(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131089
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240920BHJP
【FI】
G05D1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041138
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊人
(72)【発明者】
【氏名】位田 章太
(72)【発明者】
【氏名】田中 芳孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彰
(72)【発明者】
【氏名】川波 絢佳
(72)【発明者】
【氏名】小川 大介
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG07
5H301GG08
5H301KK03
5H301KK04
5H301KK08
5H301KK09
5H301KK12
5H301KK13
5H301KK19
5H301LL03
5H301LL07
5H301LL08
(57)【要約】
【課題】走行経路の分岐部または合流部を含む区間における搬送車の通行を効率的に行うことにより、物品搬送設備の全体としての搬送効率を高める。
【解決手段】第1通過許可及び第2通過許可の双方を与えられて第2通過地点Pp2を通過しようとする搬送車Vは、第1停止地点Ps1からの走行距離が第1設定距離D1となった場合に第1通過地点Pp1の占有を解除する旨の第1占有解除要求Sn1を区間制御装置Czに対して行い、第1停止地点Ps1からの走行距離が第2設定距離D2となった場合に第2通過地点Pp2の占有を解除する旨の第2占有解除要求Sn2を区間制御装置Czに対して行う。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車が走行する走行経路と、
前記走行経路のうちの特定の区間である特定区間を走行する前記搬送車に通過許可を与えて当該搬送車の制御を行う区間制御装置と、を備えた物品搬送設備であって、
前記特定区間には、互いに交差しない第1経路及び第2経路と、前記第1経路における第1接続部と前記第2経路における第2接続部とを接続する接続経路と、が含まれ、
前記第1経路及び前記第2経路のそれぞれは、上流側から下流側へ向かって一方向に前記搬送車が走行する経路であり、
前記第1経路における前記第1接続部よりも下流側に、第1通過地点が設定され、
前記第2経路における前記第2接続部よりも下流側に、第2通過地点が設定され、
前記第1経路における前記第1接続部よりも上流側に、前記搬送車が前記通過許可を得られなかった場合に停止する第1停止地点が設定され、
前記通過許可は、第1通過許可と第2通過許可とを含み、
前記区間制御装置は、
前記搬送車に前記第1通過許可を与えた場合には当該搬送車に前記第1通過地点を占有させ、
前記搬送車に前記第2通過許可を与えた場合には当該搬送車に前記第2通過地点を占有させ、
前記搬送車は、前記第1経路又は前記第2経路から前記接続経路へ走行しようとする場合には、前記第1通過許可及び前記第2通過許可の双方を前記区間制御装置に求め、
前記区間制御装置は、前記第1通過許可及び前記第2通過許可の双方が前記搬送車から求められた場合には、前記第1通過地点及び前記第2通過地点の双方が先行する他の前記搬送車によって占有されていない非占有状態であることを条件として、前記第1通過許可及び前記第2通過許可の双方を求めた前記搬送車に前記第1通過地点及び前記第2通過地点の双方を占有させ、
前記搬送車は、自らの走行距離を検出する走行距離検出部を備え、
前記第1停止地点からの前記走行距離として、第1設定距離と、第2設定距離と、が予め設定されており、
前記第1通過許可及び前記第2通過許可の双方を与えられて前記第2通過地点を通過しようとする前記搬送車は、
前記第1停止地点からの前記走行距離が前記第1設定距離となった場合に、前記第1通過地点の占有を解除する旨の第1占有解除要求を前記区間制御装置に対して行い、
前記第1停止地点からの前記走行距離が前記第2設定距離となった場合に、前記第2通過地点の占有を解除する旨の第2占有解除要求を前記区間制御装置に対して行う、物品搬送設備。
【請求項2】
前記搬送車は、前方の他の前記搬送車を検出する検出センサを備え、
前記第1停止地点から前記第1設定距離だけ走行した前記接続経路上の地点にいる先行の前記搬送車が、前記第1経路を直進する後続の前記搬送車の前記検出センサによる検出範囲の軌跡よりも外側となるように、前記第1設定距離が設定されている、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記第1停止地点から前記第1設定距離だけ走行した前記接続経路上の地点にいる先行の前記搬送車が、前記第1経路を直進する後続の前記搬送車の走行軌跡よりも外側となるように、前記第1設定距離が設定されている、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記搬送車は、前方の他の前記搬送車を検出する検出センサを備え、
前記第1停止地点から前記第2設定距離だけ走行した前記接続経路上の地点にいる先行の前記搬送車が、前記第2経路を直進する後続の前記搬送車の前記検出センサによる検出範囲の軌跡に含まれるように、前記第2設定距離が設定されている、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項5】
先行の前記搬送車が、前記第2通過地点を通過する前に前記第2占有解除要求を行うことにより、先行の前記搬送車による前記第2通過地点の占有が解除された場合に、
前記区間制御装置は、前記第2通過許可を求めた後続の前記搬送車に前記第2通過許可を与える、請求項1から4のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項6】
前記第1経路を走行する先行の前記搬送車が前記第1通過地点を通過しようとし、前記第1経路を走行する後続の前記搬送車が前記第1接続部で分岐して前記接続経路を走行しようとする場合において、
先行の前記搬送車は、前記第1接続部よりも下流側であって前記第1接続部を通過する後続の前記搬送車の走行軌跡よりも外側の位置で、前記第1占有解除要求を前記区間制御装置に対して行う、請求項1から4のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送する搬送車と、前記搬送車が走行する走行経路と、前記走行経路のうちの特定の区間である特定区間を走行する前記搬送車に通過許可を与えて当該搬送車の制御を行う区間制御装置と、を備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品搬送設備の一例が、搬送台車システムとして、特開2006-313463号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示された符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1に開示されたシステムでは、搬送車(5)の走行経路の分岐部または合流部にロックポイントを設け、このようなロックポイントが設けられた区間(以下、「制御区間」という)を単位として、ロックポイントにおける搬送車(5)の通行の認否を判断している。
【0004】
搬送車(5)は、ロックポイントが設けられた制御区間への進入前に、ゾーンコントローラ(11)に対して、他の搬送車(5)の当該制御区間への進入の排斥を求めるブロッキング要求を行う。ゾーンコントローラ(11)は、ブロッキング要求を行った搬送車(5)に対して当該制御区間の通行を許可する場合は、ブロッキング許可を行い、他の搬送車(5)の通行を排斥する。ゾーンコントローラ(11)は、搬送車(5)の通行後は、当該制御区間におけるブロッキングを解除して、他の搬送車(5)を受け入れ可能な状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されたシステムでは、ロックポイントにおける搬送車(5)の通行の認否を制御区間単位で判断しているため、1つの制御区間に同時に複数の搬送車(5)が存在し得ない。そのため、当該制御区間における搬送車の通行の効率が低く、同様の制御区間が多数存在する場合には、物品搬送設備の全体として搬送効率を高めることに限界があった。
【0007】
上記実状に鑑みて、走行経路の分岐部または合流部を含む区間における搬送車の通行を効率的に行うことにより、物品搬送設備の全体としての搬送効率を高めることができる技術の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車が走行する走行経路と、
前記走行経路のうちの特定の区間である特定区間を走行する前記搬送車に通過許可を与えて当該搬送車の制御を行う区間制御装置と、を備えた物品搬送設備であって、
