(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131192
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240920BHJP
G01S 17/894 20200101ALN20240920BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
G01S17/894
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041301
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桂 正士
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AB07
5J084AD01
5J084BA16
5J084BA36
5J084BA40
5J084EA04
(57)【要約】
【課題】 分解能を向上させるための技術を提供する。
【解決手段】 距離計測装置の受光センサは、第1方向に沿って並んでいる複数個のセルを含み、複数個のセルのそれぞれは、第1方向に沿って並んでいるN個のフォトダイオードで構成されており、分析装置は、1単位のレーザに対する反射光として、第1セルが1回の応答を受光するとともに、第2セルが2回の応答を受光する場合に、N個に対するN1個の割合に基づく境界で、第2セルに対応する第2範囲を第1方向に沿って2つの部分範囲に分割する分割部であって、N1個は、第2セルのN個のフォトダイオードのうち、2回の応答うちの1回目の応答で反応したフォトダイオードの個数である、分割部と、第1セルによって受光された1回の応答によって示される距離を有する範囲として、第1範囲に加えて、第2範囲を分割した2つの部分範囲のうち、第1範囲に近い第1部分範囲を設定する設定部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間に走査されたレーザが対象物で反射した反射光を利用して前記対象物までの距離を計測する距離計測装置から出力されるデータを分析する分析装置であって、
前記距離計測装置は、前記反射光を受光する受光センサを備え、
前記受光センサは、第1方向に沿って並んでいる複数個のセルを含み、
前記複数個のセルのそれぞれは、前記第1方向に沿って並んでいるN個(Nは、2以上の整数)のフォトダイオードで構成されており、
前記複数個のセルのうちの第1セルは、前記第1方向に沿った第1範囲を有する第1画素に対応し、
前記複数個のセルのうちの第2セルは、前記第1方向において前記第1範囲に隣接する第2範囲を有する第2画素に対応し、
前記分析装置は、
1単位のレーザに対する反射光として、前記第1セルが1回の応答を受光するとともに、前記第2セルが2回の応答を受光する場合に、前記N個に対するN1個(N1は、Nより小さい1以上の整数)の割合に基づく境界で、前記第2セルに対応する前記第2範囲を前記第1方向に沿って2つの部分範囲に分割する分割部であって、前記N1個は、前記第2セルの前記N個のフォトダイオードのうち、前記2回の応答うちの1回目の応答で反応したフォトダイオードの個数である、前記分割部と、
前記第1セルによって受光された前記1回の応答によって示される距離を有する範囲として、前記第1範囲に加えて、前記第2範囲を分割した前記2つの部分範囲のうち、前記第1範囲に近い第1部分範囲を設定する設定部と、
を備える、
分析装置。
【請求項2】
前記複数個のセルは、前記第1方向、及び、前記第1方向と直交する第2方向に沿ってマトリックス状に並んでおり、
前記複数個のセルのそれぞれは、前記第1方向及び前記第2方向に沿ってマトリックス状に並んでいる前記N個のフォトダイオードで構成されており、
前記複数個のセルのうちの第3セルは、前記第2方向において前記第1範囲に隣接する第3範囲を有する第3画素に対応し、
前記分割部は、さらに、1単位のレーザに対する反射光として、前記第1セルが1回の応答を受光するとともに、前記第3セルが2回の応答を受光する場合に、前記N個に対するN2個(N2は、Nより小さい1以上の整数)の割合に基づく境界で、前記第3セルに対応する前記第3範囲を前記第2方向に沿って2つの部分範囲に分割し、
前記N2個は、前記第3セルの前記N個のフォトダイオードのうち、前記2回の応答うちの1回目の応答で反応したフォトダイオードの個数であり、
前記設定部は、前記第1セルによって受光された前記1回の応答によって示される距離を有する範囲として、前記第3範囲を分割した前記2つの部分範囲のうち、前記第1範囲に近い第2部分範囲をさらに設定する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記複数個のセルのうちの第4セルは、前記第2方向において前記第2範囲に隣接するとともに、前記第1方向において前記第3範囲に隣接する第4範囲を有する第4画素に対応し、
前記設定部は、前記第1セルによって受光された前記1回の応答によって示される距離を有する範囲として、前記第4範囲のうち、前記第1部分範囲を前記第2方向に沿って延長した範囲と、前記第2部分範囲を前記第1方向に沿って延長した範囲と、が重なる範囲をさらに設定する、請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記第2セルが前記2回の応答を受光する場合に、前記1回目の応答で反応したフォトダイオードの個数は、前記N1個であり、前記2回の応答のうちの2回目の応答で反応したフォトダイオードの個数は、N3個(N3は、Nより小さい1以上の整数)であり、
