(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131195
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20240920BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L27/04 L
H01L21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041305
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 孝行
(72)【発明者】
【氏名】笠岡 竜雄
(72)【発明者】
【氏名】中柴 康隆
【テーマコード(参考)】
5F033
5F038
【Fターム(参考)】
5F033MM03
5F033MM21
5F033RR06
5F033RR22
5F033UU01
5F033UU05
5F033VV08
5F033XX21
5F038BH03
5F038EZ20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トランジスタを形成しない一方、一対のインダクタを形成する半導体チップを含む半導体装置において、パターン占有率を大きくする。
【解決手段】トランスチップである半導体チップは、半導体基板と、半導体基板上に形成された多層配線層(第1配線層WL1~第5配線層WL5)と、を有し、多層配線層の少なくとも1層に導体パターンCP1~CP5が設けられている。導体パターンは、平面視において下層インダクタBL1Aおよび上層インダクタTL1Aを連続的に囲むように形成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタが形成されていない第1半導体チップを含む、半導体装置であって、
前記第1半導体チップは、
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられた、第1層および前記第1層の上方に配置された第2層を有する多層配線層と、
前記多層配線層の前記第1層に設けられた下層インダクタと、
前記多層配線層の前記第2層に設けられた、平面視において前記下層インダクタと重なる上層インダクタと、
前記多層配線層の少なくとも1層に設けられた導体パターンと、
を有し、
前記導体パターンは、平面視において前記下層インダクタおよび前記上層インダクタを連続的に囲んでいる、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記導体パターンは、
前記多層配線層の1層に設けられた第1導体パターンと、
前記多層配線層の他の1層に設けられた第2導体パターンと、
を含む、半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとは、複数のプラグで接続されている、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記第2導体パターンは、前記第1導体パターンの上方に設けられており、
前記第2導体パターンと前記複数のプラグは、同一の膜から構成される、半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1半導体チップは、さらに、平面視において前記導体パターンを連続的に囲むシールリングを有する、半導体装置。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記導体パターンは、平面視において前記下層インダクタおよび前記上層インダクタを連続的に囲む第1境界線と、平面視において前記第1境界線を連続的に囲む第2境界線とで囲まれた導体膜から構成されており、
前記第1境界線は、曲線を含む、半導体装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記導体パターンは、前記半導体基板の反りを抑制する機能を有する、半導体装置。
【請求項8】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記複数のプラグのそれぞれは、前記半導体基板の反りを抑制する機能を有する、半導体装置。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記導体パターンと前記上層インダクタとの最短距離は、前記下層インダクタと前記上層インダクタとの間の距離以上である、半導体装置。
【請求項10】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記導体パターンの上方または下方には、前記導体パターンと接する絶縁膜が設けられ、
