(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131122
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】情報処置システム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/14 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01S5/14
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041201
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】318014809
【氏名又は名称】ALES株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 定夫
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
(72)【発明者】
【氏名】井原 和法
(72)【発明者】
【氏名】高橋 友樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 健広
(72)【発明者】
【氏名】近藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】野村 宏利
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA02
5J062BB01
5J062CC11
5J062EE01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】無線通信端末の設置の工数を簡略化する。
【解決手段】所定の空間に設置される無線通信端末を検出する検出部と、検出部が検出した第一の無線通信端末に対して、同期信号を発信するよう指示する指示部と、検出部が検出した第二の無線通信端末が、第一の設置位置において、第一の無線通信端末から送信された同期信号を受信したか否か判定する判定部と、第二の無線通信端末が同期信号を受信したか否かの判定結果と、第二の無線通信端末を識別する識別情報とを対応付けた情報を提供する提供部とを備える。指示部は、判定部が、第二の無線通信端末が同期信号を受信したと判定した場合、第一の無線通信端末と第二の無線通信端末との間の距離を測定するための処理を実行するよう、第一の無線通信端末および第二の無線通信端末の双方に指示し、提供部は、距離の測定結果に含まれる第二の無線通信端末の第一の設置位置に関する位置情報を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位対象の装置の位置座標の計測に用いられ、所定の空間に設置される無線通信端末を検出する検出部と、
前記検出部が検出した第一の無線通信端末に対して、同期信号を発信するよう指示する指示部と、
前記検出部が検出した第二の無線通信端末が、第一の設置位置において、前記第一の無線通信端末から送信された前記同期信号を受信したか否か判定する判定部と、
前記第二の無線通信端末が前記同期信号を受信したか否かの判定結果と、前記第二の無線通信端末を識別する識別情報とを対応付けた情報を提供する提供部と
を備え、
前記指示部は、前記判定部が、前記第二の無線通信端末が前記同期信号を受信したと判定した場合、前記第一の無線通信端末と前記第二の無線通信端末との間の距離を測定するための処理を実行するよう、前記第一の無線通信端末および前記第二の無線通信端末の双方に指示し、
前記提供部は、前記距離の測定結果に含まれる前記第二の無線通信端末の前記第一の設置位置に関する位置情報を提供する情報処理システム。
【請求項2】
前記提供部は、前記第二の無線通信端末の位置情報として、所定の無線媒体を用いて前記双方の端末の間で測距信号の送受信が行われることで得られた測定結果に基づき計測された位置情報をさらに提供する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記第二の無線通信端末が前記同期信号を受信したか否かを所定の周期で判定する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記提供部により提供される前記第二の無線通信端末の前記位置情報を、前記第一の無線通信端末の位置情報を基準とした場合の相対的な位置として示すための情報を生成する計測部をさらに備える、
請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記計測部は、前記情報の生成を所定の周期で行う、
請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記判定部は、前記第一の設置位置と、利用者により予め設定された第二の設置位置とが一致するか否かを判定し、
前記提供部は、前記第一の設置位置と、前記第二の設置位置とが一致する場合には、前記第一の設置位置が適切であることを示す情報を提供し、前記第一の設置位置と、前記第二の設置位置とが一致しない場合には、前記第一の設置位置が不適切であることを示す情報を提供する
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記第一の無線通信端末によって所定のタイミングで発信された前記同期信号を前記第二の無線通信端末が受信した実際の時刻と、前記測定結果が示す距離から推定される前記第二の無線通信端末の受信推定時刻との時刻差を、前記第一の無線通信端末と前記第二の無線通信端末との間での時刻同期の情報として管理する管理部をさらに有する
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記第一の無線通信端末と前記第二の無線通信端末との間の距離を測定する測定方式は、TWR(Two Way Ranging)である
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記所定の無線媒体は、UWB(Ultra Wide Band)無線の電波である
請求項2に記載の情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の無線タグリーダを分散して配置し、移動体あるいは場所を移動させあるいは持ち運びされる物体に装着される無線タグの位置を標定するための装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術には、無線タグリーダ(無線通信端末)を配置する際の工数を簡略化する点で改善の余地があるといえる。例えば、無線タグの位置を正しく計測するには、無線タグリーダを適切な位置に配置する必要があるが、このためには、作業員による設置作業において工数が多くなり得る。ところが、上記の従来技術では、この工数を簡略化することで作業員に係る負担を軽減することが考慮されていない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、無線通信端末の設置の工数を簡略化することのできる情報処理装置および測位システムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理システムは、測位対象の装置の位置座標の計測に用いられ、所定の空間に設置される無線通信端末を検出する検出部と、前記検出部が検出した第一の無線通信端末に対して、同期信号を発信するよう指示する指示部と、前記検出部が検出した第二の無線通信端末が、第一の設置位置において、前記第一の無線通信端末から送信された前記同期信号を受信したか否か判定する判定部と、前記第二の無線通信端末が前記同期信号を受信したか否かの判定結果と、前記第二の無線通信端末を識別する識別情報とを対応付けた情報を提供する提供部とを備え、前記指示部は、前記判定部が、前記第二の無線通信端末が前記同期信号を受信したと判定した場合、前記第一の無線通信端末と前記第二の無線通信端末との間の距離を測定するための処理を実行するよう、前記第一の無線通信端末および前記第二の無線通信端末の双方に指示し、前記提供部は、前記距離の測定結果に含まれる前記第二の無線通信端末の前記第一の設置位置に関する位置情報を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る測位システムの概要を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るアイデアの概要を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る測位システムの具体的な構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る情報処理の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、アンカーおよび管理装置の主要な構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る管理装置の構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る確認画面の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、基準アンカーを検出する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、他のアンカーの検出に関する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、タグの位置測位の原理を説明する説明図である。
