(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131093
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】再生樹脂の製造方法、ペレットの製造方法、及び再生用原料フィルムの脱臭方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20240920BHJP
C08J 11/06 20060101ALI20240920BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20240920BHJP
B29K 67/00 20060101ALN20240920BHJP
B29K 77/00 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
B29B17/02
C08J11/06 ZAB
B29K23:00
B29K67:00
B29K77:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041144
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 貢平
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 朱里
(72)【発明者】
【氏名】亀山 裕
(72)【発明者】
【氏名】和田 知也
(72)【発明者】
【氏名】大崎 和友
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA22
4F401AA24
4F401AD01
4F401AD07
4F401CA03
4F401CA30
4F401CA91
4F401CB06
4F401FA20Z
(57)【要約】
【課題】包装容器の破砕物から香料を含む揮発性成分を減少させること、すなわち、包装容器に含まれる樹脂を溶融、混練及び成形する前に、樹脂に含まれる揮発性成分の含有量を低減することができ、かつ、揮発性成分の含有量が十分に低減された再生樹脂を得ることができる再生樹脂の製造方法、ペレットの製造方法、及び、再生用原料フィルムの脱臭方法に関する。
【解決手段】下記揮発性成分除去工程を有する、再生樹脂の製造方法、ペレットの製造方法、及び、再生用原料フィルムの脱臭方法。
揮発性成分除去工程:チャンバー内で、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する平均厚み500μm以下の再生用原料フィルムを、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、浮遊流動させて揮発性成分を除去又は低減し、再生樹脂を得る工程
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記揮発性成分除去工程を有する、再生樹脂の製造方法。
揮発性成分除去工程:チャンバー内で、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する平均厚み500μm以下の再生用原料フィルムを、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、浮遊流動させて、揮発性成分を除去又は低減し、再生樹脂を得る工程
【請求項2】
再生用原料フィルムの平均円相当直径/平均厚みが5以上100以下である、請求項1に記載の再生樹脂の製造方法。
【請求項3】
加熱気体又は気体の風量/再生用原料フィルム1片当たりの平均質量の比が、5m3/(mg・h)以上である、請求項1又は2に記載の再生樹脂の製造方法。
【請求項4】
加熱気体又は気体の風量/チャンバー内の再生用原料フィルムの仕込量の比が、10m3/(kg・h)以上である、請求項1~3のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
【請求項5】
加熱気体の温度及び/又はチャンバー内を加熱する温度が、50℃以上160℃以下である、請求項1~4のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
【請求項6】
再生用原料フィルムがポリエチレン層を含む積層フィルムであり、かつ、揮発性成分がポリエチレン層に含有される、請求項1~5のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
【請求項7】
揮発性成分が香料を含有する、請求項1~6のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
【請求項8】
再生用原料フィルムが再生用原料の破砕物である、請求項1~7のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
【請求項9】
気体が、空気を含む、請求項1~8のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
【請求項10】
下記の揮発性成分除去工程、溶融混錬工程、及び成形工程をこの順に有する、ペレットの製造方法。
揮発性成分除去工程:チャンバー内で、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する平均厚み500μm以下の再生用原料フィルムを、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、浮遊流動させて、揮発性成分を除去又は低減し、再生樹脂を得る工程
溶融混錬工程:揮発性成分除去工程を経て得られた再生樹脂を溶融混錬する工程
成形工程:溶融混錬工程を経た再生樹脂をペレットに成形する工程
【請求項11】
下記揮発性成分除去工程を有する、再生用原料フィルムの脱臭方法。
揮発性成分除去工程:チャンバー内で、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する平均厚み500μm以下の再生用原料フィルムを、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、浮遊流動させて、揮発性成分を除去又は低減する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生樹脂の製造方法、ペレットの製造方法、及び再生用原料フィルムの脱臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプーや柔軟仕上げ剤は、強い残香性を特徴とする製品が多い。かかる製品を内封した包装容器には様々な香料等の揮発性成分が残留し、特に最内層にポリオレフィン層を用いた積層フィルムで構成された包装容器は、ポリオレフィン層に揮発性成分が残留しやすく、従来は廃棄物とされてきた。当該廃棄物を処理する技術として、例えば、特許文献1には、ゴム、プラスチック、ゴミ等の廃棄物を加熱して縮小、溶融、又は乾燥させる装置の排気ガスを無臭化する装置を提供することを目的として、ゴム、プラスチック又はゴミを加熱後、水蒸気を混合するか、水蒸気共存下で加熱し、次にこの加熱蒸気流を冷却して水蒸気を露結させることを特徴とするゴム・プラスチック・ゴミ加熱装置の脱臭装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、上記包装容器に含まれる樹脂(プラスチック)をリサイクルすることが望まれている。本発明者らの検討により、香料を含む製品に使用された包装容器に含まれる樹脂を、再生樹脂として利用すると、再生樹脂に、香料を含む揮発性成分が残存する場合があり、再生樹脂利用の妨げとなることが分かった。また、包装容器から再生樹脂を製造する過程(溶融、混練及び成形の各工程)で、香料を含む揮発性成分が製造現場に拡散して、再生樹脂を製造する際の作業環境が悪化することも分かった。
【0005】
