(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131178
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体集積回路及び受信装置
(51)【国際特許分類】
H03F 3/50 20060101AFI20240920BHJP
H03M 1/12 20060101ALN20240920BHJP
H03M 1/38 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
H03F3/50
H03M1/12 C
H03M1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041277
(22)【出願日】2023-03-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴー フィクー
【テーマコード(参考)】
5J022
5J500
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022BA05
5J022CA10
5J022CB01
5J022CF02
5J500AA01
5J500AA45
5J500AC62
5J500AF09
5J500AH10
5J500AH17
5J500AH25
5J500AH32
5J500AK05
5J500AK09
5J500AK34
5J500AK47
5J500AM02
5J500AM21
5J500AS13
5J500AT01
5J500WU07
(57)【要約】
【課題】アナログ信号に基づき好適にデジタル信号を生成する半導体集積回路、及び受信装置を提供する。
【解決手段】一実施形態の半導体集積回路は、第1信号が入力される第1入力端、第1電圧が供給される第2入力端、及び第2信号が出力される出力端を有し、第1ノードに接続される第1端、出力端に接続される第2端、及び第1入力端に接続される制御端を有する第1トランジスタ、第1ノードに接続される第1端、第2ノードに接続される第2端、及び出力端に接続される制御端を有する第2トランジスタ、第2電圧が供給される第1端、第1ノードに接続される第2端、及び第2入力端に接続される制御端を有する第3トランジスタ、出力端に接続される第1端、第3電圧が供給される第2端、及び第2ノードに接続される制御端を有する第4トランジスタ、並びに第2ノードに接続される第1端及び制御端、第3電圧が供給される第2端を有する第5トランジスタを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号が入力される第1入力端と、第1電圧が供給される第2入力端と、第2信号が出力される第1出力端と、を有する第1バッファを備え、
前記第1バッファは、
第1ノードに接続される第1端と、前記第1出力端に接続される第2端と、前記第1入力端に接続される制御端と、を有する第1トランジスタと、
前記第1ノードに接続される第1端と、第2ノードに接続される第2端と、前記第1出力端に接続される制御端と、を有する第2トランジスタと、
第2電圧が供給される第1端と、前記第1ノードに接続される第2端と、前記第2入力端に接続される制御端と、を有する第3トランジスタと、
前記第1出力端に接続される第1端と、第3電圧が供給される第2端と、前記第2ノードに接続される制御端と、を有する第4トランジスタと、
前記第2ノードに接続される第1端及び制御端と、前記第3電圧が供給される第2端と、を有する第5トランジスタと、
を含む、
半導体集積回路。
【請求項2】
前記第1バッファは、
前記第2電圧が供給される第1端と、前記第1出力端に接続される第2端と、前記第1ノードに接続される制御端と、を有する第6トランジスタを更に含む、
請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記第1バッファは、前記第1信号と差動信号を構成する第3信号が入力される第3入力端を更に有し、
前記第1バッファは、
前記第2電圧が供給される第1端と、前記第1出力端に接続される第2端と、前記第3入力端に接続される制御端と、を有する第7トランジスタと、
前記第1出力端に接続される入力端と、前記第3電圧が供給される出力端と、を有する第1電流源と、
を更に含む、
請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記第1信号と差動信号を構成する第3信号が入力される第3入力端と、前記第1電圧が供給される第4入力端と、前記第2信号と差動信号を構成する第4信号が出力される第2出力端と、を有する第2バッファを更に備え、
前記第2バッファは、
第3ノードに接続される第1端と、前記第2出力端に接続される第2端と、前記第3入力端に接続される制御端と、を有する第8トランジスタと、
前記第3ノードに接続される第1端と、第4ノードに接続される第2端と、前記第2出力端に接続される制御端と、を有する第9トランジスタと、
前記第2電圧が供給される第1端と、前記第3ノードに接続される第2端と、前記第4入力端に接続される制御端と、を有する第10トランジスタと、
前記第2出力端に接続される第1端と、前記第3電圧が供給される第2端と、前記第4ノードに接続される制御端と、を有する第11トランジスタと、
前記第4ノードに接続される第1端及び制御端と、前記第3電圧が供給される第2端と、を有する第12トランジスタと、
を含む、
請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記第1バッファは、前記第2入力端に接続される第1端と、前記第3ノードに接続される第2端と、を有する第1キャパシタを更に含み、
前記第2バッファは、前記第4入力端に接続される第1端と、前記第1ノードに接続される第2端と、を有する第2キャパシタを更に含む、
請求項4記載の半導体集積回路。
【請求項6】
第1クロック信号に基づいて前記第2信号及び前記第4信号から第1ビット列を判定する第1コンバータと、
前記第1クロック信号から第1位相シフトした第2クロック信号に基づいて前記第2信号及び前記第4信号から第2ビット列を判定する第2コンバータと、
を更に備えた、
請求項4記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記第1バッファは、前記第1ノードに接続される第1端と、前記第1出力端に接続される第2端と、を有する第3キャパシタを更に含む、
請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記第1トランジスタ、前記第4トランジスタ、及び前記第5トランジスタは、第1導電型を有し、
前記第2トランジスタ、及び前記第3トランジスタは、前記第1導電型と異なる第2導電型を有する、
請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の半導体集積回路と、
前記半導体集積回路から出力された信号を処理する処理回路と、
