IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

特開2024-131180生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラム
<>
  • 特開-生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラム 図1
  • 特開-生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラム 図2
  • 特開-生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラム 図3
  • 特開-生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラム 図4
  • 特開-生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラム 図5
  • 特開-生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラム 図6
  • 特開-生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラム 図7
  • 特開-生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラム 図8
  • 特開-生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラム 図9
  • 特開-生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラム 図10
  • 特開-生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラム 図11
  • 特開-生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131180
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A61B10/00 305B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041282
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有薗 大輔
(57)【要約】
【課題】予測対象者によらず、高い精度で生理日を予測することができる生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラムを提案すること。
【解決手段】本開示に係る生理日予測装置は、予測対象者であるユーザから、生理周期間における基礎体温データを取得する取得部と、取得された前記基礎体温データが示す傾向が、予め定義された複数のタイプのいずれかに分類されるかを判定する判定部と、前記判定の結果に応じて、前記複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルのいずれかを選択し、前記基礎体温データに基づいて、前記ユーザの生理日を予測する予測部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予測対象者であるユーザから、生理周期間における基礎体温データを取得する取得部と、
取得された前記基礎体温データが示す傾向が、予め定義された複数のタイプのいずれかに分類されるかを判定する判定部と、
前記判定の結果に応じて、前記複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルのいずれかを選択し、前記基礎体温データに基づいて、前記ユーザの生理日を予測する予測部と、
を備えることを特徴とする生理日予測装置。
【請求項2】
前記予測部は、
前記取得された基礎体温データが示す傾向を判定することができない場合、前記複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルのいずれかを選択せず、汎用的に学習された他の学習済モデルを選択して、前記ユーザの生理日を予測する、
ことを特徴とする請求項1に記載の生理日予測装置。
【請求項3】
前記複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルのいずれかを選択して予測が行われたのち、前記ユーザの基礎体温データを用いて、当該予測に用いられた学習済モデルを当該ユーザの傾向に即して再学習する学習部、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の生理日予測装置。
【請求項4】
前記判定部は、
前記ユーザから予測に用いるための基礎体温データを取得した場合に、当該ユーザに即して再学習された個別予測モデルがある場合には、前記取得された基礎体温データが示す傾向が前記タイプのいずれかに分類されるかを判定せず、当該個別予測モデルがない場合には、前記取得された基礎体温データが示す傾向が前記タイプのいずれかに分類されるかを判定し、
前記予測部は、
前記ユーザに即して再学習された個別予測モデルがある場合には、当該個別予測モデルを選択して前記ユーザの生理日を予測し、前記個別予測モデルがない場合には、前記判定されたタイプに対応する学習済モデルを選択し、当該ユーザの生理日を予測する
ことを特徴とする請求項3に記載の生理日予測装置。
【請求項5】
前記複数の学習済モデルは、
学習データである基礎体温データを、基礎体温の日々の推移を示した波形形状の類似性に基づきクラスタリングし、当該クラスタリングされた基礎体温データを前記タイプごとに分類された学習データとして用いて機械学習されたモデルである、
ことを特徴とする請求項1に記載の生理日予測装置。
【請求項6】
コンピュータが、
予測対象者であるユーザから、生理周期間における基礎体温データを取得し、
取得された前記基礎体温データが示す傾向が、予め定義された複数のタイプのいずれかに分類されるかを判定し、
前記判定の結果に応じて、前記複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルのいずれかを選択し、前記基礎体温データに基づいて、前記ユーザの生理日を予測する、
ことを含むことを特徴とする生理日予測方法。
【請求項7】
コンピュータを、
予測対象者であるユーザから、生理周期間における基礎体温データを取得する取得部と、
取得された前記基礎体温データが示す傾向が、予め定義された複数のタイプのいずれかに分類されるかを判定する判定部と、
