(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131142
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】測位端末、測位方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 19/23 20100101AFI20240920BHJP
【FI】
G01S19/23
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041231
(22)【出願日】2023-03-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-06
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】小村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 敏之
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J062BB03
5J062CC07
5J062DD03
5J062DD24
5J062GG03
(57)【要約】
【課題】複数の受信部を用いて測位精度を高めることを可能とする測位端末等を提供する。
【解決手段】測位端末は、それぞれがGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を受信し、受信した電波に基づいて所定の形式の信号を出力する複数の受信部と、複数の受信部から出力された信号に基づいて、複数の受信部のうちの一つを選択する選択部と、選択された受信部から出力された信号に基づいて位置情報を生成する生成部と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を受信し、受信した電波に基づいて所定の形式の信号を出力する複数の受信部と、
前記複数の受信部から出力された信号に基づいて、前記複数の受信部のうちの一つを選択する選択部と、
前記選択された受信部から出力された信号に基づいて位置情報を生成する生成部と、
を有することを特徴とする測位端末。
【請求項2】
前記複数の受信部は、受信した電波に基づいてNMEA(National Marine Electronics Association)0183形式に従う信号をそれぞれ出力し、
前記選択部は、前記複数の受信部のそれぞれから出力された信号に基づいて、前記複数の受信部のうちの一つを選択する、
請求項1に記載の測位端末。
【請求項3】
前記選択部は、前記複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示すGNSS衛星の方位角に基づいて、前記複数の受信部のうちの一つを選択する、
請求項2に記載の測位端末。
【請求項4】
前記選択部は、
前記複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示す複数のGNSS衛星の方位角を取得し、
前記複数の受信部のそれぞれについて、前記方位角が取得された複数のGNSS衛星のうち、方位角方向に隣接する2つのGNSS衛星の組合せのそれぞれについて方位角の差分を算出し、
前記複数の受信部のそれぞれについて、前記算出された差分の最大値を特定し、
前記複数の受信部のうち、前記差分の最大値が最も小さい受信部を選択する、
請求項3に記載の測位端末。
【請求項5】
前記選択部は、前記複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示す複数のGNSS衛星のうち、仰角および受信状態が所定の条件を満たすGNSS衛星を抽出し、前記抽出されたGNSS衛星の方位角のみを取得する、
請求項4に記載の測位端末。
【請求項6】
前記選択部は、前記複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示す水平精度低下率に基づいて、前記複数の受信部のうちの一つを選択する、
請求項2に記載の測位端末。
【請求項7】
前記複数の受信部のそれぞれは、静止衛星からの電波を受信し、
前記選択部は、前記複数の受信部が受信した静止衛星からの電波の強度に基づいて、前記複数の受信部のうちの一つを選択する、
請求項1に記載の測位端末。
【請求項8】
それぞれがGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を受信する複数の受信部を有する測位端末が実行する測位方法であって、
前記複数の受信部が受信した電波に基づいて、前記複数の受信部のうちの一つを選択し、
前記選択された受信部が受信した電波に基づいて位置情報を生成する、
ことを含むことを特徴とする測位方法。
【請求項9】
それぞれがGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を受信する複数の受信部を有するコンピュータのプログラムであって、
前記複数の受信部が受信した電波に基づいて、前記複数の受信部のうちの一つを選択し、
前記選択された受信部が受信した電波に基づいて位置情報を生成する、
