(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131088
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/147 20180101AFI20240920BHJP
F21S 41/64 20180101ALI20240920BHJP
F21S 41/675 20180101ALI20240920BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20240920BHJP
F21W 102/14 20180101ALN20240920BHJP
F21W 102/16 20180101ALN20240920BHJP
【FI】
F21S41/147
F21S41/64
F21S41/675
F21W102:155
F21W102:14
F21W102:16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041135
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小川 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】小川 文雄
(72)【発明者】
【氏名】川上 康之
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 直史
(57)【要約】
【課題】ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンに加え、それら以外の配光パターンを形成することができ、かつ、夜間路面が水で覆われている場合に各配光パターンを形成する際、路面で反射されるグレア光を抑制することができる車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両に搭載される車両用灯具であって、投影レンズ20と、ロービーム用配光パターンに対応する第1光度分布又はハイビーム用配光パターンに対応する第2光度分布を前記投影レンズの後方焦点面近傍に形成する第1光度分布形成手段30と、前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンに対応する第3光度分布を前記投影レンズの後方焦点面近傍に形成する第2光度分布形成手段40と、を備え、前記路面に入射する前記光が、その電界の振動方向が入射面に対して平行なp波となるように、前記光源は配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両用灯具であって、
投影レンズと、
ロービーム用配光パターンに対応する第1光度分布又はハイビーム用配光パターンに対応する第2光度分布を前記投影レンズの後方焦点面近傍に形成する第1光度分布形成手段と、
前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンに対応する第3光度分布を前記投影レンズの後方焦点面近傍に形成する第2光度分布形成手段と、を備え、
前記第1光度分布形成手段は、特定の状態に偏光された光を発光する光源と、前記光源が発光した光を前記投影レンズの焦点近傍に集光させる光学素子と、可動ミラーと、前記可動ミラーを、前記光学素子が集光した光の光路上の第1光入射位置又は前記光学素子が集光した光の光路外の第1退避位置に配置する可動ミラー駆動機構と、を備え、
前記第1光度分布は、前記光学素子が集光し前記第1光入射位置に配置された前記可動ミラーで反射された後、前記投影レンズの後方焦点面に到達する反射光、及び前記光学素子が集光し前記第1光入射位置に配置された前記可動ミラーで反射されることなく前記投影レンズの後方焦点面に直接到達する直接光により形成され、
前記第2光度分布は、前記光学素子が集光し前記第1退避位置に配置された前記可動ミラーで反射されることなく前記投影レンズの後方焦点面に直接到達する直接光により形成され、
前記第2光度分布形成手段は、前記光学素子が集光した光の透過不透過を制御可能な複数領域を含むLCDと、前記LCDを、前記光学素子が集光した光の光路中の第2光入射位置又は前記光学素子が集光した光の光路外の第2退避位置に配置するLCD駆動機構と、を備え、
前記LCDは、その発光面が前記投影レンズの後方焦点面に沿った状態で前記第2光入射位置に配置され、
前記第3光度分布は、前記光学素子が集光し前記第2光入射位置に配置された前記LCDを透過する光により形成され、
前記車両の前方の路面に垂直な法線及び前記投影レンズから照射され前記路面に入射する光を含む面を入射面とした場合、前記路面に入射する前記光が、その電界の振動方向が前記入射面に対して平行なp波となるように、前記光源は配置されている車両用灯具。
【請求項2】
前記第1光度分布を形成する場合、
前記可動ミラーは、前記第1光入射位置に配置され、
前記LCDは、前記第2退避位置に配置され、
前記第2光度分布を形成する場合、
前記可動ミラーは、前記第1退避位置に配置され、
前記LCDは、前記第2退避位置に配置され、
前記第3光度分布を形成する場合、
前記可動ミラーは、前記第1退避位置に配置され、
前記LCDは、前記第2光入射位置に配置される請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記LCDは、LCD素子と、前記LCD素子に対して前記投影レンズ側に配置された偏光板と、を含み、前記LCD素子に対して前記光源側に偏光板は配置されていない請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記LCDは、LCD素子と、前記LCD素子に対して前記投影レンズ側に配置された第1偏光板と、前記LCD素子に対して前記光源側に配置された第2偏光板と、を含み、
前記第1偏光板及び前記第2偏光板それぞれの偏光層の吸収軸は互いにパラレルニコル配置の関係にある請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記LCD素子の液晶分子は、TN液晶、VA液晶、又はIPS液晶である請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンは、マスク対象物を照射しない非照射領域及びマスク対象物以外を照射する照射領域を含むADB用配光パターンである請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンは、路面描画用配光パターンである請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンを切換可能な車両用灯具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンに加え、さらに、それら以外の配光パターンを一つの車両用灯具で形成することを検討した。さらに、夜間路面が水で覆われている場合(例えば、夜間雨天の場合)に各配光パターンを形成する際、路面で反射され対向車等に向かう光(グレア光)を抑制することを検討した。