(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131126
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】変性プロピレン系樹脂、樹脂組成物および変性プロピレン系樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
C08F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041212
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 誠也
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏和
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 悠介
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100AA04R
4J100DA04
4J100DA09
4J100DA25
4J100FA08
4J100FA29
4J100GC07
4J100GC25
4J100HA53
4J100HC42
4J100HE17
(57)【要約】
【課題】成形加工時および二次加工時の成形体の白化を抑制することができ、かつ、成形加工性に優れる適度な溶融張力を有する樹脂組成物を得られるプロピレン系樹脂を提供すること。
【解決手段】下記要件(i)~(iv)を同時に満たす、変性プロピレン系樹脂(Q):
(i)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10分;(ii)溶融張力(230℃)が6~100mN;(iii)140℃のキシレンに不溶なゲル含量が3.0質量%以下;(iv)プロピレン由来の構成単位を50~95モル%、エチレン由来の構成単位を0~25モル%、および炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を5~50モル%含むエラストマー(a)(但し、プロピレン由来、エチレン由来、および炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位の合計は100モル%である。)の一分子中に二つ以上の反応性基を有する架橋助剤(C)による変性体(q1)を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(i)~(iv)を同時に満たす、変性プロピレン系樹脂(Q):
(i)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10分である;
(ii)溶融張力(230℃)が6~100mNである;
(iii)140℃のキシレンに不溶なゲル含量が3.0質量%以下である;
(iv)プロピレン由来の構成単位を50~95モル%、エチレン由来の構成単位を0~25モル%、および炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を5~50モル%含むエラストマー(a)(但し、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位と炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)の架橋助剤(C)による変性体(q1)を含み、前記架橋助剤(C)は、一分子中に二つ以上の反応性基を有する。
【請求項2】
前記反応性基がマレイミド基である、請求項1に記載の変性プロピレン系樹脂(Q)。
【請求項3】
前記変性プロピレン系樹脂(Q)が、
プロピレン由来の構成単位を50~90モル%、エチレン由来の構成単位を5~25モル%、および炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を5~25モル%含むエラストマー(a)(但し、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位と炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)の前記架橋助剤(C)による変性体(q1A)と、
プロピレン由来の構成単位を90モル%より大きく、エチレンまたは炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を10モル%未満含むプロピレン系重合体(B)(但し、プロピレン由来の構成単位と、エチレンまたは炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)の前記架橋助剤(C)による変性体(q2)と
を含み、
前記変性体(q2)の含有量が30質量%以下である、請求項1に記載の変性プロピレン系樹脂(Q)。
【請求項4】
前記変性プロピレン系樹脂(Q)が、エチレン由来の構成単位を含まず、プロピレン由来の構成単位を70~90モル%と炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を10~30モル%とを含むエラストマー(a)(但し、プロピレン由来の構成単位と炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)の前記架橋助剤(C)による変性体(q1B)を含む、請求項1に記載の変性プロピレン系樹脂(Q)。
【請求項5】
前記炭素数4~8のα-オレフィンが1-ブテンである、請求項1に記載の変性プロピレン系樹脂(Q)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の変性プロピレン系樹脂(Q)を含む、樹脂組成物。
【請求項7】
さらにプロピレン系重合体(B)を含む、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の変性プロピレン系樹脂(Q)の製造方法であって、
