(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131106
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】検出装置、製造管理システム、検出方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041171
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】萩原 達希
(72)【発明者】
【氏名】松本 怜
(72)【発明者】
【氏名】山野邉 一輝
(72)【発明者】
【氏名】南條 崇
(72)【発明者】
【氏名】中江 葉月
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA41
2G051AB20
2G051AC21
2G051BA20
2G051CA03
2G051CA04
2G051CA07
2G051CB05
2G051DA06
(57)【要約】
【課題】フィルムを製造する際のフィルム搬送状態を検出することで、破断等の生産停止に至る事象の発生を未然に防止する。
【解決手段】フィルムロールの製造ラインで用いられる、検出装置90であって、
検出装置90は、延伸工程及び/又はトリミング工程において搬送されるフィルムF8の表面の監視領域を撮影し、連続したフレーム画像を生成する撮像部91と、
所定の時間差の2つのフレーム画像を比較して比較画像データを生成し、生成した比較画像データに基づいて、前記フィルムのばたつき度の指標を生成する処理部93と、
前記指標を出力する出力部95と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送中のフィルムの両側端を複数の一対の把持部で把持しながら、該一対の把持部の幅方向の距離を徐々に広げることで前記フィルムを延伸する延伸工程、延伸されたフィルムの両側の側端部をトリミングし、中央のフィルム及び両側のトリミングされたフィルムに分離するトリミング工程、及びトリミングにより両側の側端部が除去された中央のフィルムを巻心に巻き取る巻取工程により製造されるフィルムロールの製造ラインで用いられる、検出装置であって、
前記延伸工程及び/又は前記トリミング工程において搬送される前記フィルムの表面の監視領域を撮影し、連続したフレーム画像を生成する撮像部と、
所定の時間差の2つのフレーム画像を比較して比較画像データを生成し、生成した比較画像データに基づいて、前記フィルムのばたつき度の指標を生成する処理部と、
前記指標を出力する出力部と、を備える、検出装置。
【請求項2】
前記処理部は、2つのフレーム画像を差分処理することにより前記比較画像データを生成し、生成した前記比較画像データの画素のうち、所定の閾値を超える画素を抽出し、抽出した画素の個数、又は、抽出した画素の面積を、前記指標とする、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記撮像部は複数であり、前記複数の撮像部はそれぞれ、前記トリミング工程の切断位置よりも下流側において、両側のトリミングされたフィルムの表面が前記監視領域となるように配置されており、
前記処理部は、両側のトリミングされたフィルムの一方の指標及び他方の指標を生成し、
前記出力部は、一方の指標及び他方の指標を、比較して視認できるように、表示部に並べて表示する、請求項1又は請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
さらに、前記フィルムロールの製造履歴のデータを記憶する記憶部を備え、
前記出力部は、製造中のフィルムロールの前記指標を表示部に表示するとともに、記憶部から読み出した、過去のフィルムロール製造時の前記指標を表示する、請求項1又は請求項2に記載の検出装置。
【請求項5】
前記撮像部は、その光軸と前記フィルムの表面とのなす角度である撮影角度が10度以上、30度以下、及び前記光軸と前記フィルムとの交点まで距離が100mm以上300mm以下となるように配置されている、請求項1又は請求項2に記載の検出装置。
【請求項6】
前記撮像部は、前記延伸工程において搬送される前記フィルムの表面の監視領域を撮影し、
前記撮像部は、その光軸と前記フィルムの表面とのなす角度である撮影角度が10度以上、30度以下、及び前記光軸と前記フィルムとの交点まで距離が1.0m以上2.0m以下となるように配置されている、請求項1又は請求項2に記載の検出装置。
【請求項7】
前記撮像部は、前記延伸工程において搬送される前記フィルムの表面の監視領域を撮影し、
前記撮像部は、その光軸と前記フィルムの表面とのなす角度である撮影角度が10度以上、20度以下、及び前記光軸と前記フィルムとの交点まで距離が1.5m以上3.0m以下となるように配置されている、請求項1又は請求項2に記載の検出装置。
【請求項8】
前記フィルムの前記監視領域に光を照射する光源を備え、
前記光源からの直接光が、前記撮像部に入らないように構成されている、
請求項1又は請求項2に記載の検出装置。
【請求項9】
前記フィルムの前記監視領域に光を照射する光源を備え、
前記フィルムは、光を透過するフィルムであり、
前記光源は、前記撮像部とは、前記フィルムに対して反対の面側に配置され、前記光源からの前記フィルムを透過した直接光が、前記撮像部に受光しないように構成されている、請求項1又は請求項2に記載の検出装置。
【請求項10】
搬送中のフィルムの両側端を複数の一対の把持部で把持しながら、該一対の把持部の幅方向の距離を徐々に広げることで前記フィルムを延伸する延伸工程、延伸されたフィルムの両側の側端部をトリミングし、中央のフィルム及び両側のトリミングされたフィルムに分離するトリミング工程、及びトリミングにより両側の側端部が除去された中央のフィルムを巻心に巻き取る巻取工程によりフィルムロールを製造するフィルムロール製造装置と、
請求項1又は請求項2に記載の検出装置と、を備える製造管理システム。
【請求項11】
搬送中のフィルムの両側端を複数の一対の把持部で把持しながら、該一対の把持部の幅方向の距離を徐々に広げることで前記フィルムを延伸する延伸工程、延伸されたフィルムの両側の側端部をトリミングし、中央のフィルム及び両側のトリミングされたフィルムに分離するトリミング工程、及びトリミングにより両側の側端部が除去された中央のフィルムを巻心に巻き取る巻取工程により製造されるフィルムロールの製造ラインで用いられる、フィルム搬送状態の検出方法であって、
前記延伸工程及び/又は前記トリミング工程において搬送される前記フィルムの表面の監視領域を撮影し、連続したフレーム画像を生成するステップ(a)と、
