有機物分解装置205に接続される。熱交換装置203は、第1ポンプ202から供給された一次純水を温度調整し、温度調整した一次純水を有機物分解装置205へ送る。熱交換装置203は、液体を加熱又は冷却する温度を設定(変更)可能に設けられてもよい。
【0031】
水温計204は、熱交換装置203及び有機物分解装置205を接続する配管に設けられる。水温計204は、熱交換装置203を通過した一次純水の温度を計測する。水温計204は、計測した一次純水の温度を示す温度情報を出力する。すなわち、温度情報は、濾過器211によって濾過される液体の温度を示す。水温計204は、熱交換装置203と有機物分解装置205との間に限らず、熱交換装置203から濾過器211までの任意の位置に配置されてもよい。
【0032】
有機物分解装置205は、熱交換装置203及び脱気装置206に接続される。有機物分解装置205は、紫外線ランプを有する。有機物分解装置205は、紫外線ランプから出力された紫外線によって、熱交換装置203から送られた一次純水に含まれる全有機炭素(Total Organic Carbon、TOC)成分を有機酸及び二酸化炭素に分解する。有機物分解装置205は、分解した有機酸及び二酸化炭素を含む一次純水を脱気装置206へ送る。
【0033】
脱気装置206は、有機物分解装置205及び第2ポンプ207に接続される。脱気装置206は、有機物分解装置205から送られた一次純水に含まれる無機系炭素(Inorganic Carbon、IC)及び溶存酸素を除去する。脱気装置206は、無機系炭素及び溶存酸素を除去した一次純水を第2ポンプ207へ送る。
【0034】
第2ポンプ207は、脱気装置206及びイオン交換装置208に接続される。第2ポンプ207は、脱気装置206から送られた一次純水をイオン交換装置208へ供給する。第2ポンプ207は、非容積ポンプ、容積ポンプ又は特殊ポンプ等の超純水製造で使用されるポンプである。第2ポンプ207は、液体の単位時間あたりの吸込量及び吐出量(例えば第2ポンプ207を駆動するモータの回転速度)を設定(変更)可能に設けられてもよい。
【0035】
イオン交換装置208は、第2ポンプ207及び濾過器211に接続される。イオン交換装置208は、イオン交換膜又はイオン交換樹脂を有する。イオン交換装置208は、イオン交換膜又はイオン交換樹脂によって、第2ポンプ207から供給された一次純水に含まれる塩類、無機系炭素、有機酸及び二酸化炭素を除去する。イオン交換装置208は、塩類、無機系炭素、有機酸及び二酸化炭素を除去した一次純水を濾過器211へ送る。
【0036】
第1圧力計209は、イオン交換装置208及び濾過器211を接続する配管に設けられる。第1圧力計209は、イオン交換装置208から濾過器211に送られる一次純水(供給水)に掛かる圧力(第1圧力)を計測する。第1圧力計209は、計測した第1圧力を出力する。
【0037】
第1流量計210は、イオン交換装置208及び濾過器211を接続する配管に設けられる。第1流量計210は、供給水導入口217から導入される一次純水(供給水)の単位時間あたりの流量を濾過器211への単位時間あたりの供給流量として計測する。第1流量計210は、計測した濾過器211への単位時間あたりの供給流量を出力する。
【0038】
濾過器211は、濾過膜216、供給水導入口217、第1濾過水排出口218、第2濾過水排出口219及び濃縮水排出口220を有する。供給水導入口217は、イオン交換装置208に接続される。第1濾過水排出口218及び第2濾過水排出口219は、ユースポイントUPに接続される。濃縮水排出口220は、濃縮水処理装置(不図示)に接続される。
【0039】
濾過膜216は、超純水又は純水の製造に使用される。濾過膜216は、超純水又は純水を濾過する。超純水又は純水は、液体の一例である。濾過膜216は、超純水製造に使用される中空糸膜であり、有機物分解装置205及びイオン交換装置208によって除去しきれなかった微粒子を除去する限外濾過膜(UF膜)又は精密濾過膜(MF膜)である。濾過膜216は、平膜であってもよい。
【0040】
供給水導入口217は、イオン交換装置208から送られた一次純水を供給水として濾過器211に導入するための開口である。第1濾過水排出口218及び第2濾過水排出口219は、濾過膜216を透過させることによって一次純水から精製された超純水を濾過水として排出するための開口である。濃縮水排出口220は、濾過膜216によって超純水を精製する過程において精製される、不純物を多く含む濃縮水を廃水として排出するための開口である。
【0041】
濾過器211は、イオン交換装置208から送られた一次純水を供給水導入口217から導入する。濾過器211は、供給水導入口217から導入した一次純水を濾過膜216に透過させることによって超純水を精製する。濾過器211は、濾過膜216によって精製された超純水を第1濾過水排出口218及び第2濾過水排出口219から排出し、ユースポイントUPへ送る。また、濾過器211は、濾過膜216によって超純水を精製する過程において精製された濃縮水を濃縮水排出口220から排出し、濃縮水処理装置(不図示)へ送る。
【0042】
第2圧力計212は、第2濾過水排出口219及びユースポイントUPを接続する配管に設けられる。第2圧力計212は、第2濾過水排出口219から排出される超純水(濾過水)に掛かる圧力(第2圧力)を計測する。第2圧力計212は、計測した第2圧力を出力する。
【0043】
第3圧力計213は、濃縮水排出口220及び濃縮水処理装置(不図示)を接続する配管に設けられる。第3圧力計213は、濃縮水排出口220から排出される濃縮水(廃水)に掛かる圧力(第3圧力)を計測する。第3圧力計213は、計測した第3圧力を出力する。
【0044】
水質計214は、第1濾過水排出口218及び第2濾過水排出口219並びにユースポイントUPを接続する配管に設けられる。水質計214は、第1濾過水排出口218及び第2濾過水排出口219から排出される超純水(濾過水)の水質に関する成分の量を計測する。水質計214は、水質に関する成分として、例えば微粒子数、比抵抗(溶解性物質の総合指標)、全有機炭素及び溶存酸素濃度等の成分の量を計測する。水質計214は、計測した成分の量を示す水質情報を出力する。すなわち、水質情報は、濾過膜216によって濾過された超純水又は純水の水質を示す。
【0045】
第2流量計215は、第1濾過水排出口218及び第2濾過水排出口219並びにユースポイントUPを接続する配管に設けられる。第2流量計215は、第1濾過水排出口218及び第2濾過水排出口219から排出される超純水(濾過水)の単位時間あたりの流量の合計値を、濾過器211の単位時間あたりの濾過流量として計測する。第2流量計215は、計測した濾過器211の単位時間あたりの濾過流量を出力する。