ことを前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位端末、測位方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を受信して位置情報を生成する測位端末において、測位精度は電波が受信された衛星の数、電波の受信状態等に応じて変化することが知られている。したがって、より多くの衛星の電波を受信し、または電波の受信状態を改善する技術が開発されている。特許文献1には、自動車の前後に配置され、GNSS衛星からの電波を受信する一組のアンテナと、一組のアンテナのうち出力の電圧が高いものを現在位置の算出のためのアンテナとして選択する選択回路とを備える航法装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測位端末において、測位精度をさらに高めることが求められている。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、複数の受信部を用いて測位精度を高めることを可能とする測位端末、測位方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る測位端末は、それぞれがGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を受信し、受信した電波に基づいて所定の形式の信号を出力する複数の受信部と、複数の受信部から出力された信号に基づいて、複数の受信部のうちの一つを選択する選択部と、選択された受信部から出力された信号に基づいて位置情報を生成する生成部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、複数の受信部は、受信した電波に基づいてNMEA(National Marine Electronics Association)0183形式に従う信号をそれぞれ出力し、選択部は、複数の受信部のそれぞれから出力された信号に基づいて、複数の受信部のうちの一つを選択することが好ましい。
【0008】
また、選択部は、複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示すGNSS衛星の方位角に基づいて、複数の受信部のうちの一つを選択することが好ましい。
【0009】
また、選択部は、複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示す複数のGNSS衛星の方位角を取得し、複数の受信部のそれぞれについて、方位角が取得された複数のGNSS衛星のうち、方位角方向に隣接する2つのGNSS衛星の組合せのそれぞれについて方位角の差分を算出し、複数の受信部のそれぞれについて、算出された差分の最大値を特定し、複数の受信部のうち、差分の最大値が最も小さい受信部を選択することが好ましい。
【0010】
また、選択部は、複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示す複数のGNSS衛星のうち、仰角および受信状態が所定の条件を満たすGNSS衛星を抽出し、抽出されたGNSS衛星の方位角のみを取得することが好ましい。
【0011】
また、選択部は、複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示す水平精度低下率に基づいて、複数の受信部のうちの一つを選択することが好ましい。
【0012】
また、複数の受信部のそれぞれは、静止衛星からの電波を受信し、選択部は、複数の受信部が受信した静止衛星からの電波の強度に基づいて、複数の受信部のうちの一つを選択することが好ましい。
【0013】
本発明の実施形態に係る測位方法は、それぞれがGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を受信する複数の受信部を有する測位端末が実行する測位方法であって、複数の受信部が受信した電波に基づいて、複数の受信部のうちの一つを選択し、選択された受信部が受信した電波に基づいて位置情報を生成する、ことを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の実施形態に係るプログラムは、それぞれがGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を受信する複数の受信部を有するコンピュータのプログラムであって、複数の受信部が受信した電波に基づいて、複数の受信部のうちの一つを選択し、選択された受信部が受信した電波に基づいて位置情報を生成する、ことをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る測位端末、測位方法およびプログラムは、複数の受信部を用いて測位精度を高めることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】選択処理について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る測位システム1の概略構成を示す図である。測位システム1は、測位端末2および飛翔体3(ドローン等)を有する。測位端末2は、GPS(Global Positioning System)衛星、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)衛星等のGNSS衛星からの電波を受信して位置情報を生成する。例えば、測位端末2は、それぞれがGNSS衛星からの電波を受信して所定の形式の信号を出力する複数の受信部を有し、出力された信号に基づいて選択された一つの受信部が受信した電波に基づいて位置情報を生成する。また、測位端末2は、ドローンである飛翔体3に搭載される。飛翔体3は、測位端末2が生成した位置情報を取得する。飛翔体3は、取得した位置情報と、飛翔体3に含まれる各種のセンサによって生成された情報に基づいて、所定の経路を飛行する。
【0019】
図2は、測位端末2の機能ブロック図である。測位端末2は、記憶部21、出力インタフェース22、第1受信部23、第2受信部24および処理部25を有する。第1受信部23および第2受信部24は、複数の受信部の一例である。
【0020】
記憶部21は、データおよびプログラムを記憶するための構成であり、例えば半導体メモリを備える。記憶部21は、処理部25による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能かつ非一時的な可搬型記憶媒体から記憶部21にインストールされる。
【0021】
