(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131105
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】パルス幅変換回路
(51)【国際特許分類】
H03M 1/50 20060101AFI20240920BHJP
H03K 5/05 20060101ALI20240920BHJP
H03K 7/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H03M1/50
H03K5/05
H03K7/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041162
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】509321239
【氏名又は名称】日新パルス電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尚登
【テーマコード(参考)】
5J001
5J022
【Fターム(参考)】
5J001BB15
5J001CC01
5J001DD05
5J022AA01
5J022BA06
5J022CF01
(57)【要約】
【課題】マイクロプロセッサの使用を抑制できるパルス幅変換回路を提供する。
【解決手段】パルス幅変換回路1は、アナログ入力信号AS3をデジタル入力信号DSに変換し、デジタル入力信号DSをSPI通信により送信するA/Dコンバータ30と、デジタル入力信号DSをSPI通信により受信し、デジタル入力信号DSの値に基づく抵抗値を含む抵抗を生成するデジタルポテンショメータ50と、デジタルポテンショメータ50に含まれる抵抗とともにマルチバイブレータを構成する回路を含み、上記抵抗値に基づくパルス幅を有するパルス信号PSを出力するマルチバイブレータ用部品60と、を備える。A/Dコンバータ30、デジタルポテンショメータ50、およびマルチバイブレータ用部品60は、それぞれ独立したパッケージを有する部品により構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログの電圧値を有するアナログ入力信号を入力するアナログ入力部と、
前記アナログ入力部と電気的に接続され、前記アナログ入力信号を、デジタル値を有するデジタル入力信号に変換する回路を含み、前記デジタル入力信号をSPI通信により送信するA/Dコンバータと、
前記A/Dコンバータから送信された前記デジタル入力信号を前記SPI通信により受信し、前記デジタル入力信号の値に基づく抵抗値を含む抵抗を生成するデジタルポテンショメータと、
前記SPI通信のクロック信号を生成するクロック生成部と、
前記SPI通信のチップセレクト信号を生成するチップセレクト生成部と、
前記デジタルポテンショメータと電気的に接続され、前記デジタルポテンショメータに含まれる前記抵抗とともにマルチバイブレータを構成する回路を含み、前記抵抗値に基づくパルス幅を有するパルス信号を出力するマルチバイブレータ用部品と、
を備え、
前記A/Dコンバータ、前記デジタルポテンショメータ、前記クロック生成部、前記チップセレクト生成部、および前記マルチバイブレータ用部品は、それぞれ独立したパッケージを有する部品により構成される、パルス幅変換回路。
【請求項2】
前記アナログ入力部は、
前記アナログ入力信号を入力するように構成された第1入力部と、
前記アナログ入力信号を入力するように構成された第2入力部と、
前記第1入力部および前記第2入力部と電気的に接続され、前記第1入力部からの前記アナログ入力信号と、前記第2入力部からの前記アナログ入力信号とのいずれか一方を、前記A/Dコンバータに選択的に出力する切替スイッチと、
を有する、請求項1に記載のパルス幅変換回路。
【請求項3】