【
図11】
図11は、管理装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明に係る情報処理システムを実施するための形態(以下、「実施形態」と呼ぶ)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明に係る情報処理システムが限定されるものではない。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
<実施形態>
〔1.測位システムの概要〕
まず、
図1を用いて、実施形態に係る測位システムの概要について説明する。
図1は、実施形態に係る測位システムの概要を示す図である。
図1に示すように、実施形態に係る測位システムには、タグ(測位対象の装置)と、タグの位置座標の測定に用いられる複数のアンカー(無線通信端末)とが含まれてよい。
【0010】
また、実施形態に係る測位システムは、タグと、複数のアンカーとの間で、見通し内環境(LOS環境)で超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)の電波による測距信号の送受信を行い、その送受信の結果に基づき、タグの位置座標を測定するシステムである。
【0011】
実施形態に係る測位システムは、例えばTDoA(到達時刻差)方式のアルゴリズムを用いて、タグ等の測位対象の装置の位置をリアルタイムに測位することができる。
【0012】
また、
図1には、LOS環境の一例である屋内空間SPにおいて、測位システムが導入されている例が示される。屋内空間SPは、如何なる空間であってもよいが、商品や部材等の各種物品が管理される倉庫や工場が挙げられる。タグは、
図1に示すように、物品を運搬するための移動体に取り付けられてもよいし、棚に置かれた物品に取り付けられてもよい。このように、タグは、取り付け場所によって定期的に位置が変動する場合もあるし、一定期間位置が変動せず静止している場合もある。TDoA方式のアルゴリズムでは、いずれのケースであっても現時点での位置座標を測定することができる。
【0013】
ここで、アンカーの設置場所によっては電波が遮蔽されてしまい、タグの位置座標を適切に測定できない場合がある。このため、アンカーは、
図1に示すように、高所(例えば、天井付近)の特定個所(例えば、屋内空間SPの四隅付近)に設置されることが多い。
【0014】
例えば、設置作業は、複数台(例えば、4台以上)のアンカーを高所に設置した後に、各アンカーの電源を入れ、そして、アンカー間での時刻同期を行わせるという工程で進められている。また、適切な時刻同期を行わせるため、作業員は、NLOS(Non Line of Sigh)すなわち見通し外が発生しない位置に各アンカーを設置する必要がある。NLOSが発生する状況下では、例えば、反射波による信号をベースに位置座標が測定されてしまう場合があり、測位結果に誤差が生じてしまう恐れがある。
【0015】
このような状況を回避するため、現状、作業員は、一旦アンカーの設置を終えてから、各アンカーの電波状況(電波強度や、電波の減衰状況)を確認する。そして、同期信号を受信していない等の電波状況に問題があるアンカーが存在していれば、そのアンカーの位置や向きを変えるため、再び高所へと移動し、かつ、高所での作業を行っている。しかしながら、このような危険な作業を繰り返し行うことは手間であり、アンカーの設置にかかる作業工数の簡略化が求められている。
【0016】
そこで、本発明の発明者らは、全てのアンカーの設置を一旦終えてから時刻同期に関する作業を行うのではなく、アンカー1台ずつ設置作業を完了させることから着想を得た。具体的には、本発明の発明者らは、2台目以降のアンカーの設置工事時には、電波の入り具合をチェックしながら設置を続け、全てのアンカーを設置し終えた際には、自動でアンカーの自己位置が測位されており、また、アンカー間での時刻同期も完了されているという状況を作れることができる点に着目した。この点について、
図2を用いて説明する。
【0017】
〔2.アイデアの概要〕
図2を用いて、発明者によるアイデアの概要を説明する。
図2は、実施形態に係るアイデアの概要を示す図である。
【0018】
図2(a)には、現状、作業員が行っている作業工程の一例が示される。
図2(a)に示すように、作業員は、例えば、複数台のアンカーを設置した後、アンカー間で時刻同期をとることができるかどうか確認し、時刻同期がとれていない場合には、アンカーの設置位置が予め想定された適切な位置でないと判断し、高所に戻って位置や向きを微調整している。
【0019】
より具体的には、作業員は、高所に移動し1台目のアンカーを設置するための設置工事を行い一旦地上へと戻る。次に、作業員は、別の高所に移動し2台目のアンカーを設置するための設置工事を行い地上へと戻る。さらに、作業員は、別の高所に移動し3台目のアンカーを設置するための設置工事を行い地上へと戻る。さらに、作業員は、別の高所に移動し4台目のアンカーを設置するための設置工事を行い地上へと戻る。このように目的の数(
図2の例では、4台)のアンカーを設置し終えた後に、作業員は、各アンカー間で時刻同期がとれているか否かを確認する。そして、時刻同期ができていない同期NGのアンカーが存在する場合には、作業員は、同期NGのアンカーが設置されている高所へと再び上り、微調整することになる。
図2の例によれば、4台のアンカーのうち、2台のアンカーが同期NGであったため、2回にわたる高所移動による微調整の後、再び同期確認を行わなければならなくなった例が示される。
図2の例では、微調整の作業は2回であるが、さらに多くの回数分を作業しなければならない場合もあり非常に手間である。
【0020】
また、作業員は、4台のアンカー間で時刻同期がとれた場合には、最終的に各アンカーの位置座標を計測する。計測作業には、一般的な測量技術(例えば、トータルステーション、レーザ測距センサー)が用いられてよいが、この作業自体も手間といえる。
【0021】
一方、
図2(b)には、実施形態に係る測位システムが導入されることで、作業工程の工数が簡略化された例が示される。実施形態に係る測位システムのもとでは、作業員は、高所に移動し1台目のアンカーを設置するための設置工事を行うが、この場で時刻同期の確認を行うことができる。また、実施形態に係る測位システムによれば、現時点での1台目のアンカーの位置座標の測定結果も得ることができる。
【0022】
時刻同期がとれている場合、作業員は、地上へと戻り、2台目のアンカーの設置工事に移る。すなわち、作業員は、別の高所に移動し2台目のアンカーを設置するための設置工事を行うが、この場で時刻同期の確認を行うことができる。例えば、1台のアンカーを基準アンカーとすると、作業員は、1台目のアンカーと2台目のアンカーとの間で時刻同期がとれているか否かを確認することができる。また、実施形態に係る測位システムによれば、現時点での2台目のアンカーの位置座標の測定結果も得ることができる。
【0023】
時刻同期がとれている場合、作業員は、地上へと戻り、3台目のアンカーの設置工事に移る。すなわち、作業員は、別の高所に移動し3台目のアンカーを設置するための設置工事を行うが、この場で時刻同期の確認を行うことができる。例えば、作業員は、1台のアンカーと3台目のアンカーとの間で時刻同期がとれているか否かを確認することができる。また、実施形態に係る測位システムによれば、現時点での3台目のアンカーの位置座標の測定結果も得ることができる。
【0024】
時刻同期がとれている場合、作業員は、地上へと戻り、4台目のアンカーの設置工事に移る。すなわち、作業員は、別の高所に移動し4台目のアンカーを設置するための設置工事を行うが、この場で時刻同期の確認を行うことができる。例えば、作業員は、1台のアンカーと4台目のアンカーとの間で時刻同期がとれているか否かを確認することができる。また、実施形態に係る測位システムによれば、現時点での4台目のアンカーの位置座標の測定結果も得ることができる。
【0025】
このように、発明者による着想から得られたアイデア、すなわち実施形態に係る測位システムによれば、アンカーの設置において、これまで作業員に課せられていた作業工程の工数を減らし簡略化することができる。この結果、作業員は、例えば、アンカー間で時刻同期がとれていないことによる手戻りが無くなるため、作業負担が効果的に軽減される。また、本発明は、状況によらず、アンカーの位置座標を算出できるため、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0026】
なお、
図2(b)で説明したシーンを実現する中心的な装置は、管理装置40によって実現される。そこで、続いて、管理装置40を含む測位システムの具体例を説明する。
【0027】
〔3.測位システムの具体例〕
図3を用いて、第実施形態に係る測位システムの具体例を説明する。
図3は、実施形態に係る測位システムの具体的な構成例を示す図である。
図3には、実施形態に係る測位システムの一例として、測位システムSyが示される。測位システムSyは、実施形態に係る情報処理システムの一例である。
【0028】
図3に示すように、測位システムSyは、利用者装置10と、アンカー20と、タグ30と、管理装置40とを備えて構成されてよい。また、測位システムSyでは、利用者装置10と、アンカー20と、タグ30と、管理装置40とが、ネットワークNを介して、有線または無線により通信可能に接続されてよい。測位システムSyは、管理装置40を含めて