前記分割部は、前記N1個と前記N3個の合計が、前記N個よりも大きい場合に、前記第2範囲のうち、前記1回目の応答と前記2回目の応答の双方で反応した特定のフォトダイオードに対応する範囲の内側に、前記境界を設定する、請求項1から3のいずれか一項に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、距離計測装置から出力されるデータを分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザレーダ装置による入力情報の分解能を高くするための技術が開示されている。レーザレーダ装置は、所定の空間に走査されたレーザが対象物で反射した反射光を利用して対象物までの距離を計測する。レーザレーダ装置は、反射光を受光して入力情報を生成する受光部を備える。入力情報は、複数個の画素として距離の値を有する。CPUは、当該入力情報において、注目する画素においてセカンドエコーが存在する場合に、当該画素を2つに分割する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、受光部の具体的な構造、例えば、フォトダイオードの配列を何ら考慮していない。特許文献1の技術では、受光部の具体的な構造とは無関係に画素を分割する境界が決まる。本明細書では、受光センサの構造を考慮して分解能を向上させるための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、所定の空間に走査されたレーザが対象物で反射した反射光を利用して前記対象物までの距離を計測する距離計測装置から出力されるデータを分析する分析装置を開示する。前記距離計測装置は、前記反射光を受光する受光センサを備え、前記受光センサは、第1方向に沿って並んでいる複数個のセルを含み、前記複数個のセルのそれぞれは、前記第1方向に沿って並んでいるN個(Nは、2以上の整数)のフォトダイオードで構成されており、前記複数個のセルのうちの第1セルは、前記第1方向に沿った第1範囲を有する第1画素に対応し、前記複数個のセルのうちの第2セルは、前記第1方向において前記第1範囲に隣接する第2範囲を有する第2画素に対応し、前記分析装置は、1単位のレーザに対する反射光として、前記第1セルが1回の応答を受光するとともに、前記第2セルが2回の応答を受光する場合に、前記N個に対するN1個(N1は、Nより小さい1以上の整数)の割合に基づく境界で、前記第2セルに対応する前記第2範囲を前記第1方向に沿って2つの部分範囲に分割する分割部であって、前記N1個は、前記第2セルの前記N個のフォトダイオードのうち、前記2回の応答うちの1回目の応答で反応したフォトダイオードの個数である、前記分割部と、前記第1セルによって受光された前記1回の応答によって示される距離を有する範囲として、前記第1範囲に加えて、前記第2範囲を分割した前記2つの部分範囲のうち、前記第1範囲に近い第1部分範囲を設定する設定部と、を備える。
【0006】
上記の構成によれば、受光センサの構造として、セルを構成するフォトダイオードの個数であるN個に対する、1回目の応答で反応したフォトダイオードの個数であるN1個の割合が考慮される。当該割合に基づく境界で第2範囲を分割することにより、分解能を向上させることができる。
【0007】
前記複数個のセルは、前記第1方向、及び、前記第1方向と直交する第2方向に沿ってマトリックス状に並んでおり、前記複数個のセルのそれぞれは、前記第1方向及び前記第2方向に沿ってマトリックス状に並んでいる前記N個のフォトダイオードで構成されており、前記複数個のセルのうちの第3セルは、前記第2方向において前記第1範囲に隣接する第3範囲を有する第3画素に対応し、前記分割部は、さらに、1単位のレーザに対する反射光として、前記第1セルが1回の応答を受光するとともに、前記第3セルが2回の応答を受光する場合に、前記N個に対するN2個(N2は、Nより小さい1以上の整数)の割合に基づく境界で、前記第3セルに対応する前記第3範囲を前記第2方向に沿って2つの部分範囲に分割し、前記N2個は、前記第3セルの前記N個のフォトダイオードのうち、前記2回の応答うちの1回目の応答で反応したフォトダイオードの個数であり、前記設定部は、前記第1セルによって受光された前記1回の応答によって示される距離を有する範囲として、前記第3範囲を分割した前記2つの部分範囲のうち、前記第1範囲に近い第2部分範囲をさらに設定してもよい。
【0008】
上記の構成によれば、マトリックス状に並んだN個のフォトダイオードでの構造を考慮して分解能を向上させることができる。
【0009】
前記複数個のセルのうちの第4セルは、前記第2方向において前記第2範囲に隣接するとともに、前記第1方向において前記第3範囲に隣接する第4範囲を有する第4画素に対応し、前記設定部は、前記第1セルによって受光された前記1回の応答によって示される距離を有する範囲として、前記第4範囲のうち、前記第1部分範囲を前記第2方向に沿って延長した範囲と、前記第2部分範囲を前記第1方向に沿って延長した範囲と、が重なる範囲をさらに設定してもよい。
【0010】
上記の構成によれば、2回の応答を受光する第2及び第3セルの双方に隣接する第4セルにおいても、分解能を向上させることができる。
【0011】
前記第2セルが前記2回の応答を受光する場合に、前記1回目の応答で反応したフォトダイオードの個数は、前記N1個であり、前記2回の応答のうちの2回目の応答で反応したフォトダイオードの個数は、N3個(N3は、Nより小さい1以上の整数)であり、前記分割部は、前記N1個と前記N3個の合計が、前記N個よりも大きい場合に、前記第2範囲のうち、前記1回目の応答と前記2回目の応答の双方で反応した特定のフォトダイオードに対応する範囲の内側に、前記境界を設定してもよい。
【0012】
特定のダイオードが1回目の応答と2回目の応答の双方で反応する場合には、N1個とN3個の加算値がN個よりも大きくなる。2つの部分範囲の境界を特定のフォトダイオードに対応する範囲の内側に設定して、分解能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施例に係る分析システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】受光センサが反射光に反応する具体的なケースである。
【
図3】第1実施例に係る分析プログラムの処理を示すフローチャート図である。
【
図4】第1補正処理を示すフローチャート図である。
【
図5】第2補正処理を示すフローチャート図である。
【
図6】第2及び第3実施例に係る分析システムの構成を示すブロック図である。
【