前記特定区間には、互いに交差しない第1経路及び第2経路と、前記第1経路における第1接続部と前記第2経路における第2接続部とを接続する接続経路と、が含まれ、
前記第1経路及び前記第2経路のそれぞれは、上流側から下流側へ向かって一方向に前記搬送車が走行する経路であり、
前記第1経路における前記第1接続部よりも下流側に、第1通過地点が設定され、
前記第2経路における前記第2接続部よりも下流側に、第2通過地点が設定され、
前記第1経路における前記第1接続部よりも上流側に、前記搬送車が前記通過許可を得られなかった場合に停止する第1停止地点が設定され、
前記通過許可は、第1通過許可と第2通過許可とを含み、
前記区間制御装置は、
前記搬送車に前記第1通過許可を与えた場合には当該搬送車に前記第1通過地点を占有させ、
前記搬送車に前記第2通過許可を与えた場合には当該搬送車に前記第2通過地点を占有させ、
前記搬送車は、前記第1経路又は前記第2経路から前記接続経路へ走行しようとする場合には、前記第1通過許可及び前記第2通過許可の双方を前記区間制御装置に求め、
前記区間制御装置は、前記第1通過許可及び前記第2通過許可の双方が前記搬送車から求められた場合には、前記第1通過地点及び前記第2通過地点の双方が先行する他の前記搬送車によって占有されていない非占有状態であることを条件として、前記第1通過許可及び前記第2通過許可の双方を求めた前記搬送車に前記第1通過地点及び前記第2通過地点の双方を占有させ、
前記搬送車は、自らの走行距離を検出する走行距離検出部を備え、
前記第1停止地点からの前記走行距離として、第1設定距離と、第2設定距離と、が予め設定されており、
前記第1通過許可及び前記第2通過許可の双方を与えられて前記第2通過地点を通過しようとする前記搬送車は、
前記第1停止地点からの前記走行距離が前記第1設定距離となった場合に、前記第1通過地点の占有を解除する旨の第1占有解除要求を前記区間制御装置に対して行い、
前記第1停止地点からの前記走行距離が前記第2設定距離となった場合に、前記第2通過地点の占有を解除する旨の第2占有解除要求を前記区間制御装置に対して行う。
【0009】
上記のような特定区間では、第1経路と第2経路とが互いに交差しないため、接続経路を通行する搬送車が存在しない場合には、第1経路と第2経路とをそれぞれ別の搬送車が同時に通行することが可能である。本構成によれば、第1経路に設けられた第1通過地点と第2経路に設けられた第2通過地点とで、搬送車の通行の認否を個別に判断することができる。従って、複数の搬送車がそれぞれ接続経路を通行せずに第1経路又は第2経路を通行する場合には、それら複数の搬送車に第1経路と第2経路とを同時に走行させることができる。そのため、特定区間全体で搬送車の通行の認否を判断する場合に比べて、特定区間における搬送車の通行を効率的に行うことが可能となる。一方、搬送車が接続経路を介して第1経路から第2経路へ走行或いは第2経路から第1経路へ走行する場合には、区間制御装置は、第1通過地点及び第2通過地点の双方が他の搬送車によって占有されていない非占有状態であることを条件として、搬送車の走行を許可すると共に、走行を許可した当該搬送車に第1通過地点及び第2通過地点の双方を占有させる。これにより、特定区間において複数の搬送車が互いに干渉することを回避できる。以上により、複数の搬送車が互いに干渉することを回避しつつ、物品搬送設備の全体としての搬送効率を高めることができる。
また、本構成によれば、搬送車は、通過地点よりも上流側で占有解除要求を行うことができ、その場合には通過地点の占有の解除を早期に行うことができる。これにより、他の搬送車が、当該通過地点に対する通過許可を早期に得られるようになる。従って、特定区間における複数の搬送車の走行を円滑にすることができる。また、本構成によれば、搬送車が、走行距離検出部により検出された走行距離に基づいて占有解除要求を行うため、占有解除要求を行う基準となる地点を表すマーカ等の部材を走行経路に沿って設置する必要がない。よって、物品搬送設備の簡素化を図り易い。
【0010】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図6】搬送車が第1経路に沿って走行する場合の説明図
【
図7】搬送車が第2経路に沿って走行する場合の説明図
【
図8】搬送車が接続経路を介して第1経路から第2経路を走行する場合の説明図
【
図10】第1設定距離を設定する条件の一例を示す図
【
図11】第2設定距離を設定する条件の一例を示す図
【
図12】後続の搬送車が第2通過地点を占有する場合の説明図
【
図13】後続の搬送車が第2通過地点を占有する場合の説明図
【
図14】後続の搬送車が第2通過地点を占有する場合の説明図
【
図15】第1設定距離を設定する条件のその他の例を示す図
【
図16】第1設定距離を設定する条件のその他の例を示す図
【
図17】その他の実施形態に係る特定区間を示す平面図
【
図18】その他の実施形態に係る特定区間を示す平面図
【
図19】その他の実施形態に係る特定区間を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、物品搬送設備の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1及び
図2に示すように、物品搬送設備100は、物品を搬送する搬送車Vと、搬送車Vが走行する走行経路Rと、走行経路Rのうちの特定の区間である特定区間Za(
図3参照)を走行する搬送車Vに通過許可Sp(
図5等参照)を与えて搬送車Vの制御を行う区間制御装置Czと、を備えている。
【0014】
本実施形態では、走行経路Rが、複数の制御領域Zに区分されている。複数の制御領域Zのそれぞれに、単数又は複数の特定区間Za(
図3参照)が含まれている。そして、複数の制御領域Zのそれぞれに対応して、区間制御装置Czが設けられている。本例では、各区間制御装置Czは、自らが担当する制御領域Zにおいて搬送車Vを制御するように構成されている。より詳細には、各区間制御装置Czは、自らが担当する制御領域Zに設けられた特定区間Za(
図3参照)を搬送車Vが通過しようとする場合に、当該搬送車Vの通過の認否を判断するように構成されている。
【0015】
本実施形態では、物品搬送設備100は、上位制御装置Ctを備えている。上位制御装置Ctは、複数の区間制御装置Czを制御するように構成されている。搬送車Vと複数の区間制御装置Czと上位制御装置Ctとは、互いに通信可能に構成されている。
【0016】
本実施形態では、物品搬送設備100は、搬送車Vを複数備えている。複数の搬送車Vのそれぞれは、上位制御装置Ctから与えられた搬送指令に基づいて自らのタスクを実行するように構成されている。搬送車Vとしては、床面に沿って走行する無人搬送車や、天井付近を走行する天井搬送車などを例示することができる。
【0017】
物品搬送設備100で取り扱われる物品としては、様々なものがある。例えば、物品搬送設備100が半導体製造工場に用いられる場合には、ウェハを収容するウェハ収容容器(いわゆるFOUP:Front Opening Unified Pod)や、レチクルを収容するレチクル収容容器(いわゆるレチクルポッド)などが、物品とされる。この場合、搬送車Vは、ウェハ収容容器やレチクル収容容器などの物品を、走行経路Rに沿って各工程間に亘って搬送する。
【0018】
上位制御装置Ctは、複数の搬送車Vおよび複数の区間制御装置Czを制御するように構成されている。例えば、上位制御装置Ctは、各搬送車Vに対して、物品の搬送元と搬送先とを指定した搬送指令を行うように構成されている。上位制御装置Ctは、各搬送車Vと通信可能に構成されており、各搬送車Vから現在位置情報Iv(
図4参照)を受け取ることにより、各搬送車Vの現在位置を把握可能となっている。また、上位制御装置Ctは、各区間制御装置Czと通信可能に構成されており、各区間制御装置Czから各制御領域Z又は各特定区間Zaに関する状況報告(交通状況などの報告)を受けることにより、各制御領域Z又は各特定区間Zaの状況を把握可能となっている。
【0019】
各区間制御装置Czは、自らが担当する制御領域Zの特定区間Zaにおいて、当該特定区間Zaを走行する搬送車Vの制御を行うように構成されている。具体的には、区間制御装置Czは、特定区間Zaにおいて複数の搬送車Vを互いに干渉しないように走行させる。例えば
図3は、特定区間Zaにおいて、当該特定区間Zaを2台の搬送車V(一方を第1搬送車V1、他方を第2搬送車V2とする。)が走行している状態を示している。区間制御装置Czは、第1搬送車V1と第2搬送車V2とが、特定区間Zaにおける同一の合流箇所を通過する予定である場合に、両者を異なるタイミングで通過させる。
図3に示す例では、区間制御装置Czは、第1搬送車V1を先に合流箇所を通過させ、第2搬送車V2を減速或いは停止させるなどして第1搬送車V1よりも後に合流箇所を通過させるように、両者の走行を制御している。後述するように、区間制御装置Czは、特定区間Zaを通過させる搬送車Vに対して、通過許可Sp(