図1で説明した屋内空間SPに導入されてよいが、管理装置40のみを屋内空間SPの外に置いてもよい。
【0029】
利用者装置10は、利用者によって利用される情報処理端末である。利用者装置10は、例えば、スマートフォンや、タブレット型端末や、ノート型PC(Personal Computer)や、デスクトップPCや、携帯電話機や、PDA(Personal Digital Assistant)等により実現される。本実施形態では、利用者装置10は、スマートフォンであるものとする。
【0030】
また、利用者装置10には、後述する管理装置40との間での情報の送受信を実現するためのアプリケーションが予めインストールされてよい。係るアプリケーションは、管理装置40に対応する専用のアプリケーションであってもよいし、汎用的なアプリケーション(例えば、ブラウザ)であってもよい。また、ここでいう利用者とは、管理装置40によって提供された情報を、利用者装置10を介して確認しながら作業を進める作業員であってよい。
【0031】
アンカー20は、タグ30の位置座標の計測に用いられる無線通信端末の一例であり、
図1で説明したように、通常、屋内空間SPの高所に設置される。
【0032】
タグ30は、測位対象の装置の一例であり、屋内空間SPにおける任意の場所に設置される。例えば、タグ30は、利用者が位置情報を管理したいと考える物品に設置され得る。
【0033】
管理装置40は、実施形態に係る情報処理システムを構成する情報処理装置の一例であり、作業工程の工数の簡略化を実現するための情報処理(以下、「実施形態に係る情報処理」と表記する場合がある)を行う中心的な装置である。管理装置40は、例えば、クラウド側に存在するサーバ装置であってよい。
【0034】
管理装置40は、屋内空間SPに設置されるアンカー20を検出する機能、アンカー20のうち特定の1台のアンカー20(例えば、実施形態に係る情報処理において、基準となるアンカー20)に対して同期信号を発信するよう指示する機能を有する。以下の実施形態において、基準となるアンカー20を「基準アンカー20x」、基準アンカー以外の他のアンカー20を「他のアンカー20y」と表記する場合がある。また、基準アンカー20xは第一の無線通信端末の一例であり、他のアンカー20yは第二の無線通信端末の一例である。
【0035】
また、管理装置40は、基準アンカー20xが発信した同期信号を他のアンカー20yが受信したか否かを判定する機能、他のアンカー20yが同期信号を受信したか否かの判定結果と、他のアンカー20yを識別する識別情報とを対応付けた情報を提供する機能とを有する。
【0036】
さらに、管理装置40は、他のアンカー20yが同期信号を受信したと判定した場合、基準アンカー20xと他のアンカー20yとの間の距離を測定するための処理を実行するよう、基準アンカー20xおよび他のアンカー20yの双方に指示する機能を有する。基準アンカー20xと他のアンカー20yとの間の距離を測定する測定方式は、TWR(Two Way Ranging)方式であってもよい。TWR方式では、基準アンカー20xと他のアンカー20yとの間のUWBの電波による測距信号の送受信により、距離が算出される。
【0037】
例えば、基準アンカー20xと他のアンカー20yとの間での測距には、これらアンカー間でのタイムスタンプの送受信が必要となる。具体的には、基準アンカー20xは、他のアンカー20yへと信号の発信時刻を示すタイムスタンプを送付する。また、他のアンカー20yは、基準アンカー20xが送付したタイムスタンプを即座もしくは決められた時間後に基準アンカー20xへと送り返す。基準アンカー20xは、他のアンカー20yから送り返されたタイムスタンプを取得した時刻を示すタイムスタンプと、自装置が送付したタイムスタンプとに基づいて、他のアンカー20yとの距離を算出する。このような処理は、基準アンカー20x、および、他のアンカー20yのそれぞれが有する時刻情報がずれている場合があることを考慮し、アンカー間距離の算出においてこのずれを削除する目的で行われる。
【0038】
管理装置40は、基準アンカー20xと他のアンカー20yとの間の距離に基づいて、例えば、他のアンカー20yの位置座標として、基準アンカー20xの位置座標を基準とした場合の相対的な位置座標を測定する。すなわち、管理装置40は、基準アンカー20xの位置座標、および、他のアンカー20yの位置座標を提供する機能も有してよい。
【0039】
〔4.実施形態に係る情報処理の具体例〕
管理装置40が有する機能について、実施形態に係る情報処理の一例を挙げて説明する。
図4は、実施形態に係る情報処理の一例を示す図である。
図4には、屋内空間SP1(屋内空間SPの一例)において、タグ30A(タグ30の一例)の位置座標を測定するためのアンカー20が、作業員Uによって順次設置されてゆく場面が示され、この作業に応じて管理装置40が実施形態に係る情報処理を行う。また、
図4には、係る場面に対応する測位システムSyA(測位システムSyの一例)が示される。測位システムSyAには、管理装置40の一例として、管理装置40Aが導入されている。
【0040】
また、
図4には、作業員Uによる設置作業に応じて、
図4(a)→
図4(b)→
図4(c)の順に場面が遷移してゆく例が示される。係る例では、作業員Uは、例えば、アンカー20を1台ずつ順に設置するという設置作業を行う。
【0041】
図4(a)の例によれば、作業員Uは、既にタグ30Aが設置されている状態で、1台目のアンカー20を設置する作業を行ってよい。例えば、作業員Uは、
図4に示すように、高所に移動し1台目のアンカー20A(1)を設置するとともに、アンカー20A(1)の電源をONに設定したとする。
【0042】
アンカー20A(1)は、電源ONに応じて、自装置の識別情報(アンカーID)を含む電波を出力する。この結果、管理装置40は、アンカー20A(1)を検出する(ステップS41)。例えば、管理装置40は、アンカー20A(1)が設置されたことを検出する。
【0043】
以下では、アンカー20A(1)を、基準アンカー20xとして説明する。なお、管理装置40は、最初に設置された1台目のアンカー20A(1)を基準アンカー20xと定めてもよいし、作業員Uによって基準アンカー20xが指定されてもよい。一例を示すと、例えば、作業員Uは、利用者装置10を用いて、2台目のアンカー20を基準アンカー20xと指定することもできる。
【0044】
説明を戻し、管理装置40Aは、基準アンカー20xであるアンカー20A(1)に対して、同期信号を発信するよう指示する(ステップS42)。
【0045】
一方、作業員Uは、アンカー20A(1)を設置すると、地上へと戻り、2台目のアンカーの設置工事に移る。すなわち、作業員Uは、
図4(b)に示すように、別の高所に移動し2台目のアンカー20A(2)を設置するとともに、アンカー20A(2)の電源をONに設定したとする。なお、作業員Uは、アンカー20A(2)を設置後、地上に戻らず、管理装置40Aによって提供される情報を、現在の高所の場で確認すればよい。例えば、作業員Uは、利用者装置10を介して情報を確認すればよい。
【0046】
アンカー20A(2)は、電源ONに応じて、自装置の識別情報(アンカーID)を含む電波を出力する。この結果、管理装置40Aは、アンカー20A(2)を検出する(ステップS43)。例えば、管理装置40Aは、アンカー20A(2)が設置されたことを検出する。アンカー20A(2)は、アンカー20A(1)を基準とする他のアンカー20yに相当する。
【0047】
また、管理装置40Aは、アンカー20A(2)が、アンカー20A(1)が発信した同期信号を受信したか否かを判定する(ステップS44)。例えば、管理装置40Aは、アンカー20A(2)が、現在の設置位置において、アンカー20A(1)が発信した同期信号を受信したか否かを判定してよい。また、管理装置40は、アンカー20A(2)による電波強度のレベルに基づいて、同期信号を受信したか否かを判定してよい。
【0048】
管理装置40Aは、アンカー20A(2)が同期信号を受信したと判定した場合には、アンカー間距離を測定させる測距処理を実行するとともに、測距結果に基づいて、アンカー20A(2)の位置座標を測定する(ステップS45)。具体的には、管理装置40Aは、アンカー20A(1)とアンカー20A(2)との間の距離を測定するための処理を実行するよう、アンカー20A(1)およびアンカー20A(2)の双方に指示する。この結果、アンカー20A(1)とアンカー20A(2)との間でTWR方式による測距が行われる。例えば、アンカー20A(1)とアンカー20A(2)との間のUWBの電波による測距信号の送受信により、アンカー20A(1)とアンカー20A(2)との間の距離が測定される。例えば、アンカー20A(1)は、測距信号の送受信の結果に基づいて、自装置と、アンカー20A(2)との間の距離を測定する。そして、アンカー20A(1)は、測定結果を管理装置40Aに送信する。
【0049】
管理装置40Aは、アンカー20A(1)が送信した測定結果の情報と、アンカー20A(2)の高さとに基づいて、アンカー20A(2)の位置座標を測定する。例えば、管理装置40Aは、アンカー20A(2)の位置座標として、アンカー20A(1)の位置座標Pbを基準とした場合の相対的な位置座標P2を測定してよい。なお、アンカー20A(2)の高さを示す情報は、作業員Uが利用者装置10を操作して管理装置40に送信してもよいし、作業員Uがアンカー20A(1)に入力してアンカー20A(1)から管理装置40に送信させてもよい。
【0050】
