(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131071
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】紡績機
(51)【国際特許分類】
D01H 5/36 20060101AFI20240920BHJP
D01H 5/32 20060101ALI20240920BHJP
D01H 5/42 20060101ALI20240920BHJP
D01H 13/22 20060101ALI20240920BHJP
D01H 15/00 20060101ALI20240920BHJP
B65H 63/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
D01H5/36
D01H5/32
D01H5/42
D01H13/22
D01H15/00 A
B65H63/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041104
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】濱田 敏矢
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康雄
(72)【発明者】
【氏名】岡島 一帆
(72)【発明者】
【氏名】林 茂
【テーマコード(参考)】
3F115
4L056
【Fターム(参考)】
3F115CB19
4L056AA02
4L056AA19
4L056AA47
4L056AA48
4L056BA05
4L056BC01
4L056BC14
4L056CA06
4L056CB04
4L056EA13
4L056EB04
4L056EB10
4L056EB16
4L056EB30
4L056EC49
4L056EC53
4L056EC82
4L056EC85
(57)【要約】
【課題】太さが不規則に変化する糸の状態を適切に把握することが可能な紡績機を提供することを目的とする。
【解決手段】紡績機は、繊維束を紡績することで糸を生成し、糸を供給可能な紡績部と、繊維束をドラフトするドラフト部と、糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、糸の走行方向における紡績部と巻取部との間に設けられ、走行する糸を検出して、当該糸の各部分の状態を示す糸情報を取得する検出部と、制御部と、を備え、制御部は、所定の太さの糸である基準糸が紡績部で生成されるようにドラフト部において繊維束をドラフトさせる基準糸生成処理と、基準糸とは太さの異なる変更糸が紡績部で生成されるようにドラフト部において繊維束をドラフトさせる変更糸生成処理と、基準糸生成処理及び変更糸生成処理の少なくとも一方に関する処理情報と糸情報とに基づいて、糸の部分に対して処理情報を関連付けて記憶する記憶処理と、を実行可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束を紡績することで糸を生成し、前記糸を供給可能な紡績部と、
前記紡績部に供給する前記繊維束をドラフトするドラフト部と、
前記紡績部から供給された前記糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、
前記糸の糸走行方向における前記紡績部と前記巻取部との間に設けられ、走行する前記糸を検出して、当該糸の各部分の状態を示す糸情報を取得する検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
所定の太さの前記糸である基準糸が前記紡績部で生成されるように前記ドラフト部において前記繊維束をドラフトさせる基準糸生成処理と、
前記基準糸とは太さの異なる糸である変更糸が前記紡績部で生成されるように前記ドラフト部において前記繊維束をドラフトさせる変更糸生成処理と、
前記基準糸生成処理及び前記変更糸生成処理の少なくとも一方に関する処理情報と前記糸情報とに基づいて、前記糸の部分に対して前記処理情報を関連付けて記憶する記憶処理と、を実行可能である、紡績機。
【請求項2】
前記制御部は、
前記基準糸生成処理と前記変更糸生成処理との複数回の切り替えに関する切替情報を複数種類記憶しており、
複数種類の前記切替情報から一の切替情報を不規則に選択し、
前記基準糸生成処理及び前記変更糸生成処理を、選択した前記一の切替情報に基づいて切り替えながら実行し、
前記記憶処理において、前記一の切替情報と前記糸情報とに基づいて、前記糸の部分に対して前記処理情報を関連付けて記憶する、請求項1に記載の紡績機。
【請求項3】
前記制御部は、前記記憶処理において、前記一の切替情報における前記基準糸生成処理と前記変更糸生成処理との最初の切り替えのタイミングに更に基づいて、前記糸の部分に対して前記処理情報を関連付けて記憶する、請求項2に記載の紡績機。
【請求項4】
前記制御部は、前記基準糸生成処理及び前記変更糸生成処理の何れかを開始した時点から所定の時間後に前記検出部で検出された前記糸の部分に対して、当該開始した時点における前記処理情報を関連付けて記憶する、請求項1~3の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項5】
前記糸情報は、前記糸の太さに関する情報を含み、
前記制御部は、前記基準糸の部分の前記糸情報に基づいて、前記糸の評価用太さを取得する、請求項1~4の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項6】
前記制御部は、前記ドラフト部によるドラフトを開始してから又は前記紡績部による紡績を開始してから所定期間後における前記基準糸生成処理に対応する前記糸の部分の前記糸情報に基づいて、前記糸の評価用太さを取得する、請求項5に記載の紡績機。
【請求項7】
切断された前記糸の糸継ぎを行う糸継部と、
前記検出部と前記巻取部との間に設けられ、前記紡績部から供給された前記糸を一時的に貯留し、前記巻取部に前記糸を供給する貯留部と、
糸外し位置と待機位置との間で揺動可能であって前記貯留部における前記糸の貯留状態を切り替える糸外しレバーと、を備え、
前記糸外しレバーは、
前記糸継部による前記糸の糸継ぎ前に前記待機位置から前記糸外し位置に移動して前記貯留部における前記糸の貯留を停止させ、
前記糸継部による前記糸の糸継ぎ前、又は、前記糸の糸継ぎ後に前記糸外し位置から前記待機位置に移動して前記貯留部に前記糸を貯留させ、
前記所定期間は、前記糸外しレバーが前記糸外し位置から前記待機位置に移動するときまでに終了する、請求項6に記載の紡績機。
【請求項8】
前記糸情報は、前記糸の太さに関する情報を含み、
前記制御部は、
前記基準糸の太さに関する異常の有無を判定するための基準糸条件と、前記変更糸の太さに関する異常の有無を判定するための変更糸条件とを記憶しており、
前記糸の部分に関連付けられた前記処理情報に基づいて前記糸の部分に対応する前記基準糸条件及び前記変更糸条件の何れかを選択し、選択した前記基準糸条件及び前記変更糸条件の何れかと前記糸情報とに基づいて前記糸の部分の異常の有無を判定する、請求項1~7の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項9】
前記制御部は、前記変更糸の前記糸情報を除いた前記基準糸の前記糸情報に基づき、前記基準糸条件を規定する、請求項8に記載の紡績機。
【請求項10】
前記糸情報は、前記糸のテンションに関する情報を含み、
前記制御部は、
前記基準糸のテンションに対して異常の有無を判定するための基準テンション条件と、前記変更糸のテンションに対して異常の有無を判定するための変更テンション条件とを記憶しており、
前記糸の部分に関連付けられた前記処理情報に基づいて前記糸の部分に対応する前記基準テンション条件及び前記変更テンション条件の何れかを選択し、選択した前記基準テンション条件及び前記変更テンション条件の何れかと前記糸情報とに基づいて前記糸の部分の異常の有無を判定する、請求項1~9の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項11】
前記制御部は、前記基準糸の糸情報にのみ基づき、前記基準テンション条件を規定する、請求項10に記載の紡績機。
【請求項12】
前記基準糸のうち前記制御部により異常と判定されなかった前記糸の部分の少なくとも一部に関する基準糸正常情報と、前記変更糸のうち前記制御部により異常と判定されなかった前記糸の部分の少なくとも一部に関する第1変更糸正常情報とを、異なる態様で区別して表示する表示部をさらに備える、請求項8~11の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項13】
前記表示部は、前記基準糸のうち前記制御部により異常と判定された前記糸の部分の少なくとも一部に関する基準糸異常情報と、前記変更糸のうち前記制御部により異常と判定された前記糸の部分の少なくとも一部に関する変更糸異常情報と、前記基準糸正常情報と、前記第1変更糸正常情報とを、異なる態様で区別して表示する、請求項12に記載の紡績機。
【請求項14】
前記表示部は、前記基準糸のうち前記制御部により異常と判定された前記糸の部分についての所定長さ当たりの数と、前記変更糸のうち前記制御部により異常と判定された前記糸の部分についての所定長さ当たりの数と、を表示する、請求項12又は13に記載の紡績機。
【請求項15】
前記表示部は、前記変更糸のうち前記制御部により異常と判定されなかった前記糸の部分についての所定長さ当たりの数と、前記変更糸のうち前記制御部により異常と判定された前記糸の部分についての所定長さ当たりの数と、を表示する、請求項12~14の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項16】
前記変更糸のうち前記制御部により異常と判定されなかった前記糸の部分の少なくとも一部に関する第2変更糸正常情報を、前記糸の部分の太さ及び前記糸の部分の長さをそれぞれ座標軸にする座標系において密度表示する表示部をさらに備える、請求項8~15の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項17】
前記ドラフト部により前記繊維束をドラフトさせる処理が開始されてからの期間が所定の期間以上である場合、又は、前記制御部が判定した異常に関する回数が所定の回数以上である場合において、前記制御部は、前記処理情報と前記糸情報とに基づいて、前記基準糸生成処理及び前記変更糸生成処理の少なくとも一方における前記ドラフト部に対する制御を変更する、請求項8~16の何れか一項に記載の紡績機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外周面に凹部が形成されたローラ本体を有するドラフト装置と、ドラフト装置によりドラフトされた繊維束から糸を生成する紡績装置と 、を備える紡績機が記載されている。特許文献1に記載された紡績機では、ローラ本体においてかかる圧力が周期的に変化され、太さが周期的に変化する糸が紡績される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、太さが不規則に変化する糸(太さの変化が周期的ではない糸)が求められているが、上述した紡績機では、不規則に変化する太さに対応して糸の状態を適切に把握することができないおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、太さが不規則に変化する糸の状態を適切に把握することが可能な紡績機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る紡績機は、繊維束を紡績することで糸を生成し、糸を供給可能な紡績部と、紡績部に供給する繊維束をドラフトするドラフト部と、紡績部から供給された糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、糸の走行方向における紡績部と巻取部との間に設けられ、走行する糸を検出して、当該糸の各部分の状態を示す糸情報を取得する検出部と、制御部と、を備え、制御部は、所定の太さの糸である基準糸が紡績部で生成されるようにドラフト部において繊維束をドラフトさせる基準糸生成処理と、基準糸とは太さの異なる糸である変更糸が紡績部で生成されるようにドラフト部において繊維束をドラフトさせる変更糸生成処理と、基準糸生成処理及び変更糸生成処理の少なくとも一方に関する処理情報と糸情報とに基づいて、糸の部分に対して処理情報を関連付けて記憶する記憶処理と、を実行可能である。
【0007】
