(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131118
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】巻付けラベル付き容器
(51)【国際特許分類】
B65D 23/08 20060101AFI20240920BHJP
B65D 23/00 20060101ALI20240920BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B65D23/08 B
B65D23/00 F
B65D65/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041193
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】三谷 まどか
(72)【発明者】
【氏名】原田 雅史
【テーマコード(参考)】
3E062
3E086
【Fターム(参考)】
3E062AA09
3E062AB02
3E062AC02
3E062AC08
3E062BB02
3E062BB06
3E062BB10
3E062DA02
3E062JA04
3E062JA08
3E062JB04
3E062JB26
3E062JC07
3E062JD10
3E086AA02
3E086AB01
3E086AC06
3E086AD04
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB55
3E086BB62
3E086CA13
(57)【要約】
【課題】搬送時における転倒を軽減する巻付けラベル付き容器を実現する。
【解決手段】巻付けラベル付き容器(1)は、内容物が充填された容器本体(10)と、容器本体(10)に装着される巻付けラベル(20)と、を備え、巻付けラベル(20)は、JIS-P8147(2010)に準じて測定した滑り角度を10.0度以上18.3度以下とする機能層(21)を外表面上の少なくとも一部に有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が充填された容器本体と、
前記容器本体に装着される巻付けラベルと、を備え、
前記巻付けラベルは、JIS-P8147(2010)に準じて測定した滑り角度を10.0度以上18.3度以下とする機能層を外表面上の少なくとも一部に有する、巻付けラベル付き容器。
【請求項2】
前記機能層はメジウム層である、請求項1に記載の巻付けラベル付き容器。
【請求項3】
前記容器本体は、少なくとも、首部及び胴体部により構成されており、
前記巻付けラベルは、前記容器本体の軸方向において前記胴体部の40%以上に装着されている、請求項1または2に記載の巻付けラベル付き容器。
【請求項4】
前記巻付けラベルは、10μm以上50μm以下の厚みを有する、請求項1または2に記載の巻付けラベル付き容器。
【請求項5】
前記容器本体は、250ml以上1,000ml以下の容量を有し、かつ、2,000mm2以上4,000mm2以下の底面積を有する、請求項1または2に記載の巻付けラベル付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、巻付けラベル付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、容器(ペットボトル等)には、商品名、絵柄、及び/又は、説明書きなどのデザインが表された各種ラベルが装着されている。ラベルとしては、例えば、熱収縮物品に装着されるラベル(以下、「シュリンクラベル」と称する)、及び、物品に巻き付けて装着されるラベル(以下、「巻付けラベル」と称するという)などが知られている。
【0003】
シュリンクラベルは、熱収縮するフィルムにより形成されており、容器に密着する。巻付けラベルは、シュリンクラベルと比べると容器に密着せず、またホットメルト等の接着剤を用いて容器に貼り付けられるため、ミシン目等を施さなくても剥がし易く、分別しやすい。巻付けラベルは、シュリンクラベルのように3次元曲面には装着できないが、表示面積が少なくてもいい場合には、環境や経済性等の観点から、ペットボトル等の容器に巻付けラベルを使用するケースがある。