未変性プロピレン系樹脂100質量部に対して、0.01~20質量部の架橋助剤(C)と、0.01~1.0質量部の、半減期が1分となる分解温度が150~190℃である有機過酸化物(D)とを前記未変性プロピレン系樹脂に配合してなる混合物を、120~220℃の温度で溶融混練することにより前記変性プロピレン系樹脂(Q)を得る工程を含む、変性プロピレン系樹脂(Q)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性プロピレン系樹脂、樹脂組成物および変性プロピレン系樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、柔軟性、耐熱性、透明性に優れると共に、環境適性、衛生性を有するポリオレフィンからなる軟質材料として、プロピレンを主成分としたプロピレン系重合体が知られている。
【0003】
現在、このようなプロピレン系重合体を含むプロピレン系樹脂組成物の用途が広がる中で、従来のプロピレン系樹脂組成物は、ブロー成形や延伸工程などの成形加工時や二次加工時に成形体が白化(以下単に「白化」ともいう。)しやすい課題があった。また、例えば、ブロー成形や押出成形などの成形時にドローダウンやネックインしやすく、成形性が十分ではなかった。該成形性の指標の一つとしては、溶融張力が挙げられる。
【0004】
前記白化を抑制でき、かつ、成形性に優れるプロピレン系樹脂組成物として、例えば、特許文献1や2には、高い溶融張力を有するプロピレン系分岐ポリマーを含むプロピレン系樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-216207号公報
【特許文献2】特開2019-85480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1や2に記載などの従来のプロピレン系樹脂組成物は、白化をある程度は抑制できるが、その程度は十分ではなく、白化の抑制と成形性の両立の点で改良の余地があった。
【0007】
本発明は、以上のことに鑑みてなされたものであり、成形加工時および二次加工時の成形体の白化を抑制することができ、かつ、成形加工性に優れる適度な溶融張力を有する樹脂組成物を得られるプロピレン系樹脂を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、例えば、以下の[1]~[8]に関する。
[1]
下記要件(i)~(iv)を同時に満たす、変性プロピレン系樹脂(Q):
(i)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10分である;
(ii)溶融張力(230℃)が6~100mNである;
(iii)140℃のキシレンに不溶なゲル含量が3.0質量%以下である;
(iv)プロピレン由来の構成単位を50~95モル%、エチレン由来の構成単位を0~25モル%、および炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を5~50モル%含むエラストマー(a)(但し、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位と炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)の架橋助剤(C)による変性体(q1)を含み、前記架橋助剤(C)は、一分子中に二つ以上の反応性基を有する。
【0009】
[2]
前記反応性基がマレイミド基である、[1]に記載の変性プロピレン系樹脂(Q)。
【0010】
[3]
前記変性プロピレン系樹脂(Q)が、
プロピレン由来の構成単位を50~90モル%、エチレン由来の構成単位を5~25モル%、および炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を5~25モル%含むエラストマー(a)(但し、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位と炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)の前記架橋助剤(C)による変性体(q1A)と、
プロピレン由来の構成単位を90モル%より大きく、エチレンまたは炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を10モル%未満含むプロピレン系重合体(B)(但し、プロピレン由来の構成単位と、エチレンまたは炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)の前記架橋助剤(C)による変性体(q2)と
を含み、
前記変性体(q2)の含有量が30質量%以下である、[1]または[2]に記載の変性プロピレン系樹脂(Q)。
【0011】
[4]
前記変性プロピレン系樹脂(Q)が、エチレン由来の構成単位を含まず、プロピレン由来の構成単位を70~90モル%と炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を10~30モル%とを含むエラストマー(a)(但し、プロピレン由来の構成単位と炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)の前記架橋助剤(C)による変性体(q1B)を含む、[1]または[2]に記載の変性プロピレン系樹脂(Q)。
【0012】
[5]
前記炭素数4~8のα-オレフィンが1-ブテンである、[1]~[4]のいずれかに記載の変性プロピレン系樹脂(Q)。
【0013】
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載の変性プロピレン系樹脂(Q)を含む、樹脂組成物。
【0014】
[7]
さらにプロピレン系重合体(B)を含む、[6]に記載の樹脂組成物。
【0015】
[8]
[1]~[5]のいずれかに記載の変性プロピレン系樹脂(Q)の製造方法であって、