この紡績機では、制御部によって基準糸生成処理又は変更糸生成処理が実行されることでドラフト部によって繊維束がドラフトされ、紡績部に供給される。検出部において、紡績部から走行する糸の部分に対する糸情報が取得される。さらに、記憶処理において当該糸の部分に対して処理情報が関連付けられる。これにより、検出部において検出された糸の部分について、糸情報を把握するだけでなく、基準糸及び基準糸とは太さの異なる糸の何れかであることを把握することができる。したがって、太さが不規則に変化する糸の状態を適切に把握し評価することが可能となる。
【0008】
本発明に係る紡績機において、制御部は、基準糸生成処理と変更糸生成処理との複数回の切り替えに関する切替情報を複数種類記憶しており、複数種類の切替情報から一の切替情報を不規則に選択し、基準糸生成処理及び変更糸生成処理を、選択した一の切替情報に基づいて切り替えながら実行し、記憶処理において、一の切替情報と糸情報とに基づいて、糸の部分に対して処理情報を関連付けて記憶してもよい。この構成によれば、選択された一の切替情報によって、ドラフト部において実行される基準糸生成処理及び変更糸生成処理のタイミングを予め把握できる。このため、基準糸生成処理及び変更糸生成処理の何れかの処理が実行されているかを処理ごとに逐一取得することなく、検出部おいて検出された糸の部分に処理情報を関連付けて記憶することが可能となる。
【0009】
本発明に係る紡績機において、制御部は、記憶処理において、一の切替情報における基準糸生成処理と変更糸生成処理との最初の切り替えのタイミングに更に基づいて、糸の部分に対して処理情報を関連付けて記憶してもよい。この構成によれば、例えば、一の切替情報における最初の切り替えのタイミングを基準として、当該タイミング以降にドラフト部において実行される基準糸生成処理及び変更糸生成処理が実行される時間を把握できる。
【0010】
本発明に係る紡績機において、制御部は、基準糸生成処理及び変更糸生成処理の何れかを開始した時点から所定の時間後に検出部で検出された糸の部分に対して、当該開始した時点における処理情報を関連付けて記憶してもよい。ドラフト部において基準糸生成処理及び変更糸生成処理の何れかが開始された時点から、当該開始された処理によってドラフトされた繊維束を紡績して生成された糸を検出部において検出する時点まで、時間的なずれが生じる。上記の本発明に係る構成によれば、検出部により検出される糸の部分に処理情報を、当該時間的なずれを考慮して適切に関連付けることが可能となる。
【0011】
本発明に係る紡績機において、糸情報は、糸の太さに関する情報を含み、制御部は、基準糸の部分の糸情報に基づいて、糸の評価用太さを取得してもよい。この構成によれば、基準糸に対応する糸の部分に関する糸情報を抽出し、当該糸情報に基づいて糸の評価用太さを取得することが可能となる。
【0012】
本発明に係る紡績機において、制御部は、ドラフト部によるドラフトを開始してから又は紡績部による紡績を開始してから所定期間後における基準糸生成処理に対応する糸の部分の糸情報に基づいて、糸の評価用太さを取得してもよい。ドラフト部によるドラフトが開始された時点、又は紡績部により紡績が開始された時点から所定期間は、生成された糸の太さが不安定になる可能性がある。上記の本発明に係る構成によれば、糸の太さが安定する所定期間後に糸の部分の糸情報に基づいて糸の評価用太さを取得することができる。すなわち、糸の評価用太さを適切に取得することが可能となる。
【0013】
本発明に係る紡績機は、切断された糸の糸継ぎを行う糸継部と、検出部と巻取部との間に設けられ、紡績部から供給された糸を一時的に貯留し、巻取部に糸を供給する貯留部と、糸外し位置と待機位置との間で揺動可能であって貯留部における糸の貯留状態を切り替える糸外しレバーと、を備え、糸外しレバーは、糸継部による糸の糸継ぎ前に待機位置から糸外し位置に移動して貯留部における糸の貯留を停止させ、糸継部による糸の糸継ぎ前、又は、糸の糸継ぎ後に糸外し位置から待機位置に移動して貯留部に糸を貯留させ、所定期間は、糸外しレバーが糸外し位置から待機位置に移動するときまでに終了してもよい。上記の本発明に係る構成によれば、糸外しレバーの動作を考慮して所定期間を定めることができるため、制御を容易にすることが可能となる。
【0014】
本発明に係る紡績機において、糸情報は、糸の太さに関する情報を含み、制御部は、基準糸の太さに関する異常の有無を判定するための基準糸条件と、変更糸の太さに関する異常の有無を判定するための変更糸条件とを記憶しており、糸の部分に関連付けられた処理情報に基づいて糸の部分に対応する基準糸条件及び変更糸条件の何れかを選択し、選択した基準糸条件及び変更糸条件の何れかと糸情報とに基づいて糸の部分の異常の有無を判定してもよい。この構成によれば、例えば、基準糸の部分に対して基準糸条件が選択されることで、基準糸条件によって、当該糸の部分の異常の有無を判定できる。また、例えば、変更糸の部分に対して変更糸条件が選択されることで、変更糸条件によって、当該糸の部分の異常の有無を判定できる。したがって、太さが不規則に変化する糸の異常の有無を適切に把握することが可能となる。
【0015】
本発明に係る紡績機において、制御部は、基準糸の糸情報にのみ基づき、基準糸条件を規定してもよい。この構成によれば、基準糸条件を適切に規定することができる。
【0016】
本発明に係る紡績機において、糸情報は、糸のテンションに関する情報を含み、制御部は、基準糸のテンションに対して異常の有無を判定するための基準テンション条件と、変更糸のテンションに対して異常の有無を判定するための変更テンション条件とを記憶しており、糸の部分に関連付けられた処理情報に基づいて糸の部分に対応する基準テンション条件及び変更テンション条件の何れかを選択し、選択した基準テンション条件及び変更テンション条件の何れかと糸情報とに基づいて糸の部分の異常の有無を判定してもよい。この構成によれば、例えば、基準糸の部分に対して基準テンション条件が選択されることで、基準テンション条件によって、当該糸の部分の異常の有無を判定できる。また、例えば、変更糸の部分に対して変更テンション条件が選択されることで、変更テンション条件によって、当該糸の部分の異常の有無を判定できる。したがって、太さが不規則に変化する糸の異常の有無を適切に把握することが可能となる。
【0017】
本発明に係る紡績機において、制御部は、基準糸の糸情報にのみ基づき、基準テンション条件を規定してもよい。この構成によれば、基準テンション条件を適切に規定することができる。
【0018】
本発明に係る紡績機は、基準糸のうち制御部により異常と判定されなかった糸の部分の少なくとも一部に関する基準糸正常情報と、変更糸のうち制御部により異常と判定されなかった糸の部分の少なくとも一部に関する第1変更糸正常情報とを、異なる態様で区別して表示する表示部をさらに備えてもよい。この構成によれば、表示部において、基準糸の部分において異常が判定されなかった糸の部分の情報と、変更糸の部分において異常が判定されなかった糸の部分の情報とをそれぞれ適切に把握することができる。
【0019】
本発明に係る紡績機において、表示部は、基準糸のうち制御部により異常と判定された糸の部分の少なくとも一部に関する基準糸異常情報と、変更糸のうち制御部により異常と判定された糸の部分の少なくとも一部に関する変更糸異常情報と、基準糸正常情報と、第1変更糸正常情報とを、異なる態様で区別して表示してもよい。この構成によれば、表示部において、基準糸の部分における異常の有無と、変更糸の部分における異常の有無とを適切に把握することができる。つまり、糸全体の状態を適切に把握することができる。
【0020】
本発明に係る紡績機において、表示部は、基準糸のうち制御部により異常と判定された糸の部分についての所定長さ当たりの数と、変更糸のうち制御部により異常と判定された糸の部分についての所定長さ当たりの数と、を表示してもよい。この構成によれば、基準糸及び変更糸について異常と判定された糸の部分の数を適切に把握し、比較することができる。
【0021】
本発明に係る紡績機において、表示部は、変更糸のうち制御部により異常と判定されなかった糸の部分についての所定長さ当たりの数と、変更糸のうち制御部により異常と判定された糸の部分についての所定長さ当たりの数と、を表示してもよい。この構成によれば、変更糸のうち、異常と判定されなかった糸の部分の数と異常と判定された糸の部分の数とを適切に把握し、比較することができる。
【0022】
本発明に係る紡績機は、変更糸のうち制御部により異常と判定されなかった糸の部分の少なくとも一部に関する第2変更糸正常情報を、糸の部分の太さ及び糸の部分の長さをそれぞれ座標軸にする座標系において密度表示する表示部をさらに備えてもよい。この構成によれば、変更糸において、座標系により、異常と判定されなかった糸の部分の生成状況を容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、太さが不規則に変化する糸の状態を適切に把握し評価することが可能な紡績機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施形態に係る紡績機の正面図である。
【
図2】
図2は、
図1の紡績機における機台制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3(a)は、機台制御装置において選択される切替情報の一例を説明するための図である。
図3(b)は、機台制御装置において選択される切替情報の他の例を説明するための図である。
【
図4】
図4(a)は、機台制御装置において選択される切替情報の一例を説明するための図である。
図4(b)は、機台制御装置において糸の評価用太さを算出するタイミングの一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、
図1の紡績機における各構成の動作を示すタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、
図1の紡績機におけるディスプレイの画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0026】
図1に示されるように、紡績機1は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車3(糸継部)と、玉揚台車(図示省略)と、第1エンドフレーム4と、第2エンドフレーム5と、ユニットコントローラ9と、を備える。複数の紡績ユニット2は、一列に配列されている。各紡績ユニット2は、糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。糸継台車3は、例えば、複数の各紡績ユニット2に対して走行可能な糸継台車として構成されている。玉揚台車は、ある紡績ユニット2でパッケージPが満巻になった場合、パッケージPを玉揚げし、新しいボビンBを当該紡績ユニット2に供給する。
【0027】
第1エンドフレーム4には、紡績ユニット2で発生した繊維屑及び糸屑等を回収する回収装置等が収容されている。第2エンドフレーム5には、紡績機1に供給される圧縮空気の空気圧を調整して紡績機1の各部に空気を供給する空気供給部、及び紡績ユニット2の各部に動力を供給するための駆動モータ等が収容されている。第2エンドフレーム5には、機台制御装置(制御部)20と、ディスプレイ(第1表示部、第2表示部、第3表示部及び第4表示部)21と、入力キー22と、が設けられている。機台制御装置20は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。ディスプレイ21は、紡績ユニット2の設定内容及び状態の少なくとも何れかに関する情報等を表示することができる。オペレータが入力キー22を用いて適宜の操作を行うことにより、紡績ユニット2の設定作業を行うことができる。ユニットコントローラ9は、所定数の紡績ユニット2ごとに設けられており、紡績ユニット2の動作を制御する。なお、各ユニットコントローラ9は、1つの紡績ユニット2ごとに設けられていてもよい。
【0028】
各紡績ユニット2は、糸Yの走行方向において上流側から順に、ドラフト装置(ドラフト部)6と、空気紡績装置(紡績部)7と、糸監視装置(検出部)8と、糸貯留装置(貯留部)11と、ワキシング装置12と、巻取装置(巻取部)13と、を備える。各紡績ユニット2においては、ドラフト装置6及び空気紡績装置7が、糸Yを供給する給糸装置として機能する。
【0029】