本発明は、包装容器の破砕物から香料を含む揮発性成分を減少させること、すなわち、包装容器に含まれる樹脂を溶融、混練及び成形する前に、樹脂に含まれる揮発性成分の含有量を低減することができ、かつ、揮発性成分の含有量が十分に低減された再生樹脂を得ることができる再生樹脂の製造方法に関する。また、本発明は、包装容器の破砕物から香料を含む揮発性成分を減少させることができ、かつ、揮発性成分の含有量が十分に低減されたペレットを得ることができるペレットの製造方法に関する。更に、本発明は、包装容器の破砕物から香料を含む揮発性成分を減少させることができる再生用原料フィルムの脱臭方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記包装容器を破砕するなどして得られる、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する特定の平均厚み以下の再生用原料フィルムを、チャンバー内で、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、浮遊流動させて、当該フィルム中の揮発性成分の含有量を低減できること、及び、揮発性成分の含有量を低減した後の再生用原料フィルムを、溶融、混練及び成形することにより、製造現場に揮発性成分が拡散することを抑制して所望の形状の再生樹脂を得られること、を見出した。
本発明は、以下の〔1〕~〔3〕に関する。
〔1〕下記揮発性成分除去工程を有する、再生樹脂の製造方法。
揮発性成分除去工程:チャンバー内で、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する平均厚み500μm以下の再生用原料フィルムを、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、浮遊流動させて、揮発性成分を除去又は低減し、再生樹脂を得る工程
〔2〕下記の揮発性成分除去工程、溶融混錬工程及び成形工程をこの順に有する、ペレットの製造方法。
揮発性成分除去工程:チャンバー内で、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する平均厚み500μm以下の再生用原料フィルムを、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、浮遊流動させて、揮発性成分を除去又は低減し、再生樹脂を得る工程
溶融混錬工程:揮発性成分除去工程を経て得られた再生樹脂を溶融混錬する工程
成形工程:溶融混錬工程を経た再生樹脂をペレットに成形する工程
〔3〕下記揮発性成分除去工程を有する、再生用原料フィルムの脱臭方法。
揮発性成分除去工程:チャンバー内で、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する平均厚み500μm以下の再生用原料フィルムを、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、浮遊流動させて、揮発性成分を除去又は低減する工程
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、包装容器の破砕物から揮発性成分を減少させること、すなわち、包装容器に含まれる樹脂を溶融、混練及び成形する前に揮発性成分の含有量を低減することができ、かつ、揮発性成分の含有量が十分に低減された再生樹脂を得ることができる再生樹脂の製造方法が提供される。また、本発明によれば、包装容器の破砕物から香料を含む揮発性成分を減少させることができ、かつ、揮発性成分の含有量が十分に低減された再生樹脂を得ることができるペレットの製造方法が提供される。更に、本発明によれば、包装容器の破砕物から揮発性成分を減少させることができる再生用原料フィルムの脱臭方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[再生樹脂の製造方法]
本発明の再生樹脂の製造方法は、下記揮発性成分除去工程を有する。
揮発性成分除去工程:チャンバー内で、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する平均厚み500μm以下の再生用原料フィルムを、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、浮遊流動させて、揮発性成分を除去又は低減し、再生樹脂を得る工程
以下、本発明の再生樹脂の製造方法を、単に「本発明の製造方法」と記載することもある。また、本発明の製造方法に用いられる平均厚み500μm以下の再生用原料フィルムを、単に「再生用原料フィルム」又は「フィルム」と記載することもある。
本発明の製造方法によれば、包装容器の破砕物から揮発性成分を減少させること、すなわち、包装容器に含まれる樹脂を溶融、混練及び成形する前に、樹脂に含まれる揮発性成分の含有量を低減することができ、かつ、揮発性成分の含有量が十分に低減された再生樹脂を得ることができる。
【0009】
本発明が上記作用効果を奏する理由は以下のように推測される。
本発明の製造方法では、再生用原料をフィルム状にすることで、再生用原料が、チャンバー内を流通させる気体の抵抗を受けて、浮遊流動させ易くしている。また、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、フィルムを浮遊流動させて、熱エネルギー及び運動エネルギーにより、再生用原料に含まれる再生用樹脂の非晶性領域の柔軟性を、向上させることができると考えられる。それ故、揮発成分を含有するフィルムが多層構造であっても、フィルムの表面、裏面及び側面からフィルムに衝突した気体分子がフィルム内部に浸透しやすく、揮発成分を効率的にフィルム外へと追い出すことで、フィルム中の揮発成分の含有量を低減させることができたと考えられる。尚、再生用原料フィルムがチャンバーの床から浮遊し、流動していることは目視で確認することができる。
【0010】
本発明の製造方法は、揮発性成分除去工程以外に、破砕工程、溶融混練工程及び成形工程を有してもよく、破砕工程、揮発性成分除去工程、溶融混練工程及び成形工程の順に有することが好ましい。以下、本発明の製造方法に用いられる再生用原料フィルム、本発明の製造方法が有する又は有し得る工程の順に説明する。
【0011】
〔再生用原料フィルム〕
本発明の製造方法に用いられる平均厚み500μm以下の再生用原料フィルムは、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する。再生用原料フィルムは、例えば、再生用原料を後述の破砕工程に付して得ることができ、再生用原料フィルムは、再生用原料の破砕物であることが好ましい。
【0012】
再生用原料フィルム1片当たりの平均質量は、作業効率を向上させる観点から、好ましくは0.1mg以上、より好ましくは0.2mg以上、更に好ましくは0.3mg以上であり、そして、効率的に揮発性成分を減少させる観点から、好ましくは6.0mg以下、より好ましくは5.0mg以下、更に好ましくは4.0mg以下である。また、フィルム1片当たりの平均質量は、上記2つの観点から、好ましくは0.1mg以上6.0mg以下、より好ましくは0.2mg以上5.0mg以下、更に好ましくは0.3mg以上4.0mg以下である。フィルム1片当たりの平均質量は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
フィルム1片当たりの平均質量は、例えば、後述の破砕工程での破砕条件及び用いられる粉砕機のスクリーン目開きサイズにより制御することができる。
なお、本明細書において、数値範囲は任意に組み合わせることができ、実施例の数値を上下限のいずれかに用いることもできる。
【0013】
再生用原料フィルムの平均厚みは、保護機能を有する観点から、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは80μm以上、更に好ましくは100μm以上であり、そして、効率的に揮発性成分を減少させる観点から、500μm以下であり、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下である。また、フィルムの平均厚みは、上記2つの観点から、好ましくは50μm以下500μm以下、より好ましくは80μm以上400μm以下、更に好ましくは100μm以上300μm以下である。フィルムの平均厚みは、後述の実施例に記載の方法により求められる。
上記平均厚みの積層フィルムで構成された包装容器が、再生用原料として好適である。
【0014】