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1においては、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンに加え、さらに、それら以外の配光パターンを一つの車両用灯具で形成すること、及び夜間路面が水で覆われている場合(例えば、夜間雨天の場合)に各配光パターンを形成する際、路面で反射され対向車等に向かう光(グレア光)を抑制することについての記載や示唆は一切存在せず、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンに加え、さらに、それら以外の配光パターンを形成することができ、かつ、夜間路面が水で覆われている場合(例えば、夜間雨天の場合)に各配光パターンを形成する際、路面で反射され対向車等に向かう光(グレア光)を抑制することができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる車両用灯具は、車両に搭載される車両用灯具であって、投影レンズと、ロービーム用配光パターンに対応する第1光度分布又はハイビーム用配光パターンに対応する第2光度分布を前記投影レンズの後方焦点面近傍に形成する第1光度分布形成手段と、前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンに対応する第3光度分布を前記投影レンズの後方焦点面近傍に形成する第2光度分布形成手段と、を備え、前記第1光度分布形成手段は、特定の状態に偏光された光を発光する光源と、前記光源が発光した光を前記投影レンズの焦点近傍に集光させる光学素子と、可動ミラーと、前記可動ミラーを、前記光学素子が集光した光の光路上の第1光入射位置又は前記光学素子が集光した光の光路外の第1退避位置に配置する可動ミラー駆動機構と、を備え、前記第1光度分布は、前記光学素子が集光し前記第1光入射位置に配置された前記可動ミラーで反射された後、前記投影レンズの後方焦点面に到達する反射光、及び前記光学素子が集光し前記第1光入射位置に配置された前記可動ミラーで反射されることなく前記投影レンズの後方焦点面に直接到達する直接光により形成され、前記第2光度分布は、前記光学素子が集光し前記第1退避位置に配置された前記可動ミラーで反射されることなく前記投影レンズの後方焦点面に直接到達する直接光により形成され、前記第2光度分布形成手段は、前記光学素子が集光した光の透過不透過を制御可能な複数領域を含むLCDと、前記LCDを、前記光学素子が集光した光の光路中の第2光入射位置又は前記光学素子が集光した光の光路外の第2退避位置に配置するLCD駆動機構と、を備え、前記LCDは、その発光面が前記投影レンズの後方焦点面に沿った状態で前記第2光入射位置に配置され、前記第3光度分布は、前記光学素子が集光し前記第2光入射位置に配置された前記LCDを透過する光により形成され、前記車両の前方の路面に垂直な法線及び前記投影レンズから照射され前記路面に入射する光を含む面を入射面とした場合、前記路面に入射する前記光が、その電界の振動方向が前記入射面に対して平行なp波となるように、前記光源は配置されている。
【0008】
このような構成により、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンに加え、さらに、それら以外の配光パターンを形成することができ、かつ、夜間路面が水で覆われている場合(例えば、夜間雨天の場合)に各配光パターンを形成する際、路面で反射され対向車等に向かう光(グレア光)を抑制することができる。
【0009】
ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンに加え、さらに、それら以外の配光パターンを形成することができるのは、第2光度分布形成手段、すなわち、個別に点消灯制御可能な複数領域を含む発光装置と、この発光装置を、光学素子が集光した光の光路中の第2光入射位置又は光学素子が集光した光の光路外の第2退避位置に配置する発光装置駆動機構と、を備えていることによるものである。
【0010】
夜間路面が水で覆われている場合(例えば、夜間雨天の場合)に各配光パターンを形成する際、路面で反射され対向車等に向かう光(グレア光)を抑制することができるのは、路面に入射する光(車両用灯具から照射された光)が、その電界の振動方向が入射面に対して平行なp波となるように、光源が配置されていることによるものである。
【0011】
上記車両用灯具において、前記第1光度分布を形成する場合、前記可動ミラーは、前記第1光入射位置に配置され、前記LCDは、前記第2退避位置に配置され、前記第2光度分布を形成する場合、前記可動ミラーは、前記第1退避位置に配置され、前記LCDは、前記第2退避位置に配置され、前記第3光度分布を形成する場合、前記可動ミラーは、前記第1退避位置に配置され、前記LCDは、前記第2光入射位置に配置されていてもよい。
【0012】
また、上記車両用灯具において、前記LCDは、LCD素子と、前記LCD素子に対して前記投影レンズ側に配置された偏光板と、を含み、前記LCD素子に対して前記光源側に偏光板は配置されていなくてもよい。
【0013】
また、上記車両用灯具において、前記LCDは、LCD素子と、前記LCD素子に対して前記投影レンズ側に配置された第1偏光板と、前記LCD素子に対して前記光源側に配置された第2偏光板と、を含み、前記第1偏光板及び前記第2偏光板それぞれの偏光層の吸収軸は互いにパラレルニコル配置の関係にあってもよい。
【0014】
また、上記車両用灯具において、前記LCD素子の液晶分子は、TN液晶、VA液晶、又はIPS液晶であってもよい。
【0015】
また、上記車両用灯具において、前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンは、マスク対象物を照射しない非照射領域及びマスク対象物以外を照射する照射領域を含むADB用配光パターンであってもよい。
【0016】
また、上記車両用灯具において、前記ロービーム用配光パターン及び前記ハイビーム用配光パターン以外の配光パターンは、路面描画用配光パターンであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンに加え、さらに、それら以外の配光パターンを形成することができ、かつ、夜間路面が水で覆われている場合(例えば、夜間雨天の場合)に各配光パターンを形成する際、路面で反射され対向車等に向かう光(グレア光)を抑制することができる車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図1から投影レンズ20、光源31、光学素子32(集光レンズ)、可動ミラー33、LCD41等を抜き出した概略図である。
【
図3】
図1中矢印Ar1方向から見たLCD41の矢視図である。
【
図4】車両用灯具システム100の概略構成図である。
【
図5】(a)ロービーム用配光パターンP
Loの一例、(b)ハイビーム用配光パターンP
Hiの一例、(c)ADB用配光パターンP
ADBの一例である。
【
図6】ロービーム用配光パターンP
Loを形成するロービーム用配光パターン形成処理のフローチャート例である。
【
図7】ハイビーム用配光パターンP
Hiを形成するハイビーム用配光パターン形成処理のフローチャート例である。
【
図8】ADB用配光パターンP
ADBを形成するADB用配光パターン形成処理のフローチャート例である。
【
図9】ADB用配光パターンP
ADBを形成している様子を表す車両用灯具10の概略斜視図である。
【
図10】変形例1の車両用灯具10Aの概略構成図である。
【
図11】変形例1の車両用灯具10Aの概略構成図である。
【
図14】(a)~(d)光源31の第1変形例である。
【
図15】(a)~(d)光源31の第2変形例である。
【
図16】光源において発生する白色光が光偏光層(ワイヤーグリッド)により特定の状態に偏光された光として取り出される様子を表す図である。
【
図17】車両用灯具10から出光した光Ray1(特定の状態に偏光された光)が路面Rを照射している様子を表す図である。
【
図18】空気と水との界面におけるs波及びp波それぞれの反射率と入射率との関係を表すグラフである。
【
図19】(a)LCD41の断面図(模式図)、(b)LCD41(変形例)の断面図(模式図)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態である車両用灯具10について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0020】