前記判定の結果に応じて、前記複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルのいずれかを選択し、前記基礎体温データに基づいて、前記ユーザの生理日を予測する予測部と、
を備える生理日予測装置として機能させることを特徴とする生理日予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生理周期(生理日)を予測することで、女性は、排卵日を正確に推し量り妊娠の成功率を高めたり、月次の体調管理を適切に行ったりすることができる。このことから、生理周期を正確に予測したいというニーズは高い。
【0003】
例えば、体温データと日との関係を近似する関数の式を用いて、生理周期分に満たない体温データに基づいて排卵日を推定する技術が知られている(下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/079526号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、生理周期は個人差が大きく、また、基礎体温データの傾向にも個人差がある。このため、例え多くのサンプルから生理周期を予測する式(モデル)を生成しても、それを予測対象者に適用できない場合がある。すなわち、予測対象者によっては、予測式の精度が低くなってしまい、生理日や生理周期を正確に予測できない場合がある。
【0006】
そこで、本開示では、予測対象者によらず、高い精度で生理日を予測することのできる生理日予測装置、生理日予測方法および生理日予測プログラムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示に係る生理日予測装置は、予測対象者であるユーザから、生理周期間における基礎体温データを取得する取得部と、取得された前記基礎体温データが示す傾向が、予め定義された複数のタイプのいずれかに分類されるかを判定する判定部と、前記判定の結果に応じて、前記複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルのいずれかを選択し、前記基礎体温データに基づいて、前記ユーザの生理日を予測する予測部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、予測対象者によらず、高い精度で生理日を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る生理日予測処理の流れを模式的に示す図である。
図2】実施形態に係るモデル生成処理の一例を示す図(1)である。
図3】実施形態に係るモデル生成処理の一例を示す図(2)である。
図4】実施形態に係るモデル生成処理の一例を示す図(3)である。
図5】実施形態に係るモデル生成処理の一例を示す図(4)である。
図6】実施形態に係るモデル生成処理の一例を示す図(5)である。
図7】実施形態に係る予測処理の手順を示すフローチャートである。
図8】実施形態に係る予測装置の構成例を示す図である。
図9】実施形態に係る予測処理を説明するための図である。
図10】実施形態に係る判定処理を説明するための図(1)である。
図11】実施形態に係る判定処理を説明するための図(2)である。
図12】予測装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0011】
(1.実施形態)
(1-1.実施形態に係る生理日予測処理の概要)
図1は、実施形態に係る生理日予測処理の流れを模式的に示す図である。実施形態に係る生理日予測処理は、図1に示す生理日予測システム1により実行される。生理日予測システム1は、本開示に係る生理日予測装置の一例である計測デバイス10と、予測装置100と、ユーザ端末200とを含む。生理日予測システム1に含まれる各装置は、無線通信等により相互にデータの送受信が可能である。
【0012】
計測デバイス10は、生理日予測処理の対象となるユーザ15によって利用される装置であって、ユーザ15の生体情報を測定する機能を有する測定機器である。計測デバイス10は、いわゆるウェアラブルデバイスであり、ユーザの下着など衣服内に収納され、連続的もしくは定期的(例えば毎朝決まった時刻)にユーザの生体情報を測定する。具体的には、計測デバイス10は、ユーザ15の基礎体温を測定し、測定した日々の基礎体温を保持する。なお、基礎体温とは生命維持に必要な最小限のエネルギーしか消費していない安静状態にあるときの体温であり、一般的には、朝の起床時に寝たままの状態で婦人体温計で測定された体温をいう。計測デバイス10は、基礎体温そのものを測定してもよいし、ユーザの皮膚温度を測定してもよい。例えば、計測デバイス10は、外気温と皮膚温度とから導出される深部体温から基礎体温の近似値を算出し、算出したデータを測定してもよい。また、計測デバイス10は、生体情報として、ユーザの心拍数等のデータを併せて計測してもよい。
【0013】
ユーザ端末200は、ユーザ15によって利用される端末装置であり、例えばスマートフォンやタブレット端末等である。例えば、ユーザ端末200には、計測デバイス10を制御するためのアプリがインストールされる。ユーザ15は、ユーザ端末200上で動作するアプリを利用することで、計測デバイス10を制御したり、計測デバイス10が測定した基礎体温データを参照したりできる。また、ユーザ端末200は、計測デバイス10が計測した基礎体温データを取得し、取得した基礎体温データを予測装置100に送信する。また、ユーザ端末200は、予測装置100が予測した結果を予測装置100から受信する。ユーザ15は、ユーザ端末200を介して、予測装置100が予測した結果を参照できる。なお、上述のように、計測デバイス10が、皮膚温度と外気温のデータを用いて基礎体温に近いデータを演算により算出した結果を測定する場合には、基礎体温データとは、かかる算出結果を収集したデータであってもよい。すなわち、基礎体温データとは、必ずしも基礎体温を蓄積した一連のデータに限らず、基礎体温と同等の温度変化パターンを持つデータであればよい。
【0014】
予測装置100は、計測デバイス10が計測した基礎体温データを取得し、取得した基礎体温データに基づいて、ユーザ15の生理日や生理周期を予測する処理を実行する情報処理装置である。例えば、予測装置100は、クラウドサーバ等である。
【0015】
なお、実施形態の説明では、ユーザ15とは、予測装置100に基礎体温データを送信し、送信したデータに基づいて生理日に関する予測結果を取得するユーザを総称するものである。実施形態では図示しないが、計測デバイス10を利用するユーザは、ユーザ15の他に多数存在するものとする。予測装置100は、これら多数のユーザから基礎体温データを随時取得し、取得したデータを学習データとして、後述する各種の予測モデルを生成するものとする。以下の説明では、ユーザ15と他のユーザを区別する必要のない場合、単にユーザと総称する。