所定の時間差の2つのフレーム画像を比較して比較画像データを生成し、生成した比較画像データに基づいて、前記フィルムのばたつき度の指標を生成するステップ(b)と、
前記ステップ(b)で生成した前記指標を出力するステップ(c)と、を含む検出方法。
【請求項12】
搬送中のフィルムの両側端を複数の一対の把持部で把持しながら、該一対の把持部の幅方向の距離を徐々に広げることで前記フィルムを延伸する延伸工程、延伸されたフィルムの両側の側端部をトリミングし、中央のフィルム及び両側のトリミングされたフィルムに分離するトリミング工程、及びトリミングにより両側の側端部が除去された中央のフィルムを巻心に巻き取る巻取工程により製造されるフィルムロールの製造ラインで用いられる、検出装置を制御する制御プログラムであって、
前記延伸工程及び/又は前記トリミング工程において搬送される前記フィルムの表面の監視領域を撮影し、連続したフレーム画像を生成するステップ(a)と、
所定の時間差の2つのフレーム画像を比較して比較画像データを生成し、生成した比較画像データに基づいて、前記フィルムのばたつき度の指標を生成するステップ(b)と、
前記ステップ(b)で生成した前記指標を出力するステップ(c)と、を含む処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムロールの製造ラインにおけるフィルムの搬送状態を検出する検出装置、製造管理システム、検出方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、大画面テレビや大型モニターに使用されるようになってきており、これにともない液晶表示装置の表示面に用いられるフィルムも広幅化が求められている。例えば、2000mm幅以上の幅広のフィルムが要望されている。また、予め基材ロス(フィルムロス)を見込んだり、及び輸送コスト削減を図ったりするために、巻き長も1000m以上、更には3000m以上の長尺のフィルムロールの製造が求められる。
【0003】
フィルムロールを製造ラインでは、加熱状態の樹脂フィルムの両端部を複数のクリップで把持しながら引き伸ばす延伸工程、及び、延伸工程においてクリップにより掴まれることで変形したフィルム両端部の不要部分を切り落とすトリム工程を経て、巻取工程において巻心に巻き取られることによってフィルムロールが製造される。
【0004】
製造ラインにおけるフィルムの欠陥を検出する方法としては、特許文献1では、格子(メッシュ)が形成されたフィルムを製造する際に、フィルムの撮像により得られたフレーム画像を画像処理することで格子を検出し、格子を除去した画像データを解析することで欠陥を検出する検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フィルムロールの製造ラインでは、上述のような延伸工程、トリム工程等、を経てフィルムロールが製造されるが、これらの工程においてはフィルムの搬送が安定しないと、搬送不安定の程度によっては、搬送中のフィルムが破断し、製造ラインの生産停止が必要となる。このようなことから製造ラインにおいては、フィルムの破断等により生産停止に至る前に、フィルムの搬送状態を監視することが求められる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フィルムを製造する際のフィルム搬送状態を検出することで、破断等の生産停止に至る事象の発生を未然に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0009】
(1)搬送中のフィルムの両側端を複数の一対の把持部で把持しながら、該一対の把持部の幅方向の距離を徐々に広げることで前記フィルムを延伸する延伸工程、延伸されたフィルムの両側の側端部をトリミングし、中央のフィルム及び両側のトリミングされたフィルムに分離するトリミング工程、及びトリミングにより両側の側端部が除去された中央のフィルムを巻心に巻き取る巻取工程により製造されるフィルムロールの製造ラインで用いられる、検出装置であって、
前記延伸工程及び/又は前記トリミング工程において搬送される前記フィルムの表面の監視領域を撮影し、連続したフレーム画像を生成する撮像部と、
所定の時間差の2つのフレーム画像を比較して比較画像データを生成し、生成した比較画像データに基づいて、前記フィルムのばたつき度の指標を生成する処理部と、
前記指標を出力する出力部と、を備える、検出装置。
【0010】
(2)前記処理部は、2つのフレーム画像を差分処理することにより前記比較画像データを生成し、生成した前記比較画像データの画素のうち、所定の閾値を超える画素を抽出し、抽出した画素の個数、又は、抽出した画素の面積を、前記指標とする、上記(1)に記載の検出装置。
【0011】
(3)前記撮像部は複数であり、前記複数の撮像部はそれぞれ、前記トリミング工程の切断位置よりも下流側において、両側のトリミングされたフィルムの表面が前記監視領域となるように配置されており、
前記処理部は、両側のトリミングされたフィルムの一方の指標及び他方の指標を生成し、
前記出力部は、一方の指標及び他方の指標を、比較して視認できるように、表示部に並べて表示する、上記(1)又は上記(2)に記載の検出装置。
【0012】
(4)さらに、前記フィルムロールの製造履歴のデータを記憶する記憶部を備え、
前記出力部は、製造中のフィルムロールの前記指標を表示部に表示するとともに、記憶部から読み出した、過去のフィルムロール製造時の前記指標を表示する、上記(1)又は上記(2)に記載の検出装置。
【0013】
(5)前記撮像部は、その光軸と前記フィルムの表面とのなす角度である撮影角度が10度以上、30度以下、及び前記光軸と前記フィルムとの交点まで距離が100mm以上300mm以下となるように配置されている、上記(1)又は上記(2)に記載の検出装置。
【0014】
(6)前記撮像部は、前記延伸工程において搬送される前記フィルムの表面の監視領域を撮影し、
前記撮像部は、その光軸と前記フィルムの表面とのなす角度である撮影角度が10度以上、30度以下、及び前記光軸と前記フィルムとの交点まで距離が1.0m以上2.0m以下となるように配置されている、上記(1)又は上記(2)に記載の検出装置。
【0015】
(7)前記撮像部は、前記延伸工程において搬送される前記フィルムの表面の監視領域を撮影し、
前記撮像部は、その光軸と前記フィルムの表面とのなす角度である撮影角度が10度以上、20度以下、及び前記光軸と前記フィルムとの交点まで距離が1.5m以上3.0m以下となるように配置されている、上記(1)又は上記(2)に記載の検出装置。
