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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131137
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】硬貨検知用アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/00 20060101AFI20240920BHJP
   G07D 11/22 20190101ALI20240920BHJP
   G07D 11/14 20190101ALI20240920BHJP
【FI】
H01Q7/00
G07D11/22
G07D11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041226
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】長島 隆一
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA08
3E141BA12
3E141GA01
3E141HA06
3E141HA09
3E141JA07
3E141LA01
3E141LA77
(57)【要約】
【課題】外周側の磁界を増やしても磁界の漏れを減らすことで、センサコイルの誤検知を抑制することが可能な硬貨検知用アンテナを提供する。
【解決手段】この硬貨検知用アンテナ100は、基板51に形成されたセンサコイル52とは別の配線パターンにより構成され、センサコイル52の外周を取り囲むように配置されるとともに、センサコイル52により生じる磁束が基板51の外周縁51aよりも外側に漏れることを抑制する環状のシールドリング53を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に形成された空芯コイルの配線パターンにより構成されたセンサコイルと、
前記基板に形成された前記センサコイルとは別の配線パターンにより構成され、前記センサコイルの外周を取り囲むように配置されるとともに、前記センサコイルにより生じる磁束が前記基板の外周縁よりも外側に漏れることを抑制する環状のシールドリングと、を備える、硬貨検知用アンテナ。
【請求項2】
前記センサコイルは、内周コイルと、前記内周コイルを取り囲む外周コイルとを含み、
前記シールドリングは、前記外周コイルを取り囲むとともに、前記外周コイルにより生じる磁束が前記基板の外周縁よりも外側に漏れることを抑制するように構成されており、
前記外周コイルのインダクタンスは、前記内周コイルのインダクタンスより大きくなるように構成されている、請求項1に記載の硬貨検知用アンテナ。
【請求項3】
前記センサコイルは、前記外周コイルと前記シールドリングとの間に配置され、前記外周コイルを取り囲むとともに、前記外周コイルよりもインダクタンスが小さい追加コイルを含み、
前記外周コイルと、前記追加コイルとの合成インダクタンスが、前記内周コイルのインダクタンスより大きくなるように構成されており、
前記外周コイルと前記追加コイルとは同じ向きに電流が流れるように構成されている、請求項2に記載の硬貨検知用アンテナ。
【請求項4】
前記基板は、投入された硬貨を収納部に搬送する硬貨処理装置の搬送路と、前記収納部から硬貨が排出される前記硬貨処理装置の排出トレイとのうち少なくとも一方に設けられており、
前記追加コイルは、前記搬送路の搬送面における搬送方向と直交する方向の両側に設けられる壁部、または前記排出トレイの表面における硬貨の排出方向と直交する方向に設けられる壁部からの距離が検知対象の硬貨の最小厚み以下になるように前記基板に配置されている、請求項3に記載の硬貨検知用アンテナ。
【請求項5】
前記基板は、投入された硬貨を収納部に搬送する硬貨処理装置の搬送路と、前記収納部から硬貨が排出される前記硬貨処理装置の排出トレイとのうち少なくとも一方の下方側に配置されており、
前記シールドリングは、前記搬送路の搬送面における搬送方向と直交する方向の両側に設けられる壁部、または前記排出トレイの表面における硬貨の排出方向と直交する方向に設けられる壁部の直下に位置する、請求項1に記載の硬貨検知用アンテナ。
【請求項6】
前記基板は、2層以上の複数層から構成される多層構造を有しており、
前記シールドリングは、前記基板を構成する複数層のうち2層以上に配置されている、請求項1に記載の硬貨検知用アンテナ。
【請求項7】
前記基板は、2層以上の複数層から構成される多層構造を有しており、
