(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131194
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】放送システムおよび放送実績確認方法
(51)【国際特許分類】
H04N 21/235 20110101AFI20240920BHJP
H04N 21/238 20110101ALI20240920BHJP
H04H 20/12 20080101ALI20240920BHJP
H04H 60/29 20080101ALI20240920BHJP
【FI】
H04N21/235
H04N21/238
H04H20/12
H04H60/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041304
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】小暮 大輔
【テーマコード(参考)】
5C164
【Fターム(参考)】
5C164FA29
5C164SA41S
5C164SB06P
5C164SB21P
(57)【要約】
【課題】CMの映像信号および音声信号が送信機に送出されたことの確認の信頼性を向上させる。
【解決手段】放送システム10は、IPパケットによる、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームがシステム内部において別個に伝送され、番組素材とCM素材とを送出する送信装置14を備え、CM素材を特定するためのCM素材特定情報を、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームに設定するCM素材特定情報設定手段11と、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームを送信信号として送信装置に送出する送信信号供給手段12と、送信信号からCM素材特定情報を検出するCM素材特定情報検出手段13とを含む。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPパケットによる、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームがシステム内部において別個に伝送され、番組素材とCM素材とを送出する送信装置を備える放送システムであって、
前記CM素材を特定するためのCM素材特定情報を、前記映像ストリーム、前記音声ストリームおよび前記補助データストリームに設定するCM素材特定情報設定手段と、
前記映像ストリーム、前記音声ストリームおよび前記補助データストリームを送信信号として前記送信装置に送出する送信信号供給手段と、
前記送信信号から前記CM素材特定情報を検出するCM素材特定情報検出手段と
を備えた放送システム。
【請求項2】
前記送信信号から抽出した前記CM素材特定情報を上位装置に出力するCM素材特定情報出力手段を備えた
請求項1記載の放送システム。
【請求項3】
前記送信信号供給手段は、SDI形式の映像データ、音声データおよび補助データの各々を、SMPTEのST2110シリーズの規定に従ってIPパケット化し、前記CM素材特定情報をSDPファイルに設定する第1素材データ送信手段であり、
前記CM素材特定情報検出手段は、前記第1素材データ送信手段から受信した前記SDPファイルから前記CM素材特定情報を検出する第2素材データ送信手段である
請求項2記載の放送システム。
【請求項4】
前記第1素材データ送信手段は、前記SDPファイルの送出を完了したときに、その旨を示す情報を前記上位装置に出力し、
前記第2素材データ送信手段は、前記SDPファイルから前記CM素材特定情報を検出したときに、その旨を示す情報を前記上位装置に出力する
請求項3記載の放送システム。
【請求項5】
前記送信信号供給手段は、IPパケットのヘッダに前記CM素材特定情報を設定するヘッダ追記手段を含み、
前記CM素材特定情報検出手段は、IPパケットのヘッダから前記CM素材特定情報を検出するヘッダ判定手段である
請求項1または請求項2記載の放送システム。
【請求項6】
前記送信信号供給手段が送出する前記送信信号を監視する監視装置を備えた
請求項5記載の放送システム。
【請求項7】
監視装置は、
前記送信信号供給手段からの送信信号に基づく映像を表示する表示器と、
前記表示器における画面レイアウトを制御する表示制御手段とを備え、
前記表示制御手段は、前記ヘッダ判定手段が前記CM素材特定情報を検出したときに、前記画面レイアウトを変更する
請求項6記載の放送システム。
【請求項8】
IPパケットによる、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームがシステム内部において別個に伝送され、番組素材とCM素材とを送出する送信装置を備える放送システムで実行される放送実績確認方法であって、
前記CM素材を特定するためのCM素材特定情報を、前記映像ストリーム、前記音声ストリームおよび前記補助データストリームに設定し、
前記映像ストリーム、前記音声ストリームおよび前記補助データストリームを送信信号として前記送信装置に送出し、
前記送信信号から前記CM素材特定情報を検出する