【0016】
(8)前記フィルムの前記監視領域に光を照射する光源を備え、
前記光源からの直接光が、前記撮像部に入らないように構成されている、
上記(1)又は上記(2)に記載の検出装置。
【0017】
(9)前記フィルムの前記監視領域に光を照射する光源を備え、
前記フィルムは、光を透過するフィルムであり、
前記光源は、前記撮像部とは、前記フィルムに対して反対の面側に配置され、前記光源からの前記フィルムを透過した直接光が、前記撮像部に受光しないように構成されている、上記(1)又は上記(2)に記載の検出装置。
【0018】
(10)搬送中のフィルムの両側端を複数の一対の把持部で把持しながら、該一対の把持部の幅方向の距離を徐々に広げることで前記フィルムを延伸する延伸工程、延伸されたフィルムの両側の側端部をトリミングし、中央のフィルム及び両側のトリミングされたフィルムに分離するトリミング工程、及びトリミングにより両側の側端部が除去された中央のフィルムを巻心に巻き取る巻取工程によりフィルムロールを製造するフィルムロール製造装置と、
上記(1)又は上記(2)に記載の検出装置と、を備える製造管理システム。
【0019】
(11)搬送中のフィルムの両側端を複数の一対の把持部で把持しながら、該一対の把持部の幅方向の距離を徐々に広げることで前記フィルムを延伸する延伸工程、延伸されたフィルムの両側の側端部をトリミングし、中央のフィルム及び両側のトリミングされたフィルムに分離するトリミング工程、及びトリミングにより両側の側端部が除去された中央のフィルムを巻心に巻き取る巻取工程により製造されるフィルムロールの製造ラインで用いられる、フィルム搬送状態の検出方法であって、
前記延伸工程及び/又は前記トリミング工程において搬送される前記フィルムの表面の監視領域を撮影し、連続したフレーム画像を生成するステップ(a)と、
所定の時間差の2つのフレーム画像を比較して比較画像データを生成し、生成した比較画像データに基づいて、前記フィルムのばたつき度の指標を生成するステップ(b)と、
前記ステップ(b)で生成した前記指標を出力するステップ(c)と、を含む検出方法。
【0020】
(12)搬送中のフィルムの両側端を複数の一対の把持部で把持しながら、該一対の把持部の幅方向の距離を徐々に広げることで前記フィルムを延伸する延伸工程、延伸されたフィルムの両側の側端部をトリミングし、中央のフィルム及び両側のトリミングされたフィルムに分離するトリミング工程、及びトリミングにより両側の側端部が除去された中央のフィルムを巻心に巻き取る巻取工程により製造されるフィルムロールの製造ラインで用いられる、検出装置を制御する制御プログラムであって、
前記延伸工程及び/又は前記トリミング工程において搬送される前記フィルムの表面の監視領域を撮影し、連続したフレーム画像を生成するステップ(a)と、
所定の時間差の2つのフレーム画像を比較して比較画像データを生成し、生成した比較画像データに基づいて、前記フィルムのばたつき度の指標を生成するステップ(b)と、
前記ステップ(b)で生成した前記指標を出力するステップ(c)と、を含む処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る検出装置は、前記延伸工程及び/又は前記トリミング工程において搬送される前記フィルムの表面の監視領域を撮影し、連続したフレーム画像を生成する撮像部と、所定の時間差の2つのフレーム画像を比較して比較画像データを生成し、生成した比較画像データに基づいて、前記フィルムのばたつき度の指標を生成する処理部と、前記指標を出力する出力部と、を備える。これにより、フィルムを製造する際のフィルム搬送状態を検出することで、破断等の生産停止に至る事象の発生を未然に防止する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】フィルムロールの製造ラインを示す模式図である。
【
図2】
図1の製造ラインの延伸工程、乾燥工程、トリム工程の上面模式図である。
【
図3】
図2に対応する斜視図であり、主にトリム工程の構成を示す模式図である。
【
図6A】トリム工程の監視領域を説明するための図である。
【
図7A】延伸工程の監視領域の配置を説明するための図である。
【
図7C】変形例における撮像部及び光源の配置例を示す図である。
【
図8】検出装置による搬送状態の検出処理を示すフローチャートである。
【
図9A】撮影により得られた時系列のフレーム画像を示す模式図である。
【
図9B】搬送状態を示す指標の算出処理を示す模式図である。
【
図10】第2の実施形態における、検出装置によるトリム工程での搬送状態の検出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかしながら、本発明の範囲は、開示される実施形態に限定されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0024】
最初に、
図1から
図4を参照し、フィルムロール80の製造ラインについて説明する。
図1は、フィルムロールの製造ラインを示す模式図である。
【0025】
(フィルムロールの製造ライン)
図1に示すフィルムロール製造装置100は、溶液流延方式により光学フィルムを製造する。
【0026】
溶液流延方式は、原料の樹脂を溶媒に溶解し、これに必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の各種の添加剤を加えて調製したドープを、無限移行する無端の金属支持体(例えばベルトあるいはドラム)の上に、ダイスより吐出し、流延した後、無端支持体上である程度まで溶媒を除去した後、無端支持体から剥離し、次いで各種の搬送手段により乾燥部を通過させて溶媒を除去し巻取り軸に巻き取り製造する方法である。
【0027】
図1に示すようにフィルムロール製造装置100は、流延部01と、第1乾燥部02と延伸部03と、トリミング部05と、第2乾燥部06と、巻取部07(巻取装置ともいう)とを有している。また、これらの各構成部01~03、05~07は、制御装置08(後述の
図5参照)により、製造条件が制御される。
【0028】
フィルムロール製造装置100においては、延伸部03及び/又はトリミング部05には、検出装置90が配置されている。検出装置90は、製造ラインにおいて搬送されているフィルムF8(又は未延伸フィルムF8a)の表面を監視領域として、フィルム面を撮影し、得られたフレーム画像を解析することで、フィルムF8(又は未延伸フィルムF8a)の搬送状態を検出する。検出装置90の構成については、後述する(
図5~
図8)。