未変性プロピレン系樹脂100質量部に対して、0.01~20質量部の架橋助剤(C)と、0.01~1.0質量部の、半減期が1分となる分解温度が150~190℃である有機過酸化物(D)とを前記未変性プロピレン系樹脂に配合してなる混合物を、120~220℃の温度で溶融混練することにより前記変性プロピレン系樹脂(Q)を得る工程を含む、変性プロピレン系樹脂(Q)の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の変性プロピレン系樹脂によれば、成形加工時および二次加工時の成形体の白化を抑制することができ、かつ、成形加工性に優れる適度な溶融張力を有する樹脂組成物を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[変性プロピレン系樹脂(Q)]
本発明に係る変性プロピレン系樹脂(Q)(以下「樹脂(Q)」ともいう。)は、要件(i)~(iv)を同時に満たすことを特徴とする。
【0018】
(i)樹脂(Q)のASTM D1238に準拠した、230℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)が、0.1~30g/10分、好ましくは0.5~29g/10分、より好ましくは1~27g/10分である。MFRをこの範囲内に制御することによって、成形時流動性と溶融張力のバランスに優れた樹脂組成物が得られる。
【0019】
(ii)樹脂(Q)230℃における溶融張力が、6~100mN、好ましくは6~70mN、より好ましくは6~50mNである。溶融張力をこの範囲内に制御することによって、成形時流動性と溶融張力のバランスに優れた樹脂組成物が得られる。
前記溶融張力は、具体的には、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0020】
(iii)樹脂(Q)の140℃のキシレンに不溶なゲル含量が、3.0質量%以下、好ましくは2.9質量%以下、より好ましくは2.8質量%以下である。ゲル含量をこの範囲内に制御することによって、外観良好な樹脂組成物が得られる。
前記ゲル含量は、具体的には、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0021】
(iv)プロピレン由来の構成単位を50~95モル%、好ましくは55~95モル%、エチレン由来の構成単位を0~25モル%、好ましくは0~20モル%、および炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を5~50モル%、好ましくは5~45モル%含むエラストマー(a)(但し、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位と炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)の架橋助剤(C)による変性体(q1)を含み、前記架橋助剤(C)は、一分子中に二つ以上の反応性基を有する。
【0022】
前記炭素数4~8のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられ、1-ブテン、1-オクテンが好ましく、1-ブテンがより好ましい。
エラストマー(a)または後述するプロピレン系重合体(B)を構成するモノマー(プロピレン、エチレン、炭素数4~8のα-オレフィン)はバイオマス由来のものを含んでいてもよい。
各モノマーの構成単位(モル%)は、例えば、13C-NMRスペクトルの分析によって求められ、具体的には、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0023】
前記架橋助剤(C)は、一分子中に二つ以上の反応性基を有する化合物であれば、特に制限はないが、前記反応性基としては、例えば、マレイミド基、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、オキシム基、ニトロ基が挙げられ、マレイミド基が好ましい。
前記架橋助剤(C)としては、例えば、N,N’-1,3-フェニレンビスマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンビスマレイミド、4,4’―メチレンビス(N-フェニルマレイミド)、1,2-ビスマレイミドエタン、1,4-ビスマレイミドブタン、1,6-ビスマレイミドヘキサン、p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N,4-ジニトロソアニリン、エレチングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、ビニルブチラートまたはビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマーが挙げられる。
【0024】
この変性体(q1)に用いるエラストマー(a)中のエチレン由来の構成単位の含有量は0~25モル%なので、エチレン由来の構成単位を含むエラストマーを用いる場合と、含まないエラストマーを用いる場合の双方が包含される。そして、これらの好ましい態様は各々異なる。
【0025】
変性体(q1)が、エチレン由来の構成単位を含むエラストマー(a)の架橋助剤(C)による変性体である場合、樹脂(Q)は、以下の変性体(q1A)および変性体(q2)を含むことが好ましい。また、変性体(q2)の含有量は、樹脂(Q)の好ましくは30質量%以下、より好ましくは3~30質量%である。
・変性体(q1A):プロピレン由来の構成単位を50~90モル%、エチレン由来の構成単位を5~25モル%、および炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を5~25モル%含むエラストマー(a)(但し、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位と炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)の前記架橋助剤(C)による変性体
・変性体(q2):プロピレン由来の構成単位を90モル%より大きく、エチレンまたは炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を10モル%未満含むプロピレン系重合体(B)(但し、プロピレン由来の構成単位と、エチレンまたは炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)の前記架橋助剤(C)による変性体