【0021】
図1に示すように、車両用灯具10は、投影レンズ20、ロービーム用配光パターンに対応する第1光度分布又はハイビーム用配光パターンに対応する第2光度分布を投影レンズ20の後方焦点面FP
20近傍に形成する第1光度分布形成手段30、ロービーム用配光パターン及びハイビーム用配光パターン以外の配光パターン(例えば、ADB用配光パターン)に対応する第3光度分布を投影レンズ20の後方焦点面FP
20近傍に形成する第2光度分布形成手段40を備えている。
【0022】
投影レンズ20は、例えば、後方焦点面FP20(像面)が平面形状の投影レンズである。この後方焦点面FP20(像面)が平面形状の投影レンズは、例えば、複数枚のレンズにより実現することができる。なお、投影レンズ20は、例えば、後方焦点面FP20が二次元又は三次元に湾曲した湾曲形状の投影レンズであってもよい。
【0023】
第1光度分布形成手段30は、光源31、光源31が発光した光を投影レンズ20の焦点F
20近傍に集光させる光学素子32、可動ミラー33(シェード兼ミラー)、可動ミラー33を、光学素子32が集光した光の光路上の第1光入射位置p1(
図2参照)又は光学素子32が集光した光の光路外の第1退避位置p2(
図2参照)に配置する可動ミラー駆動機構34を備えている。なお、
図1中符号50は光源31が実装された基板を表し、符号60は基板50が取り付けられたヒートシンクを表し、符号70は筐体を表し、符号80はブラケット取付部を表す。
【0024】
光源31は、LED等の半導体発光素子である。光源31は、発光面を備えている。発光面は、例えば、1mm角の矩形の発光面である。光源31の光軸AX31は、発光面の中央をとおりかつ発光面に直交する方向に延びている。光源31は、投影レンズ20の光軸AX20の上方かつ投影レンズ20の後方に配置されている。その際、光源31の光軸AX31は、光源31(発光面の中央)と投影レンズ20の焦点F20近傍とを通過し、投影レンズ20の光軸AX20に対して前方斜め下方に向かって角度θ傾斜している。
【0025】
光源31についてさらに詳細に説明する。
【0026】
光源31は、一般的な偏光等方性の光源ではなく、偏光異方性の光源、すなわち、特定の状態に変更された光を発光する光源である。光源31としては、例えば、特表2011-501460に記載の光源を用いてよい。図示しないが、特表2011-501460に記載の光源は、LED素子、蛍光体層及び光偏光層を備えている。LED素子は例えば青色域の波長の光を発光する。蛍光体層はLED素子が発光する光のうち一部の光(青色域の波長)を黄色域の波長に波長変換し、他の一部の光を透過する。光偏光層は互いに並列に配置された複数のワイヤーグリッドを含む。この構成の光源においては、蛍光体層を透過する青色域の波長の光及び蛍光体層で波長変換された黄色域の波長の光の混色による白色光(疑似白色光)が発生する。この白色光は光偏光層により特定の状態に偏光された光として光源から取り出される。この点について
図16を参照しながら説明する。
【0027】
図16は、光源において発生する白色光が光偏光層(ワイヤーグリッド)により特定の状態に偏光された光として取り出される様子を表す図である。
【0028】
図16中、符号Ray1は白色光(蛍光体層を透過する青色域の波長の光及び蛍光体層で波長変換された黄色域の波長の光の混色による疑似白色光)のうち、振動方向がワイヤーグリッドGrに対して垂直な光を表す。符号Ray2は振動方向がワイヤーグリッドGrに対して平行な光を表す。符号HはRay1の磁界を表し、符号EはRay1の電界を表す。他方、Ray2の磁界Hと電界Eは、Ray1の磁界Hと電界Eに対して90°回転した方向になる。
【0029】
図16に示すように、振動方向がワイヤーグリッドGrに対して垂直な光Ray1は光偏光層(ワイヤーグリッドGr)を透過し、一方、振動方向がワイヤーグリッドGrに対して平行な光Ray2は光偏光層(ワイヤーグリッドGr)で反射又は光偏光層(ワイヤーグリッドGr)で吸収される。その結果、光源31は、特定の状態に偏光された白色光(疑似白色光)を発光する光源として機能する。
【0030】
図17は、車両用灯具10から出光した光Ray1(特定の状態に偏光された光)が路面Rを照射している様子を表す図である。
【0031】
図17中、符号Rは車両用灯具10が搭載された車両の前方の路面を表し、符号Nは路面Rに垂直な法線を表し、符号Iは法線N及び路面Rに入射角αで入射する光Ray1(光線)を含む面(入射面)を表す。
【0032】
光源31は、
図17に示すように、路面Rに入射する光Ray1が、その電界の振動方向が入射面Iに対して平行な光(p波)となるように、配置されている。具体的には、光源31は、ワイヤーグリッドGrが水平方向に延びる姿勢で配置されている。
【0033】
このように、光源31を配置することにより、すなわち、路面Rに入射する光Ray1がp波となるように光源31を配置することにより、主に、夜間路面が水で覆われている場合(例えば、夜間雨天の場合)、路面で反射され対向車等に向かう光(グレア光)を抑制することが可能となる。これは、
図18に示すように、s波と比べ、p波の方が、空気と水との界面における反射率が低いためである(特に、入射角が70~75°以下の場合)。
図18は、空気と水との界面におけるs波及びp波それぞれの反射率と入射率との関係を表すグラフである。
図18中、実線がs波を表し、点線がp波を表す。
図18を参照すると、s波と比べ、p波の方が、空気と水との界面における反射率が低いことが分かる(特に、入射角が70~75°以下の場合)。例えば、路面Rの水膜表面は路面Rの細かい起伏(凹凸)に沿った形成となっている。また、路面Rの起伏以上に水膜が厚くても風雨や車両の走行によって水膜表面に起伏ができる。よって、車両前照灯の投影光(Ray1)と水膜表面の入射角αは水膜表面が路面に水平な時より小さくなり反射率が減少するので、対向車等に向かう光(フレア光)を減少できる。
【0034】
光学素子32は、例えば、集光レンズである。この集光レンズは、光源31が発光した光が透過するように、光源31(発光面)の前方に配置されている。この集光レンズは、当該集光レンズを透過する光源31からの光が少なくとも鉛直方向に関し、投影レンズ20の焦点F20に向かって投影レンズ20の光軸AX20寄りに集光するレンズとして構成されている。この集光レンズの光軸は、光源31の光軸AX31と一致(又は略一致)している。以上のように、光源31及び光学素子32(集光レンズ)により構成される光学系の光軸(光源31の光軸AX31と同様)は、投影レンズ20の光軸AX20に対して前方斜め下方に向かって角度θ傾斜している。これにより前照灯の前方投影像の水平線であるH線及び前方投影像の鉛直線であるV線の交点近傍(光軸AX20の近傍)が相対的に明るい、遠方視認性に優れたロービーム用配光パターン(及びハイビーム用配光パターン、ADB用配光パターン)に適した第1光度分布(及び第2光度分布、第3光度分布)を形成することができる。
【0035】
図2は、
図1から投影レンズ20、光源31、光学素子32(集光レンズ)、可動ミラー33、LCD41等を抜き出した概略図である。
【0036】
図2に示すように、可動ミラー33は、投影レンズ20と光源31(光学素子32)との間に配置されている。その際、可動ミラー33は、その後端縁側に設けられた揺動軸33aを中心に揺動可能に支持された状態で配置されている。この揺動軸33aは、車幅方向(
図2中紙面に直交する方向)に延びている。
【0037】
可動ミラー33は、揺動軸33aを中心に揺動することにより、光学素子32が集光した光の光路上の第1光入射位置p1(
図2参照)又は光学素子32が集光した光の光路外の第1退避位置p2(
