(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131193
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】人工爪組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
C09D4/02
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041302
(22)【出願日】2023-03-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】518332088
【氏名又は名称】株式会社コンフェスタ
(74)【代理人】
【識別番号】100173679
【弁理士】
【氏名又は名称】備後 元晴
(72)【発明者】
【氏名】森下 利香
(72)【発明者】
【氏名】田中 久生
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038FA011
4J038FA221
4J038FA281
4J038GA14
4J038KA04
4J038KA08
4J038NA01
4J038NA12
4J038PA17
4J038PB01
4J038PC11
(57)【要約】
【課題】天然爪と人工爪との良好な接着性と、時間の経過による白濁を抑える点での高い美観性とを両立した人工爪組成物を提供する。
【解決手段】本発明の人工爪組成物は、(A)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有し、リン原子を有しない化合物と、(B)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物と、(C)ラジカル重合開始剤とを含有し、(B)成分に含まれるリン酸量は、(B)成分100質量部に対して0.01質量部以上7質量部未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有し、リン原子を有しない化合物と、
(B)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物と、
(C)ラジカル重合開始剤とを含有し、
前記(B)成分に含まれるリン酸量は、(B)成分100質量部に対して0.01質量部以上7質量部未満である、人工爪組成物。
【請求項2】
前記(B)成分の含有量が人工爪組成物100質量部に対して4.5質量部以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(A)成分のうち親水性化合物の割合は、人工爪組成物100質量部に対して35質量部以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工爪組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合性不飽和結合を有する化合物を他の共重合可能な単量体と共重合した重合体は皮膜形成性があり、人工爪組成物として用いられる。
【0003】
人工爪組成物に求められる特性として、天然爪と人工爪との接着性、表面の滑らかさや光沢、及び皮膜の耐久性等が挙げられ、例えば、(a)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物、(b)特定のメタクリレート基を有する酸性リン化合物、および(c)ラジカル重合開始材を含む人工爪組成物が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の化合物によると、これらの特性を充足する人工爪組成物を提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の化合物は、酸性リン化合物を含有する。酸性リン化合物を含有することで天然爪と人工爪との接着性を改善できる一方で、時間の経過により白濁する場合があり、時間の経過による白濁を改善することが求められている。
【0006】
本発明の目的は、天然爪と人工爪との良好な接着性と、時間の経過による白濁を抑える点での高い美観性とを両立した人工爪組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の酸性リン化合物を用いることで、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
第1の特徴に係る発明は、(A)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有し、リン原子を有しない化合物と、(B)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物と、(C)ラジカル重合開始剤とを含有し、前記(B)成分に含まれるリン酸量は、(B)成分100質量部に対して0.01質量部以上7質量部未満である、人工爪組成物を提供する。
【0009】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、前記(B)成分の含有量が組成物100質量部に対して4.5質量部以上である組成物を提供する。
【0010】
第1及び第2の特徴に係る発明によると、組成物が(B)成分を含有することで(B)成分の含有量を組成物100質量部に対して4.5質量部以上にすることを可能にし、より高い接着性を確保することができる。また、(B)成分に含まれるリン酸量が(B)成分100質量部に対して0.01質量部以上7質量部未満であることから、(B)成分の含有量が組成物100質量部に対して4.5質量部以上であっても時間の経過による白濁を抑えることができる。
【0011】
第1及び第2の特徴に係る発明によると、天然爪と人工爪との良好な接着性と、時間の経過による白濁を抑える点での高い美観性とを両立した人工爪組成物を提供することができる。