前記アナログ入力部と前記A/Dコンバータとの間に電気的に接続され、前記アナログ入力部からの前記アナログ入力信号を増幅して、増幅後の前記アナログ入力信号を前記A/Dコンバータへ出力する増幅回路を更に備える、請求項1または2に記載のパルス幅変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パルス幅変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、パルス幅変調A/D変換器を開示する。このA/D変換器では、被変換アナログ入力信号が積分器に入力され、被変換アナログ入力信号に基づくパルス幅変調信号が積分器から出力される。パルス幅変調信号のパルス幅がカウントされることにより、パルス幅変調信号がデジタル信号に変換される。このA/D変換器は、積分器に一般的に用いられる抵抗に代えて、電荷の転送を行う電荷転送素子を有する。電荷転送素子は、スイッチ手段およびコンデンサからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パルス幅を変換するための回路として、マイクロプロセッサを用いるものがある。マイクロプロセッサは、外部から入力されたデジタル信号に基づいて、該デジタル信号に応じたパルス幅を有するパルス信号を生成する。しかしながら、マイクロプロセッサを用いる回路では、マイクロプロセッサのプログラムが必要となり、製造に手間がかかる。また、マイクロプロセッサに加えてクロック発生器等の周辺回路が必要になり、回路が複雑化してしまう。
【0005】
本開示は、このような問題に鑑みてなされたものであり、マイクロプロセッサの使用を抑制できるパルス幅変換回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本開示の一実施形態によるパルス幅変換回路は、アナログ入力部と、A/Dコンバータと、デジタルポテンショメータと、クロック生成部と、チップセレクト生成部と、マルチバイブレータ用部品と、を備える。アナログ入力部は、アナログの電圧値を有するアナログ入力信号を入力する。A/Dコンバータは、アナログ入力部と電気的に接続される。A/Dコンバータは、アナログ入力信号を、デジタル値を有するデジタル入力信号に変換する回路を含み、デジタル入力信号をSPI通信により送信する。デジタルポテンショメータは、A/Dコンバータから送信されたデジタル入力信号をSPI通信により受信し、デジタル入力信号の値に基づく抵抗値を含む抵抗を生成する。クロック生成部は、SPI通信のクロック信号を生成する。チップセレクト生成部は、SPI通信のチップセレクト信号を生成する。マルチバイブレータ用部品は、デジタルポテンショメータと電気的に電気的に接続される。マルチバイブレータ用部品は、デジタルポテンショメータに含まれる抵抗とともにマルチバイブレータを構成する回路を含み、上記抵抗値に基づくパルス幅を有するパルス信号を出力する。A/Dコンバータ、デジタルポテンショメータ、クロック生成部、チップセレクト生成部、およびマルチバイブレータ用部品は、それぞれ独立したパッケージを有する部品により構成される。
【0007】
上記のパルス幅変換回路によれば、A/Dコンバータ、デジタルポテンショメータ、クロック生成部、チップセレクト生成部、およびマルチバイブレータ用部品を備えることによって、マイクロプロセッサを用いる場合と同様のパルス幅変換を行うことができる。そして、A/Dコンバータ、デジタルポテンショメータ、クロック生成部、チップセレクト生成部、およびマルチバイブレータ用部品は、それぞれ独立したパッケージを有する部品(すなわちディスクリート部品)により構成されることにより、マイクロプロセッサの使用を抑制しつつパルス幅変換回路を構成することができる。よって、マイクロプロセッサのプログラムが不要となり、製造工程が簡易化される。また、マイクロプロセッサおよびその周辺回路が設けられる場合と比較して、回路を単純化でき、製造コストを削減できる。
【0008】
[2]上記[1]のパルス幅変換回路において、アナログ入力部は、アナログ入力信号を入力するように構成された第1入力部と、アナログ入力信号を入力するように構成された第2入力部と、第1入力部および第2入力部と電気的に接続され、第1入力部からのアナログ入力信号と、第2入力部からのアナログ入力信号とのいずれか一方を、A/Dコンバータに選択的に出力する切替スイッチと、を有してもよい。これにより、アナログ入力信号の入力元を切り替えることが可能となる。例えば、上記のパルス幅変換回路が或る装置に組み込まれた場合に、該装置を統括して制御する制御部から提供されるアナログ入力信号と、該装置の検査等において上記のパルス幅変換回路を単独で動作させるために入力されるアナログ入力信号と、のいずれかを選択することができる。