【0004】
さらに、近年の傾向として、幅広の巻付けラベルを用いてさらに表示面積を大きくしたいという需要が増えている。幅広の巻付けラベルは、容器形状を巻付けラベルに対応するように設計する必要はあるが、巻付けラベルそのものが容器表面の装飾となりうるため、コスト削減などとの兼ね合いで注目を集めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
巻付けラベルは、前述のとおり注目を集めているが、以下の課題が懸念される。
【0006】
出荷時、複数の製品(ラベリングされた容器)は、同時に、直線状及び/又は曲線状の搬送ライン上を梱包ケースまで搬送される。そのため、例えば曲線状の搬送ライン上にて1箇所でも製品が詰まると、製品同士が互いに圧力を加え始める。このとき、通常、製品は回転して倒れない。しかし、製品表面に引っ掛かりがあると、その引っ掛かりが原因となって製品が倒れることがある。また、製品が一つでも倒れると、他の製品も倒れうる。
【0007】
特に、巻付けラベルは、シュリンクラベルほどに容器に密着していないため、巻付けラベルを装着した容器(製品)同士に引っ掛かりが生じやすい。
【0008】
本開示の一態様は、搬送時における転倒を軽減する巻付けラベル付き容器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る巻付けラベル付き容器は、内容物が充填された容器本体と、前記容器本体に装着される巻付けラベルと、を備え、前記巻付けラベルは、JIS-P8147(2010)に準じて測定した滑り角度を10.0度以上18.3度以下とする機能層を外表面上の少なくとも一部に有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、搬送時における転倒を軽減する巻付けラベル付き容器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一態様に係る巻付けラベル付き容器の構成を示す図である。
【
図3】本開示に係る巻付けラベルの断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の一実施形態について説明するうえで、以下について付言する。「表面」は外側となる面を指し、「裏面」は内側となる面を指す。「下限値XXX~上限値YYY」で表される数値範囲は、下限値XXX以上上限値YYY以下を意味する。
【0013】
図1は、本開示の一態様に係る巻付けラベル付き容器1の構成を示す図である。
図1の符号101は、容器本体10に巻付けラベル20が巻き付けられるときの様子を示す図である。
図1の符号102は、容器本体10に巻付けラベル20が巻き付けられた後の様子を示す図である。
図1のXZ座標において、Z軸方向は、巻付けラベル付き容器1の軸方向を示す。Z軸下方向は重力方向を示す。Z軸方向において、重力方向を下側(下方)、その反対側を上側(上方)と称する場合もある。また、Z軸方向を縦方向、X軸方向を横方向と称する場合もある。
【0014】
図1の符号101に示す図を参照して、巻付けラベル付き容器1は、容器本体10と、容器本体10に装着される巻付けラベル20と、を備える。
【0015】
本開示に係る容器は、巻付けラベル20が巻き付けられる容器であればその種類は特に限定されない。容器は、ポリエステル系樹脂、又はオレフィン系樹脂等で形成されていてよい。以下の説明では、本開示に係る容器は、飲料が充填されるペットボトル(ポリエステル系樹脂製容器、より具体的にはポリエチレンテレフタレート製容器)とする。容器本体10は、首部11、キャップ12、肩部13、胴体部14、及び底部15により構成されている。容器本体10は、肩部13を有していなくてもよい。底部15は、巻付けラベル付き容器1を安定的に起立させる形状であればよく、特定の形状に限定されない。
【0016】
首部11は、容器本体10の内容物が充填及び注出される部分である。首部11にはキャップ12が取り付けられる。肩部13は、首部11と胴体部14とを結合する部分であり、Z軸下方向に向かうにつれ幅広となる。
【0017】
胴体部14は、容器本体10の利用者が把持し、かつ、巻付けラベル20が装着される部分である。胴体部14は、搬送ライン上を梱包ケースまで搬送されるときに容器同士が接触する箇所でもある。