ドラフト装置6は、繊維束Sをドラフトし、空気紡績装置7に供給する繊維束Fをドラフトする。空気紡績装置7は、ドラフト装置6でドラフトされた繊維束Fを紡績することで糸Yを生成し、糸Yを供給する。空気紡績装置7は、繊維束Fに旋回空気流によって撚りを与えて糸Yを生成する。糸貯留装置11は、空気紡績装置7と巻取装置13との間において、糸Yの弛みを取る。糸貯留装置11には、糸外しレバー(不図示)が設けられている。糸外しレバーは、上昇位置(糸外し位置)と下降位置(待機位置)との間で揺動可能であって糸貯留装置11における糸Yの貯留状態を切り替える。ワキシング装置12は、糸貯留装置11と巻取装置13との間において、糸Yにワックスを付与する。巻取装置13は、給糸装置として機能するドラフト装置6及び空気紡績装置7から供給された糸YをボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。
【0030】
糸継台車3は、ある紡績ユニット2において糸Yが切断されたり、何らかの理由により糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2に対して糸継動作を行う。糸継台車3は、走行路上を走行する。当該走行路は、複数の紡績ユニット2の配列方向に沿って延在している。糸継台車3は、サクションパイプ31と、糸継装置32と、サクションマウス33と、を備えている。サクションパイプ31は、回動可能に支持されており、空気紡績装置7からの糸Yを捕捉して糸継装置32に案内する。サクションマウス33は、回動可能に支持されており、巻取装置13からの糸Yを捕捉して糸継装置32に案内する。糸継装置32は、案内された糸Y同士の糸継ぎを行う。糸継装置32は、圧縮空気を用いるスプライサ、パッケージPからの糸Yを空気紡績装置7に通すピーサー、又は、糸Yを機械的に継ぐノッター等である。
【0031】
糸監視装置8は、糸Yの糸走行方向における空気紡績装置7と巻取装置13との間に設けられ、走行する糸Yを検出して、当該糸Yの各部分の状態を示す糸情報を取得する。糸監視装置8は、例えば、空気紡績装置7と糸貯留装置11との間において走行する糸Yの部分を検出する。糸監視装置8は、走行する糸Yを部分的に、かつ、走行に合わせて連続的に検出することで糸Yの全体を検出する。糸Yの糸情報は、例えば、糸Yの太さ(糸径)に関する情報、及び、糸Yのテンションに関する情報の少なくとも一方を含む。糸の太さに関する情報は、糸径又は質量(重量)を含む。
【0032】
糸監視装置8は、糸径検出装置81及びテンション検出装置82を有する。糸径検出装置81は、例えば、糸Yに光を照射して受光量の変化によって所定の長さにおける糸Yの部分の太さを検出する光学式センサ、又は電界中に糸を通過させて静電容量の変化によって所定の長さにおける糸の太さを検出する静電容量式センサ等である。糸径検出装置81は、走行する糸Yの太さを連続的に検出する。糸径検出装置81は、糸の各部分の太さを糸Yの太さに関する情報として機台制御装置20に出力する。テンション検出装置82は、例えば、所定の長さにおける糸Yの部分のテンションを検出するテンションセンサ等である。テンション検出装置82は、走行する糸Yのテンションを連続的に検出する。テンション検出装置82は、糸の各部分のテンションを糸Yのテンションに関する情報として機台制御装置20に出力する。
【0033】
機台制御装置20は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等によって構成されている。機台制御装置20は、各紡績ユニット2において生成する糸Yの太さを制御すると共に、当該糸Yにおける異常の有無を判定する。機台制御装置20は、太さが不規則に変化する糸Y(太さの変化が周期的ではない糸)を生成させる。太さが不規則に変化する糸Yは、例えば、ファンシーヤーンである。
図2に示されるように、機台制御装置20は、ドラフト処理部23と、取得部24と、関連付け部25と、判定部27と、表示制御部28と、記憶部29と、を有する。
【0034】
ドラフト処理部23は、ドラフト装置6に繊維束Fをドラフトさせる。取得部24は、糸監視装置8から出力された糸情報を取得する。関連付け部25は、糸情報と後述の処理情報とを関連付ける。算出部26は、基準糸の太さを算出する。判定部27は、糸情報に基づいて糸Yの部分の異常の有無を判定する。表示制御部28は、関連付け部25及び判定部27等によって得られた情報をディスプレイ21に表示させる。記憶部29は、ドラフト処理部23、取得部24、関連付け部25、算出部26、判定部27及び表示制御部28において用いられる情報を記憶している。記憶部29は、機台制御装置20の装置内に設けられてもよく、機台制御装置20の装置外において機台制御装置20の他の機能部と通信可能に設けられてもよい。
【0035】
次に、機台制御装置20によるドラフト装置6の制御について説明する。ドラフト処理部23は、基準糸生成処理及び変更糸生成処理の何れかの処理を実行する。基準糸生成処理では、所定の太さの糸である基準糸が空気紡績装置7で生成されるように、ドラフト装置6において繊維束Fをドラフトさせる。基準糸生成処理では、ドラフト処理部23は、ドラフト装置6に複数のローラ(不図示)を所定の回転速度で回転させ、空気紡績装置7において基準糸が生成されるように繊維束Fをドラフトさせる。
【0036】
変更糸生成処理では、基準糸とは太さの異なる糸である変更糸が空気紡績装置7で生成されるように、ドラフト装置6において繊維束Fをドラフトさせる。変更糸は、基準糸より太い糸及び基準糸より細い糸の少なくとも一方を含む。変更糸生成処理では、ドラフト処理部23は、ドラフト装置6に設けられた複数のローラ(不図示)の各ローラの回転速度の比を基準糸生成処理に対して異ならせて繊維束Fをドラフトさせ、変更糸を空気紡績装置7で生成させる。変更糸生成処理では、ドラフト装置6の複数のローラ(不図示)を上述した所定の回転速度より高速で回転させることで、空気紡績装置7において太い変更糸を生成させてもよい。また、変更糸生成処理では、ドラフト装置6の複数のローラ(不図示)を上述した所定の回転速度より低速で回転させることで、空気紡績装置7において細い変更糸を生成させてもよい。
【0037】
ドラフト処理部23は、ドラフト装置6に実行させる処理を、切替情報に基づいて切り替えながら実行する。切替情報は、基準糸生成処理と変更糸生成処理との複数回の切り替えに関する情報を含む。切替情報は、基準糸生成処理及び変更糸生成処理を開始するタイミング、及び、各処理を終了するタイミングに関する情報を含む。記憶部29は、基準糸生成処理と変更糸生成処理との複数回の切り替えに関する切替情報を複数種類記憶している。ドラフト処理部23は、複数種類の切替情報から一の切替情報を不規則に選択する。複数種類の切替情報では、切替情報ごとに、基準糸生成処理と変更糸生成処理とが切り替わるタイミング及び回数が異なる。一の切替情報を不規則に選択するとは、複数回、複数種類の切替情報から一の切替情報を選択するにあたり、一の切替情報をランダムに選択することであり、複数の切替情報を周期的に選択することを含まない。
【0038】
ドラフト処理部23は、基準糸生成処理及び変更糸生成処理を、選択した一の切替情報に基づいて切り替えながら実行する。ドラフト処理部23は、選択した一の切替情報に含まれる基準糸生成処理及び変更糸生成処理を実行するタイミング、及び、各処理を終了するタイミングに応じて、基準糸生成処理及び変更糸生成処理の何れかを実行する。ドラフト処理部23は、選択した一の切替情報に基づいて処理を開始してから、当該一の切替情報に含まれる最後の処理が終了するタイミングが経過する前に、次にドラフト処理部23が実行する一の切替情報を記憶部29に記憶された複数種類の切替情報から不規則に選択する。ドラフト処理部23は、一の切替情報に含まれる最後の処理が終了するタイミングで、新たに選択した一の切替情報に基づいて基準糸生成処理及び変更糸生成処理を実行する。ドラフト処理部23は、予め2つの切替情報を選択し、一方の切替情報に基づく処理が終了したタイミングで、他方の切替情報に基づく処理を実行してもよい。ドラフト処理部23は、上述した一方の切替情報に基づく処理が終了したタイミングで、次にドラフト処理部23が実行する一の切替情報を選択してもよい。
【0039】
図3(a)は、機台制御装置において選択される切替情報の一例を説明するための図である。
図3(b)は、機台制御装置において選択される切替情報の他の例を説明するための図である。
図3(a)及び
図3(b)に示される横軸は時間を表し、縦軸は機台制御装置のドラフト処理部23によって実行される処理のステータスを表す。
図3(a)及び
図3(b)において縦軸のステータスの「基準糸生成処理」の位置に横軸に沿って引かれている線分は、ドラフト処理部23が線分の長さが示す時間だけ基準糸生成処理を実行することを示す。
図3(a)及び
図3(b)において縦軸のステータスの「変更糸生成処理」の位置に横軸に沿って引かれている線分は、ドラフト処理部23が線分の長さが示す時間だけ変更糸生成処理を実行することを示す。
【0040】
図3(a)及び
図3(b)に示されるように、切替情報には、基準糸生成処理から変更糸生成処理に切り替わるタイミングと、変更糸生成処理から基準糸生成処理に切り替わるタイミングと、が含まれる。
図3(a)と
図3(b)とでは、基準糸生成処理と変更糸生成処理とが切り替わるタイミングと回数とがそれぞれ異なっている。切替情報内の基準糸生成処理と変更糸生成処理とが切り替わるタイミング及び回数は、
図3(a)及び
図3(b)に示される態様に限定されない。
【0041】
次に、糸Yの部分に対する処理情報の関連付けについて説明する。処理情報とは、基準糸処理及び変更糸生成処理の少なくとも一方に関する情報を含む。関連付け部25は、糸Yの部分の処理情報と糸情報とに基づいて、糸Yの部分に対して処理情報を関連付けて記憶する記憶処理を実行する。関連付け部25は、糸監視装置8によって検出された糸Yの部分の糸情報と当該糸Yの部分に関連付けられた処理情報との組み合わせを、記憶部29に記憶させる。
【0042】
関連付け部25は、一の切替情報と糸情報とに基づいて、糸Yの部分に対して処理情報を関連付ける。関連付け部25は、ドラフト処理部23において選択された一の切替情報を取得し、当該一の切替情報からドラフト処理部23において実行されている基準糸生成処理及び変更糸生成処理の情報を処理情報として取得し、糸Yの部分に当該処理情報を関連付ける。
【0043】
関連付け部25は、例えば、一の切替情報における基準糸生成処理と変更糸生成処理との最初の切り替えのタイミングに更に基づいて、糸Yの部分に対して処理情報を関連付ける。当該タイミングは、一の切替情報において基準糸生成処理から変更糸生成処理に最初に切り替わる時点、及び、変更糸生成処理から基準糸生成処理に最初に切り替わる時点に対応する。関連付け部25は、例えば、一の切替情報において当該タイミングに基づくことで、当該タイミング以降における基準糸生成処理及び変更糸生成処理の切り替え、その回数及び処理時間等を把握できる。これにより、関連付け部25は、ドラフト処理部23において実行されている処理を都度把握することなく、ドラフト処理部23において実行される処理を把握できる。その結果、関連付け部25は、一の切替情報における基準糸生成処理と変更糸生成処理との最初の切り替えのタイミング以降において、糸監視装置8において検出された糸Yの部分に処理情報の関連付けを行うことができる。
【0044】
関連付け部25は、基準糸生成処理及び変更糸生成処理の何れかが開始された時点から所定の時間後に糸監視装置8で検出された糸Yの部分に対して、当該開始した時点における処理情報を関連付ける。所定の時間とは、ドラフト処理部23において基準糸生成処理及び変更糸生成処理の何れかを開始した時点から、ドラフト装置6において繊維束Fがドラフトされ、空気紡績装置7において当該繊維束Fから糸Yが紡績されて生成され、糸監視装置8まで糸Yが走行して検出されるまでの時間である。当該所定の時間は、公知の経験則に基づいて適宜設定される。なお、当該所定の時間は、経験則に基づいて設定されなくてもよい。例えば、所定の時間は、ドラフト処理部23において基準糸生成処理と変更糸生成処理とが切り替わるタイミング、及び、当該切り替え後の処理によりドラフトされて成る糸Yが糸監視装置8において検出されたタイミングに基づいて設定されてもよい。また、例えば、当該所定の時間は、ドラフト装置6(又は空気紡績装置7)と糸監視装置8までの距離を、糸Yの走行速度で除すことで得られた値に設定されてもよい。
【0045】
関連付け部25は、糸監視装置8により検出された糸Yの部分のうち、基準糸生成処理が実行されてから所定の時間後に糸監視装置8の位置に走行してきた糸Yの部分に対して、基準糸生成処理に関する情報を処理情報として関連付ける。当該処理情報が関連付けられた糸Yを基準糸と記載する。また、関連付け部25は、糸監視装置8により検出された糸Yの部分のうち、変更糸生成処理が実行されてから所定の時間後に糸監視装置8の位置に走行してきた糸Yの部分に対して、変更糸生成処理に関する情報を処理情報として関連付ける。