を備える、受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体集積回路及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送信装置と受信装置とは伝送路を介して接続される。送信装置は、アナログ信号にデータを重畳し、このアナログ信号を出力する。受信装置は、伝送路を通過したアナログ信号を受信する。受信装置は、アナログ信号を処理する半導体集積回路を備える。受信装置は、アナログ信号に基づき、デジタル信号を生成する。受信装置は、生成されたデジタル信号に基づき、データを再生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アナログ信号に基づき好適にデジタル信号を生成する半導体集積回路及び受信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体集積回路は、第1信号が入力される第1入力端と、第1電圧が供給される第2入力端と、第2信号が出力される第1出力端と、を有する第1バッファを備える。上記第1バッファは、第1トランジスタ、第2トランジスタ、第3トランジスタ、第4トランジスタ、及び第5トランジスタを含む。上記第1トランジスタは、第1ノードに接続される第1端と、上記第1出力端に接続される第2端と、上記第1入力端に接続される制御端と、を有する。上記第2トランジスタは、上記第1ノードに接続される第1端と、第2ノードに接続される第2端と、上記第1出力端に接続される制御端と、を有する。上記第3トランジスタは、第2電圧が供給される第1端と、上記第1ノードに接続される第2端と、上記第2入力端に接続される制御端と、を有する。上記第4トランジスタは、上記第1出力端に接続される第1端と、第3電圧が供給される第2端と、上記第2ノードに接続される制御端と、を有する。上記第5トランジスタは、上記第2ノードに接続される第1端及び制御端と、上記第3電圧が供給される第2端と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る受信装置を含む通信システムの構成の一例を示すブロック図。
【
図2】実施形態に係る受信装置に含まれる受信回路の構成の一例を示すブロック図。
【
図3】実施形態に係る受信回路に含まれるADコンバータの構成の一例を示すブロック図。
【
図4】実施形態に係るADコンバータに含まれるバッファの構成の一例を示すブロック図。
【
図5】実施形態に係るADコンバータに含まれるバッファの構成の一例を示す回路図。
【
図6】変形例に係るADコンバータに含まれるバッファの構成の一例を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。
【0008】
なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。同様の構成を有する要素同士を特に区別する場合、同一符号の末尾に、互いに異なる文字又は数字を付加する場合がある。
【0009】
1. 実施形態
実施形態について説明する。
【0010】
1.1 通信システム
まず、実施形態に係る受信装置を含む通信システムの構成について説明する。
図1は、実施形態に係る受信装置を含む通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0011】
通信システム1は、高速シリアル通信により、データを一方の装置又は回路から他方の装置又は回路へ伝送するように構成される。具体的には、例えば、通信システム1は、128Gbps級の通信速度を実現する。通信システム1は、送信装置2、伝送路3、及び受信装置4を備える。通信システム1は、同じプリント基板上に設けられた複数の装置又は回路により構成されても良いし、互いに異なるプリント基板上に設けられた複数の装置又は回路により構成されても良い。
【0012】
送信装置2は、伝送路3を介して受信装置4に信号TR及び/TRを送信するように構成される。信号TR及び/TRは、差動信号である。信号TR及び/TRは、例えば、複数のパルス信号を含む信号である。信号TR及び/TRの各パルス信号には、データが重畳される。信号TR及び/TRのパルス信号毎の電圧レベルは、1以上のビットのデータに対応する。当該パルス信号に重畳されたデータが、送信装置2から伝送路3を介して受信装置4に伝達される。
【0013】
伝送路3は、信号TR及び/TRを受信装置4へ伝送するための物理的又は空間的な伝送媒体である。伝送路3は、例えば、送信装置2と受信装置4との間を接続する配線である。伝送路3は、伝送媒体の構造や材質に応じて、様々な伝送特性を有し得る。伝送路3の伝送特性は、例えば、特定の周波数帯域における利得の損失を伴う周波数特性を有する。
【0014】
送信装置2によって送信された信号TR及び/TRは、伝送路3を通過することによって、伝送路3の伝送特性に応じた損失を受ける。これにより、伝送路3を通過した信号TR及び/TRには、シンボル間干渉(ISI:Inter-Symbol Interference)が発生する。このため、伝送路3を通過した信号TR及び/TRは、受信装置4の初段回路においてアナログ信号として処理される。以下では、伝送路3を通過して損失を受けた信号TR及び/TRを、信号RV及び/RVと呼ぶ。
【0015】
受信装置4は、伝送路3を介して送信装置2から信号RV及び/RVを受信するように構成される。受信装置4は、信号RV及び/RVに基づいて、送信装置2によって信号TR及び/TRに重畳されたデータを復号する。受信装置4は、信号TR及び/TRに重畳されたデータを正しく復号するための受信回路を有する。受信回路は、半導体集積回路と呼ばれても良い。
【0016】
1.2 受信回路
図2は、実施形態に係る受信装置の受信回路の構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
受信装置4は、受信回路として、例えば、パッドP1及びP2、AFE10、TI-ADC20、VREFGEN30、DSP40、並びにCDR50を含む。
【0018】
パッドP1及びP2の各々は、伝送路3と接続される端子である。
図2の例では、送信装置2から伝送路3を介して、パッドP1及びP2がそれぞれ信号RV及び/RVを受信する場合が示される。
【0019】
AFE10は、アナログフロントエンド(Analog Front End)である。AFE10は、例えば、連続時間線形イコライザ(CTLE:Continuous Time Linear Equalizer)及び可変ゲインアンプ(VGA:Variable Gain Amplifier)を含む。CTLEは、伝送路3の周波数特性を補償するような周波数特性を備えた増幅回路である。VGAは、利得(ゲイン)を変更することが可能な増幅回路である。AFE10には、パッドP1及びP2からそれぞれ信号RV及び/RVが入力される。AFE10は、CTLE及びVGAを用いて、信号RV及び/RVに対してアナログ処理を実行する。AFE10は、信号RV及び/RVに基づき、信号Sin及び/Sinを生成する。すなわち、信号Sin及び/Sinは、信号RV及び/RVと同様、アナログ信号である。AFE10は、信号Sin及び/SinをTI-ADC20に出力する。
【0020】
TI-ADC20は、タイム・インタリーブ方式のADコンバータである。128Gbpsを実現する通信システム1において、ビット深度が2ビットの場合、TI-ADC20は、例えば、64GS/sのサンプリングレートを実現する。この場合、TI-ADC20のナイキスト周波数は、32GHzとなる。TI-ADC20は、アナログ信号をデジタル信号に変換する処理を実行する。TI-ADC20には、AFE10から信号Sin及び/Sinが入力される。TI-ADC20には、VREFGEN30からバイアス電圧VB、並びに参照電圧VRp及びVRn(VRp/n)が入力される。TI-ADC20には、CDR50から信号CK1及びCK2が入力される。TI-ADC20は、バイアス電圧VB、参照電圧VRp及びVRn、並びに信号CK1及びCK2に基づいて、信号Sin及び/Sinを信号X0に変換する。TI-ADC20は、信号X0をDSP40に出力する。TI-ADC20の構成については後述する。