図1において、胴体部14は、胴体中央部が窪んでおり、その窪みを覆うように巻付けラベル20が装着されている。胴体部14は、巻付けラベル付き容器1を構造的に補強するために凹凸が形成されていてもよく、その凹凸を覆って巻付けラベル20が装着される。胴体部14は、凹凸が形成されていなくてもよい。
【0018】
ここで、凹凸とは、例えば、リブ又はパネルとも称される。リブは、特定方向に延びる所定幅(たとえば、1~5mm幅)を有する凹みであって、容器表面の周方向(Z軸方向と直行する面に平行)に延びる横リブ、容器表面においてZ軸方向と平行に延びる縦リブ、Z軸方向から傾斜する方向に延びるリブ等がある。パネルは、所定面積の領域に凹凸を設けたものであって、角部と面部とを有する胴体部を備えた角容器の各面部に設けられることが多い。
【0019】
巻付けラベル20が装着される容器は、複数の角部の間に複数面部を有する多角の胴体部を有する容器、複数面部に凹凸を有するパネルが設けられた容器、又は当該容器のパネルを覆って巻付けラベルが装着されている容器などが好ましい。
【0020】
容器本体10では、Z軸方向において首部11、肩部13、及び胴体部14がそれぞれ占める高さの割合は、特に限定されず、適宜に決められてよい。容器本体10は、容量、形状、充填物、又は厚みなど、特に限定されない。例えば、
図1では、容器本体10は円筒形状を有するが、他の形状であってもよい。その例を
図2により説明する。
【0021】
図2は、容器本体10の他の形状を示すための図である。
図2の符号201に示す図は、本開示に係る巻付けラベル付き容器30を示す。巻付けラベル付き容器30は、XY平面における断面が略正方形である。
図2の符号202に示す図は、本開示に係る巻付けラベル付き容器40を示す。巻付けラベル付き容器40は、XY平面における断面が略六角形である。巻付けラベル付き容器30及び巻付けラベル付き容器40とも、利用者の持ちやすさを考慮して、互いに隣り合う面と面の間は丸みを帯びていてよい。このように、本開示に係る容器は、巻付けラベル20を巻き付けることが可能である限り、様々な形状を採用できる。本開示に係る巻付けラベル付き容器は、胴体部に複数(3以上)の角部を有する容器(以下、「多角容器」と称する場合もある。)であってよく、角部の間に面部を有し、角部は面取りされていてよい。
【0022】
続いて、
図1の符号102を参照して、巻付けラベル20について説明する。巻付けラベル20は、一般に、商品名、絵柄、及び/又は、説明書きなどのデザインが表される。
図1を参照して、巻付けラベル20は、少なくとも第1側端部20aの裏面及び第2側端部20bの裏面に接着剤が塗布され、
図1に示すように、第1側端部20aの裏面が容器本体10の胴体部14に貼り付けられる。そして、巻付けラベル20は、容器本体10の周方向に巻き付けられ、その第1側端部20aの表面に、接着剤を介して第2側端部20bの裏面を重ね合わすことにより、容器本体10に装着される。このようにして、
図1の符号102に示す巻付けラベル付き容器1が得られる。
【0023】
次に、巻付けラベル20の詳細を
図3により説明する。
図3は、本開示に係る巻付けラベル20の断面の一例を示す図である。
【0024】
図3に示すように、巻付けラベル20は、機能層21、フィルム層22、デザイン層23及び遮蔽層24がその順に表面側から設けられている。フィルム層22、デザイン層23、及び遮蔽層24は、巻付けラベルとして通常使用されるラベルであってよい。機能層21、デザイン層23、及び遮蔽層24は、凸版印刷法(フレキソ印刷法、又は凸版輪転印刷法など)及び凹版印刷法(グラビア印刷法など)の何れの方法を用いて形成されてもよい。以下、説明の便宜のため、フィルム層22から説明する。
【0025】
フィルム層22は、柔軟性、適宜な強度、及び剛性を有するものであれば特に限定されない。フィルム層22は、透明でもよく、或いは、不透明でもよい。フィルム層22が不透明である場合は、デザイン層23のデザインが視認できるように、デザイン層23はフィルム層22の表面側、より具体的には機能層21とフィルム層22の間に形成されるのが好ましい。フィルム層22は、特に限定されないが、10μm~100μmの厚みを有する。
【0026】