【0009】
[3]上記[1]または[2]のパルス幅変換回路は、増幅回路を更に備えてもよい。増幅回路は、アナログ入力部とA/Dコンバータとの間に電気的に接続され、アナログ入力部からのアナログ入力信号を増幅して、増幅後のアナログ入力信号をA/Dコンバータへ出力する。アナログ入力信号を増幅回路にて増幅することにより、A/Dコンバータにおいて、アナログ入力信号をより精度良くデジタル入力信号に変換することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、マイクロプロセッサの使用を抑制できるパルス幅変換回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るパルス幅変換回路1の一部の構成を示す回路図である。
【
図2】一実施形態に係るパルス幅変換回路1の残部の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本開示によるパルス幅変換回路の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るパルス幅変換回路1の一部の構成を示す回路図である。
図2は、本実施形態に係るパルス幅変換回路1の残部の構成を示す回路図である。このパルス幅変換回路1は、外部から入力されたアナログ入力信号AS1(またはAS2)の電圧値に応じたパルス幅を有するパルス信号PSを出力する。
図1および
図2に示されるように、パルス幅変換回路1は、アナログ入力部10と、増幅回路20と、A/Dコンバータ30と、クロック生成部40Aと、チップセレクト生成部40Bと、デジタルポテンショメータ50と、マルチバイブレータ用部品60と、を備える。アナログ入力部10、増幅回路20、A/Dコンバータ30、クロック生成部40A、チップセレクト生成部40B、デジタルポテンショメータ50、およびマルチバイブレータ用部品60は、共通の配線基板上に実装される。
【0014】
アナログ入力部10は、アナログの電圧値を有するアナログ入力信号AS1またはAS2を、パルス幅変換回路1の外部から入力する。本実施形態のアナログ入力部10は、第1入力部11と、第2入力部12と、切替スイッチ13と、を有する。第1入力部11は、アナログ入力信号AS1を入力する。第2入力部12は、アナログ入力信号AS1とは入力経路が異なるアナログ入力信号AS2を入力する。アナログ入力信号AS1は、例えば、パルス幅変換回路1が或る装置(真空装置など)に組み込まれた場合に、該装置を統括して制御する制御部(不図示)から提供されるアナログ入力信号である。アナログ入力信号AS2は、例えば、パルス幅変換回路1が該装置に組み込まれた場合に、該装置の検査等においてパルス幅変換回路1を単独で動作させるために入力されるアナログ入力信号である。
【0015】
一例として、第1入力部11および第2入力部12は、コネクタ14と、抵抗15と、バイパスコンデンサ16とを含む。コネクタ14は、複数(図示例では4つ)の端子を含む。コネクタ14の一の端子は、パルス幅変換回路1の内部において電源電位線81と電気的に接続され、コネクタ14に接続される配線に参照電圧(例えば+5V)を供給する。コネクタ14の別の端子は、パルス幅変換回路1の内部において基準電位線(GND線)82と電気的に接続され、コネクタ14に接続される配線に基準電位を提供する。コネクタ14の更に別の端子(信号入力端子)は、抵抗15を介して切替スイッチ13と電気的に接続されている。第1入力部11の信号入力端子には、パルス幅変換回路1の外部からアナログ入力信号AS1が入力される。第2入力部12の信号入力端子には、パルス幅変換回路1の外部からアナログ入力信号AS2が入力される。バイパスコンデンサ16の一端は抵抗15と切替スイッチ13との間のノードと電気的に接続され、バイパスコンデンサ16の他端は基準電位線82と電気的に接続されている。抵抗15およびバイパスコンデンサ16は、アナログ入力信号AS1,AS2に含まれるノイズを低減するフィルタとして機能する。
【0016】