図2参照)に配置される。
【0038】
可動ミラー33の前端縁33bは、ロービーム用配光パターンの上端縁であるカットオフラインに対応するカットオフ形状(Z型段差部)を含む(
図9参照)。可動ミラー33が第1光入射位置p1に配置された状態で、可動ミラー33の前端縁33b(カットオフ形状)は、投影レンズ20の焦点F
20近傍に配置される。また、可動ミラー33が第1光入射位置p1に配置された状態で、可動ミラー33は、その前端縁33bから後方(光源31側)に向かって水平に延びる平面形状の反射面33cを含む(
図2参照)。
【0039】
可動ミラー駆動機構34は、可動ミラー33を、その後端縁側に設けられた揺動軸33aを中心に揺動させることにより、第1光入射位置p1又は第1退避位置p2に配置する機構で、例えば、モータ等のアクチュエータ(図示せず)を含む。図示しないが、このモータ等のアクチュエータ(例えば、モータの回転軸)は、可動ミラー33に直接又は減速ギア等を介して連結されている。可動ミラー駆動機構34は、可動ミラー制御部125により制御される。この点については後述する。
【0040】
図1に示すように、第2光度分布形成手段40は、LCD41を、光学素子32が集光した光の光路中の第2光入射位置p3(
図2参照)又は光学素子32が集光した光の光路外の第2退避位置p4(
図2参照)に配置するLCD駆動機構42を備えている。
【0041】
図3は、
図1中矢印Ar1方向から見たLCD41の矢視図である。
【0042】
図3に示すように、LCD41は、例えば、光(光学素子32が集光した光)の透過不透過を制御可能な複数領域(ADB領域)42a
1~42a
n、及びロービーム領域45を含むLCD(liquid crystal display)である。複数領域42a
1~42a
nが本開示の個別に点消灯制御可能な複数領域の一例である。このLCDの外形は、例えば、正面視で、車幅方向に横長の矩形形状である(
図3参照)。
【0043】
図19(a)はLCD41の断面図(模式図)、
図19(b)はLCD41(変形例)の断面図(模式図)である。
図19(a)に示すように、LCD41は、LCD素子41A、LCD素子41Aに対して投影レンズ20側に配置された偏光板43を含む。LCD素子41Aの液晶分子は、例えば、TN(Twisted Nematic)液晶、VA(Vertical Alignment)液晶、又はIPS(In-Plane-Switching)液晶である。なお、光源31は上記のように路面Rに入射する光Ray1がp波となるように配置されているため、LCD素子41Aに対して光源31側の偏光板は省略されている。なお、
図19(b)に示すように、LCD素子41Aに対して光源側に偏光板44を配置してもよい。また何れの場合も、LCD素子41Aに対して投影レンズ20側の偏光板43(本開示の第1偏光板の一例)及びLCD素子41Aに対して光源31側の偏光板44(本開示の第2偏光板の一例)のそれぞれの吸収軸は光Ray1が透過できるように路面Rに対して平行に配置されている。よって偏光板43と44は互いにパラレルニコル配置の関係にある。
【0044】
各々の領域42a1~42anを透過する光の透過量は、偏光板の偏光方向とLCD素子の各々の領域42a1~42anで偏光された光の偏光方向との関係により決まる。各々の領域42a1~42anの偏光方向を個別に制御することで、各々の領域42a1~42anを、光学素子32が集光した光が透過しない光不透過領域(非照射領域)又は光学素子32が集光した光が透過する光透過領域(照射領域)に設定することができる。各々の領域42a1~42anの偏光状態は、LCD制御部126により制御される。この点については後述する。
【0045】
図2に示すように、LCD41は、投影レンズ20と光源31(光学素子32)との間に配置されている。その際、LCD41は、その前端縁側に設けられた揺動軸41aを中心に揺動可能に支持された状態で配置されている。この揺動軸41aは、投影レンズ20の光軸AX
20の上方に配置されており、かつ、車幅方向(
図2中紙面に直交する方向)に延びている。
【0046】
LCD41は、揺動軸41aを中心に揺動することにより、光学素子32が集光した光の光路上の第2光入射位置p3(
図2参照)又は光学素子32が集光した光の光路外の第2退避位置p4(
図2参照)に配置される。具体的には、LCD41は、その発光面が投影レンズ20の後方焦点面FP
20に沿った状態で第2光入射位置p3(
図2参照)に配置される(
図2参照)。
【0047】
図3に示すように、複数領域42a
1~42a
nは、LCD41の前端縁41b(
図3中下端縁)とADB用配光パターンの下端縁であるカットオフラインに対応するカットオフ形状(左カットオフラインに対応するエッジe1、右カットオフラインに対応するエッジe2、エッジe1、e2を連結する斜めエッジe3)との間に、車幅方向(
図3中左右方向)に一列に並んだ状態で配置されている。
【0048】
複数領域42a
1~42a
nの幅W(
図3参照)は、車幅方向(
図3中左右方向)の中央から近い程狭く、逆に車幅方向(
図3中左右方向)の中央から遠い程広くなるように設定されている。
【0049】
一方、ロービーム領域45は、LCD素子41Aが設けられていない透明な光透過領域である。ロービーム領域45は、LCD41の後端縁41c(
図3中上端縁)とADB用配光パターンの下端縁であるカットオフラインに対応するカットオフ形状(左カットオフラインに対応するエッジe1、右カットオフラインに対応するエッジe2、エッジe1、e2を連結する斜めエッジe3)との間に配置されている。なお、ロービーム領域45は、42a
1~42a
nのADB領域を光透過領域(照射領域)としたときと透過率が同じになるように、ダミーのLCD素子または透過率調整層を配置することもできる。
【0050】
LCD駆動機構42は、LCD41を、その前端縁側に設けられた揺動軸41aを中心に揺動させることにより、第2光入射位置p3又は第2退避位置p4に配置する機構で、例えば、モータ等のアクチュエータ(図示せず)を含む。図示しないが、このモータ等のアクチュエータ(例えば、モータの回転軸)は、LCD41に直接又は減速ギア等を介して連結されている。LCD駆動機構42は、LCD制御部126により制御される。この点については後述する。なお、LCD41は退避した際に投影レンズ20と干渉しないように、光学素子32側に第2退避位置p4を設けている。
【0051】
次に、車両用灯具10を制御する車両用灯具システム100について説明する。
【0052】
図4は、車両用灯具システム100の概略構成図である。
【0053】
図4に示すように、車両用灯具システム100は、車両用灯具10、マスク対象物検出センサ110、制御部120等を備えている。車両用灯具システム100は、自動車等の車両に搭載される。以下、車両用灯具システム100が搭載された車両のことを自車V0という。
【0054】
マスク対象物検出センサ110は、カメラ111、マスク対象物検出部112を備える。
【0055】
図示しないが、マスク対象物検出センサ110は、例えば、自車V0の車室内の車幅方向の中央に設けられている。その際、カメラ111の光軸と自車V0の車両前後方向に延びる中心軸は一致している。
【0056】
カメラ111は、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子である。カメラ111は、自車V0の前方を周期的に(例えば、60msごとに)フロントガラス越しに撮像する。
【0057】