【0021】
バイアス電圧VBは、TI-ADC20において、アナログ信号をバッファリングする処理で使用される電圧である。
【0022】
参照電圧VRp及びVRnは、TI-ADC20において、アナログ信号をデジタル信号に変換する処理で使用される電圧である。TI-ADC20は、信号Sin及び/Sinの電位差と、参照電圧VRp及びVRnの電位差(VRp-VRn)との大小関係に基づいて、信号X0を生成する。
【0023】
信号CK1は、nr1個のクロック信号を含む。nr1は、1以上の整数(例えば、8)である。信号CK1のnr1個のクロック信号は、例えば、少なくとも360°/nr1ずつ位相が異なる。以下では、信号CK1内のnr1個のクロック信号は、信号CK1_0、…、及びCK1_(nr1-1)のように区別して示される場合がある。信号CK1の周波数は、送信装置2によって信号TR及び/TRに埋め込まれたクロック信号の周波数よりも低い。
【0024】
信号CK2は、nr2個のクロック信号を含む。nr2は、nr1より大きい整数(例えば、32)である。信号CK2のnr2個のクロック信号は、例えば、少なくとも360°/nr2ずつ位相が異なる。以下では、信号CK2内のnr2個のクロック信号は、信号CK2_0、…、及びCK2_(nr2-1)のように区別して示される場合がある。信号CK2の周波数は、送信装置2によって信号TR及び/TRに埋め込まれたクロック信号の周波数と等しくても異なっていてもよい。
【0025】
TI-ADC20が出力する信号X0は、デジタル信号である。信号X0は、連続する複数のデジタル値を含む。信号X0に含まれる1個のデジタル値は、信号CK2の1個のクロック信号(具体的にはクロック信号のエッジ)に基づいて、信号Sin及び/Sinの1個のシンボルからサンプリングされる。1個のデジタル値は、例えば、8ビットデータである。信号X0に含まれる連続するnr2個のデジタル値の各ビットの値は、信号CK2のnr2個のクロック信号に基づいて、信号Sin及び/Sinの連続するnr2個のシンボルからサンプリングされる。以下では、信号X0に含まれる連続するnr2個のデジタル値のTI-ADC20による生成周期は、単に「周期」とも呼ぶ。信号X0に含まれる連続するnr2個のデジタル値は、「1周期分の信号X0」とも呼ぶ。
【0026】
また、信号X0に含まれる連続するnr2個のデジタル値は、デジタル値X0_0、…、及びX0_(nr2-1)のように区別して示される場合がある。デジタル値X0_jに含まれる8ビットデータの列は、ビット列X0_j<7:0>のように示される場合がある(0≦j≦nr2-1)。なお、ビット列X0_j<7:0>は、最上位ビット(MSB)X0_j<0>から最下位ビット(LSB)X0_j<7>までの8個のビットが順に並ぶデータ列を意味する。
【0027】
VREFGEN30は、電圧生成回路である。VREFGEN30は、バイアス電圧VB、並びに参照電圧VRp及びVRnを生成するように構成される。
【0028】
DSP40は、デジタル処理回路(Digital Signal Processor)である。DSP40は、例えば、フィードフォワードイコライザ(FFE:Feed Forward Equalizer)、判定帰還型イコライザ(DFE:Decision Feedback Equalizer)、及びデータ判定回路を含む。DSP40には、信号X0が入力される。DSP40は、例えば、FFE、DFE、及びデータ判定回路を用いて、信号X0に対してデジタル処理を実行する。具体的には、DSP40は、信号X0に基づき、信号X及びデータAを生成する。DSP40は、信号X及びデータAを、CDR50に出力する。DSP40は、信号X及びデータAを、後続の処理回路(図示せず)に出力する。後続の処理回路では、信号X及びデータAが処理される。CDR50に出力される信号X及びデータAと、後続の処理回路(図示せず)に出力される信号X及びデータAとは、それぞれ同じ信号であってもよいし異なる信号であってもよい。
【0029】
信号Xは、信号X0と同様、デジタル信号である。1周期分の信号Xは、nr2個のデジタル値の集合である。データAは、信号Xに基づいて復号されたデータである。
【0030】
CDR50は、クロックデータリカバリ回路である。CDR50には、周期毎に信号X及びデータAが入力される。CDR50には、例えば、送信装置2から、参照クロック信号CKREFが入力される。参照クロック信号CKREFは、送信装置2とは独立に、CDR50内又は受信装置4内で生成されてもよい。CDR50は、参照クロック信号CKREF、並びに信号X及びデータAに基づき、信号CK1及びCK2の位相の補正量を算出する。CDR50は、算出された位相の補正量に基づき、信号CK1及びCK2を再生する。CDR50は、再生された信号CK1及びCK2を周期毎にTI-ADC20に出力する。このように、CDR50は、1周期分の信号X0から生成される信号X及びデータAに基づいて、後続する1周期分の信号X0のサンプリングタイミングの基準となる信号CK1及びCK2を再生する。このようなTI-ADC20、DSP40、及びCDR50による周期毎の循環処理は、「CDRループ」とも呼ばれる。
【0031】
以下では、(nr1,nr2)の具体的な組み合わせとして、(8,32)が適用される場合について説明する。
【0032】
1.3 ADコンバータ
次に、実施形態に係る受信回路に含まれるADコンバータ(TI-ADC)の内部構成について説明する。
図3は、実施形態に係る受信回路に含まれるADコンバータの構成の一例を示すブロック図である。
【0033】
TI-ADC20は、SFE21、及び複数のSAR-ADC22を含む。複数のSAR-ADC22は、32個のSAR-ADC22_0、…、及び21_31を含む。
図3の例では、4個のSAR-ADC22_0、22_8、22_16、及び22_24が、「SAR-ADC22_0+8k」と示される(0≦k≦3)。同様に、4個のSAR-ADC22_1、22_9、22_17、及び22_25が、「SAR-ADC22_1+8k」と示される。4個のSAR-ADC22_2、22_10、22_18、及び22_26が、「SAR-ADC22_2+8k」と示される。4個のSAR-ADC22_3、22_11、22_19、及び22_27が、「SAR-ADC22_3+8k」と示される。4個のSAR-ADC22_4、22_12、22_20、及び22_28が、「SAR-ADC22_4+8k」と示される。4個のSAR-ADC22_5、22_13、22_21、及び22_29が、「SAR-ADC22_5+8k」と示される。4個のSAR-ADC22_6、22_14、22_22、及び22_30が、「SAR-ADC22_6+8k」と示される。4個のSAR-ADC22_7、22_15、22_23、及び22_31が、「SAR-ADC22_7+8k」と示される。
【0034】