フィルム層22は、一例として、合成樹脂フィルム、紙、合成紙、発泡樹脂シート、又はこれらの積層体などであってよい。一般に、フィルム層22は、無色透明な合成樹脂製フィルムが用いられる。透明なフィルム層22は、合成樹脂製フィルムに、透明な層(例えば、シリカ蒸着層などの無色透明なバリア層、透明ニス又は透明インキなどからなる無色透明な層など)が積層されているものでもよい。合成樹脂製フィルムなどの材質は特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィン、ポリエチレンを含む共重合ポリマーなどのポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル系、ポリアミド系、ポリスチレン系などが挙げられる。フィルム層22は、非熱収縮性であることが好ましく、例えば、フィルム層22の熱収縮率は、90℃の温水10秒浸漬で5%以下であり、3%以下であることがより好ましい。
【0027】
デザイン層23は、フィルム層22の裏面側に設けられる層であり、デザイン印刷インキを用いて商品名及び/又は絵柄等の所望のデザインが表された印刷層である。通常、デザイン層23は、1又は複数の所望の色彩を呈するデザイン印刷インキ(黒色又は白色を含むカラーインキ)を用いて形成される。デザイン印刷インキは、水性インキ及び油性インキ(有機溶剤型インキ)の何れでもよいが、水性インキの方がより好ましい。デザイン層23は、特に限定されないが、0.1μm~4μmの厚みを有する。
【0028】
遮蔽層24は、デザイン層23の裏面側に設けられる層である。遮蔽層24は、特に限定されないが、例えば、水、有機溶剤、樹脂成分、白色顔料、及び/又は、必要に応じて各種添加剤を含むインキを用いて形成される。インキは、水性インキ及び油性インキ(有機溶剤型インキ)の何れでもよいが、水性インキの方がより好ましい。遮蔽層24は、特に限定されないが、一例として、白色顔料含有率を50~85質量%含む。遮蔽層24は、特に限定されないが、0.3μm~5μmの厚みを有する。
【0029】
機能層21は、フィルム層22の表面側に設けられる層であり、水、有機溶剤、樹脂成分及び必要に応じて各種添加剤を含み、顔料などの着色剤を実質的に含まない印刷層/インキ層(「メジウムインキ」、「メジウム層」とも称される。)である。機能層21は、特に限定されないが、好ましくは0.5質量%~10質量%の滑剤を含む。滑剤は、液状滑剤、粒状滑剤等があるが、粒状滑剤が好ましい。機能層21は、水性インキ及び油性インキ(有機溶剤型インキ)の何れでもよい。デザイン層23及び遮蔽層24がともに水性インキにより形成される場合には、環境適性の観点から、機能層21も水性インキにより形成されるのが好ましい。機能層21は、特に限定されないが、一例として、第1側端部20a及び/又は第2側端部20bを除く、フィルム層22の表面側全体に塗布される。機能層21は、一例として、0.1μm~2μmの厚みを有する。機能層21は、フィルム層22の表面保護層としても機能する。
【0030】
巻付けラベル20は、例示すると、次のように容器本体10に装着される。
【0031】
巻付けラベル20は、容器本体10の最大外径部となる部分を少なくとも覆うように装着されることが好ましい。具体的に、巻付けラベル20の容器胴体部を平面上に接触させたときに、接触する箇所に、好ましくは接触する箇所の全体に亘って、巻付けラベル20が装着されるのが好ましい。
図1の例では、巻付けラベル20は、容器本体10における、上方最大外径部と、下方最大外径部と、胴体中央部の窪みと、を覆って装着されている。容器中央部の窪みにおいては、巻付けラベル20と容器本体10とは、完全に密着せず、非接触の部分を有する。
【0032】
また、巻付けラベル20は、容器本体10の最大外径部となる部分を少なくとも覆うように、かつ、容器本体10に設けられた凹凸を覆うように容器本体10に装着されるのが好ましい。
【0033】
また、巻付けラベル20は、容器本体10の最大外径部となる部分を少なくとも覆い、さらに、容器本体10の胴体部全体に亘って装着されているのが好ましい。具体的に、巻付けラベル20は、容器本体10の胴体部の最も上方に位置する部分(上方最大外径部)から容器本体10の胴体部の最も下方に位置する部分(下方最大外径部)まで容器本体10に装着されるのが好ましい。