出力インタフェース22は、データを測位端末2の外部に出力するためのインタフェース装置である。出力インタフェース22は、例えばUSB(Universal Serial Bus)、RS-232(Recommended Standard 232)等のシリアルインタフェース装置である。出力インタフェース22は、BLE(Bluetooth Low Energy)、無線LAN等の通信インタフェース回路でもよい。出力インタフェース22は、処理部25から供給されたデータを外部に出力する。
【0022】
第1受信部23および第2受信部24は、それぞれGNSS衛星からの電波を受信するための構成であり、アンテナおよび受信回路を備える。アンテナは、GNSS衛星および静止衛星からの電波の周波数帯に対応し、例えばL1帯、L2帯、L5帯およびL6帯に対応する。アンテナは、E1帯等の他の周波数帯に対応してもよい。受信回路は、GNSS衛星および静止衛星からの電波を復調して所定の形式の信号を出力する。所定の形式の信号は、例えばNMEA(National Marine Electronics Association)0183形式である。
【0023】
受信回路は、GNSS衛星からの電波を復調し、NMEA0183形式の信号を生成して処理部15に出力する。受信回路は、公知のアルゴリズムを用いてNMEA0183形式の信号を生成してよい。NMEA0183形式の信号は、GSVセンテンスまたはGGAセンテンスを含む。また、受信回路は、静止衛星からの電波を復調して補正情報および電波強度情報を生成する。静止衛星からの電波は、SBAS(Satellite-Based Augmentation System)信号であってよい。この場合、補正情報は、GNSS衛星からの信号の誤差の情報、GNSS衛星の状態の情報等を含む。受信回路は、静止衛星の電波強度情報を処理部15に出力する。
【0024】
処理部25は、測位端末2の動作を統括的に制御するデバイスであり、一つまたは複数のプロセッサおよびその周辺回路を備える。処理部25は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備える。処理部25は、DSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えてもよい。処理部25は、記憶部21に記憶されているプログラムに基づいて各種の処理を実行する。
【0025】
処理部25は、取得部251、選択部252、生成部253および出力部254を機能ブロックとして備える。これらの各部は、処理部25が実行するプログラムによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、専用の処理回路として測位端末2に実装されてもよい。
【0026】
図3は、測位端末2によって実行される測位処理の流れの例を示すフロー図である。測位処理は、所定の位置情報の生成周期ごとに実行される。測位処理は、記憶部21に記憶されたプログラムに基づいて、処理部25が測位端末の他の構成と協働することにより実現される。
【0027】
最初に、取得部251は、第1受信部23および第2受信部24のそれぞれから出力された信号を取得する(ステップS11)。第1受信部23および第2受信部24から出力された信号は、GSVセンテンスおよびGGAセンテンスを含むNMEA0183形式の信号である。
【0028】
次に、選択部252は、第1受信部23および第2受信部24から出力された信号に基づいて、第1受信部23および第2受信部24のうちのいずれか一方を選択する選択処理を実行する(ステップS12)。選択処理の詳細は後述する。
【0029】
次に、生成部253は、選択された受信部から出力された信号に基づいて位置情報を生成する(ステップS13)。生成部253は、選択された受信部から出力された信号に含まれるGSVセンテンスから、緯度、経度、高度等の情報を位置情報として抽出することにより、位置情報を生成する。生成部253は、抽出した情報に表示形式の変換(例えば、度分秒形式への変換)または座標変換(例えば、平面直角座標系への変換)を施してもよい。
【0030】
次に、出力部254は、出力インタフェース22を介して位置情報を出力する(ステップS14)。以上で、測位処理が終了する。
【0031】
図4は選択処理の流れの例を示すフロー図であり、
図5は選択処理について説明するための模式図である。選択処理は、測位処理のステップS12において実行される。
【0032】
最初に、選択部252は、第1受信部23および第2受信部24のうちから、処理対象の受信部を選択する(ステップS21)。
【0033】
次に、選択部252は、処理対象の受信部が電波を受信した衛星のうちから、所定の条件を満たす衛星を抽出する(ステップS22)。所定の条件は、衛星の仰角および電波のCN比に関する条件である。この場合、選択部252は、処理対象の受信部から出力された信号に含まれるGSVセンテンスの仰角およびCN比の値を取得し、所定の条件を満たす衛星を抽出する。所定の条件は、例えば、衛星の仰角が所定角度以上であり、かつCN比が所定値以上であることである。所定角度は例えば30度であり、CN比は例えば30dBである。CN比は、電波の受信状態の一例である。
【0034】
図5は、受信部が電波を受信した衛星の方位角および仰角を模式的に示している。
図5において、衛星の方位角は、四角形で示される衛星が第1象限~第4象限のいずれに配置されているかによって示されている。方位角は0度以上360度未満であり、北方向が0度となるように設定される。また、衛星の仰角は、原点からの距離によって示されている。仰角は0度以上90度以下である。
図5において、衛星が原点に近いほど衛星の仰角は大きい。
【0035】
図5に示す例では、受信部は9つの衛星ST1-9からの電波を受信している。9つの衛星ST1-9のうち、実線円の外側にある衛星ST2、6および7は、仰角が30度未満の衛星である。また、黒塗りの四角形で示されるST4および7は、電波のCN比が30dB未満の衛星である。したがって、残りの衛星、すなわち衛星ST1、3、5、8および9が抽出される。
【0036】
次に、選択部252は、抽出された衛星の方位角を取得する(ステップS23)。選択部252は、処理対象の受信部から出力された信号に含まれるGSVセンテンスの方位角の値を取得する。