【0016】
上述のように、予測装置100は、ユーザ15の生理日、すなわち生理周期を予測する。生理周期は、排卵に伴い分泌されるホルモン等の影響を受けることで高温期に入り、その後、生理(月経)開始日以降に低温期を迎えるという周期性を有する。このため、基礎体温データを統計的に処理することにより、生理周期のパターンをある程度予測することが可能である。
【0017】
この点について、基礎体温は、必ずしも正確に測定されるとは限らない。通常、基礎体温は、起床時にユーザが自ら体温計を用いて測定するものであるが、ユーザが毎日同じ時間帯に測定することは難しく、測定忘れや、測定の状況によって信頼度が低いデータが取得される場合がある。なお、計測デバイス10のような専用のウェアラブルデバイスを用いて測定を行うことで、信頼度の高いデータを継続的に取得することが可能となる。
【0018】
しかし、生理周期において取得される基礎体温データは、個人ごとに異なる傾向を有するものであり、必ずしも高温期および低温期という2相性を有するデータが取得されるとは限らない。このため、2相性の傾向を有する基礎体温データを学習データとして生成された学習済モデルを用いて、2相性の傾向を有さないユーザの予測を行うと、生理日や生理周期の予測精度が低下するおそれがある。すなわち、生理日予測処理においては、予測対象者から取得される基礎体温データの傾向によらずに高い精度で生理日予測を行うという課題が存在する。
【0019】
そこで、実施形態に係る予測装置100は、以下に説明する構成を有し、上記課題を解決する。具体的には、予測装置100は、予測対象者であるユーザ15から取得された基礎体温データが示す傾向が、予め複数に分類されたタイプのいずれかに分類されるかを判定する。そして、予測装置100は、判定結果に応じて、複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルのいずれかを選択し、基礎体温データに基づいてユーザ15の生理日を予測する。
【0020】
すなわち、予測装置100は、生理日予測を行うための予測モデルとして、基礎体温データの傾向に応じて予め複数のモデルを用意しておき、ユーザ15から得られた基礎体温データの傾向に合わせて、1つのモデルを選択して予測処理を行う。これにより、予測装置100は、予測対象者の基礎体温データを、その傾向と類似する学習データによって学習されたモデルを用いて予測を行うので、高い精度での予測が可能となる。
【0021】
なお、生理日を予測する学習済モデルは、通常、過去に取得された1周期分の基礎体温データを学習データとして生成される。ただし、機械学習の手法によっては、1周期分の基礎体温データを用いなくても生理日を予測する学習済モデルを生成することもできる。例えば、回帰予測を用いて、7日後が生理日であることを予測させる場合は、生理日の7日前までのデータがあればよく、3日後が生理日であることを予測させる場合は、生理日の3日前までのデータがあればよい。ユーザ15から取得された基礎体温データが1周期分のデータを満たしていると、予測装置100は、当該モデルを用いてより正確な予測を行うことができるが、1周期分のデータに満たない場合は、正確な予測を行うことは困難な場合もある。
【0022】
そこで、予測装置100は、このように1周期分に満たないデータが取得された場合には、傾向別に学習されていない汎用的なモデルを適用することが好ましい。さらに、予測装置100は、予測処理の結果に応じて、予測に用いたユーザ15の基礎体温データを用いてモデルを再学習することで、ユーザ15に即した個別予測モデルを生成することもできる。そして、予測装置100は、汎用的なモデル、傾向別のモデル、個別予測モデルを、ユーザ15の状況に合わせて段階的もしくは選択的に利用することで、基礎体温データの傾向によらず、高い予測精度を実現可能とする。なお、予測装置100は、1周期分に満たないデータが取得された場合であっても、例えばデータが生理周期の約9割を満たしており、予測精度に影響を与えないと想定される場合、複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルのいずれかを選択してもよい。
【0023】
以下、図1から図6を用いて、生理日予測システム1による予測処理の概要を説明する。
【0024】
実施形態に係る生理日予測処理において、計測デバイス10は、ユーザの基礎体温データを継続的に計測する(ステップS1)。計測デバイス10は、計測したデータを、逐次もしくは定期的に、ユーザ端末200に送信する(ステップS2)。
【0025】
ユーザ端末200は、計測デバイス10が計測したデータを、逐次もしくは定期的に、予測装置100に送信する(ステップS3)。
【0026】
ユーザ端末200が予測装置100に送信する基礎体温データは、例えば図1に示すグラフ30のように、基礎体温の数値と測定日とがプロットされることで、波形として示すことが可能である。なお、ユーザ15は、生理日が認識できた場合、生理日がいつであったかを示すデータを登録することで、生理日がいつであったかを基礎体温データに含めることができる。
【0027】
例えば、グラフ30は、ユーザ15の生理1周期分の基礎体温データを示す。なお、グラフ30は、前半が低温期、後半が高温期を示した、2相性の傾向を有するデータである。
【0028】
予測装置100は、取得した基礎体温データ(計測デバイス10による計測データ)をデータベース40に蓄積するとともに、取得した基礎体温データに基づき、ユーザ15の次の生理日を予測する(ステップS4)。
【0029】
上述のように、予測装置100は、複数の学習済モデルを有しており、ユーザ15から基礎体温データを取得した際の状況や、基礎体温データの傾向に応じて、予測に用いる学習済モデルを選択して、予測処理を行う。
【0030】
予測装置100は、予測モデルから予測結果を出力する。例えば、予測装置100は、取得した測定データから導出される、ユーザ15の次の生理開始日や排卵日を予測結果として出力する。予測装置100は、出力した結果をユーザ端末200に送信する(ステップS5)。このとき、予測装置100は、ユーザ端末200のアプリで表示される内容を制御してもよい。例えば、予測装置100は、「あなたの次の生理開始日は「XX月YY日」です」といったメッセージをアプリ内に表示するよう制御する。
【0031】
このように、予測装置100は、ユーザ15から基礎体温データを取得し、取得したデータに基づいて、ユーザ15の次の生理日や生理周期等を予測する。計測デバイス10は日々継続的に基礎体温データを取得するので、ユーザ15は、計測デバイス10を装着して就寝するのみで、継続的に、生理周期等の情報を予測装置100から受けとることができる。