【0026】
一方、変性体(q1)がエチレン由来の構成単位を含まないエラストマー(a)の架橋助剤(C)による変性体である場合、樹脂(Q)は、以下の変性体(q1B)を含むことが好ましい。
・変性体(q1B):変性体(q1)の一態様であって、エチレン由来の構成単位を含まず、プロピレン由来の構成単位を70~90モル%と炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を10~30モル%とを含むエラストマー(a)(但し、プロピレン由来の構成単位と炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)の前記架橋助剤(C)による変性体
以下、変性体(q1A)、変性体(q1B)、および変性体(q2)について説明する。
【0027】
<変性体(q1A)>
変性体(q1A)は、エチレン由来の構成単位を含むエラストマー(a)を用いた場合の変性体(q1)である。
【0028】
変性体(q1A)に用いるエラストマー(a)の、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点が120℃未満であるか融点が観測されず、好ましくは融点が100℃以下であるか融点が観測されない。
ここで、融点が観測されないとは、-150~200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。なお、融点とは、23℃±2℃で72時間以上の状態調節を実施した後の試験体を、-40℃まで冷却してから昇温速度10℃/minで測定したときに得られるDSC曲線上で検出された融点である。該融点は、後述するプロピレン系重合体(B)の融点のDSC測定法と異なることに留意すべきである。
【0029】
変性体(q1A)に用いるエラストマー(a)は、好ましくはプロピレン由来の構成単位を51~85モル%、エチレン由来の構成単位を10~24モル%、および炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を5~25モル%含み、より好ましくはプロピレン由来の構成単位を60~85モル%、エチレン由来の構成単位を10~20モル%、および炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を5~23モル%含み、さらに好ましくはプロピレン由来の構成単位を65~84モル%と、エチレン由来の構成単位を11~19モル%、および炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を5~21モル%含む。
【0030】
変性体(q1A)に用いるエラストマー(a)のショアーA硬度は、柔軟性の観点から、好ましくは20~90、より好ましくは35~60である。
前記ショアーA硬度は、ASTM D2240に準拠し、試料を190~230℃で加熱溶融させた後、15~25℃の冷却温度でプレス成形して得られた試験体を、23℃±2℃の環境下で72時間以上保管し、A型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読むことによって得られる値である。
【0031】
変性体(q1A)に用いるエラストマー(a)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.2~3.5である。このような分子量分布を有すると、低分子量成分が少ないためべた付き感が抑制される。
【0032】
変性体(q1A)に用いるエラストマー(a)のアイソタクティックトライアッド分率(mm)は、好ましくは85~99.9%、より好ましくは85~97.5%、さらに好ましくは90~97%である。アイソタクティックトライアッド分率がこの範囲にあると、エチレンや1-ブテンなどのプロピレン以外のコモノマーを多く共重合させた場合でも、完全に結晶性が失われないため、機械物性などの観点から好適である。
アイソタクティックトライアッド分率(mm)は、国際公開第2004/087775号の第21頁7行目から第26頁6行目までに記載された方法を用いて測定することができる。
【0033】
変性体(q1A)に用いるエラストマー(a)のガラス転移温度(Tg)が、-10~-50℃の範囲内で観測されることが、機械物性の観点から好ましい。前記Tgは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、前記エラストマー(a)の融点にて記載の測定条件により求めることができる。
【0034】
変性体(q1A)に用いるエラストマー(a)の、ASTM D1238に準拠した、230℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)は、加工性や機械物性の観点から、好ましくは0.5~500g/10分、より好ましくは1~100g/10分である。
【0035】
変性体(q1A)に用いるエラストマー(a)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、好ましくは0.5~2.5dl/g、より好ましくは0.7~2.5dl/gである。極限粘度[η]が前記範囲にあるエラストマーを用いると、成形性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0036】
変性体(q1A)に用いるエラストマー(a)の製造方法は特に限定されないが、オレフィンをアイソタクティック構造で立体規則性重合できる公知の触媒(例えば、固体状チタン成分及び有機金属化合物を主成分とする触媒、又はメタロセン化合物を触媒の成分として用いたメタロセン触媒)の存在下で、プロピレンと、エチレンと、炭素数4~8のα-オレフィンとを共重合して製造できる。好ましくは、メタロセン触媒の存在下で共重合することにより得られる。
【0037】
<変性体(q1B)>
変性体(q1B)は、エチレン由来の構成単位を含まず、エチレン由来の構成単位を含まず、プロピレン由来の構成単位を70~90モル%と炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を10~30モル%とを含むエラストマー(a)(但し、プロピレン由来の構成単位と炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)の前記架橋助剤(C)による変性体である。