SFE21は、サンプリングフロントエンド(Sampling Front End)である。SFE21には、バイアス電圧VBが供給される。SFE21は、複数のバッファBF、複数のスイッチング素子SW、及び複数のキャパシタCPを含む。複数のバッファBFは、4個の第1段バッファBF_a、BF_b、BF_c、及びBF_d、並びに8個の第2段バッファBF_0、BF_1、BF_2、BF_3、BF_4、BF_5、BF_6、及びBF_7を含む。4個の第1段バッファBF_a~BF_d、及び8個の第2段バッファBF_0~BF_7の各々は、第1入力端、第2入力端、第1出力端、及び第2出力端を有する。複数のスイッチング素子SWは、8個のスイッチング素子群SW_0、SW_1、SW_2、SW_3、SW_4、SW_5、SW_6、及びSW_7を含む。8個のスイッチング素子群SW_0~SW_7の各々は、2個のスイッチング素子を含む。複数のキャパシタCPは、8個のキャパシタ群CP_0、CP_1、CP_2、CP_3、CP_4、CP_5、CP_6、及びCP_7を含む。8個のキャパシタ群CP_0~CP_7の各々は、2個のキャパシタを含む。4個の第1段バッファBF_a~BF_d、及び8個の第2段バッファBF_0~BF_7はそれぞれ、同等の構成を有していてもよい。以下では、4個の第1段バッファBF_a~BF_dの各々、及び8個の第2段バッファBF_0~BF_7の各々を区別しない場合、単に“バッファBF”と呼ぶ。
【0035】
第1段バッファBF_a~BF_dの各々の第1入力端には、信号Sinが入力される。第1段バッファBF_a~BF_dの各々の第2入力端には、信号/Sinが入力される。
【0036】
第1段バッファBF_aの第1出力端からは、電圧VOP_aが出力される。第1段バッファBF_aの第1出力端には、スイッチング素子群SW_0内の一方のスイッチング素子、及びスイッチング素子群SW_4内の一方のスイッチング素子の各々の第1端が接続される。第1段バッファBF_aの第2出力端からは、電圧VON_aが出力される。第1段バッファBF_aの第2出力端には、スイッチング素子群SW_0内の他方のスイッチング素子、及びスイッチング素子群SW_4内の他方のスイッチング素子の各々の第1端が接続される。
【0037】
第1段バッファBF_bの第1出力端からは、電圧VOP_bが出力される。第1段バッファBF_bの第1出力端には、スイッチング素子群SW_2内の一方のスイッチング素子、及びスイッチング素子群SW_6内の一方のスイッチング素子の各々の第1端が接続される。第1段バッファBF_bの第2出力端からは、電圧VON_bが出力される。第1段バッファBF_bの第2出力端には、スイッチング素子群SW_2内の他方のスイッチング素子、及びスイッチング素子群SW_6内の他方のスイッチング素子の各々の第1端が接続される。
【0038】
第1段バッファBF_cの第1出力端からは、電圧VOP_cが出力される。第1段バッファBF_cの第1出力端には、スイッチング素子群SW_1内の一方のスイッチング素子、及びスイッチング素子群SW_5内の一方のスイッチング素子の各々の第1端が接続される。第1段バッファBF_cの第2出力端からは、電圧VON_cが出力される。第1段バッファBF_cの第2出力端には、スイッチング素子群SW_1内の他方のスイッチング素子、及びスイッチング素子群SW_5内の他方のスイッチング素子の各々の第1端が接続される。
【0039】
第1段バッファBF_dの第1出力端からは、電圧VOP_dが出力される。第1段バッファBF_dの第1出力端には、スイッチング素子群SW_3内の一方のスイッチング素子、及びスイッチング素子群SW_7内の一方のスイッチング素子の各々の第1端が接続される。第1段バッファBF_dの第2出力端からは、電圧VON_dが出力される。第1段バッファBF_dの第2出力端には、スイッチング素子群SW_3内の他方のスイッチング素子、及びスイッチング素子群SW_7内の他方のスイッチング素子の各々の第1端が接続される。
【0040】
スイッチング素子群SW_0内の一方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_0内の一方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_0の第1入力端が接続される。スイッチング素子群SW_0内の他方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_0内の他方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_0の第2入力端が接続される。キャパシタ群CP_0内の2個のキャパシタの各々の第2端は、接地される。接地されるとは、SFE21が動作する場合の基準電位(例えば、電圧VSS=0V)が印加される配線に接続されることである。信号CK1_0が“H”レベルの場合、スイッチング素子群SW_0は、オン状態となる。信号CK1_0が“L”レベルの場合、スイッチング素子群SW_0は、オフ状態となる。
【0041】
スイッチング素子群SW_1内の一方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_1内の一方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_1の第1入力端が接続される。スイッチング素子群SW_1内の他方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_1内の他方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_1の第2入力端が接続される。キャパシタ群CP_1内の2個のキャパシタの各々の第2端は、接地される。信号CK1_1が“H”レベルの場合、スイッチング素子群SW_1は、オン状態となる。信号CK1_1が“L”レベルの場合、スイッチング素子群SW_1は、オフ状態となる。
【0042】
スイッチング素子群SW_2内の一方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_2内の一方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_2の第1入力端が接続される。スイッチング素子群SW_2内の他方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_2内の他方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_2の第2入力端が接続される。キャパシタ群CP_2内の2個のキャパシタの各々の第2端は、接地される。信号CK1_2が“H”レベルの場合、スイッチング素子群SW_2は、オン状態となる。信号CK1_2が“L”レベルの場合、スイッチング素子群SW_2は、オフ状態となる。
【0043】
スイッチング素子群SW_3内の一方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_3内の一方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_3の第1入力端が接続される。スイッチング素子群SW_3内の他方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_3内の他方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_3の第2入力端が接続される。キャパシタ群CP_3内の2個のキャパシタの各々の第2端は、接地される。信号CK1_3が“H”レベルの場合、スイッチング素子群SW_3は、オン状態となる。信号CK1_3が“L”レベルの場合、スイッチング素子群SW_3は、オフ状態となる。
【0044】