【0032】
次に、図2以下を用いて、予測装置100が有する複数の学習済モデルについて説明する。
【0033】
図2は、実施形態に係るモデル生成処理の一例を示す図(1)である。図2では、予測装置100が、学習データの傾向によらず、全てのユーザから取得された基礎体温データを用いて学習し、汎用的に利用可能な予測モデル(以下、「第1モデル」と称する)を生成する例を示す。
【0034】
予測装置100は、グラフ301、グラフ302、グラフ303、グラフ304に示される基礎体温データのように、2相性を示すもの、示さないものなど、あらゆるデータを学習データとして、第1モデル50を生成する。例えば、グラフ301等のデータは、1周期分の基礎体温データと生理日(生理周期日数)とが含まれるデータである。
【0035】
なお、予測装置100が生成するモデルは、入力された基礎体温データに基づいて生理日を予測するモデルであれば、どのような態様のモデルであってもよいし、どのような既知の手法で学習されてもよい。例えば、モデルの一例は、予測対象者から、ある日数分の基礎体温データが入力された場合に、当該予測対象者の次の生理日を出力するモデルである。
【0036】
図2で示す第1モデル50は、例えば、予測対象者から取得された基礎体温データが1周期分に満たず、2相性などの傾向が判定できない場合の予測処理に用いられる。
【0037】
次に、図3以下を用いて、傾向別のモデル生成について説明する。図3は、実施形態に係るモデル生成処理の一例を示す図(2)である。図3では、予測装置100が、2相性の傾向にある基礎体温データを用いて学習し、2相性の傾向にある基礎体温データが取得された場合に選択される予測モデル(以下、「第2モデルAタイプ」と称する)を生成する例を示す。
【0038】
図3から図5に示す第2モデルの生成にあたっては、予測装置100は、ユーザから学習データとなる基礎体温データを取得した場合に、基礎体温データがAタイプ(2相性が明確なデータ)か、後述するBタイプ(低温期に特徴を有するデータ)、Cタイプ(傾向が明確でないデータ)に分類する。分類についての詳細は後述するが、予測装置100は、予め波形が示す傾向に応じて複数の分類(実施形態ではA、B、Cの3タイプ)を定義しておき、学習データがいずれのタイプに分類されるかを判定する。
【0039】
図3の例では、予測装置100は、グラフ305、グラフ306、グラフ307に示される基礎体温データのように、低温期および高温期を示した2相性が明確なデータ(Aタイプ)を学習データとして、第2モデル60A(Aタイプ)を生成する。
【0040】
図3で示す第2モデル60Aは、例えば、予測対象者から取得された基礎体温データが1周期分のデータであり、かつ、2相性が明らかなデータであると判定された場合に選択され、当該データの予測処理に用いられる。
【0041】
次に、図4を用いて、第2モデルの他の例について説明する。図4は、実施形態に係るモデル生成処理の一例を示す図(3)である。図4では、予測装置100が、2相性の傾向にある基礎体温データであって、そのうち、低温期にピークを一つ有するような特徴がみられるデータを用いて学習し、当該傾向にある基礎体温データが取得された場合に選択される予測モデル(以下、「第2モデルBタイプ」と称する)を生成する例を示す。
【0042】
図4の例では、予測装置100は、グラフ310、グラフ311、グラフ312に示される基礎体温データのように、低温期および高温期を示した2相性があり、かつ、低温期に特徴がみられるデータ(Bタイプ)を学習データとして、第2モデル60B(Bタイプ)を生成する。
【0043】
図4で示す第2モデル60Bは、例えば、予測対象者から取得された基礎体温データが1周期分のデータであり、かつ、低温期に一つのピークが存在するような2相性のあるデータであると判定された場合に選択され、当該データの予測処理に用いられる。
【0044】
次に、図5を用いて、第2モデルの他の例について説明する。図5は、実施形態に係るモデル生成処理の一例を示す図(4)である。図5では、予測装置100が、2相性の傾向にない基礎体温データを用いて学習し、当該傾向にある基礎体温データが取得された場合に選択される予測モデル(以下、「第2モデルCタイプ」と称する)を生成する例を示す。
【0045】
図5の例では、予測装置100は、グラフ315、グラフ316、グラフ317に示される基礎体温データのように、低温期および高温期を示した2相性がみられないデータ(Cタイプ)を学習データとして、第2モデル60C(Cタイプ)を生成する。
【0046】
図5で示す第2モデル60Cは、例えば、予測対象者から取得された基礎体温データが1周期分のデータであり、かつ、低温期および高温期という2相性の傾向がみられないデータであると判定された場合に選択され、当該データの予測処理に用いられる。
【0047】
次に、図6を用いて、ユーザごとの個別予測を行うモデルの生成について説明する。図6は、実施形態に係るモデル生成処理の一例を示す図(5)である。図6では、予測装置100が、特定のユーザ(図6の例ではユーザ15)から取得された基礎体温データを用いて、既に存在するタイプ別予測モデル65を再学習し、当該ユーザ専用の予測モデル(以下、「第3モデル」と称する)を生成する例を示す。
【0048】
図6の例では、予測装置100は、タイプ別予測モデル65として、例えば図3から図5に示したような第2モデルを既に生成しているものとする。このとき、予測装置100は、ユーザ15から基礎体温データ320が取得された場合には、基礎体温データ320と類似する傾向にある学習データで学習された第2モデルを選択して予測を行うことになる。
【0049】
その後、予測装置100は、ユーザ15からフィードバックを受け、生理日の予測が実際の結果と一致していたか否かという結果を取得するものとする。上述のように、生理周期は人によって様々であるから、たとえ似た傾向にある学習データで生成された予測モデルを用いても、予測が外れることがありうる。予測が外れたというフィードバックを受けた場合、予測装置100は、当該第2モデルを元として、ユーザ15から取得可能な基礎体温データを用いて、再学習を行う。すなわち、予測装置100は、現状の第2モデルをユーザ15に即してチューニング(調整)することで、ユーザ15のみに適用可能な第3モデルを生成する。このとき、予測装置100は、追加する学習データとして、ユーザ15が自ら登録した生理日(生理周期)を正解データとして有する基礎体温データを用いる。これにより、予測装置100は、第2モデルよりもさらにユーザ15の傾向に特化した予測モデルである第3モデル70を生成することができる。なお、再学習の手法は、既知の種々の手法が適用可能である。
【0050】
