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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131097
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】バッテリの冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6568 20140101AFI20240920BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240920BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240920BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20240920BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/651
H01M10/6557
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041152
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】平口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】米田 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健吾
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】バッテリを効率よく冷却することができるバッテリの冷却構造を提供する。
【解決手段】バッテリパックは、冷却液が供給される上面2a、当該上面2aの反対側の下面2b、上面2aと下面2bとに交差して接続された一対の側面2c,2c、及び上面2aと下面2bと側面2cとに接続され側面2cよりも表面積が大きい一対の正面を夫々有し、並設されてバッテリを構成する複数のセル2と、隣り合うセル2,2の間に配置され、冷却液が流通する第一流路11を有するセルプレート3と、を備え、第一流路11は、少なくとも正面の上端2eから下方に対向して設けられ、上面2aのうち冷却液が最初に供給される範囲R1に接続される正面の一部領域R2に対向して並設された複数の第一溝部21を含んでいる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液が供給される上面、当該上面の反対側の下面、前記上面と前記下面とに交差して接続された一対の側面、及び前記上面と前記下面と前記側面とに接続され前記側面よりも表面積が大きい一対の正面を夫々有し、並設されてバッテリを構成する複数のセルと、
隣り合う前記セルの間に配置され、前記冷却液が流通する第一流路を有するセルプレートと、を備え、
前記第一流路は、少なくとも前記正面の上端から下方に対向して設けられ、前記上面のうち前記冷却液が最初に供給される範囲に接続される前記正面の一部領域に対向して並設された複数の第一溝部を含んでいるバッテリの冷却構造。
【請求項2】
前記セルプレートは、前記正面と対向する対向面の上部における前記側面側の両端部に、隣り合う前記セルに当接して複数の前記セルの位置決めを行う一対の位置決め部を有し、
複数の前記第一溝部は、一対の前記位置決め部の間の領域全体に設けられている請求項1に記載のバッテリの冷却構造。
【請求項3】
前記側面に対向配置され、前記冷却液が流通する第二流路を有するスペーサを更に備え、
前記第二流路は、前記側面の上端から下方に対向して並設された複数の第二溝部を含んでいる請求項1又は2に記載のバッテリの冷却構造。
【請求項4】
前記セルは、前記上面に前記冷却液が流通可能な複数の第三溝部を有し、
複数の前記第三溝部は、所定方向に並設されて前記第一流路又は前記第二流路に連通している請求項3に記載のバッテリの冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行駆動源としてモータを備えた自動車(ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、バッテリ車(BEV:Battery Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等)が普及している。これらの自動車(以下、「電動車」と総称する)はモータを駆動させるためのバッテリ(以下、単にバッテリともいう)を搭載している。
【0003】