前記導体パターンの厚さは、前記絶縁膜の厚さ以上である、半導体装置。
【請求項11】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記下層インダクタと前記上層インダクタとの間には、絶縁膜が設けられ、
前記導体パターンは、前記絶縁膜のうち、平面視において、前記下層インダクタおよび前記上層インダクタと重なる部分を連続的に囲んでいる、半導体装置。
【請求項12】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、前記第1半導体チップとは異なる第2半導体チップを有し、
前記第2半導体チップは、前記上層インダクタまたは前記下層インダクタと電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置において、
前記第2半導体チップは、第1送信回路または第1受信回路を有し、
前記第2半導体チップには、前記第1送信回路または前記第1受信回路に用いられるトランジスタが形成されており、
前記第1送信回路または前記第1受信回路は、前記上層インダクタまたは前記下層インダクタと電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、前記第1半導体チップおよび前記第2半導体チップとは異なる第3半導体チップを有し、
前記第3半導体チップは、第2送信回路または第2受信回路を有し、
前記第3半導体チップには、前記第2送信回路または前記第2受信回路に用いられるトランジスタが形成されており、
前記第1送信回路または前記第1受信回路は、前記上層インダクタおよび前記下層インダクタの一方と電気的に接続されており、
前記第2送信回路または前記第2受信回路は、前記上層インダクタおよび前記下層インダクタの他方と電気的に接続されている、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、例えば、誘導結合した一対のインダクタを利用して、異なる電位の間での信号伝送が行われる半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-82212号公報(特許文献1)には、トランスフォーマを構成するコイルの寄生抵抗成分の大部分を占める直列抵抗を低減するために、微細化を妨げることなく、コイルの断面積を大きくすることが可能な技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、誘導結合した一対のインダクタを利用して非接触の信号伝送を行うトランスフォーマ(デジタルアイソレータ)がある。このトランスフォーマによれば、非接触の状態での信号伝送が可能なため、一方の回路で発生した電気的ノイズが、他方の回路に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0005】
トランスフォーマを実現する半導体装置では、トランスフォーマが形成された半導体チップの汎用性を高める観点および製造コストの低減を図る観点から、一対のインダクタを形成する半導体チップと、集積回路を構成するトランジスタを形成する半導体チップとを別々に形成することが検討されている。
【0006】
ただし、この場合、一対のインダクタを形成する半導体チップには、トランジスタが形成されないため、パターン占有率が低くなるおそれがある。例えば、半導体チップにおけるパターン占有率が低いと、半導体ウェハにおいて反りが発生しやすくなり、半導体ウェハのハンドリングが困難となるおそれがある。
【0007】
また、パターン占有率が低いことは、パターンを形成するための導体膜のエッチングにおいて、エッチングによって除去される導体膜の面積が大きいことを意味する。そして、エッチング面積が大きいことは、エッチング残渣が発生しやすいことを意味する。したがって、そのパターン占有率が低い半導体チップの製造工程では、エッチング残渣に起因する異物が発生しやすく、製造歩留まりが低下するおそれがある。
【0008】
このことから、トランジスタが形成されない一方、一対のインダクタが形成される半導体チップでは、パターン占有率を大きくすることが望まれている。
【0009】
なお、本明細書では、トランジスタが形成されない一方、一対のインダクタが形成される半導体チップを「トランスチップ」と呼ぶ場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施の形態における半導体装置は、トランジスタが形成されていない第1半導体チップを含む。第1半導体チップは、多層配線層の少なくとも1層に設けられた導体パターンを有し、導体パターンは、平面視において下層インダクタおよび上層インダクタを連続的に囲んでいる。
【発明の効果】
【0011】