以上のように、予測装置100は、生理日の予測に用いる第1モデル50および第2モデル60A、第2モデル60B、第2モデル60Cを予め生成する。また、予測装置100は、ユーザ15に対して予測精度を高める場合、ユーザ15に特化したモデルである第3モデル70を生成する。予測装置100は、これら複数の学習済モデルを用いることで、入力される基礎体温データの傾向に対応して学習されたモデルを選択して予測処理を行うことができるので、予測精度を高めることができる。また、予測装置100は、予測対象とする基礎体温データが1周期に満たない場合でも、1周期に満たない学習データも含めて学習した汎用モデルである第1モデル50を選択することで、予測処理を実行することができる。
【0051】
以上、図1から図6を用いて説明したように、実施形態に係る予測装置100は、ユーザ15から取得されるデータが示す傾向等に応じて、異なる予測モデルを選択して予測を行う。これにより、予測装置100は、個々のユーザに即した、正確な予測を行うことができる。
【0052】
(1-2.実施形態に係る生理日予測処理の手順)
上述した学習済モデルの選択と予測処理の流れについて、図7を用いて説明する。図7は、実施形態に係る予測処理の手順を示すフローチャートである。
【0053】
図7に示すように、予測装置100は、予測対象者であるユーザ15から、予測処理に用いられる基礎体温データを取得する(ステップS101)。
【0054】
予測装置100は、取得したデータに1周期分のデータが含まれているか否かを判定する(ステップS102)。例えば、予測装置100は、基礎体温データの集計日数が所定数以下(例えば27日以下など)であるか、あるいは、基礎体温データの波形分析等に基づいて、取得したデータが1周期分を満たすか否かを判定する。
【0055】
取得したデータが1周期分に満たない場合(ステップS102;No)、予測装置100は、波形による分類を行わず、汎用モデル(第1モデル50)を利用して、ユーザ15の次の生理日を予測する(ステップS103)。予測装置100は、予測を行った場合、予測結果をユーザ端末200に送信し、ユーザ15がアプリ上で予測結果を参照できるようにする。
【0056】
一方、取得したデータに1周期分のデータが含まれる場合(ステップS102;Yes)、予測装置100は、予測対象者用に生成された個別予測モデルが存在するか否かを判定する(ステップS104)。
【0057】
個別予測モデルがある場合(ステップS104;Yes)、予測装置100は、ユーザ15用の個別予測モデルを利用して予測処理を行う(ステップS105)。この場合、予測装置100は、取得したデータを用いて、当該個別予測モデルに対する再学習をさらに実行してもよい(ステップS106)。
【0058】
一方、個別予測モデルがない場合(ステップS104;No)、予測装置100は、取得したデータに基づいて、予測対象者のタイプを判定する(ステップS107)。例えば、予測装置100は、取得したデータの波形の類似性に基づいて、取得したデータが、図3から図5で示したような3つのタイプのうちいずれのタイプに該当するかを判定する。
【0059】
続けて、予測装置100は、取得したデータが該当したタイプ別予測モデルのいずれかを用いて、予測処理を実行する(ステップS108)。
【0060】
その後、予測装置100は、ユーザ15からのフィードバックに基づいて、予測と結果とが一致したか否かを判定する(ステップS109)。予測と結果とが一致しない場合(ステップS109;No)、ユーザ15と選択されたタイプ別予測モデルとが適応しない可能性があるため、予測装置100は、取得したデータを用いて、タイプ別予測モデルに対して追加学習(再学習)を実行する(ステップS110)。そして、予測装置100は、ユーザ15に対応した個別予測モデルを生成する(ステップS111)。このとき、予測装置100は、ステップS101で取得したデータのみならず、ユーザ15が有する他の測定データの送信をユーザ15に要求してもよい。これにより、予測装置100は、より多くのユーザ15の基礎体温データに基づいて再学習を行うことができるので、個別予測モデルの精度を向上させることができる。
【0061】
なお、予測と結果とが一致した場合(ステップS109;Yes)、選択されたタイプ別予測モデルとユーザ15との相性が適当であるとして、予測装置100は、個別予測モデルを生成しなくてもよい。
【0062】
なお、本実施形態では、予測対象者から取得したデータが1周期分以上か否かにより、汎用モデルを用いるかの選択をする例を示しているが、処理手順はこの例に限られなくてもよい。例えば、予測装置100は、データが1周期分のうち所定割合(9割以上など)を満たす場合には、かかるデータの傾向を判定したうえで、いずれかのタイプ別予測モデルを適用して予測を行ってもよい。
【0063】
(1-3.実施形態に係る予測装置の構成)
次に、実施形態に係る生理日予測処理を実行する予測装置100の構成について説明する。図8は、実施形態に係る予測装置100の構成例を示す図である。
【0064】
図8に示すように、予測装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。なお、予測装置100は、予測装置100を管理する管理者等から各種操作を受け付ける入力部(例えば、キーボードやマウス等)や、各種情報を表示するための表示部(例えば、液晶ディスプレイ等)を有してもよい。
【0065】
通信部110は、例えば、ネットワークインタフェースコントローラ(Network Interface Controller)等によって実現される。通信部110は、ネットワークN(例えばインターネット)と有線又は無線で接続され、ネットワークNを介して、計測デバイス10やユーザ端末200等との間で情報の送受信を行う。例えば、通信部110は、Wi-Fi(登録商標)、SIM(Subscriber Identity Module)、LPWA(Low Power Wide Area)等の通信規格もしくは通信技術を用いて、情報の送受信を行ってもよい。
【0066】
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部120は、計測データ記憶部121と、モデル記憶部122とを有する。
【0067】
計測データ記憶部121は、計測デバイス10を装着したユーザから取得された計測データを記憶する。すなわち、計測データ記憶部121は、予測モデルの学習に用いられる学習データである基礎体温データや、予測処理において予測モデルに入力される基礎体温データを記憶する。
【0068】
なお、基礎体温データは、原則として、生理期間1周期分のデータとなる。しかし、上述のように、予測装置100は、1周期に満たないデータであっても、予測モデルに入力されるデータとして利用可能である。