通常、電動車に搭載されるバッテリは、複数のセルを並設して容器に収容したバッテリパックとして構成されている。そのため、バッテリを使用すると、発熱により容器の内部に熱がこもって高温になる。バッテリが高温になると劣化が進みやすくなるので、バッテリを冷却しながら使用して温度上昇を防いでいる。バッテリを確実に冷却するためには、容器内のバッテリのセル全体を冷却液に浸漬することが効果的である。しかし、セル全体を冷却液に浸漬させるには大量の冷却液が必要となるので、冷却液の重量が重くなると共に、コストアップにつながる。そこで、少量の冷却液を循環させてバッテリを冷却する方法が考えられる。
【0004】
特許文献1には、二次電池の暴走が始まったときに二次電池を速やかに冷却する二次電池の熱暴走抑止システムが開示されている。この熱暴走抑止システムは、並設された複数のセル(特許文献1では素電池)を容器に収容したバッテリ(特許文献1では二次電池モジュール)と、隣り合うセルの間に配置された放熱部材と、放熱部材の上方に配置されたノズルと、該ノズルから噴射される冷却液(特許文献1では冷却剤)を流通させる配管と、を備えている。放熱部材には、鉛直方向に沿って複数の貫通孔や切欠きが形成されている。ノズルは放熱部材(セル)の上面から上方に離間しており、冷却液は、放熱部材やセルの上面の広範囲に亘って噴射される。放熱部材の上面に付着した冷却液がセルの間に流通することによりセルを冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-063766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された熱暴走抑止システムにおいて、セルの上方から冷却液を噴射して冷却する場合、セルの表面において冷却液の流れに偏りが発生し、冷却液の伝熱面積が小さくなってセルの温度が十分に低下しないことがあった。このようにセルの表面において冷却液の流れに偏りが生じる要因としては、冷却液の表面張力によってセルの上面に冷却液が滞留することを見出した。
【0007】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、バッテリを効率よく冷却することができるバッテリの冷却構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るバッテリの冷却構造の一つの実施形態は、冷却液が供給される上面、当該上面の反対側の下面、前記上面と前記下面とに交差して接続された一対の側面、及び前記上面と前記下面と前記側面とに接続され前記側面よりも表面積が大きい一対の正面を夫々有し、並設されてバッテリを構成する複数のセルと、隣り合う前記セルの間に配置され、前記冷却液が流通する第一流路を有するセルプレートと、を備え、前記第一流路は、少なくとも前記正面の上端から下方に対向して設けられ、前記上面のうち前記冷却液が最初に供給される範囲に接続される前記正面の一部領域に対向して並設された複数の第一溝部を含んでいる。
【0009】
本実施形態によると、隣り合うセルの間に配置されたセルプレートに冷却液が流通する第一流路が形成されているので、セルがセルプレートの第一流路を流通する冷却液により直接的に冷却される。また、第一流路は、セルの正面の上端から下方に対向して設けられ、セルの上面のうち冷却液が最初に供給される範囲に接続されるセルの正面の一部領域に対向して並設される複数の第一溝部を含んでいる。このため、複数の第一溝部によって、冷却液が最初に供給される第一溝部が冷却液の流通抵抗となって、冷却液の滞留時間を延ばす。また、複数の第一溝部の溝を狭小にすることで、セルの上面に滞留する冷却液は、複数の第一溝部による毛細管現象が該冷却液の表面張力に対抗してセルの正面に流通する。しかも、複数の第一溝部によってセルの正面に対して冷却液による伝熱面積を増加させることができる。このように、冷却液がセル上面に滞留することを防ぎ、冷却液に対するセルの伝熱面積が増加することで、冷却液がセルから十分に熱を奪った状態でバッテリ出口から流出されるため、バッテリの冷却性能が向上する。
【0010】
本発明に係るバッテリの冷却構造の他の一つの実施形態において、前記セルプレートは、前記正面と対向する対向面の上部における前記側面側の両端部に、隣り合う前記セルに当接して複数の前記セルの位置決めを行う一対の位置決め部を有し、複数の前記第一溝部は、一対の前記位置決め部の間の領域全体に設けられている。
【0011】
本実施形態によると、セルプレートは、セルの正面と対向する対向面の上部における側面側の両端部に、隣り合うセルに当接して複数のセルの位置決めを行う一対の位置決め部を有するので、バッテリが有する複数のセルを適正な間隔で配置できる。また、複数の第一溝部は、一対の位置決め部の間の領域全体に設けられているので、セルの上面に滞留した冷却液が毛細管現象を利用してセルの正面に広く供給できる。以上より、冷却液とセルの伝熱面積がさらに増加し、冷却液がセルからより多くの熱を奪った状態でバッテリ出口から排出されていくため、バッテリの冷却性能がより向上する。