前記追加コイルは、前記基板を構成する複数層のうち1層に配置されている、請求項3に記載の硬貨検知用アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、硬貨検知用アンテナに関し、特に、センサコイルを備える硬貨検知用アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサコイルを備える硬貨検知用アンテナが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、基板と、基板に形成された配線パターンからなるトラック形状の複数のセンサコイルとを備える硬貨検知用アンテナが開示されている。また、特許文献1では、硬貨検知用アンテナが、硬貨処理装置の内部から外部に排出された硬貨を溜めておくための排出トレイに設けられている。排出トレイの下部には、排出トレイに硬貨が残留しているか否かを検出するための硬貨検知用アンテナが設けられている。硬貨検知用アンテナは、センサコイルに交流電流を印加することにより磁界が発生する。そして、排出トレイ上に硬貨が存在する場合に、センサコイルから発生した磁界における磁束に対して、硬貨により、電磁誘導(渦電流損出)が発生し、センサコイルに印加された交流電流に変化が生じる。この変化量により、硬貨の有無を検知するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-96204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されていないが、排出トレイは、通常、底部と、底部を取り囲む壁部とを有しているとともに、壁部と底部とが接する部分の直下に基板の外周縁が位置するように、基板が配置される。排出トレイに残留している硬貨を精度よく検知するためには、底部に対して硬貨が平行になる場合に加えて、排出された硬貨が壁部に接触し、底部に対して傾斜した状態になった場合も検知できるように壁部近傍まで磁界を発生させることが好ましい。しかしながら、壁部近傍(配線パターンが配置された基板の外周縁近傍)まで磁界を発生させた場合に、磁界における磁束が壁部の外側まで存在する場合がある。この場合に、排出トレイの壁部の外側に金属が存在すると、金属によってセンサコイルの磁束が遮られてセンサコイルが誤検知することが考えられる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、外周側の磁界を増やしても磁界の漏れを減らすことで、センサコイルの誤検知を抑制することが可能な硬貨検知用アンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による硬貨検知用アンテナは、基板と、基板に形成されたセンサコイルの配線パターンにより構成されたセンサコイルと、基板に形成されたセンサコイルとは別の配線パターンにより構成され、センサコイルの外周を取り囲むように配置されるとともに、センサコイルにより生じる磁束が基板の外周縁よりも外側に漏れることを抑制する環状のシールドリングと、を備える。
【0008】
この発明の一の局面による硬貨検知用アンテナでは、基板に形成されたセンサコイルとは別の配線パターンにより構成され、センサコイルの外周を取り囲むように配置されるとともに、センサコイルにより生じる磁束が基板の外周縁よりも外側に漏れることを抑制する環状のシールドリングを備える。これにより、基板の外周縁近傍まで磁界を発生させた場合にも、シールドリングにより、センサコイルの磁束が基板の外周縁よりも大きく外側に漏れることが抑制されるため、基板の外周縁よりも外側に金属が存在した場合に、センサコイルの磁束が遮られることを抑制することができる。これにより、外周側の磁界を増やしても磁界の漏れを減らすことで、センサコイルの誤検知を抑制することができる。また、基板の外周縁近傍まで磁界を発生させる場合、硬貨が壁部に接触して底部に対して傾斜した状態になった場合も検知することができるので、検知精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記のように、外周側の磁界を増やしても磁界の漏れを減らすことで、センサコイルの誤検知を抑制することが可能な硬貨検知用アンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態による硬貨処理装置を示す斜視図である。
図2】一実施形態による硬貨処理装置の内部を示すブロック図である。
図3】一実施形態による搬送路の断面図である。
図4】基板上にシールドリングとセンサコイルとを配置した一例を示す図である。
図5】シールドリングと壁部との位置関係を示す図である。
図6】実施形態の硬貨検知用アンテナの磁束を示す図である。
図7】比較例の硬貨検知用アンテナの磁束を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1図5を参照して、一実施形態による硬貨検知用アンテナ5について説明する。本実施形態では、硬貨検知用アンテナ5は、硬貨処理装置(釣銭機)100に使用される。
【0013】
(硬貨処理装置の構成)