【0069】
この点について、図9を用いて説明する。図9は、実施形態に係る予測処理を説明するための図である。図9に示すグラフ330は、1周期分の基礎体温データを示す。ここで、ユーザからのデータ取得状況によっては、グラフ330のうち、部分データ340のように、1周期のうち一部だけのデータが取得される場合もある。例えば、ユーザが、計測デバイス10を利用し始めて生理1周期の日数を経ていない場合、部分データ340のようなデータがユーザ端末200から予測装置100に送信される。
【0070】
このような場合、予測装置100は、汎用モデルである第1モデル50を用いることで、部分データ340に基づいて、次の生理日を予測する。例えば、予測装置100は、部分データ340から、ある程度の体温の上昇もしくは下降の傾向に基づく特徴量が抽出可能であれば、予測モデルによる予測が可能である。なお、予測装置100は、予測モデルから出力された結果の信頼度を判定し、信頼度が所定基準に満たない場合、予測ができない旨をユーザに通知してもよい。この場合、予測装置100は、ユーザから送信される基礎体温データがある程度蓄積されるのを待って(例えば半周期以上のデータが蓄積されるまで等)、その後、予測処理を行ってもよい。
【0071】
モデル記憶部122は、予測装置100が利用する予測モデルを記憶する。例えば、モデル記憶部122は、収集された様々な基礎体温データを無作為に学習した第1モデル50や、波形が示すタイプごとに学習された第2モデル60A等や、ユーザごとに学習された第3モデル70等を記憶する。なお、予測装置100は、所定期間ごとや、学習データが所定量蓄積するたびに、モデル記憶部122に記憶された予測モデルを再学習し、更新してもよい。
【0072】
制御部130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって、予測装置100内部に記憶されたプログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、コントローラ(controller)であり、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0073】
図8に示すように、制御部130は、取得部131、判定部132、予測部133、学習部134および出力部135を含む。
【0074】
取得部131は、各種情報を取得する。例えば、取得部131は、計測デバイス10を利用するユーザから、生理周期間における基礎体温データを取得する。例えば、取得部131は、ユーザ端末200にインストールされたプログラム(アプリ)を制御し、基礎体温データがユーザ端末200に取得されたタイミングや、毎日の定時のタイミング等で、ユーザ端末200から基礎体温データを取得する。
【0075】
なお、取得部131は、1周期分の基礎体温データを取得するにあたり、ユーザによる手動により生理日が登録されたデータを取得してもよい。この場合、予測装置100は、生理日を正解とする教師データとして、当該基礎体温データを学習データとして用いることができる。取得部131は、ユーザが生理開始を観測したことを登録したタイミングで、所定量の測定データセット(例えば、1生理周期分の基礎体温データ)を取得するようにしてもよい。
【0076】
なお、取得部131は、基礎体温データ等に限らず、各ユーザの年齢や身長、体重など、生理周期に影響を与えると想定されるあらゆる身体情報を取得してもよい。取得部131は、これらの情報を、例えばアプリへのユーザ登録等を介してユーザから入力を受け付けることで取得する。また、取得部131は、計測デバイス10が体温以外の生体情報を計測可能な場合、当該生体情報を基礎体温データと併せて取得してもよい。
【0077】
判定部132は、予測対象者であるユーザから基礎体温データが取得された場合に、取得された基礎体温データが示す傾向が、予め定義された複数のタイプのいずれかに分類されるかを判定する。
【0078】
判定部132は、種々の既知の手法を用いて、基礎体温データが示す傾向を複数のタイプに分類することができる。この点について、図10および図11を用いて説明する。図10は、実施形態に係る判定処理を説明するための図(1)である。また、図11は、実施形態に係る判定処理を説明するための図(2)である。
【0079】
例えば、判定部132は、図10に示す波形Aと波形Bとの類似度を判定する場合、グラフ350に示すように、対応する各点iにおけるユークリッド距離(Euclidean Distance)やマンハッタン距離(Manhattan distance)を求める。そして、判定部132は、算出した距離に基づいて、波形Aと波形Bとの類似度を算出してもよい。
【0080】
あるいは、判定部132は、グラフ351に示すように、2つの時系列の各点(図10の例では点iおよび点(i+2))の距離(誤差の絶対値)を総当たりで求め、全て求めた上で2つの時系列が最短となる経路を見つける、DTW(Dynamic Time Warping)といった手法を用いてもよい。かかる手法によれば、判定部132は、時系列同士の長さや周期が違っても、波形Aと波形Bとの類似度を求めることができる。なお、かかる手法は例示であり、判定部132は、種々の異なる手法を用いて、基礎体温データを複数のタイプに分類することができる。
【0081】
判定部132は、上記手法に従い、基礎体温データを類似度に応じて分類する、いわゆるクラスタリングの手法を用いて、複数のタイプを定義する。このとき、判定部132は、例えば図11のグラフ360に示すように、各クラスタに属する多数の元データから、重心波形361を算出してもよい。例えば、判定部132は、予測対象者の基礎体温データが取得された場合、各クラスタ(タイプ)の重心波形361との類似度を求め、最も類似度が高いクラスタに当該予測対象者の基礎体温データを分類するよう判定する。
【0082】
なお、判定部132は、取得された基礎体温データに対応するユーザの個別予測モデルが存在する場合、取得された基礎体温データが示す傾向がいずれのタイプに分類されるかを判定しなくてもよい。この場合、後段の予測部133は、予測処理に個別予測モデルを用いるからである。
【0083】
予測部133は、判定部132による判定の結果に応じて、複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルのいずれかを選択し、当該基礎体温データに基づいて、予測対象者であるユーザ15の生理日を予測する。
【0084】