【0012】
第3の特徴に係る発明は、第1又は第2の特徴に係る発明であって、前記(A)成分のうち親水性化合物の割合は、人工爪組成物100質量部に対して35質量部以下である組成物を提供する。
【0013】
第3の特徴に係る発明によると、(A)成分のうち親水性化合物の割合が人工爪組成物100質量部に対して35質量部以下であることから、天然爪と人工爪との良好な接着性と、時間の経過による白濁を抑える点での高い美観性とを両立させることに加え、硬化物の高い強度と、天然爪からの水分の吸収によるトラブル防止といった課題も解決した人工爪組成物を提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、天然爪と人工爪との良好な接着性と、時間の経過による白濁を抑える点での高い美観性とを両立した人工爪組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な形態の一例について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0016】
<人工爪組成物>
本実施形態に係る人工爪組成物は、(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有し、リン原子を有しない化合物と、(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物と、(C)成分:ラジカル重合開始剤とを含有する。
【0017】
〔(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有し、リン原子を有しない化合物〕
(A)成分の種類は、特に限定されない。例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、アルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
なお、本実施形態において、「(メタ)アクリレート」の用語は、アクリレート、メタクリレートのどちらでもよいという意味である。
【0019】
また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等に例示される水酸基を有する(メタ)アクリル系ビニルモノマー等も例示される。
【0020】
二官能以上のモノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
ポリオールのアルキレンオキサイドの(メタ)アクリレートとして、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタントリテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセンリトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
また、ビスフェノールA、F、S等のビスフェノール類のアルキレンオキサイド変性体のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、F、S等の水添ビスフェノール類のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、F、S等の水添ビスフェノール類のアルキレンオキサイド変性体のジ(メタ)アクリレート、トリスフェノール類のアルキレンオキサイド変性体のジ(メタ)アクリレート等も例示される。
【0023】
また、(メタ)アクリル基とイソボルニル基(イソボルネオ―ルからOHが一つ取れたもの)とが結合したイソボルニル(メタ)アクリレート等も例示される。
【0024】
また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルキレングリコールのポリラクトネートジ(メタ)アクリレート、グリセリン、ジグリセン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリラクトネート(メタ)アクリレート等の多官能モノマーも例示される。
【0025】
なお、本実施形態において、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートの総称であり、アクリロイル基含有重合性モノマーとメタクリロイル基含有重合性モノマーとのいずれも含むものとする。
【0026】
(A)成分は、1種類でなく、2種類以上の混合物であってもよい。また、人工爪組成物は、(A)成分以外に、他の重合性化合物、例えば分子内に少なくとも1個以上の重合性基を有する単量体のオリゴマー又はポリマーを含んでいてもよい。また、酸性基やフルオロ基等の置換基を同一分子内に有していてもよい。
【0027】
複数の(メタ)アクリロイル基を分子中に有するオリゴマーとしては、例えば、複数の単量体が重合して鎖状となった分子鎖構造と、複数の(メタ)アクリロイル基と、を分子中に有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。なお、(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、通常、400以上50,000以下である。
【0028】
(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、複数のウレタン結合を分子鎖中に有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシドの開環反応によって生じた分子鎖を有するエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、複数のエステル結合を分子鎖中に有するポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、複数のエーテル結合を分子鎖中に有するポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