図7】受光センサが反射光に反応する具体的なケースである。
【
図8】第2実施例に係る分析プログラムの処理を示すフローチャート図である。
【
図9】第2実施例に係るV方向補正処理を示すフローチャート図である。
【
図10】第2実施例に係るH方向補正処理を示すフローチャート図である。
【
図11】V方向補正処理及びH方向補正処理の具体的なケースC1である。
【
図12】第2実施例に係るVH補正処理の具体的なケースC1である。
【
図13】第3実施例に係るV方向補正処理を示すフローチャート図である。
【
図14】第3実施例に係るH方向補正処理を示すフローチャート図である。
【
図15】V方向補正処理及びH方向補正処理の具体的なケースC2である。
【
図16】第3実施例に係るVH補正処理の具体的なケースC2である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施例)
(分析システム2の構成;
図1)
分析システム2は、所定の領域内に存在する1以上の対象物200(例えば人物)の位置を分析するためのシステムである。所定の領域は、例えば、事務所、工場、ショッピングモール、展示場、駅の構外、ビルのエントランス、自動車の周囲等である。
【0015】
分析システム2は、分析装置10と、3DLiDAR100と、を備える。分析装置10は、デスクトップPC、ノートPC、スマートフォン、インターネット上のサーバ等である。3DLiDARは、光による検知と測距(light Detection And Rangingの略)と呼ばれ、周囲の物体との距離を三次元的に計測する装置である。分析装置10は、有線又は無線を介して、3DLiDAR100に接続されている。
【0016】
(3DLiDAR100の構成;
図1)
3DLiDAR100は、ビーム光源102と、受光センサ104と、を備える。ビーム光源102は、3DLiDAR100の周囲の所定の水平範囲に亘ってビームを走査する。所定の水平範囲は、180度、360度等の所定の角度を有する水平方向の範囲である。ビームの像は、例えば、鉛直方向に長いライン状である。
【0017】
受光センサ104は、例えば、SPAD(Single Photon Avalanche Diodeの略)センサ等のイメージセンサである。受光センサ104は、V方向に沿って並んでいる複数個のセル112を含む。複数個のセル112のそれぞれは、1画素に対応し、複数個のセル112によって、V方向に沿って並ぶ複数個の画素が実現される。ここで、V方向は、ライン状の像を有する反射光の延びる方向である。
【0018】
図1では、1個のセル112を示す。1個のセル112は、V方向に沿って並んでいる4個のフォトダイオード114で構成されている。以下では、4個のフォトダイオードのそれぞれに、aからdまで順次に記号を付す。なお、フォトダイオード114の個数である4個は一例に過ぎない。
【0019】
4個のフォトダイオード114a~114dは、V方向に沿って並んでいる。このため、セル112に対応する1画素は、V方向に沿った所定の範囲を有する。
【0020】
図1の一点鎖線の矢印で示すように、ビーム光源102から照射されたビームは、対象物200に入射する。対象物200に入射したビームは、対象物200で反射して受光センサ104に入射する。3DLiDAR100は、対象物200へのビームの照射から当該ビームの反射光の受光までの時間を利用して、3DLiDAR100と対象物200との間の距離を算出する。複数個のセル112のそれぞれが反射光を受光することにより、V方向に沿った複数個の画素に対応する複数個の距離が算出される。複数個の画素は、V方向に沿った立体的な距離を示す。
【0021】
3DLiDAR100は、所定の水平範囲に亘った1回の走査において、V方向に沿った複数個の画素がV方向と直交する方向に複数個並んだ2次元の画像に相当するデータを生成する。例えば、3DLiDAR100は、1回の走査が終了する毎にデータを分析装置10に送信する。なお、当該データには、距離だけでなく、反応したフォトダイオードの個数を示すカウント値も含まれる。カウント値については、
図2を参照して後述する。
【0022】
(分析装置10の構成:
図1)
分析装置10は、CPU12と、メモリ14と、を備える。メモリ14は、分析プログラム40を記憶する。分析プログラム40は、3DLiDAR100から受信したデータを分析するプログラムである。
【0023】
(受光センサが反射光に反応する具体的なケース;
図2)
例えば、対象物200が段差を有していることが想定される。この場合、下段200bから反射した反射光が、上段200aから反射した反射光よりも遅れて受光センサ104に到達する。
【0024】
例えば、上段200aと下段200bの間の段差からの反射光が、n番目のセル112の2個のフォトダイオード114c及び114dの間に入射する。ここで、「n」は、1以上の整数で、連番を示す。n番目のセル112は、上段200aの反射光として1回目の応答をタイミングt1で受光し、その後、下段200bの反射光として2回目の応答をタイミングt2で受光する。具体的には、1回目の応答に対して3個のフォトダイオード114a~114cが反応し、3DLiDAR100は、反応したフォトダイオードの個数として「3」をカウントする。そして、2回目の応答に対して1個のフォトダイオード114dが追加で反応し、3DLiDAR100は、反応したフォトダイオードの合計の個数として「4」をカウントする。カウント「3」のタイミングt1は、上段200aまでの距離に対応し、カウント「4」のタイミングt2は、下段200bまでの距離に対応する。
【0025】
また、n番目のセル112に隣接する(n+1)番目のセル112は、下段200bの反射光としてタイミングt2で1回目の応答を受光し、2回目の応答を受光しない。具体的には、1回目の応答に対して4個のフォトダイオード114a~1114dの全てが反応し、3DLiDAR100は、反応したフォトダイオードの個数として「4」をカウントする。
【0026】
