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特開2024-131151半導体装置の製造方法および製造装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131151
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240920BHJP
   G03F 7/38 20060101ALI20240920BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20240920BHJP
   B05C 11/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L21/30 566
H01L21/30 567
H01L21/30 564D
G03F7/38 501
B05C9/14
B05C11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041242
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】石浦 正巳
【テーマコード(参考)】
2H196
4F042
5F146
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196DA01
4F042AA07
4F042AB00
4F042BA19
4F042DB04
4F042DB17
4F042DF09
4F042DF29
4F042DF34
4F042EB05
4F042EB09
5F146JA04
5F146KA04
5F146KA07
(57)【要約】
【課題】レジストの歪を抑制することが可能な半導体装置の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】ウェーハの表面にレジストを塗布する工程と、前記レジストを塗布する工程の後、前記ウェーハを第1加熱部に搬送する工程と、前記第1加熱部を用いて、前記ウェーハを前記レジストのガラス転移温度よりも高い温度である第1温度で加熱する工程と、前記ウェーハの裏面に接触する搬送部を用いて、前記ウェーハを前記第1加熱部から接触式のホットプレートを含む第2加熱部に搬送する工程と、前記第2加熱部を用いて、前記ウェーハを前記第1温度よりも低く、かつ前記ガラス転移温度以上の温度である第2温度で加熱する工程と、前記ウェーハを、前記ガラス転移温度よりも低い第3温度に降温する工程と、を有し、前記第3温度に降温する工程は、前記ウェーハを前記第2加熱部の表面から離間した状態で降温する工程である半導体装置の製造方法。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの表面にレジストを塗布する工程と、
前記レジストを塗布する工程の後、前記ウェーハを第1加熱部に搬送する工程と、
前記第1加熱部を用いて、前記ウェーハを前記レジストのガラス転移温度よりも高い温度である第1温度で加熱する工程と、
前記ウェーハの裏面に接触する搬送部を用いて、前記ウェーハを前記第1加熱部から接触式のホットプレートを含む第2加熱部に搬送する工程と、
前記第2加熱部を用いて、前記ウェーハを前記第1温度よりも低く、かつ前記ガラス転移温度以上の温度である第2温度で加熱する工程と、
前記ウェーハを、前記ガラス転移温度よりも低い第3温度に降温する工程と、を有し、
前記第3温度に降温する工程は、前記ウェーハを前記第2加熱部の表面から離間した状態で降温する工程である半導体装置の製造方法。
【請求項2】
レジストが塗布されたウェーハを前記レジストのガラス転移温度よりも高い温度である第1温度で加熱する第1加熱部と、
前記ウェーハを前記第1温度よりも低く、かつ前記ガラス転移温度よりも高い温度である第2温度で加熱する接触式のホットプレートを備えた第2加熱部と、
前記第2加熱部の表面から前記ウェーハを持ち上げるピンと、
前記第1加熱部と前記第2加熱部との間で前記ウェーハを移送させる搬送部と、
前記ウェーハを前記第1温度よりも低い温度状態で前記搬送部により、前記第2加熱部へ移送させる制御および前記ピンによる前記ウェーハの持ち上げにより、前記第2温度よりも温度低下した前記ウェーハを前記搬送部により取り出す制御を行う制御部と、を有する半導体装置の製造装置。
【請求項3】
前記第1加熱部は、接触式のホットプレートあるいは恒温槽である、請求項2記載の半導体装置の製造装置。
【請求項4】