【0012】
本発明に係るバッテリの冷却構造の他の一つの実施形態において、前記側面に対向配置され、前記冷却液が流通する第二流路を有するスペーサを更に備え、前記第二流路は、前記側面の上端から下方に対向して並設された複数の第二溝部を含んでいる。
【0013】
本実施形態によると、セルの側面に対向配置されるスペーサに冷却液が流通する第二流路が形成されているので、セルがスペーサの第二流路を流通する冷却液により直接的に冷却される。また、第二流路は、セルの側面の上端から下方に対向して並設される複数の第二溝部を含んでいる。したがって、複数の第二溝部によって、セルの側面における冷却液の流通面積を増加させることができる。また、複数の第二溝部の溝を狭小にすることで、セルの上面に滞留する冷却液は複数の第二溝部による毛細管現象を利用してセルの側面に流通する。以上のように、セルは、側面においても冷却液の広範囲の流通が促されるで、冷却液がセルからより多くの熱を奪ってバッテリ出口から流出され、バッテリの冷却性能がより向上する。
【0014】
本発明に係るバッテリの冷却構造の他の一つの実施形態において、前記セルは、前記上面に前記冷却液が流通可能な複数の第三溝部を有し、複数の前記第三溝部は、所定方向に並設されて前記第一流路又は前記第二流路に連通している。
【0015】
本実施形態によると、セルの上面に設けられた第三溝部は、第一流路又は第二流路に連通している。これにより、セルの上面に供給された冷却液は、第三溝部を中継してセルの正面の第一溝部又はセルの側面の第二溝部に供給される。すなわち、セルの上面に滞留している冷却液は、第三溝部の毛細管現象を利用して誘導され、セルの正面(第一溝部)又は側面(第二溝部)に供給され易くなるため、バッテリの冷却性能がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第一実施形態に係る冷却構造を備えたバッテリの断面図である。
図2図1のII-II線矢視断面図である。
図3】第一実施形態に係るセル及びセルプレートの部分斜視図である。
図4】第一実施形態に係るセル及びセルプレートの部分平面図である。
図5】比較例のセルの正面を示す図である。
図6図4のVI-VI線矢視断面図である。
図7】第一実施形態の変形例に係るセルの正面を示す図である。
図8】第二実施形態のバッテリの部分平面図である。
図9】第二実施形態に係るスペーサにおけるセルとの対向面を示す図である。
図10】第二実施形態のバッテリの部分斜視図である。
図11】第三実施形態のバッテリの部分斜視図である。
図12】第四実施形態のバッテリの部分斜視図である。
図13】第五実施形態のバッテリの部分斜視図である。
図14】第五実施形態のバッテリの部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るバッテリの冷却構造の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0018】
〔第一実施形態〕
図1図4に示されるように、本実施形態に係るバッテリ1の冷却構造を用いたバッテリパックAは、並設された複数(本実施形態においては7つ)のセル2と、隣り合うセル2,2の間に配置された複数(本実施形態においては6つ)のセルプレート3と、ノズル4と、冷却液が流通する配管5と、セル2、セルプレート3、ノズル4を密閉された内部空間に収容した容器6と、を有する。また、最も外側にある2つのセル2と容器6との間にも、2つのセルプレート3が配置されている。バッテリパックAは、複数のセル2が並設されて電気的に接続されることにより構成されるバッテリ1が内部に内蔵されている。バッテリパックAは、例えば、走行駆動源としてモータを備えた自動車(ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、バッテリ車(BEV:Battery Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等)に用いられる。以下、これらの自動車を「電動車」と総称する場合がある。本実施形態における冷却液としては、例えばフッ素系不活性液体等の電気絶縁性が高い液体が用いられる。
【0019】