上記した通り、1個のセル112は、1画素に対応する。上記のように、2回の応答を受光する場合には、1画素には、1回目の応答に対応する距離と、2回目の当に対応する距離と、が割り当てられる。例えば、2個の距離のうちのいずれかを1画素の値として採用すると、上記の段差の位置が実際の位置からずれて分析されるか、又は、段差が無視されて分析され得る。本実施例の分析プログラム40は、上記の段差の位置を精度よく分析する。
【0027】
(分析プログラム40の処理;
図3)
図3を参照して、CPU12が、分析プログラム40に従って実行する処理について説明する。S10では、CPU12は、変数nに「1」を設定する。
【0028】
S12では、CPU12は、n番目のセル112が2回目の応答を受光しているのか否かを判断する。例えば、CPU12は、n番目のセル112に対応する画素が2個の距離及び2個のカウント値を含む場合に、n番目のセル112が2回目の応答を受光していると判断する。CPU12は、n番目のセル112が2回目の応答を受光していると判断する場合(S12でYES)に、S20に進む。
【0029】
S20では、CPU12は、n番目のセル112の1回目の応答に対応する距離が、(n+1)番目のセル112の1回目の応答に対応する距離と一致するのか否かを判断する。CPU12は、両距離が一致すると判断する場合(S20でYES)に、S22において、
図4で後述する第1補正処理を実行する。CPU12は、S22が終了すると、S40に進む。一方、CPU12は、両距離が一致しないと判断する場合(S20でNO)に、S24に進む。
【0030】
S24では、CPU12は、n番目のセル112の2回目の応答に対応する距離が、(n+1)番目のセル112の1回目の応答に対応する距離と一致するのか否かを判断する。CPU12は、両距離が一致すると判断する場合(S24でYES)に、S26において、
図5で後述する第2補正処理を実行する。CPU12は、S26が終了すると、S40に進む。
【0031】
また、CPU12は、n番目のセル112が1回目の応答を受光し、2回目の応答を受光していないと判断する場合(S12でNO)、又は、n番目のセル112の2回目の応答に対応する距離が、(n+1)番目のセル112の1回目の応答に対応する距離と一致しないと判断する場合(S24でNO)に、S30に進む。S30では、CPU12は、n番目のセル112に対応する画素の全範囲に1回目の応答に対応する距離を割り当てる。なお、n番目が複数個のセル112の端を示す場合には、CPU12は、S20及びS24の処理をスキップして、S30の処理を実行する。CPU12は、S30が終了すると、S40に進む。
【0032】
S40では、CPU12は、変数nをインクリメントする。続くS42では、CPU12は、変数nが最大値より大きいのか否かを判断する。最大値は、複数個のセル112の個数である。CPU12は、変数nが最大値以下である判断する場合(S42でNO)に、S12に戻る。一方、CPU12は、変数nが最大値より大きいと判断する場合(S42でYES)に、
図3の処理を終了する。
【0033】
(第1補正処理;
図4)
図4の下の図は、n番目のセル112の1回目の応答に対応する距離が、(n+1)番目のセル112の1回目の応答に対応する距離と一致する具体例である。当該ケースで示すように、
図3のS20でYESと判断される場合には、上段200aの反射光B1がn番目のセル112と(n+1)番目のセル112に入射する。
【0034】
S100では、CPU12は、n番目のセル112について、1回目の応答におけるカウント値mを特定する。例えば、下の図の具体例では、1回目の応答で2個のフォトダイオード114c及び114dが反応し、カウント値mは、「2」である。
【0035】
S102では、CPU12は、n番目のセル112について、(n+1)番目のセル112に隣接するm個のフォトダイオード114の位置に、1回目の応答に対応する距離を割り当てる。ここで、n番目のセル112に対応する1画素は、所定の範囲を有する。フォトダイオード114の位置は、所定の範囲を4個のフォトダイオード114の個数で4分割した一部である。例えば、下の図の具体例では、CPU12は、n番目のセル112について、(n+1)番目のセル112に隣接する2個のフォトダイオード114c及び114dの位置に、1回目の応答に対応する距離d1を割り当てる。
【0036】
S104では、CPU12は、n番目のセル112について、4個のフォトダイオード114のうち、m個のフォトダイオード114以外の残りのフォトダイオード114の位置に、2回目の応答に対応する距離を割り当てる。例えば、下の図の具体例では、CPU12は、n番目のセル112について、残りの2個のフォトダイオード114a及び114bの位置に、2回目の応答に対応する距離d2を割り当てる。
【0037】
(第2補正処理;
図5)
図5の下の図は、n番目のセル112の2回目の応答に対応する距離が、(n+1)番目のセル112の1回目の応答に対応する距離と一致する具体例である。当該ケースで示すように、
図3のS24でYESと判断される場合には、下段200bの反射光B2がn番目のセル112と(n+1)番目のセル112に入射する。
【0038】
S110は、
図4のS100と同様である。下の図の具体例では、カウント値mは、「1」である。
【0039】
S112は、2回目の応答に対応する距離を割り当てる点を除いて、S102と同様である。例えば、下の図の具体例では、CPU12は、n番目のセル112について、(n+1)番目のセル112に隣接する1個のフォトダイオード114dの位置に、2回目の応答に対応する距離d1を割り当てる。
【0040】
S114は、1回目の応答に対応する距離を割り当てる点を除いて、S104と同様である。例えば、下の図の具体例では、CPU12は、n番目のセル112について、残りの3個のフォトダイオード114a~114cの位置に、1回目の応答に対応する距離d3を割り当てる。
【0041】
(本実施例の効果)
図4の具体例では、n番目のセル112に対応する1画素が、フォトダイオード114の個数「4」に対する1回目の応答で反応したフォトダイオード114の個数「2」の割合に基づく境界で2個に分割される。また、