切替スイッチ13は、第1入力部11および第2入力部12と電気的に接続され、第1入力部11からのアナログ入力信号AS1と、第2入力部12からのアナログ入力信号AS2とのいずれか一方を、A/Dコンバータ30に(本実施形態では増幅回路20に)選択的に出力する。図示例の切替スイッチ13は、2個の入力端子と、1個の出力端子とを含む。一方の入力端子は、第1入力部11の抵抗15を介して第1入力部11のコネクタ14の信号入力端子と電気的に接続されている。他方の入力端子は、第2入力部12の抵抗15を介して第2入力部12のコネクタ14の信号入力端子と電気的に接続されている。出力端子は、増幅回路20を介してA/Dコンバータ30と電気的に接続されている。そして、出力端子の接続相手が2つの入力端子のいずれかに選択的に切り替えられる。出力端子と基準電位線82との間には、出力電位の安定化のためのバイパスコンデンサ17が電気的に接続されている。切替スイッチ13は、電磁リレーまたはトグルスイッチなどの機械的スイッチであってもよく、トランジスタなどの半導体スイッチにより構成されてもよい。
【0017】
なお、例示したアナログ入力部10は2個の入力部(第1入力部11および第2入力部12)を有しているが、アナログ入力部10は、1個の入力部のみ(第1入力部11のみ)を有してもよく、3個以上の入力部を有してそれらが切替スイッチにより切り替え可能に構成されてもよい。
【0018】
増幅回路20は、アナログ入力部10とA/Dコンバータ30との間に電気的に接続されている。増幅回路20は、アナログ入力部10からのアナログ入力信号AS1(またはAS2)を増幅して、増幅後のアナログ入力信号AS3をA/Dコンバータ30へ出力する。図示例の増幅回路20は、オペアンプ21と、抵抗22とを含む。オペアンプ21は、独立したパッケージを有する部品(ディスクリート部品)により構成される。オペアンプ21は、反転入力端子、非反転入力端子、出力端子、正電源端子、および負電源端子を有する。抵抗22の一端は、オペアンプ21の出力端子と電気的に接続されている。抵抗22の他端は、増幅回路20の出力点であるノードN1と電気的に接続されている。オペアンプ21の反転入力端子は、帰還のためノードN1と電気的に接続されている。オペアンプ21の非反転入力端子は、アナログ入力部10(より詳細には、切替スイッチ13の出力端子)と電気的に接続されている。オペアンプ21の正電源端子には、電源電位線83から正の第1電源電圧(例えば+15V)が入力される。オペアンプ21の負電源端子には、電源電位線84から負の第2電源電圧(例えば-15V)が入力される。オペアンプ21の正電源端子および負電源端子のそれぞれには、ノイズ低減のためのバイパスコンデンサ23が接続されている。なお、増幅回路20は、不要であれば省かれることが可能である。
【0019】
A/Dコンバータ30は、増幅回路20を介してアナログ入力部10と電気的に接続されている。A/Dコンバータ30は、アナログ入力信号AS3を、デジタル値を有するデジタル入力信号DSに変換する回路を含む。また、A/Dコンバータ30は、デジタル入力信号DSをSPI通信により送信する。A/Dコンバータ30は、独立したパッケージを有する部品(ディスクリート部品)により構成される。
【0020】
図示例のA/Dコンバータ30は、正側入力端子(図中にVin+と表示)と、負側入力端子(図中にVin-と表示)と、GND端子と、電源端子(図中にVccと表示)と、参照電圧端子(図中にVrefと表示)と、を含む。正側入力端子は抵抗31を介してノードN1と電気的に接続されており、正側入力端子には増幅後のアナログ入力信号AS3が入力される。正側入力端子と抵抗31との間のノードには、電位の安定化のためのバイパスコンデンサ32が接続されている。負側入力端子は基準電位線82と電気的に接続され、負側入力端子には基準電位(GND電位)が入力される。A/Dコンバータ30は、正側入力端子と負側入力端子との電位差をデジタル入力信号DSに変換する。GND端子は基準電位線82に接続されている。電源端子および参照電圧端子は電源電位線81と接続されており、電源端子および参照電圧端子には正の第3電源電圧(例えば+5V)が供給される。電源端子および参照電圧端子には、ノイズ低減のためのバイパスコンデンサ33が接続されている。
【0021】