図5等参照)を与えるように構成されている。
【0020】
上位制御装置Ct及び区間制御装置Czは、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各処理または各機能が実現される。物品搬送設備100は、これら上位制御装置Ct及び区間制御装置Czを少なくとも含む制御系を備えている。この制御系は、上位制御装置Ct及び区間制御装置Cz以外にも、他の制御装置を含んでいてもよい。
【0021】
図3に示すように、特定区間Zaには、互いに交差しない第1経路R1及び第2経路R2と、第1経路R1における第1接続部C1と第2経路R2における第2接続部C2とを接続する接続経路Rcと、が含まれる。第1経路R1及び第2経路R2のそれぞれは、上流側から下流側へ向かって一方向に搬送車Vが走行する経路である。
【0022】
本実施形態では、第1経路R1と第2経路R2とは、平面視で互いに並行状に配置されている。そして、これら第1経路R1と第2経路R2とを接続する接続経路Rcは、第1経路R1及び第2経路R2の双方に対して傾斜するように配置されている。すなわち本例では、第1経路R1と第2経路R2と接続経路Rcとが、平面視でN字状を成す経路となっている。
【0023】
特定区間Zaの終端、すなわち特定区間Zaの下流端には、搬送車Vが特定区間Zaを通過したことの目安となる通過地点Ppが設定されている。通過地点Ppは、第1通過地点Pp1と第2通過地点Pp2とを含む。第1経路R1における第1接続部C1よりも下流側には、第1通過地点Pp1が設定されている。第2経路R2における第2接続部C2よりも下流側には、第2通過地点Pp2が設定されている。すなわち本実施形態では、第1経路R1における第1接続部C1よりも下流側、及び第2経路R2における第2接続部C2よりも下流側のそれぞれに、搬送車Vが通過許可Sp(
図5等参照)を得られた場合に通過する通過地点Ppが設定されている。
【0024】
本実施形態では、特定区間Zaの始端、すなわち特定区間Zaの上流端には、搬送車Vが特定区間Zaの手前で停止する場合の目安となる停止地点Psが設定されている。停止地点Psは、第1停止地点Ps1と第2停止地点Ps2とを含む。第1経路R1における第1接続部C1よりも上流側には、第1停止地点Ps1が設定されている。第2経路R2における第2接続部C2よりも上流側には、第2停止地点Ps2が設定されている。このように、本実施形態では、第1経路R1における第1接続部C1よりも上流側、及び第2経路R2における第2接続部C2よりも上流側のそれぞれに、搬送車Vが通過許可Sp(
図5等参照)を得られなかった場合に停止する停止地点Psが設定されている。
【0025】
本実施形態では、第1経路R1及び第2経路R2のそれぞれにおける停止地点Psよりも上流側に、搬送車Vがそれぞれの停止地点Psで停止するために減速走行する区間である減速区間Adが設定されている。搬送車Vが通過許可Spを得られずに停止地点Psで停止する場合には、減速区間Adにおいて減速走行をした後に停止地点Psで停止する。
【0026】
本実施形態では、減速区間Adに加えて等速区間Acが設定されている。すなわち、第1経路R1及び第2経路R2のそれぞれにおける停止地点Psよりも上流側に、搬送車Vがそれぞれの停止地点Psで停止するために等速走行する区間である等速区間Acが設定されている。搬送車Vが通過許可Spを得られずに停止地点Psで停止する場合には、等速区間Acでの等速走行および減速区間Adでの減速走行をした後に停止地点Psで停止する。停止地点Psに対して上流側に隣接する位置には減速区間Adが配置されるが、当該減速区間Adよりも更に上流側には、等速区間Acや他の減速区間Adが任意に配置されていてもよい。
【0027】
本実施形態では、減速区間Adは、第1減速区間Ad1と第2減速区間Ad2とを含む。
図3に示す例では、第1経路R1及び第2経路R2のそれぞれにおける停止地点Psよりも上流側に、搬送車Vがそれぞれの停止地点Psで停止するために減速走行する区間である第1減速区間Ad1と、第1減速区間Ad1の下流側に隣接して設定されて搬送車Vが等速走行する区間である等速区間Acと、等速区間Acの下流側に隣接して設定されて搬送車Vが停止地点Psに停止するまで減速走行する区間である第2減速区間Ad2と、が設定されている。そして、第2減速区間Ad2の下流側に隣接した位置に停止地点Psが設定されている。第2減速区間Ad2と停止地点Psとの間に、搬送車Vがクリープ走行(微速走行)するクリープ区間が設定されていてもよい。
【0028】
上述のように、区間制御装置Czは、特定区間Zaを通過させる搬送車Vに対して、通過許可Sp(
図5等参照)を与えるように構成されている。これにより、通過許可Spが得られた搬送車Vに特定区間Zaを通過させることができ、通過許可Spが得られなかった搬送車Vを特定区間Zaの上流側で停止させることができる。
【0029】
通過許可Spは、第1通過許可Sp1と第2通過許可Sp2とを含む(
図6~
図8参照。)。区間制御装置Czは、搬送車Vに第1通過許可Sp1を与えた場合には当該搬送車Vに第1通過地点Pp1を占有させる。区間制御装置Czは、搬送車Vに第2通過許可Sp2を与えた場合には当該搬送車Vに第2通過地点Pp2を占有させる。
【0030】
本実施形態では、区間制御装置Czから通過許可Spを得られた搬送車Vは、第1通過地点Pp1又は第2通過地点Pp2を通過した後、区間制御装置Czに対して占有解除要求Sn(
図5等参照)を行う。区間制御装置Czは、占有解除要求Snを受けた場合には、当該占有解除要求Snに係る通過地点Ppについて、当該占有解除要求Snを行った搬送車Vの占有を解除する。これにより、占有解除要求Snを受けた区間制御装置Czは、次の搬送車Vを特定区間Zaに受け入れ可能な状態となる。
【0031】
占有解除要求Snは、第1占有解除要求Sn1と第2占有解除要求Sn2とを含む。本実施形態では、搬送車Vは、第1通過地点Pp1の占有を解除する旨の第1占有解除要求Sn1(
図6等参照)を区間制御装置Czに対して行うように構成されている。また、搬送車Vは、第2通過地点Pp2の占有を解除する旨の第2占有解除要求Sn2(
図7等参照)を区間制御装置Czに対して行うように構成されている。例えば、搬送車Vは、第1通過地点Pp1を通過した後に、第1占有解除要求Sn1を行う。これにより、区間制御装置Czは、当該搬送車Vによる第1通過地点Pp1の占有を解除し、他の搬送車Vを受け入れ可能な状態となる。また、例えば、搬送車Vは、第2通過地点Pp2を通過した後に、第2占有解除要求Sn2を行う。これにより、区間制御装置Czは、当該搬送車Vによる第2通過地点Pp2の占有を解除し、他の搬送車Vを受け入れ可能な状態となる。なお、以下では、第1占有解除要求Sn1及び第2占有解除要求Sn2を、「占有解除要求Sn」と総称することがある。
【0032】
ここで、通過許可Spを与えた搬送車Vから区間制御装置Czへのその後の応答(本例では占有解除要求Sn)がない場合がある。通信不良や故障等を原因としてこのようなことが起こり得る。区間制御装置Czにとっては、搬送車Vからの応答がない場合には、当該搬送車Vの存否が不明の状態に陥る。
【0033】
そこで
図4に示すように、本実施形態では、区間制御装置Czは、通過許可Spを与えた搬送車Vからその後の応答(占有解除要求Sn)がない場合には、上位制御装置Ctに対して問い合わせSiを行う。本例では、区間制御装置Czは、搬送車Vに通過許可Spを与えた後、予め定められた規定期間が経過するまでに当該搬送車Vから応答(占有解除要求Sn)がない場合に、上位制御装置Ctに問い合わせSiを行う。この「規定期間」は、特定区間Zaでの搬送車Vの走行距離や当該搬送車Vの走行速度などに基づいて適宜定められる。
【0034】
本実施形態では、上位制御装置Ctは、区間制御装置Czから問い合わせSiがあった場合、特定区間Zaにおける搬送車Vの存否に基づいて、搬送車Vが第1通過地点Pp1又は第2通過地点Pp2を通過したか否かを判断する。本例では、問い合わせSiを受けた上位制御装置Ctは、搬送車Vから取得した当該搬送車Vの現在位置情報Ivに基づいて特定区間Zaにおける搬送車Vの存否を確認し、確認結果について区間制御装置Czに回答Saを行う。回答Saを受けた区間制御装置Czは、当該回答Saにより取得した特定区間Zaにおける搬送車Vの存否に基づいて、特定区間Zaにおける搬送車Vの制御を継続する。上記構成により、搬送車Vから区間制御装置Czへの応答がない場合であっても、区間制御装置Czと上位制御装置Ctとの協働により、特定区間Zaにおける搬送車Vの制御を、より一層適切に行うことができる。本例では、上位制御装置Ctは、区間制御装置Czから問い合わせSiがあった場合のみ、上記のように搬送車Vが第1通過地点Pp1又は第2通過地点Pp2を通過したか否かを判断する。このように必要な場合にのみ区間制御装置Czと上位制御装置Ctとを連携させることで、上位制御装置Ctの処理負荷を軽減しつつ、特定区間Zaにおける搬送車Vの制御を適切に行うことができる。