図5の具体例でも、n番目のセル112に対応する1画素が、フォトダイオード114の個数「4」に対する1回目の応答で反応したフォトダイオード114の個数「3」の割合に基づく境界で2個に分割される。本実施例の構成によれば、n番目のセル112は、単純に2分割されず、フォトダイオード114の個数「4」に対する1回目の応答で反応したフォトダイオード114の個数の割合に基づく境界で分割される。当該境界は、1回目の応答で反応したフォトダイオード114の個数に応じて変化する。このように変化する境界で1画素を分割することにより、単純に2分割する構成と比較して、分解能を向上させることができる。
【0042】
また、3DLiDAR100が計測可能な距離を延長するために、フォトダイオード114の感度を高めることが想定される。しかし、フォトダイオード114の感度を高めると、フォトダイオード114が、レーザの反射光以外の外乱光、例えば、太陽光にも反応する。フォトダイオード114が外乱光に反応すると、ノイズの原因となる。本実施例は、外乱光に対処するために、1画素であるセル112を複数個のフォトダイオード114で構成する。反応したフォトダイオード114の個数を利用して、反射光か外乱光かを判別することができるからである。一方、1画素が複数個のフォトダイオード114で構成されると、1画素が1個のフォトダイオード114で構成される構成と比較して、1画素の分解能が低下する。本実施例は、外乱光に対処した結果として低下した分解能を向上させることができる。
【0043】
(対応関係)
分析装置10、3DLiDAR100、対象物200が、それぞれ、「分析装置」、「距離計測装置」、「対象物」の一例である。受光センサ104が、「受光センサ」の一例である。V方向が、「第1の方向」の一例である。複数個のセル112が、「複数個のセル」の一例である。4個のフォトダイオード114が、「N個のフォトダイオード」の一例である。
図4の(n+1)番目のセル112、n番目のセル112が、それぞれ、「第1セル」、「第2セル」の一例である。
図4では、2個が、「N1個」の一例であり、
図5では、3個が、「N1個」の一例である。
【0044】
(第2実施例)
(分析システム4の構成;
図6)
本実施例の分析システム4は、3DLiDAR100の構成が異なる点、及び、分析プログラム40が実行する処理の内容が異なる点、を除いて、第1実施例の分析システム2と同様である。本実施例の3DLiDAR100は、矩形状の像を有するビームを照射するビーム光源302と、2次元の受光センサ304と、を備える。
【0045】
(受光センサ304の構成;
図6、
図7)
受光センサ304は、V方向及びH方向に沿ってマトリックス状に並ぶ16個(=4×4個)のセル312を含む。16個のセル312のそれぞれは、1画素に対応し、複数個のセル312によって、マトリックス状に並ぶ複数個の画素が実現される。なお、以下では、16個のセル312のそれぞれに、(1、1)から(4、4)まで順次に座標番号を付す。ここで、H方向は、V方向と直交する方向である。なお、セル312の個数である16個は、一例に過ぎない。
【0046】
図6で示すように、1個のセル312は、V方向及びH方向に沿ってマトリックス状に並ぶ16個(=4×4個)のフォトダイオード114で構成されている。このため、セル312に対応する1画素は、V方向及びH方向の双方において幅を有する所定の矩形の範囲を有する。なお、フォトダイオード114の個数である16個は、一例に過ぎない
【0047】
図6に示すように、矩形状の像を有するビームが、段差を有する対象物200で反射すると、
図7に示すように、上段200aと下段200bの間の段差からの反射光が、セル312の内側に入射する場合がある。この場合、セル312は、2回の応答を受光する。本実施例の分析プログラム40は、上記の段差の位置を精度よく分析する。
【0048】
(分析プログラム40の処理;
図8)
図8は、本実施例の分析プログラム40に従って実行される処理である。S200、S202は、
図3のS10、S12と同様である。CPU12は、n番目のセル312が2回目の応答を受光していると判断する場合(S202でYES)に、S210に進む。
【0049】
S210では、CPU12は、V方向においてn番目のセル312と隣接する2個のセル312の双方が、1回目の応答のみを受光しているのか否かを判断する。例えば、n番目のセル312の座標番号が、(2、1)である場合に、上記の2個のセル312は、座標番号(1、1)及び(3、1)の2個のセル312である。CPU12は、V方向においてn番目のセル312と隣接する2個のセル312の双方が、1回目の応答を受光し、2回目の応答を受光していないと判断する場合(S210でYES)に、S212に進む。S212では、CPU12は、
図9で後述するV方向補正処理を実行する。CPU12は、S212の処理が終了すると、S240に進む。なお、n番目のセル312が、V方向において4列目のセル、例えば、座標番号(4、1)のセルである場合には、CPU12は、隣接する1個のセル312のみについてS210の判断を実行する。また、n番目のセル312が、座標番号(1、1)のセルである場合には、CPU12は、S210の判断をスキップして、後述するS230に進む。
【0050】
また、CPU12は、V方向においてn番目のセル312と隣接する2個のセル312の少なくとも一方が、2回目の応答を受光していると判断する場合(S210でNO)に、S214に進む。S214では、CPU12は、H方向においてn番目のセル312と隣接する2個のセル312の双方が、1回目の応答のみを受光しているのか否かを判断する。例えば、n番目のセル312の座標番号が、(1、2)である場合に、上記の2個のセル312は、座標番号(1、1)及び(1、3)の2個のセル312である。CPU12は、H方向においてn番目のセル312と隣接する2個のセル312の双方が、1回目の応答を受光し、2回目の応答を受光していないと判断する場合(S214でYES)に、S216に進む。S216では、CPU12は、
図10で後述するH方向補正処理を実行する。CPU12は、S216の処理が終了すると、S240に進む。なお、CPU12は、H方向においてn番目のセル312と隣接する2個のセル312の少なくとも一方が、2回目の応答を受光していると判断する場合(S214でNO)に、S240に進む。