マスク対象物検出部112は、カメラ111により撮像された画像(画像データ)に基づいて(所定画像処理を実行することにより)、自車V0の前方に存在するマスク対象物を検出するマスク対象物検出処理を実行する。マスク対象物は、例えば、自車V0の前方の対向車線側を走行している対向車、自車V0の前方の自車線側を走行している先行車である。カメラ111により撮像された画像(画像データ)がマスク対象物を含む場合、マスク対象物検出部112は、当該マスク対象物(例えば、対向車のヘッドランプの位置、先行車のテールランプの位置)を検出する。マスク対象物検出部112は、ソフトウエア又はハードウエアにより実現することができる。
【0058】
以上のようにマスク対象物検出部112によって検出されたマスク対象物(位置等)は、制御部120に送信される。
【0059】
制御部120は、例えば、プロセッサ(図示せず)、記憶部121、メモリ122を備えるECU(Electronic Control Unit)である。ECUは、例えば、灯具制御ECUである。
【0060】
プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサは、1つの場合もあるし、複数の場合もある。プロセッサは、記憶部121(例えば、ROM)からメモリ122(例えば、RAM)に読み込まれた所定プログラム(図示せず)を実行することにより、マスク対象物取得部123、非照射領域設定部124、可動ミラー制御部125、LCD制御部126として機能する。これらの一部又は全部は、ハードウエアにより実現してもよい。
【0061】
マスク対象物取得部123は、マスク対象物検出センサ110(マスク対象物検出部112)から送信されるマスク対象物(位置等)を取得(受信)する。
【0062】
非照射領域設定部124は、マスク対象物取得部123により取得されたマスク対象物(位置等)に基づいて、当該マスク対象物を照射しない非照射領域を設定する。非照射領域とは、LCD41の複数領域42a1~42anのうちマスク対象物に対応する領域(光不透過領域に設定される領域)のことである。一方、照射領域とは、LCD41の複数領域42a1~42anのうち非照射領域以外の領域(光透過領域に設定される領域)のことである。
【0063】
可動ミラー制御部125は、可動ミラー33が、揺動軸33aを中心に揺動し、第1光入射位置p1(
図2参照)又は第1退避位置p2(
図2参照)に配置されるように、可動ミラー駆動機構34を制御する。
【0064】
LCD制御部126は、LCD41が、揺動軸41aを中心に揺動し、第2光入射位置p3(
図2参照)又は第2退避位置p4(
図2参照)に配置されるように、LCD駆動機構42を制御する。また、LCD制御部126は、LCD41の複数領域42a
1~42a
nのうち非照射領域設定部124が設定した非照射領域が、光(光学素子32が集光した光)が透過しない光不透過領域となるように、LCD41(LCD素子。すなわち、各々の領域42a
1~42a
nの偏光状態)を制御する。
【0065】
次に、上記構成の車両用灯具10(及び車両用灯具システム100)により形成されるロービーム用配光パターンPLoの一例について説明する。
【0066】
図5(a)は、ロービーム用配光パターンP
Loの一例である。なお、
図5(a)~
図5(c)に示す各配光パターンは、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成される。
【0067】
図5(a)に示すロービーム用配光パターンP
Loは、次のようにして形成される。
【0068】
図6は、ロービーム用配光パターンP
Loを形成するロービーム用配光パターン形成処理のフローチャート例である。
【0069】
以下の処理は例えばユーザが配光切替スイッチ(図示せず)を操作してロービームを選択した場合に開始する。
【0070】
まず、LCD41を第2退避位置p4(
図2参照)に配置する(ステップS10)。これは、LCD制御部126により実現される。具体的には、LCD制御部126は、LCD41が、揺動軸41aを中心に揺動し、第2退避位置p4(
図2参照)に配置されるように、LCD駆動機構42を制御する。このLCD制御部126の制御に従い、LCD駆動機構42は、LCD41を、その前端縁側に設けられた揺動軸41aを中心に揺動させることにより、当該LCD41を第2退避位置p4(
図2参照)に配置する。
【0071】
次に、可動ミラー33を第1光入射位置p1(
図2参照)に配置する(ステップS11)。これは、可動ミラー制御部125により実現される。具体的には、可動ミラー制御部125は、可動ミラー33が、揺動軸33aを中心に揺動し、第1光入射位置p1(
図2参照)に配置されるように、可動ミラー駆動機構34を制御する。この可動ミラー制御部125の制御に従い、可動ミラー駆動機構34は、可動ミラー33を、その後端縁側に設けられた揺動軸33aを中心に揺動させることにより、当該可動ミラー33を第1光入射位置p1(
図2参照)に配置する。
【0072】
以上のようにして、LCD41及び可動ミラー33は、ロービーム用配光パターン形成可能位置に配置される。
【0073】
次に、光源31を点灯する(ステップS12)。光源31が発光する光は、光学素子32により投影レンズ20の焦点F20に向かって投影レンズ20の光軸AX20寄りに集光される。
【0074】
この光学素子32が集光した光の一部は、第1光入射位置p1(
図2参照)に配置された可動ミラー33で反射された後(折り返された後)、投影レンズ20の後方焦点面FP
20に到達する。また、この光学素子32が集光した光の他の一部は、第1光入射位置p1(
図2参照)に配置された可動ミラー33で反射されることなく投影レンズ20の後方焦点面FP
20に直接到達する。この投影レンズ20の後方焦点面FP
20に到達する光(反射光及び直接光)により、投影レンズ20の後方焦点面FP
20(又は後方焦点面FP
20近傍)に、ロービーム用配光パターンP
Loに対応する第1光度分布が形成される。
【0075】
この第1光度分布は、その下端縁近傍及び投影レンズ20の光軸AX20近傍の光度が相対的に高いものとなる。
【0076】
また、この第1光度分布の下端縁は、可動ミラー33の前端縁33bにより規定される、ロービーム用配光パターンPLoの上端縁であるカットオフラインCLLoに対応するカットオフ形状(Z型段差部)を含む。
【0077】
この第1光度分布が、投影レンズ20により前方に反転投影されることにより、
図5(a)に示すように、ロービーム用配光パターンP
Loが形成される。このロービーム用配光パターンP
Loは、カットオフラインCL
Lo近傍及びH線とV線との交点近傍の領域が相対的に明るい遠方視認性に優れたものとなる。
【0078】
また、光源31は上記のように配置されているため、ロービーム用配光パターンP
Loを形成する際、路面Rに入射する光Ray1はp波となる(
図17参照)。そのため、夜間路面が水で覆われている場合(例えば、夜間雨天の場合)にロービーム用配光パターンP
Loを形成する際、路面で反射され対向車等に向かう光(グレア光)を抑制することが可能となる。また、対向車等に向かう光(グレア光)の抑制は、同時に路面で反射して自車に戻る光を増して視認性を向上する。
【0079】
次に、車両用灯具10(及び車両用灯具システム100)により形成されるハイビーム用配光パターンPHiの一例について説明する。
【0080】
図5(b)は、ハイビーム用配光パターンP
Hiの一例である。
【0081】
図5(b)に示すハイビーム用配光パターンP
Hiは、次のようにして形成される。
【0082】
図7は、ハイビーム用配光パターンP
Hiを形成するハイビーム用配光パターン形成処理のフローチャート例である。
【0083】
以下、前提として、LCD41及び可動ミラー33が、上記ロービーム用配光パターン形成可能位置に配置されているものとする。
【0084】
以下の処理は例えばユーザが配光切替スイッチ(図示せず)を操作してハイビームを選択した場合に開始する。
【0085】
まず、可動ミラー33を第1退避位置p2(