再生用原料フィルムの平均円相当直径は、経済性及び製造効率の観点から、好ましくは500μm以上、より好ましくは1000μm以上、更に好ましくは1500μm以上であり、そして、揮発性成分の除去を促進する観点から、好ましくは50000μm以下、より好ましくは10000μm以下、更に好ましくは5000μm以下である。また、フィルムの平均円相当直径は、前記2つの観点から、好ましくは500μm以上50000μm以下、より好ましくは1000μm以上10000μm以下、更に好ましくは1500μm以上5000μm以下である。フィルムの平均円相当直径は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
なお、フィルムの平均円相当直径は、例えば、後述の破砕工程での破砕条件及び用いられる粉砕機のスクリーン目開きサイズにより制御することができる。
【0015】
再生用原料フィルムの平均厚みに対する平均円相当直径の比(平均円相当直径(μm)/平均厚み(μm))は特に制限されないが、揮発性成分の除去を促進する観点から、好ましくは5以上であり、より好ましくは7以上、更に好ましくは9以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。また、フィルムの平均厚みに対する平均円相当直径の比は、前記の観点から、好ましくは5以上100以下であり、より好ましくは7以上50以下、更に好ましくは9以上30以下である。
【0016】
再生用原料としては、例えば、香料を含む揮発性成分を含有する組成物(例えば、シャンプー、柔軟仕上げ剤、衣料用洗剤、ボディソープ、住宅用洗剤等)に使用された包装容器(例えばパウチ製品)が挙げられる。このような包装容器は、柔軟性と強度との観点から、積層フィルム(多層フィルム)が多く用いられ、内層にポリエチレン等のポリオレフィン、外層にナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いているものが多い。ポリエチレンは、非晶化領域が多く、香料が浸透して残香し易い。包装容器は、通常、使用済みのものであるが、未使用品が再生用原料に含まれていてもよい。
「積層フィルム」とは、同一又は異質の高分子樹脂の2層以上が層状に重なった構造を有するフィルムである。積層フィルムは、高分子樹脂層以外に、例えば、アルミニウム箔層等の金属箔層を有していてもよい。
上述のように、本発明に用いられる再生用原料フィルムは、再生用原料を破砕したもの(再生用原料の破砕物)であることが好ましく、使用済パウチ製品を破砕したもの(使用済パウチ製品の破砕物)がより好ましい。
【0017】
<再生用樹脂>
本発明の製造方法に用いられる再生用原料フィルムに含まれる再生用樹脂としては、例えば、ポリオレフィン及び/又はオレフィン共重合体を含むものが好適に挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン及びポリプロピレンから選択される少なくとも1種が挙げられ、オレフィン共重合体としてはエチレンビニルアルコール共重合体が挙げられる。再生用樹脂は、再生樹脂のリサイクル性の観点から、好ましくはポリエチレンを含む。また、同様の観点から、ポリオレフィンはポリエチレンであってもよい。ポリエチレンとしては、市販されているもの、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等、特に限定なく本発明の適用対象である。他の樹脂としては、前述のナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0018】
再生用原料フィルム中の再生用樹脂の含有量は、リサイクル性の観点から、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上であり、そして、好ましくは99.5質量%以下である。
再生用原料フィルム中、ポリエチレンの含有量は、リサイクル性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、ポリエチレンを含む積層フィルムとする観点から、好ましくは90質量%以下である。
【0019】
再生用原料フィルムは、揮発性成分及び再生用樹脂の他に、リサイクルの妨げにならない範囲で、金属(例えばアルミニウム)、可塑剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、相溶化剤、ガスバリア剤、帯電防止剤など、再生用樹脂以外の成分を含んでいてもよい。再生用樹脂以外の成分はリサイクル性の観点から少ないことが好ましい。具体的には、再生用原料中の再生用樹脂以外の成分の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、0質量%以上である。
【0020】
<揮発性成分>
再生用原料フィルムに含まれる揮発性成分は特に制限されないが、20℃における蒸気圧が0.01kPa以上106.66kPa以下であるものが好ましい。また、常圧(1atm)での沸点が260℃以下のものが好ましい。
揮発性成分としては、香料、医薬品、農薬、溶剤などの1種又は2種以上が挙げられる。中でも、本発明の製造方法は、揮発性成分除去工程において、香料を効果的に低減することができることから、揮発性成分が香料を含有することが好ましい。
【0021】
香料としては、シャンプー、柔軟仕上げ剤、衣料用洗剤、ボディソープ、住宅用洗剤等に配合される香料が挙げられる。香料のCLogPは、残香性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは3以上であり、そして、フィルム内の残香性を低減させる観点から、好ましくは7以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは5以下であり、これらの観点から、香料のCLogPは、好ましくは0.1以上7以下、より好ましくは1以上6以下、更に好ましくは3以上5以下である。
【0022】
ここで、LogP値とは、化合物の水と1-オクタノールに対する親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の二液相からなる溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んで分配平衡に到達した際の、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数LogPの形で示すのが一般的である。今日では、化合物分子を構成する原子の数及び化学結合のタイプによって決められる原子団のフラグメント値を用いた計算プログラムによって算出される、「計算LogP(CLogP)」の値が広く用いられている。本明細書において、CLogPの値として、米国環境保護庁とSyracuse社が共同開発したソフトウェアEPI Suite(登録商標;The Estimations Programs Interface for Windows version 4.11)を用いて算出された値を用いる。CLogP値が大きいほど、脂溶性が高いことを意味する。
【0023】
除去対象として好ましい香料としては、アセチルセドレン(Acetyl cedrene、ClogP値:5.0)、アルデヒドC-6(Aldehyde C-6、ClogP値:1.8)、アルデヒドC-10(Aldehyde C-10、ClogP値:3.8)、アルデヒドC-14(Aldehyde C-14、ClogP値:3.1)、アルデヒドC-16(Aldehyde C-16、ClogP値:3.0)、アリルアミルグリコレート(Allyl amyl glycolate、ClogP値:2.3)、α-ダマスコン(α-Damascone、ClogP値:4.3)、アミルサリシレート(Amyl salicylate、ClogP値:4.6)、アンバーコア(Amber core、ClogP値:4.1)、アンブロキサン(Ambroxan、ClogP値:4.8)、アミルシンナミックアルデヒド(Amyl cinnamic aldehyde、ClogP値:4.3)、アニスアルデヒド(Anis aldehyde、ClogP値:1.8)、ベンジルアセテート(Benzyl acetate、ClogP値:2.1)、ベンジルアルコール(Benzyl alcohol、ClogP値:1.1)、ベンジルベンゾエート(Benzyl benzoate、ClogP値:3.5)、ベンジルサリシレート(Benzyl