スイッチング素子群SW_4内の一方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_4内の一方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_4の第1入力端が接続される。スイッチング素子群SW_4内の他方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_4内の他方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_4の第2入力端が接続される。キャパシタ群CP_4内の2個のキャパシタの各々の第2端は、接地される。信号CK1_4が“H”レベルの場合、スイッチング素子群SW_4は、オン状態となる。信号CK1_4が“L”レベルの場合、スイッチング素子群SW_4は、オフ状態となる。
【0045】
スイッチング素子群SW_5内の一方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_5内の一方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_5の第1入力端が接続される。スイッチング素子群SW_5内の他方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_5内の他方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_5の第2入力端が接続される。キャパシタ群CP_5内の2個のキャパシタの各々の第2端は、接地される。信号CK1_5が“H”レベルの場合、スイッチング素子群SW_5は、オン状態となる。信号CK1_5が“L”レベルの場合、スイッチング素子群SW_5は、オフ状態となる。
【0046】
スイッチング素子群SW_6内の一方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_6内の一方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_6の第1入力端が接続される。スイッチング素子群SW_6内の他方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_6内の他方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_6の第2入力端が接続される。キャパシタ群CP_6内の2個のキャパシタの各々の第2端は、接地される。信号CK1_6が“H”レベルの場合、スイッチング素子群SW_6は、オン状態となる。信号CK1_6が“L”レベルの場合、スイッチング素子群SW_6は、オフ状態となる。
【0047】
スイッチング素子群SW_7内の一方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_7内の一方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_7の第1入力端が接続される。スイッチング素子群SW_7内の他方のスイッチング素子の第2端には、キャパシタ群CP_7内の他方のキャパシタの第1端、及び第2段バッファBF_7の第2入力端が接続される。キャパシタ群CP_7内の2個のキャパシタの各々の第2端は、接地される。信号CK1_7が“H”レベルの場合、スイッチング素子群SW_7は、オン状態となる。信号CK1_7が“L”レベルの場合、スイッチング素子群SW_7は、オフ状態となる。
【0048】
第2段バッファBF_0の第1出力端及び第2出力端からはそれぞれ、電圧VOP_0及びVON_0が出力される。第2段バッファBF_0の第1出力端及び第2出力端の各々は、SAR-ADC22_0、22_8、22_16、及び22_24に接続される。
【0049】
第2段バッファBF_1の第1出力端及び第2出力端からはそれぞれ、電圧VOP_1及びVON_1が出力される。第2段バッファBF_1の第1出力端及び第2出力端の各々は、SAR-ADC22_1、22_9、22_17、及び22_25に接続される。
【0050】
第2段バッファBF_2の第1出力端及び第2出力端からはそれぞれ、電圧VOP_2及びVON_2が出力される。第2段バッファBF_2の第1出力端及び第2出力端の各々は、SAR-ADC22_2、22_10、22_18、及び22_26に接続される。
【0051】
第2段バッファBF_3の第1出力端及び第2出力端からはそれぞれ、電圧VOP_3及びVON_3が出力される。第2段バッファBF_3の第1出力端及び第2出力端の各々は、SAR-ADC22_3、22_11、22_19、及び22_27に接続される。
【0052】
第2段バッファBF_4の第1出力端及び第2出力端からはそれぞれ、電圧VOP_4及びVON_4が出力される。第2段バッファBF_4の第1出力端及び第2出力端の各々は、SAR-ADC22_4、22_12、22_20、及び22_28に接続される。
【0053】
第2段バッファBF_5の第1出力端及び第2出力端からはそれぞれ、電圧VOP_5及びVON_5が出力される。第2段バッファBF_5の第1出力端及び第2出力端の各々は、SAR-ADC22_5、22_13、22_21、及び22_29に接続される。
【0054】
第2段バッファBF_6の第1出力端及び第2出力端からはそれぞれ、電圧VOP_6及びVON_6が出力される。第2段バッファBF_6の第1出力端及び第2出力端の各々は、SAR-ADC22_6、22_14、22_22、及び22_30に接続される。
【0055】
第2段バッファBF_7の第1出力端及び第2出力端からはそれぞれ、電圧VOP_7及びVON_7が出力される。第2段バッファBF_7の第1出力端及び第2出力端の各々は、SAR-ADC22_7、22_15、22_23、及び22_31に接続される。
【0056】
以上のような構成により、第2段バッファBF_0は、信号CK1_0が“H”レベルとなるタイミングにおいて、電圧VOP_a及びVON_aが入力されると共に電圧VOP_0及びVON_0を出力する。第2段バッファBF_1は、信号CK1_1が“H”レベルとなるタイミングにおいて、電圧VOP_c及びVON_cが入力されると共に電圧VOP_1及びVON_1を出力する。第2段バッファBF_2は、信号CK1_2が“H”レベルとなるタイミングにおいて、電圧VOP_b及びVON_bが入力されると共に電圧VOP_2及びVON_2を出力する。第2段バッファBF_3は、信号CK1_3が“H”レベルとなるタイミングにおいて、電圧VOP_d及びVON_dが入力されると共に電圧VOP_3及びVON_3を出力する。第2段バッファBF_4は、信号CK1_4が“H”レベルとなるタイミングにおいて、電圧VOP_a及びVON_aが入力されると共に電圧VOP_4及びVON_4を出力する。第2段バッファBF_5は、信号CK1_5が“H”レベルとなるタイミングにおいて、電圧VOP_c及びVON_cが入力されると共に電圧VOP_5及びVON_5を出力する。第2段バッファBF_6は、信号CK1_6が“H”レベルとなるタイミングにおいて、電圧VOP_b及びVON_bが入力されると共に電圧VOP_6及びVON_6を出力する。第2段バッファBF_7は、信号CK1_7が“H”レベルとなるタイミングにおいて、電圧VOP_d及びVON_dが入力されると共に電圧VOP_7及びVON_7を出力する。
【0057】