【0051】
また、CPU12は、n番目のセル312が1回目の応答を受光し、2回目の応答を受光していないと判断する場合(S202でNO)に、S230に進む。S230では、CPU12は、n番目のセル312に対応する画素の全範囲に1回目の応答に対応する距離を割り当てる。CPU12は、S230が終了すると、S240に進む。
【0052】
S240、S242は、
図3のS40、S42と同様である。CPU12は、変数nが最大値以下である判断する場合(S242でNO)に、S202に戻る。一方、CPU12は、変数nが最大値より大きいと判断する場合(S242でYES)に、S250において、後述するVH補正処理を実行する。CPUは、S250の処理が終了すると、
図8の処理を終了する。
【0053】
【0054】
V方向補正処理は、V方向において隣接する2個のセルの双方が1回目の応答のみを受光している場合に実行される処理である。なお、以下では、n番目のセル312について、1回目の応答のカウント値をm1、2回目の応答のカウント値をm2と記載する。本実施例では、カウント値m1とカウント値m2の合計は、カウント最大値と一致する。カウント最大値は、セル312に含まれるフォトダイオード114の全数であり、
図6の例では、カウント最大値は、「16」である。
【0055】
S310では、CPU12は、隣接する2個のセルの中から、n番目のセル312の1回目の応答に対応する距離と同一の距離に対応する応答を受光したセルを選択する。CPU12は、n番目のセル312について、選択済みのセルにV方向で隣接するm1個のフォトダイオード114の位置に1回目の応答に対応する距離を割り当てる。
【0056】
続くS312では、隣接する2個のセルの中から、n番目のセル312の2回目の応答に対応する距離と同一の距離に対応する応答を受光したセルを選択する。CPU12は、n番目のセル312について、選択済みのセルにV方向で隣接するm2個のフォトダイオード114の位置に2回目の応答に対応する距離を割り当てる。CPU12は、S312が終了すると、
図9の処理を終了する。
【0057】
【0058】
H方向補正処理は、H方向において隣接する2個のセルの双方が1回目の応答のみを受光している場合に実行される処理である。S320、S322は、H方向において隣接する2個のセルが利用される点を除いて、
図9のS310、S312と同様である。
【0059】
(具体的なケースC1;
図11)
例えば、
図11のケースC1において、n番目のセル312として座標番号(3、1)のセル312が選択される状況を想定する。ここで、本ケースでは、カウント値m1は「4」であり、カウント値m2は「12」である。座標番号(3、1)のセル312には、V方向において座標番号(2、1)のセル312と座標番号(4、1)のセル312が隣接する。そして、座標番号(2、1)のセル312と座標番号(4、1)のセル312の双方は、1回目の応答を受光し、2回目の応答を受光していない。本ケースでは、座標番号(2、1)のセル312と座標番号(4、1)のセル312のうち、座標番号(2、1)のセル312の1回目の応答に対応する距離d1が、座標番号(3、1)の1回目の応答に対応する距離d1と同一である。このため、CPU12は、座標番号(3、1)のセル312について、座標番号(2、1)のセル312に隣接する4個のフォトダイオード114の位置に距離d1を割り当てる(
図9のS310)。また、座標番号(4、1)のセル312の1回目の応答に対応する距離d2が、座標番号(3、1)の2回目の応答に対応する距離d2と同一である。このため、CPU12は、座標番号(3、1)のセル312について、座標番号(4、1)のセル312に隣接する12個のフォトダイオード114の位置に距離d2を割り当てる(S312)。即ち、座標番号(3、1)のセル312について、1画素が、紙面上側における4/16の部分範囲と、紙面下側における12/16の部分範囲と、に分割される。本ケースでは、座標番号(3、2)のセル312も、座標番号(3、1)のセル312と同様に、距離d1及びd2が、4/16の部分範囲と12/16の部分範囲に割り当てられる。
【0060】
また、座標番号(1、3)のセル312には、H方向において座標番号(1、2)のセル312と座標番号(1、4)のセル312が隣接する。そして、座標番号(1、2)のセル312と座標番号(1、4)のセル312の双方は、1回目の応答を受光し、2回目の応答を受光していない。本ケースでは、座標番号(1、2)のセル312と座標番号(1、4)のセル312のうち、座標番号(1、2)のセル312の1回目の応答に対応する距離d1が、座標番号(1、3)の1回目の応答に対応する距離d1と同一である。このため、CPU12は、座標番号(1、3)のセル312について、座標番号(1、2)のセル312に隣接する4個のフォトダイオード114の位置に距離d1を割り当てる(
図10のS320)。また、座標番号(1、4)のセル312の1回目の応答に対応する距離d2が、座標番号(1、3)の2回目の応答に対応する距離d2と同一である。このため、CPU12は、座標番号(1、3)のセル312について、座標番号(1、4)のセル312に隣接する12個のフォトダイオード114の位置に距離d2を割り当てる(S312)。即ち、座標番号(1、3)のセル312について、1画素が、紙面左側における4/16の部分範囲と、紙面右側における12/16の部分範囲と、に分割される。本ケースでは、座標番号(2、3)のセル312も、座標番号(1、3)のセル312と同様に、距離d1及びd2が、4/16の部分範囲と12/16の部分範囲に割り当てられる。
【0061】
座標番号(3、1)、(3、2)、(1、3)、(2、3)のセル312は、単純に2分割されず、フォトダイオード114の個数「16」に対する1回目の応答で反応したフォトダイオード114の個数「4」の割合に基づく境界で分割される。単純に2分割する構成と比較して、分解能を向上させることができる。
【0062】