一実施の形態によれば、半導体チップのパターン占有率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】負荷回路を駆動する駆動制御部の構成例を示す図である。
【
図4】具現化態様における半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図5】「トランスチップ」に形成されている多層配線層の各層を示す平面図であり、(a)は、第1配線層を示す平面図であり、(b)は、第1配線層の上方に配置された第2配線層を示す平面図であり、(c)は、第2配線層の上方に配置された第3配線層および第3配線層の上方に配置された第4配線層のそれぞれを示す平面図であり、(d)は、第4配線層の上方に配置された第5配線層を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0014】
<回路構成>
図1は、モータなどの負荷回路を駆動する駆動制御部の構成例を示す図である。
【0015】
図1に示すように、駆動制御部は、制御回路CCと、トランスフォーマTR1と、トランスフォーマTR2と、駆動回路DRと、インバータINVとを有し、負荷回路LODと電気的に接続されている。
【0016】
制御回路CCから出力される制御信号は、送信回路TX1および受信回路RX1を介して、駆動回路DRに伝達される。一方、駆動回路DRから出力される信号は、送信回路TX2および受信回路RX2を介して、制御回路CCに伝達される。
【0017】
制御回路CCは、駆動回路DRを制御する機能を有する。駆動回路DRは、制御回路CCからの制御信号に基づいて、負荷回路LODを制御するインバータINVを動作させる。
【0018】
制御回路CCには、電源電位VCC1が供給され、制御回路CCは接地電位GND1により接地される。一方、インバータINVには、電源電位VCC2が供給され、インバータINVは接地電位GND2により接地される。このとき、例えば、制御回路CCに供給される電源電位VCC1は、インバータINVに供給される電源電位VCC2よりも小さい。
【0019】
送信回路TX1と受信回路RX1との間には、誘導結合(磁気結合)したコイル(インダクタ)CL1aとコイルCL1bからなるトランスフォーマTR1が介在している。これにより、送信回路TX1から受信回路RX1に、トランスフォーマTR1を介して信号を伝達することができる。この結果、駆動回路DRは、トランスフォーマTR1を介して、制御回路CCから出力された制御信号を受信することができる。
【0020】
このように、誘導結合を利用して電気的に絶縁したトランスフォーマTR1によって、制御回路CCから駆動回路DRへの電気的ノイズの伝達を抑制しながら、制御回路CCから駆動回路DRに制御信号を伝達することができる。このことから、制御信号への電気的ノイズの重畳に起因する駆動回路DRの誤動作を抑制することができ、これによって、半導体装置の動作信頼性を向上することができる。
【0021】
トランスフォーマTR1を構成するコイルCL1aおよびコイルCL1bは、それぞれインダクタとして機能する。トランスフォーマTR1は、誘導結合したコイルCL1aとコイルCL1bからなる磁気結合素子として機能する。
【0022】
同様に、送信回路TX2および受信回路RX2の間には、誘導結合したコイルCL2bとコイルCL2aとからなるトランスフォーマTR2が介在している。これにより、送信回路TX2から受信回路RX2に、トランスフォーマTR2を介して信号を伝達することができる。この結果、制御回路CCは、トランスフォーマTR2を介して、駆動回路DRから出力された信号を受信することができる。
【0023】
このように、誘導結合を利用して電気的に絶縁したトランスフォーマTR2によって、駆動回路DRから制御回路CCへの電気的ノイズの伝達を抑制しながら、駆動回路DRから制御回路CCに信号を伝達することができる。このことから、信号への電気的ノイズの重畳に起因する制御回路CCの誤動作を抑制することができ、これによって、半導体装置の動作信頼性を向上することができる。
【0024】
トランスフォーマTR1は、コイルCL1aとコイルCL1bとにより構成されており、コイルCL1aとコイルCL1bとは、導体によっては繋がっておらず、磁気的に結合している。このことから、コイルCL1aに電流が流れると、その電流の変化に応じてコイルCL1bに誘導起電力が発生して誘導電流が流れる。このとき、コイルCL1aが一次コイルであり、コイルCL1bが二次コイルである。このように、トランスフォーマTR1は、コイルCL1aとコイルCL1bとの間に生じる電磁誘導現象を利用している。すなわち、送信回路TX1からトランスフォーマTR1のコイルCL1aに信号を送って電流を流した結果、トランスフォーマTR1のコイルCL1bに生じた誘導電流を受信回路RX1で検知することにより、受信回路RX1は送信回路TX1から出力された制御信号に対応した信号を受信できる。