【0038】
変性体(q1B)に用いるエラストマー(a)の、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点が120℃未満であるか融点が観測されず、好ましくは融点が100℃以下であるか融点が観測されない。
【0039】
変性体(q1B)に用いるエラストマー(a)は、炭素数4~8のα-オレフィン含有量が好ましくは10~30モル%、より好ましくは11~28モル%、特に好ましくは12~26モル%である。α-オレフィン含量が前記範囲にあると、柔軟性が良好で取扱いが容易な変性体(q1B)を得ることができる。また、このエラストマーを用いると、耐白化性と成形性のバランスに優れた成形体を提供し得る樹脂組成物を得ることができる。
【0040】
変性体(q1B)に用いるエラストマー(a)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.2~3.5である。分子量分布が前記範囲にあると、低分子量成分が少ないためべた付き感が抑制される。
【0041】
変性体(q1B)に用いるエラストマー(a)の、ASTM D1238に準拠した、230℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)は、加工性や機械物性の観点から、好ましくは0.5~500g/10分、より好ましくは1~100g/10分である。
【0042】
変性体(q1B)に用いるエラストマー(a)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、好ましくは0.5~2.5dl/g、より好ましくは0.7~2.5dl/gである。極限粘度[η]がこのような範囲にあるエラストマーを用いると、成形性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0043】
変性体(q1B)に用いるエラストマー(a)は、例えば、可溶性バナジウム化合物とアルキルアルミニウムハライド化合物とからなるバナジウム系触媒、又はジルコニウムのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物とからなるジルコニウム系触媒の存在下に、プロピレンと炭素数4~8のα-オレフィンとをランダムに共重合させることによって調製することができる。
【0044】
<変性体(q2)>
変性体(q2)は、プロピレン由来の構成単位を90モル%より大きく、エチレンまたは炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を10モル%未満含むプロピレン系重合体(B)(但し、プロピレン由来の構成単位と、エチレンまたは炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位との合計は100モル%である。)の前記架橋助剤(C)による変性体である。
プロピレン系重合体(B)としては、特に制限はないが、例えば、ホモポリプロピレン(h-PP)、ランダムポリプロピレン(r-PP)が挙げられる。
【0045】
プロピレン系重合体(B)の示差走査熱量計(DSC)測定により得られる融点(Tm)は、好ましくは120~170℃、より好ましくは125~168℃である。さらに同時に測定される融解熱量(△H)は、好ましくは50mJ/mg以上である。
前記融点(Tm)は具体的には、示差走査熱量計(DSC)測定装置内で10分間200℃保持した後、降温速度10℃/分で-20℃まで冷却し、-20℃で1分間保持し、再度昇温速度10℃/分の条件下で測定した値である。
【0046】
プロピレン系重合体(B)は、通常は、アイソタクティックポリプロピレンである。アイソタクティックであるとは、NMR法により測定したアイソタクティックペンタッド分率(mmmm分率)が好ましくは90~99.8%、より好ましくは95~99.8%である。mmmm分率は、例えば、特開2007-186664号公報に記載されているように、13C-NMRを使用して測定される分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクティック連鎖の存在割合、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率であり、同公報に開示された測定法によって算出される。
【0047】
プロピレン系重合体(B)のASTM D1238に準拠した、230℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)は、通常0.01~400g/10分、好ましくは0.1~200g/10分、より好ましくは0.5~100g/10分である。
【0048】
プロピレン系重合体(B)は公知の方法に拠り製造することが可能であり、特にアイソタクティックポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ型触媒やメタロセン触媒を用いた方法によって製造できる。
【0049】
[変性プロピレン系樹脂(Q)の製造方法]
樹脂(Q)は、例えば、プロピレン由来の構成単位を50~95モル%、エチレン由来の構成単位を0~25モル%、および炭素数4~8のα-オレフィン由来の構成単位を5~50モル%含むエラストマー(a)(変性体(q1)の未変性体)に、架橋助剤(C)、有機過酸化物(D)との混合物から得られる。
【0050】
具体的には、変性体(q1A)の未変性体であるエラストマー(a)と変性体(q2)の未変性体であるプロピレン系重合体(B)のブレンド体に、あるいは変性体(q1B)の未変性体であるエラストマー(a)に、必要に応じて後述する添加剤を加え、架橋助剤(C)、有機過酸化物(D)との混合物を溶融混練することにより得られる。変性体(q1A)の未変性体であるエラストマー(a)と変性体(q2)の未変性体であるプロピレン系重合体(B)は、予め公知の溶融混練法を用いて造粒されていてもよい。
【0051】