【0046】
次に、糸Yの評価用太さの取得について説明する。糸Yの評価用太さとは、基準糸及び変更糸について、糸Yの太さの評価をする際に用いられる値である。算出部26は、例えば、紡績ユニット2において糸Yが切断され、糸継台車3によって糸継ぎが実行された後に都度糸Yの評価用太さを取得する。当該評価用太さが都度取得されることで、風綿によるセンサの汚れ具合、及び、センサ温度による検出精度等を加味して、糸継ぎ後の糸Yの太さの基準となる糸Yの評価用太さを更新できる。算出部26は、基準糸生成処理に対応する糸Yの部分の糸情報に基づいて、糸Yの評価用太さを取得する。基準糸生成処理に対応する糸Yの部分とは、基準糸の部分である。算出部26は、ドラフト装置6によるドラフトを開始してから又は空気紡績装置7による紡績を開始してから所定期間後における基準糸の部分の糸情報に基づいて、糸Yの評価用太さを取得する。
【0047】
算出部26は、検出期間t
1(
図4(a)参照)において検出された基準糸の部分のみの糸情報を取得する。算出部26は、基準糸の部分の合計の長さが所定の長さ以上になったとき、基準糸の部分の糸情報を取得する処理を終了する。所定の長さとは、例えば100mである。算出部26は、基準糸の部分の糸情報に基づいて、糸の太さの代表値を算出する。代表値とは、例えば、平均値である。算出部26は、当該糸の太さの代表値を、糸継ぎ後の糸Yの評価用太さとして取得する。基準糸生成処理によりドラフトされて成る100m分の糸Yの平均値が糸Yの評価用太さとして取得されることにより、糸Yの太さを評価するための基準が設定される。
【0048】
図4(a)は、機台制御装置において選択される切替情報の一例を説明するための図である。
図4(b)は、機台制御装置において糸Yの評価用太さを算出する過程の一例を説明するための図である。
図4(a)に示される横軸は時間を表し、縦軸は機台制御装置のドラフト処理部23によって実行される処理のステータスを表す。縦軸のステータスの「基準糸生成処理」の位置に横軸に沿って引かれている線分は、ドラフト処理部23が線分の長さが示す期間だけ基準糸生成処理を実行することを示す。縦軸のステータスの「変更糸生成処理」の位置に横軸に沿って引かれている線分は、ドラフト処理部23が線分の長さが示す期間だけ変更糸生成処理を実行することを示す。
図4(b)に示される横軸は時間を表し、縦軸は機台制御装置の算出部26によって基準糸の糸情報を取得しているか否かステータスを表す。縦軸のステータスの「ON」の位置に横軸に沿って引かれている線分は、算出部26が線分の長さが示す期間だけ基準糸の部分の糸情報を取得する処理を実行していることを示す。グラフにおいて縦軸のステータスの「OFF」の位置に横軸に沿って引かれている線分は、算出部26が線分の長さが示す期間だけ基準糸の部分の糸情報を取得する処理を実行していないことを示す。
【0049】
図4(a)に示されるように、ドラフト処理部23は、例えば、一の切替情報に基づいて基準糸生成処理と変更糸生成処理との何れかを実行する。ドラフト処理部23は、基準糸生成処理を所定の期間t
21,t
22,t
23,t
24,t
25,t
26実行する。関連付け部25は、当該所定の期間t
21,t
22,t
23,t
24,t
25,t
26に生成された糸Yの部分を基準糸とする。
図4(a)及び
図4(b)では、算出部26は、例えば、一の切替情報が実行される期間を検出期間t
1として、基準糸の部分のみの糸情報を取得する。ドラフト処理部23において、複数の切替情報に基づいて基準糸生成処理と変更糸生成処理との何れかが実行される場合には、算出部26は、複数の切替情報が実行される期間のうち一部を検出期間t
1としてもよい。
図4(b)に示されるように、算出部26は、検出期間t
1において糸監視装置8によって検出された糸Yの部分のうち、所定の期間t
21,t
22,t
23,t
24,t
25(以下、算出期間t
2と記載)において検出された基準糸の部分の糸情報を取得する。
図4(b)の例では、算出期間t
2に検出された基準糸の部分の合計の長さが所定の長さ以上になった場合、算出部26は、基準糸の部分の糸情報を取得する処理を終了する態様を示している。この場合、ドラフト処理部23が基準糸生成処理を当該終了時以降に期間t
26のように実行し、期間t
26において糸監視装置8により基準糸の部分の糸情報が検出されている場合であっても、算出部26は、当該基準糸生成処理によりドラフトされた繊維束Fが紡績されて生成された基準糸の糸情報を取得しなくてよい。
【0050】
次に、生成された糸Yの異常の有無の判定について説明する。判定部27は、糸Yの部分に関連付けられた処理情報に基づいて糸Yの部分に対応する基準糸条件及び変更糸条件の何れかを選択し、選択した基準糸条件及び変更糸条件の何れかと糸情報とに基づいて当該糸Yの部分の異常の有無を判定する。本実施形態における異常の有無の判定は、糸情報のうちの糸Yの太さに関する情報に基づいて行われる。記憶部29は、基準糸条件及び変更糸条件を記憶している。基準糸条件及び変更糸条件は、例えば、糸Yの生成が開始される前に予め定められている。
【0051】
基準糸条件は、ドラフト処理部23の基準糸生成処理によりドラフトされて成る糸Y(以下、基準糸と記載)の太さに対して異常の有無を判定するための条件である。基準糸とは、基準糸生成処理によりドラフトされた繊維束Fが紡績されて生成された糸Yを指す。判定部27は、例えば、既に得られている糸Yの糸情報のうち、変更糸の糸情報を除いた基準糸の糸情報に基づいて基準糸条件を規定する。判定部27は、例えば、後述の基準糸正常情報及び基準糸異常情報に基づいて、基準糸条件を規定し、基準糸条件を記憶部29に記憶させる。判定部27は、例えば、予め定められた基準糸条件を記憶部29から取得する。なお、基準糸条件は、例えば、オペレータが紡績機1の運転を開始させる前等、オペレータの操作に応じて設定されてもよい。
【0052】
例えば、基準糸条件として、第1閾値又は第1許容値の何れかが、糸Yの部分の長さごとに定められている。当該糸Yの部分の長さとは、後述する異常の有無(糸欠陥)が判定される箇所の長さである。第1閾値及び第1許容値は、例えば、糸Yの評価用太さに対する、糸監視装置8により検出された基準糸の部分の糸情報における糸Yの太さの乖離度合い(割合)に基づいて表される設定値である。
【0053】
第1閾値は、例えば、糸Yの評価用太さに対する基準糸の太さの特徴値の割合に基づいて導出される。基準糸の太さの特徴値とは、判定部27による基準糸条件の設定までの所定の期間に取得された基準糸の糸情報における太さの値である。当該特徴値とは、例えば、基準糸の部分の長さに対する基準糸の太さの分布における平均値、中央値等の統計的な値である。
【0054】
ここで、第1閾値は、第1太糸閾値及び第1細糸閾値を含む。第1太糸閾値は、糸Yの評価用太さから太い方の太さの設定値であって、基準糸の太さの特徴値に基づいて導出される。第1細糸閾値は、糸Yの評価用太さから細い方の太さの設定値であって、基準糸の太さの特徴値に基づいて導出される。このように、判定部27は、当該特徴値に基づき第1閾値を設定することができる。
【0055】
第1許容値は、ドラフトされる糸Yを生成する上で許容される第1閾値に基づいて設定される太さの割合を示す。第1許容値は、上述した特徴値に基づき判定部27により設定されてもよく、オペレータの操作により設定されてもよい。例えば、判定部27は、基準糸の部分の糸情報の個数、及び基準糸の部分の長さに対する基準糸の太さの分布の少なくとも1つと、特徴値とに基づいて、第1許容値を設定する。判定部27は、オペレータにより入力される稼働効率に対応する値を含めて第1許容値を設定してもよい。
【0056】
ここで、第1許容値は、第1太糸許容値及び第1細糸許容値を含む。第1太糸許容値は、糸Yの評価用太さから太い方の太さの設定値であって、例えば基準糸の太さの特徴値に基づいて導出される。第1太糸許容値は、第1太糸閾値とは異なる値である。第1細糸許容値は、糸Yの評価用太さから細い方の太さの設定値であって、例えば、基準糸の太さの特徴値に基づいて導出される。第1細糸許容値は、第1細糸閾値と異なる値である。このように、判定部27は、当該特徴値と、その他の情報に基づき第1許容値を設定することができる。第1許容値は、例えば、第1閾値に比べて異常ではないと判定する数値範囲が広く設定される。
【0057】
関連付け部25が糸Yの部分に基準糸生成処理を関連付けた場合、判定部27は、当該糸Yの部分の異常を判定するための判定条件として基準糸条件を選択し、選択した基準糸条件と糸情報とに基づいて糸Yの部分の異常の有無を判定する。関連付け部25が糸Yの部分に基準糸生成処理を関連付けた場合、算出部26は、糸Yの評価用太さに対する、糸監視装置8により検出された基準糸の部分の糸情報における糸Yの太さの乖離度合いである第1検出値を算出する。判定部27は、基準糸条件として第1閾値又は第1許容値の何れかを選択する。当該選択は、オペレータにより設定されてもよい。
【0058】
判定部27が基準糸条件として第1閾値を選択する場合を説明する。第1検出値を取得した糸Yの部分の長さにおいて、第1検出値が例えば第1閾値の第1太糸閾値より大きい場合、又は、第1閾値の第1細糸閾値より小さい場合、判定部27は、糸監視装置8により検出された糸Yの部分は異常(糸欠陥がある)と判定する。異常と判定した以外の第1検出値を有する糸Yの部分は正常として判定する。当該糸Yの部分の太さに関する第1検出値が基準糸の太さに関する第1太糸閾値より大きい場合とは、生成した基準糸の太さが糸Yの評価用太さから所定の太さより太くなっていることを示す。所定の太さとは、例えば、第1太糸閾値に評価用太さを掛け合わせた値である。当該糸Yの部分の太さに関する第1検出値が基準糸の太さに関する第1細糸閾値より小さい場合とは、生成した基準糸の太さが糸Yの評価用太さから所定の太さより細くなっていることを示す。所定の太さとは、例えば、第1細糸閾値に評価用太さを掛け合わせた値である。
【0059】
判定部27が基準糸条件として第1許容値を選択する場合を説明する。第1検出値を取得した糸Yの部分の長さにおいて、第1検出値が例えば第1許容値の第1太糸許容値より大きい場合、又は、第1許容値の第1細糸許容値より小さい場合、判定部27は、糸監視装置8により検出された糸Yの部分は異常(糸欠陥がある)と判定する。異常と判定した以外の第1検出値を有する糸Yの部分は正常として判定する。当該糸Yの部分の太さに関する第1検出値が基準糸の太さに関する第1太糸許容値より大きい場合とは、生成した基準糸の太さが糸Yの評価用太さから所定の太さより太くなっていることを示す。所定の太さとは、例えば、第1太糸許容値に評価用太さを掛け合わせた値である。当該糸Yの部分の太さに関する第1検出値が基準糸の太さに関する第1細糸許容値より小さい場合とは、生成した基準糸の太さが糸Yの評価用太さから所定の太さより細くなっていることを示す。所定の太さとは、例えば、第1細糸許容値に評価用太さを掛け合わせた値である。このように、基準糸条件は、基準糸である糸Yの部分の長さごとに、糸Yの評価用太さからどの程度まで太く又は細くなることが許容されるかを示す。
【0060】
変更糸条件は、ドラフト処理部23の変更糸生成処理によりドラフトされて成る糸Y(以下、変更糸と記載)の太さに対して異常の有無を判定するための条件である。変更糸とは、変更糸生成処理によりドラフトされた繊維束Fが紡績されて生成された糸Yを指す。判定部27は、例えば、既に得られている糸Yの糸情報のうち、基準糸の糸情報を除いた変更糸の糸情報に基づいて変更糸条件を規定する。判定部27は、例えば、後述の変更糸正常情報及び変更糸異常情報に基づいて、変更糸条件を規定し、変更糸条件を記憶部29に記憶させる。判定部27は、例えば、予め定められた基準糸条件を記憶部29から取得する。なお、変更糸条件は、例えば、オペレータが紡績機1の運転を開始させる前等、オペレータの操作に応じて設定されてもよい。
【0061】
変更糸条件は、変更糸の太さ及び長さについてそれぞれ許容される閾値の範囲を規定している。すなわち、変更糸生成処理で作成しようとする理想の変更糸における太さ及び長さと、検出された変更糸における太さ及び長さとの乖離度合いについて許容される閾値の範囲を規定している。例えば、理想の変更糸とは、オペレータ等が取得したい変更糸であって、当該オペレータによってドラフト処理部23に対して設定される太さ及び長さを有する糸Yである。例えば、変更糸条件として、変更糸の太さに関する第2閾値又は第2許容値と、変更糸の長さに関する第3閾値又は第3許容値とが定められている。