放送実績確認方法。
【請求項9】
前記送信信号から抽出した前記CM素材特定情報を上位装置に出力する
請求項8記載の放送実績確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CM素材の送出が行われたことを確認するための機能を有する放送システムおよび放送実績確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CM(Commercial Message)の配信状況を正確に把握することは、番組を制作する放送局や番組を提供する広告主にとって重要である。放送局は、CM素材(CM映像およびCM音声)に対して、それに対応する確認コードを割り当て、確認コードに基づいてCM素材の送出を確認する(例えば、特許文献1参照)。また、放送局における監視者等が、目視でCM映像の送出を確認する。
【0003】
放送局における放送システムは、番組およびCM素材の映像データ、音声データ、および付帯データ(時刻、天気予報、データ放送といった放送に付帯するデータ)を、放送時間に合わせて順番通りに送信機に送り出すマスターシステム(マスター設備)を含む。また、営業放送システム(以下、営放システム)と呼ばれるシステムで、放送する番組編成が作成される(例えば、特許文献2参照)。一般に、マスターシステムは、営放システムに対して、予定通りにCM素材が送信機に送出されたことを報告する。
【0004】
マスターシステムとして、SDI(Serial Digital Interface)マスターと呼ばれるシステムがある。SDIマスターでは、局内外からの本線信号(映像信号や音声信号など)等の信号は、SDI規格に基づくSDI信号で伝送され、送信機に送出される。
【0005】
SDIマスターにおいて、例えば、信号の補助データ(アンシラリデータ)の領域であるアンシラリ(ANC:Ancillary)領域に、CM素材に対応する素材ID(identifier)が設定される。SDIマスターにおいて、CM素材が送信機側に送出されたことを確認する装置(ブロック)は、CM素材に対応する素材IDを検知すると、CM素材が送信機に送出されたと判定する。以下、ANC領域の信号を補助信号または補助データという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-192966号公報
【特許文献2】特開2022-51159号公報
【特許文献3】特開2020-162090号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】"AMWA IS-05 NMOS Device Connection Management Specification"、[online]、AMWA、[令和5年3月3日検索]、インターネット(URL: https://specs.amwa.tv/is-05/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
放送局内のネットワークをIP(Internet Protocol)で構築することが考えられている。特許文献3には、SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)で、SDI信号をIPパケット化する規格として、ST2110シリーズが規定されたことが記載されている。ST2110シリーズは、映像信号(映像データ)、音声信号(音声データ)および補助信号(補助データ)を別々のストリームで伝送するための伝送方式である。
【0009】
また、AMWA(Advanced Media Workflow Association)で、デバイスの接続管理(Device Connection Management)のための制御インタフェース規格であるNMOS(Networked Media Open Specifications) IS-05が規定されている(非特許文献1参照)。
【0010】
IPパケットで信号伝送を行うマスターシステムを、IPマスターと呼ぶ。IPマスターでは、本線信号がIPパケットで伝送され、送信機に送出される。以下、本線信号をIPパケットで伝送するIPマスターを、IPパケットベースのIPマスターまたはIPパケットベースのマスターシステムと表現することがある。また、IPマスター内で、IPパケットを取り扱い可能な装置(ブロック)を、IPパケットベースの装置と表現することがある。
【0011】
IPパケットを使用せずにSDI信号で本線信号等を伝送する場合には、映像信号、音声信号および補助信号は、1つのストリームでまとめて伝送される。しかし、IPマスターでは、ST2110シリーズの規格に準拠すると、映像信号と音声信号と補助信号とは、別々のストリームで伝送される。したがって、CMの映像信号とCMの音声信号とCMの補助信号とは、別々のストリームで伝送される。
【0012】
すると、CM素材が送信機側に送出されたことを確認する装置が、CM素材の素材IDを検知することによってCM素材が送信機側に送出されたことを検知するように構成されている場合には、その装置は、CMの映像信号を伝送するストリームおよび音声信号を伝送するストリームとは別のストリームからCM素材の素材IDを抽出する。すると、CM素材の素材IDが検出されても、CMの映像信号および音声信号が送信機側に送出されたことを確実に保証することはできない。換言すれば、CM素材が送信機側に送出されたことを確認するSDIマスターでの方法を、そのままIPマスターに適用すると、CMの映像信号および音声信号が送信機側に送出されたことの確認の信頼性が低下する。