図1に示すように、硬貨処理装置100は、硬貨110の入金および出金を行うための装置である。硬貨処理装置100は、たとえば、POS(point of sales)レジスタ、紙幣処理装置、棒金収納部などを備えるPOSシステムの一部を構成する。硬貨処理装置100は、たとえば、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどの店舗に設置されている。硬貨処理装置100は、販売者(ユーザ)が会計などを行う状態で用いられる。
【0014】
硬貨処理装置100は、投入口1と、出金口2と、搬送路3と、収納部4とを備える。なお、硬貨処理装置100の上下方向をZ方向とし、投入口1が正面に位置するように配置した場合の左右方向(幅方向)をX方向とし、奥行方向をY方向とする。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する方向とする。
【0015】
投入口1は、硬貨110を硬貨処理装置100の筐体100aの外部から内部に投入するための入口部である。投入口1は、硬貨処理装置100の筐体100aの内部に通じている。具体的には、搬送路3の入金用搬送路3aに通じている。
【0016】
出金口2は、硬貨110を硬貨処理装置100の筐体100aの内部から外部に排出するための出口部分である。出金口2は、釣銭口2aと返却口2bとを含む。釣銭口2aは、釣銭用の硬貨110と、正規の硬貨110(正貨)ではないと判断された硬貨110とが排出される。返却口2bは、返却用の硬貨110が排出される。また、釣銭口2aは、排出された硬貨110を貯留可能である排出トレイ21を含む。返却口2bは、返却された硬貨110を貯留可能なように硬貨受け部22を有している。
【0017】
図2に示すように、搬送路3は、入金用搬送路3aと出金用搬送路3bとを含む。入金用搬送路3aは、投入口1から投入された硬貨110を一時保留部8に搬送するために設けられている。入金用搬送路3aは、一時保留部8に一時的に保留された硬貨110を金種ごとに振り分けて、金種毎に対応する収納部4に収納する振分部9を含む。出金用搬送路3bは、収納部4から繰り出された硬貨110を排出トレイ21に搬送する。
【0018】
図3に示すように、搬送路3は、硬貨110を搬送するベルト機構31と、搬送路3の搬送面30における搬送方向(Y方向)と直交する方向の(X方向)の両端に位置する壁部32と、壁部32の下方に設けられた底部33とを有する。搬送路3は、投入口1の下方に配置される。ベルト機構31が回転することにより硬貨110がY方向に搬送される。ベルト機構31は、輪状であり、ベルト機構31の中央の空間に底部33と、基板51と、フェライト板6とが配置される。なお、図3では、ベルト機構31にハッチングを付している。
【0019】
図2に示すように、収納部4は、金種毎に設けられている。収納部4は、たとえば、500円硬貨を収納する収納部41と、10円硬貨を収納する収納部42と、100円硬貨を収納する収納部43と、5円硬貨を収納する収納部44と、50円硬貨を収納する収納部45と、1円硬貨を収納する収納部46とを含む。なお、硬貨処理装置100が処理する硬貨110の金種は、日本の金種に限られず、いずれの国の金種であってもよい。
【0020】
硬貨検知用アンテナ5は、入金用搬送路3aの投入口1側と、出金用搬送路3bと、釣銭口2aと、返却口2bと、振分部9とに設けられている。以下、搬送路3に設ける場合を例に説明するが、搬送路3以外に設ける場合も同じように構成される。
【0021】
図4に示すように、硬貨検知用アンテナ5は、基板51と、センサコイル52と、シールドリング53と、追加コイル54とを含む。センサコイル52は、外周コイル52aと、内周コイル52bとを含む。
【0022】
基板51は、配線パターンが形成されたプリント基板である。基板51は、2層以上の複数層から構成される多層構造を有している。
【0023】
センサコイル52は、単一の基板51に形成された空芯コイルの配線パターンにより構成される。センサコイル52は、抵抗とコンデンサとを含む、そして、センサコイル52は、交流電源を有する共振周波数の変化を検知するセンサに接続されている。センサコイル52は、交流により磁界を発生させる。磁界は、配線パターン周りに円状(渦状)に発生する。
【0024】
センサコイル52から発生した磁界は硬貨110により、磁界における磁束の変化が生じる。具体的には、磁束が硬貨110を貫通することにより、電磁誘導(渦電流損失)が発生する。これにより、センサコイル52に印加された交流電流に変化が生じ、共振周波数が変化する。硬貨検知用アンテナ5は、センサが検知した共振周波数の変化と閾値から硬貨110の有無を検知する。
【0025】
図4に示すように、外周コイル52aは、基板51の外周縁51aに沿って配置される。内周コイル52bは、外周コイル52aの内側に配置される。内周コイル52bは、1つでもよく、複数設けられていてもよい。内周コイル52bが複数設けられる場合は、たとえば、外周コイル52aの内側に並べて設けられる。また、図5に示すように、外周コイル52aおよび内周コイル52bを形成するコイル間の隙間は、硬貨110の直径cよりも小さい。
【0026】