【0025】
同様に、トランスフォーマTR2は、コイルCL2aとコイルCL2bとにより構成されており、コイルCL2aとコイルCL2bとは、導体によっては繋がっておらず、磁気的に結合している。このことから、コイルCL2bに電流が流れると、その電流の変化に応じてコイルCL2aに誘導起電力が発生して誘導電流が流れる。このように、送信回路TX2からトランスフォーマTR2のコイルCL2bに信号を送って電流を流した結果、トランスフォーマTR2のコイルCL2aに生じた誘導電流を受信回路RX2で検知することにより、受信回路RX2は送信回路TX2から出力された制御信号に対応した信号を受信することができる。
【0026】
制御回路CCと駆動回路DRとの間の信号の送受信は、送信回路TX1からトランスフォーマTR1を経由して受信回路RX1に至る経路と、送信回路TX2からトランスフォーマTR2を経由して受信回路RX2に至る経路とで行なわれる。すなわち、送信回路TX1が送信する信号を受信回路RX1が受信し、送信回路TX2が送信する信号を受信回路RX2が受信することにより、制御回路CCと駆動回路DRとの間で信号の送受信を行うことができる。上述のように、送信回路TX1から受信回路RX1への信号の伝達には、トランスフォーマTR1が介在する一方、送信回路TX2から受信回路RX2への信号の伝達には、トランスフォーマTR2が介在する。これにより、駆動回路DRは、制御回路CCから送信された制御信号に応じて、負荷回路LODを動作させるためのインバータINVを駆動することができる。
【0027】
制御回路CCと駆動回路DRとの間で、基準電位の電圧レベルが異なっている。すなわち、
図1に示すように、制御回路CCでは、基準電位が接地電位GND1に固定されている一方、駆動回路DRは、インバータINVと電気的に接続されている。
【0028】
インバータINVは、例えば、ハイサイド用IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ:Insulated Gate Bipolar Transistor)とローサイド用IGBTとを有している。そして、駆動回路DRが、ハイサイド用IGBTのオン/オフ制御と、ローサイド用IGBTのオン/オフ制御を行うことにより、インバータINVによる負荷回路LODの制御が実現される。
【0029】
具体的に、ハイサイド用IGBTのオン/オフ制御は、駆動回路DRがハイサイド用IGBTのゲート電極に印加する電位を制御することによって行なわれる。同様に、ローサイド用IGBTのオン/オフ制御は、駆動回路DRがローサイド用IGBTのゲート電極に印加する電位を制御することによって行なわれる。
【0030】
ここで、例えば、ローサイド用IGBTのオン制御は、接地電位GND2と接続されているローサイド用IGBTのエミッタ電位(0V)を基準として、「エミッタ電位(0V)+しきい値電圧(15V)」をゲート電極に印加することにより実現される。
【0031】
一方、例えば、ローサイド用IGBTのオフ制御は、接地電位GND2と接続されているローサイド用IGBTのエミッタ電位(0V)を基準として、「エミッタ電位(0V)」をゲート電極に印加することにより実現される。
【0032】
したがって、ローサイド用IGBTのオン/オフ制御は、0Vを基準電位として、ゲート電極にしきい値電圧(15V)を印加するか否かによって行なわれる。
【0033】
一方、例えば、ハイサイド用IGBTのオン制御も、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位を基準電位として、ゲート電極に「基準電位+しきい値電圧(15V)」を印加するか否かによって行なわれる。
【0034】
ところが、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位は、ローサイド用IGBTのエミッタ電位のように接地電位GND2に固定されていない。すなわち、インバータINVにおいては、電源電位VCC2と接地電位GND2との間に、ハイサイド用IGBTとローサイド用IGBTとが直列接続されている。そして、インバータINVでは、駆動回路DRによる制御によって、ハイサイド用IGBTがオンする際には、ローサイド用IGBTをオフする一方、ハイサイド用IGBTがオフする際には、ローサイド用IGBTをオンする。
【0035】
したがって、ハイサイド用IGBTがオフしている際には、ローサイド用IGBTがオンしていることから、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位は、オンしているローサイド用IGBTによって、接地電位GND2となる。
【0036】