【0013】
本発明は、IPパケットベースのマスターシステムにおいて、CMの映像信号および音声信号が送信機に送出されたことの確認の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による放送システムは、IPパケットによる、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームがシステム内部において別個に伝送され、番組素材とCM素材とを送出する送信装置を備える放送システムであって、CM素材を特定するためのCM素材特定情報を、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームに設定するCM素材特定情報設定手段と、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームを送信信号として送信装置に送出する送信信号供給手段と、送信信号からCM素材特定情報を検出するCM素材特定情報検出手段とを含む。
【0015】
本発明による放送実績確認方法は、IPパケットによる、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームがシステム内部において別個に伝送され、番組素材とCM素材とを送出する送信装置を備える放送システムで実行される放送実績確認方法であって、CM素材特定情報をCM素材に付与し、CM素材特定情報を、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームに設定し、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームを送信信号として送信装置に送出し、送信信号からCM素材特定情報を検出する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、CMの映像信号および音声信号が送信機に送出されたことの確認の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態のIPマスターの構成例を示すブロック図である。
【
図2】第1IPゲートウェイおよび第2IPゲートウェイの構成例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態における、IPパケット化された、映像ストリーム、音声ストリーム、および補助データストリームを示す説明図である。
【
図4】映像センダ、音声センダおよび補助データセンダが生成するSDPファイルの一例を示す説明図である。
【
図5】第1IPゲートウェイの動作を示すフローチャートである。
【
図6】第2IPゲートウェイの動作を示すフローチャートである。
【
図7】第2の実施形態のIPマスターの構成例を示すブロック図である。
【
図8】第2の実施形態における、IPパケット化された、映像ストリーム、音声ストリーム、および補助データストリームを示す説明図である。
【
図9】プレイアウトサーバおよびCM素材ID検出部の動作を示すフローチャートである。
【
図10】監視装置の構成例を示すブロック図である。
【
図11】監視装置における表示器の表示例を示す説明図である。
【
図12】放送システムの主要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0019】
実施形態1.
図1は、第1の実施形態の放送システムとしてのIPマスターの構成例を示すブロック図である。
図1には、上位装置としての営放システム300も記載されている。
図1における矢印は、信号(データ)の流れの方向を端的に示すが、双方向性を排除するものではない。このことは、他のブロック図についても同様である。
【0020】
図1に示すIPマスター100は、データサーバ(DS:Data Server)110、自動番組制御システム(APS:Automatic Program control System)120、CMバンク130、第1IPゲートウェイ140、第2IPゲートウェイ150、エンコーダ(ENC)170、多重化装置(MUX)180、および送信機190を備えている。
【0021】
エンコーダ170、多重化装置180および送信機190のまとまりを、送信信号を受信してそれを送出する送信装置101とする。
【0022】
IPマスター100には、番組の映像データ、音声データおよび補助データ(字幕データを含む。)を出力するサーバ(Program Serverなど)も設けられている。また、IPマスター100には、番組の映像データ、音声データおよび補助データとCMの映像データ、音声データおよび補助データとを切り替えるため等に使用されるスイッチャも設けられている。
図1では、それらは、記載省略されている。
【0023】
データサーバ110は、営放システム300から放送スケジュールを受信して保存する。APS120は、放送スケジュールに従って、番組およびCM等の素材の送出制御を行う。