外周コイル52aのインダクタンスは、内周コイル52bのインダクタンスより大きくなるように構成されている。インダクタンスは、たとえば、コイルの巻き数を大きくすることにより大きくすることができる。内周コイル52bと外周コイル52aとは、隣り合うコイルが逆向きに電流が流れるように構成されている。そのため、内周コイル52bと外周コイル52aとは、発生する磁束の向きが逆になるため、所定の間隔をあけて配置することにより、磁束を打ち消すことなく、空芯部分まで磁束を発生させることができる。
【0027】
硬貨検知用アンテナ5が、矩形状の搬送路3(図3参照)に配置される場合は、外周コイル52aおよび内周コイル52bは、搬送路3に沿った辺を有する角が丸い四角形形状または四角形形状を有している。好ましくは、角が丸い四角形形状のように4隅を弧にすることで、4隅の磁束の減少をより少なくすることができる。
【0028】
また、硬貨検知用アンテナ5を円形状、楕円形状または四角形状の排出トレイ21(図1参照)に配置する場合は、外周コイル52aおよび内周コイル52bは、排出トレイ21の外周部に沿った辺を有する楕円形状、円形状、または角が丸い四角形形状を有している。
【0029】
図4に示すように、シールドリング53は、基板51に形成されたセンサコイル52とは別の配線パターンにより構成される。シールドリング53は、センサコイル52と接続されていない。シールドリング53は、センサコイル52の外周を取り囲むように基板51に配置される。シールドリング53は、環状である。
【0030】
シールドリング53は、センサコイル52から発生した磁界により誘導電流が流れる。これにより、シールドリング53の磁界が発生し、シールドリング53の磁束によって、センサコイル52により生じる磁束が遮られて、基板51の外周縁51aよりも外側に漏れることを抑制する。シールドリング53は、消費する電力量を小さくするために、電気抵抗値が小さいほうが好ましく、たとえば、銅で構成されている。
【0031】
図5に示すように、シールドリング53は、搬送路3の搬送面30における搬送方向(Y方向)と直交する方向(X方向)の両側に設けられる壁部32の直下に各々位置する一対の第1部分53aと、一対の第1部分53aを接続するとともに、幅方向に延びる一対の第2部分53bとを含む。壁部32の直下に第1部分53aの一部が位置してもよく、第1部分53aの全部が位置していてもよい。
【0032】
図3に示すように、シールドリング53は、基板51を構成する複数層のうち1層だけに配置されていてもよいが、好ましくは、2層以上に配置される。たとえば、基板51が4層の構成である場合は、4層全てに設けられてもよく、2層または3層に設けられていてもよい。また、センサコイル52は、基板51を構成する複数層のうち2層以上に配置される。図3では、基板51の各層をまとめて表している。また、図3では、センサコイル52とシールドリング53とが、3つの層に設けられていることを示している。なお、シールドリング53およびセンサコイル52は、基板51の各層で閉回路が形成されていてもよく、全ての層が接続されている回路を形成されていてもよい。
【0033】
図4に示すように、追加コイル54は、外周コイル52aとシールドリング53との間に配置される。追加コイル54は、外周コイル52aを取り囲むように配置される。追加コイル54は、外周コイル52aよりもインダクタンスが小さい。
【0034】
図3に示すように、追加コイル54は、センサコイル52と異なり、基板51を構成する複数層のうち1層に設けられる。追加コイル54は、センサコイル52よりも巻き数が小さい。これにより、外周コイル52aよりもインダクタンスを小さくすることができる。追加コイル54は、巻き数が少ないことによって、外周コイル52aを形成するコイルよりもコイル間の隙間が大きくなるため、外周コイル52aの磁束が隙間を通過することができる。
【0035】
外周コイル52aと、追加コイル54との合成インダクタンスが、内周コイル52bのインダクタンスより大きくなるように構成されている。また、外周コイル52aと追加コイル54とは同じ向きに電流が流れるように構成されている。これにより、外周コイル52aのインダクタンスと、追加コイル54のインダクタンスとを一つのインダクタンスとしてみなすことができるため、内周コイル52bのインダクタンスよりも大きくすることができる。
【0036】
図5に示すように、追加コイル54は、搬送路3の搬送面30における搬送方向(Y方向)と直交する方向(X方向)の両側に設けられる壁部32からの距離bが検知対象の硬貨110の最小厚みg以下になるように基板51に配置されている。
【0037】
図3に示すように、搬送路3の下方には、フェライト板6が設けられている。フェライト板6は、センサコイル52から発生した磁束が搬送路3の下方に漏れることを抑制するために設けられる。フェライト板6およびシールドリング53によりセンサコイル52の磁束が搬送路3の底部33および壁部32から漏れることが抑制されるため、検知範囲を搬送面30上だけに限定することができる。