【0062】
第2閾値及び第2許容値は、例えば、糸Yの評価用太さに対する、変更糸生成処理において目標となる太さの割合である。第2閾値及び第2許容値は、例えば、理想の変更糸の太さに対する、既に得られている糸監視装置8により検出された変更糸の部分の糸情報における糸Yの太さの乖離度合い(割合)に基づいて表される設定値である。第2閾値は、例えば、理想の変更糸の太さに対する検出された変更糸の太さの特徴値の割合に基づいて導出される。変更糸の太さの特徴値とは、判定部27による変更糸条件の設定までの所定の期間に取得された変更糸の糸情報における太さの値である。当該特徴値とは、例えば、変更糸の部分の長さに対する変更糸の太さの分布における平均値、中央値等の統計的な値である。このように、判定部27は、当該特徴値に基づき第2閾値を設定することができる。
【0063】
ここで、第2閾値は、第2太糸閾値及び第2細糸閾値を含む。第2太糸閾値は、理想の変更糸から太い方の太さの設定値であって、変更糸の太さの特徴値に基づいて導出される。第2細糸閾値は、理想の変更糸から細い方の太さの設定値であって、変更糸の太さの特徴値に基づいて導出される。このように、判定部27は、当該特徴値に基づき第2閾値を設定することができる。
【0064】
第2許容値は、ドラフトされる糸Yを生成する上で許容される第2閾値に基づいて設定される太さの割合を示す。第2許容値は、上述した特徴値に基づき判定部27により設定されてもよく、オペレータの操作により設定されてもよい。例えば、判定部27は、変更糸の部分の糸情報の個数、及び変更糸の部分の長さに対する変更糸の太さの分布の少なくとも1つと、特徴値とに基づいて、第2許容値を設定する。判定部27は、オペレータにより入力される稼働効率に対応する値を含めて第2許容値を設定してもよい。
【0065】
ここで、第2許容値は、第2太糸許容値及び第2細糸許容値を含む。第2太糸許容値は、理想の変更糸から太い方の太さの設定値であって、変更糸の太さの特徴値に基づいて導出される。第2太糸許容値は、第2太糸閾値とは異なる値である。第2細糸許容値は、理想の変更糸から細い方の太さの設定値であって、変更糸の太さの特徴値に基づいて導出される。第2細糸許容値は、第2細糸閾値とは異なる値である。このように、判定部27は、当該特徴値と、その他の情報に基づき第2許容値を設定することができる。第2許容値は、例えば、第2閾値に比べて異常ではないと判定する数値範囲が広く設定される。
【0066】
第3閾値及び第3許容値については、第2閾値及び第2許容値と同様の処理が、変更糸の長さについて行われることにより設定される。当該設定では、上述の処理における太い及び細いという用語を、長い及び細いという用語に置き換えることで実行される。第3閾値及び第3許容値は、例えば、変更糸生成処理において目標となる糸Yの長さである。第3閾値は、第3長糸閾値及び第3短糸閾値を有する。第3許容値は、第3長糸許容値及び第3短糸許容値を有する。第2閾値は、第3閾値(特定の糸Yの長さ)に対応して定められる。第2許容値は、第3許容値(糸Yの長さ)に対応して定められる。なお、第2閾値は、第3許容値に対応して定められてもよく、第2許容値は、第3閾値に対応して定められてもよい。
【0067】
関連付け部25が糸Yの部分に変更糸生成処理を関連付けた場合、判定部27は、当該糸Yの部分の異常を判定するための判定条件として変更糸条件を選択し、選択した変更糸条件と糸情報とに基づいて糸Yの部分の異常の有無を判定する。関連付け部25が糸Yの部分に変更糸生成処理を関連付けた場合、算出部26は、糸Yの評価用太さに対する、糸監視装置8により検出された変更糸の部分の糸情報における糸Yの太さの乖離度合いである第2検出値を算出する。算出部26は、第2検出値を算出した変更糸の部分の糸Yの長さである第3検出値を取得する。判定部27は、太さに係る変更糸条件について第2閾値又は第2許容値の何れかを選択する。判定部27は、長さに係る変更糸条件について第3閾値又は第3許容値の何れかを選択する。当該選択は、オペレータにより設定されてもよい。
【0068】
判定部27が変更糸条件として第2閾値を選択する場合を説明する。第2検出値が例えば第2太糸閾値より大きい場合、又は、第2閾値の第2細糸閾値より小さい場合、判定部27は、糸監視装置8により検出された糸Yの部分は異常(糸欠陥がある)と判定する。異常と判定した以外の第2検出値を有する糸Yの部分は正常として判定する。変更糸において、第2検出値に対して第2閾値を用いて異常を判定する態様は、上述の第1検出値に対して第1閾値を用いて異常を判定する態様と同様である。「第1」及び「基準糸」を「第2」及び「変更糸」に読み替えればよい。
【0069】
判定部27が変更糸条件として第2許容値を選択する場合を説明する。第2検出値が例えば第2太糸許容値より大きい場合、又は、第2許容値の第2細糸許容値より小さい場合、判定部27は、糸監視装置8により検出された糸Yの部分は異常(糸欠陥がある)と判定する。異常と判定した以外の第2検出値を有する糸Yの部分は正常として判定する。変更糸において、第2検出値に対して第2許容値を用いて異常を判定する態様は、上述の第1検出値に対して第1許容値を用いて異常を判定する態様と同様である。「第1」及び「基準糸」を「第2」及び「変更糸」に読み替えればよい。
【0070】
判定部27が変更糸条件として第3閾値を選択する場合を説明する。第3検出値が例えば第3長糸閾値より大きい場合、又は、第3閾値の第3短糸閾値より小さい場合、判定部27は、糸監視装置8により検出された糸Yの部分は異常(糸欠陥がある)と判定する。異常と判定した以外の第3検出値を有する糸Yの部分は正常として判定する。変更糸において、第3検出値に対して第3閾値を用いて異常を判定する態様は、上述の第1検出値に対して第1閾値を用いて異常を判定する態様と同様である。「第1」、「太」、「細」及び「基準糸」を「第3」、「長」、「短」及び「変更糸」に読み替えればよい。
【0071】
判定部27が変更糸条件として第3許容値を選択する場合を説明する。第3検出値が例えば第3長糸許容値より大きい場合、又は、第3許容値の第3短糸許容値より小さい場合、判定部27は、糸監視装置8により検出された糸Yの部分は異常(糸欠陥がある)と判定する。異常と判定した以外の第3検出値を有する糸Yの部分は正常として判定する。変更糸において、第3検出値に対して第3許容値を用いて異常を判定する態様は、上述の第1検出値に対して第1許容値を用いて異常を判定する態様と同様である。「第1」、「太」、「細」及び「基準糸」を「第3」、「長」、「短」及び「変更糸」に読み替えればよい。このように、変更糸条件は、理想の変更糸からどの程度まで太さ及び長さが許容されるかを示す。なお、基準糸条件と変更糸条件との設定は、公知の技術を利用してもよい。
【0072】
判定部27は、基準糸のうち判定部27により異常と判定された糸Yの部分についての所定の長さ当たりの数を基準糸径異常数として算出する。所定の長さとは、例えば100kmである。判定部27は、基準糸のうち異常と判定されなかった糸Yの部分についての所定の長さ当たりの数を基準糸径正常数として算出する。
【0073】
判定部27は、変更糸のうち判定部27により異常と判定された糸Yの部分についての所定の長さ当たりの数を変更糸径異常数として算出する。判定部27は、変更糸のうち判定部27により異常と判定されなかった糸Yの部分についての所定の長さ当たりの数を変更糸径正常数として算出する。
【0074】
次に、糸Yの異常の有無に関する情報の表示について説明する。表示制御部28は、ディスプレイ21に基準糸正常情報と、変更糸正常情報(第1変更糸正常情報)とを、基準糸異常情報と、変更糸異常情報と、異なる態様で区別して表示する。基準糸正常情報とは、基準糸のうち判定部27により異常と判定されなかった糸Yの部分に関する情報である。変更糸正常情報とは、変更糸のうち判定部27により異常と判定されなかった糸Yの部分に関する情報である。基準異常情報は、基準糸のうち判定部27により異常と判定された糸Yの部分に関する情報である。変更糸異常情報とは、変更糸のうち判定部27により異常と判定された糸Yの部分に関する情報である。表示制御部28は、ディスプレイ21に表示させる基準糸正常情報、変更糸正常情報、基準糸異常情報及び変更糸異常情報のそれぞれの情報の全ての情報を表示してもよい。また、上述のそれぞれの情報を所定の割合だけ減縮した情報(すなわち、上述のそれぞれの情報の内の一部の情報)を表示してもよい。
【0075】
表示制御部28は、例えば、変更糸正常情報(第2変更糸正常情報)を、糸Yの部分の太さ及び糸Yの部分の長さをそれぞれ座標軸にする座標系において密度表示する。表示制御部28は、例えば、当該二次元フィールドをディスプレイ21に表示させる。当該二次元フィールドは、糸Yの部分の太さ及び糸Yの部分の長さをそれぞれ座標軸にする座標系である。表示制御部28は、基準糸正常情報及び変更糸正常情報の少なくとも1つを当該二次元フィールド上にそれぞれ区別して密度表示させてもよい。区別して密度表示させるとは、例えば、基準糸正常情報と、変更糸正常情報との表示態様において、色、形状、模様等が異なるように二次元フィールド上にプロットして、座標系の長さ及び太さに対してそれぞれ検出された糸Yの部分の数の大小を判別可能に表示させることを指す。二次元フィールド上に散布図として、基準糸正常情報と、変更糸正常情報と、基準糸異常情報と、変更糸異常情報とがプロットされる。
【0076】
表示制御部28は、変更糸の部分のうち正常と判定された変更糸正常情報の集合状態をディスプレイ21に表示させる。表示制御部28は、変更糸の部分の長さについて、検出された糸Yの部分の数に対する、正常と判定された糸Yの部分の数の確率分布を算出する。表示制御部28は、変更糸の部分の太さについて、検出された糸Yの部分の数に対する、正常と判定された糸Yの部分の数の確率分布を算出する。表示制御部28は、上述した2つの確率分布の二乗和等の特徴値を算出する。表示制御部28は、例えば、二次元フィールド上に算出した当該特徴値をグラデーション等の態様で表示させる。
【0077】
表示制御部28は、基準糸異常数と、基準糸正常数と、変更糸異常数と、変更糸正常数とをディスプレイ21に表示させる。表示制御部28は、基準糸正常情報と、変更糸正常情報と、基準糸異常情報と、変更糸異常情報とが表示される二次元フィールド内に表示されてもよく、二次元フィールド外に表示させてもよい。なお、表示制御部28は、判定部27において設定した基準糸条件及び変更糸条件の少なくとも一方を当該二次元フィールド上に表示させてもよい。
【0078】
次に、糸Yの評価用太さを取得する場合の紡績機1における各構成の動作の具体例を説明する。
図5は、実施形態に係る紡績機1における各構成の動作を示すタイミングチャートである。
図5では、切断された糸Yの糸継に関する動作のタイミングが示されている。以下の説明において、紡績機1における各構成の動作は、機台制御装置20から送信される制御信号に基づいて制御される。
【0079】
一の紡績ユニット2で糸切れが発生すると、機台制御装置20は、糸継台車3を上記一の紡績ユニット2まで移動させるための制御信号を糸継台車3に送信する。糸継台車3は、制御信号を受信すると、上述した一の紡績ユニット2まで走行し、当該一の紡績ユニット2の前で走行を停止する。
【0080】
続いて、サクションマウス33が作動する。糸継台車3は、サクションマウス33を移動させる。サクションマウス33は、所定の待機位置から巻取装置13側の糸Yの捕捉位置まで移動し、当該捕捉位置で糸Yを捕捉する。サクションマウス33は、糸継装置32に巻取装置13側の糸Yを案内すると、所定の待機位置で停止する。
【0081】
また、サクションパイプ31が作動する。糸継台車3は、例えば、サクションマウス33において糸Yが捕捉される直前、又は捕捉された後に作動し、サクションパイプ31を移動させる。サクションパイプ31は、所定の待機位置から空気紡績装置7側の糸Yの捕捉位置まで移動し、当該捕捉位置で糸Yを捕捉する。サクションパイプ31は、糸継装置32に空気紡績装置7側の糸Yを案内すると、所定の待機位置で停止する。
【0082】
また、ドラフト装置6及び空気紡績装置7が作動する。ドラフト処理部23が選択された一の切替情報に基づいて、基準糸生成処理及び変更糸生成処理の何れかを実行することで、ドラフト装置6は、繊維束Fをドラフトする。空気紡績装置7は、ドラフト装置6によりドラフトされた繊維束Fを紡績して糸Yを生成する。なお、ドラフト装置6及び空気紡績装置7は、サクションパイプ31による糸Yの捕捉開始直前に駆動してもよい。空気紡績装置7は、ドラフト装置6が駆動した直後に駆動を開始してもよい。