A/Dコンバータ30は、SPI通信のためのチップセレクト端子(図中にCSと表示)、クロック端子(図中にCLKと表示)、およびデータ端子(図中にDaと表示)を更に含む。SPI通信のためのこれらの端子は、SPI通信配線群90に含まれるチップセレクト配線91、クロック配線92、およびデータ配線93にそれぞれ接続されている。A/Dコンバータ30によって生成されたデジタル入力信号DSは、A/Dコンバータ30のデータ端子からSPI通信配線群90のデータ配線93へシリアル信号として出力される。
【0022】
クロック生成部40Aは、SPI通信のためのクロック信号SCLKを生成する。クロック信号SCLKの周波数は例えば180kHzである。チップセレクト生成部40Bは、SPI通信のためのチップセレクト信号SCSを生成する。チップセレクト信号SCSの周波数は、例えばクロック信号SCLKの周波数の1/20(9kHz)である。クロック生成部40Aおよびチップセレクト生成部40Bそれぞれは、独立したパッケージを有する部品(ディスクリート部品)により構成される。図示例では、チップセレクト生成部40Bを構成する部品はクロック生成部40Aを構成する部品と同一である。
【0023】
図示例では、クロック生成部40Aおよびチップセレクト生成部40Bは、OUTPUT端子と、TRIGGER端子と、THRESHOLD端子と、電源端子(図中にV+と表示)と、GND端子と、DISCHARGE端子と、RESET端子と、を含む。OUTPUT端子は、互いに直列に接続された可変抵抗41および固定抵抗42を介してTHRESHOLD端子と電気的に接続されている。OUTPUT端子とTHRESHOLD端子との間の抵抗値、および、THRESHOLD端子と基準電位線82との間に接続されたコンデンサ52によって、クロック信号SCLKおよびチップセレクト信号SCSの周波数が決定される。TRIGGER端子はTHRESHOLD端子と短絡されている。電源端子は電源電位線83と電気的に接続されており、電源電位線83から正の第1電源電圧(例えば+15V)が電源端子に入力される。ノイズ低減のため、電源端子にはバイパスコンデンサ43が接続されている。GND端子は基準電位線82と接続されている。DISCHARGE端子は、プルアップ抵抗44を介して電源電位線83と接続されている。クロック生成部40AのDISCHARGE端子は、クロック配線92と電気的に接続されており、クロック配線92へクロック信号SCLKを出力する。チップセレクト生成部40BのDISCHARGE端子は、チップセレクト信号SCSを出力する。クロック生成部40AのRESET端子は、チップセレクト生成部40BのDISCHARGE端子と接続されている。これにより、クロック信号SCLKがチップセレクト信号SCSと同期する。
【0024】
本実施形態のパルス幅変換回路1は、チップセレクト信号SCSの論理を反転してチップセレクト配線91に与えるためのソース接地回路45を更に備える。ソース接地回路45は、チップセレクト生成部40Bとチップセレクト配線91との間に介在する。チップセレクト生成部40Bは、ソース接地回路45を介してチップセレクト配線91へチップセレクト信号SCSを提供する。具体的に、ソース接地回路45は、FET46および抵抗47を含む。FET46のゲート端子は、チップセレクト生成部40BのDISCHARGE端子と電気的に接続され、チップセレクト信号SCSを受ける。FET46のドレイン端子は抵抗47を介して電源電位線81と接続されている。なお、FET46のゲート端子と基準電位線82との間には、チップセレクト信号SCSの安定化のためのバイパスコンデンサ48および抵抗49が接続されている。
【0025】
デジタルポテンショメータ50は、A/Dコンバータ30から送信されたデジタル入力信号DSをSPI通信により受信し、デジタル入力信号DSの値に基づく抵抗値を含む抵抗を生成する。デジタルポテンショメータ50もまた、独立したパッケージを有する部品(ディスクリート部品)により構成される。
【0026】
具体的に、デジタルポテンショメータ50は、SPI通信のためのチップセレクト端子(図中にCSと表示)、クロック端子(図中にCLKと表示)、およびデータ端子(図中にSD1と表示)を含む。SPI通信のためのこれらの端子は、SPI通信配線群90に含まれるチップセレクト配線91、クロック配線92、およびデータ配線93にそれぞれ接続されている。A/Dコンバータ30によって生成されたデジタル入力信号DSは、SPI通信配線群90のデータ配線93を介して、デジタルポテンショメータ50のデータ端子に入力される。