salicylate、ClogP値:4.3)、β-ダマスコン(β-Damascone、ClogP値:4.4)、β-ピネン(β-Pinene、ClogP値:4.4)、ボイサンブレンフォルテ(Boisambrene forte、ClogP値:5.5)、カローン(Calone、ClogP値:2.4)、カントキサール(Canthoxal、ClogP値:2.5)、セドリルメチルエーテル(Cedryl methyl ether、ClogP値:5.0)、シス-3-ヘキセノール(cis-3-Hexenol、ClogP値:1.6)、シス-3-ヘキセニルアセテート(cis-3-Hexenyl acetate、ClogP値:2.6)、シス-3-ヘキセニルベンゾエート(cis-3-Hexenyl benzoate、ClogP値:4.1)、シス-3-ヘキセニルヘキサノエート(cis-3-Hexenyl hexanoate、ClogP値:4.6)、シス-3-ヘキセニルサリシレート(cis-3-Hexenyl salicylate、ClogP値:4.8)、シトラール(Citral、ClogP値:3.5)、シトロネロール(Citronellol、ClogP値:3.6)、シトロネリルアセテート(Citronellyl acetate、ClogP値:4.6)、シトロネリルニトリル(Citronellyl nitrile、ClogP値:3.6)、クマリン(Coumarin、ClogP値:1.5)、シクロヘキシルサリシレート(Cyclohexyl salicilate、ClogP値:4.9)、シクロテン(Cyclotene、ClogP値:1.3)、ダマセノン(Damascenone、ClogP値:4.2)、δ-ダマスコン(δ-Damascone、ClogP値:4.2)、ジヒドロミルセノール(Dihydro myrcenol、ClogP値:3.6)、ジフェニルオキサイド(Diphenyl oxide、ClogP値:4.1)、ダイナスコン(Dynascone、ClogP値:4.5)、エチルアセテート(Ethyl acetate、ClogP値:0.86)、エチルブチレート(Ethyl butyrate、ClogP値:1.9)、エチルマルトール(Ethyl maltol、ClogP値:0.30)、エチル2-メチルブチレート(Ethyl 2-methylbutyrate、ClogP値:2.3)、エチルバニリン(Ethyl vanilin、ClogP値:1.6)、エチレンブラシレート(Ethylene brassylate、ClogP値:4.7)、オイゲノール(Eugenol、ClogP値:2.7)、ファルネソール(Farnesol、ClogP値:5.8)、フロラロゾン(Floralozone、ClogP値:3.9)、フロラマット(Floramat、ClogP値:4.8)、フロロパル(Floropal、ClogP値:3.1)、フルクトン(Fructone、ClogP値:1.3)、フルーテート(Fruitate、ClogP値:3.6)、γ-ターピネン(γ-Terpinene、ClogP値:4.8)、ゲラニオール(Geraniol、ClogP値:3.5)、ゲラニルアセテート(Geranyl acetate、ClogP値:4.5)、ゲラニルプロピオネート(Geranyl propionate、ClogP値:5.0)、ヘリオナール(Helional、ClogP値:2.5)、ヘリオトロピン(Heliotropine、ClogP値:1.8)、ヘキシルアセテート(Hexyl acetate、ClogP値:2.8)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(Hexyl cinnamic aldehyde、ClogP値:4.8)、ヘキシルサリシレート(Hexyl salicylate、ClogP値:5.1)、ヒドロキシシトロネラール(Hydroxy citronellal、ClogP値:2.1)、インドフロールクリスタル(Indoflor crystal、ClogP値:1.8)、インドール(Indol、ClogP値:2.1)、イオノンアルファ(Ionone alpha、ClogP値:4.3)、イオノンベータ(Ionone beta、ClogP値:4.4)、イソアミルアセテート(iso-Amyl acetate、ClogP値:2.3)、イソアミルサリシレート(iso-Amyl salicylate、ClogP値:4.5)、イソ・イー・スーパー(Iso E super、ClogP値:5.2)、イソロンギフォラノン(iso-Longiforanone、ClogP値:3.8)、ラクトンC-10 ガンマ(Lactone C-10 gamma、ClogP値:2.6)、ラクトンC-12 デルタ(Lactone C-12 delta、ClogP値:3.6)、ラクトンC-12 ガンマ(Lactone C-12 gamma、ClogP値:3.6)、レモニル(Lemonile、ClogP値:4.0)、リグストラールエスビー(Ligustral SB、ClogP値:4.8)、リラール(Lilar、ClogP値:3.3)、リリアール(Lilial、ClogP値:4.4)、リモネン(Limonene、ClogP値:4.8)、リナロール(Linalool、ClogP値:3.4)、リナロールオキサイド(Linalool oxide、ClogP値:2.0)、リナリルアセテート(Linalyl acetate、ClogP値:4.4)、マンザネート(Manzanate、ClogP値:2.8)、マイヨール(Mayol、ClogP値:3.5)、1-メントール(l-Menthol、ClogP値:3.4)、1-メントン(l-Menthone、ClogP値:2.9)、メチルジヒドロジャスモネート(Methyl dihydorojasmonate、ClogP値:3.5)、メチルイオノン-G(Methyl ionone-G、ClogP値:4.8)、メチルジャスモネート(Methyl jasmonate、ClogP値:2.8)、ムスクC-14(Musk C-14、ClogP値:4.2)、ネクタリル(Nectaryl、ClogP値:5.1)、ネロール(Nerol、ClogP値:3.5)、ネロリドール(Nerolidol、ClogP値:5.7)、о-t-ブチルシクロヘキシルアセテート(o-t-Butylcyclohexyl acetate、ClogP値:4.4)、パンプルフルール(Pamplefleur、ClogP値:3.4)、p-シメン(p-Cymene、ClogP値:4.0)、p-メンタン(p-Menthane、ClogP値:5.3)、p-t-ブチルシクロヘキシルアセテート(p-t-Butylcyclohexyl acetate、ClogP値:4.4)、フェノキシエタノール(Phenoxy ethanol、ClogP値:1.1)、フェニルエチルアルコール(Phenyl ethyl alcohol、ClogP値:1.6)、フェニルエチルサリシレート(Phenyl ethyl salicylate、ClogP値:4.8)、フェニルプロピルアルコール(Phenyl propyl alcohol、ClogP値:2.1)、ポアレネート(Poirenate、ClogP値:4.0)、プレニルアセテート(Prenyl acetate、ClogP値:2.2)、ラズベリーケトン(Raspberry ketone、ClogP値:1.5)、ローズオキサイド(Rose oxide、ClogP値:3.6)、スチラリルアセテート(Styrallyl acetate、ClogP値:2.5)、スチラリルアルコール(Styrallyl alcohol、ClogP値:1.5)、スチラリルプロピオネート(Styrallyl propionate、ClogP値:3.0)、ターピネオール(Terpineol、ClogP値:3.3)、テルピノレン90(Terpinolene 90、ClogP値:4.9)、ターピニルアセテート(Terpinyl acetate、ClogP値:4.3)、テトラヒドロリナロール(Tetrahydro linalool、ClogP値:3.6)、テトラヒドロムゴール(Tetrahydro muguol、ClogP値:3.6)、チモール(Thymol、ClogP値:3.5)、トリシクロデセニルアセテート(Tricyclo decenyl acetate、ClogP値:2.9)、トリシクロデセニルプロピオネート(Tricyclo decenyl propionate、ClogP値:3.3)、トリプラール(Triplal、ClogP値:2.9)、ウンデカベルトール(Undecavertol、ClogP値:4.1)バニリン(Vanillin、ClogP値:1.1)、ヴェロートン(Veloutone、ClogP値:4.3)等から選択される少なくとも1種が好ましく、トリプラール、フルーテート及びイソ・イー・スーパーから選択される少なくとも1種を含むものがより好ましい。