【0034】
以上、本開示に係る巻付けラベル付き容器1の各部概要を説明した。前述したように、巻付けラベル付き容器1は、容器の種類、及び印刷方法(フレキソ印刷又はグラビア印刷)など、様々なバリエーションを有してよい。以下では、巻付けラベル付き容器1の構成を様々に変化させたときの、巻付けラベル付き容器1が倒れるかどうかの比較結果を表1~表3により説明する。表1~3では、巻付けラベル付き容器1が倒れることを「倒瓶」と称している。
【表1】
【表2】
【0035】
【表3】
(比較結果)
表1~3は、巻付けラベルの構成を様々に変化させたときの容器A~Cのそれぞれ倒瓶の有無を説明するための表である。巻付けラベルの形状、容器の種類などを様々に変化させることにより、倒瓶のしやすさに影響を与える要因がより抽出されやすくしている。
【0036】
(容器A~C)
最初に、試験に供した容器A~Cについて説明する。
【0037】
(容器A)
280mL用容器、高さ135mm、底面積3316mm2。底面から視た形状:円形。容器胴体部の高さ80mm。容器胴体部にはその上方と下方に円筒の最大外径部を有す。上方最大外径部:縦長さ10mmの円筒、下方最大外径部:縦長さ20mmの円筒。上方及び下方の最大外径部の間である中間部は、6つの面部と6つ角部とを有する断面が略六角形の筒で、その面部にはパネル(凹部)を有し、その角部は、最大外形部と同じ曲率半径を有する。2つの容器Aを互いに接触させると、上下の最大外径部と中間部の角部にて接触可能となる、容器胴体部の一部に多角形断面を有する円筒容器。
【0038】
容器Aには、280mLの清涼飲料水が充填され、ヘッドスペースを有する。巻付けラベルは、ラベル幅(縦方向長さ)80mmで、容器Aの胴体部全体(中間部を含み、上方最大外径部から下最大外外径に至る範囲)に装着されており、少なくとも面部の凹部を含む一部の領域において容器本体と巻付けラベルとが非接触で、かつ、その間に空隙を有する。
【0039】
(容器B)
265mL用容器、高さ163mm、底面積2122mm2。底面形状:八角形。容器胴体部の高さ110mm。容器胴体部にはその上方と下方に断面八角形の最大外径部を有す。上方及び下方の最大外径部はともに、横40mm×縦15mmの4つの面部と、その面部の間にあり、横10mm×縦15mmの4つの角面部をもつ略八角柱状である。また、上方及び下方の最大外径部の間である中間部は、最大外径部よりも小さい断面八角形の筒状である。2つの容器Bを互いに接触させると、上下の最大外形部で接触可能であり、中間部では接触しない多角容器である。
【0040】
容器Bには、265mLの清涼飲料水が充填され、ヘッドスペースを有していない。巻付けラベルは、ラベル幅(縦方向長さ)110mmで、容器の胴体部全体(中間部を含み、上方最大外径部から下最大外径部に至る範囲)に装着されており、少なくも中間部において容器と巻付けラベルとが非接触で、かつ、その間に空隙を有する。
【0041】
(容器C)
350mL用容器、高さ162mm、底面積2640mm2。底面形状:4つ角部がR面取りされている四角形。容器胴体部の高さ100mm。容器胴体部はR面取りされている4つ角曲面部と、その間の横40mm×高さ100mmの4つの面部とを有する略四角柱状の最大外径部を有する。面部には凹凸状のパネル部が設けられている。2つの容器Cを互いに接触させると、面部に設けられたパネル部の凹部以外の領域で接触可能である多角容器である。
【0042】
容器Cには、350mLの清涼飲料水が充填され、ヘッドスペースを有する。巻付けラベルは、ラベル幅(縦方向長さ)100mmで、容器の胴体部全体(上方も中間も下方も最大外径部となる)に装着されており、パネル部の凹部において容器と巻付けラベルとが非接触で、かつ、その間に空隙を有する。
【0043】
容器A~Cには円筒形状の容器が含まれていない。これは、円筒形状の容器は、隣り合う容器との接触面積が容器A~Cよりも小さくなり、倒瓶の可能性がより低くなると考えられるためである。
【0044】
「ヘッドスペース有」とは、キャップの開栓前に容器に充填した液体の液面が見える状態を言う。「ヘッドスペース無」とは、キャップの開栓前に容器に充填した液体の液面が見えない状態を言う。
【0045】