【0083】
続いて、サクションパイプ31が所定の待機位置に移動した後、糸外しレバーが作動する。糸外しレバーは、糸継台車3による糸Yの糸継ぎ前に上昇位置(糸外し位置)に移動して糸貯留装置11における糸Yの貯留量の増加を停止させる。糸外しレバーは、糸Yに接触して、糸貯留装置11の不図示の糸掛け部材から糸Yを外し、糸Yが糸貯留装置11に貯留されることを抑制する。すなわち、糸掛け部材に糸Yが掛けられている時間だけ糸貯留装置11における糸Yの貯留量が増加することになる。糸貯留装置11に貯留されない糸Yは、サクションパイプ31により吸引廃棄される。そして、糸外しレバーは、糸継台車3による糸Yの糸継ぎ前に下降位置(待機位置)に移動することで、糸貯留装置11は糸Yを貯留する。例えば、ドラフト装置6及び空気紡績装置7が作動してから所定期間t0後において、糸外しレバーが下降位置に移動することで、糸Yとの接触がなくなり、糸Yを糸掛け部材に対して再び掛けることにより、安定した品質の糸Yを糸貯留装置11に貯留することができる。所定期間t0は、糸外しレバーが糸外し位置から待機位置に移動するときまでに終了する。
【0084】
糸監視装置8は、例えば、ドラフト装置6及び空気紡績装置7が作動して以降、作動し続ける。糸監視装置8は、常に作動し続けていてもよい。糸監視装置8は、算出部26において新たな糸Yの評価用太さを算出するため、ドラフト装置6及び空気紡績装置7が作動してから所定期間t0後において、検出期間t1に検出された糸Yの部分の糸情報を機台制御装置20に送信する。糸監視装置8は、検出期間t1において安定した品質の糸Yを検出し、適切に糸Yの部分の糸情報を検出することができる。
【0085】
続いて、糸継装置32のスプライサ(不図示)が作動する。糸継装置32は、サクションパイプ31において空気紡績装置7側の糸Yが捕捉されたタイミングより後であって、ドラフト装置6及び空気紡績装置7が作動してから所定期間t0及び糸監視装置8における検出期間t1後に、糸継ぎを実行する。糸継装置32は、サクションマウス33によって案内された巻取装置13側の糸Yと、サクションパイプ31によって案内された空気紡績装置7側の糸Yとの糸継動作を実施する。糸継装置32が糸継ぎを行うまでの間、走行してきた糸Yはサクションパイプ31によって吸引廃棄される。
【0086】
機台制御装置20の関連付け部25は、検出期間t1の前から糸監視装置8によって検出された糸Yの部分について関連付けの処理を行う。関連付け部25は、少なくとも、検出期間t1の開始以降に検出された糸Yの部分のみに対して処理情報を関連付けて記憶してもよい。関連付け部25は、糸Yの部分に対して、基準糸生成処理と変更糸生成処理とを区別して関連付ける。算出部26は、検出期間t1に糸監視装置8により検出され、かつ、関連付け部25によって基準糸生成処理が関連付けられた糸Yの部分(基準糸の部分)の糸情報に基づいて新たな糸Yの評価用太さを取得する。なお、新たな糸Yの評価用太さが取得されるまで、上述した判定部27は、更新される前の糸Yの評価用太さを用いて異常の有無を判定する。そして、新たな糸Yの評価用太さが取得されると、判定部27は新たな糸Yの評価用太さを用いて異常の有無を判定する。すなわち異常がないと判定された基準糸の部分の糸情報に基づいて糸Yの評価用太さを更新することができる。
【0087】
次に、表示制御部28によってディスプレイ21上に表示される図の一例を説明する。
図6は、
図1の紡績機におけるディスプレイの画面の一例を示す図である。
図6に示されるように、二次元フィールド51の横軸は、糸監視装置8によって検出された糸Yの部分の長さを表し、縦軸は、糸Yの評価用太さに対する、糸監視装置8によって検出された糸Yの部分の太さ(糸Yの評価用太さに対する割合)を表す。糸Yの評価用太さは、二次元フィールド51の横軸(縦軸の0%)を規定するために用いられる。クリアリングリミット52は、二次元フィールド51において基準糸の部分が異常であるか否かを示す境界線である。すなわち、クリアリングリミット52は、基準糸条件を二次元フィールド51上に表示した例である。
【0088】
表示制御部28、関連付け部25によって関連付けられた糸Yの部分の糸情報に基づいて、二次元フィールド51における糸Yの部分に対する座標系の位置を決定し、ディスプレイ21に糸Yの部分をドットとして表示させる。
図6では、表示制御部28は、基準糸正常情報53を白抜きの丸ドットとして二次元フィールド51に表示させ、基準糸異常情報54を白抜きの四角ドットとして二次元フィールド51に表示させる。なお、基準糸正常情報53及び基準糸異常情報54を示すドットは、現在から過去の所定個数分だけディスプレイ21に表示されている。基準糸正常情報53は、クリアリングリミット52に対して横軸側の領域内に表示され、基準糸異常情報54は、クリアリングリミット52に対して横軸側とは反対側の領域内に表示される。
【0089】
図6では、表示制御部28は、変更糸正常情報55を黒塗りの丸ドットとして二次元フィールド51に表示させ、変更糸異常情報56を黒塗りの四角ドットとして二次元フィールド51に表示させる。なお、変更糸正常情報55及び変更糸異常情報56を示すドットは、現在から過去の所定個数分だけディスプレイ21に表示されている。二次元フィールド51上の基準糸正常情報53、基準糸異常情報54、変更糸正常情報55及び変更糸異常情報56は、表示の一態様であって、判定部27における判定には使用されない。
【0090】
表示制御部28は、変更糸正常情報の集合状態を二次元フィールド51上に表示させる。表示制御部28は、変更糸の部分のうち正常と判定された糸Yの部分の数が多い領域57を濃い色で表示させる。表示制御部28は、変更糸の部分のうち正常と判定された糸Yの部分の数が少ない領域58を淡い色で表示させる。表示制御部28は、領域57から領域58にかけて、異常と判定された糸Yの部分の数に応じて二次元フィールド51に色のグラデーションを変化させて表示させる。二次元フィールド51上の領域57,58は、表示の一態様であって、判定部27における判定には使用されない。
【0091】
図6では、表示制御部28は、結果欄59をディスプレイ21に表示させる。結果欄59には、基準糸異常数と、基準糸正常数と、変更糸異常数と、変更糸正常数とが、それぞれ表示される。結果欄59における基準糸正常数は、クリアリングリミット52に対して横軸側の領域内に表示される白抜きの丸ドットの数と同じであってもよく、異なっていてもよい。結果欄59における基準糸異常数は、クリアリングリミット52に対して横軸側とは反対側の領域内に表示される白抜きの四角ドットの数と同じであってもよく、異なっていてもよい。結果欄59における変更糸径正常数は、二次元フィールド51上の黒塗りの丸ドットの数と同じであってもよく、異なっていてもよい。結果欄59における変更糸径異常数は、クリアリングリミット52に対して横軸側とは反対側の領域内に表示される黒塗りの四角ドットの数と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0092】
以上説明したように、本実施形態に係る紡績機1では、機台制御装置20によって基準糸生成処理又は変更糸生成処理が実行されることでドラフト装置6によって繊維束Fがドラフトされ、空気紡績装置7に供給される。糸監視装置8において、空気紡績装置7から走行する糸Yの部分に対する糸情報が取得される。さらに、関連付け部25の関連付ける処理において、当該糸の部分に対して処理情報が関連付けられ、記憶処理において当該関連付けに関する情報が記憶部29に記憶される。これにより、糸監視装置8において検出された糸Yの部分について、糸情報を把握するだけでなく、基準糸及び変更糸の何れかであることを把握することができる。したがって、太さが不規則に変化する糸の状態を適切に把握し評価することが可能となる。
【0093】
本実施形態に係る紡績機1は、機台制御装置20は、基準糸生成処理と変更糸生成処理との複数回の切り替えに関する切替情報を複数種類記憶しており、複数種類の切替情報から一の切替情報を不規則に選択し、基準糸生成処理及び変更糸生成処理を、選択した一の切替情報に基づいて切り替えながら実行し、記憶処理において、一の切替情報と糸情報とに基づいて、糸Yの部分に対して処理情報を関連付けて記憶する。この構成によれば、選択された一の切替情報によって、ドラフト装置6において実行される基準糸生成処理及び変更糸生成処理のタイミングを予め把握できる。このため、基準糸生成処理及び変更糸生成処理の何れかの処理が実行されているかを処理ごとに逐一取得することなく、糸監視装置8おいて検出された糸Yの部分に処理情報を関連付けて記憶することが可能となる。
【0094】
本実施形態に係る紡績機1において、機台制御装置20は、記憶処理において、一の切替情報における基準糸生成処理と変更糸生成処理との最初の切り替えのタイミングに更に基づいて、糸Yの部分に対して処理情報を関連付けて記憶する。この構成によれば、例えば、一の切替情報における最初の切り替えのタイミングを基準として、当該タイミング以降にドラフト装置6において実行される基準糸生成処理及び変更糸生成処理が実行される時間を把握できる。
【0095】
本実施形態に係る紡績機1において、機台制御装置20は、基準糸生成処理及び変更糸生成処理の何れかを開始した時点から所定の時間後に糸監視装置8で検出された糸Yの部分に対して、当該開始した時点における処理情報を関連付けて記憶する。ドラフト装置6において基準糸生成処理及び変更糸生成処理の何れかが開始された時点から、当該開始された処理によってドラフトされた繊維束Fを紡績して生成された糸を糸監視装置8において検出する時点まで、時間的なずれが生じる。上記の本発明に係る構成によれば、糸監視装置8により検出される糸Yの部分に処理情報を、当該時間的なずれを考慮して適切に関連付けることが可能となる。
【0096】
本実施形態に係る紡績機1において、糸情報は、糸の太さに関する情報を含み、機台制御装置20は、基準糸の糸情報に基づいて、糸Yの評価用太さを取得する。この構成によれば、基準糸に対応する糸Yの部分に関する糸情報を抽出し、当該糸情報に基づいて糸Yの評価用太さを取得することが可能となる。
【0097】
本実施形態に係る紡績機1において、機台制御装置20は、ドラフト装置6によるドラフトを開始してから又は空気紡績装置7による紡績を開始してから所定期間後における基準糸生成処理に対応する糸Yの部分の糸情報に基づいて、糸Yの評価用太さを取得する。ドラフト装置6によるドラフトが開始された時点、又は空気紡績装置7により紡績が開始された時点から所定期間は、生成された糸の太さが不安定になる可能性がある。この構成によれば、糸の太さが安定する所定期間後に糸Yの部分の糸情報に基づいて糸Yの評価用太さを取得することができる。すなわち、糸Yの評価用太さを適切に取得することが可能となる。
【0098】
本実施形態に係る紡績機1は、切断された糸Yの糸継ぎを行う糸継台車3と、糸監視装置8と巻取装置13との間に設けられ、空気紡績装置7から供給された糸Yを一時的に貯留し、巻取装置13に糸Yを供給する糸貯留装置11と、上昇位置(糸外し位置)と下降位置(待機位置)との間で揺動可能であって糸貯留装置11における糸Yの貯留状態を切り替える糸外しレバー(不図示)と、を備え、糸外しレバーは、糸継台車3による糸Yの糸継ぎ前に下降位置から上昇位置に移動して糸貯留装置11における糸Yの貯留を停止させ、糸継台車3による糸Yの糸継ぎ前、又は、糸Yの糸継ぎ後に上昇位置から下降位置に移動して糸貯留装置11に糸Yを貯留させ、所定期間t0は、糸外しレバーが上昇位置から下降位置に移動するときまでに終了する。この構成によれば、糸外しレバーの動作を考慮して所定期間を定めることができるため、制御を容易にすることが可能となる。
【0099】
本実施形態に係る紡績機1において、糸情報は、糸の太さに関する情報を含み、機台制御装置20は、基準糸の太さに対して異常の有無を判定するための基準糸条件と、変更糸の太さに対して異常の有無を判定するための変更糸条件とを記憶しており、糸Yの部分に関連付けられた処理情報に基づいて糸Yの部分に対応する基準糸条件及び変更糸条件の何れかを選択し、選択した基準糸条件及び変更糸条件の何れかと糸情報とに基づいて糸Yの部分の異常の有無を判定する。この構成によれば、例えば、基準糸の部分に対して基準糸条件が選択されることで、基準糸条件によって、当該糸Yの部分の異常の有無を判定できる。また、例えば、変更糸の部分に対して変更糸条件が選択されることで、変更糸条件によって、当該糸Yの部分の異常の有無を判定できる。したがって、太さが不規則に変化する糸の異常の有無を適切に把握することが可能となる。
【0100】