バッテリ1を構成するセル2は、例えばリチウムイオン電池が用いられる。セル2は、冷却液が供給される上面2a、当該上面2aの反対側の下面2b、上面2aと下面2bとに交差して接続された一対の側面2c,2c、及び上面2aと下面2bと側面2cとに接続され側面2cよりも表面積が大きい一対の正面2d,2dを夫々有する。バッテリ1は、複数のセル2を直列に接続することにより高電圧を発生させている。セルプレート3は、隣り合うセル2,2の間に配置され、セル2,2の正面2d,2dに密着している。セルプレート3には、ノズル4から噴射されることにより供給される冷却液が流通する第一流路11が形成されている。バッテリ1においては、両端に位置するセル2,2の外側に配置された不図示のエンドプレート同士をボルト等で締結することにより、セル2とセルプレート3とを密着させている。セルプレート3の詳細な構造は後述する。
【0020】
ノズル4は、図1及び図2に示されるように、セル2の上面2aの中央部であって、上面2aに近接した上方に、上面2aから離間して配置されている。ノズル4は、1つのセル2につき1つ設けられている。すなわち、図1には、セル2が7つ設けられており、ノズル4が7つ設けられる実施形態が示されているが、セル2やノズル4の数量や配置は特に限定されない。ノズル4からはセル2の上面2aに向けて冷却液が噴射される。ノズル4は、容器6のうち、上部容器6aの内側、すなわち容器6の内部空間に配置されている。容器6は、上部容器6aと下部容器6bとからなり、上部容器6aと下部容器6bとを接合することにより、密閉された内部空間が形成されている。なお、ノズル4が冷却液を噴射するとは、ノズル4から出る冷却液が、配管5を流通する冷却液よりも高圧になった形態だけでなく、配管5を流通する冷却液と同圧である形態も含まれる。
【0021】
配管5のうち、ノズル4に冷却液を供給する上部配管5aは、上部容器6aの外側に配置されている。上部配管5aを流通する冷却液は、7つに分岐してバッテリパックA(上部容器6a)の内部(容器6の内部空間)に流入し、それぞれの分岐先に接続されたノズル4からセル2に向けて噴射される。
【0022】
複数のセル2は、容器6の内部空間に収容されている。本実施形態においては、セル2の高さは、容器6の下部容器6bの深さとほぼ同じである。下部容器6bの鉛直方向下方の外側には、セル2を冷却した後の冷却液が流通する下部配管5b(配管5の一部)が配置されている。ノズル4から噴射されてセル2を冷却した冷却液は下部容器6bの底部に溜まり、溜まった冷却液(図1図2の符号C)にセル2の一部が浸漬されている。下部容器6bの底部には不図示の貫通孔が形成されており、該貫通孔を介して下部容器6bの内部と下部配管5bとが連通している。これにより、下部容器6bの底部に溜まった冷却液の一部は貫通孔から下部配管5bに流出する。下部配管5bに流出した冷却液は下部配管5bを流通し、不図示の冷却器で冷却された後、再度上部配管5aを流通し、セル2に噴射される。つまり、冷却液は冷却器で冷却されることにより循環利用されており、少量の冷却液でバッテリ1を冷却することができる。
【0023】
セルプレート3は、樹脂やゴム等の絶縁物からなり、弾性のある材料が好ましい。図1に示されるように、セルプレート3は略直方体形状を有しており、一対の対向面3a,3aが隣り合うセル2,2の正面2d,2dに密着するように、セル2,2の間に配置されている。図3及び図4に示されるように、セルプレート3の対向面3a,3aの夫々には、冷却液の流路10として、複数の第一溝部21を含む第一流路11が形成されている。そして、セルプレート3の対向面3aがセル2の正面2dに密着することにより、冷却液はセル2に接触しつつ第一流路11に沿って流れる。
【0024】
複数の第一溝部21は、少なくともセル2の正面2dの上端2eから下方に対向して設けられ、上面2aのうち冷却液が最初に供給される範囲R1に接続される正面2dの一部領域R2に対向して並設されている。複数の第一溝部21は、複数の凸部22の間に形成されている。セルプレート3の対向面3aにおいて、複数の第一溝部21の下部は、複数の円柱状の突部23が分散配置されて複数の突部23に挟まれた領域25に冷却液が流通可能である。第一流路11を流通する冷却液は、セルプレート3の対向面3aの最下部からセルプレート3の外部に排出される。
【0025】
図1図4に示されるように、セルプレート3は、一対の位置決め部24,24を有する。一対の位置決め部24,24は、正面2dと対向する対向面3aの上部における側面2c側の両端部3b,3bに、隣り合うセル2に当接して複数のセル2,2の位置決めを行う。
【0026】
複数の第一溝部21は、第一溝部21の夫々が狭小に形成されており、毛細管現象によってセル2の上面2aに供給された冷却液を誘導する。第一溝部21の流路断面積は、1mm以下が好ましく、0.0175mm以上~0.25mm以下であれば更に好ましい。この範囲であれば、セル2の上面2aに滞留した冷却液の表面張力に対抗して毛細管現象を発揮できる。また、第一溝部21が形成されるセルプレート3の対向面3aにおける上下方向の範囲は、10分の1以上3分の1以下が好ましく、10分の1以上5分の1以下であれば更に好ましい。この範囲に設定することにより、第一溝部21に冷却液が滞留しすぎず、セル2の冷却性能が向上する。なお、後述する第二溝部31、第三溝部41についても第一溝部21と同様である。