【0029】
中でも、(A)成分は、(A1)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、(A2)(メタ)アクリル系ビニルモノマー及び/又はイソボルニル(メタ)クリレートモノマーとの混合物であることが好ましく、(A1)ウレタンアクリレートオリゴマーと、(A2)メタクリル系ビニルモノマー及び/又はイソボルニルメタクリレートモノマーとの混合物であることがより好ましい。(A)成分がウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことにより、人工爪用組成物から形成された人工爪の割れが生じにくいという利点がある。また、人工爪用組成物から形成された人工爪が生体の爪に密着しやすいという利点がある。また、アルキル(メタ)アクリレートモノマー及び/又はイソボルニル(メタ)クリレートモノマーを含有することにより、より優れた硬度を有する人工爪を形成することができる。
【0030】
(A1)成分と(A2)成分の質量比は特に限定されないが、(A1)成分:(A2)成分=50:50~80:20の範囲内にあることが好ましく、60:40~75:25の範囲内にあることがより好ましい。
【0031】
上述した通り、(A)成分には、水酸基を有する(メタ)アクリル系ビニルモノマー、すなわち親水性化合物も含まれる。しかしながら、(A)成分のうち親水性化合物の割合は、人工爪組成物100質量部に対して35質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることがさらに好ましく、20質量部以下であることが特に好ましい。親水性化合物は、時間の経過による硬化物の白濁を抑えることへの一定の効果が期待されるものの、親水性化合物の割合が高いと、硬化物の強度に影響し得る。また、親水性化合物の割合が高いと、天然爪から水分を吸収することに起因するトラブルの原因となり得る。
【0032】
(A)成分のうち親水性化合物の割合が人工爪組成物100質量部に対して35質量部以下であることから、天然爪と人工爪との良好な接着性と、時間の経過による白濁を抑える点での高い美観性とを両立させることに加え、硬化物の高い強度と、天然爪からの水分の吸収によるトラブル防止といった課題も解決した人工爪組成物を提供できる。
【0033】
(A)成分の含有量は特に制限されないが、人工爪組成物がジェルネイル組成物、すなわち、コーティング(表面側に塗布され、艶出しや保護のために設けられるトップジェル層としてのジェルネイル)や、接着(爪側に設けられ爪との密着性を確保するために設けられるベースジェル層としてのジェルネイル)、着色(トップジェル層とベースジェル層の間に設けられ、発色のためのカラー層としてのジェルネイル)等を用途とする場合、(A)成分の含有量の下限は、人工爪組成物100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、50質量部以上であることが特に好ましい。また、(A)成分の含有量の上限は、人工爪組成物100質量部に対して90質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。
【0034】
人工爪組成物がプライマー(爪の表面に塗布し、爪とジェルネイルとの間の密着性を高めるための液剤。ネイルプライマー、ジェルネイル用下地剤等とも称される。)を用途とする場合、(A)成分の含有量の下限は、人工爪組成物100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましい。また、(A)成分の含有量の上限は、人工爪組成物100質量部に対して40質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましく、8質量部以下であることが特に好ましい。
【0035】
〔(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物〕
【0036】
酸性リン化合物は、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するものであれば、特に限定されない。
【0037】
ラジカル重合性不飽和二重結合を有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、シアノアクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等があるが、特に(メタ)アクリロイル基とビニル基が好ましい。
【0038】
また、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物が、P-OH結合を有する化合物としては、リン酸モノエステル基、リン酸ジエステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸モノエステル基、亜リン酸モノエステル基、ホスフィン酸基、およびピロリン酸基から選択される少なくとも1種を有する化合物であるが、特にリン酸モノエステル基、リン酸ジエステル基や、ホスホン酸基を有する化合物が好ましい。
【0039】