液体の充填方法は、いわゆる「ホットパック充填」と「常温無菌充填」が知られている。「ホットパック充填」は、容器への液体の充填時に、加熱殺菌した液体の熱によって、容器及びキャップの内面を殺菌する。液体が熱い状態でキャップを閉め、その後で液体が常温に戻ると、液体部分の体積が小さくなり、容器内の圧力が低下する。その結果、容器の胴体部が内側にへこみ、液面が上昇し、キャップの開栓前に容器に充填した液体の液面が見えなくなる。ホットパック充填では、容器の胴体部が内側にへこむなど、容器の形状そのものが変化しうる。
【0046】
「常温無菌充填」は、加熱殺菌した液体を無菌状態の充填室において常温で充填する。そのため、ホットパック充填のように液面が上昇することがなく、キャップの開栓前に容器に充填した液体の液面が見える状態となる。常温無菌充填では、容器内の圧力は低下しないため、容器の胴体部は内側にへこまない。
【0047】
このように、ヘッドスペースの有無によって容器の形状も変化しうる。本比較試験は、様々な使用条件を再現すべく、ヘッドスペースの有無にも留意して行っている。
【0048】
(ラベル1~4)
次に、表1~3を参照しつつ、ラベル1~4を用いた比較試験について説明する。ラベル1~4は、構成が互いに異なる4種類の巻付けラベルである。表1~3はそれぞれ、容器A~Cそれぞれにラベル1~4を巻き付けたときの結果を示す。ラベル1~4では、東洋紡株式会社製の二軸延伸PETフィルム(透明、12μm)がフィルム層22として使用されている。また、表1~3において、機能層21、デザイン層23、及び遮蔽層24は、いずれも0.5μm~2μmの厚みを有する。
【0049】
(ラベル1)
ラベル1では、機能層21を設けず(原反の静電気防止のみ)、かつ、デザイン層23及び遮蔽層24を、水性インキを使ってフレキソ印刷により塗布している。
【0050】
(ラベル2)
ラベル2では、機能層21としてインキA(DICグラフィックス(株)製・有機溶剤型ポリアミド系インキ(粒状滑剤含有))を使用している。また、機能層21、デザイン層23、及び遮蔽層24は、いずれもグラビア印刷で塗布されている。
【0051】
(ラベル3)
ラベル3では、機能層21としてインキB(サカタインクス(株)製水性アクリル系インキ(粒状滑剤含有))を使用している。また、機能層21、デザイン層23、及び遮蔽層24は、いずれもフレキソ印刷で塗布されている。
【0052】
(ラベル4)
ラベル4では、機能層21としてインキC(東洋インキ(株)製水性ウレタン系インキ(粒状滑剤含有))を使用している。また、機能層21、デザイン層23、及び遮蔽層24は、いずれもフレキソ印刷で塗布されている。
【0053】
(摩擦測定方法)
次に、摩擦測定方法を説明する。測定機器は、島津オートグラフ (AGX 500 N)を使用し、JIS K 7125:1999に準じて静摩擦及び動摩擦を測定した。ラベル1~4それぞれに関して、試料台上に同じ2つのラベルを接触させて静置し、試験荷重となる重りを載せる。そして、上側のラベルに引き紐を付けて滑らせ、その際に発生する抵抗力(摩擦力)をロードセルにて計測した。表1~3では、「静摩擦/動摩擦」の測定値を記載している。
【0054】
(滑り角測定方法)
次に、滑り角測定方法を説明する。測定機器は、東洋精機(株)製 静摩擦測定機(Friction Tester AN)を使用し、JIS P 8157に準じて滑り角を測定した。ラベル1~4それぞれに関して、測定器の試料台にラベル1~4を貼り付けると共に、容器にラベル1~4をそれぞれ巻付け、その容器を試料台上に置き、次に試料台を傾けていき、容器が動き出したときの傾斜角を測定した。表1~3では、3回の測定値(n=1~3)とのその平均値を記載している。滑り角測定においては、目的量の内容物が充填された容器A~Cが使用されている。
【0055】
(倒瓶の有無)
倒瓶の有無は、ラベル1~4を巻き付けた容器A~Cそれぞれを搬送ラインにて5000本同時に連続で搬送したときに、倒瓶が発生したかどうかを示す。「有」は、1本以上の容器が倒れたことを示す。「無」は、1本も倒瓶が発生しなかったことを示す。
【0056】
(考察)
表1~3より、以下の知見が得られた。
【0057】
倒瓶は、容器A~Cの何れにおいてもラベル1を巻付けた容器のみで発生した。
【0058】