前記搬送部の表面温度は、前記レジストのガラス転移温度よりも低い温度である、請求項2記載の半導体装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体装置の製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レジストにパターンを形成し、当該レジストパターンを用いてウェーハにエッチングを行うことで、回折格子を製造する技術がある(特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-241615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レジストをウェーハの表面に塗布した後、レジストパターンを形成する前に、レジスト中の溶媒を蒸発させるためにプリベークを行う。プリベーク後のウェーハを搬送する際に、搬送用のアームなどがウェーハの裏面に接触する。ウェーハとアームとの接触によってレジストは急激に冷却され、収縮し、歪が生じる。歪が生じると、レジストパターンが崩れてしまい、レジストパターンを用いたエッチングの精度が低下する。また、収縮および歪をさけるために、ウェーハ温度が十分に低下するまで、プリベーク装置内で待機してもよい。しかし温度が低下するまで長時間を要する。そこで、レジストの歪を抑制し、かつ作業時間を短縮することが可能な半導体装置の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る半導体装置の製造方法は、ウェーハの表面にレジストを塗布する工程と、前記レジストを塗布する工程の後、前記ウェーハを第1加熱部に搬送する工程と、前記第1加熱部を用いて、前記ウェーハを前記レジストのガラス転移温度よりも高い温度である第1温度で加熱する工程と、前記ウェーハの裏面に接触する搬送部を用いて、前記ウェーハを前記第1加熱部から接触式のホットプレートを含む第2加熱部に搬送する工程と、前記第2加熱部を用いて、前記ウェーハを前記第1温度よりも低く、かつ前記ガラス転移温度以上の温度である第2温度で加熱する工程と、前記ウェーハを、前記ガラス転移温度よりも低い第3温度に降温する工程と、を有し、前記第3温度に降温する工程は、前記ウェーハを前記第2加熱部の表面から離間した状態で降温する工程である半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によればレジストの歪を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A図1Aは、実施形態に係る半導体装置の製造装置を例示するブロック図である。
図1B図1Bは、製造装置を例示する平面図である。
図1C図1Cは、制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2図2は、半導体装置の製造方法を例示するフローチャートである。
図3A図3Aは、半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図3B図3Bは、半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図3C図3Cは、半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図3D図3Dは、半導体装置の製造方法を例示する斜視図である。
図3E図3Eは、半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図3F図3Fは、半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図3G図3Gは、半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図4A図4Aは、半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図4B図4Bは、半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図4C図4Cは、半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図4D図4Dは、半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図5A図5Aは、ウェーハの写真である。
図5B図5Bは、レジストパターンの写真である。
図5C図5Cは、レジストパターンの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0009】
本開示の一形態は、(1)ウェーハの表面にレジストを塗布する工程と、前記レジストを塗布する工程の後、前記ウェーハを第1加熱部に搬送する工程と、前記第1加熱部を用いて、前記ウェーハを前記レジストのガラス転移温度よりも高い温度である第1温度で加熱する工程と、前記ウェーハの裏面に接触する搬送部を用いて、前記ウェーハを前記第1加熱部から接触式のホットプレートを含む第2加熱部に搬送する工程と、前記第2加熱部を用いて、前記ウェーハを前記第1温度よりも低く、かつ前記ガラス転移温度以上の温度である第2温度で加熱する工程と、前記ウェーハを、前記ガラス転移温度よりも低い第3温度に降温する工程と、を有し、前記第3温度に降温する工程は、前記ウェーハを前記第2加熱部の表面から離間した状態で降温する工程である半導体装置の製造方法である。ウェーハが搬送部に接触した後、第2温度に加熱されることで、レジストの歪が解放される。歪が解放された状態でレジストが第3温度に降温される。この結果、レジストの歪を抑制することができる。