【0027】
本実施形態においては、上述したように、ノズル4はセル2の上面2aに近接して配置されているので、冷却液はセル2の上面2aの中央部にしか噴射されず、上面2a全体には届かず、セル2の正面2dにも直接は届かない。しかし、図2及び図3に示されるように、冷却液の流路10としてセルプレート3は第一流路11を有しており、第一流路11は、セルプレート3は、セル2の正面2dの上端2eから下方に対向して設けられ、上面2aのうち冷却液が最初に供給される範囲R1に接続される正面2dの一部領域R2に対向して並設された複数の第一溝部21を含んでいる。そのため、セル2の上面2aに供給された冷却液は、毛細管現象により第一流路11を流通してセル2の正面2dに接触するので、セル2を効果的に冷却できる。
【0028】
また、第一溝部21の下方には複数の突部23が分散配置されており、第一流路11の下流側が複数の突部23に挟まれた領域25によって形成されているため、冷却液は領域25に一次的に滞留しつつ、最終的に領域25に充填されるので、多量の冷却液がセル2の正面2dに接触すると共に、冷却液がセル2の正面2dに接触する時間を長くできる。さらに、最も下に位置する領域25から排出された冷却液は下部容器6bの底部に溜まり、溜まった冷却液にセル2の一部が浸漬するので、セル2の底部を継続的に冷却できる。このように、本実施形態のバッテリパックAにおいては、少ない冷却液の量で長時間に亘ってセル2の全体を効率よく冷却できる。
【0029】
図5は比較例のセル2を示す図である。図5に示されるセル2は、複数の第一溝部21を有しない。図5のセル2では、ノズル4からセル2の上面2aに供給される冷却液は、矢印で示すように、セル2の正面2dのうち位置決め部24の中央側側部24aと下部24bに対向する部位を伝って下方に流れる。したがって、セル2の上面2aに供給された冷却液はセル2の正面2dの中央部位には流れ難い。
【0030】
一方、図6に示される本実施形態のセル2では、ノズル4からセル2の上面2aに供給される冷却液は、セル2の正面2dに形成された複数の第一溝部21(第一流路11)を伝って流れる。これにより、セル2は冷却液によって正面2d全体を冷却できる。ここで、複数の第一溝部21は狭小の溝であるので、セル2の上面2aに供給されて表面張力で滞留した冷却液は、複数の第一溝部21による毛細管現象によってセル2の正面2dの中央部に流れるようになる。
【0031】
このように、本実施形態では、隣り合うセル2,2の間に配置されたセルプレート3に冷却液が流通する第一流路11が形成されているので、セル2がセルプレート3の第一流路11を流通する冷却液により直接的に冷却される。また、第一流路11は、セル2の正面2dの上端2eから下方に対向して設けられ、セル2の上面2aのうち冷却液が最初に供給される範囲R1に接続されるセル2の正面2dの一部領域R2に対向して並設される複数の第一溝部21を含んでいる。したがって、複数の第一溝部21によって、セル2の正面2dにおける冷却液による伝熱面積を増加させることができる。また、複数の第一溝部21の溝幅が狭小であることで、セル2の上面2aに滞留する冷却液は複数の第一溝部21による毛細管現象を利用してセル2の正面2dに流通させることができる。以上のように、冷却液によるセル2における伝熱面積が増加することで、冷却液がセル2から十分に熱を奪った状態で下部配管5bから流出されるため、バッテリ1の冷却性能が向上する。
【0032】
また、本実施形態では、セルプレート3は、セル2の正面2dと対向する対向面3aの上部における側面側の両端部3bに、隣り合うセル2,2に当接して複数のセル2の位置決めを行う一対の位置決め部24,24を有するので、バッテリ1が有する複数のセル2を適正な間隔で配置できる。また、複数の第一溝部21は、一対の位置決め部24,24の間の領域全体に設けられているので、上面2aに滞留した冷却液が毛細管現象を利用してセル2の正面2dに広く供給できる。以上より、冷却液とセル2の伝熱面積がさらに増加し、冷却液がセル2からより多くの熱を奪った状態で下部配管5bから排出されていくため、バッテリ1の冷却性能がより向上する。
【0033】
〔第一実施形態の変形例〕
次に、第一実施形態の変形例に係るバッテリパックAについて図7を用いて説明する。本変形例においては、セルプレート3に形成された第一流路11が異なるだけで、他の構成は第一実施形態と同じである。したがって、第一実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する。