図1において白抜き矢印は、フィルム等の搬送方向を示す(
図2、
図3等も同じ)。
【0029】
流延部01は、エンドレスで走行(図中の矢印方向)する無端支持体の鏡面帯状金属流延ベルト(以下、ベルトという)01aと、樹脂を溶媒に溶解したドープを、ベルト01aに流延するダイス01bとを有している。尚、ダイス01bから流出するドープ膜を安定にするために、ダイス01bのベルトの搬送方向に対して上流側には減圧室(不図示)、下流側には加圧室(不図示)が配設されてもよい。
【0030】
01dはベルト01aに流延されて形成された流延膜01cを剥離する剥離ロールを示し、F8aは剥離された未延伸の未延伸フィルムを示す。以下においては、フィルムF8、未延伸フィルムF8aを総称してフィルムF8等とも表記する。
【0031】
第1乾燥部02(第1乾燥工程)は、乾燥風取り入れ口02bと排出口02cとを有する乾燥箱02aと、未延伸フィルムF8aを搬送する上下一組で、複数組から構成されている搬送ロール02dを有している。
【0032】
第1乾燥部02では、延伸部03(延伸工程)に入る前の未延伸フィルムF8aに含まれる溶剤量の調整を行うことが可能である。この溶剤量の調整は、制御装置08により第1乾燥部02での乾燥温度、搬送速度を変更することで行われる。
【0033】
(延伸部03、トリミング部05)
図2は、
図1の製造ラインの延伸工程(テンター工程とも称する)、乾燥工程、トリム工程の上面模式図である。
図3は
図2に対応する斜視図であり、主にトリム工程の構成を示す模式図である。
図4は、トリミング部の構成を示す概略図である。
図2~
図4(
図6A、
図6B等も同様)においては、上下方向をZ方向、フィルムF8の搬送方向をX方向、搬送方向に直交する方向であって、フィルムF8の幅方向をY方向とする。X方向乃至搬送方向は、MD(Machine Direction)ともいう。また、Y方向乃至幅方向は、TD(Transverse Direction)又は左右方向ともいう。
【0034】
延伸部03は、MD延伸部03a、及びTD延伸部03bを有する。延伸部03は、第1乾燥部02から搬送されてくる未延伸フィルムF8aを延伸する。
図2、
図3に示すように、延伸部03は、複数の左右一対の把持部301で、フィルムF8の両側端を把持する。延伸部03は、把持部301、チェーン、駆動部、クローザー、オープナー等を備える(把持部301以外は図示を省略している)。
【0035】
上流側のMD延伸部03a(MD延伸工程)では、下流側に搬送されるにつれ加速しながら移動することで、搬送方向における移動速度が徐々に上昇する(
図3、
図4では黒塗り矢印で示す)。これによりMD延伸工程では、未延伸フィルムF8aは、MD方向に引き伸ばされながら搬送される。
【0036】
次段のTD延伸部03b(TD延伸工程)ではフィルムF8等は、把持部301によって搬送される。把持部301は、例えばクリップであり、左右それぞれの把持部301は、例えば無端状のチェーンに連結されており、スプロケットに巻回されたチェーンが駆動部により回転させられることで、把持部301は、搬送方向等に移動する。延伸部03のTD延伸工程の最上流側にクローザーが配置され、最下流側にオープナーが配置される。把持部301は、クローザーの位置に達することで、開状態の把持部301は順次閉じられ、またオープナーの位置に達することで順次開放される。閉状態の把持部301によりフィルムF8等の側端が把持され、搬送される。このTD延伸部03b(TD延伸工程)では、フィルムF8等を把持した左右一対の把持部301は、搬送方向に移動するとともに幅方向の外側に徐々に移動する(
図3、
図4では黒塗り矢印で示す)。これによりTD延伸工程では、一対の把持部301は、幅方向の距離(間隔)が徐々に広がり、これに把持されたフィルムF8等は、TD方向に引き伸ばされながら搬送される。
【0037】
図4は、トリミング部05(トリム工程)の構成を示す概略図である。
図2~
図4に示すように、トリミング部05は、切断部05a及び回収部05bを有する。
【0038】
切断部05aは、左右2つのスリッター511、及び複数のローラー512、513を含む。スリッター511は、例えば、回転可能に軸支された円形刃または皿型刃であり、駆動部(不図示)により回転される。スリッター511の回転は、切断位置においてフィルムF8の搬送方向と順方向で、略一致する速度で回転駆動するようにしてもよく、反対方向で逆回転駆動するようにしてもよい。
【0039】
2つのスリッター511により、切断位置x1、x2以降のフィルムF8は、中央部分のフィルムF8、および両側の側端部であるトリミングフィルムF801、F802(耳部、または耳ともいう)に分離される。また、右側のスリッター511の切断位置x1と、左側のスリッター511の切断位置x2は、搬送方向において同じ位置となるように構成してもよく、搬送方向において所定の間隔(例えば数mm~数m)を空けて互い違い状に配置されていてもよい。
図3に示す例では、切断位置x1よりも切断位置x2の方が2m程度上流側に設定されている。互い違い状に配置することで、幅方向両端部のスリット時にフィルムF8にかかる応力が、それぞれのスリッター511の反対側に逃げることが可能となるので、切断時において小さなシワの発生がなくなり、それによって擦りキズの発生も軽減する。
【0040】
中央部分のフィルムF8は、製品となる領域であり、その幅は1000mmから2500mmの範囲である。トリミングフィルムF801、F802の幅(トリム幅ともいう)は、ともに、数十~百数十mm程度(例えば170mm)である。中央部分のフィルムF8は、搬送方向の下流側に搬送され後段の巻取工程に供給される。一方でトリミングフィルムF801、F802は、ローラー512により下方に90度向きを変えて搬送され、後段の回収部05bにより回収される。
【0041】
回収部05bは、ダクト521、ダクト521の内部に配置された回転カッター522、および掃除機523を有する。掃除機523は、吸引ファン(図示せず)を備え、掃除機523及びダクト521の内部を負圧にする。トリミングフィルムF801(または耳部802)の先端は、ダクト521内に引き込まれ、内部の回転カッター522により、数mmサイズの細かいチップF8zに切断され、下流側の掃除機523内のダストボックスに回収される。
【0042】
中央部分のフィルムF8は、下流側の巻取部07に搬送される。トリミング部05と巻取部07の間に、ナーリング工程を設けナーリング処理が施されてもよい。ナーリング工程では、トリミング後のフィルムF8の両端にナーリングが形成される。
【0043】