【0038】
図2に示すように硬貨処理装置100は、さらに制御部7を備える。制御部7は、CPUおよびメモリを含み、硬貨処理装置100の各部を制御するように構成されている。
【0039】
また、制御部7は、収納部4の硬貨110の収納枚数を管理する制御を行うように構成されている。
【0040】
制御部7は、投入口1から投入された硬貨110を検銭し、一時保留部8に搬送する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部7は、投入口1から投入された硬貨110による、硬貨検知用アンテナ5のセンサコイル52によって発生した磁界における磁束の変化(交流電流の電圧の変化)を検知することにより、入金用搬送路3aのベルト機構31を稼働させて収納部4に搬送する。また、制御部7は、収納部4に硬貨110を搬送している途中で検銭部10により検銭する制御を行う。ここで、検銭した硬貨110が正貨であれば、一時保留部8に搬送する。一方、検銭した媒体が正貨でなければ、釣銭口2aに排出する。つまり、制御部7は、入金切換ゲート11の搬送先経路を切り換えることにより、硬貨110を一時保留部8または釣銭口2aに送り出す制御を行う。
【0041】
制御部7は、一時保留部8に保留されている硬貨110を収納部4に収納する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部7は、一時保留部8に保留されている硬貨110を、振分部9に搬送し、硬貨110を金種ごとに収納部4に送り出す制御を行う。
【0042】
また、制御部7は、収納部4から硬貨110を出金用搬送路3bに送り出す制御を行うとともに、収納部4から繰り出された硬貨110を釣銭口2aに排出する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部7は、出金切換ゲート82により、収納部4から繰り出された硬貨110の搬送先経路を釣銭口2aに切り換えるとともに、釣銭用の硬貨110を収納部4から繰り出す制御を行う。
【0043】
また、制御部7は、返却用の硬貨110を一時保留部8から送り出して、返却口2bに排出する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部7は、入金切換ゲート81により、一時保留部8から送り出された硬貨110の搬送先経路を返却口2bに切り換えるとともに、返却用の硬貨110を一時保留部8から送り出す制御を行う。
【0044】
また、制御部7は、投入口1から入金された硬貨110を、検銭部10において正貨でないと判断した場合には、正貨でないと判断した媒体を釣銭口2aに排出する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部7は、入金切換ゲート81により、投入口1から投入された硬貨110の搬送先経路を出金口2に切り換えるとともに、正貨でないと判断された硬貨110を、入金用搬送路3aにより搬送して釣銭口2aに直接排出する制御を行う。
【0045】
また、制御部7は、釣銭口2aまたは返却口2bに排出された硬貨110が、排出トレイ21または硬貨受け部22に残留していないかを検知する。具体的には、制御部7が、排出トレイ21または硬貨受け部22に硬貨110が排出されたことにより硬貨検知用アンテナ5のセンサコイル52から発生する磁界における磁束の変化(交流電流の電圧の変化)を検知した後に、所定時間経過した場合に、硬貨110が残留していることを通知するように構成されている。通知の方法は、音、警告ランプの表示、警告画面の表示など通常用いられる方法で行われる。
【0046】
図7に示すように、シールドリング53を設けない比較例では、外周コイル52aから発生した磁束が基板51の外周縁51aを超えて発生している。一方で、図6に示すように、シールドリング53を設けた実施形態では、外周コイル52aから発生した磁束は、シールドリング53を大きく超えない。これにより、誤検知を抑制することができる。また、シールドリング53により、外周コイル52aのシールドリング53側の磁束密度が大きくなる。さらに、フェライト板6が下方に設けられているため、磁束が下方に漏れないとともに、上に向かう磁束を大きくすることができる。また、追加コイル54の巻き数が小さいため、外周コイル52aから発生した磁束は、追加コイル54を形成するコイルの隙間を貫通する。また、シールドリング53を設けることにより、壁部32の内側の磁束が比較例に比べて実施形態では、密になっている(磁束間の隙間が小さい)。これによって、壁部32側に硬貨110が位置する場合、または、壁部32に硬貨110が接触し、立ち上がった場合であっても、硬貨110が磁束を遮ることができるため、硬貨110を検知することができる。
【0047】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0048】