【0034】
図7に示されるように、本変形例では、複数の第一溝部21は、セル2の正面2dのうち冷却液が供給される範囲R1に連続する一部領域R2のみに設けられている。すなわち、複数の第一溝部21はセルプレート3に対して最小限の一部領域R2に設けられる。これにより、冷却液は、範囲R1から一部領域R2の第一溝部21を利用してセル2の正面2dに供給できる。また、セルプレート3における複数の第一溝部21の領域が小さくなることで、セルプレート3は第一溝部21を形成し易い。
【0035】
〔第二実施形態〕
次に、第二実施形態に係るバッテリパックAについて図8図10を用いて説明する。本実施形態においては、流路10の配置が異なるだけで、他の構成は第一実施形態と同じである。したがって、第一実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する。
【0036】
図8は、第二実施形態のバッテリパックAの部分平面図である。図9は、スペーサ7のセル2の側面2cとの対向面7aを示す図である。図10は、セル2及びセルプレート3の斜視図である。図8に示されるように、バッテリパックAは、セル2の側面2cに対向配置されるスペーサ7を備える。
【0037】
図9に示されるように、スペーサ7は、対向面7aに冷却液が流通する第二流路12を有する。第二流路12は、セル2の側面2cの上端2fから下方に対向して並設された複数の第二溝部31を含んでいる。したがって、スペーサ7の対向面7aがセル2の側面2cに密着することにより、冷却液はセル2に接触しつつ第二流路12に沿って流れる。
【0038】
図8図10に示されるように、複数の第二溝部31は、複数の凸部32の間に形成されている。第二流路12を流通する冷却液は、スペーサ7の対向面7aの最下部からスペーサ7の外部に排出される。なお、図10では、スペーサ7の本体部分を省略し、スペーサ7に設けられた複数の第二溝部31及び凸部32のみを表示している。
【0039】
このように、第二実施形態では、セル2の側面2cに対向配置されるスペーサ7に冷却液が流通する第二流路12が形成されているので、セル2がスペーサ7の第二流路12を流通する冷却液により直接的に冷却される。また、第二流路12は、セル2の側面2cの上端2fから下方に対向して並設される複数の第二溝部31を含んでいる。したがって、複数の第二溝部31によって、セル2の側面2cにおける冷却液の流通面積を増加させることができる。また、複数の第二溝部31の溝幅を狭小にすることで、セル2の上面2aに滞留する冷却液は複数の第二溝部31による毛細管現象を利用してセル2の側面2cに流通する。以上のように、セル2は、側面2cにおいても冷却液の広範囲の流通が促されるで、冷却液がセル2からより多くの熱を奪って下部配管5bから流出されるため、バッテリ1の冷却性能がより向上する。
【0040】
〔第三実施形態〕
次に、第三実施形態に係るバッテリパックAについて図11を用いて説明する。本実施形態においても、冷却液の流路10の形状が異なるだけで、他の構成は第一実施形態と同じである。したがって、第一実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する。
【0041】
第三実施形態においても、第一流路11は、セルプレート3の対向面3a,3aのそれぞれに形成されている。図11は、セル2及びセルプレート3の斜視図である。
【0042】
第三実施形態では、セル2の上面2aに冷却液が流通可能な複数の第三溝部41を有し、複数の第三溝部41は、所定方向に並設されて第一流路11に連通している。複数の第三溝部41は、複数の凸部42の間に形成されている。具体的には、複数の第三溝部41は、セル2の上面2aにおいて第一溝部21に対して直角となる方向に連続している。
【0043】
第三実施形態によると、セル2の上面2aに設けられた複数の第三溝部41が第一流路11に連通している。これにより、セル2の上面2aに供給された冷却液は、第三溝部41を中継して第一流路11の第一溝部21に供給される。すなわち、冷却液は、第三溝部41よってセル2の正面2d(第一溝部21)に供給され易くなるため、バッテリ1の冷却性能はより向上する。
【0044】
〔第四実施形態〕
次に、第四実施形態に係るバッテリパックAについて図12を用いて説明する。本実施形態においても、冷却液の流路10の形状が異なるだけで、他の構成は第二実施形態と同じである。したがって、第二実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する。
【0045】
第四実施形態においても、第一流路11は、セルプレート3の対向面3a,3aのそれぞれに形成されている。図12は、セル2及びセルプレート3の斜視図である。