架橋助剤(C)の仕込み量は、未変性プロピレン系樹脂(エラストマー(a)、および、必要に応じてプロピレン系重合体(B))100質量部に対して、好ましくは0.01~20質量部、より好ましくは0.05~15質量部、さらにより好ましくは0.1~10質量部である。なお、プロピレン系重合体(B)を用いる場合、架橋助剤(C)の仕込み量は、エラストマー(a)とプロピレン系重合体(B)との合計100質量部に対して、前記範囲であればよい。
【0052】
有機過酸化物(D)としては、半減期が1分となる分解温度が150~190℃である化合物が好ましい。有機過酸化物(D)の仕込み量は、未変性プロピレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~1.0質量部、より好ましくは0.05~0.8質量部、より好ましくは0.1~0.6質量部である。なお、プロピレン系重合体(B)を用いる場合、架橋助剤(C)の仕込み量は、エラストマー(a)とプロピレン系重合体(B)との合計100質量部に対して、前記範囲であればよい。
【0053】
有機過酸化物(D)は、架橋助剤(C)、未変性プロピレン系樹脂、および必要に応じて後述する添加剤とそのまま混合しても使用することができるが、少量の有機溶媒に溶解してから使用することもできる。この有機溶媒としては、有機過酸化物(D)を溶解し得る有機溶媒であれば特に限定されない。
【0054】
架橋助剤(C)による変性は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、変性前のポリオレフィンを有機溶媒に溶解し、次いで架橋助剤(C)、有機過酸化物(D)および必要に応じて後述する添加剤などを溶液に加え、120~220℃、好ましくは150~200℃の温度で溶融混練し反応させる。反応時間は、0.5~15時間、好ましくは1~10時間である。
【0055】
また、押出機などを用いて、無溶媒で、有機過酸化物(D)存在下、架橋助剤(C)と、変性前ポリオレフィンとを反応させて変性体を製造することもできる。この反応は、通常は変性前のポリオレフィンの融点以上の温度で、通常0.5~10分間行われることが望ましい。
【0056】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、変性プロピレン系樹脂(Q)を含むことを特徴とし、前述したプロピレン系重合体(B)をさらに含むことが好ましい。
【0057】
プロピレン系重合体(B)を含む場合、プロピレン系重合体(B)を50~99質量%と樹脂(Q)を1~50質量%、好ましくはプロピレン系重合体(B)を60~98質量%と樹脂(Q)を2~40質量%、より好ましくはプロピレン系重合体(B)を70~98質量%と樹脂(Q)を2~30質量%、特に好ましくはプロピレン系重合体(B)を75~98質量%と樹脂(Q)を2~25質量%(但し、樹脂(Q)とプロピレン系重合体(B)は合計して100質量%である。)の割合で用いることによって得られる。このような割合で樹脂(Q)とプロピレン系重合体(B)を用いることによって、耐白化性と成形性のバランスに優れた成形体が提供される。
【0058】
本組成物のASTM D1238に準拠した、230℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)が、1~30g/10分、好ましくは1~20g/10分、より好ましくは2~15g/10分である。MFRをこの範囲内に制御することによって、耐白化性と成形性のバランスに優れた樹脂成形体が得られる。
【0059】
本組成物の230℃における溶融張力が、好ましくは5~50mN、より好ましくは5~40mN、さらに好ましくは5~30mNである。溶融張力をこの範囲内に制御することによって、耐白化性と成形性のバランスに優れた樹脂成形体が得られる。
【0060】
本組成物は、例えば、樹脂(Q)と、プロピレン系重合体(B)と、必要に応じて配合される添加剤とを種々の従来公知の方法で溶融混合することにより調製される。具体的には、前記各成分を同時に又は逐次的に、例えば、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー等の混合装置に装入して混合し、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練することによって得られる。特に、多軸押出機、ニーダー、バンンバリーミキサー等の混練性能に優れた装置を使用すると、各成分がより均一に分散された高品質の樹脂組成物が得られる。また、これらの任意の段階で必要に応じてその他の添加剤、例えば酸化防止剤などを添加することもできる。
【0061】
<その他の添加剤>
本組成物は、樹脂(Q)とプロピレン系重合体(B)の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、他の合成樹脂、他のゴム、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、結晶核剤、顔料、塩酸吸収剤、銅害防止剤等のその他の添加剤を含んでもよい。
その他の添加剤は、本組成物100質量部あたり、通常0.01~10質量部、好ましくは0.1~5質量部含んでいてもよい。これらの添加剤は、本組成物の調製段階で添加してもよいし、樹脂(Q)の調製前、調製中、又は調製後に添加してもよい。
【実施例0062】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。
【0063】
<原材料>
下記実施例および比較例で用いた原材料としては、以下の原材料を用いた。
[エラストマー(a)]
・エラストマー(a-1):後述する製造例1により得たプロピレン・α-オレフィン共重合体
・エラストマー(a-2):後述する製造例2により得たプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体
【0064】
[プロピレン系重合体(B)]
・プロピレン系重合体(B-1):ホモプロピレン共重合体(MFR(230℃、2.16kg荷重)=7g/10分、融点160℃
・プロピレン系重合体(B-2):ランダムプロピレン共重合体(エチレン含量=3モル%、MFR(230℃、2.16kg荷重)=7g/10分、融点150℃