【0035】
以下、特定区間Zaにおける制御について詳細に説明する。
【0036】
図5に示すように、搬送車Vは、特定区間Za、詳細には通過地点Ppを通過しようとする場合には、通過の許可を求めるための通過許可要求Srを行う(ステップ#1)。本実施形態では、搬送車Vは、特定区間Za(詳細には第1接続部C1又は第2接続部C2)よりも上流側において、区間制御装置Czに対して通過許可要求Srを行う。
【0037】
区間制御装置Czは、通過許可要求Srを行った搬送車Vに特定区間Zaを通過させることが可能と判断した場合には、当該通過許可要求Srにかかる通過地点Ppを、当該通過許可要求Srを行った搬送車Vに占有させるために登録し(ステップ#2)、それと同時に、当該搬送車Vに対して通過許可Spを行う(ステップ#3)。なお、区間制御装置Czは、通過許可要求Srにかかる通過地点Ppが、通過許可要求Srを行った搬送車Vに対して先行する他の搬送車Vによって占有された占有状態であるか、占有されていない非占有状態であるかを判断する。区間制御装置Czは、通過地点Ppが非占有状態である場合には、通過許可要求Srを行った搬送車Vに当該通過地点Ppを通過させることが可能と判断する。本例では、区間制御装置Czは、各通過地点Ppが占有状態であるか非占有状態であるかの占有状態情報を記憶する記憶部Mを備えている(
図2参照)。区間制御装置Czは、記憶部Mに記憶された占有状態情報に基づいて、搬送車Vに対して通過許可Spを行う。また、区間制御装置Czは、特定区間Zaの状況に応じて、記憶部Mに記憶された占有状態情報を随時更新するように構成されている。
【0038】
通過許可Spを得られた搬送車Vは、特定区間Za、詳細には通過地点Ppを通過し(ステップ#4)、通過が完了した後は区間制御装置Czに対して占有解除要求Snを行う(ステップ#5)。但し、後述するように、搬送車Vは、通過地点Ppを通過する前に、区間制御装置Czに対して占有解除要求Snを行ってもよい。
【0039】
占有解除要求Snを受け取った区間制御装置Czは、当該占有解除要求Snを行った搬送車Vに占有させていた通過地点Ppの登録を解除する(ステップ#6)。これにより、登録解除を行った通過地点Ppが非占有状態となり、区間制御装置Czは、当該通過地点Ppに次の搬送車Vを受け入れ可能な状態となる。
【0040】
区間制御装置Czは、搬送車Vから占有解除要求Snを受け取った後、当該搬送車Vに対して、占有解除要求Snを受け取った旨の受領通知Stを行う。搬送車Vは、区間制御装置Czから受領通知Stを受け取ることにより、当該搬送車Vが行った占有解除要求Snが区間制御装置Czによって受け取られたことを認識することができる。例えば、通信不良などにより、搬送車Vが受領通知Stを受け取ることができなかった場合には、搬送車Vは、区間制御装置Czに対して占有解除要求Snを繰り返し行うことになる。
【0041】
本実施形態では、区間制御装置Czは、占有解除要求Snを行った搬送車Vに占有させていた通過地点Ppの登録を解除した後に(ステップ#6)、当該搬送車Vに対して受領通知Stを行う(ステップ#7)。但し、区間制御装置Czから搬送車Vへの受領通知Stは、通過地点Ppの登録が解除されたことが条件として行われるわけではなく、あくまでも、搬送車Vからの占有解除要求Snを区間制御装置Czが受け取ったことを条件として行われる。そのため、区間制御装置Czは、通過地点Ppの登録を解除する前に搬送車Vに対して受領通知Stを行ってもよいし、通過地点Ppの登録を解除した後に搬送車Vに対して受領通知Stを行ってもよい。
【0042】
なお、上記の通過許可要求Sr、通過許可Sp、占有解除要求Sn、及び受領通知Stのそれぞれは、信号として、区間制御装置Czと搬送車Vとの間で送受信される。例えば、通過許可要求Srは、通過要求信号として送受信される。通過許可Spは、通過許可信号として送受信される。占有解除要求Snは、占有解除要求信号として送受信される。受領通知Stは、受領通知信号として送受信される。
【0043】
図6~
図8は、搬送車Vが、区間制御装置Czの制御によって特定区間Zaを通過する例を示している。
図6は、搬送車Vが第1接続部C1を通って第1経路R1に沿って走行する場合を、例1として示している。
図7は、搬送車Vが第2接続部C2を通って第2経路R2に沿って走行する場合を、例2として示している。
図8は、搬送車Vが接続経路Rcを介して第1経路R1から第2経路R2を走行する場合を、例3として示している。
【0044】
〔例1〕
図6に示すように、搬送車Vは、第1接続部C1を通って第1経路R1に沿って走行する場合には、第1接続部C1よりも上流側において、第1通過地点Pp1を通過するための通過許可Spである第1通過許可Sp1を区間制御装置Czに求める。本例では、搬送車Vは、第1経路R1において第1停止地点Ps1よりも上流側を走行中に、区間制御装置Czに対して第1通過許可Sp1を求める。そして、搬送車Vは、第1通過許可Sp1が得られた場合には第1接続部C1を通過して第1通過地点Pp1へ向かい、第1通過許可Sp1が得られない場合には第1接続部C1よりも上流側で停止する。
【0045】
図6(a)に示すように、本実施形態では、搬送車Vは、第1通過地点Pp1を通過しようとする場合には、区間制御装置Czに対して第1通過許可要求Sr1を行う。搬送車Vから第1通過許可要求Sr1を受けた区間制御装置Czは、先行する他の搬送車Vによって当該第1通過地点Pp1が占有されているか否かを確認し、占有されていない場合には、第1通過許可要求Sr1を行った搬送車Vに第1通過地点Pp1を通過させることが可能と判断する。すなわち、区間制御装置Czは、第1通過地点Pp1が占有状態であるか非占有状態であるかを判断し、非占有状態である場合に、搬送車Vに第1通過地点Pp1を通過させることが可能と判断する。そして、区間制御装置Czは、第1通過許可要求Sr1を行った搬送車Vに対して第1通過許可Sp1を行う。
【0046】
本実施形態では、区間制御装置Czは、第1通過許可Sp1を搬送車Vに与えた場合には、当該第1通過許可Sp1にかかる第1通過地点Pp1を当該搬送車Vに占有させる。これにより、当該搬送車Vのために第1通過地点Pp1が占有状態となる。本例では、区間制御装置Czは、第1通過許可Sp1にかかる第1通過地点Pp1を搬送車Vに占有させるために、当該第1通過地点Pp1を登録する。これにより、区間制御装置Czは、他の搬送車Vを排斥し、当該他の搬送車Vが第1通過地点Pp1を通過できないようにする。
【0047】
図6(b)に示すように、本実施形態では、搬送車Vは、第1通過地点Pp1を通過した後、区間制御装置Czに対して第1占有解除要求Sn1を行う。区間制御装置Czは、搬送車Vから第1占有解除要求Sn1を受け取った後、当該第1占有解除要求Sn1にかかる第1通過地点Pp1について当該搬送車Vによる占有を解除する。これにより、第1通過地点Pp1が非占有状態となる。本例では、第1占有解除要求Sn1を受け取った区間制御装置Czは、当該第1占有解除要求Sn1を行った搬送車Vに占有させていた第1通過地点Pp1の登録を解除する。これにより、第1通過地点Pp1について、搬送車Vによる占有が解除され、他の搬送車Vを受け入れ可能な状態となる。
【0048】
〔例2〕
図7に示すように、搬送車Vは、第2接続部C2を通って第2経路R2に沿って走行する場合には、第2接続部C2よりも上流側において、第2通過地点Pp2を通過するための通過許可Spである第2通過許可Sp2を区間制御装置Czに求める。本例では、搬送車Vは、第2経路R2において第2停止地点Ps2よりも上流側を走行中に、区間制御装置Czに対して第2通過許可Sp2を求める。そして、搬送車Vは、第2通過許可Sp2が得られた場合には第2接続部C2を通過して第2通過地点Pp2へ向かい、第2通過許可Sp2が得られない場合には第2接続部C2よりも上流側で停止する。
【0049】
図7(a)に示すように、本実施形態では、搬送車Vは、第2通過地点Pp2を通過しようとする場合には、区間制御装置Czに対して第2通過許可要求Sr2を行う。搬送車Vから第2通過許可要求Sr2を受けた区間制御装置Czは、先行する他の搬送車Vによって当該第2通過地点Pp2が占有されているか否かを確認し、占有されていない場合には、第2通過許可要求Sr2を行った搬送車Vに第2通過地点Pp2を通過させることが可能と判断する。すなわち、区間制御装置Czは、第2通過地点Pp2が占有状態であるか非占有状態であるかを判断し、非占有状態である場合に、搬送車Vに第2通過地点Pp2を通過させることが可能と判断する。そして、区間制御装置Czは、第2通過許可要求Sr2を行った搬送車Vに対して第2通過許可Sp2を行う。
【0050】