本実施形態では、上記のように、硬貨検知用アンテナ5は、基板51に形成されたセンサコイル52とは別の配線パターンにより構成され、センサコイル52の外周を取り囲むように配置されるとともに、センサコイル52により生じる磁束が基板51の外周縁51aよりも外側に漏れることを抑制する環状のシールドリング53を備える。これにより、 基板51の外周縁51a近傍まで磁界を発生させた場合にも、シールドリング53により、センサコイル52の磁束が基板51の外周縁51aよりも大きく外側に漏れることが抑制されるため、基板51の外周縁51aよりも外側に金属が存在した場合に、センサコイル52の磁束が遮られることを抑制することができる。これにより、外周側の磁界を増やしても磁界の漏れを減らすことで、センサコイルの誤検知を抑制することができる。また、基板51の外周縁51a近傍まで磁界を発生させる場合、硬貨110が壁部32に接触して底部33に対して傾斜した状態になった場合も検知することができるので、検知精度を向上することができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のようにセンサコイル52は、内周コイル52bと、内周コイル52bを取り囲む外周コイル52aとを含み、シールドリング53は、外周コイル52aを取り囲むとともに、外周コイル52aにより生じる磁束が基板51の外周縁51aよりも外側に漏れることを抑制するように構成されており、外周コイル52aのインダクタンスは、内周コイル52bのインダクタンスより大きくなるように構成されている。これにより、外周コイル52aのインダクタンスを内周コイル52bのインダクタンスよりも大きくするために、たとえば、外周コイル52aの巻き数を増やすことにより、外周コイル52aを基板51の外周縁近傍まで配置することができる。これにより、基板51の外周縁51a側に位置する硬貨110を検知することができるため、検知精度を向上させることができる。また、シールドリング53が外周コイル52aを取り囲むことにより、外周コイル52aの巻き数を増やして検知範囲を基板51の外周縁51aまで広げた場合でも、基板51の外周縁51aから外側に磁束が漏れることを抑制することができる。これらの結果、検知精度を高めつつ、誤検知を抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、センサコイル52は、外周コイル52aとシールドリング53との間に配置され、外周コイル52aを取り囲むとともに、外周コイル52aよりもインダクタンスが小さい追加コイル54を含み、外周コイル52aと、追加コイル54との合成インダクタンスが、内周コイル52bのインダクタンスより大きくなるように構成されており、外周コイル52aと追加コイル54とは同じ向きに電流が流れるように構成されている。これにより、追加コイル54を配置することにより、硬貨検知用アンテナ5の検知範囲を基板51の外周縁51aまで広げることができる。また、追加コイル54のインダクタンスを外周コイル52aのインダクタンスよりも小さくするために、たとえば、追加コイル54の巻き数を外周コイル52aよりも小さくすると、追加コイル54を形成するコイル間の隙間を大きくすることができる。これによって、追加コイル54を形成するコイル間の隙間を外周コイル52aの磁束が通過することができるため、追加コイル54によって、外周コイル52aの磁束が遮られることを抑制することができる。また、外周コイル52aと追加コイル54とは同じ向きに電流が流れるように構成されていることにより、外周コイル52aと追加コイル54とが隣り合う箇所の外周コイル52aから発生する磁束の向きと、追加コイル54から発生する磁束の向きとが同じとなり、互いに打ち消し合うことなく磁束を発生させることができる。これにより、たとえば、搬送路3の壁部32に接触し、搬送面30に対して傾斜した硬貨110を追加コイル54の磁束によって検知することができるとともに、搬送路3の中央に位置する搬送面30に対して平行な硬貨110を外周コイル52aの磁束によって検知することができる。この結果、センサコイル52の検知精度をより向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、基板51は、投入された硬貨110を収納部4に搬送する硬貨処理装置100の搬送路3と、収納部4から硬貨110が排出される硬貨処理装置100の排出トレイ21とのうち少なくとも一方に設けられており、追加コイル54は、搬送路3の搬送面30における搬送方向と直交する方向の両側に設けられる壁部32、または排出トレイ21の表面における硬貨110の排出方向と直交する方向に設けられる壁部からの距離が検知対象の硬貨110の最小厚み以下になるように基板51に配置されている。これにより、壁部32から追加コイル54の磁束の最外周部までの距離を硬貨110の最小厚み以下の長さにすることができる。これにより、たとえば、硬貨110が壁部32に接触して、直立した状態になった場合でも追加コイル54の磁束を遮ることができる。