図2参照)に配置する(ステップS20)。これは、可動ミラー制御部125により実現される。具体的には、可動ミラー制御部125は、可動ミラー33が、揺動軸33aを中心に揺動し、第1退避位置p2(
図2参照)に配置されるように、可動ミラー駆動機構34を制御する。この可動ミラー制御部125の制御に従い、可動ミラー駆動機構34は、可動ミラー33を、その後端縁側に設けられた揺動軸33aを中心に揺動させることにより、当該可動ミラー33を第1退避位置p2(
図2参照)に配置する。
【0086】
以上のようにして、LCD41及び可動ミラー33は、ハイビーム用配光パターン形成可能位置に配置される。
【0087】
次に、光源31を点灯する(ステップS21)。その際、光源31は、ロービーム用配光パターン形成処理時と比べ、光出力が大きくなるように点灯制御される。これは、ロービーム用配光パターンより光度が高いハイビーム用配光パターンを形成するためである。光源31が発光する光は、光学素子32により投影レンズ20の焦点F20に向かって投影レンズ20の光軸AX20寄りに集光される。
【0088】
この光学素子32が集光した光は、第1退避位置p2(
図2参照)に配置された可動ミラー33で反射されることなく投影レンズ20の後方焦点面FP
20に直接到達する。この投影レンズ20の後方焦点面FP
20に到達する光(直接光)により、投影レンズ20の後方焦点面FP
20(又は後方焦点面FP
20近傍)に、ハイビーム用配光パターンP
Hiに対応する第2光度分布が形成される。
【0089】
この第2光度分布は、投影レンズ20の光軸AX20近傍の光度が相対的に高いものとなる。
【0090】
この第2光度分布が、投影レンズ20により前方に反転投影されることにより、
図5(b)に示すように、ハイビーム用配光パターンP
Hiが形成される。このハイビーム用配光パターンP
Hiは、H線とV線との交点近傍の領域が相対的に明るい遠方視認性に優れたものとなる。また、光源31は上記のように配置されているため、ハイビーム用配光パターンP
Hiを形成する際、路面Rに入射する光Ray1はp波となる(
図17参照)。そのため、夜間路面が水で覆われている場合(例えば、夜間雨天の場合)にハイビーム用配光パターンP
Hiを形成する際、路面で反射され対向車等に向かう光(グレア光)を抑制することが可能となる。
【0091】
次に、車両用灯具10(及び車両用灯具システム100)により形成されるADB用配光パターンPADBの一例について説明する。
【0092】
図5(c)は、ADB用配光パターンP
ADBの一例である。
図5(c)に示すように、ADB用配光パターンP
ADBは、マスク対象物を照射しない非照射領域A及びマスク対象物以外を照射する照射領域Bを含む。
【0093】
図8は、ADB用配光パターンP
ADBを形成するADB用配光パターン形成処理のフローチャート例である。
図9は、ADB用配光パターンP
ADBを形成している様子を表す車両用灯具10の概略斜視図である。
【0094】
以下、前提として、LCD41及び可動ミラー33が、上記ハイビーム用配光パターン形成可能位置に配置されているものとする。
【0095】
以下の処理は例えばユーザが配光切替スイッチ(図示せず)を操作してADBを選択した場合に開始する。
【0096】
まず、LCD41を第2光入射位置p3(
図2、
図9参照)に配置する(ステップS30)。これは、LCD制御部126により実現される。具体的には、LCD制御部126は、LCD41が、揺動軸41aを中心に揺動し、第2光入射位置p3(
図2参照)に配置されるように、LCD駆動機構42を制御する。このLCD制御部126の制御に従い、LCD駆動機構42は、LCD41を、その前端縁側に設けられた揺動軸41aを中心に揺動させることにより、当該LCD41を第2光入射位置p3(
図2参照)に配置する。その際、LCD41は、その発光面が投影レンズ20の後方焦点面FP
20に沿った状態で第2光入射位置p3(
図2参照)に配置される(
図2参照)。
【0097】
次に、光源31を点灯する(ステップS31)。その際、光源31は、ハイビーム用配光パターン形成処理時と比べ、光出力が大きくなるように点灯制御される。これは、LCD41を透過する際の光損失を考慮したためである。光源31が発光する光は、光学素子32により投影レンズ20の焦点F20に向かって投影レンズ20の光軸AX20寄りに集光される。
【0098】
この光学素子32が集光した光は、第1退避位置p2(
図2、
図9参照)に配置された可動ミラー33で反射されることなく第2光入射位置p3(
図2、
図9参照)に配置されたLCD41(複数領域42a
1~42a
n)に直接入射する。
【0099】
ここで、第2光入射位置p3(
図2参照)に配置されたLCD41の複数領域42a
1~42a
n全てが、光透過領域(照射領域)に設定されているとする。この場合、LCD41(複数領域42a
1~42a
n)に直接入射する光は、LCD41(複数領域42a
1~42a
n全て)を透過する。このLCD41(複数領域42a
1~42a
n全て)を透過する光により、投影レンズ20の後方焦点面FP
20(又は後方焦点面FP
20近傍)に、ADB用配光パターンP
ADBに対応する第3光度分布が形成される。ここでは、LCD41の複数領域42a
1~42a
n全てが光透過領域(照射領域)に設定されているため、この第3光度分布は、光不透過領域(非照射領域)を含まない。
【0100】
この第3光度分布は、投影レンズ20の光軸AX20近傍の光度が相対的に高いものとなる。
【0101】
また、LCD41(ロービーム領域45)を透過する光により、投影レンズ20の後方焦点面FP20(又は後方焦点面FP20近傍)に、ロービーム用配光パターンPLoに対応する第1光度分布が形成される。
【0102】
この第1光度分布及び第3光度分布が、投影レンズ20により前方に反転投影されることにより、
図5(b)に示すハイビーム用配光パターンP
Hiと同様のADB用配光パターンP
ADBが形成される。
【0103】
光源31は上記のように配置されているため、ADB用配光パターンP
ADBを形成する際、路面Rに入射する光Ray1はp波となる(
図17参照)。そのため、夜間路面が水で覆われている場合(例えば、夜間雨天の場合)にADB用配光パターンP
ADBを形成する際、路面で反射され対向車等に向かう光(グレア光)を抑制することが可能となる。
【0104】
次に、自車V0の前方を撮像する(ステップS32)。これは、カメラ111により実現される。
【0105】
次に、マスク対象物検出処理を実行する(ステップS33)。これは、マスク対象物検出部112により実現される。具体的には、マスク対象物検出部112は、ステップS32で撮像された画像(画像データ)に基づいて(所定画像処理を実行することにより)、自車V0の前方に存在するマスク対象物を検出するマスク対象物検出処理を実行する。
【0106】
次に、ステップS33の結果、マスク対象物を検出しない場合(ステップS34:NO)、ステップS31以降の処理を繰り返し実行する。
【0107】
一方、ステップS33の結果、マスク対象物を検出した場合(ステップS34:YES)、マスク対象物検出部22から送信されるマスク対象物(位置等)をマスク対象物取得部123が取得し(ステップS35)、非照射領域を設定する(ステップS36)。この非照射領域の設定は、非照射領域設定部124により実現される。具体的には、非照射領域設定部124は、ステップS35で取得されたマスク対象物(位置等)に基づいて、当該マスク対象物を照射しない非照射領域を設定する。さらに詳細には、非照射領域設定部124は、LCD41の複数領域42a1~42anのうちステップS35で取得されたマスク対象物(位置)に対応する領域を非照射領域として設定する。
【0108】