なお、この場合の複数の学習済モデルとは、図3から図5において示したように、学習データである基礎体温データを、基礎体温の日々の推移を示した波形形状の類似性に基づきクラスタリングし、クラスタリングされた基礎体温データをタイプごとに分類された学習データとして用いて機械学習されたモデルである。実施形態では、複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルとは、第2モデル60A、第2モデル60Bおよび第2モデル60Cである。なお、複数の学習済モデルは3種類とは限らず、波形を分類するクラスタリングの手法に応じて、予測装置100は、より多くの学習済モデルを生成してもよい。
【0085】
なお、予測部133は、取得された基礎体温データが示す傾向を判定部132が判定することができない場合、複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルのいずれかを選択せず、汎用的に学習された他の学習済モデルを選択して、ユーザ15の生理日を予測する。具体的には、予測部133は、汎用的に学習された第1モデル50を用いて、ユーザ15の生理日を予測する。
【0086】
また、予測部133は、ユーザ15に即して再学習された個別予測モデルがある場合には、個別予測モデルを選択してユーザ15の生理日を予測する。
【0087】
学習部134は、複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルのいずれかを選択して予測が行われたのち、ユーザ15の基礎体温データを用いて、予測に用いられた学習済モデルをユーザ15の傾向に即して再学習する。
【0088】
例えば、学習部134は、タイプ別の予測モデルを用いて予測が行われたのちに、ユーザ15から予測が外れた旨のフィードバックを受け取った場合に、ユーザ15の基礎体温データと、ユーザ15が登録した真の生理日とを学習データセットとして、タイプ別予測モデルを再学習する。すなわち、学習部134は、ユーザ15の基礎体温データが示す傾向に即した予測モデルを、ユーザ15用に生成する。
【0089】
出力部135は、予測部133によって予測された結果を出力する。例えば、出力部135は、予測結果をユーザ端末200に送信する。
【0090】
(2.実施形態の変形例)
上記実施形態では、本開示に係るユーザ端末200は、計測デバイス10が測定した基礎体温データを取得する例を示した。しかし、ユーザ端末200は、必ずしも計測デバイス10から基礎体温データを取得しなくてもよい。例えば、ユーザ端末200は、一般的な体温計を用いてユーザ15が取得した基礎体温データについて、ユーザ15から直接入力を受け付け、受け付けたデータを入力データもしくは学習データとして取り扱ってもよい。
【0091】
また、実施形態では、ユーザ端末200が測定データを予測装置100に送信し、予測装置100が生理日の予測を行う例を示した。しかし、ユーザ端末200が予測モデルを有する場合、ユーザ端末200が、計測デバイス10が計測した基礎体温データに基づいて、ユーザ15の生理日を予測してもよい。すなわち、実施形態において予測装置100が実行する処理は、ユーザ端末200によって実行されてもよい。
【0092】
例えば、ユーザ端末200は、所有者であるユーザ15の個別予測モデルを生成したり、個別予測モデルを保持してもよい。一般に、機械学習では、ゼロから学習済モデルを生成するのと比較して、追加学習によるモデル更新における処理ステップ数は少ない。そのため、予測装置100と比較して処理能力の低いことが想定されるスマートフォン等のユーザ端末200であっても、個別予測モデルを生成(再学習)することが可能である。ユーザ端末200が個別予測モデルを有する場合、ユーザ端末200は、クラウドサーバである予測装置100との通信を省いて、ユーザ15の次の生理日を予測する処理等を実行できる。これにより、ユーザ15は、より迅速に予測結果を得ることができる。また、生理日予測システム1において、サーバへのデータ送受信およびサーバ上での予測処理を省くことができるため、全体の処理負荷を抑えることができる。
【0093】
また、実施形態では、予測装置100が記憶部120を有し、測定データや予測モデルを保持する例を示したが、これらの情報は、予測装置100以外の外部記憶装置等が保持していてもよい。
【0094】
(3.その他の実施形態)
上述した実施形態に係る処理は、上記実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。
【0095】
例えば、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0096】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0097】
また、上述してきた実施形態及び変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0098】
また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【0099】
(4.本開示に係る生理日予測装置の効果)
上述してきたように、本開示に係る生理日予測装置(実施形態では予測装置100)は、取得部(実施形態では取得部131)と、判定部(実施形態では判定部132)と、予測部(実施形態では予測部133)とを有する。取得部は、予測対象者であるユーザから、生理周期間における基礎体温データを取得する。判定部は、取得された基礎体温データが示す傾向が、予め定義された複数のタイプのいずれかに分類されるかを判定する。予測部は、判定の結果に応じて、複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルのいずれかを選択し、基礎体温データに基づいて、ユーザの生理日を予測する。
【0100】
このように、本開示に係る生理日予測装置は、予測対象となるユーザの基礎体温データにみられる傾向に応じて、複数の予測モデルを使い分けて、生理日の予測を行う。これにより、生理日予測装置は、2相性がない基礎体温データなど、通常とは異なる特徴を有するユーザについても、精度高く生理日の予測を行うことができる。すなわち、生理日予測装置は、予測対象者のデータ取得状況や、予測対象者ごとの生理周期の特性の違いによらず、予測対象者ごとに適した予測を行うことができる。
【0101】
また、予測部は、取得された基礎体温データが示す傾向を判定することができない場合、複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルのいずれかを選択せず、汎用的に学習された他の学習済モデルを選択して、ユーザの生理日を予測する。
【0102】
このように、生理日予測装置は、データが1周期に満たない場合等、いずれの傾向も示さないデータについては、汎用的に学習されたモデルを用いて予測を行う。これにより、生理日予測装置は、取得したデータの傾向や、ユーザのデータ取得状況(計測デバイス10を利用し始めて間もないユーザなど)に関わらず、生理日の予測を実行できる。