(2)レジストが塗布されたウェーハを前記レジストのガラス転移温度よりも高い温度である第1温度で加熱する第1加熱部と、前記ウェーハを前記第1温度よりも低く、かつ前記ガラス転移温度よりも高い温度である第2温度で加熱する接触式のホットプレートを備えた第2加熱部と、前記第2加熱部の表面から前記ウェーハを持ち上げるピンと、前記第1加熱部と前記第2加熱部との間で前記ウェーハを移送させる搬送部と、前記ウェーハを前記第1温度よりも低い温度状態で前記搬送部により、前記第2加熱部へ移送させる制御および前記ピンによる前記ウェーハの持ち上げにより、前記第2温度よりも温度低下した前記ウェーハを前記搬送部により取り出す制御を行う制御部と、を有する半導体装置の製造装置である。ウェーハが搬送部に接触した後、第2温度に加熱されることで、レジストの歪が解放される。歪が解放された状態でレジストが第3温度に降温される。この結果、レジストの歪を抑制することができる。
(3)上記(2)において、前記第1加熱部は、接触式のホットプレートあるいは恒温槽でもよい。
(4)上記(2)または(3)において、前記搬送部の表面温度は、前記レジストのガラス転移温度よりも低い温度でもよい。ウェーハが搬送部に接触すると、レジストに歪が発生する。第2温度に加熱されることで、レジストの歪が解放される。歪が解放された状態でレジストが第3温度に降温される。この結果、レジストの歪を抑制することができる。
【0010】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法および製造装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
図1Aは、実施形態に係る半導体装置の製造装置100を例示するブロック図である。製造装置100は、制御部10,カセット30、スピンコータ32(レジスト形成部)、HMDS処理装置34、センタリングプレート36、搬送部40、ホットプレート50、ホットプレート52(第1加熱部)、およびホットプレート54(第2加熱部)を備える。
【0012】
図1Bは、製造装置100を例示する平面図である。図1Bでは、制御部10は省略している。カセット30、スピンコータ32、HMDS(ヘキサメチルジシラザン、Hexamethyldisilazane)処理装置34、センタリングプレート36、および搬送部40は、平面内に配置されている。ホットプレート50、52および54は、一つの装置に集約されている。ホットプレート50、52および54の積層体は、スピンコータ32などと同じ平面に配置されている。
【0013】
カセット30は、複数のウェーハを収納することができる。スピンコータ32は、ウェーハの表面にレジストを塗布する。HMDS処理装置34は、チャンバを有する。チャンバの内部は、例えばHMDS雰囲気で満たされている。HMDS処理装置34は、チャンバにウェーハを収納し、HMDS雰囲気中でウェーハを密閉する。センタリングプレート36は、表面上にウェーハを載置することができる。
【0014】
図1Bに示すように、搬送部40は、物体を吸着する吸着ハンドである。搬送部40は、移動および伸縮が可能であり、カセット30、スピンコータ32、HMDS処理装置34、センタリングプレート36、ホットプレート50、52および54の間を動く。搬送部40の先端部44は、二股の形状を有する。搬送部40は、先端部44にウェーハを吸着し、吸着したウェーハを搬送する。搬送部40は、例えばカセット30から1枚のウェーハを取り出し、所望の場所にウェーハを搬送した後、吸引を停止し、ウェーハを所望の場所に置く。搬送部40によるウェーハの搬送は、先端部44にウェーハの裏面を吸着した状態で行われる。
【0015】
ホットプレート50、52および54は、それぞれの上に載置されたウェーハを加熱する。ホットプレート50は、レジスト塗布前のベーキングを行う。ホットプレート52は、第1プリベーク工程を行う。ホットプレート54は、第2プリベーク工程を行う。ホットプレート54は、第2プリベークの後にウェーハを降温する降温部としても機能する。
【0016】
制御部10は、例えばコンピュータを備え、カセット30、スピンコータ32、HMDS処理装置34、センタリングプレート36、搬送部40、ホットプレート50、52および54を制御する。制御部10は、スピンコータ制御部12,温度制御部14,および搬送制御部16として機能する。
【0017】
スピンコータ制御部12は、スピンコータ32を制御し、ウェーハへのレジストへの塗布を行う。温度制御部14は、ホットプレート50、52および54の温度を調整し、これらのホットプレートによるウェーハの加熱を制御する。搬送制御部16は、搬送部40の位置を調整し、搬送部40による吸着のオン・オフなどを行う。
【0018】