【0037】
次に、選択部252は、抽出された衛星のうち、方位角方向に隣接する2つの衛星の組合せのそれぞれについて方位角の差分を算出する(ステップS24)。
図5に示す例では、選択部252は、衛星ST1および3の方位角の差分D13、衛星ST3および5の方位角の差分D35、衛星ST5および8の方位角の差分D58、衛星ST8および9の方位角の差分D89、衛星ST9および1の方位角の差分D89を算出する。
【0038】
次に、選択部252は、方位角の差分の最大値を特定する(ステップS25)。
図5に示す例では、差分D58が最大であるため、選択部252は差分D58を方位角の差分の最大値として特定する。
【0039】
次に、選択部252は、全ての受信部が処理対象の受信部として選択されたか否かを判定する(ステップS26)。
【0040】
全ての受信部が処理対象の受信部として選択されていない場合(ステップS26-No)、選択処理はステップS21に戻り、選択部252は、まだ処理対象の受信部として選択されていない受信部のうちから処理対象の受信部を選択する。
【0041】
全ての受信部が処理対象の受信部として選択された場合(ステップS26-Yes)、選択部252は、第1受信部23および第2受信部24のうち、方位角の差分の最大値が最も小さい受信部を位置情報の生成に用いられる受信部として選択する。以上で、選択処理が終了する。
【0042】
以上説明したように、測位端末2は、それぞれがGNSS衛星からの電波に基づいて所定の形式の信号を出力する複数の受信部を有し、複数の受信部から出力された信号に基づいて、複数の受信部のうちの一つを位置情報の生成に用いられる受信部として選択する。測位端末2は、複数の受信部が受信した電波に基づいて適切な受信部を選択することにより、複数の受信部を用いて測位精度を高めることを可能とする。
【0043】
また、測位端末2は、複数の受信部から出力されたNMEA0183形式の信号に基づいて複数の受信部のうちの一つを選択する。測位端末2は、GNSS衛星を用いた位置情報の取得に広く用いられているNMEA0183形式の信号に基づいて受信部を選択することにより、簡易な処理で測位精度を高めることを可能とする。
【0044】
また、測位端末2は、複数のGNSS衛星のうち、方位角方向に隣接する2つのGNSS衛星の方位角の差分の最大値が最も小さい受信部を選択する。測位精度を高めるために、GNSS衛星は、地上の任意点から見たときに方位角方向に均等に分散するような軌道を描いている。したがって、方位角の差分の最大値が大きい場合とは、特定の方位角方向に障害物がありGNSS衛星からの電波が適切に受信されていない場合である可能性が高い。測位端末2は、方位角の差分の最大値が最も小さい受信部を選択することにより、GNSS衛星からの電波が適切に受信されている可能性が高い受信部を用いて位置情報を生成し、測位精度を高めることを可能とする。
【0045】
測位端末2には、次に述べるような変形例が適用されてもよい。
【0046】
上述した説明では、測位端末2が第1受信部23および第2受信部24の2つの受信部を有するものとしたが、このような例に限られない。測位端末2は、3つ以上の受信部を有してもよい。
【0047】
上述した説明では、測位端末2は飛翔体3に接続されるものとしたが、このような例に限られない。測位端末2は、車両または農業、漁業、建設業等に用いられる作業機械に接続されてもよい。測位端末2は、高精度な位置情報を要する任意のアプリケーションに用いられてもよい。
【0048】
上述した説明では、測位端末2はNMEA0183形式の信号に基づいて位置情報を生成して出力するものとしたが、このような例に限られない。測位端末2は、さらに基準局から補正情報を取得し、生成された位置情報を補正情報に基づいて補正し、補正された位置情報を出力してもよい。位置情報の補正には、公知のRTK(Real-Time Kinematic)技術が用いられてよい。
【0049】
上述した説明では、選択処理において、測位端末2は衛星の方位角に基づいて複数の受信部のうちの一つを選択するものとしたが、このような例に限られない。
【0050】
図6は、選択処理の流れの他の例を示すフロー図である。
図6に示す選択処理において、選択部252は、複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示す水平精度低下率に基づいて、複数の受信部のうちの一つを選択する。
【0051】
最初に、選択部252は、複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示す水平精度低下率を取得する(ステップS31)。選択部252は、NMEA0183形式の信号に含まれるGGAセンテンスの水平精度低下率の値を取得する。
【0052】
次に、選択部252は、複数の受信部のうち、水平精度低下率が最も小さい受信部を位置情報の生成に用いられる受信部として選択する(ステップS32)。以上で、選択処理が終了する。
【0053】
このように、測位端末2は、水平精度低下率に基づいて受信部を選択する。測位端末2は、位置情報の生成において重要な水平精度の低下率が最も小さい受信部を選択することにより、測位精度を高めることを可能とする。
【0054】
図7は、選択処理の流れのさらなる他の例を示すフロー図である。
図7に示す選択処理において、選択部252は、複数の受信部が受信した静止衛星からの電波の強度に基づいて、複数の受信部のうちの一つを選択する。
【0055】
最初に、選択部252は、複数の受信部のそれぞれが受信した静止衛星からの電波の強度を取得する(ステップS41)。静止衛星は、例えばSBAS信号を送信する静止衛星である。静止衛星は、みちびき3号機であってよい。選択部252は、複数の受信部が静止衛星からの電波を復調することにより生成された電波強度の情報を取得する。
【0056】
次に、選択部252は、複数の受信部のうち、電波強度が最も大きい受信部を位置情報の生成に用いられる受信部として選択する(ステップS42)。以上で、選択処理が終了する。