本実施形態に係る紡績機1において、機台制御装置20は、変更糸の糸情報を除いた基準糸の糸情報に基づいて、基準糸条件を規定する。この構成によれば、基準糸条件を適切に規定することができる。従来、糸Yの部分に対して基準糸生成処理と変更糸生成処理とを区別するように処理情報を関連付けて記憶していなかった。このため、従来の紡績機では、糸監視装置8の検出結果である糸情報に基づいて基準糸条件を規定する場合、基準糸条件は、糸監視装置8において検出されたすべての糸Yに基づいて規定されていた。すなわち、基準糸条件は、基準糸の糸情報のみではなく変更糸の糸情報にも基づいて規定されていた。本来、基準糸条件は、基準糸を評価又は判定するための条件であるため、変更糸の糸情報は不要である。本実施形態に係る紡績機1においては、糸Yの部分に対して基準糸生成処理と変更糸生成処理とを区別するように処理情報を関連付けて記憶できるため、基準糸の糸情報のみに基づいて適切な基準糸条件を規定できる。
【0101】
本実施形態の機台制御装置20は、変更糸の糸情報にのみ基づき、変更糸条件を規定する。この構成によれば、変更糸条件を適切に規定することができる。従来、糸Yの部分に対して基準糸生成処理と変更糸生成処理とを区別するように処理情報を関連付けて記憶していなかった。このため、従来の紡績機では、糸監視装置8の検出結果である糸情報に基づいて変更糸条件を規定する場合、変更糸条件は、糸監視装置8において検出されたすべての糸Yに基づいて規定されていた。すなわち、変更糸条件は、変更糸の糸情報のみではなく基準糸の糸情報にも基づいて規定されていた。本来、変更糸条件は、変更糸を評価又は判定するための条件であるため、基準糸の糸情報は不要である。本実施形態に係る紡績機1においては、糸Yの部分に対して基準糸生成処理と変更糸生成処理とを区別するように処理情報を関連付けて記憶できるため、変更糸の糸情報のみに基づいて適切な変更糸条件を規定できる。
【0102】
本実施形態に係る紡績機1は、基準糸のうち機台制御装置20により異常と判定されなかった糸Yの部分の少なくとも一部に関する基準糸正常情報と、変更糸のうち機台制御装置20により異常と判定されなかった糸Yの部分の少なくとも一部に関する変更糸正常情報とを、異なる態様で区別して表示するディスプレイ21をさらに備える。この構成によれば、ディスプレイ21において、基準糸の部分において異常が判定されなかった糸Yの部分の情報と、変更糸の部分において異常が判定されなかった糸Yの部分の情報とをそれぞれ適切に把握することができる。
【0103】
本実施形態に係る紡績機1において、ディスプレイ21は、基準糸のうち機台制御装置20により異常と判定された糸Yの部分の少なくとも一部に関する基準糸異常情報と、変更糸のうち機台制御装置20により異常と判定された糸Yの部分の少なくとも一部に関する変更糸異常情報と、基準糸正常情報と、変更糸正常情報とを、異なる態様で区別して表示する。この構成によれば、ディスプレイ21において、基準糸の部分における異常の有無と、変更糸の部分における異常の有無とを適切に把握することができる。つまり、糸全体の状態を適切に把握することができる。
【0104】
本実施形態に係る紡績機1において、ディスプレイ21は、基準糸のうち機台制御装置20により異常と判定された糸Yの部分についての所定の長さ当たりの数と、変更糸のうち機台制御装置20により異常と判定された糸Yの部分についての所定の長さ当たりの数と、を表示する。この構成によれば、基準糸及び変更糸について異常と判定された糸Yの部分の数を適切に把握し、比較することができる。
【0105】
本実施形態に係る紡績機1において、ディスプレイ21は、変更糸のうち機台制御装置20により異常と判定されなかった糸Yの部分についての所定の長さ当たりの数と、変更糸のうち機台制御装置20により異常と判定された糸Yの部分についての所定の長さ当たりの数と、を表示する。この構成によれば、変更糸のうち、異常と判定されなかった糸Yの部分の数と異常と判定された糸Yの部分の数とを適切に把握し、比較することができる。
【0106】
変更糸のうち機台制御装置20により異常と判定されなかった糸Yの部分の少なくとも一部に関する変更糸正常情報を、糸Yの部分の太さ及び糸Yの部分の長さをそれぞれ座標軸にする座標系において密度表示するディスプレイ21をさらに備える。この構成によれば、変更糸において、グラフにより、異常と判定されなかった糸Yの部分の生成状況を容易に把握することができる。
【0107】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0108】
上述した実施形態において、関連付け部25は、基準糸生成処理によりドラフトされて成る糸Y(基準糸)に基準糸生成処理に関する情報を処理情報として関連付け、かつ、変更糸生成処理によりドラフトされて成る糸Y(変更糸)に変更糸生成処理に関する情報を処理情報として関連付けたが、これに限定されない。例えば、関連付け部25は、基準糸生成処理によりドラフトされて成る糸Yのみに基準糸生成処理に関する情報を処理情報として関連付けてもよい。この場合、基準糸生成処理に関する情報を処理情報として関連付けられない糸Yには、変更糸を対応付けることができる。また、例えば、関連付け部25は、変更糸生成処理によりドラフトされて成る糸Yのみに変更糸生成処理に関する情報を処理情報として関連付けてもよい。この場合、変更糸生成処理に関する情報を処理情報として関連付けられない糸Yには、基準糸を対応付けることができる。
【0109】
上述した実施形態では、ドラフト処理部23は、一の切替情報を当該切替情報が終了するタイミングで新たな一の切替情報を選択したが、これに限定されない。例えばドラフト処理部23は、選択する切替情報の順序が周期的な順序とならないように複数種類の切替情報から切替情報の順番がランダムになるように選択して連続的に並べた一覧を設定してもよい。ドラフト処理部23は、設定された一覧を繰り返して基準糸生成処理及び変更糸生成処理を実行してもよい。ドラフト処理部23は、当該一覧に従って、順に一の切替情報を選択し、最後の一の切替情報に達したら最初の一の切替情報に戻って繰り返し順に一の切替情報を選択してもよい。また、糸継装置32により糸継ぎが実行される度に最初の一の切替情報に戻ってもよい。
【0110】
上述した実施形態において、ドラフト処理部23は、複数種類の切替情報をそれぞれ第一切替情報群及び第二切替情報群の何れかに分け、第一切替情報群の中で不規則な切替情報の順序を設定し、第二切替情報群の中で不規則な切替情報の順序を設定してもよい。ドラフト処理部23は、第一切替情報群の切替情報と第二切替情報群の切替情報とが交互に実行されるように、設定した順序に応じて連続的に並べた一覧を設定してもよい。ドラフト処理部23は、設定された一覧の切替情報を繰り返して基準糸生成処理及び変更糸生成処理を実行してもよい。これにより、記憶部29に記憶されている切替情報の種類が少ない場合であっても、多くの組み合わせが可能となり、ドラフト処理部23は、基準糸生成処理と変更糸生成処理とを不規則に実行できる。
【0111】
上述した実施形態において、ドラフト処理部23は、切替情報に基づいて基準糸生成処理及び変更糸生成処理を実行しなくてもよい。ドラフト処理部23は、基準糸生成処理及び変更糸生成処理の何れかを都度不規則に選択し、実行してもよい。ドラフト処理部23は、基準糸生成処理及び変更糸生成処理の実行時間を不規則に変更して実行してもよい。関連付け部25は、ドラフト処理部23において実行される処理を都度取得して、糸Yの部分に処理情報を関連付けてもよい。
【0112】
上述した実施形態において、関連付け部25は、一の切替情報における基準糸生成処理と変更糸生成処理との最初の切り替えのタイミングに基づいて、糸Yの部分に対して処理情報を関連付けなくてもよい。関連付け部25は、当該最初の切り替えのタイミングによらずに、実行されている基準糸生成処理及び変更糸生成処理の何れかの処理中に糸Yの部分に対して処理情報を関連付けてもよい。関連付け部25は、例えば、一の切替情報に切り替わったタイミングに基づいて、糸Yの部分に対して処理情報を関連付けてもよい。
【0113】
上述した実施形態では、関連付け部25は、ドラフト処理部23で基準糸生成処理及び変更糸生成処理の何れかを開始した時点から、所定の時間後に糸監視装置8で検出された糸Yの部分に対して、当該開始した時点の処理情報を関連付けたが、これに限定されない。関連付け部25は、ドラフト処理部23において基準糸生成処理及び変更糸生成処理の何れかを開始した時点において糸監視装置8で検出された糸Yの部分に対して、当該開始した時点の処理情報を関連付けてもよい。
【0114】
上述した実施形態において、算出部26は、ドラフト装置6によるドラフトを開始してから、及び、空気紡績装置7による紡績を開始してから所定期間t0後における基準糸生成処理に対応する糸Yの部分の糸情報に基づいて、基準糸の太さを算出しなくてもよい。ドラフト装置6と空気紡績装置7とは同時に作動を開始しなくてもよい。算出部26は、ドラフト装置6によるドラフトを開始してから所定期間t0後、又は、空気紡績装置7による紡績を開始してから所定期間t0後の何れかにおいて、基準糸の太さを算出してもよい。また、算出部26は、糸貯留装置11に糸Yが貯留され始めてから所定の期間後に基準糸の太さを算出してもよい。
【0115】
糸外しレバーは、糸継台車3による糸Yの糸継ぎ前に上昇位置から下降位置に移動して糸貯留装置11に糸Yを貯留させなくてもよい。糸外しレバーは、糸継台車3による糸Yの糸継ぎ後に上昇位置から下降位置に移動して糸貯留装置11に糸Yを貯留させてもよい。所定期間t0は、糸外しレバーが上昇位置から下降位置に移動するときまでに終了しなくてもよい。所定期間t0は、糸外しレバーが上昇位置から下降位置に移動した後に終了し、検出期間t1は、糸外しレバーが上昇位置から下降位置に移動した後に開始されてもよい。
【0116】
上述した実施形態では、判定部27が、基準糸生成処理の実行時における糸Yの糸情報にのみ基づき、基準糸条件を規定する態様を例示した。しかしながら、判定部27は、オペレータが入力キー22を介して入力した情報に基づいて、基準糸条件を規定してもよい。判定部27は、基準糸生成処理の実行時における糸Yの糸情報にのみ基づき、基準糸条件を規定した後、オペレータが入力キー22を介して入力した情報に基づいて、基準糸条件を調整してもよい。
【0117】
上述した実施形態では、表示制御部28は、基準糸異常情報、変更糸異常情報、基準糸正常情報及び変更糸正常情報の少なくとも1つの情報をディスプレイ21に表示させてもよい。表示制御部28は、基準糸正常情報及び変更糸正常情報のみを異なる態様で区別してディスプレイ21に表示させてもよい。表示制御部28は、変更糸正常情報のみを、糸Yの部分の太さ及び糸Yの部分の長さをそれぞれ座標軸にする座標系において密度表示してもよい。表示制御部28は、基準糸異常情報、変更糸異常情報、基準糸正常情報、変更糸正常情報又はこれらの自由な組み合わせをそれぞれ互いに異なる専用のディスプレイ(表示部)に表示させてもよい。
【0118】
上述した実施形態では、表示制御部28は、基準糸径異常数、変更糸径異常数、基準糸径正常数及び変更糸径正常数の少なくとも1つの数をディスプレイ21に表示させてもよい。表示制御部28は、基準糸径異常数、変更糸径異常数、基準糸径正常数、変更糸径正常数又はこれらの自由な組み合わせをそれぞれ互いに異なる専用のディスプレイ(表示部)に表示させてもよい。表示制御部28は、基準糸径異常数及び変更糸径異常数のみをディスプレイ21に表示させてもよい。表示制御部28は、変更糸径正常数及び変更糸径異常数をディスプレイ21に表示させてもよい。表示制御部28は、基準糸径異常数、基準糸径正常数、変更糸径正常数及び変更糸径異常数をディスプレイ21に表示させなくてもよい。また、表示制御部28は、変更糸の部分のうち異常と判定された糸径異常情報の集合状態をディスプレイ21に表示させなくてもよい。
【0119】
上述した実施形態では、1つ又は複数の制御装置(制御部)によって太さが不規則に変化する糸Yの状態を把握し評価してもよい。さらに制御装置の設置場所もどこであってもよい。例えば、各紡績ユニット2に第1制御部が設けられ、該紡績ユニットにおける糸監視装置8に第2制御部が設けられていてもよい。第1制御部は、各紡績ユニット2において生成する糸Yの太さを制御する。すなわち、第1制御部は、各紡績ユニット2において太さが不規則に変化する糸Y(太さの変化が周期的ではない糸)を生成させる。第1制御部は、基準糸生成処理及び変更糸生成処理に関する処理情報(切替情報)を第2制御部に送信する。第2制御部は、受信した処理情報(切替情報)、及び、糸監視装置8における糸Yの部分の検出結果(糸情報)に基づいて、当該糸Yにおける異常の有無を判定する。なお、ドラフト処理部23が第2制御部に設けられており、切替情報を第2制御部から第1制御部に送信する場合、第2制御部は、送信した切替情報、及び、糸監視装置8における糸Yの部分の検出結果(糸情報)に基づいて、当該糸Yにおける異常の有無を判定する。