この結果、硬貨110の姿勢にかかわらず、硬貨110を検知することができる。その結果、硬貨検知用アンテナ5の検知精度をさらに向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態では、基板51は、投入された硬貨110を収納部4に搬送する硬貨処理装置100の搬送路3と、収納部4から硬貨110が排出される硬貨処理装置100の排出トレイ21とのうち少なくとも一方の下方側に配置されており、シールドリング53は、搬送路3の搬送面30における搬送方向と直交する方向の両側に設けられる壁部32、または排出トレイ21の表面における硬貨110の排出方向と直交する方向に設けられる壁部の直下に各々位置する一対の第1部分53aと、一対の第1部分53aを接続するとともに幅方向に延びる一対の第2部分53bとを含む。これにより、第1部分53aが壁部32の直下に配置されていることにより、第1部分53aが壁部32よりも内側(搬送路3側)に位置している場合と比べて、外周コイル52aまたは追加コイル54を壁部32の近傍まで容易に配置することができる。また、シールドリング53が第2部分53bを含むことにより、シールドリング53が外周コイル52aおよび追加コイル54を隙間なく取り囲むことができる。この結果、検知範囲を広げつつ、基板51の外周縁51aよりも外側に磁束が漏れることを確実に抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、基板51は、2層以上の複数層から構成される多層構造を有しており、シールドリング53は、基板51を構成する複数層のうち2層以上に配置されている。これにより、外周コイル52aが基板51を構成する複数層のうち2層以上に配置された場合に、シールドリング53も同じように基板51を構成する複数層のうち2層以上に配置されるため、確実に基板51の外周縁51aよりも外側に外周コイル52aの磁束が漏れないようにすることができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、基板51は、2層以上の複数層から構成される多層構造を有しており、追加コイル54は、基板51を構成する複数層のうち1層に配置されている。これにより、たとえば、外周コイル52aが基板51を構成する複数層のうち2層以上に配置された場合に、追加コイル54の巻き数を小さくすることができるため、追加コイル54のインダクタンスを容易に外周コイル52aのインダクタンスよりも小さくすることができる。また、追加コイル54の巻き数が小さいことにより、基板51の外周縁51a近傍に発生する磁束が過度に大きくなることを抑制することができる。
【0055】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0056】
たとえば、上記実施形態では、本発明を、釣銭機としての硬貨処理装置に適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、釣銭機以外の硬貨処理装置(たとえば、自動販売機)に適用されてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、硬貨検知用アンテナを入金用搬送路に設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、硬貨検知用アンテナを出金用搬送路に設けてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、基板が複数層から構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、基板は、1層から構成される単層構造でもよい。この場合、コイルの断面積またはコイルの延びる方向に直交する方向のコイルの長さを変えることによりインダクタンスが調整される。
【0059】
また、上記実施形態では、フェライト板を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、フェライト板の代わりに、鉄、ニッケルなどの金属板を設けてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、追加コイルが設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、追加コイルを設けなくてもよい。この場合、外周コイルの外周端の壁部からの距離が検知対象の硬貨の最小厚み以下になるように外周コイルを巻いてもよい。
【符号の説明】
【0061】
3 搬送路
4 収納部
5 硬貨検知用アンテナ
21 排出トレイ
30 搬送面
32 壁部
51 基板
51a 外周縁
52 センサコイル
52a 外周コイル
52b 内周コイル
53 シールドリング
53a 第1部分
53b 第2部分
54 追加コイル
100 硬貨処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7