【0046】
図3は、濾過装置2の概略構成を示すブロック図である。
【0047】
図3に示すように、濾過装置2は、前述した構成に加えて、第1記憶部221、第1通信部222、第1表示部223、第1操作部224、タイマ225、カウンタ226、インタフェース部227及び制御部228等をさらに有する。第1記憶部221、第1通信部222、第1表示部223、第1操作部224、タイマ225、カウンタ226、インタフェース部227及び制御部228は、バスを介して電気的に相互に接続される。
【0048】
第1記憶部221は、プログラム又はデータを記憶する。第1記憶部221は、例えば、半導体メモリ装置を有する。第1記憶部221は、制御部228による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。プログラムは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等のコンピュータ読み取り可能、且つ、非一時的な可搬型記憶媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて第1記憶部221にインストールされる。
【0049】
第1通信部222は、濾過装置2を他の装置と通信可能にする。第1通信部222は、通信インタフェース回路を有する。第1通信部222が有する通信インタフェース回路は、有線LAN(Local Area Network)又は無線LAN等の通信インタフェース回路である。第1通信部222は、データを他の装置から受信して制御部228に供給すると共に、制御部228から供給されたデータを他の装置に送信する。
【0050】
第1表示部223は、画像を表示する。第1表示部223は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイを有する。第1表示部223は、制御部228から供給された表示データに基づいて画像を表示する。
【0051】
第1操作部224は、濾過装置2に対する操作者の入力操作を受け付ける。第1操作部224は、例えば、ボタン又はキーパッドを有する。第1操作部224は、第1表示部223と一体化されたタッチパネルを有してもよい。第1操作部224は、操作者の入力操作に応じた信号を生成して制御部228に供給する。
【0052】
タイマ225は、濾過膜216が(未使用状態から)使用され始めてから現在までの経過時間を計測する。タイマ225は、濾過膜216の使用開始時期を示す開始時期情報と、計測した経過時間を示す稼働期間情報とを制御部228へ出力する。すなわち、稼働期間情報は、濾過器211の稼働期間を示す。
【0053】
カウンタ226は、濾過器211が設置されてから現在までに、定期点検等で濾過器211の洗浄が行われた回数(洗浄回数)を計測する。カウンタ226は、計測した洗浄回数を制御部228へ出力する。
【0054】
インタフェース部227は、USB(Universal Serial Bus)等のシリアルバスに準じた及び濾過装置2の各構成に準拠した、1つ又は複数のインタフェース回路を有する。インタフェース部227は、第1ポンプ202、熱交換装置203、水温計204、第2ポンプ207、第1圧力計209、第2圧力計212、第3圧力計213、水質計214及び第2流量計215と電気的に接続する。インタフェース部227は、制御部228から送信された信号を第1ポンプ202、熱交換装置203及び第2ポンプ207へ送信する。また、インタフェース部227は、水温計204、第1圧力計209、第2圧力計212、第3圧力計213、水質計214及び第2流量計215から送信された情報を制御部228へ送信する。制御部228は、インタフェース部227の代わりに、第1通信部222を介して第1ポンプ202、熱交換装置203、第2ポンプ207、水温計204、第2圧力計212、第3圧力計213、水質計214及び/又は第2流量計215と接続されてもよい。
【0055】
制御部228は、濾過装置2の動作を統括的に制御するデバイスであり、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。制御部228は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を有する。制御部228は、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を有してもよい。制御部228は、第1記憶部221に記憶されているプログラム並びに第1通信部222及び第1操作部224からの入力に基づいて濾過装置2の各種処理が適切な手順で実行されるように、各構成の動作を制御すると共に、各種の処理を実行する。
【0056】
制御部228は、インタフェース部227を介して第1ポンプ202及び第2ポンプ207へ制御信号を送信し、第1ポンプ202及び第2ポンプ207による液体の単位時間あたりの吸込量及び吐出量を設定すると共に、濾過装置2の配管内で液体が流れるように第1ポンプ202及び第2ポンプ207を制御する。また、制御部228は、インタフェース部227を介して熱交換装置203へ制御信号を送信し、熱交換装置203が一次純水を加熱する温度を設定すると共に、一次純水を加熱するように熱交換装置203を制御する。
【0057】
また、制御部228は、インタフェース部227を介して水温計204から温度情報を受信し、受信した温度情報を、第1通信部222を介して解析装置3へ送信する。
【0058】
また、制御部228は、インタフェース部227を介して第1圧力計209、第2圧力計212及び第3圧力計213から第1圧力、第2圧力及び第3圧力を受信する。制御部228は、受信した各圧力から、濾過器211によって濾過される液体に掛かる圧力に関する圧力情報を生成し、生成した圧力情報を、第1通信部222を介して解析装置3へ送信する。制御部228は、各圧力の合計値、平均値、中央値、最小値又は最大値等の統計値を示すように圧力情報を生成する。制御部228は、第1圧力、第2圧力又は第3圧力の何れか一つを示すように圧力情報を生成してもよい。制御部228は、以下に示す式(1)を用いて圧力を算出し、算出した圧力を示すように圧力情報を生成してもよい。
圧力=[(第1圧力+第3圧力)/2]-(第2圧力)…(1)
【0059】
また、制御部228は、インタフェース部227を介して水質計214から水質情報を受信し、受信した水質情報を、第1通信部222を介して解析装置3へ送信する。
【0060】