【0024】
CMバンク130は、CM素材を記憶する。CMバンク130は、素材ID付与部131を含む。素材ID付与部131は、CM素材に素材IDを付与する。CM素材の素材IDは、SDI形式の補助データに設定される。すなわち、CM素材の素材IDは、アンシラリ領域に設定される。
【0025】
第1IPゲートウェイ140は、SDI形式で入力される映像データ、音声データおよび補助データを、IPパケットに変換する。以下、SDI形式で入力される映像データ、音声データおよび補助データを、SDI信号という。第2IPゲートウェイ150は、IPパケット化されたデータをSDI信号に戻す。
【0026】
エンコーダ170は、映像データおよび音声データ等を符号化する。多重化装置180は、エンコーダ170の出力に他のデータを多重化する。送信機190は、多重化装置180の出力を電波で送出する。
【0027】
なお、第2IPゲートウェイ150が存在することによって、少なくとも、既存のエンコーダ170、すなわち、SDI信号を取り扱うエンコーダ170を活用できる。
【0028】
図2は、第1IPゲートウェイ140および第2IPゲートウェイ150の構成例を示すブロック図である。本実施形態では、第1IPゲートウェイ140は、一例として上述したSMPTEのST2110シリーズの規定に従って処理を実行する。
【0029】
第1IPゲートウェイ140は、SDI信号をIPパケット化する。ST2110シリーズは、映像データと音声データと補助データとの各々をIPパケット化するための規格である。第1IPゲートウェイ140は、例えば、ST2110シリーズの規定に従って、SDI信号をIPパケット化する。
【0030】
図2に示すように、第1IPゲートウェイ140は、映像センダ(Video Sender)141、音声センダ(Audio Sender)142、補助データセンダ(Data Sender)143、および制御部144を含む。第2IPゲートウェイ150は、映像レシーバ(Video Receiver)151、音声レシーバ(Audio Receiver)152、および補助データレシーバ(Data Receiver)153を含む。
【0031】
第1IPゲートウェイ140において、映像センダ141は、例えば、SMPTEのST2110-20の規定に従って、SDI信号における映像データをIPパケット化して映像ストリームを生成する。音声センダ142は、例えば、SMPTEのST2110-30の規定に従って、SDI信号における音声データをIPパケット化して音声ストリームを生成する。補助データセンダ143は、例えば、SMPTEのST2110-40の規定に従って、補助データ(アンシラリデータ)をIPパケット化して補助データストリームを生成する。
図3は、IPパケット化された、映像ストリーム、音声ストリーム、および補助データストリームを模式的に示す説明図である。
【0032】
以下、映像データ、音声データおよびアンシラリデータの各々を、エッセンスということがある。
【0033】
ST2110シリーズにおけるST2110-10で、IETF(Internet Engineering Task Force)のRFC(Request For Comments )4566で規定されているSDP(Session Description Protocol)を使用することが規定されている。
【0034】
第2IPゲートウェイ150は、第1IPゲートウェイ140が行った処理と逆処理を行って、IPパケットのストリームをSDI信号に戻す機能を有する。第2IPゲートウェイ150において、映像レシーバ151は、映像センダ141からの映像ストリームを受信する。音声レシーバ152は、音声センダ142からの音声ストリームを受信する。補助データレシーバ153は、補助データセンダ143からの補助データストリームを受信する。
【0035】
映像センダ141は、映像レシーバ151で必要になる映像エッセンスに関する伝送情報が記述されたSDPファイルを生成する。音声センダ142は、音声レシーバ152で必要になる音声エッセンスに関する伝送情報が記述されたSDPファイルを生成する。補助データセンダ143は、補助データレシーバ153で必要になるアンシラリエッセンスに関する伝送情報が記述されたSDPファイルを生成する。
【0036】
さらに、映像センダ141、音声センダ142および補助データセンダ143は、CM素材に関して、SDPファイルに、素材IDを特定可能な情報を追加する。具体的には、映像センダ141、音声センダ142および補助データセンダ143の各々は、CM素材IDを特定可能な情報をSDPファイルに追加する。
【0037】
図4は、映像センダ141、音声センダ142および補助データセンダ143が生成するSDPファイルの一例を示す説明図である。
図4に示す例では、CM素材IDを特定可能な情報として、"a=CMID=xxxxx"が例示されている。以下、CM素材IDを特定可能な情報を、CM素材ID情報という。
【0038】
なお、SDPファイルは、プロトコルバージョンフィールド("v=…")、送信元フィールド("o=…")及びセッション名フィールド("s=…")など、セッションに固有の情報を記述するためのフィールド群を有する。また、