また、管理装置40Aは、ステップS45では、アンカー20A(1)とアンカー20A(2)との間の距離が測定された測定結果に基づいて、アンカー20A(2)に対する時刻同期の処理も行ってよい。例えば、管理装置40Aは、測定結果が示す距離と信号の伝搬速度とに基づいて、アンカー20A(1)が所定のタイミングで発信した同期信号をアンカー20A(2)が受信する時刻を推定する。また、管理装置40Aは、アンカー20A(1)が所定のタイミングで発信した同期信号をアンカー20A(2)が受信した実際の時刻を取得する。そして、管理装置40Aは、推定した時刻すなわち受信推定時刻と、実際の時刻との時間差を、アンカー20A(1)とアンカー20A(2)との間での時刻同期の情報として管理する。
【0051】
次に、管理装置40Aは、アンカー20A(2)を識別するアンカーIDと、ステップS44で得られた判定結果と、ステップS45で得られた位置座標P2とが対応付けられた情報F2を含む確認画面Gを作業員Uに提供する(ステップS46)。具体的には、管理装置40Aは、確認画面Gを利用者装置10に送信する。なお、確認画面Gには、アンカー20A(1)に関する情報F1も含まれてよい。また、係る例に限らず、管理装置40Aが情報F2や情報F1を利用者装置10に送信することで、利用者装置10側で確認画面Gが生成されてもよい。
【0052】
また、
図4(b)では不図示であるが、管理装置40Aは、アンカー20A(2)の位置座標P2(第一の設置位置の一例)と、作業員Uにより予め設定された位置座標(第二の設置位置の一例)とが一致するか否かも判定してよい。例えば、作業員Uは、自身の経験則にしたがってアンカー20A(2)の設置位置を予め想定することで、この位置を示す位置座標を管理装置40Aに対して設定しておくことができる。
【0053】
管理装置40Aは、アンカー20A(2)の位置座標P2と、作業員Uにより予め設定された位置座標とが一致する場合には、位置座標P2が適切であることを示す情報を、上記の情報F2に対してさらに紐付けて表示させてよい。一方、管理装置40Aは、アンカー20A(2)の位置座標P2と、作業員Uにより予め設定された位置座標とが一致しない場合には、位置座標P2が不適切であることを示す情報を、上記の情報F2に対してさらに紐付けて表示させてよい。この結果、作業員Uは、自身が想定していた位置とは異なる位置にアンカー20A(2)を設置してしまっていたことに気付き、地上に戻る前に、現在の高所の場でアンカー20A(2)の設置位置を微調整することができるようになる。
【0054】
また、位置座標P2と、作業員Uにより予め設定された位置座標とが一致しないということは、位置座標P2には、NLOSによる測位誤差が生じていることが示唆される。また、マルチパスフェージングによる測位誤差が生じている場合もある。このため作業員Uは、アンカー20A(2)の現在の設置位置は、アンカー20A(1)の電波が直接届かず、反射波等が届いてしまう不適切な位置であり、設置位置を見直す必要があることに気付くこともできる。
【0055】
これまで、管理装置40Aは、アンカー20A(2)の検出をトリガーとして、アンカー20A(2)を対象とした情報処理(具体的には、同期信号の受信判定処理、位置座標の測定処理、時刻同期の処理)を行う例を示した。しかし、管理装置40Aは、アンカー20A(2)を検出した以降においては、アンカー20A(2)を対象とした情報処理を所定の周期で(例えば、リアルタイムに連続的に)行ってよい。具体的には、管理装置40Aは、アンカー20A(2)を検出した以降においては、基準アンカー20xであるアンカー20A(1)に対して、同期信号を発信するよう再度指示する。そして、管理装置40Aは、アンカー20A(1)が発信した同期信号をアンカー20A(2)が受信したか否かを判定し、受信したと判定できた場合には、アンカー間距離を測定させる測距処理を再度実行する。
【0056】
このような一連の測距処理が所定の周期で繰り返されることにより、例えば、作業員Uが高所の場において、アンカー20A(2)の設置位置や向きを調整することに応じて、確認画面Gに表示される情報F2が更新されることになる。このため作業員Uは、アンカー20A(2)を1台設置したことにつき、現在の高所の場において、アンカー20A(2)の時刻同期がとれているか否かを確認することができる。また、この時点で、アンカー20A(2)の位置座標の測定と、アンカー20A(2)に関する時刻同期の情報の管理とが自動的に完了しているという世界観が実現される。
【0057】
ここで、作業員Uは、アンカー20A(2)について時刻同期がとれていること、アンカー20A(2)の位置座標の測定が完了していること、想定していた位置にアンカー20A(2)を設置できていること等を確認できると、地上へ戻る。そして、作業員Uは、3台目のアンカーの設置工事に移る。すなわち、作業員Uは、
図4(c)に示すように、別の高所に移動し3台目のアンカー20A(3)を設置するとともに、アンカー20A(3)の電源をONに設定したとする。係る例でも同様に、作業員Uは、アンカー20A(3)を設置後、地上に戻らず、管理装置40Aによって提供される情報を、現在の高所の場で確認すればよい。例えば、作業員Uは、利用者装置10を介して情報を確認すればよい。
【0058】
アンカー20A(3)は、電源ONに応じて、自装置の識別情報(アンカーID)を含む電波を出力する。この結果、管理装置40Aは、アンカー20A(3)を検出する(ステップS47)。例えば、管理装置40は、アンカー20A(3)が設置されたことを検出する。アンカー20A(3)は、アンカー20A(1)を基準とする他のアンカー20yに相当する。
【0059】
また、管理装置40Aは、アンカー20A(3)が、アンカー20A(1)が発信した同期信号を受信したか否かを判定する(ステップS48)。例えば、管理装置40Aは、アンカー20A(3)が、現在の設置位置において、アンカー20A(1)が発信した同期信号を受信したか否かを判定してよい。また、管理装置40Aは、アンカー20A(3)による電波強度のレベルに基づいて、同期信号を受信したか否かを判定してよい。
【0060】
管理装置40Aは、アンカー20A(3)が同期信号を受信したと判定した場合には、アンカー間距離を測定させる測距処理を実行するとともに、測距結果に基づいて、アンカー20A(3)の位置座標を測定する(ステップS49)。具体的には、管理装置40Aは、アンカー20A(1)とアンカー20A(3)との間の距離を測定するための処理を実行するよう、アンカー20A(1)およびアンカー20A(3)の双方に指示する。この結果、アンカー20A(1)とアンカー20A(3)との間でTWR方式による測距が行われる。例えば、アンカー20A(1)とアンカー20A(3)との間のUWBの電波による測距信号の送受信により、アンカー20A(1)とアンカー20A(3)との間の距離が測定される。例えば、アンカー20A(1)は、測距信号の送受信の結果に基づいて、自装置と、アンカー20A(3)との間の距離を測定する。そして、アンカー20A(1)は、測定結果を管理装置40Aに送信する。
【0061】
管理装置40Aは、アンカー20A(1)が送信した測定結果の情報と、アンカー20A(3)の高さとに基づいて、アンカー20A(3)の位置座標を測定する。例えば、管理装置40Aは、アンカー20A(3)の位置座標として、アンカー20A(1)の位置座標Pbを基準とした場合の相対的な位置座標P3を測定してよい。なお、アンカー20A(3)の高さを示す情報は、作業員Uが利用者装置10を操作して管理装置40Aに送信してもよいし、作業員Uがアンカー20A(1)に入力してアンカー20A(1)から管理装置40Aに送信させてもよい。
【0062】
管理装置40Aは、ステップS49では、アンカー20A(1)とアンカー20A(3)との間の距離を測定された測定結果に基づいて、アンカー20A(3)に対する時刻同期の処理も行ってよい。例えば、管理装置40Aは、測定結果が示す距離と信号の伝搬速度とに基づいて、アンカー20A(1)が所定のタイミングで発信した同期信号をアンカー20A(3)が受信する時刻を推定する。また、管理装置40Aは、アンカー20A(1)が所定のタイミングで発信した同期信号をアンカー20A(3)が受信した実際の時刻を取得する。そして、管理装置40Aは、推定した時刻すなわち受信推定時刻と、実際の時刻との時間差を、アンカー20A(1)とアンカー20A(3)との間での時刻同期の情報として管理する。
【0063】
次に、管理装置40Aは、アンカー20A(3)を識別するアンカーIDと、ステップS48で得られた判定結果と、ステップS49で得られた位置座標P3とが対応付けられた情報F3を含む確認画面Gを作業員Uに提供する(ステップS50)。具体的には、管理装置40は、確認画面Gを利用者装置10に送信する。また、係る例に限らず、管理装置40Aが情報F3を利用者装置10に送信することで、利用者装置10側で確認画面Gが生成されてもよい。
【0064】
また、
図4(c)では不図示であるが、管理装置40Aは、アンカー20A(3)の位置座標P3(第一の設置位置の一例)と、作業員Uにより予め設定された位置座標(第二の設置位置の一例)とが一致するか否かも判定してよい。例えば、作業員Uは、自身の経験則にしたがってアンカー20A(3)の設置位置を予め想定することで、この位置を示す位置座標を管理装置40Aに対して設定しておくことができる。
【0065】