第2乾燥部06(第2乾燥工程)は、第1乾燥部02と基本的構成は同じであるので説明は省略する。
【0044】
(巻取部07)
巻取部07は、トリミング部05で両端にナーリングが形成されたフィルムF8を巻取る巻取り機07a、同伴空気量制御装置07b、延伸フィルムF8の走行速度を検出する為の接触又は非接触式のリニアエンコーダ07cと、巻取り軸回転数測定機07dと、テンション制御装置07eと、厚さ測定装置6fとを有している。
【0045】
図1等に示す如く流延部01は、原料の樹脂を溶媒に溶解し、これに必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の各種の添加剤を加えて調製したドープを、無限移行する無端のベルト01aの上に、ダイス01bより吐出し、流延し形成した流延膜を無端支持体上である程度まで溶媒を除去した後、ベルトから剥離し、次いで各種の搬送手段により乾燥部、延伸部03を通過させて両端部をトリミングし、および適宜ナーリングを形成した後に、巻取部07で巻取り軸に巻き取ることで光学フィルムが製造される。
【0046】
図1から
図4に示される製造されるフィルムF8の素材としては、特に限定されないが、一般的には、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、スチレン樹脂、酢酸セルロース樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。また、例えば、フィルムF8の幅は、生産性、品質等を考慮し、1000mmから2500mmが好ましい。厚さは、品質、ハンドリング等を考慮し、15μmから50μmが好ましい。
【0047】
巻取軸82(
図1参照。巻取り軸は巻心ともいう)に巻き取られたフィルムロール80の光学フィルムF8の長さは、生産性、巻取り品質等を考慮し、2000mから8000mが好ましい。巻取り長さは、速度と時間より算出した値を示す。巻取速度は、例えば100m/minである。
【0048】
(製造管理システム200)
次に、
図5~
図7Bを参照し、検出装置90の構成、およびこれを備えた製造管理システム200のハードウェア構成について説明する。
図5は、検出装置90およびこれを備えた製造管理システム200の構成を示す概略図である。製造管理システム200は、フィルムロール製造装置100、及び検出装置90を含む。検出装置90またはフィルムロール製造装置100は、ディスプレイ81、PC(パーソナルコンピュータ)82、発報部83と接続されている。検出装置90(出力部95)は、フィルムF8等の搬送状態の判定結果を、ディスプレイ81、PC82、制御装置08の少なくともいずれかに出力する。また、検出装置90(出力部95)は、フィルムF8等の搬送状態の異常を検出したときには、ディスプレイ81やPC82、制御装置08に出力し、およびこれを受けた制御装置08は、発報部83を通じてユーザーに警告する。発報部83は、例えば、製造ラインに配置されたパトランプ、スピーカー、サイレン、およびディスプレイの少なくともいずれかである。
【0049】
(フィルムロール製造装置100)
フィルムロール製造装置100は、上述したように、流延部01、第1乾燥部02、延伸部03、トリミング部05、第2乾燥部06、および巻取部07を有する。また、フィルムロール製造装置100は、これらの各構成部01~03、05~07の製造条件を設定する制御装置08を含む。制御装置08は、CPU、メモリ等で構成される。例えば制御装置08が制御する製造条件として以下がある。
・各工程共通で、フィルムF8(F8a)の搬送速度調整、
・流延部01での膜厚調整、
・第1、第2乾燥部02、06での乾燥温度調整、残留溶媒量調整、
・延伸部03の搬送張力調整、延伸温度調整、延伸倍率調整、延伸時のフィルムF8aの端部温度調整、フィルムF8aへの吹き付け風量調整、
・トリミング部05でのトリム幅調整。
【0050】
(検出装置90)
検出装置90は、搬送されているフィルムF8または未延伸フィルムF8a(以下、これらをまとめてフィルムF8等ともいう)の搬送状態の異常、特にばたつきを検出する。検出装置90は、監視領域を撮影する複数の撮像部91a~91d(以下、これらを総称して撮像部91ともいう)、監視領域に光を照射する光源92、撮像部91から得られたフレーム画像を処理することで搬送状態(搬送異常)を判定する処理部93、記憶部94、および出力部95を備える。
【0051】
(処理部93、記憶部94)
処理部93は、CPU、RAM等から構成され、記憶部94に記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、当該プログラムとの協働により各種処理を行う。処理部93の判定処理については後述する。
【0052】
記憶部94は、HDD、SSD(Solid State Drive)等により構成され、各種処理プログラム、当該プログラムの実行に必要なデータ等を記憶している。記憶部94は、カメラレコーダーの機能を有し、撮像部91の撮影により得られた時系列のフレーム画像(動画像)をリアルタイムで記憶する。また、記憶部94には、製造履歴が記録されている。製造履歴は、フィルムロールの製造条件、およびその製造時の指標データが紐付けて記録される。
【0053】
(撮像部91、光源92)
図6A、
図6Bは、トリム工程の監視領域を説明するための図である。
図7A、
図7Bは、延伸工程の監視領域を説明するための図である。
【0054】
撮像部91は、CCDまたはCMOSの撮像素子、及びレンズ等の光学系で構成され、時系列のフレーム画像を出力する。また撮像部91には、撮影したフレーム画像を一時的に記憶するバッファメモリが設けられてもよい。また、撮像部91としては、制御部、およびネットワークI/Fを備えたネットワークカメラが用いられてもよい。撮像部91の撮像素子としては、例えば、1/2インチサイズのCMOSが用いられる。撮像部91は、1920×1080ピクセルの画像を最大100~120fpsのフレームレートで出力する。フレームレートは最大レートの範囲内で適宜設定できる。例えば、120、100、60、30fpsのフレームレートに設定できる。以下においては100fpsで撮影したものとして説明する。
図3、
図4に示すように、監視領域a1~a4は、搬送中のフィルムF8等の表面に設置されている。撮像部91は、光源92により照射され、フィルムF8の監視領域において反射された光のうち拡散光を検出する。ここでは、撮像部91として、カラーカメラまたは白黒カメラ(モノクロカメラ)が用いられる。撮像部91、光源92は、可視光領域の光を照射し、これを検出してもよいし、赤外線領域の光を照射し、これを検出してもよい。以下においては、光源92は白色光源であり、撮像部91は可視光領域の光を検出する場合を例として説明する。