また、制御部228は、インタフェース部227を介して第1流量計210及び第2流量計215から濾過器211への単位時間あたりの供給流量及び濾過器211の単位時間あたりの濾過流量を受信する。制御部228は、受信した各流量から、濾過器211における液体の流量に関する流量情報を生成し、生成した流量情報を、第1通信部222を介して解析装置3へ送信する。制御部228は、濾過器211の単位時間あたりの濾過流量を示すように流量情報を生成する。制御部228は、濾過器211への単位時間あたりの供給流量を示すように流量情報を生成してもよい。制御部228は、濾過器211への単位時間あたりの供給流量から受信した各流量から濾過器211の単位時間あたりの濾過流量を減算することにより、濃縮水排出口220から排出される濃縮水の流量を濾過器211の単位時間あたりの濃縮流量として算出してもよい。その場合、制御部228は、濾過器211の単位時間あたりの濃縮流量を示すように流量情報を生成してもよい。制御部228は、水温計204によって計測された一次純水の温度と、濾過器211を製造するメーカのパンフレット等に記載された所定の水温での濾過可能流量とから濾過流量を推定し、推定した濾過流量を示すように流量情報を生成してもよい。
【0061】
また、制御部228は、タイマ225から開始時期情報及び稼働期間情報を受信し、受信した開始時期情報及び稼働期間情報を、第1通信部222を介して解析装置3へ送信する。
【0062】
また、制御部228は、濾過装置2の操作者によって第1操作部224に入力された、又は、濾過装置2と通信可能な他の装置から出力され且つ第1通信部222を介して濾過装置2に入力された薬品種情報、濃度情報、洗浄時間情報及び頻度情報を受信する。薬品種情報は、濾過器211の洗浄に用いた薬品の種類を示す。濃度情報は、濾過器211の洗浄に用いた薬品の濃度を示す。洗浄時間情報は、濾過器211の洗浄に掛かった時間を示す。頻度情報は、濾過器211の洗浄を繰り返し実施する所定の時間間隔(例えば、月ごと、季節ごと又は1年ごと)を示す。また、制御部228は、カウンタ226から回数情報を受信する。制御部228は、受信した薬品種情報、濃度情報、洗浄時間情報、頻度情報及び回数情報を濾過器211の洗浄に関する洗浄条件情報として、第1通信部222を介して解析装置3へ送信する。
【0063】
図4は、解析装置3の概略構成を示すブロック図である。
【0064】
図4に示すように、解析装置3は、第2記憶部31、第2通信部32、第2表示部33、第2操作部34及び処理部35等を有する。第2記憶部31、第2通信部32、第2表示部33、第2操作部34及び処理部35は、バスを介して電気的に相互に接続される。第2通信部32及び第2表示部33は、出力部の一例である。
【0065】
第2記憶部31は、プログラム又はデータを記憶する。第2記憶部31は、例えば、半導体メモリ装置を有する。第2記憶部31は、処理部35による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能、且つ、非一時的な可搬型記憶媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて第2記憶部31にインストールされる。
【0066】
第2通信部32は、処理部35を他の装置と通信可能にする。第2通信部32は、通信インタフェース回路を有する。第2通信部32が有する通信インタフェース回路は、有線LAN又は無線LAN等の通信インタフェース回路である。第2通信部32は、データを他の装置から受信して処理部35に供給すると共に、処理部35から供給されたデータを他の装置に送信する。
【0067】
第2表示部33は、画像を表示する。第2表示部33は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイを有する。第2表示部33は、処理部35から供給された表示データに基づいて画像を表示する。
【0068】
第2操作部34は、解析装置3に対する操作者の入力操作を受け付ける。第2操作部34は、例えば、キーパッド、キーボード又はマウスを有する。第2操作部34は、第2表示部33と一体化されたタッチパネルを有してもよい。第2操作部34は、操作者の入力操作に応じた信号を生成して処理部35に供給する。
【0069】
処理部35は、解析装置3に含まれる各構成の動作を統括的に制御するデバイスであり、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。処理部35は、例えば、CPUを有する。処理部35は、GPU、DSP、LSI、ASIC、FPGA等を有してもよい。処理部35は、第2記憶部31に記憶されているプログラム並びに第2通信部32及び第2操作部34からの入力に基づいて解析装置3の各種処理が適切な手順で実行されるように、各構成の動作を制御すると共に、各種の処理を実行する。
【0070】
処理部35は、取得部351、算出部352、推定部353、特定部354及び出力制御部355を機能ブロックとして有する。これらの各部は、処理部35によって実行されるプログラムによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、ファームウェアとして解析装置3に実装されてもよい。
【0071】
図5は、解析装置3の解析処理の一例を示すフローチャートである。解析処理は、予め第2記憶部31に記憶されているプログラムに基づき主に処理部35によって解析装置3の各要素と協働して実行される。
【0072】
まず、取得部351は、開始時期情報、稼働期間情報、温度情報、流量情報、圧力情報、水質情報及び洗浄条件情報を取得する。また、取得部351は、各濾過膜216の濾過前伸度情報及び交換希望時期情報を取得する(ステップS101)。
【0073】
濾過膜216の濾過前伸度情報は、濾過膜216の濾過前の伸度を示す。濾過膜216の濾過前の伸度は、未使用時の濾過膜216を単糸状態で測定した伸度、濾過器211を製造してから出荷前に濾過膜216を抜き取り且つ単糸状態で測定した伸度、又は、現地で稼働前に濾過膜216を濾過器211から抜き取り且つ単糸状態で測定した伸度等を含む。濾過膜216の濾過前の伸度は、濾過膜216を製造するメーカにおいて、濾過前の濾過膜216に対する引張試験を実施することによって設定される。濾過膜216の濾過前の伸度は、例えば、引張試験によって測定される濾過前の濾過膜216の引張伸び(破断伸度)である。
【0074】
交換希望時期情報は、各濾過器211の所有者による濾過器211の交換希望時期を示す。
【0075】