SAR-ADC22_0~SAR-ADC22_31の各々は、逐次比較型(Successive Approximation Register)のADコンバータである。SAR-ADC22_0~SAR-ADC22_31にはそれぞれ、信号CK2_0~CK2_31が入力される。SAR-ADC22_0~SAR-ADC22_31の各々には、参照電圧VRp及びVRnが異なる配線を介して供給される。SAR-ADC22_0~SAR-ADC22_31は、それぞれに対応して入力される信号CK2_0~CK2_31、及び参照電圧VRp及びVRnに基づいて、信号X0_0~X0_31をそれぞれ出力する。SAR-ADC22_0~SAR-ADC22_31はそれぞれ、同等の構成を有する。
【0058】
1.4 バッファ
図4は、実施形態に係るADコンバータに含まれるバッファの構成の一例を示すブロック図である。
図4では、同等の構成を有する第1段バッファBF_a~BF_d及び第2段バッファBF_0~BF_7のうちの1個のバッファBFの構成が一例として示される。
【0059】
バッファBFは、差動入力バッファとして機能する。具体的には、バッファBFは、2個のバッファユニットBFP及びBFNを含む。バッファユニットBFPは、5個の入力端NIP、NIXP、NBP、NCP、及びNCXP、並びに1個の出力端NOPを有する。バッファユニットBFNは、5個の入力端NIN、NIXN、NBN、NCN、及びNCXN、並びに1個の出力端NONを有する。バッファユニットBFP及びBFNは、同等の構成を有する。
【0060】
バッファユニットBFPの入力端NIP及びバッファユニットBFNの入力端NIXNには、電圧VIPが供給される。バッファBFが第1段バッファBF_a~BF_dのいずれかの場合、電圧VIPは、信号Sinの電圧である。バッファBFが第2段バッファBF_0又はBF_4の場合、電圧VIPは、電圧VOP_aである。バッファBFが第2段バッファBF_2又はBF_6の場合、電圧VIPは、電圧VOP_bである。バッファBFが第2段バッファBF_1又はBF_5の場合、電圧VIPは、電圧VOP_cである。バッファBFが第2段バッファBF_3又はBF_7の場合、電圧VIPは、電圧VOP_dである。
【0061】
バッファユニットBFPの入力端NIXP及びバッファユニットBFNの入力端NINには、電圧VINが供給される。バッファBFが第1段バッファBF_a~BF_dのいずれかの場合、電圧VINは、信号/Sinの電圧である。バッファBFが第2段バッファBF_0又はBF_4の場合、電圧VINは、電圧VON_aである。バッファBFが第2段バッファBF_2又はBF_6の場合、電圧VINは、電圧VON_bである。バッファBFが第2段バッファBF_1又はBF_5の場合、電圧VINは、電圧VON_cである。バッファBFが第2段バッファBF_3又はBF_7の場合、電圧VINは、電圧VON_dである。
【0062】
バッファユニットBFPの入力端NBP及びバッファユニットBFNの入力端NBNには、バイアス電圧VBが供給される。バイアス電圧VBの電圧値は、バッファユニットBFP及びBFNの各々の電源電圧と基準電位との間の値である。バッファユニットBFPの入力端NCPは、バッファユニットBFNの入力端NCXNに接続される。バッファユニットBFPの入力端NCXPは、バッファユニットBFNの入力端NCNに接続される。
【0063】
バッファユニットBFPの出力端NOPからは、電圧VOPが出力される。バッファBFが第1段バッファBF_a~BF_dの場合、電圧VOPはそれぞれ、電圧VOP_a~VOP_dである。バッファBFが第2段バッファBF_0~BF_7の場合、電圧VOPはそれぞれ、電圧VOP_0~VOP_7である。
【0064】
バッファユニットBFNの出力端NONからは、電圧VONが出力される。バッファBFが第1段バッファBF_a~BF_dの場合、電圧VONはそれぞれ、電圧VON_a~VON_dである。バッファBFが第2段バッファBF_0~BF_7の場合、電圧VONはそれぞれ、電圧VON_0~VON_7である。
【0065】
図5は、実施形態に係るADコンバータに含まれるバッファの構成の一例を示す回路図である。
図5では、
図4で示されたバッファユニットBFP及びBFNの回路構成の詳細が示される。
【0066】
バッファユニットBFP及びBFNは、差動信号が入力されるバッファである。バッファユニットBFP及びBFNの各々は、ソースフォロワである。具体的には、バッファユニットBFPは、トランジスタM1、M2、M3、M4、M5、M6、及びM7、キャパシタC1及びC2、抵抗R1、電流源I1、負荷Z1、並びにノードN1及びN2を含む。バッファユニットBFNは、トランジスタM8、M9、M10、M11、M12、M13、及びM14、キャパシタC3及びC4、抵抗R2、電流源I2、負荷Z2、並びにノードN3及びN4を含む。トランジスタM1、M4、M5、M8、M11、及びM12は、N導電型のMOSFETである。トランジスタM2、M3、M6、M7、M9、M10、M13、及びM14は、P導電型のMOSFETである。トランジスタM1~M7はそれぞれ、トランジスタM8~M14と同等の特性を有する。キャパシタC1及びC3は、同等の特性を有する。キャパシタC2及びC4は、同等の特性を有する。抵抗R1及びR2は、同等の特性を有する。電流源I1及びI2は、同等の特性を有する。負荷Z1及びZ2は、同等の特性を有する。
【0067】
まず、バッファユニットBFPの回路構成について説明する。
【0068】
トランジスタM1は、バッファユニットBFPにおけるメインのソースフォロワである。トランジスタM1は、入力端NCPに接続される第1端と、出力端NOPに接続される第2端と、入力端NIPに接続される制御端と、を有する。
【0069】
トランジスタM2は、入力端NCPに接続される第1端と、ノードN1に接続される第2端と、出力端NOPに接続される制御端と、を有する。
【0070】
トランジスタM3は、電圧AVDDが供給される第1端と、入力端NCPに接続される第2端と、ノードN2に接続される制御端と、を有する。電圧AVDDは、バッファBFを駆動する電源電圧である。
【0071】
トランジスタM4及びM5は、カレントミラーを構成する。トランジスタM4は、出力端NOPに接続される第1端と、接地される第2端と、ノードN1に接続される制御端と、を有する。トランジスタM5は、ノードN1に接続される第1端及び制御端と、接地される第2端と、を有する。
【0072】
トランジスタM6は、電圧AVDDが供給される第1端と、出力端NOPに接続される第2端と、入力端NCPに接続される制御端と、を有する。
【0073】
トランジスタM7は、電圧AVDDが供給される第1端と、出力端NOPに接続される第2端と、入力端NIXPに接続される制御端と、を有する。
【0074】
抵抗R1は、配線抵抗である。抵抗R1は、ノードN2に接続される第1端と、入力端NBPに接続される第2端と、を有する。
【0075】
キャパシタC1は、ノードN2に接続される第1端と、入力端NCXPに接続される第2端と、を有する。
【0076】
キャパシタC2は、入力端NCPに接続される第1端と、出力端NOPに接続される第2端と、を有する。
【0077】
電流源I1は、出力端NOPに接続される入力端と、接地される出力端と、を有する。
【0078】
負荷Z1は、出力端NOPに接続される第1端と、接地される第2端と、を有する。
【0079】
次に、バッファユニットBFNの回路構成について説明する。
【0080】