【0055】
(トリム工程における監視領域a1、a2)
図3、
図6Aに示すように、監視領域a1は、トリミング工程の切断位置x1よりも下流側において、トリミングされたフィルムであるトリミングフィルムF801の表面を撮影するように設定されている。監視領域a2は、トリミング工程の切断位置x2よりも下流側において、トリミングされたフィルムであるトリミングフィルムF802の表面を撮影するように設定されている。幅方向において監視領域a1は、幅百数十mmのトリミングフィルムF801の全範囲を包含する。
【0056】
図6A、
図6Bを参照し、監視領域a1における撮像部91a、光源92、反射防止板99aの配置位置について説明する。監視領域a2における撮像部91b、光源92、および反射防止板99bの配置位置は、
図6Bにおける各構成部と同じ配置または左右を逆にした線対称配置であり、説明を省略する。
【0057】
図6A、
図6Bに示すように、撮像部91aの光軸c1は、フィルムF801の表面において交点p1で交差する。光軸c1は、撮影方向とも称され、撮像部91aのレンズの光軸である。交点p1は、監視領域a1の略中心に位置する。撮影角度α1は、光軸c1とフィルムF801の表面(理想的に搬送された場合の表面)とのなす角度である。撮影角度α1は、入射角の余角に相当する。撮影角度α1の好ましい範囲は10度以上、30度以下である。より好ましい撮影角度α1は20度である。また、撮像部91aから交点p1までの距離、より詳細には、撮像部91aのレンズ外表面から交点p1までの距離の好ましい範囲は、100mm以上300mm以下である。より好ましい距離は200mmである。
【0058】
光源92は、撮像部91aに直接光が入らないよう、すなわち、直接光が撮像部91aのレンズに入らず、および直接光が光学素子に受光しないように配置、および構成されている。また、光源92から照射光のフィルムF801表面からの正反射光が撮像部91aに入らずに、表面からの散乱反射光のみが撮像部91に入るように配置されることが好ましい。光源92は、面光源または複数の単光源の集合で構成されることが好ましい。
【0059】
また、反射防止板99aを配置することが好ましい。反射防止板99a(99b~99d)は、照射光を吸収する部材である。例えば反射防止板99aは黒色である。また反射防止板48の素材としては、一般的なプラスチック(ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等)、ゴム、フェルト、合成繊維、紙等が用いられる。反射防止板99aは、光軸c1から交点p1を透過した延長線t1上、および光軸c1を交点p1で撮影角度α1と同じ角度で折り返した延長線r1上を含むような、サイズおよび位置に配置することが好ましい。反射防止板99aをこのような配置にすることで点prからの交点p1を介した正反射光、および点ptからの交点p1を通過した直接の透過光が撮像部91aに入ることを抑制できる。
【0060】
(延伸工程における監視領域a3、a4)
図3、
図7Aに示すように、監視領域a3、a4は延伸工程に配置されている。監視領域a3は、搬送方向の位置x3において延伸処理中のフィルムF8等の表面を撮影するように設定されている。監視領域a4は、監視領域a3よりも下流側の、搬送方向の位置x4において、延伸処理中のフィルムF8等の表面を撮影するように設定されている。監視領域a3と監視領域a4は、搬送方向(X方向)において異なる位置で、幅方向(Y方向)においてフィルムF8等の同じ位置を撮影するように設定することが好ましい。また、監視領域a3、a4は搬送方向において、離れていてもよく、一部がオーバーラップしてもよい。また、監視領域a3は、MD延伸工程に設け、監視領域a4をTD延伸工程に設けてもよく、両方の監視領域a3、a4をともに、MD延伸工程およびTD延伸工程に設けてもよい。また、延伸工程において、3箇所以上の監視領域が設定されてもよい。
【0061】
図7A、
図7Bを参照し、最初に、監視領域a3における撮像部91c、光源92、反射防止板99cの配置位置について説明する。監視領域a3は、主にフィルムF8等のばたつき度を監視するための領域であり、フィルムF8等の幅方向の中央を監視する。ここでいうばたつき度とは、フィルムF8等の上下の振動である。
【0062】
図7A、
図7Bに示すように、撮像部91cは、延伸中のフィルムF8等の下方(背面側)に配置されている。このような配置とすることで、ばたつき度の検出感度が向上する。撮像部91cの光軸c1は、フィルムF8等の表面において交点p3で交差する。交点p3は、監視領域a3の略中心に位置する。上述のように監視領域a3は、幅方向においてフィルムF8等の中央付近になるように設置している。撮影角度α3は、光軸c1とフィルムF8等の表面(理想的に搬送された場合の表面)とのなす角度である。撮影角度α3の好ましい範囲は10度以上、30度以下である。より好ましい撮影角度α3は20度である。また、撮像部91cから交点p3までの距離、より詳細には、撮像部91cのレンズ外表面から交点p3までの距離の好ましい範囲は、1m以上2.5m以下である。より好ましい距離は2mである。
【0063】
光源92は、フィルムF8等に対して撮像部91cとは反対側に、すなわち、フィルムF8等の上方に配置されている。また、光源92は、撮像部91cに直接光が入らないよう、すなわち、直接光が撮像部91cのレンズに入らず、および直接光が光学素子に受光しないように配置、および構成されている。また、光源92から照射光のフィルムF8等の表面からの正反射光が撮像部91cに入らずに、表面からの散乱反射光のみが撮像部91に入るように配置されることが好ましい。光源92は、面光源または複数の単光源の集合で構成されることが好ましい。
【0064】
また、反射防止板99cを配置することが好ましい。反射防止板99cは、
図6Bで示したように光軸c1から交点p3を透過した延長線上、および光軸c1を交点p3で撮影角度α3と同じ角度で折り返した延長線上を含むような、サイズおよび位置に配置することが好ましい。
【0065】
次に、
図7A、
図7Cを参照し、監視領域a41における撮像部91d1、光源92、反射防止板99cの配置位置について説明する。監視領域a4は、監視領域a41、a42に分けられ、それぞれフィルムF8等の中央よりも外側の端部付近を監視する。
図7Aにおいて監視領域a41は未延伸フィルム8aの右側を監視し、監視領域a42は未延伸フィルム8aの左側を開始するように配置されている。