【0024】
本発明の製造方法に用いられる再生用原料フィルムは、フィルムの柔軟性の観点から、ポリエチレン層を含む積層フィルムが好ましく、かつ、積層フィルムの内層にポリエチレン層を用いる観点から、揮発性成分がポリエチレン層に含有されることが好ましい。なお、揮発性成分がポリエチレン層に含有される形態において、揮発性成分は、ポリエチレン層だけでなく、ポリエチレン層以外の層にも含有されてよい。
【0025】
〔破砕工程〕
本発明の製造方法に用いられる再生用原料フィルムは、前述の再生用原料を破砕工程に付すことにより得ることが好ましい。
破砕工程は、短軸粉砕機、二軸粉砕機、三軸粉砕機、カッターミル、メッシュミル、洗浄粉砕機等の粉砕機で再生用原料を粉砕することで実施される。なお、本明細書において、「破砕」は「粉砕」を含む用語として用いる。
再生用原料に付着した内容物や汚れを除去するために、破砕工程の前後に、再生用原料を洗浄してもよい。洗浄は、例えば水や界面活性剤水溶液を用いて再生用原料をリンスすることで実施できる。洗浄粉砕機を使用することは、洗浄と破砕を同時に実施できるため、好ましい。
【0026】
破砕工程は、単一の粉砕機で1回実施してもよく、同じ又は異なる粉砕機で複数回実施してもよい。破砕工程を複数回実施することにより、よりサイズの小さな破砕物を容易に得ることができる。例えば、1回目の破砕工程において、粉砕機のスクリーン目開きを、好ましくは10mm以上、好ましくは50mm以下に設定し、2回目の破砕工程において、粉砕機のスクリーン目開きを、好ましくは1mm以上、好ましくは10mm以下に設定することができる。
【0027】
〔揮発性成分除去工程〕
本発明の製造方法の揮発性成分除去工程では、チャンバー内で、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する再生用原料フィルムを、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、浮遊流動させて、フィルム中の揮発性成分の含有量を低減させる。
なお、本発明の製造方法の揮発性成分除去工程では、チャンバー内を加熱しながらチャンバー内に加熱気体を流通させてもよい。
【0028】
揮発性成分除去工程における加熱気体の温度及び/又はチャンバー内を加熱する温度としてはポリエチレンの融点以下が好ましい。ここで言うチャンバー内を加熱する温度とは品温である。加熱気体の温度及び/又はチャンバー内を加熱する温度は特に制限されないが、揮発性成分の除去を促進する観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、溶融したポリエチレンの機内付着を抑制する観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下である。また、前記2つの観点から、好ましくは50℃以上160℃以下、より好ましくは70℃以上140℃以下、更に好ましくは80℃以上130℃以下である。
【0029】
揮発性成分除去工程は減圧下、大気圧下又は加圧下のいずれで実施してもよい。揮発性成分除去工程における機器の機内圧力は特に制限されないが、揮発性成分の除去を促進する観点から、好ましくは-1.0kPaG以上、より好ましくは-0.5kPaG以上、更に好ましくは-0.1kPaG以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは1.5kPaG以下、より好ましくは0.9kPaG以下、更に好ましくは0.3kPaG以下である。
【0030】
揮発性成分除去工程は、加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより実施する。加熱気体又は気体を流通させることにより、再生用原料フィルムを浮遊流動させることができ、その結果、再生用原料フィルムから揮発性成分の除去が促進される。すなわち、フィルムが含有する再生用樹脂から、揮発性成分の含有量が十分に低減された再生樹脂を得ることができる。
気体は空気(エアー)を含むことが好ましく、空気、又は、空気と、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスとの混合ガスがより好ましく、空気が更に好ましい。
【0031】
気体の流通量(風量)はチャンバーの大きさにも依存するが、揮発性成分の除去を促進する観点から、好ましくは10m3/h以上、より好ましくは30m3/h以上、更に好ましくは50m3/h以上であり、そして、経済性及び製造効率の観点から、好ましくは1000m3/h以下、より好ましくは500m3/h以下、更に好ましくは300m3/h以下である。また、気体の流通量(風量)は、これらの観点から、好ましくは10m3/h以上1000m3/h以下、より好ましくは30m3/h以上500m3/h以下、更に好ましくは50m3/h以上300m3/h以下である。
【0032】
再生用原料フィルム1片当たりの平均質量に対する、加熱気体又は気体の流通量(風量)(加熱気体又は気体の風量/再生用原料フィルム1片当たりの平均質量)は、揮発性成分の除去を促進する観点から、好ましくは5m3/(mg・h)以上、より好ましくは10m3/(mg・h)以上、更に好ましくは50m3/(mg・h)以上、より更に好ましくは100m3/(mg・h)以上であり、そして、上限は、特に制限されないが、経済性や装置負荷の観点から、好ましくは10000m3/(mg・h)以下、より好ましくは5000m3/(mg・h)以下、更に好ましくは4000m3/(mg・h)以下である。また、加熱気体又は気体の風量/再生用原料フィルム1片当たりの平均質量は、上記3つの観点から、好ましくは5m3/(mg・h)以上10000m3/(mg・h)以下、より好ましくは10m3/(mg・h)以上10000m3/(mg・h)以下、更に好ましくは50m3/(mg・h)以上5000m3/(mg・h)以下、更に好ましくは100m3/(mg・h)以上4000m3/(mg・h)以下である。
【0033】
チャンバー内の再生用原料フィルムの仕込量(揮発成分除去のための再生用原料フィルムのチャンバーへの仕込量)に対する、加熱気体又は気体の風量の比(加熱気体又は気体の風量/仕込量)は、揮発性成分の除去を促進する観点から、好ましくは10m3/(kg・h)以上、より好ましくは30m3/(kg・h)以上、更に好ましくは50m3/(kg・h)以上であり、そして、経済性の観点から、好ましくは500m3/(kg・h)以下、より好ましくは400m3/(kg・h)以下、更に好ましくは300m3/(kg・h)以下である。加熱気体又は気体の風量/仕込量は、上記2つの観点から、好ましくは10m3/(kg・h)以上500m3/(kg・h)以下、より好ましくは30m3/(kg・h)以上400m3/(kg・h)以下、更に好ましくは50m3/(kg・h)以上300m3/(kg・h)以下である。
なお、揮発性成分除去工程の時間(気体を流通させる時間)は、好ましくは10分間以上、より好ましくは15分間以上、更に好ましくは20分間以上であり、そして、好ましくは120分間以下、より好ましくは90分間以下、更に好ましくは60分間以下である。
【0034】
揮発性成分除去工程で使用できるチャンバーを有する機器の種類としては、乾燥機、例えば、流動層乾燥機が挙げられ、流動層乾燥機としては、例えば、対流伝熱式流動層乾燥機が挙げられ、中でも、対流伝熱式振動流動層乾燥機が好ましい。
【0035】
チャンバーの床面積は機器の大きさにも依存するが、経済性及び製造効率の観点から、好ましくは0.003m2以上、より好ましくは0.005m2以上、更に好ましくは0.007m2以上であり、そして、作業性の観点から、好ましくは10m2以下、より好ましくは5m2以下、更に好ましくは1m2以下である。
【0036】
なお、チャンバーの体積(空間の体積)は、機器の大きさにも依存するが、例えば、0.001~500m3である。