次に、ステップS36で設定された非照射領域に基づき、LCD41を制御する(ステップS37)。これは、LCD制御部126により実現される。具体的には、LCD制御部126は、LCD41の複数領域42a1~42anのうちステップS36で非照射領域設定部124が設定した非照射領域が、光(光学素子32が集光した光)が透過しない光不透過領域となるように、LCD41(LCD素子。すなわち、各々の領域42a1~42anの偏光状態)を制御する。
【0109】
この場合、LCD41(複数領域42a1~42an)に直接入射する光は、LCD41の複数領域42a1~42anのうち光不透過領域(ステップS37で制御された光不透過領域)以外の光透過領域を透過する。このLCD41(光不透過領域以外の光透過領域)を透過する光により、投影レンズ20の後方焦点面FP20(又は後方焦点面FP20近傍)に、ADB用配光パターンPADBに対応する第3光度分布が形成される。この第3光度分布は、光不透過領域に対応する非照射領域を含む。
【0110】
この第3光度分布は、投影レンズ20の光軸AX20近傍の光度が相対的に高いものとなる。
【0111】
また、LCD41(ロービーム領域45)を透過する光により、投影レンズ20の後方焦点面FP20(又は後方焦点面FP20近傍)に、ロービーム用配光パターンPLoに対応する第1光度分布が形成される。
【0112】
この第1光度分布及び第3光度分布が、投影レンズ20により前方に反転投影されることにより、
図5(c)、
図9に示すADB用配光パターンP
ADBが形成される。このADB用配光パターンP
ADBは、H線とV線との交点近傍の領域が相対的に明るい遠方視認性に優れたものとなる。また、このADB用配光パターンP
ADBは、光不透過領域に対応する非照射領域Aを含む。非照射領域Aは、ステップS34で検出されたマスク対象物に対応する位置に形成される。これにより、ステップS34で検出されたマスク対象物に対するグレアを防止することができる。また、光源31は上記のように配置されているため、ADB用配光パターンP
ADBを形成する際、路面Rに入射する光Ray1はp波となる(
図17参照)。そのため、夜間路面が水で覆われている場合(例えば、夜間雨天の場合)にADB用配光パターンP
ADBを形成する際、路面で反射され対向車等に向かう光(グレア光)を抑制することが可能となる。
【0113】
以後、ステップS31に戻り、ステップS31以下の処理が繰り返し実行される。
【0114】
以上説明したように、本実施形態によれば、ロービーム用配光パターンPLoとハイビーム用配光パターンPHiに加え、さらに、それら以外の配光パターンであるADB用配光パターンPADBを形成することができ、かつ、夜間路面が水で覆われている場合(例えば、夜間雨天の場合)に各配光パターンを形成する際、路面で反射され対向車等に向かう光(グレア光)を抑制することができる。また、自車近傍の前方路面を照射するロービーム用配光パターンPLoにおいては、路面Rとのなす角αが小さくなるので水面を透過して路面Rで反射した光が自車側に戻り易くなるので前方視認性も改善する。
【0115】
ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンに加え、さらに、それら以外の配光パターンであるADB用配光パターンP
ADBを形成することができるのは、第2光度分布形成手段40、すなわち、個別に点消灯制御可能な複数領域を含むLCD41と、このLCD41を、光学素子32(集光レンズ)が集光した光の光路中の第2光入射位置p3(
図2参照)又は光学素子32(集光レンズ)が集光した光の光路外の第2退避位置p4(
図2参照)に配置するLCD駆動機構42と、を備えていることによるものである。
【0116】
夜間路面が水で覆われている場合(例えば、夜間雨天の場合)に各配光パターンPLo、PHi、PADBを形成する際、路面で反射され対向車等に向かう光(グレア光)を抑制することができるのは、路面に入射する光(車両用灯具10から照射された光)が、その電界の振動方向が入射面に対して平行なp波となるように、光源31が配置されていることによるものである。
【0117】
次に、変形例について説明する。
【0118】
図10、
図11は、変形例1の車両用灯具10Aの概略構成図である。
【0119】
以下、変形例1の車両用灯具10Aついて上記実施形態の車両用灯具10との相違点を中心に説明し、上記実施形態の車両用灯具10と同様の構成については同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0120】
図10に示すように、可動ミラー33は、投影レンズ20と光源31(光学素子32)との間に配置されている。その際、可動ミラー33は、上下方向(
図10中矢印Ar2方向参照)に移動可能に支持された状態、例えば、上下方向に延びるガイドレール(図示せず)にスライド移動可能に支持された状態で配置されている。
【0121】
可動ミラー33は、上下方向に移動することにより、光学素子32が集光した光の光路上の第1光入射位置p1(
図10参照)又は光学素子32が集光した光の光路外の第1退避位置p2(
図9参照)に配置される。
【0122】
可動ミラー駆動機構34は、可動ミラー33を、上下方向に移動させることにより(例えば、上下方向に延びるガイドレールに沿って上下方向に移動させることにより)、第1光入射位置p1又は第1退避位置p2に配置する機構で、例えば、モータ等のアクチュエータ(図示せず)を含む。図示しないが、このモータ等のアクチュエータ(例えば、モータの回転軸)は、可動ミラー33に直接又は減速ギア等を介して連結されている。
【0123】
図10に示すように、LCD41は、投影レンズ20と光源31(光学素子32)との間に配置されている。その際、LCD41は、その前端縁側に設けられた揺動軸41aを中心に揺動可能に支持された状態で配置されている。この揺動軸41aは、投影レンズ20の光軸AX
20の下方に配置されており、かつ、車幅方向(
図10中紙面に直交する方向)に延びている。
【0124】
LCD41は、揺動軸41aを中心に揺動することにより、光学素子32が集光した光の光路上の第2光入射位置p3(
図10参照)又は光学素子32が集光した光の光路外の第2退避位置p4(
図10参照)に配置される。
【0125】
LCD駆動機構42は、LCD41を、その前端縁側に設けられた揺動軸41aを中心に揺動させることにより、第2光入射位置p3(
図10参照)又は第2退避位置p4(
図10参照)に配置する機構で、例えば、モータ等のアクチュエータ(図示せず)を含む。図示しないが、このモータ等のアクチュエータ(例えば、モータの回転軸)は、LCD41に直接又は減速ギア等を介して連結されている。
【0126】
なお、
図11に示すように、可動ミラー33は、前後方向(車両前後方向)に移動することにより、光学素子32が集光した光の光路上の第1光入射位置p1(
図10参照)又は光学素子32が集光した光の光路外の第1退避位置p2(
図10参照)に配置されてもよい。その際、可動ミラー駆動機構34は、可動ミラー33を、前後方向(
図11中矢印Ar3方向参照)に移動させることにより(例えば、前後方向に延びるガイドレールに沿って前後方向に移動させることにより)、第1光入射位置p1又は第1退避位置p2に配置する機構であってもよい。
【0127】
上記構成の変形例1の車両用灯具10Aの動作例は
図6~
図8のフローチャート例と同様である。
【0128】
本変形例1によれば、上記実施形態と同様、ロービーム用配光パターンPLo、ハイビーム用配光パターンPHi、及びそれ以外の配光パターンであるADB用配光パターンPADBのいずれかに切換可能な車両用灯具10Aを提供することができる。
【0129】
また、本変形例1によれば、さらに、可動ミラー33を第1光入射位置p1(
図10、
図11参照)に配置し、かつ、LCD41を第2退避位置p4(