図4に示す例では、メディア記述フィールド("m=…")に、メディアタイプ("video"など)、送信ポート番号("50020"など)、トランスポートプロトコル("RTP/AVP")、およびフォーマット形式番号("96"など)が記述されている。
【0039】
ST2110-10は、SDPの使用と生成とに関する規定である。しかし、ST2110-10では、センダとレシーバと間でSDPファイルをどのようにやり取りするかは定められていない。
【0040】
放送に関する伝送システム全体の制御に関して、上述したNMOS IS-05という規格がある。一般に、SDPファイルの送受信については、NMOS IS-05の規定に従って実行される。本実施形態でも、NMOS IS-05の規定に則してSDPファイルの送受信が行われることを想定する。
【0041】
次に、
図5のフローチャートを参照して、第1IPゲートウェイ140の動作を説明する。なお、
図5には、主として、CM素材ID情報に関連する処理が記載されている。
【0042】
映像センダ141、音声センダ142および補助データセンダ143の各々は、SDI信号におけるアンシラリ領域に設定される素材IDを検出する(ステップS101)。映像センダ141、音声センダ142および補助データセンダ143の各々は、CM素材の素材IDを検出した場合には、ステップS102の処理を行う。
【0043】
ステップS102では、映像センダ141、音声センダ142および補助データセンダ143の各々は、
図4に例示されたようなSDPファイルを作成し、SDPファイルにCM素材ID情報を設定する。
図4では、CM素材ID情報として、"a=CMID=xxxxx"が例示されている。
【0044】
制御部144は、映像センダ141、音声センダ142および補助データセンダ143の各々から、SDPファイルを入手する。制御部144は、NMOS IS-05の規定に従って、SDPファイルを送出する。NMOS IS-05の規定に従うSDPファイルの送出が完了したら(ステップS103)、制御部144は、営放システム300に、CM送出完了通知を出力する(ステップS104)。
【0045】
本実施形態では、ステップS104で、制御部144は、映像センダ141が作成したSDPファイル、音声センダ142が作成したSDPファイル、および補助データセンダ143が作成したSDPファイルの送出が完了したらCM送出完了通知を出力する。しかし、制御部144は、いずれかのSDPファイル(例えば、映像センダ141が作成したSDPファイル)の送出が完了したら、CM送出完了通知を出力してもよい。なお、CM送出完了通知は、CM素材の送信機側への送出(送信装置101への送出)を完了したことを示す通知である。
【0046】
次に、
図6のフローチャートを参照して、第2IPゲートウェイ150の動作を説明する。なお、
図6には、主として、CM素材ID情報に関連する処理が記載されている。
【0047】
映像レシーバ151、音声レシーバ152および補助データレシーバ153の各々は、SDPファイルにおけるCM素材ID情報を検出する(ステップS111)。SDPファイルにおけるCM素材ID情報を検出できた場合には、映像レシーバ151、音声レシーバ152および補助データレシーバ153の各々は、営放システム300に、CM送出中通知を出力する(ステップS112)。
【0048】
CM送出中通知には、SDPファイルから検出されたCM素材ID情報も含まれる。また、CM送出中通知は、CM素材を送信機190に(厳密には、送信装置101に)送出していることを示す通知である。なお、第2IPゲートウェイ150において、制御部(図示せず)が、3つのCM素材ID情報(映像ストリームから抽出されたCM素材ID情報、音声ストリームから抽出されたCM素材ID情報、補助データストリームから抽出されたCM素材ID情報)を含むCM送出中通知を、営放システム300に出力されるように構成されてもよい。
【0049】
営放システム300は、第1IPゲートウェイ140からCM送出完了通知を受信し、かつ、第2IPゲートウェイ150からCM送出中通知を受信すると、以下の処理を行う。換言すれば、営放システム300は、CM送出完了通知の受信を契機として、所定時間内にCM送出中通知を受信した場合に、以下の処理を行う。
【0050】
すなわち、営放システム300は、第2IPゲートウェイ150から受信した3つのCM送出中通知に含まれているCM素材ID情報が一致しているか否か判定する。営放システム300は、全てのCM素材ID情報が一致していることを確認すると、CM素材が正常に送信機に送出されたと判断する。
【0051】
本実施形態では、内部において、IPパケットによる、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームが別個に伝送されるIPマスター100が用いられる場合に、CMの映像信号および音声信号が送信機に送出されたことの確認の信頼性を向上させることができる。なぜなら、実際に送信機側に(送信装置101に)送出される映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームの各々から同じCM素材ID情報が検出された場合に、CM素材が正常に送信機に送出されたと判断するからである。
【0052】
実施形態2.