【0037】
気体の風速(見掛け風速)は特に制限されないが、揮発性成分の除去を促進する観点から、好ましくは0.1m/sec以上、より好ましくは0.2m/sec以上、更に好ましくは0.3m/sec以上であり、そして、機器の負荷低減の観点から、好ましくは20m/sec以下、より好ましくは10m/sec以下、更に好ましくは5m/sec以下である。見掛け風速は、風量をチャンバーの床面積(流動床面積)で除した値である。
【0038】
チャンバーの床面積(流動床面積)に対する再生用原料フィルム仕込量(再生用原料フィルムの仕込量/チャンバーの床面積(流動床面積))(kg/m2)は、経済性の観点から、好ましくは3kg/m2以上、より好ましくは5kg/m2以上、更に好ましくは10kg/m2以上であり、そして、揮発性成分の除去を促進する観点から、好ましくは500kg/m2以下、より好ましくは400kg/m2以下、更に好ましくは300kg/m2以下であり、前記2つの観点から、再生用原料フィルムの仕込量/チャンバーの床面積(流動床面積)(kg/m2)は、好ましくは3kg/m2以上500kg/m2以下、より好ましくは5kg/m2以上400kg/m2以下、更に好ましくは10kg/m2以上300kg/m2以下である。
【0039】
〔溶融混練工程〕
本発明の製造方法は、樹脂のリサイクル性の観点から、好ましくは溶融混練工程を更に有する。溶融混練工程では、上記揮発性成分除去工程を経た再生樹脂を溶融混練する。再生樹脂を溶融混練することで、再生ポリオレフィン等の再生樹脂を例えばペレットとして製造することができる。なお、再生用原料フィルムに再生用樹脂以外の成分(例えば金属)が含まれる場合、溶融混練時に、例えば、レーザーフィルター等により除去することができる。
【0040】
本発明の製造方法における溶融混練工程は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。溶融混練工程の実施の際の運転条件や使用機器等は、本発明分野で公知のものを採用することができる。
【0041】
〔成形工程〕
本発明の製造方法は、樹脂のリサイクル性の観点から、好ましくは成形工程を更に有する。成形工程では、常法により、例えば、ペレット、フィルムの再生樹脂を得ることができる。
再生樹脂をペレットに成形する方法としては、例えば、溶融混練後、混練機のダイスからストランド状の溶融物を押出し、水にて冷却後、カッター装置によりペレット化する方法等が挙げられる。
ペレットの形状としては、3~5mmの粒状又は円筒状のものが挙げられる。
【0042】
〔再生樹脂〕
本発明の製造方法で製造された再生樹脂は、揮発性成分の含有量が少なく、リサイクルの観点から、包装容器の原料として好適である。再生樹脂の形状は特に制限されず、例えば、ペレット状及びフィルム状が挙げられ、ペレット状が好ましい。
本発明の製造方法で製造した再生樹脂から製造した包装容器は、使用後に更に再生用原料として利用することができる。すなわち、前記再生用原料は、リサイクルの観点から、本発明で製造した再生樹脂を含むことができる。
【0043】
[ペレットの製造方法]
本発明のペレットの製造方法は、下記の揮発性成分除去工程、溶融混錬工程、及び成形工程をこの順に有する。
揮発性成分除去工程:チャンバー内で、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する平均厚み500μm以下の再生用原料フィルムを、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、浮遊流動させて、揮発性成分を除去又は低減し、再生樹脂を得る工程
溶融混錬工程:揮発性成分除去工程を経て得られた再生樹脂を溶融混錬する工程
成形工程:溶融混錬工程を経た再生樹脂をペレットに成形する工程
本発明のペレットの製造方法は、揮発性成分除去工程、溶融混錬工程、及び成形工程以外に破砕工程を有してもよく、破砕工程、揮発性成分除去工程、溶融混錬工程、成形工程の順に有することが好ましい。これらの破砕工程、揮発性成分除去工程、溶融混錬工程、及び成形工程は、本発明の再生樹脂の製造方法で説明した破砕工程、揮発性成分除去工程、溶融混錬工程、及び成形工程と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
[再生用原料フィルムの脱臭方法]
再生用原料フィルムを脱臭することは、再生用樹脂を再利用する観点から好ましく、下記の揮発性成分除去工程を有する脱臭方法が好ましい。
本発明の再生用原料フィルムの脱臭方法(以下、単に、本発明の「脱臭方法」と記載する。)は、下記揮発性成分除去工程を有する。
揮発性成分除去工程:チャンバー内で、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する平均厚み500μm以下の再生用原料フィルムを、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、浮遊流動させて、揮発性成分を除去又は低減する工程
本発明の脱臭方法に用いられる再生用原料フィルムは、本発明の製造方法に用いられる再生用原料フィルムと同様であり、好ましい数値範囲も同じであるため、説明を省略する。
本発明の脱臭方法は、揮発性成分除去工程以外に破砕工程を有してもよく、破砕工程、揮発性成分除去工程の順に有することが好ましい。これらの破砕工程及び揮発性成分除去工程は、本発明の製造方法で説明した破砕工程及び揮発性成分除去工程と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]下記揮発性成分除去工程を有する、再生樹脂の製造方法。
揮発性成分除去工程:チャンバー内で、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する平均厚み500μm以下の再生用原料フィルムを、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、浮遊流動させて、揮発性成分を除去又は低減し、再生樹脂を得る工程
[2]再生用原料フィルムの平均厚みが、好ましくは50μm以下500μm以下、より好ましくは80μm以上400μm以下、更に好ましくは100μm以上300μm以下である、[1]に記載の再生樹脂の製造方法。
[3]再生用原料フィルム1片当たりの平均質量が、好ましくは0.1mg以上6.0mg以下、より好ましくは0.2mg以上5.0mg以下、更に好ましくは0.3mg以上4.0mg以下である、[1]又は[2]に記載の再生樹脂の製造方法。
[4]再生用原料フィルムの平均円相当直径が、好ましくは500μm以上50000μm以下、より好ましくは1000μm以上10000μm以下、更に好ましくは1500μm以上5000μm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]再生用原料フィルムの平均厚みに対する平均円相当直径の比(平均円相当直径(μm)/平均厚み(μm))が、好ましくは5以上100以下、より好ましくは7以上50以下、更に好ましくは9以上30以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[6]再生用原料フィルム1片当たりの平均質量に対する、加熱気体又は気体の流通量(風量)の比(加熱気体又は気体の風量/再生用原料フィルム1片当たりの平均質量)が、好ましくは5m3/(mg・h)以上、より好ましくは5m3/(mg・h)以上10000m3/(mg・h)以下、更に好ましくは10m3/(mg・h)以上10000m3/(mg・h)以下、更に好ましくは50m3/(mg・h)以上5000m3/(mg・h)以下、更に好ましくは100m3/(mg・h)以上4000m3/(mg・h)以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[7]チャンバー内の再生用原料フィルムの仕込量に対する、加熱気体又は気体の風量の比(加熱気体又は気体の風量/仕込量)が、好ましくは10m3/(kg・h)以上500m3/(kg・h)以下、より好ましくは30m3/(kg・h)以上400m3/(kg・h)以下、更に好ましくは50m3/(kg・h)以上300m3/(kg・h)以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