管理装置40Aは、アンカー20A(3)の位置座標P3と、作業員Uにより予め設定された位置座標とが一致する場合には、位置座標P3が適切であることを示す情報を、上記の情報F3に対してさらに紐付けて表示させてよい。一方、管理装置40Aは、アンカー20A(3)の位置座標P3と、作業員Uにより予め設定された位置座標とが一致しない場合には、位置座標P3が不適切であることを示す情報を、上記の情報F3に対してさらに紐付けて表示させてよい。この結果、作業員Uは、自身が想定していた位置とは異なる位置にアンカー20A(3)を設置してしまっていたことに気付き、地上に戻る前に、現在の高所の場でアンカー20A(3)の設置位置を微調整することができるようになる。
【0066】
また、位置座標P3と、作業員Uにより予め設定された位置座標とが一致しないということは、位置座標P3には、NLOSによる測位誤差が生じていることが示唆される。このため作業員Uは、アンカー20A(3)の現在の設置位置は、アンカー20A(1)の電波が直接届かず、反射波等が届いてしまう不適切な位置であり、設置位置を見直す必要がることに気付くこともできる。
【0067】
図4(c)では、管理装置40Aは、アンカー20A(3)の検出をトリガーとして、アンカー20A(3)を対象とした情報処理(具体的には、同期信号の受信判定処理、位置座標の測定処理、時刻同期の処理)を行う例を示した。しかし、管理装置40Aは、アンカー20A(3)を検出した以降においては、アンカー20A(3)を対象とした情報処理を所定の周期で(例えば、リアルタイムに連続的に)行ってよい。具体的には、管理装置40Aは、アンカー20A(3)を検出した以降においては、基準アンカー20xであるアンカー20A(1)に対して、同期信号を発信するよう再度指示する。そして、管理装置40Aは、アンカー20A(1)が発信した同期信号をアンカー20A(3)が受信したか否かを判定し、受信したと判定できた場合には、アンカー間距離を測定させる測距処理を再度実行する。
【0068】
このような一連の測距処理が所定の周期で繰り返されることにより、例えば、作業員Uが高所の場において、アンカー20A(3)の設置位置や向きを調整することに応じて、確認画面Gに表示される情報F3が更新されることになる。このため作業員Uは、アンカー20A(3)を1台設置したことにつき、現在の高所の場において、アンカー20A(3)の時刻同期がとれているか否かを確認することができる。また、この時点で、アンカー20A(3)の位置座標の測定と、アンカー20A(3)に関する時刻同期の情報の管理とが自動的に完了しているという世界観が実現される。
【0069】
これまで
図4を用いて、管理装置40Aが有する機能について説明してきた。係る機能により実現される実施形態に係る情報処理によれば、作業員Uは、アンカー20を1台設置するたびに、設置工事を行った高所の場において作業を行いながら、時刻同期の状況や設置位置の変化を確認することができる。このため、作業員Uは、この1台のアンカー20について時刻同期がとれていること、適切な位置に設置できたこと等を確認できたうえで、次のアンカー20の設置工事に移ることができる。すなわち、管理装置40Aは、これまで作業員Uに課せられていた作業工程の工数を減らし簡略化することができる。また、作業負担が効果的に軽減される。
【0070】
また、UWBは、500MHz以上の帯域幅を使用する無線通信であり、ナノ秒オーダーの非常に短い時間長のパルス信号で通信することができる。このため、管理装置40Aは、Wi-Fi(登録商標)やIMES(Indoor Messaging System)の電波を利用した場合に数メートル以上の測位精度となるのに対して、UWB電波を活用することで、数10センチメートル程度の測位精度を実現することができる。従って、アンカーの設置場所を高精度に測位するだけでなく、タグが取り付けられた物品や移動体が小型化されたり、これらの数が多くなったりする場合でも、それらを高精度に測位することができる。また、
図4では、アンカーを設置する設置者は、人間の作業員である例を示したが、例えば、人間に代わる作業ロボットでもよい。このように、人の作業がロボット化された場合であっても、本発明によれば、作業工程の工数が減らすことができるため、ロボットによる作業を効率化させることができる。
【0071】
〔5.測位システムにおける機能構成〕
図5は、
図3の測位システムSyにおいて、アンカー20’の追加設置時におけるアンカー20、アンカー20’および管理装置40Aの主要な構成の一例を示すブロック図である。なお、測位システムSyを
図4の測位システムSyAとすると、ここでいうアンカー20はアンカー20A(1)に対応し、アンカー20’はアンカー20A(2)あるいはアンカー20A(3)に対応する。
【0072】
アンカー20(アンカー20’も同様)は、UWB通信部210と、記憶部230と、情報の送信部としても機能するNW通信部240とを備える。UWB通信部210は、タグ30の測位時における測距信号の受信部としても機能する。
【0073】
アンカー20のUWB通信部210は、アンカー20’の設置時における測距信号の送受信部としても機能する。また、アンカー20のUWB通信部210は、アンカー20’の設置時に、アンテナ211を介して、アンカー20’にUWBの電波で測距信号を送信する。更に、UWB通信部210は、アンテナ211を介して、アンカー20’から返信された測距信号を受信する。また、アンカー20のUWB通信部210は、アンカー20’へ測距信号を送信した送信時刻情報(Timestamp)と、アンカー20’から返信された測距信号を受信した受信時刻情報(Timestamp)とを出力する。
【0074】
アンカー20の記憶部230は、UWB通信部210から出力された測距信号に含まれる各種情報と、測距信号の送受信結果の情報である測距信号の送信時刻情報(Timestamp)および受信時刻情報(Timestamp)とを互いに関連付けて記憶する。記憶部230は、アンカー20の高さ(Z軸座標)の測定情報を更に関連付けて記憶してもよい。
【0075】
アンカー20のNW通信部240は、記憶部230に記憶されているアンカー20'の測位に関する測位関連情報を、管理装置40Aに送信する。管理装置40Aに送信される測位関連情報の送信フォーマットは、例えば、アンカー20のアンカーID、アンカー20’のアンカーID、アンカー20’への測距信号の送信時刻情報(Timestamp)およびアンカー20’からの測距信号の受信時刻情報(Timestamp)を含む。
【0076】
管理装置40Aは、NW通信部410と、制御部420Aと、記憶部430とを備える。NW通信部410は、タグ30の測位時における測距信号の送受信結果の情報の受信部としても機能する。
【0077】
NW通信部410は、有線または無線の通信回線を介して複数のアンカー20と通信する。NW通信部410は、タグ30の測位時に、タグ30の測位に関する測位関連情報を各アンカー20から受信する。アンカー20からの測位関連情報は、例えば、タグ30のタグID、アンカー20のアンカーID、タグカウント情報(TAG Counter)、測位管理識別情報(Purpose ID)、タグ30からの測距信号の受信時刻情報(Timestamp)、電波強度、絶対時刻情報(Epoch Time)を含み得る。
【0078】
制御部420Aは、実施形態に係る情報処理に対応する機能を司る処理部に相当し、詳細については
図6で説明する。
【0079】
記憶部430は、測位関連情報、測位管理識別情報(Purpose ID)ごとにかつタグ30ごとに計算された測位結果を記憶する。また、記憶部430は、複数のアンカー20のそれぞれに予め設定した測位管理識別情報(Purpose ID)を記憶する。
【0080】
〔6.管理装置の構成〕
次に、
図6を用いて、実施形態に係る管理装置40Aについて説明する。
図6は、実施形態に係る管理装置40Aの構成例を示す図である。
図6に示すように、管理装置40Aは、NW通信部410と、制御部420Aと、記憶部430とを有する。
【0081】
(NW通信部410について)
NW通信部410は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。例えば、NW通信部410は、ネットワークNと無線で接続され、利用者装置10、アンカー20、タグ30との間で情報の送受信を行う。
【0082】
(記憶部430について)
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子またはハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
【0083】
(制御部420Aについて)
制御部420A(制御部420の一例)は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、管理装置40A内部の記憶装置に記憶されている各種プログラムがRAM(Random Access Memory)を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部420Aは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0084】
図6に示すように、制御部420Aは、受付部421と、検出部422と、指示部423と、判定部424と、測位部425と、同期管理部426と、提供部427を有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。なお、制御部420Aの内部構成は、
図6に示した構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。また、制御部420Aが有する各処理部の接続関係は、
図6に示した接続関係に限られず、他の接続関係であってもよい。