トランジスタM8は、バッファユニットBFNにおけるメインのソースフォロワである。トランジスタM8は、入力端NCNに接続される第1端と、出力端NONに接続される第2端と、入力端NINに接続される制御端と、を有する。
【0081】
トランジスタM9は、入力端NCNに接続される第1端と、ノードN3に接続される第2端と、出力端NONに接続される制御端と、を有する。
【0082】
トランジスタM10は、電圧AVDDが供給される第1端と、入力端NCNに接続される第2端と、ノードN4に接続される制御端と、を有する。
【0083】
トランジスタM11及びM12は、カレントミラーを構成する。トランジスタM11は、出力端NONに接続される第1端と、接地される第2端と、ノードN3に接続される制御端と、を有する。トランジスタM12は、ノードN3に接続される第1端及び制御端と、接地される第2端と、を有する。
【0084】
トランジスタM13は、電圧AVDDが供給される第1端と、出力端NONに接続される第2端と、入力端NCNに接続される制御端と、を有する。
【0085】
トランジスタM14は、電圧AVDDが供給される第1端と、出力端NONに接続される第2端と、入力端NIXNに接続される制御端と、を有する。
【0086】
抵抗R2は、配線抵抗である。抵抗R2は、ノードN4に接続される第1端と、入力端NBNに接続される第2端と、を有する。
【0087】
キャパシタC3は、ノードN4に接続される第1端と、入力端NCXNに接続される第2端と、を有する。
【0088】
キャパシタC4は、入力端NCNに接続される第1端と、出力端NONに接続される第2端と、を有する。
【0089】
電流源I2は、出力端NONに接続される入力端と、接地される出力端と、を有する。
【0090】
負荷Z2は、出力端NONに接続される第1端と、接地される第2端と、を有する。
【0091】
1.5 実施形態に係る効果
高速に動作するTI-ADC20を実現するためには、電圧VIPに対する電圧VOPのゲイン(以下、単に“ゲイン”と呼ぶ)が0dB以上となる帯域幅(以下、単に“帯域幅”と呼ぶ)を広く確保できるバッファBFが要求される。具体的には、64GS/sのサンプリングレートが要求されるTI-ADC20では、第1段バッファBF_a~BF_dの帯域幅は、例えば、32GHz以上であることが望ましい。
【0092】
実施形態によれば、トランジスタM1は、バッファユニットBFPにおけるメインのソースフォロワとして機能する。トランジスタM3は、バッファユニットBFPに流れる直流電流の大きさを決定する素子として機能する。トランジスタM4は、トランジスタM1を流れる直流電流の大きさを決定する素子として機能する。トランジスタM5は、トランジスタM4とカレントミラーを構成することにより、トランジスタM2を流れる直流電流の大きさを決定する素子として機能する。これにより、トランジスタM2及びM5は、トランジスタM1のドレイン-ソース間の電圧を一定にしつつ、ゲイン及び線形性を改善する素子として機能することができる。したがって、AFE10内のCTLE及びVGAにおける補償機能の負荷を軽減することができる。
【0093】
同様に、トランジスタM8は、バッファユニットBFNにおけるメインのソースフォロワとして機能する。トランジスタM10は、バッファユニットBFNに流れる直流電流の大きさを決定する素子として機能する。トランジスタM11は、トランジスタM8を流れる直流電流の大きさを決定する素子として機能する。トランジスタM12は、トランジスタM11とカレントミラーを構成することにより、トランジスタM9を流れる直流電流の大きさを決定する素子として機能する。これにより、トランジスタM9及びM12は、トランジスタM8のドレイン-ソース間の電圧を一定にしつつ、電圧VINに対する電圧VONのゲイン及び線形性を改善する素子として機能することができる。このため、AFE10内のCTLE及びVGAにおける補償機能の負荷を軽減することができる。
【0094】
なお、高周波数帯域では、配線抵抗である抵抗R1及びR2が、それぞれトランジスタM3の容量及びトランジスタM10の容量とカップリングすることにより、極(pole)が形成される場合がある。極が形成される場合、高周波数帯域におけるゲイン特性が劣化してしまうため、好ましくない。実施形態によれば、キャパシタC1は、入力端NCXPを介して入力端NCNに接続される第1端と、ノードN2に接続される第2端と、を有する。キャパシタC3は、入力端NCXNを介して入力端NCPに接続される第1端と、ノードN4に接続される第2端と、を有する。これにより、抵抗R1及びトランジスタM3の容量に起因する高周波数帯域におけるゲイン特性の劣化、並びに抵抗R2及びトランジスタM10の容量に起因する高周波数帯域におけるゲイン特性の劣化を抑制することができる。したがって、バッファBFの帯域幅を伸ばすことができる。
【0095】
また、トランジスタM7は、電圧AVDDが供給される第1端と、出力端NOPに接続される第2端と、電圧VINが供給される制御端と、を有する。電流源I1は、出力端NOPに接続される入力端と、接地される出力端と、を有する。トランジスタM14は、電圧AVDDが供給される第1端と、出力端NONに接続される第2端と、電圧VIPが供給される制御端と、を有する。電流源I2は、出力端NONに接続される入力端と、接地される出力端と、を有する。これにより、トランジスタM7及び電流源I1の組、並びにトランジスタM14及び電流源I2の組は、差動アンプ(differential amplifier)として機能することができる。このため、周波数帯域全域に対してゲイン特性を改善することができる。したがって、AFE10内のCTLE及びVGAにおける補償機能の負荷を軽減することができると共に、バッファBFの帯域幅を伸ばすことができる。
【0096】
また、トランジスタM6は、電圧AVDDが供給される第1端と、出力端NOPに接続される第2端と、入力端NCPに接続される制御端と、を有する。トランジスタM13は、電圧AVDDが供給される第1端と、出力端NONに接続される第2端と、入力端NCNに接続される制御端と、を有する。これにより、トランジスタM6及びM13は、反転アンプ(inverting amplifier)として機能することができる。このため、電圧VOP及びVONの出力抵抗を低減することができると共に、特に高周波数帯域におけるゲイン特性を改善することができる。したがって、バッファBFの帯域幅を伸ばすことができる。
【0097】
また、キャパシタC2は、入力端NCPに接続される第1端と、出力端NOPに接続される第2端と、を有する。キャパシタC4は、入力端NCNに接続される第1端と、出力端NONに接続される第2端と、を有する。これにより、特に高周波数帯域におけるゲイン特性を改善することができる。したがって、バッファBFの帯域幅を伸ばすことができる。
【0098】
2. 変形例等
なお、実施形態は、上述の例に限らず、種々の変形が適用され得る。
【0099】
上述した実施形態では、バッファBFにおけるメインのソースフォロワにN導電型のMOSFETが適用される場合について説明したが、これに限られない。例えば、バッファBFにおけるメインのソースフォロワには、P導電型のMOSFETが適用されてもよい。
図6は、変形例に係るADコンバータに含まれるバッファの構成の一例を示す回路図である。
図6は、実施形態における
図5に対応する。
図6では、バッファユニットBFP’及びBFN’が示される。
【0100】