[8]気体の流通量(風量)が、好ましくは10m3/h以上1000m3/h以下、より好ましくは30m3/h以上500m3/h以下、更に好ましくは50m3/h以上300m3/h以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[9]チャンバーの床面積(流動床面積)に対する再生用原料フィルム仕込量(再生用原料フィルムの仕込量/チャンバーの床面積(流動床面積))(kg/m2)が、好ましくは3kg/m2以上500kg/m2以下、より好ましくは5kg/m2以上400kg/m2以下、更に好ましくは10kg/m2以上300kg/m2以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[10]気体が好ましくは空気を含む、[1]~[9]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[11]気体が、好ましくは空気、又は、空気と、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスとの混合ガス、より好ましくは空気である、[1]~[10]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[12]チャンバーが、好ましくは乾燥機のチャンバー、より好ましくは流動層乾燥機のチャンバー、更に好ましくは対流伝熱式流動層乾燥機のチャンバー、更に好ましくは対流伝熱式振動流動層乾燥機のチャンバーである、[1]~[11]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[13]チャンバーの床面積が、好ましくは0.003m2以上10m2以下、より好ましくは0.005m2以上5m2以下、更に好ましくは0.007m2以上1m2以下である、[1]~[12]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[14]気体の風速(見掛け風速)が、好ましくは0.1m/sec以上20m/sec以下、より好ましくは0.2m/sec以上10m/sec以下、更に好ましくは0.3m/sec以上5m/sec以下である、[1]~[13]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[15]揮発性成分除去工程における加熱気体の温度及び/又はチャンバー内を加熱する温度が、好ましくは50℃以上160℃以下、より好ましくは70℃以上140℃以下、更に好ましくは80℃以上130℃以下である、[1]~[14]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[16]再生用原料フィルム中の再生用樹脂の含有量が、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上であり、好ましくは99.5質量%以下である、[1]~[15]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[17]再生用原料フィルム中、ポリエチレンの含有量が、好ましくは50質量%以上90質量%以下、より好ましくは60質量%以上90質量%以下、更に好ましくは70質量%以上90質量%以下である、[1]~[16]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[18]再生用原料フィルムが、好ましくは積層フィルム(多層フィルム)、より好ましくはポリエチレン層を含む積層フィルム、更に好ましくは、揮発性成分がポリエチレン層に含有されている、ポリエチレン層を含む積層フィルムである、[1]~[17]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[19]積層フィルムが、好ましくは内層にポリエチレン等のポリオレフィン、外層にナイロン又はポリエチレンテレフタレート(PET)を用いているものである、[18]に記載の再生樹脂の製造方法。
[20]積層フィルムが、好ましくは最内層にポリエチレン等のポリオレフィン、最外層にナイロン又はポリエチレンテレフタレート(PET)を用いているものである、[18]に記載の再生樹脂の製造方法。
[21]再生用原料フィルムは、好ましくは再生用原料を破砕したもの(再生用原料の破砕物)、より好ましくは使用済パウチ製品を破砕したもの(使用済パウチ製品の破砕物)である、[1]~[20]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[22]再生用原料が、好ましくは香料を含む揮発性成分を含有する組成物(例えば、シャンプー、柔軟仕上げ剤、衣料用洗剤、ボディソープ、住宅用洗剤等)に使用された包装容器(パウチ製品)である、[21]に記載の再生樹脂の製造方法。
[23]揮発性成分が香料を含む、[1]~[22]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[24]香料のCLogPが、好ましくは0.1以上7以下、より好ましくは1以上6以下、更に好ましくは3以上5以下である、[23]に記載の再生樹脂の製造方法。
[25]香料が、トリプラール、フルーテート及びイソ・イー・スーパーから選択される少なくとも1種を含む、[24]に記載の再生樹脂の製造方法。
[26]溶融混練工程:揮発性成分除去工程を経て得られた再生樹脂を溶融混錬する工程を更に有する、[1]~[25]のいずれかに記載の再生樹脂の製造方法。
[27]成形工程:溶融混錬工程を経た再生樹脂をペレットに成形する工程を更に有する、[26]に記載の再生樹脂の製造方法。
[27]下記の揮発性成分除去工程、溶融混錬工程、及び成形工程をこの順に有するペレットの製造方法。
揮発性成分除去工程:チャンバー内で、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する平均厚み500μm以下の再生用原料フィルムを、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、浮遊流動させて、揮発性成分を除去又は低減し、再生樹脂を得る工程
溶融混錬工程:揮発性成分除去工程を経て得られた再生樹脂を溶融混錬する工程
成形工程:溶融混錬工程を経た再生樹脂をペレットに成形する工程
[28]下記揮発性成分除去工程を有する、再生用原料フィルムの脱臭方法。
揮発性成分除去工程:チャンバー内で、揮発性成分と再生用樹脂とを含有する平均厚み500μm以下の再生用原料フィルムを、チャンバー内に加熱気体を流通させることにより、又は、チャンバー内を加熱しながら気体を流通させることにより、浮遊流動させて、揮発性成分を除去又は低減する工程
【実施例0046】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0047】
香料を含む衣料用洗剤などが入った、積層フィルムで構成される包装容器の回収品(リサイクルパウチ)(最内層:ポリエチレン層(70~90質量%)/最外層:ナイロン層又はポリエチレンテレフタレート(PET)層(5~25質量%))を再生用原料に使用した。積層フィルムは、他の層として、バリア層、印刷層、接着剤層を含む。
【0048】
実施例1
〔1回目の破砕工程〕
洗浄粉砕機(PFS-40、日本シーム社製)及び遠心脱水機(SW-408、日本シーム社製)で、包装容器に残留する残液を洗浄しながら数センチ角のフィルムになるまで破砕し脱水した。洗浄粉砕機及び遠心脱水機の操作条件は以下の通りである。
包装容器投入速度:100kg/h
洗浄水流量:1.4m3/h
洗浄水循環回数:5回(循環水槽内の水が装置内を5回循環した後に排水し、綺麗な水と交換)
粉砕機回転刃の回転数:600r/min
脱水機ロータの回転数:1730r/min
粉砕機スクリーン目開きΦ:15mm
脱水機スクリーン目開きΦ:2mm
【0049】
〔2回目の破砕工程〕
1回目の破砕工程で得られたフィルムを更に微粉砕機(BO-480、ホーライ社製)で数ミリ角に粉砕することにより、再生用原料フィルムを得た。微粉砕機の操作条件は以下の通りである。
原料投入速度:100kg/h
回転刃の回転数:900r/min
スクリーン目開きΦ:3mm
ブロワ風速:41m/sec
ブロワ風量:19.3m3/min
【0050】