【0085】
(受付部421について)
受付部421は、利用者(例えば、作業員U)からアンカー20の設置に関する各種情報を受け付ける。例えば、受付部421は、設置予定のアンカー20のアンカーIDと、当該アンカー20の設置場所として想定される位置情報を受け付ける。例えば、受付部421は、アンカー20の設置場所として想定される位置情報として、水平座標軸(X軸、Y軸)を受け付けてよい。また、受付部421はアンカー20の高さを示す情報(Z軸)も受け付けてよい。
【0086】
なお、受付部421は、タグ30およびアンカー20を設置する屋内空間SPの情報も受け付けてよい。例えば、受付部421は、屋内空間SPが構成する敷地を示す敷地情報も受け付けてよい。ここでいう敷地情報とは、例えば、屋内空間SPを上空から見下ろした際のマップ情報であってよい。
【0087】
(検出部422について)
検出部422は、所定の空間に設置されるアンカー20を検出する。例えば、検出部422は、屋内空間SPに設置されるアンカー20の存在を検出する。例えば、検出部422は、アンカー20が発信する電波(電波に含まれる信号)に基づいて、アンカー20の電源がONにされたこと(すなわち、アンカー20が屋内空間SPに設置されたこと)を検出してよい。
【0088】
(指示部423について)
指示部423は、検出部422が検出したアンカー20のうち、基準アンカー20x(第一の無線通信端末)に対して、同期信号を発信するよう指示する。
【0089】
また、指示部423は、他のアンカー20yが同期信号を受信したと判定された場合には、基準アンカー20xと他のアンカー20yとの間の距離を測定するための処理を実行するよう、基準アンカー20xおよび他のアンカー20yの双方に指示する。
【0090】
(判定部424について)
判定部424は、検出部422が検出したアンカー20のうち、他のアンカー20y(第二の無線通信端末)が、基準アンカー20xにより発信された同期信号を受信したか否かを判定する。例えば、判定部424は、他のアンカー20yが、現在の設置位置において、基準アンカー20xにより発信された同期信号を受信したか否かを判定してよい。また、管理装置40は、他のアンカー20yによる電波強度のレベルに基づいて、同期信号を受信したか否かを判定してよい。
【0091】
また、判定部424は、他のアンカー20yが同期信号を受信したか否かを所定の周期で判定してよい。例えば、判定部424は、検出部422により他のアンカー20yが検出された以降、検出された他のアンカー20yごとに継続して、リアルタイムに同期信号を受信したか否か判定してよい。
【0092】
また、判定部424は、他のアンカー20yの位置座標(第一の設置位置の一例)と、当該他のアンカー20yについて利用者により予め設定された位置座標(第二の設置位置の一例)とが一致するか否かも判定してよい。ここでいう他のアンカー20yの位置座標(第一の設置位置)とは、後述する測位部425により測定された位置座標である。
【0093】
(測位部425について)
指示部423により指示に応じて、基準アンカー20xと他のアンカー20yとの間でTWR方式による測距が行われる。例えば、基準アンカー20xと他のアンカー20yとの間のUWBの電波による測距信号の送受信により、基準アンカー20xと他のアンカー20yとの間の距離が測定される。例えば、基準アンカー20xは、測距信号の送受信の結果に基づいて、自装置と、他のアンカー20yとの間の距離を測定する。そして、基準アンカー20xは、測定結果を管理装置40Aに送信する。
【0094】
この場合、測位部425は、基準アンカー20xが送信した測定結果の情報と、他のアンカー20yの高さとに基づいて、他のアンカー20yの位置座標を測定する。例えば、測位部425は、他のアンカー20yの位置座標として、基準アンカー20xの位置座標を基準とした場合の相対的な位置座標を測定してよい。
【0095】
また、測位部425は、他のアンカー20yの位置座標を所定の周期で計測してよい。例えば、測位部425は、検出部422により他のアンカー20yが検出された以降、検出された他のアンカー20yごとに継続して、リアルタイムに位置座標を測定してよい。
【0096】
また、測位部425は、NW通信部410が受信したタグ30の測位に関する測位関連情報に基づいて、タグ30の位置座標を算出す測位計算を行う。ここで、測位関連情報とは、タグ30Aが発した電波をアンカー20が受信した時刻に関する情報と、アンカー20の位置に関する情報とを含む。また、アンカー20の位置に関する情報とは、アンカー20の位置座標や、アンカー20を対象とした時刻同期の情報(時刻のずれ)等を含む。
【0097】
(同期管理部426について)
同期管理部426は、基準アンカー20xと他のアンカー20yとの間の距離が測定された測定結果に基づいて、他のアンカー20yに対する時刻同期の処理を行う。例えば、同期管理部426は、測定結果が示す距離と信号の伝搬速度とに基づいて、基準アンカー20xが所定のタイミングで発信した同期信号を他のアンカー20yが受信する時刻を推定する。また、同期管理部426は、基準アンカー20xが所定のタイミングで発信した同期信号を他のアンカー20yが受信した実際の時刻を取得する。そして、同期管理部426は、推定した時刻すなわち受信推定時刻と、実際の時刻との時間差を、基準アンカー20xと他のアンカー20yとの間での時刻同期の情報として管理する。
【0098】
(提供部427について)
提供部427は、他のアンカー20yのアンカーIDと、他のアンカー20yが同期信号を受信したか否かの判定結果と、他のアンカー20yの位置座標(基準アンカー20xの位置座標を基準とした場合の相対的な位置座標)とを対応付けた情報を含む確認画面Gを利用者に提供する。
【0099】
ここで、上述したように、判定部424は、検出部422により他のアンカー20yが検出された以降、検出された他のアンカー20yごとに継続して、リアルタイムに同期信号を受信したか否か判定してよいため、提供部427は、このリアルタイム判定に応じて、確認画面Gに含める情報をリアルタイムに更新してよい。例えば、提供部427は、他のアンカー20yごとに、同期信号を受信したか否かの判定結果と、位置座標とを対応付けた情報が表示される確認画面Gを提供するとともに、リアルタイムによる判定結果に応じて、確認画面Gに表示させる情報を更新する。
【0100】
また、測位部425は、検出部422により他のアンカー20yが検出された以降、検出された他のアンカー20yごとに継続して、リアルタイムに位置座標を測定してよいため、提供部427は、このリアルタイム測定に応じて、確認画面Gに含める情報をリアルタイムに更新してよい。例えば、提供部427は、他のアンカー20yごとに、同期信号を受信したか否かの判定結果と、位置座標とを対応付けた情報が表示される確認画面Gを提供するとともに、リアルタイムによる測定結果に応じて、確認画面Gに表示させる情報を更新する。
【0101】
また、提供部427は、他のアンカー20yの位置座標(第一の設置位置の一例)と、当該他のアンカー20yについて利用者により予め設定された位置座標(第二の設置位置の一例)とが一致するか否かの判定結果も確認画面Gに含めてよい。例えば、提供部427は、第一の設置位置と、第二の設置位置とが一致する場合には、第一の設置位置が適切であることを示す情報を確認画面G内で提供し、第一の設置位置と、第二の位置とが一致しない場合には、第一の設置位置が不適切であることを示す情報を確認画面G内で提供してよい。
【0102】
ここで、
図7を用いて、提供部427により提供される確認画面Gを説明する。
図7は、実施形態に係る確認画面Gの一例を示す図である。
図7(a)は、
図4のステップS46で提供される確認画面Gに対応し、1台目のアンカー20A(1)が屋内空間SP1に設置されている状態で、2台目のアンカー20A(2)が追加設置された際の状況が表示されている例が示される。また、
図7(b)は、
図4のステップS50で提供される確認画面Gに対応し、3台目のアンカー20A(3)がさらに追加設置された際の状況が表示されている例が示される。
【0103】
まず、
図7(a)および
図7(b)の双方に共通する項目として、確認画面Gにおける表示項目「Anchor_ID」、「Alias」、「ZoneNum」、「X_Position」、「Y_Position」、「Z_Position」、「ColorCode」について説明する。
【0104】
「Anchor_ID」は、屋内空間SP1に設置されているアンカー20を識別する識別情報すなわちアンカーIDである。「Alias」は、「Anchor_ID」が示すアンカー20の名称である。「ZoneNum」は、時刻同期を管理する単位となるエリアを定義する情報である。「SynSig」は、「Anchor_ID」が示すアンカー20が同期信号を受信したか否かの判定結果を示す。
【0105】
「X_Position」は、「Anchor_ID」が示すアンカー20のX軸座標を示す。「Y_Position」は、「Anchor_ID」が示すアンカー20のY軸座標を示す。「Z_Position」は、「Anchor_ID」が示すアンカー20のZ軸座標を示す。
【0106】
「ColorCode」は、アンカー20の設置位置が適切であるか否かを示す情報である。アンカー20の設置位置が適切である場合には、設置位置適切を示す黒四角(ColorCode)が表示されてよい。一方、アンカー20の設置位置が不適切である場合には、設置位置不適切を示す「△」(ColorCode)が表示されてよい。
【0107】
ここで、