図7Cは、右側の監視領域a41における撮像部91d1、および撮像部91d1用の光源92、反射防止板99dを示している。左側の監視領域a2におけるこれらの配置は、左右対称ではあるが、
図7Cの配置と同様のため説明を省略する。なお、管理領域a41、a42は、搬送方向の同じ位置x4が監視領域の中心(交点p41、42)となるように配置されているが、これに限られず、互い違いに少しずらして配置してもよい。また両監視領域a41、a42の光源92は独立して設けた例を示しているが、幅方向に延在する1つの光源92を適用してもよい。
【0066】
図7Cに示す監視領域a41は、主にフィルムF8等の搬送異常としてのつれ状態を監視するための領域であり、フィルムF8等の幅方向の中央よりも端部側を監視する(監視領域a42も同様)。
【0067】
ここで「ツレ」とは、フィルム(フィルムF8等)を把持部301により両側に引っ張った際に、フィルムの中央や、これよりもやや外側に生じるフィルムが波打つ現象のことである。「ツレ」現象においてもばたつき度と同様の処理により検出できる。以下においては、フィルムF8、F8aの上下のばたつきの程度、およびツレ現象の程度を合わせて「ばたつき度」ともいう。
【0068】
図7A、
図7Cに示すように、撮像部91c、および光源92をともに、延伸中のフィルムF8等の上方(表面側)に配置している。このような配置とすることで「ツレ」現象の検出感度が向上する。撮像部91cの光軸c1は、フィルムF8等の表面において交点p3で交差する。交点p3は、監視領域a3の略中心に位置する。撮影角度α4は、光軸c1とフィルムF8等の表面(理想的に搬送された場合の表面)とのなす角度である。撮影角度α4の好ましい範囲は10度以上、20度以下である。より好ましい撮影角度α4は15度である。また、撮像部91cから交点p3までの距離、より詳細には、撮像部91cのレンズ外表面から交点p3までの距離の好ましい範囲は、1.5m以上3.5m以下である。より好ましい距離は2.5mである。このような配置とすることで、フィルムF8aのツレをより適切に検出できる。
【0069】
(搬送状態の検出処理)
図8は、検出装置90による搬送状態の検出処理を示すフローチャートである。
図8に示す処理は、監視領域a1~a4の少なくともいずれかを、撮像部91a~91dの少なくともいずれかで撮影して、搬送状態を検出するものである。複数の監視領域a1~a4を撮影する場合には、各監視領域における搬送状態の検出は同じ処理を並行して行うが、処理内容は同じである。以下においては、代表として、監視領域a1を撮像部91aで撮影する場合を例として説明する。また、
図8に示す処理は、搬送されるフィルムF8等を撮影して得られたフレーム画像をリアルタイムで処理するものであり、1フレームまたは数フレームの時間間隔で逐次処理される(
図10、
図12等の他の処理も同様)。
【0070】
(ステップS01)
フィルムロールの製造中において、撮像部91aは、監視領域a1を撮影する。撮影により時系列のフレーム画像が得られる。
図9Aは、撮像部91aにより得られた時系列のフレーム画像の例である。撮像部91aが、例えば100fpsで撮影された場合には、現在(最新)のフレーム画像tと、1個前のフレーム画像t-1との時間差は0.01secであり、10個前のフレーム画像t-10との時間差は0.1secである。時系列のフレーム画像は、撮像部91aのバッファメモリ、または記憶部94に記憶されている。
【0071】
(ステップS02)
処理部93は、現在のフレーム画像tと、所定の時間差分前のフレーム画像tnを取得する。所定の時間差としては、0.01sec以上0.5sec未満(100fpsではt-1~t-50)が好ましい。所定時間差が0.5sec以上だとフィルムF8等のばたつきの周期よりも長く、搬送状態を正しく捉えることができない。また、所定時間差が0.01secよりも短いと、ばたつきの周期に対して過剰となり処理の負荷が増大する。例えば所定の時間差として0.1secが適用される。この場合、100fpsの撮像条件であれば、処理部93は、現在のフレーム画像tと、10個前のフレーム画像t-10を取得する。また仮に撮像条件が60fpsであれば処理部93は、現在のフレーム画像tと6個前のフレーム画像t-6を取得する。
【0072】
(ステップS03)
処理部93は、ステップS02で取得した、2つのフレーム画像を比較することで比較画像データを生成する。
図9Bは、搬送状態を示す指標の算出処理を示す模式図である。処理部93は、2つのフレーム画像t、t-10を差分処理することで、比較画像データ(差分画像データ)を生成する。輝度値が低い画素(濃度が濃い)は、比較画像データとしては大きな画素値(信号)が差分値として残る。
【0073】
(ステップS04)
処理部93は、フィルター処理をすることで予め設定した閾値以上の画素値を持つ画素を抽出する。例えば処理部93は、予め設定した閾値を用いて、比較画像データを2値化し、画素値が低い箇所を抽出し、抽出した画素の個数をカウントする(個数y個)。処理部93は、画素値の個数に代えて抽出した画素の面積を算出するようにしてもよい。1つの画素あたりの面積は、解像度、画角、対象物までの距離により算出できる。また、処理部93は、抽出した画素をクラスタリング処理して、連続した画素のみをカウント対象としてもよい。
【0074】
(ステップS05)
処理部93は、ステップS04で算出した面積(または個数)に応じた指標を決定する。例えば、処理部93は、指標として、面積(または個数)をそのまま用いてもよく、面積に応じた複数段階の閾値で複数ランク(例えばA~Cランク)に分類し、これを指標として決定する。
【0075】
(ステップS06)
出力部95は、検出結果(指標)を出力する。例えば、出力部95は、検出結果(指標)を、ディスプレイ81(表示部)に表示したり、PC82に送信したり、制御装置08に送信したりする。
【0076】
このように、第1の実施形態に係る検出装置は、搬送されるフィルムの表面の監視領域を撮影し、連続したフレーム画像を生成する撮像部と、所定の時間差の2つのフレーム画像を比較して比較画像データを生成し、生成した比較画像像データに基づいて、フィルムのばたつき度の指標を生成する処理部と、指標を出力する出力部と、を備える。これにより、検出装置90は、フィルムを製造する際に、フィルム搬送状態を適切に検出できるので、破断等の生産停止に至る事象の発生を未然に防止できる。
【0077】
(第2の実施形態)
次に、
図10、
図11を参照し、第2の実施形態について説明する。