図1Cは、制御部10のハードウェア構成を示すブロック図である。図1Cに示すように、制御部10は、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)20、RAM(Random Access Memory)22、記憶装置24、インターフェース26を備える。CPU20、RAM22、記憶装置24およびインターフェース26は互いにバスなどで接続されている。RAM22は、プログラムおよびデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。記憶装置24は、例えばROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD:Solid State Drive)、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disc Drive)などである。記憶装置24は、半導体装置の製造プログラムなどを記憶する。
【0019】
CPU20がRAM22に記憶されるプログラムを実行することにより、制御部10に図1Aのスピンコータ制御部12,温度制御部14,および搬送制御部16などが実現される。制御部10の各部は、回路などのハードウェアでもよい。
【0020】
図2は、半導体装置の製造方法を例示するフローチャートである。図3Aから図3C図3Eから図4Dは、半導体装置の製造方法を例示する断面図である。図3Eは、図3Dの線I-Iに沿った断面図である。図3Fは、半導体装置の製造方法を例示する斜視図である。図3F図3Gは、ウェーハ60の上面を搬送部40の下面で吸着した際における、図3Dに示す線I-Iに沿った断面図である。これらの図はウェーハ60に回折格子を形成する工程を示す。ウェーハ60は、例えばインジウムリン(InP)などの化合物半導体で形成されてもよいし、シリコン(Si)で形成されてもよい。
【0021】
搬送制御部16は、搬送部40を用いて、カセット30から1枚のウェーハ60を取り出し、ホットプレート50に搬送する。搬送部40は、先端部44に1枚のウェーハ60を吸着し、ホットプレート50の上でウェーハ60の吸着を停止し、ウェーハ60をホットプレート50の表面上に配置する。温度制御部18は、ホットプレート50を用いてベーキング工程を行う(図2のステップS10、図3A)。ベーキングの条件の一例を示す。
時間:1分
温度:180℃
180℃に加熱することで、ウェーハ60の表面の水分が蒸発する。
【0022】
搬送制御部16は、搬送部40を用いて、ウェーハ60をホットプレート50からHMDS処理装置34に搬送する。HMDS処理装置34においてウェーハ60のHMDS処理を行う。HMDS処理装置34内は、100℃のHMDS雰囲気で満たされている。ウェーハ60を、HMDS処理装置34内に1分間放置し、HMDS雰囲気に曝露する(ステップS12)。HMDS処理により、ウェーハ60とレジストとの密着性を向上させ、レジストの剥離を抑制する。
【0023】
搬送制御部16は、搬送部40を用いてウェーハ60をHMDS処理装置34からセンタリングプレート36に搬送する。ウェーハ60は、センタリングプレート36において例えば1分間、室温(例えば26℃程度)に保持される(ステップS14)。ウェーハ60の温度は室温と同程度まで低下する。
【0024】
搬送制御部16は、搬送部40を用いて、ウェーハ60をセンタリングプレート36からスピンコータ32に搬送する。スピンコータ制御部12は、スピンコータ32を用いて、ウェーハ60の表面にレジスト62を塗布する(ステップS16、図3B)。レジスト62の厚さは例えば約0.3μmである。レジスト62は、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA:Polymetylmethacrylate)で形成された、アクリル系のレジストであり、一例として495PMMA A4である。
【0025】
搬送制御部16は、搬送部40を用いて、ウェーハ60をスピンコータ32からホットプレート52に搬送する。ホットプレート52に代えて、恒温槽を使用しても良い。図3Cでは不図示の搬送部40の先端部44の上面は、ウェーハ60のレジスト62が塗布された面とは反対側の面(裏面)に接触する。温度制御部18は、ホットプレート52を用いて第1プリベーク工程を行う(ステップS18、図3C)。第1プリベークの条件の一例を示す。
時間:1分
温度:180℃
【0026】
第1プリベークによって、レジスト62中の溶剤を蒸発させる。レジスト62のガラス転位温度は、例えば140℃である。ガラス転位温度より低い温度で、レジスト62はガラス状に硬化する。ガラス転位温度以上の温度で、レジスト62はゴム状に軟化する。第1プリベークにおいて、レジスト62は、ガラス転位温度よりも高い温度(第1温度、例えば180℃)に加熱される。180℃に加熱されることで、レジスト62は軟化する。
【0027】