図7(a)の例によれば、確認画面Gに含まれる情報F1は、基準アンカー20xである1台目のアンカー20A(1)を示す情報である。例えば、提供部427は、アンカー20A(1)が検出されたことに応じて、同期信号の受信判定処理、位置座標の測定処理、時刻同期の処理が行われた場合に、各処理の結果に基づき情報F1を生成してよい。また、これらの処理は、アンカー20A(1)が検出されている限り、リアルタイムにおいて継続されるため、提供部427は、継続される処理に応じてリアルタイムに情報F1を更新してよい。
【0108】
情報F1について具体的に説明する、情報F1では、アンカー20A(1)のAnchor_ID「20A(1)」に対して、Alias「Anchor1」、ZoneNum「1」、SynSig「---」、X_Position「Xa」、Y_Position「Ya」、Z_Position「Za」が対応付けられる。係る例において、SynSig「---」と表記されているのは、アンカー20A(1)は、同期信号を発信する側の無線通信端末であるためである。また、情報F1では、アンカー20A(1)のAnchor_ID「20A(1)」に対して、ColorCodeも対応付けられている。係る例は、アンカー20A(1)の設置位置が適切であることを示す。
【0109】
また、
図7(a)の例によれば、確認画面Gに含まれる情報F2は、他のアンカー20yである2台目のアンカー20A(2)を示す情報である。例えば、提供部427は、アンカー20A(2)が検出されたことに応じて、同期信号の受信判定処理、位置座標の測定処理、時刻同期の処理が行われた場合に、各処理の結果に基づき情報F2を生成してよい。また、これらの処理は、アンカー20A(2)が検出されている限り、リアルタイムにおいて継続されるため、提供部427は、継続される処理に応じてリアルタイムに情報F2を更新してよい。
【0110】
情報F2について具体的に説明する、情報F2では、アンカー20A(2)のAnchor_ID「20A(2)」に対して、Alias「Anchor2」、ZoneNum「1」、SynSig「OK」、X_Position「Xb」、Y_Position「Yb」、Z_Position「Zb」が対応付けられる。
【0111】
X_Position「Xb」は、アンカー20A(1)のX_Position「0」に対する相対的なX軸座標を示す。Y_Position「Yb」は、アンカー20A(1)のY_Position「0」に対する相対的なY軸座標を示す。Z_Position「Zb」は、アンカー20A(1)のZ_Position「0」に対する相対的なZ軸座標を示す。SynSig「OK」と表記されているのは、アンカー20A(2)が、同期信号を受信したと判定されためである。
【0112】
また、情報F2では、アンカー20A(2)のAnchor_ID「20A(2)」に対して、ColorCodeも対応付けられている。係る例は、アンカー20A(2)の設置位置が適切であることを示す。
【0113】
次に、
図7(b)を説明する。
図7(b)の例によれば、確認画面Gに含まれる情報F3は、他のアンカー20yである3台目のアンカー20A(3)を示す情報である。例えば、提供部427は、アンカー20A(3)が検出されたことに応じて、同期信号の受信判定処理、位置座標の測定処理、時刻同期の処理が行われた場合に、各処理の結果に基づき情報F3を生成してよい。また、これらの処理は、アンカー20A(3)が検出されている限り、リアルタイムにおいて継続されるため、提供部427は、継続される処理に応じてリアルタイムに情報F3を更新してよい。
【0114】
情報F3について具体的に説明する、情報F3では、アンカー20A(3)のAnchor_ID「20A(3)」に対して、Alias「Anchor3」、ZoneNum「1」、SynSig「OK」、X_Position「Xc」、Y_Position「Yc」、Z_Position「Zc」が対応付けられる。
【0115】
X_Position「Xc」は、アンカー20A(1)のX_Position「0」に対する相対的なX軸座標を示す。Y_Position「Yc」は、アンカー20A(1)のY_Position「0」に対する相対的なY軸座標を示す。Z_Position「Zc」は、アンカー20A(1)のZ_Position「0」に対する相対的なZ軸座標を示す。SynSig「OK」と表記されているのは、アンカー20A(3)が、同期信号を受信したと判定されためである。
【0116】
また、情報F3では、アンカー20A(3)のAnchor_ID「20A(3)」に対して、ColorCodeも対応付けられている。係る例は、アンカー20A(3)の設置位置が適切であることを示す。
【0117】
〔7.処理手順〕
ここからは、
図8および
図9を用いて、実施形態に係る情報処理の手順を説明する。例えば、管理装置40Aは、
図8の手順で基準アンカー20xを検出できた場合には、
図9の手順で他のアンカー20yを検出してよい。以下、具体的に説明する。
【0118】
〔7-1.処理手順(1)〕
図8は、基準アンカー20xを検出する手順の一例を示すフローチャートである。まず、受付部421は、屋内空間SPの情報と、屋内空間SPに設置する予定のアンカー20の情報を作業員Uから受け付ける(ステップS801)。例えば、受付部421は、屋内空間SPの情報として、屋内空間SPが構成する敷地を示す敷地情報(マップ情報)を受け付けてよい。また、受付部421は、屋内空間SPに設置する予定のアンカー20の情報として、設置予定のアンカー20のアンカーIDと、当該アンカー20の設置場所として想定される位置座標を受け付けてよい。また、受付部421は、基準アンカー20xを指定する情報も受け付けてよい。
【0119】
このような状態において、検出部422は、アンカー20を検出する(ステップS802)。例えば、検出部422は、アンカー20の電源の状況に基づいて、屋内空間SPにアンカーが設置されたか否かを検出してよい。検出部422は、アンカー20を検出できていない間は(ステップS802;No)、アンカー20を検出できるまで待機する。
【0120】
指示部423は、アンカー20が検出された場合には、今回検出されたアンカー20が基準アンカー20xであるか否かを判定する(ステップS803)。例えば、指示部423は、今回の検出が最初である場合(すなわち、今回検出されたアンカー20が1台目のアンカー20である場合)には、今回検出されたアンカー20は基準アンカー20xであると判定してよい。また、指示部423は、受付部421により受け付けられているアンカー20の情報と、今回検出されたアンカー20のアンカーIDとを照らし合わせて、アンカー20を基準とするよう指定されている場合には、今回検出されたアンカー20は基準アンカー20xであると判定してよい。
【0121】
指示部423は、今回検出されたアンカー20が基準アンカー20xでない場合には(ステップS803;No)、ステップS802へと処理を移行させる。
【0122】
一方、指示部423は、今回検出されたアンカー20が基準アンカー20xである場合には(ステップS803;Yes)、このアンカー20に対して、同期信号を発信するよう指示する(ステップS804)。
【0123】
〔7-2.処理手順(2)〕
図9は、他のアンカー20yの検出に関する手順の一例を示すフローチャートである。まず、検出部422は、アンカー20を検出する(ステップS901)。例えば、検出部422は、アンカー20の電源の状況に基づいて、屋内空間SPにアンカーが設置されたか否かを検出してよい。検出部422は、アンカー20を検出できていない間は(ステップS901;No)、アンカー20を検出できるまで待機する。
【0124】
一方、検出部422は、アンカー20を検出した場合には(ステップS901;Yes)、このアンカー20を、基準アンカー20x以外の他のアンカー20yとして認識し、判定部424に認識結果を出力する(ステップS902)。
【0125】
判定部424は、
図8の処理によって検出された基準アンカー20xが発信する同期信号を他のアンカー20yが受信したか否かを判定する(ステップS903)。
【0126】
提供部427は、他のアンカー20yが同期信号を受信していないと判定した場合には(ステップS903;No)、確認画面Gを介して、他のアンカー20yが受信NGであることを通知する(ステップS904)。
【0127】
一方、測位部425は、他のアンカー20yが同期信号を受信したと判定された場合には(ステップS903;Yes)、アンカー間距離を測定させる測距処理を実行する(ステップS905)。例えば、測位部425は、基準アンカー20xと他のアンカー20yとの間の距離を測定するための処理を実行するよう、基準アンカー20xおよび他のアンカー20yの双方に指示する。この結果、例えば、基準アンカー20xは、TWR方式に従って、自装置と、他のアンカー20yとの間の距離を測定し、アンカー20A(1)は、測距結果を管理装置40Aに送信する。
【0128】
測位部425は、基準アンカー20xが送信した測距結果に基づいて、他のアンカー20yの位置座標を測定する(ステップS906)。例えば、測位部425は、測距結果と、他のアンカー20yの高さとに基づいて、他のアンカー20yの位置座標を測定する。
【0129】
また、判定部424は、ステップS906で得られた他のアンカー20yの位置座標と、他のアンカー20yについて作業員Uにより予め設定された位置座標とが一致するか否かを判定する(ステップS907)。
【0130】