図10は、第2の実施形態に係る検出装置90による搬送状態の検出処理を示すフローチャートである。以下においては、監視領域a1、a2を、撮像部91a、91bで撮影する。
【0078】
(ステップS11)
2つの撮像部91a、91bは、両側のトリミングフィルムF801、F802の監視領域a1、a2をそれぞれ撮影する。
【0079】
(ステップS12)
処理部93は、2つの撮像部91a、91bそれぞれのフレーム画像から指標値を決定する。ここでの処理は、
図8のステップS02~S05の処理と同じであり説明を省略する。
【0080】
(ステップS13)
出力部95は、両側のトリミングフィルムF801、F802それぞれの検出結果(指標)を並べて表示部(ディスプレイ81、またはPC82のディスプレイ)に表示する。
図11は、両側のトリミングフィルムF801(右側)およびトリミングフィルムF802(左側)の搬送状態の検出結果をディスプレイ81に表示した表示例である。
図11は、検出装置90が、所定の周期(例えば0.1sec)で、ステップS11、S12の処理を行いリアルタイムで表示した例である。
図11において横軸は時間(時間:分)であり、縦軸は面積(画素数)である。
図11では、4時0分~5時0分の1時間の間に搬送の異常が発生した際の検出結果を示している。
【0081】
(ステップS14)
処理部93は、記憶部94から、現在生産中のフィルムと同じものを生産した過去の履歴情報を読み出し、表示部に表示する。
図11においては、上方の四角枠が過去の履歴情報である。履歴情報には、安定時、すなわち搬送が正常に行われている場合の平均値、変動幅、および標準偏差と、破断時、すなわち搬送が異常の場合の平均値、変動幅、および標準偏差を示している。これらの履歴は表ではなく、搬送結果の波形表示位置に横ラインとして表示されてもよい。例えば、正常時の平均値、変動幅(上限値、下限値)の数値に応じた横ラインが波形データに重畳して表示される。このように過去の履歴が表示されることでユーザーは、現在の製造ラインの状況が適正か否かを容易に把握できる。
【0082】
(ステップS15)
処理部93は、検出結果が発報レベルであるか否かを判定する。例えば、指標が所定値以上の場合には、発報レベルであると判定し(YES)、処理をステップS16に進める。
【0083】
(ステップS16)
出力部95は、発報処理を行う。例えば、出力部95は、制御装置08に警告を通知したり、ディスプレイ81に警告を表示したりする。また、警告を受けた制御装置08は、発報部83を通じてユーザーに警告する。
【0084】
(ステップS17)
ユーザーは、警告表示に応じて、製造ラインの製造条件を変更する。この製造条件の変更は、制御装置08側で自動的に行うようにしてもよく、推奨の製造条件をディスプレイ等に出力するようにしてもよい。例えば、制御装置08が自動的に行う場合には、制御装置08は、ばたつきを抑制するために、流延部01の設定を変更し膜厚を下げたり、各構成部01~03、05~07を制御して搬送速度を下げたりする。また、制御装置08は、トリミング部05での搬送張力、延伸温度、延伸時の端部温度、トリム幅を調整したりする。
【0085】
このように第2の実形態においては、撮像部は複数であり、複数の撮像部はそれぞれ、トリミング工程の切断位置よりも下流側において、両側のトリミングされたフィルムの表面が監視領域となるように配置されており、処理部は、両側のトリミングされたフィルムの一方の指標及び他方の指標を生成し、出力部は、一方の指標及び他方の指標を、比較して視認できるように、表示部に並べて表示する。このようにすることで、ユーザーは、適切にフィルムの搬送状態を把握できる。
【0086】
(他の変形例)
延伸工程においては
図7A等に示すように、監視領域a3、a4は、フィルムF8aの全幅に渡るように配置される。この場合、処理部93は、フィルムF8aの長手方向(搬送方向)、および幅方向において、複数の区分に分け、区分毎にステップS03~S04の処理を行い、伝播具合により把持部301による把持状態(クリップ適正)を判定するようにしてもよい。例えば、処理部93は、1枚のフレーム画像を縦横複数のグリッドに分け、グリッド毎に指標を算出する。そして、指標が高い(搬送状態が悪い)グリッドが、上流から下流に移動するにつれて、中央付近から外側に移動することで、幅手方向の伝播状態を把握できる。
【0087】
以上に説明した製造管理システム200、および検出装置90の構成は、上記の実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上記の構成に限られず、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。また、一般的な製造管理システム、および検出装置が備える構成を排除するものではない。
【0088】
図7Aでは、延伸工程において搬送方向に並べて2つの監視領域を配置した例を説明したが、延伸工程においては、1つの監視領域を配置してもよく、3つ以上の監視領域を配置してもよい。また、監視領域a3、a4は幅方向において監視する領域が異なるので、搬送方向の同じ位置に配置してもよい。また、これらの監視領域a3、a4を搬送方向において、複数並べてもよい。例えば、TD延伸工程の入口と出口(最上流側と最下流側)にそれぞれ、管理領域a3、a4を配置してもよい。また、
図11の例では、過去の履歴情報として、安定時および破断時の両方の履歴データを表示する例を示したが、どちらか一方のみを表示するようにしてもよい。
【0089】
また、上述した実施形態に係る製造管理システム200、および検出装置90における各種処理を行う手段及び方法は、専用のハードウェア回路、又はプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、例えば、USBメモリやDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送され記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、装置の一機能としてその装置のソフトウエアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0090】
200 製造管理システム
90 検出装置
91、91a、91b、91c、91d 撮像部
92 光源
93 処理部
94 記憶部
95 出力部
100 フィルムロール製造装置
01 流延部
02 第1乾燥部
03 延伸部
05 トリミング部
05a 切断部
05b 回収部
06 第2乾燥部
07 巻取部
08 制御装置
81 ディスプレイ
82 PC
83 発報部