本実施形態では、区間制御装置Czは、第2通過許可Sp2を搬送車Vに与えた場合には、当該第2通過許可Sp2にかかる第2通過地点Pp2を当該搬送車Vに占有させる。これにより、当該搬送車Vのために第2通過地点Pp2が占有状態となる。本例では、区間制御装置Czは、第2通過許可Sp2にかかる第2通過地点Pp2を搬送車Vに占有させるために、当該第2通過地点Pp2を登録する。これにより、区間制御装置Czは、他の搬送車Vを排斥し、当該他の搬送車Vが第2通過地点Pp2を通過できないようにする。
【0051】
図7(b)に示すように、本実施形態では、搬送車Vは、第2通過地点Pp2を通過した後、区間制御装置Czに対して第2占有解除要求Sn2を行う。区間制御装置Czは、搬送車Vから第2占有解除要求Sn2を受け取った後、当該第2占有解除要求Sn2にかかる第2通過地点Pp2について当該搬送車Vによる占有を解除する。これにより、第2通過地点Pp2が非占有状態となる。本例では、第2占有解除要求Sn2を受け取った区間制御装置Czは、当該第2占有解除要求Sn2を行った搬送車Vに占有させていた第2通過地点Pp2の登録を解除する。これにより、第2通過地点Pp2について、搬送車Vによる占有が解除され、他の搬送車Vを受け入れ可能な状態となる。
【0052】
〔例3〕
図8に示すように、搬送車Vは、第1経路R1又は第2経路R2から接続経路Rcを走行する場合には、第1接続部C1又は第2接続部C2よりも上流側において、第1通過許可Sp1及び第2通過許可Sp2の双方を区間制御装置Czに求める。区間制御装置Czは、第1経路R1又は第2経路R2から接続経路Rcへの走行の許可が搬送車Vから求められた場合には、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2の双方が先行する他の搬送車Vによって占有されていない非占有状態であることを条件として、第1経路R1又は第2経路R2から接続経路Rcへの搬送車Vの走行を許可すると共に、走行を許可した当該搬送車Vに第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2の双方を占有させる。
【0053】
図8(a)に例示するように、搬送車Vは、第1経路R1から接続経路Rcを走行して第2通過地点Pp2を通過しようとする場合には、区間制御装置Czに対して第1通過許可要求Sr1及び第2通過許可要求Sr2の双方を行う。搬送車Vから第1通過許可要求Sr1及び第2通過許可要求Sr2の双方を受けた区間制御装置Czは、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2の双方が、先行する他の搬送車Vによって占有されているか否かを確認し、占有されていない場合には、第1通過許可要求Sr1及び第2通過許可要求Sr2の双方を行った搬送車Vに対して、第1通過許可Sp1及び第2通過許可Sp2の双方を与える。なお、搬送車Vが、第2経路R2から接続経路Rcを走行して第1通過地点Pp1を通過しようとする場合についても同様である。すなわちこの場合にも、搬送車Vは、区間制御装置Czに対して第1通過許可要求Sr1及び第2通過許可要求Sr2の双方を行う。そして、区間制御装置Czは、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2の双方が非占有状態であることを条件として、第1通過許可要求Sr1及び第2通過許可要求Sr2の双方を行った搬送車Vに対して、第1通過許可Sp1及び第2通過許可Sp2の双方を与える。
【0054】
図8(b)に例示するように、搬送車Vは、第1経路R1から接続経路Rcを走行して第2経路R2における第2通過地点Pp2を通過した後、区間制御装置Czに対して第1占有解除要求Sn1及び第2占有解除要求Sn2の双方を行う。本実施形態では、区間制御装置Czは、当該搬送車Vから第1占有解除要求Sn1及び第2占有解除要求Sn2の双方を受け取った後、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2のそれぞれについて当該搬送車Vによる占有を解除する。これにより、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2のそれぞれが非占有状態となる。本例では、第1占有解除要求Sn1及び第2占有解除要求Sn2の双方を受け取った区間制御装置Czは、第1占有解除要求Sn1、及び第2占有解除要求Sn2の双方を行った搬送車Vに占有させていた第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2のそれぞれの登録を解除する。これにより、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2のそれぞれについて、搬送車Vによる占有が解除され、他の搬送車Vを受け入れ可能な状態となる。なお、搬送車Vは、第2経路R2から接続経路Rcを走行して第1経路R1における第1通過地点Pp1を通過した後についても同様に、区間制御装置Czに対して第1占有解除要求Sn1、及び第2占有解除要求Sn2を行う。そして、区間制御装置Czは、当該搬送車Vから第1占有解除要求Sn1及び第2占有解除要求Sn2の双方を受け取った後、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2のそれぞれについて当該搬送車Vによる占有を解除する。
【0055】
このように、搬送車Vは、分岐合流箇所を第1経路R1に沿って走行する場合には第1通過地点Pp1の通過の許可である第1通過許可Sp1のみを区間制御装置Czに求め、分岐合流箇所を第2経路R2に沿って走行する場合には第2通過地点Pp2の通過の許可である第2通過許可Sp2のみを区間制御装置Czに求める。区間制御装置Czは、許可を求められた通過地点Ppが非占有状態であることを条件として、許可を求めた搬送車Vに対して当該通過地点Ppを占有させる。このような構成により、複数の搬送車Vがそれぞれ接続経路Rcを通行せずに第1経路R1又は第2経路R2を走行する場合には、それら複数の搬送車Vに第1経路R1と第2経路R2とを同時に走行させることができる。そのため、特定区間Za全体で搬送車Vの通過の認否を判断する場合に比べて、特定区間Zaにおける搬送車Vの通行を効率的に行うことが可能となる。
【0056】
そして、搬送車Vは、接続経路Rcを通って、自らが走行する経路を第1経路R1と第2経路R2との間で変更する場合には、第1通過地点Pp1又は第2通過地点Pp2を通過することになり、区間制御装置Czに対して、第1通過許可Sp1及び第2通過許可Sp2の双方を求める。この場合、区間制御装置Czは、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2の双方が非占有状態であることを条件として、許可を求めた搬送車Vの走行を許可すると共に当該搬送車に第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2の双方を占有させる。このような構成により、特定区間Zaにおいて複数の搬送車Vが互いに干渉することを回避し易い。
【0057】
より詳細に説明すると、本実施形態では、区間制御装置Czは、搬送車Vに対して通過許可Spを与えた後は、当該搬送車Vから占有解除要求Snを受けるまで、当該搬送車Vの位置を把握できない構成となっている。そのため、例えば、第1経路R1から接続経路Rcを通って第2経路R2を走行する予定の搬送車Vが、区間制御装置Czから通過許可Spを得られた後に、何らかの理由により途中で停止した場合であっても、区間制御装置Czは搬送車Vの停止位置を把握することはできない。搬送車Vの停止位置が、第1接続部C1上、或いは第1接続部C1よりも上流側の第1経路R1上である場合には、後続の他の搬送車Vに第1経路R1を走行させると、停止した搬送車Vと干渉することになる。また、搬送車Vの停止位置が、接続経路Rcにおける第1接続部C1に近い位置である場合にも、後続の他の搬送車Vと停止した搬送車Vとが干渉し得る。従って、搬送車Vが接続経路Rcを通ることにより、第1経路R1及び第2経路R2の双方に関与する場合には、目的の通過地点Ppが第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2の何れか一方であっても、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2の双方を占有する必要がある。本構成によれば、上記の場合には、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2の双方を搬送車Vに占有させるため、当該搬送車Vが途中で停止するような事態が起きても、後続の他の搬送車Vを停止地点Psで停止させておくことができる。従って、複数の搬送車Vが干渉することを回避できる。
【0058】
次に、搬送車Vが、自らの走行距離に基づいて、区間制御装置Czに対して占有解除要求Snを行う例について説明する。すなわち、以下に説明する例では、占有解除要求Snは、搬送車Vが通過地点Ppを通過したかどうかにかかわらず行われることになる。