図7は、第2の実施形態の放送システムとしてのIPマスターの構成例を示すブロック図である。
図7には、営放システム300も記載されている。
図1に示すIPマスター200は、IPパケットベースのIPマスターである。すなわち、IPマスター200内では、局内外からの本線信号がIPパケットで伝送され、送信機に送出される。
【0053】
IPマスター200は、DS110、APS120、CMバンク230、スイッチャ240、プレイアウトサーバ250、CM素材ID検出部260、エンコーダ(ENC)270、多重化装置180、および送信機190を備えている。
【0054】
エンコーダ270、多重化装置180および送信機190のまとまりを、送信信号を受信してそれを送出する送信装置201とする。
【0055】
CMバンク230は、CM素材を記憶する。CMバンク230は、素材ID付与部231を含む。素材ID付与部231は、CM素材に素材ID(CM素材ID)を付与する。本実施形態では、素材ID付与部231は、CM素材IDを、IPパケットのヘッダに設定する。
【0056】
プレイアウトサーバ250には、番組素材があらかじめ蓄積されている。スイッチャ240は、CM素材を選択して、プレイアウトサーバ250に供給する。プレイアウトサーバ250は、APS120から放送スケジュールに従って、番組およびCM等の素材を送信機190側に送出する。
【0057】
プレイアウトサーバ250は、素材ID付与部251を含む。素材ID付与部251は、番組素材または内部用CM素材に素材IDを付与する。素材ID付与部251は、番組素材または内部用CM素材の素材IDを、IPパケットのヘッダに設定する。
【0058】
CM素材ID検出部260は、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームの各々のIPパケットからCM素材IDを検出する。CM素材ID検出部260は、それらを検出したときに、映像ストリームのIPパケットに設定されていたCM素材ID、音声ストリームのIPパケットに設定されていたCM素材ID、および補助データストリームのIPパケットに設定されていたCM素材IDを、営放システム300に出力する。
【0059】
本実施形態では、エンコーダ270は、IPパケットベースのエンコーダである。すなわち、エンコーダ270は、IPパケットで伝送された映像データおよび音声データ等を符号化する。
【0060】
IPマスター200内のその他の装置(ブロック)の構成および機能は、第1の実施形態における装置の構成および機能と同じである。
【0061】
図7には、監視装置400も示されている。監視装置400については、後述される。
【0062】
図8は、IPパケット化された、映像ストリーム、音声ストリーム、および補助データストリームを模式的に示す説明図である。
図8には、プレイアウトサーバ250からCM素材ID検出部260に伝送される各ストリームが例示されている。上述したように、映像ストリーム、音声ストリーム、および補助データストリームにおいて、IPパケットのヘッダには、番組素材またはCM素材の素材IDが設定されている。
【0063】
次に、
図9のフローチャートを参照して、プレイアウトサーバ250およびCM素材ID検出部260の動作を説明する。なお、
図9には、主として、CM素材ID情報に関連する処理が記載されている。
【0064】
プレイアウトサーバ250は、放送スケジュールに従って、番組およびCM等の素材の送出を開始する(ステップS201)。
【0065】
CM素材ID検出部260は、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームの各々のIPパケットからCM素材IDを検出する。CM素材ID検出部260は、CM素材IDを検出できたら(ステップS202)、CM素材IDを、営放システム300に出力する(ステップS203)。
【0066】