【0120】
上述した実施形態では、機台制御装置20のドラフト処理部23は、糸Yに対する異常の判定結果に基づいて基準糸生成処理及び変更糸生成処理の少なくとも一方におけるドラフト装置6に対する制御を変更してもよい。例えば、判定部27は、ドラフト装置6により繊維束をドラフトさせる処理が開始されてからの期間が所定の期間以上であるか否かを判定する。判定部27がドラフト装置6により繊維束をドラフトさせる処理が開始されてからの期間が所定の期間以上であると判定する場合において、機台制御装置20のドラフト処理部23は、処理情報と糸情報とに基づいて、基準糸生成処理及び変更糸生成処理の少なくとも一方におけるドラフト装置6に対する制御を変更する。
【0121】
また、所定の期間の経過前であってもドラフト装置6に対する制御は行われてもよい。例えば、判定部27が判定した異常に関する回数が所定の回数以上である場合において、機台制御装置20のドラフト処理部23は、処理情報と糸情報とに基づいて、基準糸生成処理及び変更糸生成処理の少なくとも一方におけるドラフト装置6に対する制御を変更する。異常に関する回数とは、例えば、基準糸及び変更糸の少なくとも一方の太さ及び長さに関する異常が判定された回数について設定される値である。異常に関する回数とは、例えば、異常の有無を判定する回数が10回に達するまでに異常と判定された回数である。所定の回数は、例えば、3回である。異常と判定された回数は、異常の有無を判定する回数が10回に達するとリセットされる。なお、異常と判定された回数はリセットされなくてもよい。この場合、異常に関する回数とは、例えば、異常の有無を判定した直近の10回において、異常と判定された回数である。
【0122】
また、異常に関する回数は、例えば、基準糸において、第1検出値が第1閾値又は第1許容値を基に定められる所定の範囲内と判定された回数について設定される値であってもよい。所定の範囲内とは、予めオペレータにより設定される範囲である。好ましくは、例えば、第1閾値又は第1許容値から第1閾値又は第1許容値の95%までの範囲である。このため、正常として判定された糸Yの部分の内、第1閾値又は第1許容値の近傍と判定された糸Yの部分が、当該所定の範囲内に該当する。つまり、所定の範囲内とは、例えば、検出された糸Y自体は異常ではないが、当該糸Yが仮に少し太くなると異常と判定される糸Yの部分である。異常に関する回数とは、例えば、異常の有無を判定する回数が10回に達するまでに当該所定の範囲内と判定される回数である。所定の回数は、例えば、3回である。当該所定の範囲内と判定される回数は、異常の有無を判定する回数が10回に達するとリセットされる。なお、異常と判定された回数はリセットされなくてもよい。この場合、異常に関する回数とは、例えば、異常の有無を判定した直近の10回において、異常と判定された回数である。さらに、異常に関する回数とは、例えば、基準糸準糸及び変更糸の少なくとも一方の太さ及び長さに関する異常が判定された回数について設定される値であってもよい。異常に関する回数とは、異常と連続で判定される回数である。当該所定の回数は、例えば、3回である。
【0123】
判定部27が基準糸についての異常に関する回数が所定の回数以上である場合において、ドラフト処理部23は、処理情報と糸情報とに基づいて、基準糸生成処理におけるドラフト装置6に対する制御を変更してもよい。判定部27が変更糸についての異常に関する回数が所定の回数以上である場合において、ドラフト処理部23は、処理情報と糸情報とに基づいて、変更糸生成処理におけるドラフト装置6に対する制御を変更してもよい。
【0124】
このように、一定時間ごと、又は、所定の異常の発生回数ごとに、判定部27における異常の判定結果がドラフト処理部23にフィードバックされることで、ドラフト処理部23は、ドラフト装置6に対する制御を適切なタイミングで変更できる。これにより、例えば、異常な部分を含む糸が継続して生成されることが抑制される。
【0125】
上述した実施形態では、糸情報のうちの糸のテンションに関する情報に基づいて糸Yの異常の有無を判定してもよい。このように糸のテンションに関する情報に基づいて糸Yの異常の有無を判定する変形例について、以下に具体的に説明する。
【0126】
判定部27は、糸Yの部分に関連付けられた処理情報に基づいて糸Yの部分に対応する基準テンション条件及び変更テンション条件の何れかを選択し、選択した基準テンション条件及び変更テンション条件の何れかと糸情報とに基づいて糸の部分の異常の有無を判定する。
【0127】
基準テンション条件は、基準糸のテンションに対して異常の有無を判定するための条件である。基準テンション条件は、例えば、オペレータが紡績機1の運転を開始させる前等、オペレータの操作に応じて設定される。判定部27は、例えば、既に得られている糸Yの糸情報のうち、変更糸の糸情報を除いた基準糸の糸情報にのみ基づいて基準テンション条件を規定し、基準テンション条件を記憶部29に記憶させる。判定部27は、例えば、予め定められた基準テンション条件を記憶部29から取得する。
【0128】
基準テンション条件は、糸監視装置8により検出された基準糸の部分の糸情報における糸Yのテンションと糸Yの評価用テンションとの乖離割合が、所定のテンションとなっている糸Yの部分の長さごとに定められた条件である。糸Yの評価用テンションとは、基準糸及び変更糸について、糸Yのテンションの評価をする際に用いられる値である。算出部26は、例えば、上述の評価用太さの取得方法と同様の方法で糸Yの評価用テンションを取得する。また、算出部26は、例えば、オペレータが紡績機1の運転を開始させる前等、オペレータの操作に応じて評価用テンションを設定してもよい。基準テンション条件は、例えば、既に得られている基準糸の糸情報における基準糸のテンションの代表値が、所定の太さとなっている糸Yの部分の長さごとに設定されている条件である。当該代表値とは、基準糸の部分の長さに対する基準糸のテンションの分布における平均値、又は中央値、編差などに関する値である。オペレータは、代表値に基づき基準テンション条件を設定することができる。例えば、代表値からの基準糸の部分の糸情報の個数や所定の割合の位置に基準テンション条件を設定することができる。異常の判定の仕方については、基準糸条件と同様の考え方であるため省略する。なお、基準テンション条件は、糸Yの部分の長さごとに定められた条件ではなく、糸Yの部分の長さによらない基準糸のテンションと糸Yの評価用テンションとの乖離割合であってもよい。
【0129】
変更テンション条件は、変更糸のテンションに対して異常の有無を判定するための条件である。変更テンション条件は、例えば、オペレータが紡績機1の運転を開始させる前等、オペレータの操作に応じて設定される。判定部27は、例えば、既に得られている糸Yの糸情報のうち、基準糸の糸情報を除いた変更糸の糸情報に基づいて変更テンション条件を規定し、変更テンション条件を記憶部29に記憶させる。判定部27は、例えば、予め定められた変更テンション条件を記憶部29から取得する。
【0130】
変更テンション条件は、糸監視装置8により検出された変更糸の部分の糸情報における変更糸のテンションと糸Yの評価用テンションとの乖離割合が、所定の太さとなっている糸Yの部分の長さごとに定められた条件である。変更テンション条件は、変更糸のテンション及び長さについてそれぞれ許容される閾値の範囲を規定している。つまり、変更糸生成処理で作成しようとする理想の変更糸と、検出された変更糸におけるテンション及び長さの乖離度について許容される閾値の範囲を規定している。閾値の範囲とは、例えば、既に得られている変更糸の糸情報における上述の乖離度の代表値から求められる。当該代表値とは、変更糸の乖離度の分布における平均値、又は中央値、編差などに関する値である。なお閾値の範囲は、変更糸の部分のテンション、及び長さについてそれぞれ独立して求めてもよく、また2つの乖離度を併せて求めてもよい。オペレータは、代表値に基づき変更糸条件を設定することができる。例えば、代表値からの所定の割合の位置に変更糸条件を設定することができる。異常の判定の仕方については、変更糸条件と同様の考え方であるため省略する。なお、変更テンション条件は、糸Yの部分の長さごとに定められた条件ではなく、糸Yの部分の長さによらない変更糸のテンションと糸Yの評価用テンションとの乖離割合であってもよい。
【0131】
上述した変形例において、糸情報は、糸のテンションに関する情報を含み、機台制御装置20は、基準糸生成処理の実行時における糸Yのテンションに対して異常の有無を判定するための基準テンション条件と、変更糸生成処理の実行時における糸Yのテンションに対して異常の有無を判定するための変更テンション条件とを記憶しており、糸Yの部分に関連付けられた処理情報に基づいて糸Yの部分に対応する基準テンション条件及び変更テンション条件の何れかを選択し、選択した基準テンション条件及び変更テンション条件の何れかと糸情報とに基づいて糸Yの部分の異常の有無を判定する。この構成によれば、例えば、基準糸生成処理が実行された糸Yの部分に対して基準テンション条件が選択されることで、基準テンション条件によって、当該糸Yの部分の異常の有無を判定できる。また、例えば、変更糸生成処理が実行された糸Yの部分に対して変更テンション条件が選択されることで、変更テンション条件によって、当該糸Yの部分の異常の有無を判定できる。したがって、太さが不規則に変化する糸Yの異常の有無を適切に把握することが可能となる。
【0132】
上述した変形例において、機台制御装置20は、基準糸生成処理の実行時における糸Yの糸情報にのみ基づき、基準テンション条件を規定する。この構成によれば、基準テンション条件を適切に規定することができる。従来、糸Yの部分に対して基準糸生成処理と変更糸生成処理とを区別するように処理情報を関連付けて記憶していなかった。このため、従来の紡績機では、糸監視装置8の検出結果である糸情報に基づいて基準テンション条件を規定する場合、基準テンション条件は、変更糸の糸情報にも基づいて規定されていた。本来、基準テンション条件は、基準糸を評価又は判定するための条件であるため、変更糸の糸情報は不要である。本実施形態に係る紡績機1においては、糸Yの部分に対して基準糸生成処理と変更糸生成処理とを区別するように処理情報を関連付けて記憶できるため、適切な基準テンション条件を規定できる。
【0133】
上述した変形例において、機台制御装置20は、変更糸生成処理の実行時における糸Yの糸情報にのみ基づき、変更テンション条件を規定する。この構成によれば、変更テンション条件を適切に規定することができる。従来、糸Yの部分に対して基準糸生成処理と変更糸生成処理とを区別するように処理情報を関連付けて記憶していなかった。このため、従来の紡績機では、糸監視装置8の検出結果である糸情報に基づいて変更テンション条件を規定する場合、変更テンション条件は、基準糸の糸情報にも基づいて規定されていた。本来、変更テンション条件は、変更糸を評価又は判定するための条件であるため、基準糸の糸情報は不要である。本実施形態に係る紡績機1においては、糸Yの部分に対して基準糸生成処理と変更糸生成処理とを区別するように処理情報を関連付けて記憶できるため、適切な変更テンション条件を規定できる。
【0134】
上述した変形例では、判定部27は、オペレータが入力キー22を介して入力した情報に基づいて、基準テンション条件を規定してもよい。判定部27は、基準糸生成処理の実行時における糸Yの糸情報にのみ基づき、基準テンション条件を規定した後、オペレータが入力キー22を介して入力した情報に基づいて、基準テンション条件を調整してもよい。
【符号の説明】
【0135】
1…紡績機、2…紡績ユニット、3…糸継台車(糸継部)、4…第1エンドフレーム、5…第2エンドフレーム、6…ドラフト装置(ドラフト部)、7…空気紡績装置(紡績部)、8…糸監視装置(検出部)、9…ユニットコントローラ、11…糸貯留装置(貯留部)、12…ワキシング装置、13…巻取装置(巻取部)、20…機台制御装置(制御部)、21…ディスプレイ(第1表示部、第2表示部、第3表示部及び第4表示部)、22…入力キー、23…ドラフト処理部、24…取得部、25…関連付け部、26…算出部、27…判定部、28…表示制御部、29…記憶部、53…基準糸正常情報、54…基準糸異常情報、55…変更糸正常情報、56…変更糸異常情報、81…糸径検出装置、82…テンション検出装置、F,S…繊維束、t0…所定期間、Y…糸。