【0059】
図9に示すように、搬送車Vは、自らの走行距離を検出する走行距離検出部10を備えている。例えば、走行距離検出部10は、車輪の回転に基づいて走行距離を検出するように構成されている。このような走行距離検出部10として、ロータリエンコーダ等の公知の装置を用いることができる。詳細は省略するが、走行経路Rにおける特定の地点(ここでは、複数の地点)に、情報保持体が設置されている。情報保持体は、例えば、走行経路Rを構成するレール、又は、当該レールに対する位置が固定された部材に設置される。情報保持体として、1次元コード、2次元コード、無線タグ等が例示される。情報保持体は、当該情報保持体の設置位置の情報(位置情報)を保持している。搬送車Vは、情報保持体が保持している位置情報を読み取る読取装置を備えており、当該読取装置により読み取った位置情報に基づいて自身の走行位置を認識するように構成されている。
【0060】
本実施形態では、搬送車Vは、前方の他の搬送車Vを検出する検出センサ20を備えている。検出センサ20は、当該検出センサ20が搭載された搬送車Vの前方の範囲を検出範囲X(
図10等参照)としており、検出範囲Xにいる前方の他の搬送車Vを検出するように構成されている。検出センサ20によって前方の他の搬送車Vが検出された場合、当該検出センサ20が搭載された搬送車Vは、減速あるいは停止するなどして、前方の他の搬送車Vに追突することを回避する。すなわち、検出センサ20は、追突防止センサとして構成されている。
【0061】
本実施形態では、第1停止地点Ps1からの走行距離として、第1設定距離D1と、第1設定距離D1よりも長い第2設定距離D2と、が予め設定されている。このように、第1設定距離D1と第2設定距離D2とは、異なる値に設定されている。例えば、第1停止地点Ps1に設置された情報保持体の位置情報が搬送車Vによって読み取られてからの搬送車Vの走行距離が、第1停止地点Ps1からの走行距離となる。また、第1停止地点Ps1とは別の地点に設置された情報保持体の位置情報が搬送車Vによって読み取られてからの搬送車Vの走行距離に、第1停止地点Ps1と上記別の地点との距離を加算又は減算した距離が、第1停止地点Ps1からの走行距離となる。
【0062】
第1通過許可Sp1及び第2通過許可Sp2の双方を与えられて第2通過地点Pp2を通過しようとする搬送車Vは、第1停止地点Ps1からの走行距離が第1設定距離D1となった場合に、第1通過地点Pp1の占有を解除する旨の第1占有解除要求Sn1を区間制御装置Czに対して行うように構成されている。また、同搬送車Vは、第1停止地点Ps1からの走行距離が第2設定距離D2となった場合に、第2通過地点Pp2の占有を解除する旨の第2占有解除要求Sn2を区間制御装置Czに対して行うように構成されている。換言すれば、第1通過許可Sp1及び第2通過許可Sp2の双方を与えられて第2通過地点Pp2を通過しようとする搬送車Vは、まず第1占有解除要求Sn1を行い、そこから走行を継続した後、第2占有解除要求Sn2を行う。このように、搬送車Vは、段階的に複数の占有解除要求Snを区間制御装置Czに対して行うように構成されている。
【0063】
本実施形態では、搬送車Vは、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2よりも上流側において占有解除要求Snを行うように構成されている。これにより、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2の占有の解除を早期に行うことができ、他の後続の搬送車Vが、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2に対する通過許可Spを早期に得られるようになる。
【0064】
第1設定距離D1及び第2設定距離D2は、設備のレイアウト、又は搬送車Vの機能や構造に基づいて適宜設定される。以下、第1設定距離D1及び第2設定距離D2を設定する条件の例について説明する。なお、以下では、内容の理解を容易にするため、先行の搬送車Vを第1搬送車V1とし、それに後続する搬送車Vを第2搬送車V2とする。
【0065】
図10は、第1設定距離D1を設定する条件の一例を示している。
【0066】
図10に示すように、本実施形態では、第1停止地点Ps1から第1設定距離D1だけ走行した接続経路Rc上の地点にいる先行の第1搬送車V1が、第1経路R1を直進する後続の第2搬送車V2の検出センサ20による検出範囲Xの軌跡Txよりも外側となるように、第1設定距離D1が設定されている。
【0067】
第1経路R1を直進する後続の第2搬送車V2の検出センサ20による検出範囲Xの軌跡Txとは、後続の第2搬送車V2が第1経路R1を直進した場合に、検出センサ20の検出範囲Xが描くことが予想される軌跡である。
【0068】
本実施形態では、検出センサ20による検出範囲Xは、当該検出センサ20が搭載された搬送車Vの車体よりも、少なくとも経路幅方向(走行経路Rの延在方向に対して平面視で直交する方向)に沿って広い範囲に設定されている。従って、検出センサ20による検出範囲Xの軌跡Txは、当該検出センサ20が搭載された搬送車Vの走行軌跡よりも、少なくとも経路幅方向に沿って大きくなる。
【0069】
先行の第1搬送車V1は、第1停止地点Ps1から第1設定距離D1だけ走行すると、第1経路R1を直進する後続の第2搬送車V2の検出センサ20による検出範囲Xの軌跡Txよりも外側に位置する。そのため、例えば、先行の第1搬送車V1が、第1停止地点Ps1から第1設定距離D1だけ走行して第1占有解除要求Sn1を行った直後に故障等により停止した場合であっても、第1経路R1を直進する後続の第2搬送車V2が当該第1搬送車V1を検知することがない。従って、後続の第2搬送車V2の走行を妨げないようにできる。
【0070】
先行の第1搬送車V1が第1占有解除要求Sn1を行うことによって、当該第1搬送車V1による第1通過地点Pp1の占有が解除される。そのため、後続の第2搬送車V2は、第1通過許可Sp1を区間制御装置Czに対して行って第1通過地点Pp1を占有できるようになる。なお、先行の第1搬送車V1の第1停止地点Ps1からの走行距離が、未だ第2設定距離D2に満たっていない状態では、第2通過地点Pp2は、当該第1搬送車V1によって占有された状態のままである。
【0071】
図11は、第2設定距離D2を設定する条件の一例を示している。
図11は、
図10とは異なる状況を示している。
【0072】
図11に示すように、本実施形態では、第1停止地点Ps1から第2設定距離D2だけ走行した接続経路Rc上の地点にいる先行の第1搬送車V1が、第2経路R2を直進する後続の第2搬送車V2の検出センサ20による検出範囲Xの軌跡Txに含まれるように、第2設定距離D2が設定されている。
【0073】
第2経路R2を直進する後続の第2搬送車V2の検出センサ20による検出範囲Xの軌跡Txとは、後続の第2搬送車V2が第2経路R2を直進した場合に、検出センサ20の検出範囲Xが描くことが予想される軌跡である。
【0074】
先行の第1搬送車V1は、第1停止地点Ps1から第2設定距離D2だけ走行すると、第2経路R2を直進する後続の第2搬送車V2の検出センサ20による検出範囲Xの軌跡Txの内部に位置する。図示の例では、第1搬送車V1の一部が、後続の第2搬送車V2の検出センサ20による検出範囲Xの軌跡Txの内部に位置している。なお、上述もしたように、検出センサ20による検出範囲Xの軌跡Txとは、第2搬送車V2が走行した場合に検出センサ20の検出範囲Xが描くことが予想される軌跡である。従って、
図11に示す状態において、先行の第1搬送車V1は、後続の第2搬送車V2の検出センサ20の検出範囲Xがこれから描くことが予想される軌跡Txの内部に位置している。
図11に示す時点において、先行の第1搬送車V1は、当該検出範囲Xの内部に実際に位置しているわけではない。
【0075】
上記構成により、例えば先行の第1搬送車V1が第2占有解除要求Sn2を行った後に停止した場合であっても、第2経路R2を走行する後続の第2搬送車V2の検出センサ20によって、停止した先行の第1搬送車V1を検出することができる。上述したように、検出センサ20によって前方の他の搬送車Vが検出された場合には、当該検出センサ20が搭載された搬送車Vは、減速または停止する。従って、後続の第2搬送車V2が先行の第1搬送車V1に干渉することを適切に回避することができる。
【0076】
ここで、上述のように、本実施形態では、先行の第1搬送車V1は、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2よりも上流側において占有解除要求Snを行う。これにより、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2の占有の解除を早期に行うことができ、後続の第2搬送車V2が、第1通過地点Pp1及び第2通過地点Pp2に対する通過許可Spを早期に得られるようになる。そのため、先行の第1搬送車V1が未だ第1通過地点Pp1を通過していないにもかかわらず、当該第1通過地点Pp1が後続の第2搬送車V2によって占有され得る。また、先行の第1搬送車V1が未だ第2通過地点Pp2を通過していないにもかかわらず、当該第2通過地点Pp2が後続の第2搬送車V2によって占有され得る。