【0027】
デジタルポテンショメータ50は、第1電源端子(図中にVddと表示)、第2電源端子(図中にVssと表示)、GND端子、RS端子、およびSHDN端子を更に含む。第1電源端子は電源電位線83と接続されており、電源電位線83から正の第1電源電圧(例えば+15V)が第1電源端子に入力される。第2電源端子は電源電位線84と接続されており、電源電位線84から負の第2電源電圧(例えば-15V)が第1電源端子に入力される。第1電源端子および第2電源端子のそれぞれにはバイパスコンデンサ51が接続されている。GND端子は基準電位線82に接続されている。RS端子およびSHDN端子は、電源電位線81に接続されている。
【0028】
デジタルポテンショメータ50は、A端子、B端子およびW端子を更に含む。A端子とB端子との間には固定抵抗が内蔵され、固定抵抗はW端子によって分割される。分割位置はデジタル入力信号DSに応じて決定される。すなわち、W端子とA端子との間の抵抗値、およびW端子とB端子との間の抵抗値が、デジタル入力信号DSに応じて決定される。これにより、W端子とA端子およびB端子双方との間に、デジタル入力信号DSの値に基づく抵抗値を含む抵抗が生成される。図示例では、B端子が電源電位線83と電気的に接続され、W端子がマルチバイブレータ用部品60と電気的に接続されている。
【0029】
マルチバイブレータ用部品60は、デジタルポテンショメータ50と電気的に接続されている。マルチバイブレータ用部品60は、デジタルポテンショメータ50に含まれる抵抗とともにマルチバイブレータを構成する回路を含み、パルス信号PSを出力する。本実施形態のマルチバイブレータは、単安定マルチバイブレータである。マルチバイブレータ用部品60もまた、独立したパッケージを有する部品(ディスクリート部品)により構成される。
【0030】
パルス信号PSの時間幅は、デジタルポテンショメータ50に含まれる、W端子とB端子との間の抵抗の抵抗値に基づく。より詳細には、パルス信号PSの時間幅は、デジタルポテンショメータ50に含まれる抵抗並びにマルチバイブレータ用部品60の外部に設けられる固定抵抗61および可変抵抗62の直列接続によって決定される抵抗値と、マルチバイブレータ用部品60の外部に設けられるコンデンサ63の容量値とに基づく。可変抵抗62の抵抗値は予め調整される。
【0031】
具体的に、マルチバイブレータ用部品60は、T1端子、T2端子、A端子、B端子、Q端子、およびCD端子を含む。T1端子にはコンデンサ63の一端が接続され、T2端子にはコンデンサ63の他端が接続される。また、T2端子は、固定抵抗61および可変抵抗62を介してデジタルポテンショメータ50のW端子と接続されている。そして、T1端子およびT2端子に接続される、コンデンサ63の容量値、並びにデジタルポテンショメータ50の抵抗値、固定抵抗61および可変抵抗62の抵抗値に応じた時間幅のパルス信号PSが、Q端子から出力される。パルス信号PSの出力タイミングは、A端子またはB端子に入力されるトリガー信号TSによって決定される。図示例では、A端子は、Q端子に短絡されている。これにより、トリガー信号TSの入力によってパルス信号PSがQ端子から出力されている間は、トリガー信号TSの入力が無効となる。すなわち、A端子とQ端子とを短絡する回路は、パルス信号PSの出力中において、マルチバイブレータ用部品60の誤動作防止回路として機能する。CD端子には、パルス信号PSを強制的に終了させるためのリセット信号RSが、パルス幅変換回路1の外部から入力される。
【0032】