第1プリベークの後、搬送制御部16は、搬送部40を用いて、ウェーハ60を搬送する。搬送部40は、ウェーハ60をホットプレート52から持ち上げ、ホットプレート54まで搬送し、ホットプレート54の表面上に配置する。
【0028】
図3Dおよび図3Eに示すように、搬送部40の先端部44に設けられた吸着部42を用いてウェーハ60を吸引する。先端部44は例えばステンレス製である。先端部44の上面は、ウェーハ60の裏面(レジスト62が塗布された面とは反対側の面)に接触する。第1プリベーク後のウェーハ60の温度は、例えば180℃である。先端部44の温度は例えば38度であり、ウェーハ60よりも約140℃低い。ウェーハ60のうち先端部44に接触する部分は、先端部44との接触によって冷却される。ウェーハ60の厚さは約350μm程度である。先端部44との接触により、ウェーハ60の裏面の一部が100℃程度まで冷却される。ウェーハ60の裏面と表面の間の熱伝導により、レジスト62が冷却される。レジスト62のうち、ウェーハ60と先端部44との接触部分と対応した領域は、ガラス転位温度よりも低い温度まで冷却される。この領域は、冷却により収縮し、収縮した状態で固化する。このため、レジスト62のうち収縮固化した部分には、歪(ハンド痕65)が発生する。
【0029】
また、図3Fおよび図3Gに示すように、搬送部40の先端部44の下面がレジスト62の表面に接触し、ウェーハ60をホットプレート54へ搬送する場合にも、ハンド痕は発生する。先端部44との接触により、レジスト62が冷却されるためである。
【0030】
温度制御部18は、ホットプレート54を用いて第2プリベーク工程を行う(ステップS20、図4A)。第2プリベークの条件の一例を示す。
時間:1分
温度:140℃以上、150℃以下
【0031】
第2プリベークの温度(第2温度)は、レジスト62のガラス転位温度以上であり、第1プリベークの温度(180℃)よりも低い。第2プリベーク工程では、ウェーハ60をホットプレート54に接触させて、ウェーハ60の温度を140℃にまで降下させる。接触式であるためウェーハ60の温度は、非常に短時間で降温できる。その後、1分間の第2プリベークによって、レジスト62はガラス転位温度以上の温度に加熱されるため、軟化する。ハンド痕65が軟化することで、そのストレスが解放され、歪が解消される。
【0032】
次に、図4Bに示すように、第2プリベークの終了後、複数のピン55が、ホットプレート54から上方向に上昇する。複数のピン55は、ウェーハ60のうちレジスト62が設けられた面とは反対側の面に接触し、ウェーハ60をホットプレート54の表面から例えば1.0cm持ち上げる。ホットプレート54から離間した位置の温度は、ホットプレート54の表面温度より低い。ウェーハ60は、その状態で例えば1分間維持されることで例えば110℃以下など、ガラス転位温度よりも低い温度(第3温度)まで降温する(ステップS22)。レジスト62は、歪の解放された状態で、ガラス状に固化する。
【0033】
第1プリベークでは、ホットプレート52の温度は高温(180℃)であるため、ウェーハ60をピンで上昇させてホットプレート52から離したとしても、高温のホットプレート52からの輻射熱の影響が大きく、ウェーハ60の温度低下には時間がかかる。例えば、ホットプレート52の温度が180℃の場合、ホットプレート52の表面から1.0cm持ち上げて、ウェーハ60の温度が120℃(ガラス転移温度以下、すなわち、ハンド痕が生じない温度)になるまでには5分を要する。一方、本発明による第2プリベークでは、ホットプレート54の温度は比較的低温(140℃)であるため、輻射熱の影響が小さくウェーハ60をピン55で上昇させてホットプレート54から離すことで、比較的短時間(1分)でハンド痕が生じない温度へ到達させることができる。ここまでの所要時間は、ウェーハ60をホットプレート54へ移送する時間20秒、第2プリベーク時間1分、温度低下のための保持時間1分の合計2分20秒である。すなわち、本発明によれば、ハンド痕が生じるものの、第1プリベークの直後にウェーハ60を移動させ、その後、比較的低温の第2プリベークを実施することで、ハンド痕の解消および速やかなウェーハ60の温度低下を実現することができる。
【0034】
搬送制御部16は、搬送部40を用いて、ウェーハ60を不図示の露光装置まで搬送する。次に、レジスト62に例えば電子線で露光を行い、その後現像を行うことで、レジストパターン64を形成する(ステップS24、図4C)。レジストパターン64を用いてウェーハ60をエッチングすることで、ウェーハ60に回折格子66が形成される(ステップS26、図4D)。
【0035】
図5Aは、ウェーハ60の写真である。ウェーハ60は、オリエンテーションフラット61を有する。ウェーハ60の表面にはレジスト62が塗布されている。図5Aで図示されている面を面63と記載する。図5Aにおいて、面63のうち他の部分よりも濃い色の部分がハンド痕65である。
【0036】