取得部351は、任意のタイミングで濾過装置2から送信された開始時期情報、稼働期間情報、温度情報、流量情報、圧力情報、水質情報及び洗浄条件情報を、第2通信部32を介して受信し、第2記憶部31に予め記憶しておく。取得部351は、予め記憶された各情報を第2記憶部31から読み出すことによって取得する。取得部351は、開始時期情報、稼働期間情報、温度情報、流量情報、圧力情報、水質情報及び洗浄条件情報を、第2通信部32を介して濾過装置2からリアルタイムに受信することにより取得してもよい。
【0076】
取得部351は、操作者により第2操作部34又は不図示の情報処理装置を用いて設定された濾過前伸度情報及び/又は交換希望時期情報を第2操作部34から又は第2通信部32を介して受信し、第2記憶部31に予め記憶しておく。取得部351は、予め記憶された濾過前伸度情報及び/又は交換希望時期情報を第2記憶部31から読み出すことによって取得する。取得部351は、濾過前伸度情報及び/又は交換希望時期情報を第2操作部34から又は第2通信部32を介してリアルタイムに受信することにより取得してもよい。
【0077】
次に、取得部351は、学習モデルを取得する(ステップS102)。学習モデルは第2記憶部31に予め記憶されている。取得部351は、学習モデルを第2記憶部31から読み出すことによって取得する。取得部351は、第2通信部32を介して外部の情報処理装置から学習モデルを受信することによって取得してもよい。
【0078】
学習モデルは、所定の濾過膜216を有する濾過器211の稼働期間情報、温度情報、流量情報、圧力情報、水質情報、洗浄条件情報及び濾過前伸度情報が入力された場合に、所定の濾過膜216の伸度に関する伸度情報を出力するように学習される。伸度情報は、例えば伸度保持率である。伸度保持率は、その濾過膜216の濾過前の伸度に対する現在の伸度の比である。この伸度保持率は、一般に、濾過膜216の延性が低下して、脆くなる状態を実測することにより求められ、濾過前の濾過膜216と比較することによって濾過膜216の破断の危険性を判断する指標となる。濾過膜216の現在の伸度は、使用中の濾過膜216の伸度である。現在の伸度は、例えば、使用中の濾過器211から取り出した濾過膜216に対して引張試験を実施することによって測定される引張伸び(破断伸度)である。
【0079】
伸度保持率は、濾過膜216の濾過前の伸度に対する予測伸度の比であってもよい。濾過膜216の予測伸度は、例えば、使用中の濾過器211から取り出した濾過膜216に対して引張試験を実施することによって測定された引張伸び(破断伸度)と、上述した稼働期間情報、温度情報、流量情報、圧力情報、水質情報及び洗浄条件情報のうちの少なくとも一つとから、濾過膜216をさらに一定期間使用した後に上述した引張試験を実施することによって測定されると予測される引張伸び(破断伸度)である。
【0080】
学習モデルは、例えばラッソ回帰等の線形回帰のアルゴリズムを用いた教師あり学習で学習される。教師データとして、過去に濾過器211によって超純水を精製した際に得られた稼働期間情報、温度情報、流量情報、圧力情報、水質情報、洗浄条件情報及び濾過前伸度情報と、この濾過器211から取り出した濾過膜216を解析することによって得られた濾過膜216の伸度保持率とのセットが使用される。学習モデルとして、各教師データから推定された稼働期間情報、温度情報、流量情報、圧力情報、水質情報、洗浄条件情報及び濾過前伸度情報と、伸度保持率との関係性を示す線形モデルが学習(生成)される。学習モデルは、NGBoost、XGBoost又はディープラーニング等の他のアルゴリズムを用いて学習されてもよい。
【0081】
図6は、半導体製造用水である超純水の製造用の濾過膜216における稼働期間と伸度保持率との関係を示すグラフである。
【0082】
図6の横軸は稼働期間を示し、縦軸は伸度保持率を示す。図6において、各点は、超純水製造に使用された濾過膜216の稼働期間と、その稼働期間だけ稼働させた濾過膜216の伸度保持率とに対応する位置にプロットされている。
【0083】
図6に示すように、稼働期間が長いほど伸度保持率が小さくなり、稼働期間が短いほど伸度保持率が大きくなる傾向がある。このように、稼働期間と伸度保持率とは相関性を有する。学習モデルは、入力される稼働期間が長いほど、出力する伸度保持率が小さくなり、入力される稼働期間が短いほど、出力する伸度保持率が大きくなるように学習される。
【0084】
図7は、半導体製造用水である超純水の製造用の濾過膜216における単位時間あたりの濾過流量と伸度保持率との関係を示すグラフである。
【0085】
図7の横軸は単位時間あたりの濾過流量を示し、縦軸は伸度保持率を示す。図7において、各点は、超純水製造に使用された濾過膜216の単位時間あたりの濾過流量と、その濾過流量の液体を濾過した濾過膜216の伸度保持率とに対応する位置にプロットされている。
【0086】
図7に示すように、単位時間あたりの濾過流量が多いほど伸度保持率が小さくなり、濾過流量が少ないほど伸度保持率が大きくなる傾向がある。このように、単位時間あたりの濾過流量と伸度保持率とは相関性を有する。学習モデルは、入力される単位時間あたりの濾過流量が多いほど、出力する伸度保持率が小さくなり、入力される濾過流量が少ないほど、出力する伸度保持率が大きくなるように学習される。
【0087】
図8は、半導体製造用水である超純水の製造用の濾過膜216における洗浄回数と伸度保持率との関係を示すグラフである。
【0088】
図8の横軸は濾過器211の洗浄が行われた回数(洗浄回数)を示し、縦軸は伸度保持率を示す。図8において、各点は、超純水の製造に使用された濾過器211の洗浄回数と、その洗浄回数だけ濾過器211が洗浄された濾過膜216の伸度保持率とに対応する位置にプロットされている。
【0089】
図8に示すように、洗浄回数が多いほど伸度保持率が小さくなり、洗浄回数が少ないほど伸度保持率が大きくなる傾向がある。このように、洗浄回数と伸度保持率とは相関性を有する。学習モデルは、入力される洗浄回数が多いほど、出力する伸度保持率が小さくなり、入力される洗浄回数が少ないほど、出力する伸度保持率が大きくなるように学習される。
【0090】
また、液体の温度が上昇することによって、濾過膜216の熱による機械的強さ、熱的性質及び寸法の変化と、熱及び酸素の作用による熱酸化劣化とにより、濾過膜216の分子鎖の切断及び分子量の低下が発生する。これによって、濾過膜216の伸度保持率が低下する。このように、温度と伸度保持率とは相関性を有する。学習モデルは、入力される温度が高いほど、出力する伸度保持率が小さくなり、入力される温度が低いほど、出力する伸度保持率が大きくなるように学習される。
【0091】