本実施形態のパルス幅変換回路1は、トリガー信号生成部70を更に備える。トリガー信号生成部70は、マルチバイブレータ用部品60にトリガー信号TSを提供する。トリガー信号生成部70は、コンパレータ71を有する。コンパレータ71の第1入力端子には、アナログ信号である計測対象信号MSが入力される。コンパレータ71の第2入力端子には、基準電圧SVが入力される。コンパレータ71は、計測対象信号MSの電圧値が基準電圧SVを超えたときに、トリガー信号TSを出力する。従って、本実施形態のパルス幅変換回路1は、計測対象信号MSの電圧値が基準電圧SVを超えたときに、アナログ入力信号AS1(またはAS2)によって決定される時間幅を有するパルス信号PSを外部へ出力する。計測対象信号MSは、パルス幅変換回路1が組み込まれる装置によって様々である。例えば、パルス幅変換回路1が真空装置に組み込まれる場合、計測対象信号MSは、装置内の真空度を示す信号であってもよい。なお、トリガー信号TSが有する意義はこれに限られず、他の意義を有するトリガー信号TSがマルチバイブレータ用部品60に提供されてもよい。
【0033】
以上に説明した本実施形態のパルス幅変換回路1によって得られる効果について説明する。本実施形態のパルス幅変換回路1によれば、A/Dコンバータ30、クロック生成部40A、チップセレクト生成部40B、デジタルポテンショメータ50、およびマルチバイブレータ用部品60を備えることによって、マイクロプロセッサを用いる場合と同様のパルス幅変換を行うことができる。そして、A/Dコンバータ30、クロック生成部40A、チップセレクト生成部40B、デジタルポテンショメータ50、およびマルチバイブレータ用部品60が、それぞれ独立したパッケージを有する部品(すなわちディスクリート部品)により構成されている。これにより、マイクロプロセッサの使用を抑制しつつパルス幅変換回路1を構成することができる。よって、マイクロプロセッサのプログラムが不要となり、パルス幅変換回路1の製造工程が簡易化される。また、マイクロプロセッサおよびその周辺回路が設けられる場合と比較して、回路を単純化でき、製造コストを削減できる。
【0034】
本実施形態のように、アナログ入力部10は、アナログ入力信号AS1を入力するように構成された第1入力部11と、アナログ入力信号AS2を入力するように構成された第2入力部12と、第1入力部11および第2入力部12と電気的に接続され、第1入力部11からのアナログ入力信号AS1と、第2入力部12からのアナログ入力信号AS2とのいずれか一方を、A/Dコンバータ30に選択的に出力する切替スイッチ13と、を有してもよい。これにより、アナログ入力信号の入力元を切り替えることが可能となる。例えば、パルス幅変換回路1が或る装置に組み込まれた場合に、該装置を統括して制御する制御部から提供されるアナログ入力信号AS1と、該装置の検査等においてパルス幅変換回路1を単独で動作させるために入力されるアナログ入力信号AS2と、のいずれかを選択することができる。
【0035】
本実施形態のように、パルス幅変換回路1は、増幅回路20を備えてもよい。増幅回路20は、アナログ入力部10とA/Dコンバータ30との間に電気的に接続され、アナログ入力部10からのアナログ入力信号AS1またはAS2を増幅して、増幅後のアナログ入力信号AS3をA/Dコンバータ30へ出力する。アナログ入力信号AS1,AS2を増幅回路20にて増幅することにより、A/Dコンバータ30において、アナログ入力信号AS3をより精度良くデジタル入力信号DSに変換することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…パルス幅変換回路、10…アナログ入力部、11…第1入力部、12…第2入力部、13…切替スイッチ、14…コネクタ、15,22,31…抵抗、16,17,23,32,33…バイパスコンデンサ、20…増幅回路、21…オペアンプ、30…A/Dコンバータ、40A…クロック生成部、40B…チップセレクト生成部、41…可変抵抗、42…固定抵抗、43…バイパスコンデンサ、44…プルアップ抵抗、45…ソース接地回路、46…FET、47,49…抵抗、48,51…バイパスコンデンサ、50…デジタルポテンショメータ、52…コンデンサ、60…マルチバイブレータ用部品、61…固定抵抗、62…可変抵抗、63…コンデンサ、70…トリガー信号生成部、71…コンパレータ、81,83,84…電源電位線、82…基準電位線、90…SPI通信配線群、91…チップセレクト配線、92…クロック配線、93…データ配線、AS1,AS2,AS3…アナログ入力信号、DS…デジタル入力信号、MS…計測対象信号、N1…ノード、PS…パルス信号、SCLK…クロック信号、SCS…チップセレクト信号、SV…基準電圧、TS…トリガー信号。