ステップS202では、CM素材ID検出部260は、映像ストリームのIPパケットに設定されていたCM素材IDを検出したら、当該CM素材IDを営放システム300に出力する。また、CM素材ID検出部260は、音声ストリームのIPパケットに設定されていたCM素材IDを検出したら、当該CM素材IDを営放システム300に出力する。また、CM素材ID検出部260は、補助データストリームのIPパケットに設定されていたCM素材IDを検出したら、当該CM素材IDを営放システム300に出力する。
【0067】
営放システム300は、CM素材ID検出部260から3つのCM素材IDを受信すると、以下の処理を行う。
【0068】
すなわち、営放システム300は、3つのCM素材IDが一致しているか否か判定する。営放システム300は、全ての3つのCM素材IDが一致していることを確認すると、CM素材が正常に送信機に送出されたと判断する。
【0069】
本実施形態では、内部において、IPパケットによる、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームが別個に伝送されるIPマスター200が用いられる場合に、CMの映像信号および音声信号が送信機に送出されたことの確認の信頼性を向上させることができる。なぜなら、実際に送信機側に送出される映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームの各々のIPパケットのヘッダから同じCM素材IDが検出された場合に、CM素材が正常に送信機に送出されたと判断するからである。
【0070】
次に、監視装置400に関する動作を説明する。
図10は、監視装置400の構成例を示すブロック図である。監視装置400は、表示制御部410と表示器420とを備えている。
【0071】
表示制御部410には、プレイアウトサーバ250からストリーム(映像ストリーム、音声ストリーム、補助データストリーム)が供給される。表示制御部410は、少なくとも、供給されたストリームに基づく映像を表示器420に表示する。表示制御部410は、プレイアウトサーバ250から供給されたストリームに基づく映像以外の映像も表示器420に表示する制御を行う。
【0072】
図11は、表示器420の表示例を示す説明図である。
図11における上側には、プレイアウトサーバ250から供給されたストリームに基づく映像としてのオンエア映像(OA映像)が、表示器420に表示される例が示されている。また、
図11に示す例では、表示器420に、プレイアウトサーバ250から供給されたストリームに基づく映像以外の映像として、アラーム監視画像、OAモニタ画像、およびTP(送信電力)画像が表示されることが例示されている。なお、アラーム監視画像、OAモニタ画像およびTP画像は、例えば、テキストやグラフで表示される。
【0073】
CM素材ID検出部260は、CM素材IDを営放システム300に出力するときに、監視装置400に、CM素材の送出中であることを示す情報を出力する。監視装置400において、表示制御部410は、当該情報が入力されると、表示器420の画面レイアウトを変更する制御を行う。
【0074】
例えば、表示制御部410は、OA映像の表示領域を拡大する(
図11における下段参照)。したがって、CM素材の送出中では、OA映像が拡大表示される。その結果、監視者によるCM映像の監視の負担が軽減される。なお、CM素材の送出中においてOA映像が拡大表示されることは、表示器420の画面レイアウト変更の一例であり、画面レイアウト変更は、画面の拡大に限定されない。
【0075】
表示器420の画面レイアウトが変更可能になることによって、監視者の監視の負担が軽減されるだけでなく、表示器420の全体の画面サイズを小さくすることができる。状況に応じて、監視者が注視すべき画面を大きくできるので、全体の画面サイズを小さくしても、監視者に対する必要な情報提示の程度は損なわれないからである。表示器420の全体の画面サイズを小さくすることができるので、監視装置400を構成する機器が小型化される効果もある。
【0076】
なお、表示器420の画面レイアウト変更が表示制御部410の制御によって自動的に行われるだけでなく、監視者が手動で画面レイアウト変更を行えるようにしてもよい。
【0077】
図12は、放送システムの主要部を示すブロック図である。
【0078】