一方、ハイサイド用IGBTがオンしている際には、ローサイド用IGBTがオフしていることから、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位は、IGBTバス電圧となる。
【0037】
上述したように、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位は、ハイサイド用IGBTがオン状態かオフ状態かによって変動する。すなわち、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位は、接地電位GND2(0V)から電源電位VCC2(例えば、800V)まで変動する。したがって、ハイサイド用IGBTをオンするためには、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位を基準電位として、ゲート電極に「IGBTバス電圧(800V)+しきい値電圧(15V)」を印加する必要がある。
【0038】
このことから、ハイサイド用IGBTのオン/オフ制御を行なう駆動回路DRは、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位を把握する必要がある。このため、駆動回路DRは、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位が入力されるように構成されている。この結果、駆動回路DRには、800Vの基準電位が入力され、駆動回路DRが、この800Vの基準電位に対して、15Vのしきい値電圧をハイサイド用IGBTのゲート電極に印加することによって、ハイサイド用IGBTがオンする。したがって、駆動回路DRには、800V程度の高電位が印加される。
【0039】
このように、駆動制御部は、低電位(数十V)を取り扱う制御回路CCを有するとともに、高電位(数百V)を取り扱う駆動回路DRを有している。このことから、制御回路CCと駆動回路DRとの間において、異電位回路間での信号の伝達を行なうことが必要とされる。この点に関し、制御回路CCと駆動回路DRとの間での信号の伝達は、トランスフォーマTR1とトランスフォーマTR2を介在して行なわれるため、異電位回路間での信号の伝達が可能である。
【0040】
上述したように、トランスフォーマTR1とトランスフォーマTR2とにおいては、一次コイルと二次コイルとの間に、大きな電位差が発生する場合がある。逆に言えば、大きな電位差が発生する場合があるため、互いを導体で繋がずに磁気結合させた一次コイルと二次コイルを信号の伝達に用いている。したがって、半導体装置の動作信頼性を向上する観点から、トランスフォーマTR1においてコイルCL1aとコイルCL1bとの間の絶縁耐圧をできるだけ高くすることが重要である。同様に、半導体装置の動作信頼性を向上する観点から、トランスフォーマTR2においてコイルCL2bとコイルCL2aとの間の絶縁耐圧をできるだけ高くすることが重要である。
【0041】
<信号の伝送例>
図2は、信号の伝送例を示す説明図である。
【0042】
図2において、送信回路TX1は、送信回路TX1に入力された方形波の信号SG1のエッジ部分を取り出して一定パルス幅の信号SG2を生成し、トランスフォーマTR1のコイルCL1a(一次コイル)に信号SG2を送る。この信号SG2による電流がコイルCL1a(一次コイル)に流れると、それに応じた信号SG3が誘導起電力によりトランスフォーマTR1のコイルCL1b(二次コイル)に流れる。この信号SG3を受信回路RX1で増幅し、更に方形波に変調することで、方形波の信号SG4が受信回路RX1から出力される。これにより、送信回路TX1に入力された信号SG1に対応した信号SG4を受信回路RX1から出力することができる。このようにして、送信回路TX1から受信回路RX1に信号を伝達することができる。送信回路TX2から受信回路RX2への信号の伝達も同様に行なうことができる。
【0043】
<3チップ構成>
例えば、トランスフォーマを実現する半導体装置では、トランスフォーマが形成された半導体チップの汎用性を高める観点および製造コストの低減を図る観点から、一対のインダクタを形成する半導体チップと、集積回路を構成するトランジスタを形成する半導体チップとを別々に形成することが検討されている。具体的には、上述した半導体装置を3チップ構成で実現することが検討されている。
【0044】
以下では、新規な3チップ構成について説明する。
【0045】
【0046】
図3において、半導体チップCHP1には、送信回路TX1と受信回路RX2とが形成されている。また、半導体チップCHP2には、駆動回路DRと受信回路RX1と送信回路TX2とが形成されている。一方、半導体チップCHP3には、トランスフォーマTR1とトランスフォーマTR2とが形成されている。