酸性リン化合物の例として、(メタ)アクリレート基を有するラジカル重合性リン酸エステル化合物を用いることができる。また、酸性リン化合物として、例えば、リン酸2-アクリロイルオキシエチル、リン酸2-アクリロイルオキシプロピル、リン酸2-アクリロイルオキシブチル、リン酸2-アクリロイルオキシペンチル、リン酸2-アクリロイルオキシヘキシル、リン酸吉草酸アクリロイルオキシエチル、リン酸吉草酸アクリロイルオキシプロピル、リン酸吉草酸アクリロイルオキシブチル、リン酸吉草酸アクリロイルオキシペンチル、リン酸吉草酸アクリロイルオキシヘキシル、リン酸カプロン酸アクリロイルオキシエチル、リン酸カプロン酸アクリロイルオキシプロピル、リン酸カプロン酸アクリロイルオキシブチル、リン酸カプロン酸アクリロイルオキシペンチル、リン酸カプロン酸アクリロイルオキシヘキシル、リン酸カプリル酸アクリロイルオキシエチル、リン酸カプリル酸アクリロイルオキシプロピル、リン酸カプリル酸アクリロイルオキシブチル、リン酸カプリル酸アクリロイルオキシペンチル、リン酸カプリル酸アクリロイルオキシヘキシル、リン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)、リン酸ビス(2-アクリロイルオキシプロピル)、リン酸ビス(2-アクリロイルオキシブチル)、リン酸ビス(2-アクリロイルオキシペンチル)、リン酸ビス(2-アクリロイルオキシヘキシル)、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノアクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジアクリレート、プロピレンオキサイド変性リン酸ジアクリレート、リン酸変性エポキシアクリレート等からなる群より選ばれる1種類以上が挙げられる。
【0040】
本実施形態によると、(A)成分による(メタ)アクリル系化合物の重合反応から得られる高い接着強度と、(B)成分の酸性リン化合物によって得られる基体との高い密着性との両方が得られるため、天然爪と人工爪との良好な接着性が得られる。
【0041】
(B)成分の含有量は特に制限されないが、人工爪組成物が上述したコーティング、接着、着色等を用途とする場合、(B)成分の含有量の下限は、人工爪組成物100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましく、4.5質量部以上であることがよりさらに好ましく、5質量部以上であることが特に好ましい。また、(B)成分の含有量の上限は、人工爪組成物100質量部に対して40質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましく、8質量部以下であることが特に好ましい。
【0042】
人工爪組成物が上述したプライマーを用途とする場合、(B)成分の含有量の下限は、人工爪組成物100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、4.5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、30質量部以上であることがよりさらに好ましく、50質量部以上であることが特に好ましい。また、(B)成分の含有量の上限は、人工爪組成物100質量部に対して90質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。
【0043】
(B)成分に含まれるリン酸量は、(B)成分100質量部に対して7質量部未満であり、6質量部以下であり、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。なお、本実施形態において、リン酸量は、(B)成分の分子量に対する(B)成分に含まれるリン酸分子に相当するところの分子量の割合から算出される質量比で表される値であるものとする。
【0044】
リン酸量が7質量部未満であることにより、(B)成分の含有量を組成物100質量部に対して4.5質量部以上にすることを可能にし、より高い接着性を確保することができる。また、(B)成分に含まれるリン酸量が(B)成分100質量部に対して7質量部未満であることから、(B)成分の含有量が組成物100質量部に対して4.5質量部以上であっても時間の経過による白濁を抑えることができる。
【0045】
また、リン酸量の下限は特に限定されるものでないが、天然爪と人工爪との良好な接着性を担保する観点から、(B)成分100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましい。
【0046】
本実施形態に記載の発明によると、天然爪と人工爪との良好な接着性と、時間の経過による白濁を抑える点での高い美観性とを両立した人工爪組成物を提供することができる。
【0047】
〔(C)成分:ラジカル重合開始剤〕
本実施形態に記載の人工爪組成物は、ラジカル重合開始剤を含有する。カチオン重合開始剤の使用は、毒性の問題を生じ得るため好ましくない。
【0048】
ラジカル重合開始剤は、光硬化性であってもよく、熱硬化性であってもよいが、数10秒から数分で人工爪組成物を固められることから、ラジカル重合開始剤は、光硬化性であることが好ましい。
【0049】
[光ラジカル重合開始剤]
人工爪組成物が光硬化性である場合、(C)成分は、光の作用によりラジカル共重合を開始させる能力を有するものであれば特に限定されない。例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-フェニル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系開始剤;α-アシロキシムエステル、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2-エチルアントラキノン、4’,4’’-ジエチルイソフタロフェノン等のケトン系開始剤;2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-イミダゾール等のイミダゾール系開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系開始剤;カルバゾール系開始剤等が挙げられる。
【0050】
光ラジカル重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0051】
光ラジカル重合開始剤の含有量は特に限定されるものでないが、人工爪組成物100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0052】