また、n番目のセル312として座標番号(1、1)、(1、2)等のセル312が選択される状況では、当該セル312は、2回目の応答を受光しないので(
図8のS202でNO)、当該セル312の全範囲に1回目の応答に対応する距離を割り当てる(S230)。なお、n番目のセル312として座標番号(3、3)のセル312が選択される状況では、
図8のS210及びS214のいずれもNOと判断される。この場合には、S250のVH補正処理において1画素が分割される。
【0063】
(VH補正処理;
図12)
図12に示す具体的なケースC1を利用してVH補正処理について説明する。
図12に示すように、座標番号(3、3)のセル312は、S210でYESと判断される座標番号(3、2)とH方向で隣接するとともに、S212でYESと判断される(2、3)のセル312とV方向で隣接する。この結果、座標番号(3、3)のセル312は、S210及びS214のいずれもNOと判断される。
【0064】
VH補正処理では、CPU12は、座標番号(3、2)のセル312で距離d1が割り当てられた4/16の部分範囲をH方向に沿って延長した範囲と、座標番号(2、3)のセル312で同じ距離d1が割り当てられた4/16の部分範囲をV方向に沿って延長した範囲が重なる重複範囲を算出する。そして、CPU12は、座標番号(3、3)のセル312に対応する1画素のうちの重複範囲に距離d1を割り当て、当該1画素のうち、重複範囲以外の範囲に距離d2を割り当てる。本ケースでは、重複範囲は、1/16の部分範囲、即ち、1個のフォトダイオード114に対応する範囲である。本ケースでは、座標番号(3、3)のセル312に対応する1画素が、1/16の部分範囲と、15/16の部分範囲と、に分割される。VH補正処理により、座標番号(3、3)のセル312に対応する1画素についても分解能を向上させることができる。
【0065】
また、CPU12は、重複範囲が正しく算出されたのか否かを判断する。具体的には、CPU12は、座標番号(3、3)のセル312の1回目の応答のカウント値m1と2回目の応答のカウント値m2とを特定する。そして、CPU12は、座標番号(3、3)のセル312のカウント値m1が、重複範囲に対応するフォトダイオード114の個数と一致するのか否かを判断する。CPU12は、カウント値m1を利用した判断において一致と判断する場合に、座標番号(3、3)のセル312のカウント値m2が、重複範囲以外の範囲に対応するフォトダイオード114の個数と一致するのか否かを判断する。カウント値m2を利用した判断において一致と判断する場合に、重複範囲が正しく算出されたと判断する。一方、CPU12は、カウント値m1を利用した判断又はカウント値m2を利用した判断のいずれかで不一致と判断する場合に、重複範囲が誤って算出されたと判断する。この場合には、CPU12は、例えば、座標番号(3、3)のセル312に対応する画素の全範囲に1回目又は2回目の応答に対応する距離を割り当てる。誤って算出された重複範囲に基づいて、1画素が分割されることを抑制することができる。
【0066】
(対応関係)
H方向が、「第2方向」の一例である。16個のセル312が、「複数個のセル」の一例である。16個のフォトダイオード114が、「N個のフォトダイオード」の一例である。
図11において、座標番号(2、3)のセル312、4個が、それぞれ、「第3セル」、「N2個」の一例である。
図12において、座標番号(3、3)のセル312が、「第4セル」の一例である。
【0067】
(第3実施例)
(分析プログラム40の処理;
図8)
本実施例は、V方向補正処理、H方向補正処理、及び、VH補正処理の内容が異なる点を除いて、第2実施例と同様である。本実施例では、1回目の応答のカウント値m1と2回目の応答のカウント値m2の合計がカウント最大値よりも大きい。この現象は、セル312を構成する全てのフォトダイオード114のうちの特定のフォトダイオード114が1回目の応答と2回目の応答との双方で反応したことを意味する。例えば、この現象は、対象物200の上段200aと下段200bとの段差の反射光が、特定のフォトダイオード114の内側に入射する場合に発生する。
【0068】
(V方向補正処理;
図13)
S330では、CPU12は、1回目の応答と2回目の応答で重複したカウント値の比率R(以下では、「重複カウントの比率R」と記載)を算出する。ここで、R=|m1/M-m2/M|であり、値Mは、セル312を構成する全てのフォトダイオード114の個数である。
【0069】
S332では、CPU12は、n番目のセル312の1画素に対応する範囲のうち、
図9のS310と同様に選択したセルにV方向で隣接する部分範囲に1回目の応答の距離を割り当てる。ここで、当該部分範囲の面積VA1=A0×(m1/M-R/2)であり、A0は、n番目のセル312の1画素に対応する範囲の面積である。
【0070】
続くS334では、CPU12は、n番目のセル312の1画素に対応する範囲のうち、
図9のS312と同様に選択したセルにV方向で隣接する部分範囲に2回目の応答の距離を割り当てる。ここで、当該部分範囲の面積VA2=A0×(m2/M-R/2)である。
【0071】
(H方向補正処理;
図14)
S340は、
図13のS330と同様である。S342、S344は、H方向において隣接する2個のセルが利用される点を除いて、
図13のS332、S334と同様である。なお、S342においてH方向で隣接する部分範囲の面積は、HA1=A0×(m1/M-R/2)であり、S334においてH方向で隣接する部分範囲の面積は、HA2=A0×(m2/M-R/2)である。
【0072】
(具体的なケースC2;
図15)
例えば、
図15のケースC2において、n番目のセル312として座標番号(3、1)のセル312が選択される状況を想定する。ここで、本ケースでは、カウント値m1は「8」であり、カウント値m2は「12」である。即ち、m1+m2=20であり、m1+m2>M=16である。本ケースでは、CPU12は、重複カウントの比率R=|8/16-12/16|=1/4を算出する(