また、濾過器211によって濾過される液体に掛かる圧力が増大し、その液体により濾過膜216に対する圧力が増大することによって、圧縮又は引張応力等による濾過膜216の寸法変化、又は、塑性変形が発生する。これによって、濾過膜216の伸度保持率が低下する。このように、圧力と伸度保持率とは相関性を有する。学習モデルは、入力される圧力が大きいほど、出力する伸度保持率が小さくなり、入力される圧力が小さいほど、出力する伸度保持率が大きくなるように学習される。
【0092】
また、液体中の酸化性物質による濾過膜216の酸化劣化によって、濾過膜216の分子切断による分子量低下又は架橋化が発生し、表面層の脆化又は微細なクラックが発生する。これによって、濾過膜216の伸度保持率が低下する。このように、水質と伸度保持率とは相関性を有する。学習モデルは、入力される酸化性物質の濃度が高いほど、出力する伸度保持率が小さくなり、入力される水質が良いほど、出力する伸度保持率が大きくなるように学習される。
【0093】
また、濾過器211の洗浄に用いる薬品の種類によっては、濾過器211の洗浄を繰り返し実施することにより、濾過膜216の脆化又は微細なクラックが発生する。これによって、濾過膜216の伸度保持率が低下する。このように、薬品種と伸度保持率とは相関性を有する。学習モデルは、入力される薬品が濾過膜216の弾性に及ぼす影響が大きいほど、出力する伸度保持率が小さくなり、入力される薬品が濾過膜216の弾性に及ぼす影響が小さいほど、出力する伸度保持率が大きくなるように学習される。
【0094】
また、濾過器211の洗浄に用いる薬品の濃度が高いほど、濾過膜216の脆化又は微細なクラックが発生しやすくなる。これによって、濾過膜216の伸度保持率が低下する。このように、濃度と伸度保持率とは相関性を有する。学習モデルは、入力される濃度が高いほど、出力する伸度保持率が小さくなり、入力される濃度が低いほど、出力する伸度保持率が大きくなるように学習される。
【0095】
また、濾過器211の洗浄に掛かった時間が長いほど、濾過膜216が薬品にさらされる時間が長くなり、濾過膜216の脆化又は微細なクラックが発生しやすくなる。これによって、濾過膜216の伸度保持率が低下する。このように、洗浄時間と伸度保持率とは相関性を有する。学習モデルは、入力される洗浄時間が長いほど、出力する伸度保持率が小さくなり、入力される洗浄時間が短いほど、出力する伸度保持率が大きくなるように学習される。
【0096】
また、濾過器211の洗浄を繰り返し実施する時間間隔が短い(すなわち、濾過器211の洗浄の頻度が高い)ほど、濾過膜216の脆化又は微細なクラックが発生しやすくなる。これによって、濾過膜216の伸度保持率が低下する。このように、頻度と伸度保持率とは相関性を有する。学習モデルは、入力される頻度が高いほど、出力する伸度保持率が小さくなり、入力される頻度が低いほど、出力する伸度保持率が大きくなるように学習される。
【0097】
学習モデルは、解析装置3又は第2通信部32を介して解析装置3と通信可能に接続される外部の学習装置で生成される。
【0098】
解析装置3は、学習モデルを用いることによって、稼働期間情報、温度情報、流量情報、圧力情報、水質情報及び洗浄条件情報等の様々な種類のパラメータの様々な組み合わせに対する濾過膜216の伸度保持率を高精度に、且つ、効率よく算出することができる。また、解析装置3は、学習モデルを用いることによって、様々な種類のパラメータの様々な組み合わせについて濾過膜216の伸度保持率を記憶しておくことなく、濾過膜216の伸度保持率を算出できるため、第2記憶部31の記憶容量を低減させることができる。また、解析装置3は、学習モデルを用いることによって、様々な種類のパラメータの様々な組み合わせに応じた複雑な判定を実行することなく、濾過膜216の伸度保持率を算出できるため、伸度保持率の算出時間の低減及び処理負荷の低減を図ることができる。
【0099】
次に、算出部352は、学習モデルに、取得部351によって取得された稼働期間情報、温度情報、流量情報、圧力情報、水質情報、洗浄条件情報及び濾過前伸度情報を入力し、学習モデルから出力された伸度情報を取得する。算出部352は、学習モデルから出力された伸度情報に基づいて、濾過膜216の伸度保持率を算出する(ステップS103)。例えば、算出部352は、学習モデルから出力される伸度情報に示される伸度保持率を濾過膜216の現在の伸度保持率として特定する。
【0100】
次に、推定部353は、算出部352によって算出された伸度保持率が第1閾値未満であるか否かを判定する(ステップS104)。第1閾値は、濾過膜216に求められる濾過性能(濾過膜216の仕様)が満たされる伸度保持率の最小値に設定される。
【0101】
図9は、濾過膜216の稼働期間と伸度保持率との関係について説明するためのグラフである。
【0102】
図9の横軸は濾過膜216の稼働期間を示し、縦軸は濾過膜216の伸度保持率を示す。曲線L1は、濾過膜216の稼働期間と伸度保持率との関係を示す。図9に示すように、濾過膜216の稼働期間が長いほど、濾過膜216の伸度保持率が小さくなる。また、濾過膜216の伸度保持率が低減すると濾過膜216の破断可能性が増加し、膜破断が起こり、水質が維持できなくなる危険性が高まり、濾過膜216の伸度保持率が十分に低くなると、濾過膜216は液体を良好に濾過することができなくなる。図9に示す例では、稼働期間が8年を超えると、伸度保持率が50%未満になり、濾過膜216は液体を良好に濾過することができなくなる。そのため、第1閾値T1は50%に設定されている。
【0103】
伸度保持率が第1閾値以上である場合(ステップS104のNо)、出力制御部355は、特に処理を実行せずに、ステップS106へ処理を移行する。
【0104】
一方、伸度保持率が第1閾値未満である場合(ステップS104のYes)、出力制御部355は、異常処理を実行し(ステップS105)、一連の解析処理を終了する。出力制御部355は、異常処理において、濾過膜216の交換指示を第2表示部33に表示することによって出力する。出力制御部355は、濾過膜216の交換指示を、第2通信部32を介して管理者が利用する情報処理装置に送信することによって出力してもよい。濾過膜216の交換指示は、伸度保持率に関する情報の一例である。
【0105】
なお、出力制御部355は、異常処理として、濾過装置2の停止を指示する制御信号を、第2通信部32を介して濾過装置2に送信することによって出力してもよい。濾過装置2の停止を指示する制御信号は、伸度保持率に関する情報の一例である。その場合、制御部228は、第1通信部222を介して解析装置3から濾過装置2の停止を指示する制御信号を受信し、第1ポンプ202及び第2ポンプ207を停止させるように制御する。これにより、解析システム1は、不適切な液体が精製され続けることを抑制することができる。