[熱ラジカル重合開始剤]
人工爪組成物が熱硬化性である場合、(C)成分は、常温熱硬化性を有することが好ましい。
【0053】
常温熱硬化性を有する熱ラジカル重合開始剤として、有機過酸化物およびアゾ化合物のいずれを使用してもよい。有機過酸化物の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3、3.5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m-トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-s-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-m-トルイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシアセテート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等が挙げられる。
【0054】
アゾ化合物の具体例として、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジンー2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、ジメチル2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられる。
【0055】
熱ラジカル重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0056】
熱ラジカル重合開始剤の含有量は特に限定されるものでないが、人工爪組成物100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0057】
なお、(C)成分は、熱ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤の両方を含むものであってもよい。
【0058】
〔各種添加剤〕
本実施形態の人工爪組成物には、必要に応じて、公知の各種添加剤を配合することができる。かかる添加剤の例としては、重合促進剤、重合禁止剤、着色剤、変色防止剤、蛍光剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、揮発性有機溶媒等が挙げられる。
【実施例0059】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
【0060】
<人工爪組成物>
〔使用した成分〕
(A)1分子中に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物
A1:ウレタンアクリレートオリゴマー(ポリエーテル系、平均分子量:15000)
A2:ウレタンアクリレートオリゴマー(ポリエーテル系、平均分子量:4500)
A3:2-ヒドロキシプロピルメタクリレート
A4:イソボルニルメタクリレート
【0061】
(B)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物(リン酸エステル化合物)
【表1】
2-アクリロキシエチルフォスフェート及びビス(2-アクリロキシエチル)-フォスフェートの混合物
【化1】
n=1:2-アクリロキシエチルフォスフェート
n=2:ビス(2-アクリロキシエチル)-フォスフェート
2-メタクリロキシエチルフォスフェート及びビス(2-メタクリロキシエチル)-フォスフェートの混合物
【化2】
n=1:2-メタクリロキシエチルフォスフェート
n=2:ビス(2-メタクリロキシエチル)-フォスフェート
【0062】
(C)光重合開始剤
C1:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
【0063】
〔人工爪組成物の調整〕
表2~5の調整混合に従い、上記A1~A4、B-P11~P25、C1の成分を電子天秤により計量後、攪拌混合して実施例1~12、比較例1~10に係る人工爪組成物を調製した。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
実施例1~12は、本発明の人工爪組成物に相当する。比較例1及び8は、本発明の(B)成分に相当する成分を含有しない人工爪組成物に相当する。比較例2~7、9及び10は、本発明の(B)成分に含まれるリン酸量が7質量%以上である人工爪組成物に相当する。
【0069】
<評価試験>
調製した人工爪組成物それぞれについて、以下に示す手順で透明度の評価1及び2並びに接着性試験を行った。
【0070】
〔評価試験の手順〕
[透明度の評価1]
次の工程にしたがって、人工爪組成物の硬化物を含む試験片を製作した。
(1)透明なガラス板上に実施例又は比較例の人工爪組成物を取り出す
(2)厚さ0.8mmのスペーサーを介して、透明なガラス板でジェルネイルを挟み込む
(3)スペーサーを介したガラス板をクリップ等で固定し、厚さが変化しないようにする
(4)市販ジェルネイル用光照射機を使用して各面30秒間光照射を実施し人工爪組成物を硬化させる
(5)硬化した人工爪組成物を取り出し、約15mm各の正方形に切り出しこれを試験片とする
【0071】
各実施例及び比較例毎に製作した試験片を、水中に浸漬した。そして、水中浸漬48時間後に試験片を取り出し、ワイプで表面の水分をふき取る。試験片を白い背景色上に置いた場合と、黒い背景色に置いた場合の2種類のパターンで写真撮影を行い、試験片のコントラストが分かるようにした。撮影した写真から白背景の場合の試験片の明度(HSV明度)と黒背景の場合の試験片の明度(HSV明度)とを取得し、その明度差でコントラストを確認した。HSV明度は0から100までの数値であるため、明度差が大きいほど透明性良好であり、人工爪組成物としては好ましく、明度差が小さいほど透明性が悪く、白濁傾向にあることを示す。