【0077】
そこで、本実施形態では、先行の第1搬送車V1が通過地点Ppを通過する前に当該通過地点Ppに関する占有解除要求Snを行い、第1搬送車V1による当該通過地点Ppの占有が解除された場合に、区間制御装置Czは、当該通過地点Ppの通過許可Spを後続の第2搬送車V2に与えることができると共に、先行の第1搬送車V1が当該通過地点Ppを通過することを許容するように構成されている。これにより、通過地点Ppの占有を後続の第2搬送車V2に譲る形となった先行の第1搬送車V1は、問題なく当該通過地点Ppを通過することが可能となる。
【0078】
図12~
図14には、先行の第1搬送車V1が第2通過地点Pp2を通過する前に、後続の第2搬送車V2が当該第2通過地点Pp2を占有する例が示されている。
【0079】
本実施形態では、先行の第1搬送車V1が、第2通過地点Pp2を通過する前に第2占有解除要求Sn2を行うことにより、先行の第1搬送車V1による第2通過地点Pp2の占有が解除された場合に、区間制御装置Czは、第2通過許可Sp2を後続の第2搬送車V2に与えることが可能であると共に、第2占有解除要求Sn2を行った先行の第1搬送車V1が第2通過地点Pp2を通過することを許容する。
【0080】
以下、説明を加える。
図12に示すように、先行の第1搬送車V1は、第1停止地点Ps1から第2設定距離D2だけ走行すると、区間制御装置Czに対して第2占有解除要求Sn2を行う。これにより、区間制御装置Czは、先行の第1搬送車V1による第2通過地点Pp2の占有を解除する。この時点において、先行の第1搬送車V1は、第2通過地点Pp2よりも上流側にいる。
【0081】
図13に示すように、後続の第2搬送車V2は、第2通過地点Pp2の通過の許可を求める第2通過許可要求Sr2を、区間制御装置Czに対して行う。上述のように、先行の第1搬送車V1による第2通過地点Pp2の占有は解除された後であるため、区間制御装置Czは、当該第2通過地点Pp2の占有を後続の第2搬送車V2に対して許可することができる。これにより、
図13の時点において、第2通過地点Pp2が、後続の第2搬送車V2によって占有される。このとき、先行の第1搬送車V1は、未だ、第2通過地点Pp2よりも上流側にいる。
【0082】
図14に示すように、第2通過地点Pp2は後続の第2搬送車V2によって占有されている。そのため、通常であれば、他の搬送車Vによる第2通過地点Pp2の通過は排斥される。しかしながら、区間制御装置Czは、当該他の搬送車Vが、第2占有解除要求Sn2を行った先行の第1搬送車V1であることを条件として、当該先行の第1搬送車V1による第2通過地点Pp2の通過は許容する。このような構成により、後続の第2搬送車V2に第2通過許可Sp2を与えつつ、先行の第1搬送車V1による第2通過地点Pp2の通過を妨げないようにできる。
【0083】
〔その他の実施形態〕
次に、物品搬送設備のその他の実施形態について説明する。
【0084】
(1)上記の実施形態では、第1停止地点Ps1から第1設定距離D1だけ走行した接続経路Rc上の地点にいる先行の第1搬送車V1が、第1経路R1を直進する後続の第2搬送車V2の検出センサ20による検出範囲Xの軌跡Txよりも外側となるように、第1設定距離D1が設定されている例(
図10参照)について説明した。しかし、このような例に限定されることはない。
図15に示すように、第1停止地点Ps1から第1設定距離D1だけ走行した接続経路Rc上の地点にいる先行の第1搬送車V1が、第1経路R1を直進する後続の第2搬送車V2の走行軌跡Tvよりも外側となるように、第1設定距離D1が設定されていてもよい。第1経路R1を直進する後続の第2搬送車V2の走行軌跡Tvとは、後続の第2搬送車V2が第1経路R1を直進した場合に、当該第2搬送車V2が描くことが予想される軌跡である。走行軌跡Tvは、搬送車Vの車体の大きさ、及び、搬送車Vの走行方向に依存する。上記構成の場合、搬送車Vは、検出センサ20を備えていなくてもよい。
【0085】
(2)上記の実施形態では、第1停止地点Ps1から第1設定距離D1だけ走行した接続経路Rc上の地点にいる先行の第1搬送車V1が、第1経路R1を直進する後続の第2搬送車V2の検出センサ20による検出範囲Xの軌跡Txよりも外側となるように、第1設定距離D1が設定されている例(
図10参照)について説明した。しかし、このような例に限定されることはない。例えば
図16は、第1経路R1を走行する先行の第1搬送車V1が第1通過地点Pp1を通過しようとし、第1経路R1を走行する後続の第2搬送車V2が第1接続部C1で分岐して接続経路Rcを走行しようとする場合を示している。この場合において、先行の第1搬送車V1は、第1接続部C1よりも下流側であって第1接続部C1を通過する後続の第2搬送車V2の走行軌跡Tvよりも外側の位置で、第1通過地点Pp1の占有を解除する旨の第1占有解除要求Sn1を区間制御装置Czに対して行う。すなわち、第1停止地点Ps1から第1設定距離D1だけ第1経路R1を走行した地点にいる先行の第1搬送車V1が、第1接続部C1よりも下流側であって第1接続部C1を通過する後続の第2搬送車V2の走行軌跡Tvよりも外側の位置となるように、第1設定距離D1が設定されていてもよい。これにより、例えば第1占有解除要求Sn1を行った先行の第1搬送車V1が第1経路R1の途中で停止した場合であっても、第1接続部C1を通過して接続経路Rcを走行する後続の第2搬送車V2が、停止した先行の第1搬送車V1と干渉することを回避できる。
【0086】
(3)上記の実施形態では、第1設定距離D1と第2設定距離D2とが異なる値に設定されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、第1設定距離D1と第2設定距離D2とは、設備のレイアウト等に応じて適宜設定され、例えば、同じ値に設定されていてもよい。
【0087】
(4)上記の実施形態では、第1経路R1と第2経路R2と接続経路Rcとが、平面視でN字状を成す経路となっている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、互いに並行状に配置された第1経路R1及び第2経路R2のそれぞれに対して、平面視で直交するように接続経路Rcが配置されていてもよい。この場合、第1経路R1と第2経路R2と接続経路Rcとが、平面視でH字状を成す経路となる。更に、上記のような例に限定されることなく、特定区間Zaは任意に設定することができ、接続経路Rcが第1経路R1及び第2経路R2のそれぞれに対して交わる部分であれば、走行経路Rにおける何れの部分が特定区間Zaとされていてもよい。また、例えば
図17~
図19に示すように、接続経路Rcが、第1経路R1及び第2経路R2のそれぞれに対して任意の角度で交わっていてもよいし、3つの経路の少なくとも1つが湾曲していてもよい。また、複数の接続経路Rcが、第1経路R1及び第2経路R2に対して接続されていてもよい。例えば
図19に示すように、走行経路Rにおける複数のベイ(工程内経路)が接続される部分(工程間経路)に、上記のような構成の特定区間Zaが設定されていてもよい。
【0088】
(5)上記の実施形態では、走行経路Rにおける停止地点Psよりも上流側に、減速区間Adに加えて、等速区間Acが設定されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、等速区間Acは設定されていなくてもよい。この場合には、停止地点Psに対して上流側に隣接する位置に、連続した減速区間Adが設定されているとよい。
【0089】
(6)上記の実施形態では、区間制御装置Czが、通過許可要求Srにかかる通過地点Ppを、当該通過許可要求Srを行った搬送車Vに占有させるために登録するのと同時に、当該搬送車Vに対して通過許可Spを行う例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、区間制御装置Czによる通過地点Ppの登録と搬送車Vへの通過許可Spとは、時間的に前後していてもよい。この場合、通過地点Ppの登録を先に行い、搬送車Vへの通過許可Spを後に行ってもよい。或いは、それとは反対に、搬送車Vへの通過許可Spを先に行い、通過地点Ppの登録を後に行ってもよい。
【0090】
(7)上記の実施形態では、通過許可要求Sr、通過許可Sp、及び占有解除要求Snのそれぞれが、信号として、区間制御装置Czと搬送車Vとの間で送受信される例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、上記の各信号は、上位制御装置Ctを介して、区間制御装置Czと搬送車Vとの間で送受信されてもよい。