摩擦係数は、ラベル1(機能層21無し)とラベル2~4(機能層21有り)との間に有意な差が認められなかった。摩擦係数は、機能層21を塗布する前後で数値がさほど変化していない。
【0059】
一方、滑り角は、互いに形状の異なる容器A~Cの何れにおいてもラベル1が最も大きかった。つまり、ラベル1はラベル2~4よりも滑りにくく(引っ掛かかりやすく)、それゆえ、滑り係数をラベル1の最小値となる18.3度(表2)よりも低くすることによって倒瓶防止効果を得やすくなると言える。
【0060】
また、表1~3において、滑り角の最小値は13.2度であった(表3のラベル2)。ここで、滑り角が10度よりも低いとラベル原反の巻きズレが懸念される。生産中に巻ズレが発生すると、巻付ラベルの生産が継続できず、また、ラベル装着機に装入前に巻ズレが発生すると、ラベル装着装置に装入できず、装着機を稼働できなくなる。そのため、滑り角は10.0度以上であることが好ましい。
【0061】
そして、前述の知見から、倒瓶のしやすさを把握する尺度として、摩擦係数は有効と判断し難かったのに対して、滑り角(度)は有効な尺度と考えうることが新たな知見として得られた。
【0062】
以上、表1~3の結果より得られた知見を説明した。これらの知見以外にも、本願発明者らは、種々の試行錯誤を通じて、以下の構成に想到するに至っている。
【0063】
巻付けラベルは、シュリンクラベルほどに容器に密着していないため、巻付けラベルを装着した容器(製品)同士に引っ掛かりが生じやすい。また、巻付けラベルが幅広になるほどラベル同士に引っ掛かりが生じやすく、
図1のZ軸方向において胴体部14の40%以上に巻付けラベルが装着されていると引っ掛かりに起因する倒瓶がより懸念されることが見出された。従って、
図1のZ軸方向において胴体部14の40%以上に巻付けラベルが装着されている容器については、特に、JIS-P8147(2010)に準じて測定した滑り角度を10.0度以上18.3度以下とすることにより、倒瓶防止効果をより得やすいと言える。
【0064】
また、巻付けラベルは、容器に密着せず、それゆえ、ミシン目等を施さなくても剥がし易く、分別しやすい。昨今は、表示面積が少なくてもいいため、環境や経済性等の観点から、ペットボトル等の容器に巻付けラベルを使用するケースがある。さらに、巻付けラベルの厚みも薄くなる傾向が見られる。巻付けラベルは、厚みが薄くなるほど、容器本体に装着されたときに皺が寄り易く、皺が寄ることにより、製品同士が引っ掛かり、転倒しやすくなる。そのため、10μm以上50μm以下の厚みを有する巻付けラベルが装着されている容器(目的量の内容物が充填された容器)については、JIS-P8147(2010)に準じて測定した滑り角度を10.0度以上18.3度以下とすることにより、倒瓶防止効果をより得やすいと言える。
【0065】
また、250ml以上1,000ml以下の容量を有する巻付けラベル付き容器は、内容物を充填したときの重心位置等の影響により、搬送時における倒瓶が生じやすいことを本願発明者らは見出した。
【0066】
そのため、250ml以上1,000ml以下の容量を有する巻付けラベル付き容器(目的量の内容物が充填された容器)については、特に、JIS-P8147(2010)に準じて測定した滑り角度を10.0度以上18.3度以下とすることにより、倒瓶防止効果を得やすいと言える。
【0067】
また、2,000mm2~4,000mm2の底面積を有する巻付けラベル付き容器については、特に、JIS-P8147(2010)に準じて測定した滑り角度を10.0度以上18.3度以下とすることにより、倒瓶防止効果を得やすいことを本願発明者らは見出した。
【0068】
また、本開示に係る巻付けラベル付き容器は、断面多角形の領域を胴部の一部に有する容器に好適に適用できる。
【0069】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る巻付けラベル付き容器は、内容物が充填された容器本体と、前記容器本体に装着される巻付けラベルと、を備え、前記巻付けラベルは、JIS-P8147(2010)に準じて測定した滑り角度を10.0度以上18.3度以下とする機能層を外表面上の少なくとも一部に有する。
【0070】