【0065】
<エラストマー(a)の物性の測定方法>
得られたエラストマーの物性は、以下の方法により測定した。
【0066】
a)各構成単位の含有量
特開2007-186664号公報に記載の方法により、13C-NMRスペクトルの解析により求めた。
なお、本明細書において、プロピレンから導かれる構成単位の含有量を「プロピレン含量」ともいい、エチレンから導かれる構成単位の含有量を「エチレン含量」ともいい、α-オレフィンから導かれる構成単位の含有量を「α-オレフィン含量」ともいう。
【0067】
b)MFR
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重におけるMFRを測定した。
【0068】
c)ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、融解熱量(ΔH)
190℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて、試料を5分間加熱後、10MPaの加圧下で2分間成形した。その後、20℃、10MPaの加圧下で4分間冷却することで、厚み0.5mmのシート(試験片)を作製した。
作製した試験片を、室温で72時間経過させた後、約10mgにカットし、カットした試験片を、窒素雰囲気下で20℃から降温速度10℃/分で-20℃まで冷却し、その温度で5分間保持した。さらに、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した後、降温速度10℃/分で-100℃まで冷却し、その温度で5分間保持した。その後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温した。
ガラス転移温度および融点は、2度目に昇温させた際の吸熱曲線より求めた。融解熱量は、結晶融解ピークの積算値から算出した。
【0069】
d)極限粘度[η]
極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。
【0070】
[製造例1]
充分に窒素置換した2Lのオートクレーブに、ヘキサンを900ml、1-ブテンを90g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧7kg/cm2Gにし、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドをZr原子に換算して0.001ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を7kg/cm2Gに保ちながら30分間重合を行った。重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。
得られたエラストマー(a-1)は、収量39.7gであり、重合活性は79kg・ポリマー/ミリモルZr・hrであった。エラストマー(a-1)は、プロピレン由来の構造単位74モル%と1-ブテンから導かれる単位26モル%を含有し、MFRは7g/10分、融点は75℃、Mw/Mnは2.1、極限粘度[η]は1.9dl/gであった。
【0071】
[製造例2]
充分に窒素置換した2Lの重合装置に、833mlの乾燥ヘキサン、1-ブテン100gとトリイソブチルアルミニウム(1.0ミリモル)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を40℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.76MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.8MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3-t-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.001ミリモルとアルミニウム換算で0.3ミリモルのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム(株)製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温40℃、系内圧力を0.8MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2リットルのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。
得られたエラストマー(a-2)は、プロピレン由来の構造単位を77.5モル%、エチレン由来の構造単位を16モル%、1-ブテン由来の構造単位を6.5モル%含有し、MFRは7g/10分、ガラス転移温度Tgは-29℃であり、融点は観測されず、Mw/Mnは2.1、極限粘度[η]は2.1dl/gであった。
【0072】
[実施例1] 変性プロピレン系樹脂の製造
押出機PLABOR-30((株)プラスチック工学研究所製)に、エラストマー(a-1)100質量部、架橋助剤(C)としてN,N‘-1,3-フェニレンビスマレイミド(東京化成工業(株)製)0.5質量部、および有機過酸化物(D)としてパーヘキシルI(t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、日本油脂(株)製、半減期1分となる分解温度:155.0℃)1.5質量部を投入し、以下の条件で運転して、変性プロピレン系樹脂(Q-1)を得た。得られた変性体(Q-1)のMFR、溶融張力、ゲル含量を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
(押出機の運転条件)
・シリンダー温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8=100℃/130℃/160℃/160℃/160℃/160℃/160℃/160℃
・スクリュー回転数:100rpm
・フィーダー回転数:8rpm
【0074】
[実施例2~5、比較例1~4]