図10、
図11参照)に配置することにより、LCD41を可動ミラー33で覆うことが可能になる。
【0130】
これにより、例えば、昼間(車両用灯具10Aを使用しない場合、すなわち、第1光度分布、前記第2光度分布、前記第3光度分布を形成しない場合)、投影レンズ20を透過した太陽光が第1光入射位置p1(
図10、
図11参照)に配置された可動ミラー33により遮光されるため、当該投影レンズ20を透過した太陽光が第2退避位置p4(
図10、
図11参照)に配置されたLCD41を照射するのを防止することができる。これにより、LCD41の熱劣化、光劣化を抑制することができる。
【0131】
【0132】
上記実施形態では、光学素子32が集光レンズである例について説明したが、これに限らない。例えば、光学素子32は、集光レンズと同様の集光機能を有する光学素子、例えば、
図12に示すように、反射面であってもよい。この反射面は、当該反射面で反射される光源31からの光が少なくとも鉛直方向に関し、投影レンズ20の焦点F
20に向かって投影レンズ20の光軸AX
20寄りに集光する反射面として構成されている。本変形例によっても上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0133】
図13は、LCD41の変形例である。
図13中、符号H
41は水平線Hに対応する線を表し、符号V
41は鉛直線Vに対応する線を表す。
【0134】
上記実施形態では、LCD41が複数領域(ADB領域)42a
1~42a
n、及びロービーム領域45を含むLCDである例について説明したが、これに限らない。例えば、LCD41は、
図13に示すように、光(光学素子32が集光した光)の透過不透過を制御可能な、マトリックス状に配置された複数領域を含むLCDであってもよい。
図13中各々の矩形が透過不透過を制御可能な最小単位(画素)に対応する。
図13中、符号B1及びB2が示す矩形(点線)内の領域群(画素群)の透過不透過を制御することにより、
図5(c)と同様のADB用配光パターンを形成することができる。一方、
図13中、符号B2が示す矩形(点線)内の領域群(画素群)の透過不透過を制御することにより、自車V0前方の路面上に路面描画用配光パターン(図示せず)を形成することができる。この路面描画用配光パターンとしては、自車V0の進行方向を示す矢印、自車V0周辺の障害物等を示すマーキング表示等様々なパターンが考えられる。なお、領域群の実装ピッチは50μm以下が望ましい。このようにすれば、より解像度の高い路面描画用配光パターンを形成することができる。
【0135】
本変形例の車両用灯具10の動作例は
図8のフローチャート例と同様である。本変形例によっても上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0136】
図14(a)~
図14(d)は、光源31の第1変形例である。
図15(a)~
図15(d)は、光源31の第2変形例である。
図14(a)~
図14(d)、
図15(a)~
図15(d)中、符号H
31は水平線Hに対応する線を表し、符号V
31は鉛直線Vに対応する線を表す。
【0137】
上記実施形態では、光源31が一つの例について説明したが、これに限らない。例えば、
図14(a)、
図15(a)に示すように、光源31は、複数の光源であってもよい。
図14(a)、
図15(a)中、個々の矩形が光源を表す。その際、複数の光源は、各辺が傾いた状態で配置されていてもよいし(
図14(a)参照)、各辺が水平及び鉛直の状態で配置されていてもよい(
図15(a)参照)。このように光源31が複数の光源により構成される場合、当該光源31の光軸AX
31は、水平線Hに対応する線H
31と鉛直線Vに対応する線V
31との交点をとおり、かつ、その発光面に直交する方向に延びている。以上のように、光源31が複数の光源により構成される場合(例えば、
図14(a)、
図15(a)参照)、複数の光源を、各配光パターンに応じたパターンで点灯してもよい。
【0138】
例えば、
図6に示すロービーム用配光パターン形成処理を実行しロービーム用配光パターンを形成する場合、ステップS12において、複数の光源全体の光度分布がロービーム用配光パターンに適した光度分布となるように各々の光源の明るさを制御してもよい。
【0139】
例えば、ステップS12において、
図14(b)、
図15(b)に示すように、各々の光源の明るさを制御してもよい。
図14(b)、
図15(b)中、色が濃いほど明るく点灯していることを表す。また、
図14(b)、
図15(b)中、符号B3、B4が示す矩形は、複数の光源からの光が可動ミラー33により反射される(折り返される)範囲を表す。
【0140】
また例えば、
図7に示すハイビーム用配光パターン形成処理を実行しハイビーム用配光パターンを形成する場合、ステップS21において、複数の光源全体の光度分布がハイビーム用配光パターンに適した光度分布となるように各々の光源の明るさを制御してもよい。
【0141】
例えば、ステップS21において、
図14(c)、
図15(c)に示すように、各々の光源の明るさを制御してもよい。
図14(c)、
図15(c)中、色が濃いほど明るく点灯していることを表す。
【0142】
また例えば、
図8に示すADB用配光パターン形成処理を実行しADB用配光パターンを形成する場合、ステップS31において、複数の光源全体の光度分布がADB用配光パターンの光度分布に適した光度分布となるように各々の光源の明るさを制御してもよい。
【0143】
例えば、ステップS31において、
図14(d)、
図15(d)に示すように、各々の光源の明るさを制御してもよい。
図14(d)、
図15(d)中、色が濃いほど明るく点灯していることを表す。また、
図14(d)、
図15(d)中、符号B5、B6が示す矩形は、光不透過領域に対応する範囲で、消灯(又は減光)される範囲を表す。このように、光源31を構成する複数の光源のうち光不透過領域に対応する光源を消灯(又は減光)することにより、省電力を実現することができる。
【0144】
以上のように、複数の光源それぞれの明るさは、当該複数の光源全体の光度分布が、ロービーム用配光パターン、ハイビーム用配光パターン、又はロービーム用配光パターン及びハイビーム用配光パターン以外の配光パターン(例えば、ADB用配光パターン)に適した光度分布になるように制御してもよい。
【0145】
上記各実施形態で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0146】
上記各実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記各実施形態の記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0147】
10、10A…車両用灯具、20…投影レンズ、22…マスク対象物検出部、30…第1光度分布形成手段、31…光源、32…光学素子、33…可動ミラー、33a…揺動軸、33b…前端縁、33c…反射面、34…可動ミラー駆動機構、40…第2光度分布形成手段、41…LCD、41A…LCD素子、41a…揺動軸、41b…前端縁、42…LCD駆動機構、50…基板、100…車両用灯具システム、110…マスク対象物検出センサ、111…カメラ、112…マスク対象物検出部、120…制御部、121…記憶部、122…メモリ、123…マスク対象物取得部、124…非照射領域設定部、125…可動ミラー制御部、126…LCD制御部、A…非照射領域、B…照射領域、CLLo…カットオフライン、F20…焦点、FP20…後方焦点面、PADB…ADB用配光パターン、PHi…ハイビーム用配光パターン、PLo…ロービーム用配光パターン、V…自車、p1…第1光入射位置、p2…第1退避位置、p3…第2光入射位置、p4…第2退避位置