【0106】
次に、推定部353は、算出部352によって算出された伸度保持率が第2閾値未満であるか否かを判定する(ステップS106)。第2閾値は、第1閾値より大きい値に設定される。第2閾値は、濾過膜216に求められる濾過性能(濾過膜216の仕様)は満たされるが、現在の濾過性能が初期性能(濾過前の伸度)に対して十分に低下している場合の伸度保持率に設定される。図9に示す例では、稼働期間が5年を超えると、伸度保持率が60%未満になり、濾過膜216の濾過性能は初期性能(濾過前の伸度)に対して十分に低下している。そのため、第2閾値T2は60%に設定されている。
【0107】
伸度保持率が第2閾値以上である場合(ステップS106のNо)、出力制御部355は、特に処理を実行せずに、ステップS108へ処理を移行する。
【0108】
一方、伸度保持率が第2閾値未満である場合(ステップS106のYes)、出力制御部355は、濾過膜216の交換を推奨する警告を出力する(ステップS107)。出力制御部355は、濾過膜216の交換を推奨する警告を第2表示部33に表示することによって出力する。出力制御部355は、濾過膜216の交換を推奨する警告を、第2通信部32を介して管理者が利用する情報処理装置に送信することによって出力してもよい。濾過膜216の交換を推奨する警告は、伸度保持率に関する情報の一例である。これにより、管理者は、濾過膜216の濾過性能が低下していることを認識でき、濾過膜216の交換を検討することができる。その結果、解析システム1は、濾過膜216の交換時期を早めることができ、不適切な液体が精製され続けることを抑制することができる。
【0109】
次に、推定部353は、算出部352によって算出された伸度保持率に基づいて、濾過膜216の使用可能期間を推定する(ステップS108)。図9に示したように、濾過膜216の伸度保持率は、稼働期間に対して単調減少する。すなわち、伸度保持率が低いほど、現在までの稼働期間は長く、現時点から伸度保持率が第1閾値未満となるまでの期間、すなわち、濾過膜216の残り使用可能期間は短くなる。例えば、解析装置3は、濾過膜216の現在の伸度保持率と、残り使用可能期間との関係を示すテーブルを予め第2記憶部31に記憶しておく。推定部353は、第2記憶部31に記憶されたテーブルを参照して、濾過膜216の使用可能期間を推定(特定)する。
【0110】
次に、特定部354は、濾過膜216が、取得部351によって取得された交換希望時期情報に示される交換希望時期まで使用可能であるか否かを判定する(ステップS109)。特定部354は、現在から交換希望時期までの期間が、推定部353によって推定された使用可能期間以下であるか否かによって、濾過膜216が交換希望時期まで使用可能であるか否かを判定する。濾過膜216が交換希望時期まで使用可能であると判定された場合(ステップS109のYes)、特定部354は、特に処理を実行せずに、ステップS111へ処理を移行する。
【0111】
一方、濾過膜216が交換希望時期まで使用可能でないと判定された場合(ステップS109のNo)、特定部354は、濾過器211を交換希望時期まで使用可能とする設定パラメータを特定する(ステップS110)。設定パラメータは、例えば、濾過装置2の熱交換装置203で液体を加熱する温度又は第1ポンプ202及び第2ポンプ207による液体の単位時間あたりの吸込量及び吐出量である。
【0112】
特定部354は、ステップS103の処理と同様にして、取得部351によって取得された学習モデルに、各情報を入力し、学習モデルから出力された伸度情報を取得する。特定部354は、学習モデルに入力する情報を変更しながら、伸度情報を取得する。学習モデルに入力される圧力情報、水質情報、洗浄条件情報及び濾過前伸度情報は、ステップS101において取得部351によって取得された圧力情報、水質情報、洗浄条件情報及び濾過前伸度情報に設定(固定)される。学習モデルに入力される稼働期間情報は、ステップS101において取得部351によって取得された開始時期情報に示される濾過膜216の使用開始時期から取得部351によって取得された交換希望時期情報に示される交換希望時期までの期間に設定(固定)される。
【0113】
一方、学習モデルに入力される温度情報は、その温度がステップS101において取得部351によって取得された温度情報に示される温度より徐々に低くなっていくように変更される。また、学習モデルに入力される流量情報は、その単位時間あたりの流量が、ステップS101において取得部351によって取得された流量情報に示される単位時間あたりの流量より徐々に小さくなっていくように変更される。温度情報及び流量情報のうちの何れか一方は、固定されてもよい。
【0114】
特定部354は、温度情報及び/又は流量情報を変更しながら、学習モデルに入力し、伸度情報を取得する。特定部354は、取得した伸度情報に示される伸度保持率が第1閾値以上になった場合、その伸度情報が出力されたときに入力された温度情報及び/又は流量情報を、濾過膜216を交換希望時期まで使用可能な温度情報及び/又は流量情報として特定する。なお、濾過装置2は使用開始時期から現在まで既に使用されているため、特定部354は、特定した温度情報及び/又は流量情報を、使用開始時期から現在までの期間に応じて補正してもよい。例えば、特定部354は、使用開始時期から現在までの期間が長いほど温度が低くなるように温度情報を補正する。また、特定部354は、使用開始時期から現在までの期間が長いほど単位時間あたりの流量が小さくなるように流量情報を補正する。
【0115】
特定部354は、特定した温度情報及び/又は流量情報に基づいて、設定パラメータを特定する。解析装置3は、温度情報に示される温度と、濾過器211によって濾過される液体の温度をその温度にするための、熱交換装置203により加熱される温度との関係を示すテーブルを予め第2記憶部31に記憶しておく。特定部354は、第2記憶部31に記憶されたテーブルを参照し、特定した温度情報に示される温度に対応する、熱交換装置203に設定すべき温度を設定パラメータとして特定する。
【0116】
また、解析装置3は、流量情報に示される流量と、濾過器211における流量をその流量にするための、第1ポンプ202及び第2ポンプ207による液体の単位時間あたりの吸込量及び吐出量との関係を示すテーブルを予め第2記憶部31に記憶しておく。特定部354は、第2記憶部31に記憶されたテーブルを参照し、特定した流量情報に示される流量に対応する、第1ポンプ202及び第2ポンプ207に設定すべき液体の単位時間あたりの吸込量及び吐出量を設定パラメータとして特定する。
【0117】