〔揮発性成分除去工程〕
小型流動層乾燥機(FD-LAB-1、チャンバー容量:3L、流動床面積:0.008m2、パウレック社製)を使用して、再生用原料フィルムを乾燥させた。チャンバーに再生用原料フィルムを800g仕込み、加熱エアー(加熱空気)をチャンバー下部からチャンバー内に流通させて、再生用原料フィルムを浮遊流動させて揮発性成分を除去した。小型流動層乾燥機の操作条件は、表1に記載の通りである。
【0051】
加熱エアー流通開始から30分後にサンプリングし、得られたサンプルを用いてGC/FID(ガスクロマトグラフィー/水素炎イオン化検出器)分析と官能評価を行った。結果を表1に示す。
GC/FID分析と官能評価については後述する。
【0052】
実施例2
実施例1の揮発性成分除去工程において、小型流動層乾燥機に代えて振動流動層乾燥機(B-QAD(C)、振動床面積0.094m2、三菱マテリアル社製)を、表1に記載の条件及び下記の条件で用いたこと、再生用原料フィルムの仕込量を800gから1250gに変えたこと以外は、実施例1と同様にしてサンプリングまで行い、GC/FID分析と官能評価を行った。結果を表1に示す。
振動床パンチング径:3mm
振幅:3mm
振動数:50Hz
【0053】
実施例3
実施例1の「2回目の破砕工程」において、スクリーン目開きΦを3mmから6mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてサンプリングまで行い、GC/FID分析と官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
比較例1
実施例1の揮発性成分除去工程を以下の通りに変更して行った。
小型流動層乾燥機に代えてハイスピードミキサー(FS VDGS-5JED型、アーステクニカ社製)を用いた。85℃に設定した温水をハイスピードミキサーのジャケットに通水した。実施例1の破砕工程と同様にして得た再生用原料フィルム630gをハイスピードミキサー内に仕込み、撹拌しながら揮発性成分を除去した。ハイスピードミキサーの操作条件は以下の通りである。
アジテーター回転数:300r/min
チョッパー回転数:150r/min
ハイスピードミキサーで240分間乾燥後のサンプルに対して、GC/FID分析と官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
比較例2
実施例1の破砕工程と同様にして得た再生用原料フィルムを、二軸混練機(TEX-28V スクリュー径28mm、L/D=42mm、日本製鋼所社製)で溶融混練(混練時のバレル温度は220℃、回転数は250r/min)して得られたストランドをカッターミルでカットして、厚さ3.4mmのペレットを調製した。実施例1の揮発性成分除去工程において、再生用原料フィルムに代えてペレットを用いたこと、表1に記載の条件を採用したこと以外は、実施例1と同様にしてペレットの揮発性成分を除去した。
なお、ペレットを浮遊流動させながら揮発性成分を除去するため、実施例1よりも高風速で処理を行った。
加熱エアー流通開始から30分後にサンプリングし、得られたサンプルを用いてGC/FID(ガスクロマトグラフィー/水素炎イオン化検出器)分析と官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
〔GC/FID分析〕
各サンプル約0.7gを秤量し(a(g)とする)、酢酸エチル10mLを添加し、50℃、1時間抽出を行った。その抽出液をろ過した。下記の条件でろ液のGC分析を行い、分析開始3分後以降のチャートのトータル面積(bとする)を取得した。別途、感度補正を行うために20ppmのトリデカン含有酢酸エチル溶液を各サンプルの連続分析シーケンスが途切れる前に分析し、その分析開始3分後以降に出現するトリデカンのチャートのピーク面積(cとする)を把握した。b/(a*c)の値を、各サンプルの揮発性成分の換算値とした。
【0057】
GC/FID分析の条件は以下の通りである。
GC装置:7890B(Agilent Technologies社)
カラム:DB-1 HT Dimethylpolysiloxane(30m×0.25mm×0.25μm)(Agilent Technologies社)
キャリアガス(N2):3.27mL/min
温度条件:80℃→(10℃/min)→300℃ hold 10min
注入口温度:250℃
検出器:FID
注入量:1μL
【0058】
本分析方法によって得られる換算値は、バージンフィルム(充填前のフィルム(未使用の再生用原料を実施例の破砕工程と同様にして得たフィルム))に含まれる夾雑物(揮発性成分)を含む。そのため、最初にバージンフィルムに対してGC/FID分析を行い、バージンフィルムの揮発性成分の換算値を求めた。
表1に記載の「揮発性成分除去工程に付す前の再生用原料に含まれる揮発性成分の換算値」は、揮発性成分除去工程に付す前の再生用原料(フィルム又はペレット)に対してGC/FID分析を行って得た換算値から、バージンフィルムの換算値を引いたものである。
表1に記載の「揮発性成分除去工程後のサンプルに含まれる揮発性成分の換算値」は、揮発性成分除去工程後のサンプル(フィルム又はペレット)に対してGC/FID分析を行って得た換算値から、バージンフィルムの換算値を引いたものである。
表1に記載の揮発性成分の減少率(%)は、下記式から算出した。
揮発性成分の減少率(%)=100-{揮発性成分除去工程後のサンプルの揮発性成分(香料)の換算値/揮発性成分除去工程に付す前の再生用原料に含まれる揮発性成分(香料)の換算値}×100
【0059】
〔官能評価〕
サンプルの匂いを専門パネラー2名で評価した。評価はサンプル約10gを密封できる容器に入れ、匂いの強度の観点から行った。匂いの強度については0から4の5段階で相対評価した(数値が大きい方が強度が強い。)。表1に、2名の評価の平均値を記載する。
4:強いにおい
3:楽に感知できるにおい
2:何のにおいであるか分かる弱いにおい
1:やっと感知できるにおい
0:無臭
【0060】
【0061】
〔再生用原料フィルム又はペレット1片当たりの平均質量〕
再生用原料フィルム又はペレットを無作為に50個選択し、50個の質量を測定して、合計50個の質量の数平均を求めて、1片当たりの質量とした。
〔再生用原料フィルム又はペレットの平均円相当直径〕
50個の再生用原料フィルム又はペレットを無作為に選択した。画像読み取り装置(Mac-view株式会社マウンテック社製)を用いて、フィルム又はペレット1片の周囲をマウスでなぞり面積を自動で測定し、面積から円相当直径を算出した。フィルム50個又はペレット50個の円相当直径の数平均を求めて、平均円相当直径とした。
〔再生用原料フィルム又はペレットの平均厚み〕
無作為で選択した50個の再生用原料フィルム又はペレットの厚さを電子ノギスで測定し、数平均値を求めて、平均厚みとした。
【0062】
実施例1~3の結果から、本発明の製造方法により得られた再生樹脂は、再生用原料フィルムが含有する揮発性成分の含有量が十分に低減されていることが分かる。
実施例1と3を比較すると、実施例1の方が揮発性成分の含有量が低減されている。これは、(風量/1片当たりの平均質量)が大きいため、フィルムが浮遊流動し易くなり、フィルム内の再生用樹脂の非晶領域がより柔軟化し、揮発性成分が追い出され易くなったためと推定される。また、実施例2において揮発性成分の含有量の減少率が高いのは、振動の効果だけでなく、(風量/1片当たりの平均質量)が大きいためと推定される。
尚、実施例3の揮発性成分除去工程後のサンプルに含まれる揮発性成分の換算値が高いにも係わらず、官能評価がそれほど悪くないのは、フィルム表面に近い揮発成分は除去されたためと推定される。
比較例1では、伝導電熱式ハイスピードミキサーを用いて、気体を流通させずに再生樹脂を製造しており、揮発性成分の含有量が十分に低減されていなかった。
比較例2では、フィルムでなく、ペレットを用いて再生樹脂を製造しており、風量を大きくしても、風量/1片当たりの平均質量を所望の値とすることができず、浮遊流動性が低く、揮発性成分の含有量が十分に低減されなかったと推定される。尚、比較例1と比較して、比較例2の揮発性成分除去工程に付す前の再生用原料に含まれる揮発性成分の換算値が高いにも係わらず、官能評価がよいのは、1片当たりの平均質量が大きく、表面積が小さいことが影響していると推定される。