バッファユニットBFP’は、トランジスタM1’、M2’、M3’、M4’、M5’、M6’、及びM7’、抵抗R1’、キャパシタC1’及びC2’、電流源I1’、並びに負荷Z1’を含む。バッファユニットBFN’は、トランジスタM8’、M9’、M10’、M11’、M12’、M13’、及びM14’、抵抗R2’、キャパシタC3’及びC4’、電流源I2’、並びに負荷Z2’を含む。バッファユニットBFP’及びBFN’内のトランジスタM1’~M14’、抵抗R1’及びR2’、キャパシタC1’~C4’、電流源I1’及びI2’、並びに負荷Z1’及びZ2’はそれぞれ、
図5に示したバッファユニットBFP及びBFN内のトランジスタM1~M14、抵抗R1及びR2、キャパシタC1~C4、電流源I1及びI2、並びに負荷Z1及びZ2に対応する。バッファユニットBFP’及びBFN’の構成は、内部のトランジスタM1’~M14’の導電型、及び供給される電圧AVDD及びVSSの関係が、バッファユニットBFP及びBFNから反転している点を除き、バッファユニットBFP及びBFNの構成と同等である。このようなバッファユニットBFP’及びBFN’を用いた場合においても、バッファユニットBFP及びBFNと同等の効果を奏することができる。
【0101】
また、バッファBFが第1段バッファBF_a~BF_d、及び第2段バッファBF_0~BF_7の2段構成となっている場合、段毎に同じ導電型のバッファBFが適用されてもよいし、異なる導電型のバッファBFが適用されてもよい。具体的には、例えば、第1段バッファBF_a~BF_dにおけるメインのソースフォロワにN導電型のMOSFETが適用され、第2段バッファBF_0~BF_7におけるメインのソースフォロワにP導電型のMOSFETが適用されてもよい。どの段にどちらの導電型のバッファBFを適用するかは、バッファBFに入力される電圧VIP及びVINの直流成分の大きさ、及び電圧AVDDに応じて決定することができる。
【0102】
また、上述した実施形態では、バッファユニットBFPがトランジスタM1~M7、抵抗R1、キャパシタC1及びC2、電流源I1、及び負荷Z1を含み、バッファユニットBFNがトランジスタM8~M14、抵抗R2、キャパシタC3及びC4、電流源I2、及び負荷Z2を含む場合について説明したが、これに限られない。例えば、バッファユニットBFP及びBFNはそれぞれ、キャパシタC1及びC3を含まない構成であってもよい。キャパシタC1及びC3を含まない構成の場合、入力端NCPと入力端NCXNとの間、及び入力端NCXPと入力端NCNとの間は、それぞれ接続されない。また、例えば、バッファユニットBFP及びBFNはそれぞれ、トランジスタM7及び電流源I1、並びにトランジスタM14及び電流源I2を含まない構成であってもよい。トランジスタM7及び電流源I1、並びにトランジスタM14及び電流源I2を含まない構成の場合、入力端NIPと入力端NIXNとの間、及び入力端NIXPと入力端NINとの間は、それぞれ接続されない。また、例えば、バッファユニットBFP及びBFNはそれぞれ、トランジスタM6及びM13を含まない構成であってもよい。また、例えば、バッファユニットBFP及びBFNはそれぞれ、キャパシタC2及びC4を含まない構成であってもよい。
【0103】
また、上述した実施形態では、2段構成のバッファを用いてTI-ADC20に入力される信号を生成する場合について説明したが、これに限られない。TI-ADC20に入力される信号は、1段構成のバッファによって生成されてもよいし、3段以上の構成のバッファによって生成されてもよい。
【0104】
なお、上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られるものではない。
[付記1]
第1信号が入力される第1入力端と、第1電圧が供給される第2入力端と、第2信号が出力される第1出力端と、を有する第1バッファを備え、
上記第1バッファは、
第1ノードに接続される第1端と、上記第1出力端に接続される第2端と、上記第1入力端に接続される制御端と、を有する第1トランジスタと、
上記第1ノードに接続される第1端と、第2ノードに接続される第2端と、上記第1出力端に接続される制御端と、を有する第2トランジスタと、
第2電圧が供給される第1端と、上記第1ノードに接続される第2端と、上記第2入力端に接続される制御端と、を有する第3トランジスタと、
上記第1出力端に接続される第1端と、第3電圧が供給される第2端と、上記第2ノードに接続される制御端と、を有する第4トランジスタと、
上記第2ノードに接続される第1端及び制御端と、上記第3電圧が供給される第2端と、を有する第5トランジスタと、
を含む、半導体集積回路。
[付記2]
上記第1トランジスタ、上記第4トランジスタ、及び上記第5トランジスタは、第1導電型を有し、
上記第2トランジスタ、及び上記第3トランジスタは、上記第1導電型と異なる第2導電型を有する、
付記1記載の半導体集積回路。
[付記3]
上記第1導電型は、N導電型であり、
上記第2導電型は、P導電型である、
付記2記載の半導体集積回路。
[付記4]
上記第2電圧は、上記第3電圧より高い、
付記3記載の半導体集積回路。
[付記5]
上記第1導電型は、P導電型であり、
上記第2導電型は、N導電型である、
付記2記載の半導体集積回路。
[付記6]
上記第3電圧は、上記第2電圧より高い、
付記5記載の半導体集積回路。
[付記7]
上記第1バッファは、ソースフォロワである、
付記1記載の半導体集積回路。
[付記8]
上記第1信号と差動信号を構成する第3信号が入力される第3入力端と、上記第1電圧が供給される第4入力端と、上記第2信号と差動信号を構成する第4信号が出力される第2出力端と、を有する第2バッファを更に備え、
上記第2バッファは、
第3ノードに接続される第1端と、上記第2出力端に接続される第2端と、上記第3入力端に接続される制御端と、を有する第8トランジスタと、
上記第3ノードに接続される第1端と、第4ノードに接続される第2端と、上記第2出力端に接続される制御端と、を有する第9トランジスタと、
上記第2電圧が供給される第1端と、上記第3ノードに接続される第2端と、上記第4入力端に接続される制御端と、を有する第10トランジスタと、
上記第2出力端に接続される第1端と、上記第3電圧が供給される第2端と、上記第4ノードに接続される制御端と、を有する第11トランジスタと、
上記第4ノードに接続される第1端及び制御端と、上記第3電圧が供給される第2端と、を有する第12トランジスタと、
を含む、
付記1記載の半導体集積回路。
[付記9]
第1クロック信号に基づいて上記第2信号及び上記第4信号から第1ビット列を判定する第1コンバータと、
上記第1クロック信号から第1位相シフトした第2クロック信号に基づいて上記第2信号及び上記第4信号から第2ビット列を判定する第2コンバータと、
を更に備えた、
付記8記載の半導体集積回路。
[付記10]
上記第1コンバータ及び上記第2コンバータの各々は、逐次比較型のADコンバータである、
付記9記載の半導体集積回路。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0106】
1…通信システム
2…送信装置
3…伝送路
4…受信装置
10…AFE
20…TI-ADC
21…SFE
22…SAR-ADC
30…VREFGEN
40…DSP
50…CDR
BF…バッファ
BFP,BFN…バッファユニット
M1,M2,M3,M4,M5,M6,M7,M8,M9,M10,M11,M12,M13,M14…トランジスタ
C1,C2,C3,C4…キャパシタ
R1,R2…抵抗
I1,I2…電流源
Z1,Z2…負荷