図13のS330)。CPU12は、隣接する座標番号(2、1)のセル312にV方向で隣接する部分範囲の面積VA1=16×(8/16-(1/4)×1/2)=6を算出する。ここで、1個のフォトダイオード114に対応する範囲の面積は、「1」である。そして、CPU12は、面積VA1=「6」を有する部分範囲に距離d1を割り当てる(S332)。また、隣接する座標番号(4、1)のセル312にV方向で隣接する部分範囲の面積VA2=16×(12/16-(1/4)×1/2)=10を算出する。そして、CPU12は、面積VA2=「10」を有する部分範囲に距離d2を割り当てる(S334)。
【0073】
また、n番目のセル312として座標番号(1、3)のセル312が選択される状況を想定する。本ケースでも、m1+m2=20であり、CPU12は、重複カウントの比率R=1/4を算出する(
図14のS340)。CPU12は、隣接する座標番号(1、2)のセル312にH方向で隣接する部分範囲の面積HA1=6を算出し、面積HA1=「6」を有する部分範囲に距離d1を割り当てる(S342)。また、CPU12は、隣接する座標番号(1、4)のセル312にH方向で隣接する部分範囲の面積HA2=10を算出し、面積HA2=「10」を有する部分範囲に距離d2を割り当てる(S344)。なお、本ケースでは、VA1=HA1、VA2=HA2であるが、これは、一例に過ぎず、VA1はHA1と異なっていてもよく、VA2はHA2と異なっていてもよい。
【0074】
本実施例では、セル312は、マトリックス状に並ぶ4×4個のフォトダイオード114で構成される。
図15に示すように、面積VA1=「6」を有する部分範囲と、面積VA2=「10」を有する部分範囲と、の境界は、H方向で一列に並ぶ4個の特定のフォトダイオード114aの内側に設定される。また、面積HA1=「6」を有する部分範囲と、面積HA2=「10」を有する部分範囲と、の境界も、V方向で一列に並ぶ4個の特定のフォトダイオード114aの内側に設定される。本ケースでは、特定のフォトダイオード114aにてカウントが重複される場合であっても、セル312に対応する1画素を分割して、分解能を向上させることができる。
【0075】
(VH補正処理;
図16)
図16に示す具体的なケースC2を利用して、本実施例のVH補正処理について説明する。本実施例でも、第2実施例と同様に、座標番号(3、3)のセル312に対してVH補正処理が実行される。
【0076】
本実施例のVH補正処理では、CPU12は、座標番号(3、2)のセル312で距離d1が割り当てられた面積VA1の部分範囲をH方向に沿って延長した範囲と、座標番号(2、3)のセル312で同じ距離d1が割り当てられた面積HA1の部分範囲をV方向に沿って延長した範囲が重なる重複範囲を算出する。ここで、面積VA1の部分範囲は、V方向に沿った幅1.5を有し、面積HA1の部分範囲は、H方向に沿った幅1.5を有する。ここで、幅1は、1個のフォトダイオード114に対応する範囲の幅であり、幅1.5は、1個のフォトダイオード114に対応する範囲の幅の1.5倍の幅である。CPU12は、座標番号(3、3)のセル312に対応する1画素のうち、面積「2.25」を有する重複範囲に距離d1を割り当て、当該1画素のうち、重複範囲以外の範囲に距離d2を割り当てる。本ケースでは、座標番号(3、3)のセル312である1画素が、面積「2.25」を有する部分範囲と、面積「13.75」を有する部分範囲と、に分割される。本実施例のVH補正処理でも、座標番号(3、3)のセル312に対応する1画素についても分解能を向上させることができる。
【0077】
また、CPU12は、重複範囲が正しく算出されたのか否かを判断する。具体的には、CPU12は、座標番号(3、3)のセル312の1回目の応答のカウント値m1と2回目の応答のカウント値m2とを特定する。また、CPU12は、重複範囲のV方向の幅1.5及びH方向の幅1.5を値2に繰り上げて、重複範囲の面積を計算する。そして、CPU12は、座標番号(3、3)のセル312のカウント値m1が、繰り上げた値で算出された重複範囲の面積と一致するのか否かを判断する。CPU12は、カウント値m1を利用した判断において一致と判断する場合に、重複範囲以外の範囲のV方向及びH方向の幅2.5を値3に繰り上げて、重複範囲以外のL字型の範囲の面積を計算する。そして、CPU12は、座標番号(3、3)のセル312のカウント値m2が、繰り上げた値で算出されたL字型の範囲の面積と一致するのか否かを判断する。CPU12は、カウント値m2を利用した判断において一致と判断する場合に、重複範囲が正しく算出されたと判断する。一方、CPU12は、カウント値m1を利用した判断又はカウント値m2を利用した判断のいずれかで不一致と判断する場合に、重複範囲が誤って算出されたと判断する。
【0078】
(対応関係)
カウント値m1、カウント値m2が、それぞれ、「N1個」、「N3個」の一例である。特定のフォトダイオード114aが、「特定のフォトダイオード」の一例である。
【0079】
以上、本明細書で開示する技術の具体例を説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を採用してもよい。
【0080】
(変形例1) 第1実施例において、第3実施例と同様に、重複カウントの比率Rを算出してもよい。そして、CPU12は、特定のフォトダイオードの内側に2つの部分範囲の境界を設定してもよい。
【0081】
(変形例2) 第2及び第3実施例において、
図8のS250のVH補正処理は実行されなくてもよい。
【0082】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0083】
2、4 :分析システム
100 :3DLiDAR
10 :分析装置
12 :CPU
14 :メモリ
40 :分析プログラム
102 :ビーム光源
104 :受光センサ
112 :セル
114、114a~114d :フォトダイオード
200 :対象物
200a :上段
200b :下段
302 :ビーム光源
304 :受光センサ
312 :セル
B1、B2 :反射光
VA1、VA2、HA1、HA2 :面積
d1、d2、d3 :距離
R :比率
m、m1、m2 :カウント値
n :変数
t1、t2 :タイミング