【0072】
[透明性の評価2]
透明性の評価2では、実施例又は比較例の人工爪組成物を被験者の天然爪に塗布して硬化後、一定期間の日常生活を送った後の人工爪組成物の透明性を評価した。透明性の評価2の詳細な手順を以下に示す。
(施術方法)
(1)ジェルネイル用ネイルファイル(爪やすり、粗さ:600グリッド)を使用して、天然爪表面を削り新鮮面を得る。
(2)続いて、新鮮面を、エタノールを含侵させたワイプでふき取り、粉塵の除去と油分除去を行う。
(3)続いて、粉塵等を除去した新鮮面に人工爪組成物を塗布し、市販ジェルネイル専用LEDライトを使用して硬化させる。
(4)続いて、硬化させた人工爪組成物の上から市販トップジェルを塗布し、市販ジェルネイル専用LEDライトを使用して硬化させる。なお、トップジェルは、天然爪に塗布した人工爪組成物等のジェルネイルを用いた美粧の表面に塗布し、良好なツヤを得るためのジェルネイル商材である。
【0073】
(透明性の評価2の評価尺度及び評価点)
美粧を天然爪上に施した状態で、被験者は、7日間の日常生活を送る。そして、7日間の日常生活を送った後の天然爪上の人工爪組成物硬化体の状態を表5の尺度で評価し、評価点とする。
【表6】
【0074】
表6において、評価点「〇」及び「◎」に関しては、人工爪組成物の美しい美的外観が保たれており、好ましい一方で、評価点「×」に関しては、美的外眼に問題があり不適であると判断した。
【0075】
[接着性試験]
接着性試験では、人工爪組成物を被験者の天然爪に塗布して硬化後、一定期間の日常生活を送った後の人工爪組成物の接着性を評価した。接着性試験の詳細な手順を以下に示す。
(施術方法)
前述の[透明性の評価2](施術方法)に準拠する。
【0076】
(接着性試験における接着性の評価及び評価尺度)
美粧を天然爪上に施した状態で、被験者は、14日間の日常生活を送る。そして、14日間の日常生活を送った後の天然爪上の人工爪組成物硬化体の状態を表6の尺度で分類したものを接着性試験の評価点とする。
【表7】
【0077】
【0078】
(比較例1)
人工爪組成物と爪との接着力及び接着耐久性を向上させる(B)成分を含まない組成物であるため、本発明の実施例には該当しない。評価の結果、(B)成分を含まない事から吸水による白濁が認められないが、接着耐久性に劣ることが明らかとなった。
【0079】
(実施例1~3)
本発明の実施例であり、人工爪組成物と爪との接着力及接着耐久性に優れ、(B)成分を含有するものの吸水による白濁の程度が小さく、実際の施術環境においても、美的外観を大きく損ねない組成物である。
【0080】
(比較例2~3)
人工爪組成物と爪との接着力及び接着耐久性を向上させる、(B)成分を含有する組成物であるが、(B)成分中のリン酸含有量が多いために、吸水による白濁の程度が大きい。そのため、実際の施術環境においては、白濁により美的外観が大きく悪化し、人工爪組成物として不適である。
【0081】
【0082】
(実施例4~6)
本発明の実施例であり、人工爪組成物と爪との接着力及接着耐久性に優れ、(B)成分を含有するものの吸水による白濁の程度が小さく、実際の施術環境においても、美的外観を大きく損ねない組成物である。
【0083】
(比較例4~5)
人工爪組成物と爪との接着力及び接着耐久性を向上させる、(B)成分を含有する組成物であるが、(B)成分中のリン酸含有量が多いために、吸水による白濁の程度が大きい。そのため、実際の施術環境においては、白濁により美的外観が大きく悪化し、人工爪組成物として不適である。
【0084】
【0085】
(実施例7~9)
本発明の実施例であり、人工爪組成物と爪との接着力及接着耐久性に優れ、(B)成分を含有するものの吸水による白濁の程度が小さく、実際の施術環境においても、美的外観を大きく損ねない組成物である。
【0086】
(比較例6~7)
人工爪組成物と爪との接着力及び接着耐久性を向上させる、(B)成分を含有する組成物であるが、(B)成分中のリン酸含有量が多いために、吸水による白濁の程度が大きい。そのため、実際の施術環境においては、白濁により美的外観が大きく悪化し、人工爪組成物として不適である。
【0087】
以上の結果より、実際の施術環境下において生じる白濁による透明性低下は、(B)成分中のリン酸含有量の増加によって引き起こされ、(B)成分中のリン酸含有量が7質量部未満であれば、(B)成分添加量の大小にかかわらず、白濁の発生が低いレベルに抑えられ、良好な美的外観が保たれることが明らかとなった。
【0088】
ここで、透明性評価1及び透明性評価2の結果より、透明性評価1における「明度差」が50以下となると白濁による透明性低下が、施術環境下での美的外観の低下につながることが明らかである。
【0089】
【0090】
(比較例8)
人工爪組成物と爪との接着力及び接着耐久性を向上させる(B)成分を含まない組成物であるため、本発明の実施例には該当しない。評価の結果、(B)成分を含まない事から吸水による白濁が認められないが、接着耐久性に劣ることが明らかとなった。
【0091】
(実施例10~12)
本発明の実施例であり、人工爪組成物と爪との接着力及接着耐久性に優れ、(B)成分を含有するものの吸水による白濁の程度が小さく、実際の施術環境においても、美的外観を大きく損ねない組成物である。水酸基含有重合性単量体を含まない場合であっても、白濁傾向に変化は認められなかった。
【0092】
(比較例9~10)
人工爪組成物と爪との接着力及び接着耐久性を向上させる、(B)成分を含有する組成物であるが、(B)成分中のリン酸含有量が多いために、吸水による白濁の程度が大きい。そのため、実際の施術環境においては、白濁により美的外観が大きく悪化し、人工爪組成物として不適である。
また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等に例示される水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー等も例示される。