【0103】
また、生理日予測装置は、複数のタイプごとに学習された複数の学習済モデルのいずれかを選択して予測が行われたのち、ユーザの基礎体温データを用いて、当該予測に用いられた学習済モデルを当該ユーザの傾向に即して再学習する学習部(実施形態では学習部134)をさらに備えてもよい。
【0104】
このように、生理日予測装置は、ユーザごとの個別予測モデルを生成してもよい。これにより、生理日予測装置は、予測対象者に対する予測精度をさらに向上させることができる。
【0105】
また、判定部は、ユーザから予測に用いるための基礎体温データを取得した場合に、当該ユーザに即して再学習された個別予測モデルがある場合には、取得された基礎体温データが示す傾向がタイプのいずれかに分類されるかを判定せず、当該個別予測モデルがない場合には、取得された基礎体温データが示す傾向がタイプのいずれかに分類されるかを判定する。予測部は、ユーザに即して再学習された個別予測モデルがある場合には、当該個別予測モデルを選択してユーザの生理日を予測し、個別予測モデルがない場合には、判定されたタイプに対応する学習済モデルを選択し、当該ユーザの生理日を予測する。
【0106】
このように、生理日予測装置は、個別予測モデルがある場合には、取得した基礎体温データの形状の分類といった判定処理をスキップし、個別予測モデルによる予測を行う。これにより、生理日予測装置は、精度よく予測を行うとともに、予測処理全体の速度を向上させることができる。
【0107】
また、本開示に係る生理日予測処理において、複数の学習済モデルは、学習データである基礎体温データを、基礎体温の日々の推移を示した波形形状の類似性に基づきクラスタリングし、当該クラスタリングされた基礎体温データをタイプごとに分類された学習データとして用いて機械学習されたモデルである。
【0108】
このように、生理日予測装置は、学習データを予め波形の特徴に応じてクラスタリングし、かかるクラスタリングの各々に対応して生成された学習済モデルを予測処理に用いる。これにより、生理日予測装置は、予測対象者から入力される基礎体温データの特徴に応じた学習済モデルを選択して予測処理を行うことができるので、予測精度を向上させることができる。
【0109】
(5.ハードウェア構成)
上述してきた実施形態に係る予測装置100やユーザ端末200等の情報機器は、例えば図12に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。以下、実施形態に係る予測装置100を例に挙げて説明する。図12は、予測装置100の機能を実現するコンピュータ1000の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM(Read Only Memory)1300、HDD(Hard Disk Drive)1400、通信インターフェイス1500、及び入出力インターフェイス1600を有する。コンピュータ1000の各部は、バス1050によって接続される。
【0110】
CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。例えば、CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に格納されたプログラムをRAM1200に展開し、各種プログラムに対応した処理を実行する。
【0111】
ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるBIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0112】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、及び、かかるプログラムによって使用されるデータ等を非一時的に記録する、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。具体的には、HDD1400は、プログラムデータ1450の一例である本開示に係る生理日予測処理を実行するプログラムを記録する記録媒体である。
【0113】
通信インターフェイス1500は、コンピュータ1000が外部ネットワーク1550(例えばインターネット)と接続するためのインターフェイスである。例えば、CPU1100は、通信インターフェイス1500を介して、他の機器からデータを受信したり、CPU1100が生成したデータを他の機器へ送信したりする。
【0114】
入出力インターフェイス1600は、入出力デバイス1650とコンピュータ1000とを接続するためのインターフェイスである。例えば、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、キーボードやマウス等の入力デバイスからデータを受信する。また、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやスピーカーやプリンタ等の出力デバイスにデータを送信する。また、入出力インターフェイス1600は、所定の記録媒体(メディア)に記録されたプログラム等を読み取るメディアインターフェイスとして機能してもよい。メディアとは、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0115】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る予測装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされた生理日予測処理プログラムを実行することにより、制御部130等の機能を実現する。また、HDD1400には、本開示に係る生理日予測処理を実行するプログラムや、記憶部120内のデータが格納される。なお、CPU1100は、プログラムデータ1450をHDD1400から読み取って実行するが、他の例として、外部ネットワーク1550を介して、他の装置からこれらのプログラムを取得してもよい。
【0116】
以上、本願の実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 生理日予測システム
10 計測デバイス
15 ユーザ
100 予測装置
110 通信部
120 記憶部
121 計測データ記憶部
122 モデル記憶部
130 制御部
131 取得部
132 判定部
133 予測部
134 学習部
135 出力部
200 ユーザ端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12