同期管理部426は、測定結果に基づいて、他のアンカー20yに対する時刻同期の処理を実行する(ステップS908)。具体的には、同期管理部426は、基準アンカー20xによって所定のタイミングで発信された同期信号を他のアンカー20yが受信した実際の時刻と、測距結果が示す距離から推定される他のアンカー20yの受信推定時刻との時刻差を、基準アンカー20xと他のアンカー20yとの間での時刻同期の情報として生成/管理する。
【0131】
提供部427は、確認画面Gを介して、他のアンカー20yによる同期信号の受信がOKであること、他のアンカー20yの位置座標、位置座標の一致判定結果を通知する(ステップS909)。
【0132】
ここで、判定部424は、屋内空間SPに設置する予定であったアンカー20の全てにおいて設置が完了したか否かを判定してよい(ステップS910)。判定部424は、設置が完了していない場合には(ステップS910;No)、ステップS903へと処理を移行させる。
【0133】
一方、測位部425は、設置が完了したと判定された場合には(ステップS910;Yes)、ステップS908で得られた時刻同期の情報や測位関連情報を用いて、タグ30の位置座標を測定する(ステップS911)。なお、提供部427は、タグ30ごとに位置座標が表示された測位結果画面G2を提供してよい。
【0134】
〔8.タグの位置測位の原理〕
続いて、
図9のステップS911で行われるタグ30の位置測位について原理を説明する。
図10は、タグ30の位置測位の原理を説明する説明図である。
図10に示すように、アンカー20A(1)、アンカー20A(2)、アンカー20A(3)という3つのアンカー20を用いて、タグ30Aの位置座標(x,y)を求める原理を説明する。タグ30Aの位置座標を求めるにあたって、アンカー20の数は3台に限定されない。
【0135】
また、
図10の例では、アンカー20A(1)の座標(Xa,Ya)、アンカー20A(2)の座標(Xb,Yb)、アンカー20A(3)の座標(Xc,Yc)が既知となっている。
【0136】
アンカー20A(1)とタグ30Aに注目と、アンカー20A(1)とタグ30Aとの間で通信を行い、アンカー20A(1)からタグ30Aへコマンドを送り、タグ30Aからアンカー20A(1)へレスポンスを返信する。アンカー20A(1)のコマンド送信時刻、タグ30Aのコマンド受信時刻、タグ30Aのレスポンス送信時刻、および、アンカー20A(1)のレスポンス受信時刻をそれぞれT1,T2,T3,T4とする。ここで、コマンド、レスポンスの転送時間(T2-T1とT4-T3)に光速cを乗算し、その和を2で除算することでアンカー20A(1)とタグ30との距離L1が求められる。これは、アンカー20A(1)にとって距離L1を半径とする円上にタグ30Aが存在することを意味する。
【0137】
また、アンカー20A(1)について説明した上記の計算を、アンカー20A(2)、アンカー20A(2)についても行い、アンカー20A(2)とタグ30Aとの距離L2、アンカー20A(3)とタグ30Aとの距離L3を求める。そして、アンカー20A(2)、アンカー20A(3)についても距離L2、L3を半径とする円を描くと、3つの円が重なった部分(交点)が求めるタグ30Aの位置となる。なお、距離L2、L3を求める際には、ステップS908で得られた時刻同期の情報(時刻差)が用いられる。
【0138】
〔9.ハードウェア構成〕
また、上記実施形態に係る管理装置40(40A)は、例えば
図11に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。
図11は、管理装置40の機能を実現するコンピュータ1000の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、HDD1400、通信インターフェイス(I/F)1500、入出力インターフェイス(I/F)1600、及びメディアインターフェイス(I/F)1700を有する。なお、HDD1400の代わりにフラッシュロムが採用されてもよい。
【0139】
CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0140】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、および、係るプログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信インターフェイス1500は、通信網50を介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを、通信網50を介して他の機器へ送信する。
【0141】
CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及び、キーボードやマウス等の入力装置を制御する。CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU1100は、生成したデータを、入出力インターフェイス1600を介して出力装置へ出力する。
【0142】
メディアインターフェイス1700は、記録媒体1800に格納されたプログラム又はデータを読み取り、RAM1200を介してCPU1100に提供する。CPU1100は、係るプログラムを、メディアインターフェイス1700を介して記録媒体1800からRAM1200上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体1800は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0143】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る管理装置40として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラム(例えば、実施形態に係るプログラム)を実行することにより、制御部420(420A)の機能を実現する。また、HDD1400には、記憶部120内のデータが格納される。コンピュータ1000のCPU1100は、これらのプログラムを、記録媒体1800から読み取って実行するが、他の例として、他の装置から、通信網50を介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0144】
〔10.その他〕
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0145】
上記実施形態では、ハードウェア構成として、実施形態に係る各処理部(受付部421、検出部422、指示部423、判定部424、測位部425、同期管理部426、提供部427)が、1つの管理装置40において実現される例を示した。しかしながら、これらの処理部は、適切な組合せごとに、複数の異なる情報処理装置(サーバ装置)に分けて実現されてもよい。
【0146】
例えば、測位システムSyにおいて、サーバ装置SV1とサーバ装置SV2という2つの情報処理装置が導入される場合、各情報処理装置に対して以下のパターンで処理部が実現されてよい。
【0147】
例えば、受付部421と検出部422と指示部423とはサーバ装置SV1において実現され、判定部424と測位部425と同期管理部426と提供部427とはサーバ装置SV2において実現される構成が採用されてよい。
【0148】
他の例として、受付部421はサーバ装置SV1において実現され、検出部422と指示部423と判定部424と測位部425と同期管理部426と提供部427とはサーバ装置SV2において実現される構成が採用されてもよい。
【0149】
また、他の例として、受付部421と検出部422と指示部423と判定部424と測位部425と同期管理部426とはサーバ装置SV1において実現され、提供部427はサーバ装置SV2において実現される構成が採用されてもよい。
【0150】
次に、測位システムSyにおいて、サーバ装置SV1とサーバ装置SV2とサーバ装置SV3という3つの情報処理装置が導入される場合、各情報処理装置に対して以下のパターンで処理部が実現されてよい。
【0151】
例えば、受付部421と検出部422と指示部423とはサーバ装置SV1において実現され、判定部424と測位部425と同期管理部426とはサーバ装置SV2において実現され、提供部427はサーバ装置SV3において実現される構成が採用されてよい。
【0152】
他の例として、受付部421と検出部422とはサーバ装置SV1において実現され、指示部423と判定部424と測位部425とはサーバ装置SV2において実現され、同期管理部426と提供部427とはサーバ装置SV3において実現される構成が採用されてもよい。
【0153】
また、他の例として、受付部421はサーバ装置SV1において実現され、検出部422と指示部423と判定部424と測位部425と同期管理部426とはサーバ装置SV2において実現され、提供部427はサーバ装置SV3において実現される構成が採用されてもよい。
【0154】
なお、測位システムSyに導入する情報処理装置の数は、上記例のように、2台や3台に限定されず、目的に応じて任意の数が導入されてよい。また、情報処理装置に対する処理部の実現パターンも上記例に限定されない。例えば、全ての処理部が異なる情報処理装置に分けられてもよい。
【0155】
以上、本願の実施形態をいくつかの図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0156】
Sy 測位システム
10 利用者装置
20 アンカー
30 タグ
40 管理装置
421 受付部
422 検出部
423 指示部
424 判定部
425 測位部
426 同期管理部
427 提供部