図12に示す放送システム10は、IPパケットによる、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームがシステム内部において別個に伝送され、番組素材とCM素材とを送出する送信装置14(例えば、送信装置101,201)を備え、CM素材を特定するためのCM素材特定情報(例えば、素材ID)を、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームに設定するCM素材特定情報設定部(CM素材特定情報設定手段)11(実施形態では、第1IPゲートウェイ140、または、素材ID付与部231で実現される。)と、映像ストリーム、音声ストリームおよび補助データストリームを送信信号として送信装置14に送出する送信信号供給部(送信信号供給手段)13(実施形態では、第1IPゲートウェイ140、または、プレイアウトサーバ250で実現される。)と、送信信号からCM素材特定情報を検出するCM素材特定情報検出部(CM素材特定情報検出手段)14(実施形態では、第2IPゲートウェイ150、または、CM素材ID検出部260で実現される。)とを備えている。
【0079】
放送システム10は、送信信号から抽出したCM素材特定情報を上位装置(例えば、営放システム300)に出力するCM素材特定情報出力部(実施形態では、第2IPゲートウェイ150、または、CM素材ID検出部260で実現される。)を備えていてもよい。
【0080】
放送システム10において、送信信号供給部12は、例えば、SDI形式の映像データ、音声データおよび補助データの各々を、SMPTEのST2110シリーズの規定に従ってIPパケット化し、CM素材特定情報をSDPファイルに設定する第1素材データ送信部(例えば、第1IPゲートウェイ140)であり、CM素材特定情報検出部13は、例えば、第1素材データ送信部から受信したSDPファイルからCM素材特定情報を検出する第2素材データ送信部(例えば、第2IPゲートウェイ150)である。
【0081】
第1素材データ送信部は、SDPファイルの送出を完了したときに、その旨を示す情報を上位装置に出力するように構成され、第2素材データ送信部は、SDPファイルからCM素材特定情報を検出したときに、その旨を示す情報を上位装置に出力するように構成されていてもよい。
【0082】
送信信号供給部12は、例えば、IPパケットのヘッダにCM素材特定情報を設定するヘッダ追記部(例えば、素材ID付与部231)を含み、CM素材特定情報検出部は、例えば、IPパケットのヘッダからCM素材特定情報を検出するヘッダ判定部(実施形態では、CM素材ID検出部260で実現される。)である
【0083】
送信信号供給部が送出する送信信号を監視する監視装置(例えば、監視装置400)を備えていてもよい。
【0084】
監視装置は、送信信号供給部12からの送信信号に基づく映像を表示する表示器(例えば、表示器420)と、表示器における画面レイアウトを制御する表示制御部(例えば、表示制御部410)とを備え、表示制御部は、ヘッダ判定部がCM素材特定情報を検出したときに、画面レイアウトを変更するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 放送システム
11 CM素材特定情報設定部
12 送信信号供給部
13 CM素材特定情報検出部
14 送信装置
100,200 IPマスター
101,201 送信装置
110 データサーバ(DS)
120 自動番組制御システム(APS)
130,230 CMバンク
131,231 素材ID付与部
140 第1IPゲートウェイ
141 映像センダ
142 音声センダ
143 補助データセンダ
144 制御部
150 第2IPゲートウェイ
151 映像レシーバ
152 音声レシーバ
153 補助データレシーバ
170,270 エンコーダ(ENC)
180 多重化装置(MUX)
190 送信機
240 スイッチャ
250 プレイアウトサーバ
251 素材ID付与部
260 CM素材ID検出部
300 営放システム
400 監視装置
410 表示制御部
420 表示器