前記の構成によれば、本開示の態様1に係る巻付けラベル付き容器は、前記機能層を有することにより、搬送時における容器の転倒を軽減できる。
【0071】
本開示の態様1に係る巻付けラベル付き容器は、以下のように表現することもできる。本開示の態様1に係る巻付けラベル付き容器は、胴体部を含む容器本体と、前記胴体部に装着される巻付けラベルと、を備え、前記巻付けラベルは、目的量の内容物が充填された状態において、JIS-P8147(2010)に準じて測定した滑り角度を10.0度以上18.3度以下とする機能層を外表面上の少なくとも一部に有する。換言すると、本開示の態様1に係る巻付けラベル付き容器は、目的量の内容物が充填された状態において、JIS-P8147(2010)に準じて測定した所定範囲の滑り角度を有する。
【0072】
本開示の態様2に係る巻付けラベル付き容器は、前記の態様1において、前記機能層はメジウム層である。
【0073】
本開示の態様2に係る巻付けラベル付き容器は、前記機能層をメジウム層とすることにより、前述の効果を容易に奏することができる。
【0074】
本開示の態様3に係る巻付けラベル付き容器は、前記の態様1または2において、前記容器本体は、少なくとも、首部及び胴体部により構成されており、前記巻付けラベルは、前記容器本体の軸方向において前記胴体部の40%以上に装着されている。
【0075】
前記容器本体の軸方向において前記胴体部の40%未満の割合で前記巻付けラベルが装着されている場合、搬送時における巻付けラベル付き容器の転倒は生じにくく、40%以上で転倒の可能性が高まることを本願発明者らは見出した。
【0076】
本開示の態様3に係る巻付けラベル付き容器は、前記の構成を備えることにより、前記容器本体の軸方向において前記胴体部の40%以上に装着されている場合においても、搬送時における転倒を軽減できる。
【0077】
本開示の態様4に係る巻付けラベル付き容器は、前記の態様1から3の何れかにおいて、前記巻付けラベルは、10μm以上50μm以下の厚みを有する。
【0078】
巻付けラベルは、厚みが薄くなるほど、容器本体に装着されたときに皺が寄り易く、皺が寄ることにより、製品同士が引っ掛かり、転倒しやすくなることを本願発明者らは見出した。
【0079】
本開示の態様4に係る巻付けラベル付き容器は、前記の構成を備えることにより、10μm以上50μm以下の厚みの範囲内においても、搬送時における転倒を軽減することができる。
【0080】
本開示の態様5に係る巻付けラベル付き容器は、前記の態様1から4の何れかにおいて、前記容器本体は、250ml以上1,000ml以下の容量を有する。
【0081】
250ml以上1,000ml以下の容量を有する巻付けラベル付き容器は、内容物を充填したときの重心位置等の影響により、搬送時における転倒が生じやすいことを本願発明者らは見出した。
【0082】
本開示の態様5に係る巻付けラベル付き容器は、前記の滑り角度を有することにより、250ml以上1,000ml以下の容量を有する場合でも、搬送時における転倒を軽減することができる。
本開示の態様6に係る巻付けラベル付き容器は、前記の態様1から5の何れかにおいて、前記容器本体は、2,000mm2以上4,000mm2以下の底面積を有する。
【0083】
底面積が2,000mm2~4,000mm2の底面積を有する巻付けラベル付き容器については、特に、JIS-P8147(2010)に準じて測定した滑り角度を10.0度以上18.3度以下とすることにより、倒瓶防止効果を得やすいことを本願発明者らは見出した。
【0084】
本開示の態様5に係る巻付けラベル付き容器は、前記の滑り角度を有することにより、2,000mm2以上4,000mm2以下の底面積を有する容器に対して、搬送時における転倒を好適に軽減することができる。
【0085】
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、それぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0086】
1、30、40 巻付けラベル付き容器
10 容器本体
11 首部
12 キャップ
13 肩部
14 胴体部
15 底部
20 ラベル
20a 第1側端部
20b 第2側端部
21 機能層
22 フィルム層
23 デザイン層
24 遮蔽層