特定部354が、濾過膜216を交換希望時期まで使用可能とする設定パラメータを特定した場合、出力制御部355は、特定部354によって特定された設定パラメータを出力する。出力制御部355は、特定された設定パラメータを第2表示部33に表示することによって出力する。出力制御部355は、特定された設定パラメータを、第2通信部32を介して管理者が利用する情報処理装置に送信することによって出力してもよい。
【0118】
なお、出力制御部355は、特定された設定パラメータを含み、且つ、その設定パラメータで動作することを指示する制御信号を、第2通信部32を介して濾過装置2に送信することによって出力してもよい。その場合、制御部228は、第1通信部222を介して解析装置3からその制御信号を受信する。制御部228は、受信した制御信号で指定された液体の単位時間あたりの吸込量及び吐出量を第1ポンプ202及び第2ポンプ207に設定し、受信した制御信号で指定された温度を熱交換装置203に設定する。これにより、解析システム1は、濾過膜216の使用可能期間を各濾過装置2の所有者が希望する濾過器211の交換希望時期まで延ばすことができ、濾過膜216の部品寿命を延ばすことができる。
【0119】
図9の曲線L2は、曲線L1に対して、設定パラメータを変更した場合の、濾過膜216の稼働期間と伸度保持率との関係を示す。曲線L1に示すように、設定パラメータを変更する前の伸度保持率は、稼働期間が8年を超えたときに第1閾値T1以下となっていた。一方、設定パラメータを変更することにより、曲線L2に示すように、伸度保持率は、稼働期間が10年を超えても第1閾値T1よりも大きい状態を維持する。
【0120】
最後に、出力制御部355は、濾過膜216の伸度保持率に関する情報を出力し(ステップS111)、一連の解析処理を終了する。出力制御部355は、算出部352によって算出された濾過膜216の伸度保持率に関する情報を第2表示部33に表示することによって出力する。出力制御部355は、第2通信部32を介して、算出部352によって算出された濾過膜216の伸度保持率に関する情報を濾過装置2に送信することによって、出力してもよい。
【0121】
出力制御部355は、濾過膜216の伸度保持率に関する情報として、算出部352によって算出された伸度保持率を出力する。これにより、濾過装置2の所有者は、濾過膜216の現在の伸度保持率を認識することができる。出力制御部355は、濾過膜216の伸度保持率に関する情報として、推定部353によって推定された濾過膜216の使用可能期間を出力してもよい。これにより、濾過装置2の所有者は、濾過膜216の残り使用可能期間を認識することができる。
【0122】
以上詳述したように、解析装置3は、学習モデルに、取得部351によって取得された稼働期間情報及び流量情報を入力して、学習モデルから出力された伸度情報に基づいて濾過膜の伸度保持率を算出する。これにより、解析装置3は、使用中の濾過器211から濾過膜216を取り出して解析することなく、濾過膜216の伸度保持率を算出することができる。したがって、解析装置3は、濾過膜216の伸度保持率を簡易に算出することができる。その結果、解析システム1は、濾過膜216を取り出すことによる保守者の工数の増大、及び、濾過膜216の取り出し作業に伴って濾過装置2が停止することによる水質汚染の発生を抑制することができる。
【0123】
また、解析システム1では、濾過器211の製造者又は所有者は、濾過膜216の伸度保持率から濾過膜216の状態を正しく認識することができ、適切なタイミングで濾過膜216を交換することができる。これにより、濾過装置2は、濾過器211のリークの発生を防止し、半導体製造用水又は製薬用水の水質汚染の発生を防止することができる。また、濾過装置2は、濾過器211のリークの発生を未然に防ぐことにより、半導体製造用水又は製薬用水の製造プロセスの停止を抑制し、半導体製造用水又は製薬用水の製造効率の低下を抑制することができる。
【0124】
また、解析装置3は、濾過膜216の伸度保持率を、人手を介さずに自動的に算出するため、濾過器211の解析に要する工数を削減することができる。また、濾過器211の製造者は、適切なタイミングで濾過器211の所有者に濾過器211の交換を促すことができる。
【0125】
ここで、学習モデルは、所定の濾過膜216を有する濾過器211の稼働期間情報、流量情報及び濾過前伸度情報が入力された場合に、所定の濾過膜216の伸度に関する伸度情報を出力するように学習されてもよい。その場合、ステップS101において、取得部351は、温度情報、圧力情報、水質情報及び洗浄条件情報を取得しなくてもよい。また、ステップS103において、算出部352は、学習モデルに、取得部351によって取得された稼働期間情報、流量情報及び濾過前伸度情報を入力して、学習モデルから出力された濾過膜216の伸度保持率を取得する。
【0126】
また、学習モデルは、所定の濾過膜216を有する濾過器211の稼働期間情報、流量情報及び濾過前伸度情報に加えて、所定の濾過膜216を有する濾過器211の温度情報、圧力情報、水質情報及び洗浄条件情報のうちの少なくとも一つが入力された場合に、所定の濾過膜216の伸度に関する伸度情報を出力するように学習されてもよい。その場合、ステップS101において、取得部351は、圧力情報、水質情報及び洗浄条件情報のうちの少なくとも一つ(学習モデルに入力すべき情報)を取得し、学習モデルに入力しない情報については取得しなくてもよい。また、ステップS103において、算出部352は、学習モデルに、取得部351によって取得された稼働期間情報、流量情報及び濾過前伸度情報に加えて、取得部351によって取得された温度情報、圧力情報、水質情報及び洗浄条件情報のうちの少なくとも一つを入力し、学習モデルから出力された伸度情報に基づいて、濾過膜216の伸度保持率を算出する。
【0127】
また、学習モデルは、さらに他のパラメータを用いて学習されてもよい。例えば、学習モデルは、上記した各情報に加えて、所定の濾過膜216を有する濾過器211の熱水殺菌温度、一回あたりの熱水通水時間及び/又は熱水殺菌ペース(単位時間あたりの回数)が入力された場合に、所定の濾過膜216の伸度に関する伸度情報を出力するように学習される。その場合、ステップS101において、取得部351は、熱水殺菌温度、一回あたりの熱水通水時間及び/又は熱水殺菌ペースをさらに取得する。また、ステップS103において、算出部352は、学習モデルに、取得部351によって取得された各情報を入力し、学習モデルから出力された伸度情報に基づいて、濾過膜216の伸度保持率を算出する。これにより、算出部352は、より高精度に濾過膜216の伸度保持率を算出することができる。
【0128】