【0091】
(8)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0092】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品搬送設備について説明する。
【0093】
物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車が走行する走行経路と、
前記走行経路のうちの特定の区間である特定区間を走行する前記搬送車に通過許可を与えて当該搬送車の制御を行う区間制御装置と、を備えた物品搬送設備であって、
前記特定区間には、互いに交差しない第1経路及び第2経路と、前記第1経路における第1接続部と前記第2経路における第2接続部とを接続する接続経路と、が含まれ、
前記第1経路及び前記第2経路のそれぞれは、上流側から下流側へ向かって一方向に前記搬送車が走行する経路であり、
前記第1経路における前記第1接続部よりも下流側に、第1通過地点が設定され、
前記第2経路における前記第2接続部よりも下流側に、第2通過地点が設定され、
前記第1経路における前記第1接続部よりも上流側に、前記搬送車が前記通過許可を得られなかった場合に停止する第1停止地点が設定され、
前記通過許可は、第1通過許可と第2通過許可とを含み、
前記区間制御装置は、
前記搬送車に前記第1通過許可を与えた場合には当該搬送車に前記第1通過地点を占有させ、
前記搬送車に前記第2通過許可を与えた場合には当該搬送車に前記第2通過地点を占有させ、
前記搬送車は、前記第1経路又は前記第2経路から前記接続経路へ走行しようとする場合には、前記第1通過許可及び前記第2通過許可の双方を前記区間制御装置に求め、
前記区間制御装置は、前記第1通過許可及び前記第2通過許可の双方が前記搬送車から求められた場合には、前記第1通過地点及び前記第2通過地点の双方が先行する他の前記搬送車によって占有されていない非占有状態であることを条件として、前記第1通過許可及び前記第2通過許可の双方を求めた前記搬送車に前記第1通過地点及び前記第2通過地点の双方を占有させ、
前記搬送車は、自らの走行距離を検出する走行距離検出部を備え、
前記第1停止地点からの前記走行距離として、第1設定距離と、第2設定距離と、が予め設定されており、
前記第1通過許可及び前記第2通過許可の双方を与えられて前記第2通過地点を通過しようとする前記搬送車は、
前記第1停止地点からの前記走行距離が前記第1設定距離となった場合に、前記第1通過地点の占有を解除する旨の第1占有解除要求を前記区間制御装置に対して行い、
前記第1停止地点からの前記走行距離が前記第2設定距離となった場合に、前記第2通過地点の占有を解除する旨の第2占有解除要求を前記区間制御装置に対して行う。
【0094】
上記のような特定区間では、第1経路と第2経路とが互いに交差しないため、接続経路を通行する搬送車が存在しない場合には、第1経路と第2経路とをそれぞれ別の搬送車が同時に通行することが可能である。本構成によれば、第1経路に設けられた第1通過地点と第2経路に設けられた第2通過地点とで、搬送車の通行の認否を個別に判断することができる。従って、複数の搬送車がそれぞれ接続経路を通行せずに第1経路又は第2経路を通行する場合には、それら複数の搬送車に第1経路と第2経路とを同時に走行させることができる。そのため、特定区間全体で搬送車の通行の認否を判断する場合に比べて、特定区間における搬送車の通行を効率的に行うことが可能となる。一方、搬送車が接続経路を介して第1経路から第2経路へ走行或いは第2経路から第1経路へ走行する場合には、区間制御装置は、第1通過地点及び第2通過地点の双方が他の搬送車によって占有されていない非占有状態であることを条件として、搬送車の走行を許可すると共に、走行を許可した当該搬送車に第1通過地点及び第2通過地点の双方を占有させる。これにより、特定区間において複数の搬送車が互いに干渉することを回避できる。以上により、複数の搬送車が互いに干渉することを回避しつつ、物品搬送設備の全体としての搬送効率を高めることができる。
また、本構成によれば、搬送車は、通過地点よりも上流側で占有解除要求を行うことができ、その場合には通過地点の占有の解除を早期に行うことができる。これにより、他の搬送車が、当該通過地点に対する通過許可を早期に得られるようになる。従って、特定区間における複数の搬送車の走行を円滑にすることができる。また、本構成によれば、搬送車が、走行距離検出部により検出された走行距離に基づいて占有解除要求を行うため、占有解除要求を行う基準となる地点を表すマーカ等の部材を走行経路に沿って設置する必要がない。よって、物品搬送設備の簡素化を図り易い。
【0095】
前記搬送車は、前方の他の前記搬送車を検出する検出センサを備え、
前記第1停止地点から前記第1設定距離だけ走行した前記接続経路上の地点にいる先行の前記搬送車が、前記第1経路を直進する後続の前記搬送車の前記検出センサによる検出範囲の軌跡よりも外側となるように、前記第1設定距離が設定されている、と好適である。
【0096】
本構成によれば、例えば先行搬送車が第1占有解除要求を行った後に接続経路の途中で停止した場合であっても、第1経路を走行する後続搬送車の検出センサの検出範囲内に先行搬送車が入ることがない。従って、このような場合であっても後続搬送車が第1経路を支障なく走行することができる。
【0097】
前記第1停止地点から前記第1設定距離だけ走行した前記接続経路上の地点にいる先行の前記搬送車が、前記第1経路を直進する後続の前記搬送車の走行軌跡よりも外側となるように、前記第1設定距離が設定されている、と好適である。
【0098】
本構成によれば、例えば先行搬送車が第1占有解除要求を行った後に接続経路の途中で停止した場合であっても、第1経路を走行する後続搬送車が先行搬送車に干渉することを回避できる。従って、このような場合であっても後続搬送車が第1経路を支障なく走行することができる。
【0099】
前記搬送車は、前方の他の前記搬送車を検出する検出センサを備え、
前記第1停止地点から前記第2設定距離だけ走行した前記接続経路上の地点にいる先行の前記搬送車が、前記第2経路を直進する後続の前記搬送車の前記検出センサによる検出範囲の軌跡に含まれるように、前記第2設定距離が設定されている、と好適である。
【0100】
本構成によれば、例えば先行搬送車が第2占有解除要求を行った後に停止した場合であっても、第2経路を走行する後続搬送車の検出センサによって、停止した先行搬送車を検出することができる。この場合、後続搬送車は、停止するなどの対応をとることができる。これにより、後続搬送車が先行搬送車に干渉することを回避できる。
【0101】
先行の前記搬送車が、前記第2通過地点を通過する前に前記第2占有解除要求を行うことにより、先行の前記搬送車による前記第2通過地点の占有が解除された場合に、
前記区間制御装置は、前記第2通過許可を求めた後続の前記搬送車に前記第2通過許可を与える、と好適である。
【0102】
本構成によれば、早期に後続の搬送車に第2通過許可を与え易い。
【0103】
前記第1経路を走行する先行の前記搬送車が前記第1通過地点を通過しようとし、前記第1経路を走行する後続の前記搬送車が前記第1接続部で分岐して前記接続経路を走行しようとする場合において、
先行の前記搬送車は、前記第1接続部よりも下流側であって前記第1接続部を通過する後続の前記搬送車の走行軌跡よりも外側の位置で、前記第1占有解除要求を前記区間制御装置に対して行う、と好適である。
【0104】
本構成によれば、例えば第1占有解除要求を行った先行の搬送車が第1経路の途中で停止した場合であっても、第1接続部を通過して接続経路を走行する後続の搬送車が、停止した先行の搬送車と干渉することを回避できる。従って、このような場合であっても後続搬送車が接続経路を支障なく走行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本開示に係る技術は、物品を搬送する搬送車と、前記搬送車が走行する走行経路と、前記走行経路のうちの特定の区間である特定区間を走行する前記搬送車に通過許可を与えて当該搬送車の制御を行う区間制御装置と、を備えた物品搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0106】
100 :物品搬送設備
V :搬送車
10 :走行距離検出部
20 :検出センサ
X :検出範囲
Tx :検出範囲の軌跡
Tv :走行軌跡
C1 :第1接続部
C2 :第2接続部
Cz :区間制御装置
Za :特定区間
R :走行経路
R1 :第1経路
R2 :第2経路
Rc :接続経路
D1 :第1設定距離
D2 :第2設定距離
Pp :通過地点
Pp1 :第1通過地点
Pp2 :第2通過地点
Ps :停止地点
Ps1 :第1停止地点
Sp :通過許可
Sp1 :第1通過許可
Sp2 :第2通過許可
Sn :占有解除要求
Sn1 :第1占有解除要求
Sn2 :第2占有解除要求