図5Bはハンド痕65が生じた部分での露光パターンである。図5Cは、本発明によりハンド痕65が解消された領域の露光パターンである。図5Bに示すレジストパターンの幅は、図5Cに示すレジストパターンの幅よりも小さい。ハンド痕65では、レジスト62が収縮している。収縮した部分の現像は、収縮していない部分よりも早くなり、レジストパターンが細くなる。図5Bのレジストパターンを用いると、回折格子66を設計通りに製造することが困難である。
【0037】
本実施形態によれば、レジスト62を塗布した後のウェーハ60に、ホットプレート52を用いて第1プリベークを行い、ホットプレート54を用いて第2プリベークを行い、第2プリベーク後に温度を低下させる。レジスト62からの溶剤の蒸発が不十分である場合、現像時にレジスト62が損失し、正確なレジストパターン64が形成されない恐れがある。例えば第1プリベークの温度が140℃の場合、溶媒を十分に飛ばすことができず、現像時にレジスト62が損失する現象(膜べり)が発生する恐れがある。このため、第1プリベークの温度は、180℃以上であることが好ましい。レジスト62から溶剤を十分に蒸発させることができる。レジスト62の損失が抑制され、正確なレジストパターン64が形成される。第1プリベークの温度は、ガラス転位温度以上であり、例えば180℃以上であり、160℃以上でもよいし、200℃以上でもよい。レジスト62の溶剤を蒸発させることができる。温度がガラス転位温度以上であるため、レジスト62が軟化する。
【0038】
第2プリベークの温度がガラス転位温度以上であるため、レジスト62がゴム状に軟化し、歪が解放される。温度が例えば160℃以上などのように高すぎると、レジスト62の溶剤が過度に蒸発してしまう。レジスト62の性質が変化し、露光が困難になる。第2プリベークの温度は、ガラス転位温度以上であり、例えば140℃以上、150℃以下であることが好ましい。レジスト62が軟化し、かつ溶剤の過度な蒸発が抑制される。
【0039】
第2プリベークの後に、ウェーハ60を140℃未満など、ガラス転位温度よりも低い温度に降温する。温度は、例えば110℃以下、100℃以下などでもよい。レジスト62が歪のない状態で、ガラス状に固化する。固化したレジスト62に搬送部40の先端部44が接触しても、ハンド痕の発生が抑制される。
【0040】
第1プリベークの後、ホットプレート52による加熱を停止し、ウェーハ60をホットプレート52の表面上に放置することで、温度をガラス転位温度よりも低い温度とすることができる。しかし、温度が例えば180℃から100℃になるまで、約1時間かかる。180℃以下、100℃の環境で、約1時間にわたって放置されることで、レジスト62から溶剤が過度に蒸発してしまう。そこで、図4Bに示すように、ウェーハ60をピン55で持ち上げることで、ホットプレート54の表面から離間させ、放置する。これによりウェーハ60をガラス転位温度よりも低い温度に降温させる。ウェーハ60がホットプレート54から離間するため、加熱されにくく、溶剤の過度な蒸発が抑制される。ホットプレート54上での待機時間は例えば1分である。ピン55は、ウェーハ60のうちレジスト62が塗布された面とは反対側の面に接触し、レジスト62が塗布された面には接触しない。ピン55によるレジスト62の歪が抑制される。ウェーハ60をホットプレート52よりも低温の場所に搬送し、降温させてもよい。
【0041】
レジスト62は、495PMMAなどアクリル系のレジストである。アクリル系レジストのガラス転位温度以上の温度で第1プリベークおよび第2プリベークを行い、ガラス転位温度未満の温度に降温する。レジスト62の歪を抑制することができる。レジスト62の種類に応じて、第1プリベーク、第2プリベーク、降温などの各工程における温度、および時間を変更してもよい。
【0042】
図4Cに示すように、レジスト62に露光・現像を行うことで、レジストパターン64を形成する。レジスト62の歪が抑制されているため、レジストパターン64が精度よく形成される。図4Dに示すように、レジストパターン64を用いたエッチングにより、回折格子66を形成する。回折格子66を精度よく、設計通りに製造することができる。エッチングによって、例えばメサなど回折格子66以外の構成をウェーハ60に形成してもよい。回折格子以外にも、微細なパターンを描くレジストに有効である。
【0043】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 制御部
12 スピンコータ制御部
14 温度制御部
16 搬送制御部
20 CPU
22 RAM
24 記憶装置
26 インターフェース
30 カセット
32 スピンコータ
34 HMDS処理装置
36 センタリングプレート
40 搬送部
42 吸着部
44 先端部
50、52、54 ホットプレート
55 ピン
60 ウェーハ
61 オリエンテーションフラット
62 レジスト
63 面
64 レジストパターン
65 ハンド痕
66 回折格子
100 製造装置
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C