【0046】
第四実施形態では、セル2の上面2aに冷却液が流通可能な複数の第三溝部41を有し、複数の第三溝部41は、所定方向に並設されて第二流路12に連通している。複数の第三溝部41は、複数の凸部42の間に形成されている。具体的には、複数の第三溝部41の一例である溝部41bは、セル2の上面2aにおいて第二溝部31に対して直角となる方向に連続している。なお、図12では、スペーサ7の本体部分を省略し、スペーサ7に設けられた複数の第二溝部31及び凸部32のみを表示している。
【0047】
第四実施形態によると、セル2の上面2aに設けられた複数の第三溝部41が第二流路12に連通している。これにより、セル2の上面2aに供給された冷却液は、第三溝部41を中継して第二流路12の第二溝部31に供給される。すなわち、冷却液は、第三溝部41よってセル2の側面2c(第二溝部31)に供給され易くなるため、バッテリ1の冷却性能はより向上する。
【0048】
〔第五実施形態〕
次に、第五実施形態に係るバッテリパックAについて図13及び図14を用いて説明する。本実施形態においても、冷却液の流路10の形状が異なるだけで、他の構成は第二実施形態と同じである。したがって、第二実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する。
【0049】
第五実施形態においても、第一流路11は、セルプレート3の対向面3a,3aのそれぞれに形成されている。図13は、セル2及びセルプレート3の斜視図である。図14は、セル2及びセルプレート3の平面図である。
【0050】
本実施形態では、セル2の上面2aに冷却液が流通可能な複数の第三溝部41を有し、
複数の第三溝部41は、所定方向に並設されて第一流路11及び第二流路12に連通している。複数の第三溝部41は、複数の凸部42の間に形成されている。本実施形態では、複数の第三溝部41が、第一流路11に連通する溝部41aと、第二流路12に連通する溝部41bと、を有する。溝部41aは複数の凸部42aの間に形成され、溝部41bは複数の凸部42bの間に形成される。具体的には、複数の第三溝部41のうち、溝部41aはセル2の上面2aにおいて第一溝部21に対して直角となる方向に連続し、溝部41bはセル2の上面2aにおいて第二溝部31に対して直角となる方向に連続している。なお、図13及び図14では、スペーサ7の本体部分を省略し、スペーサ7に設けられた複数の第二溝部31及び凸部32のみを表示している。
【0051】
第五実施形態によると、セル2の上面2aに設けられた複数の第三溝部41が第一流路11及び第二流路12に連通している。これにより、セル2の上面2aに供給された冷却液は、第三溝部41を中継して第一溝部21(第一流路11)及び第二溝部31(第二流路12)に供給される。すなわち、冷却液は、第三溝部41よってセル2の正面2d(第一溝部21)及び側面2c(第二溝部31)に供給され易くなるため、バッテリ1の冷却性能がより向上する。
【0052】
〔その他の実施形態〕
(1)上述した実施形態におけるセルプレート3は位置決め部24を有したが、セルプレート3は位置決め部24を有しない構成でもよい。
(2)上述した実施形態におけるセルプレート3の第一流路11は、冷却液がセル2に接触するようにセル2と対向する両面に形成したが、セルプレート3の片面でもよい。また、セルプレート3の内部に第一流路11を形成してもよい。
(3)上述した実施形態では、セルプレート3の対向面3aに第一溝部21を有する例を示したが、セルプレート3の対向面3aに加えてセル2がセルプレート3に対向する正面2dにも第一溝部21を更に有する構成でもよい。
(4)上述した実施形態では、スペーサ7の対向面7aに第二溝部31を有する例を示したが、スペーサ7の対向面7aに加えてセル2がスペーサ7に対向する側面2cにも第二溝部31を更に有する構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本開示はバッテリの冷却構造に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 :バッテリ
2 :セル
2a :上面
2b :下面
2c :側面
2d :正面
2e,2f:上端
3 :セルプレート
3a :対向面
3b :端部
7 :スペーサ
7a :対向面
10 :流路
11 :第一流路
12 :第二流路
21 :第一溝部
24 :位置決め部
31 :第二溝部
41 :第三溝部
A :バッテリパック
C :冷却液
R1 :範囲
R2 :一部領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
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