【0057】
このように、測位端末2は、静止衛星からの電波の強度に基づいて受信部を選択する。測位端末2は、静止衛星からの電波の強度が大きく、電波の受信状態が良好である可能性が高い受信部を選択することにより、測位精度を高めることを可能とする。
【0058】
また、本発明は、例えばカメラ及び本発明の測位端末を搭載した飛翔体を用いてインフラ設備等を撮影し点検を行う場合、飛翔体の現在地の測位精度を向上させることができるので、点検対象物をあらゆる方向から網羅的に撮影するにあたり、飛翔体が位置すべき撮影ポイントにいるか否かを精度よく判定することができる。従って、インフラ設備の点検をより効率的に行うことにつながるため、SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0059】
当業者は、本発明の範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
2 測位端末
23 第1受信部
24 第2受信部
252 選択部
253 生成部
【手続補正書】
【提出日】2024-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を受信し、受信した前記電波に基づいて所定の形式の信号を出力する複数の受信部と、
前記複数の受信部から出力された信号に基づいて、前記複数の受信部のうちの一つを選択する選択部と、
前記選択された受信部から出力された信号に基づいて位置情報を生成する生成部と、
を有し、
前記選択部は、前記複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示すGNSS衛星の方位角に基づいて、前記複数の受信部のうちの一つを選択する、
ことを特徴とする測位端末。
【請求項2】
前記選択部は、
前記複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示す複数のGNSS衛星の方位角を取得し、
前記複数の受信部のそれぞれについて、前記方位角が取得された複数のGNSS衛星のうち、方位角方向に隣接する2つのGNSS衛星の組合せのそれぞれについて方位角の差分を算出し、
前記複数の受信部のそれぞれについて、前記算出された差分の最大値を特定し、
前記複数の受信部のうち、前記差分の最大値が最も小さい受信部を選択する、
請求項1に記載の測位端末。
【請求項3】
前記選択部は、前記複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示す複数のGNSS衛星のうち、仰角および受信状態が所定の条件を満たすGNSS衛星を抽出し、前記抽出されたGNSS衛星の方位角のみを取得する、
請求項2に記載の測位端末。
【請求項4】
それぞれがGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を受信し、受信した前記電波に基づいて所定の形式の信号を出力する複数の受信部と、
前記複数の受信部から出力された信号に基づいて、前記複数の受信部のうちの一つを選択する選択部と、
前記選択された受信部から出力された信号に基づいて位置情報を生成する生成部と、
を有し、
前記選択部は、前記複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示す水平精度低下率に基づいて、前記複数の受信部のうちの一つを選択する、
ことを特徴とする測位端末。
【請求項5】
前記複数の受信部は、受信した前記電波に基づいてNMEA(National Marine Electronics Association)0183形式に従う信号をそれぞれ出力する、
請求項1-4のいずれか一項に記載の測位端末。
【請求項6】
それぞれがGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を受信する複数の受信部を有する測位端末が実行する測位方法であって、
前記複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示すGNSS衛星の方位角に基づいて、前記複数の受信部のうちの一つを選択し、
前記選択された受信部が受信した前記電波に基づいて位置情報を生成する、
ことを含むことを特徴とする測位方法。
【請求項7】
それぞれがGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を受信する複数の受信部を有する測位端末が実行する測位方法であって、
前記複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示す水平精度低下率に基づいて、前記複数の受信部のうちの一つを選択し、
前記選択された受信部が受信した前記電波に基づいて位置情報を生成する、
ことを含むことを特徴とする測位方法。
【請求項8】
それぞれがGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を受信する複数の受信部を有するコンピュータのプログラムであって、
前記複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示すGNSS衛星の方位角に基づいて、前記複数の受信部のうちの一つを選択し、
前記選択された受信部が受信した前記電波に基づいて位置情報を生成する、
ことを前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
それぞれがGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を受信する複数の受信部を有するコンピュータのプログラムであって、
前記複数の受信部のそれぞれから出力された信号が示す水平精度低下率に基づいて、前記複数の受信部のうちの一つを選択し、
前記選択された受信部が受信した前記電波に基づいて位置情報を生成する、
ことを前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。