各成分の種類および配合量を表1に記載の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、変性プロピレン系樹脂(Q-2)~(Q-5)、(Q’-1)~(Q'-4)を得た。得られた各変性プロピレン系樹脂のMFR、溶融張力、ゲル含量を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
<変性プロピレン系樹脂の物性の測定方法>
実施例および比較例で調製した変性プロピレン系樹脂は、以下の方法により測定した。
【0076】
a)MFR
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重におけるMFRを測定した。
【0077】
b)溶融張力
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Dを用いて、以下の条件で変性プロピレン系樹脂を紐状に押し出した。押し出されたストランドをロードセルに取り付けたプーリーを介してローラーを用いて巻き取っていった時の、ロードセルの荷重値を溶融張力とした。なお、溶融張力が観測されなかった場合は、「測定不可」と示す。
設定温度:230℃
キャピラリー直径:2.095mm
キャピラリー長さ:8.00mm
シリンダー押出速度:15mm/分
巻き取り速度:15m/分
【0078】
c)ゲル含量
変性プロピレン系樹脂を約100mg秤量し、325メッシュのスクリーンに包んで、密閉容器中にて30mlのp-キシレンに、140℃で3時間浸漬した。次に、そのスクリーンを取り出し、80℃にて2時間以上恒量になるまで乾燥した。ゲル分率(質量%)は、次式で表わされる。
ゲル分率(質量%)=100×(W3-W2)/(W1-W2)
(前記式中、W1は試験前のスクリーンおよびサンプルの質量を示し、W2はスクリーン質量を示し、W3は試験後のスクリーンおよびサンプルの質量を示す。)
【0079】
【0080】
表1に示すように、前記要件(i)~(iv)を満たす実施例1~5の変性プロピレン系樹脂(Q)は、比較例1および3の未変性体に対して、MFRに対する溶融張力が高く、溶融物性に優れていた。
また、比較例2および4のように、架橋助剤(C)を含まない変性プロピレン系樹脂はMFRと溶融張力のバランスが悪化した。
【0081】
[実施例6および7] 樹脂組成物の製造
(株)東洋精機製作所製ラボプラストミルに、変性プロピレン系樹脂(Q-2)およびプロピレン系重合体(B-2)を表2に記載の配合比(質量%)で入れ、200℃、60rpmの条件で約5分間溶融混錬することで、樹脂組成物を調製した。得られた各樹脂組成物のMFR、溶融張力、耐白化性を測定した。結果を表2に示す。
【0082】
[実施例8および9]
(株)東洋精機製作所製ラボプラストミルに、変性プロピレン系樹脂(Q-5)およびプロピレン系重合体(B-2)を表2に記載の配合比(質量%)で入れ、200℃、60rpmの条件で約5分間溶融混錬することで、樹脂組成物を調製した。得られた各樹脂組成物のMFR、溶融張力、耐白化性を測定した。結果を表2に示す。
【0083】
[比較例5]
(株)東洋精機製作所製ラボプラストミルに、プロピレン系重合体(B-2)のみを入れ、200℃、60rpmの条件で約5分間溶融混錬することで、樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物のMFR、溶融張力、耐白化性を測定した。結果を表2に示す。
【0084】
[比較例6]
(株)東洋精機製作所製ラボプラストミルに、変性プロピレン系樹脂(Q’-1)およびプロピレン系重合体(B-2)を表2に記載の配合比(質量%)で入れ、200℃、60rpmの条件で約5分間溶融混錬することで、樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物のMFR、溶融張力、耐白化性を測定した。結果を表2に示す。
【0085】
[比較例7および8]
(株)東洋精機製作所製ラボプラストミルに、変性プロピレン系樹脂(Q’-3)およびプロピレン系重合体(B-2)を表2に記載の配合比(質量%)で入れ、200℃、60rpmの条件で約5分間溶融混錬することで、樹脂組成物を調製した。得られた各樹脂組成物のMFR、溶融張力、耐白化性を測定した。結果を表2に示す。
【0086】
<プロピレン系樹脂組成物の物性の測定方法>
実施例および比較例で調製した樹脂組成物は、以下の方法により測定した。
【0087】
a)MFR
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重におけるMFRを測定した。
【0088】
b)溶融張力
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Dを用いて、以下の条件でプロピレン系樹脂組成物を紐状に押し出した。押し出されたストランドをロードセルに取り付けたプーリーを介してローラーを用いて巻き取っていった時の、ロードセルの荷重値を溶融張力とした。なお、溶融張力が観測されなかった場合は、「測定不可」と示す。
設定温度:230℃
キャピラリー直径:2.095mm
キャピラリー長さ:8.00mm
シリンダー押出速度:15mm/分
巻き取り速度:15m/分
【0089】
c)耐白化性
200℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて、樹脂組成物を6分間加熱後、10MPaの加圧下で2分間成形した。その後、20℃、10MPaの加圧下で2分間冷却することで、厚み500μmのシートを作製した。
成形から室温で72時間経過した後、作製したシートから、JIS K 6251に規定の2号形ダンベルを作製し、該ダンベルを引張速度50mm/分で15mm伸長させた前後の色相(L値)を、分光測定計(コニカミノルタ(株)製、CM-3700d)を用いて測定し、下記式に基づいて、色相変化(ΔL)を算出した。ΔL値が小さいほど、良好な耐白化性を有することを示す。
ΔL=L値(伸長後)-L値(伸長前)
【0090】
【0091】
表2に示すように、前記要件(i)~(iv)を満たす、実施例6~9の変性プロピレン系樹脂(Q)を含む樹脂組成物は、比較例5~8の樹脂組成物に比べて、溶融張力と耐白化性のバランスが優れていた。