また、学習モデルは、伸度情報として、所定の濾過膜216の現在の伸度又は上述した予測伸度を出力するように学習されてもよい。その場合、濾過前伸度情報は、学習モデルに入力されなくてもよい。すなわち、学習モデルは、所定の濾過膜216を有する濾過器211の稼働期間情報及び流量情報が入力された場合に所定の濾過膜216の伸度に関する伸度情報を出力するように学習される。また、学習モデルは、所定の濾過膜216を有する濾過器211の稼働期間情報及び流量情報に加えて、所定の濾過膜216を有する濾過器211の温度情報、圧力情報、水質情報及び洗浄条件情報のうちの少なくとも一つが入力された場合に、所定の濾過膜216の伸度に関する伸度情報を出力するように学習される。算出部352は、学習モデルから出力された濾過膜216の現在の伸度又は予測伸度と取得部351によって取得された濾過膜216の濾過前の伸度とに基づいて伸度保持率を算出する。算出部352は、現在の伸度又は予測伸度を濾過前の伸度で除算することにより伸度保持率を算出する。この場合も、算出部352は、濾過膜216の伸度保持率を高精度に算出することができる。
【0129】
また、ステップS110において、特定部354は、ステップS102で取得部351によって取得された学習モデルと異なる学習モデルを使用して、濾過器211を交換希望時期まで使用可能とする設定パラメータを特定してもよい。ステップS110で使用される学習モデルは、所定の濾過膜216を有する濾過器211の使用可能期間、伸度情報、圧力情報、水質情報及び洗浄条件情報が入力された場合に、設定パラメータを出力するように学習される。使用可能期間は、その濾過膜216の残りの使用可能期間である。伸度情報は、その濾過膜216の現在の伸度情報(現在の伸度保持率又は現在の伸度)である。出力される設定パラメータは、その濾過膜216の伸度保持率がその使用可能期間、第1閾値以上である状態を維持可能な設定パラメータである。
【0130】
学習モデルは、例えばラッソ回帰等の線形回帰のアルゴリズムを用いた教師あり学習で学習される。教師データとして、過去に濾過器211によって超純水を精製した際に得られた濾過器211の使用可能期間、伸度情報、圧力情報、水質情報、洗浄条件情報及び設定パラメータのセットが使用される。学習モデルは、NGBoost、XGBoost又はディープラーニング等の他のアルゴリズムを用いて学習されてもよい。また、学習モデルは、水質情報及び/又は洗浄条件情報を用いずに学習されてもよい。また、学習モデルは、設定パラメータでなく、温度情報及び流量情報を出力するように学習されてもよい。その場合、特定部354は、学習モデルから出力された温度情報及び流量情報に基づいて、設定パラメータを特定する。なお、温度情報及び流量情報のうちの何れか一方は、固定されて、入力パラメータとして使用されてもよい。
【0131】
前述したように、この学習モデルに入力される各情報と伸度保持率とは相関性を有する。この場合も、解析システム1は、濾過膜216の使用可能期間を各濾過装置2の所有者が希望する濾過器211の交換希望時期まで延ばすことができ、濾過膜216の部品寿命を延ばすことができる。
【0132】
また、解析装置3は、ステップS103及び/又はS110において、自装置に記憶された学習モデルを用いる代わりに、外部のサーバに記憶された学習モデルを用いて伸度情報及び/又は設定パラメータを取得してもよい。その場合、解析装置3は、第2通信部32を介してサーバに、学習モデルに入力する各情報を送信する。サーバは、受信した各情報を学習モデルに入力し、学習モデルから出力された情報を解析装置3に送信する。算出部352は、学習モデルから出力される情報を、第2通信部32を介してサーバから受信することにより取得する。解析装置3は、外部のサーバに記憶された学習モデルを利用することにより、サーバによって更新されている最新の学習モデルを用いて適切な伸度情報又は設定パラメータを取得することができる。一方、解析装置3は、自装置に記憶された学習モデルを利用することにより、サーバとの通信接続が切断されている状態でも伸度情報又は設定パラメータを取得することができる。
【0133】
図10は、製薬用水である純水の製造用の濾過膜216における稼働期間と伸度保持率との関係を示すグラフである。
【0134】
図10の横軸は稼働期間を示し、縦軸は伸度保持率を示す。図10において、各点は、製薬用水製造に使用された濾過膜216の稼働期間と、その稼働期間だけ稼働させた濾過膜216の伸度保持率とに対応する位置にプロットされている。図10に示すように、純水製造用の濾過膜216と同様に、製薬用水製造用の濾過膜216における稼働期間及び伸度保持率は、相関性を有する。
【0135】
図11は、製薬用水である純水の製造用の濾過膜216における単位時間あたりの濾過流量と伸度保持率との関係を示すグラフである。
【0136】
図11の横軸は単位時間あたりの濾過流量を示し、縦軸は伸度保持率を示す。図11において、各点は、製薬用水製造に使用された濾過膜216の単位時間あたりの濾過流量と、その濾過流量の液体を濾過した濾過膜216の伸度保持率とを示す。図11に示すように、半導体製造用水である超純水の製造用の濾過膜216と同様に、製薬用水である純水の製造用の濾過膜216における濾過流量及び伸度保持率は、相関性を有する。
【0137】
また、半導体製造用水である超純水の製造用の濾過膜216と同様に、製薬用水である純水の製造用の濾過膜216における洗浄回数、液体の温度、液体に掛かる圧力及び/又は液体の水質と、伸度保持率とは、相関性を有する。したがって、解析システム1は、製薬用水又は純水の製造にも使用可能である。
【0138】
また、上述した解析システム1の解析装置3は、各濾過装置2に収集された濾過装置2を構成する各部の運転条件をオフラインで取得してもよい。例えば、解析装置3と各濾過装置2とは、ネットワーク4を介さず、USB(登録商標)等の公知のケーブルを介して直接接続される。解析装置3は、ケーブルを介して各濾過装置2の運転条件を取得してもよい。また、上述した解析装置3の各構成は、濾過装置2の構成として組み込まれてもよい。
【0139】
当業者は、本開示の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した各部の処理は、本開示の範囲において、適宜に異なる順序で実行されてもよい。また、上述した実施形態及び変形例は、本開示の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0140】
3 解析装置
351 取得部
352 算出部
353 推定部
354 特定部
355 出力制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11