【0047】
これにより、3チップ構成では、半導体チップCHP3はトランスフォーマTR1とトランスフォーマTR2だけを有している。すなわち、3チップ構成では、半導体チップCHP1および半導体チップCHP2の構成に関わらず、半導体チップCHP3を使用することができる。このことから、3チップ構成によれば、使用可能な半導体チップCHP1および半導体チップCHP2のバリエーションを増加させることができる。言い換えれば、トランスフォーマTR1およびトランスフォーマTR2が形成された半導体チップCHP3の汎用性を高めることができる。
【0048】
さらに、トランスフォーマTR1およびトランスフォーマTR2が形成された半導体チップCHP3は、トランジスタを含んでいないため、トランジスタを形成するための製造工程を行う必要がなく、製造プロセスの簡素化を図ることができる。したがって、3チップ構成によれば、半導体装置の製造コストを削減することができる。
【0049】
<実施の形態における基本思想>
次に、本実施の形態における基本思想について説明する。
【0050】
本実施の形態における基本思想では、「トランスチップ」のパターン占有率を向上するため、多層配線層の少なくとも1層に導体パターンを設けている。これにより、基本思想によれば、導体パターンによってパターン占有率を向上できるため、半導体ウェハの反りを抑制することができる。この結果、半導体ウェハのハンドリングを容易にすることができる。
【0051】
また、基本思想によれば、パターンを形成するエッチングにおいて、エッチング面積が少なくなるため、エッチング残渣の発生を低減することができる。これにより、基本思想によれば、残渣に起因する異物の発生を抑制でき、半導体装置の製造歩留まりを向上することができる。
【0052】
さらに基本思想では、多層配線層の少なくとも1層に導体パターンを設けることを前提として、平面視において下層インダクタおよび上層インダクタを連続的に囲むように導体パターンを形成している。この結果、基本思想によれば、この導体パターンが多層配線層からなる構造を補強する「梁」として機能する。
【0053】
つまり、基本思想は、多層配線層の少なくとも1層に導体パターンを設けることにより、パターン占有率を向上させるという技術的意義を有しているだけでなく、導体パターンを多層配線層からなる構造を補強するための「梁」として機能させるという技術的意義を有している。すなわち、基本思想は、例えば、パターン占有率を大きくすることにより半導体ウェハの反りを抑制するという技術的意義を有しているだけでなく、たとえ、半導体ウェハに反りが発生したとしても、多層配線層からなる構造を壊れにくくするという技術的意義も有している。これにより、基本思想によれば、半導体装置に含まれる「トランスチップ」の信頼性を向上することができる。
【0054】
ここで、多層配線層は、配線層とプラグ層を有する。そして、配線層は、配線と層間絶縁膜を有する。一方、プラグ層は、プラグと層間絶縁膜を有する。
【0055】
なお、配線層とプラグ層は、別々に分割して形成されているだけでなく、一体的に形成されていてもよい。
【0056】
また、本明細書において「平面視において下層インダクタおよび上層インダクタを連続的に囲むように導体パターンを形成する」とは、下層インダクタと上層インダクタと導体パターンとが同じ1つの平面に存在することを前提とするものではない。
【0057】
すなわち、この文言は、例えば、下層インダクタが第1配線層に対応する第1平面に存在し、かつ、上層インダクタが第2配線層に対応する第2平面に存在する構成を前提として、導体パターンが第1平面あるいは第2平面のいずれかに存在する構成を意味するだけでなく、導体パターンが第1配線層および第2配線層とは異なる第3配線層に対応する第3平面に存在する構成も意味している。
【0058】
例えば、第3平面に着目した場合、「平面視において下層インダクタおよび上層インダクタを連続的に囲むように導体パターンを形成する」という文章は、「下層インダクタと上層インダクタとの間には、絶縁膜(層間絶縁膜)が設けられ、導体パターンは、絶縁膜のうち、平面視において、下層インダクタおよび上層インダクタと重なる部分を連続的に囲んでいる」という意味を含んでいる。
【0059】
以下では、上述した基本思想を具現化した具現化態様について説明する。
【0060】
<具現化態様>
<<半導体装置の構成>>
図4は、具現化態様における半導体装置SA1の構成を示す断面図である。
【0061】
図4において、半導体装置SA1は、半導体チップCHP1と半導体チップCHP2と半導体チップCHP3を有している。すなわち、
図4に示す具現化態様における半導体装置SA1は、3チップ構成である。
【0062】
半導体チップCHP1は、例えば、ダイパッドDP1A上に導電性接着材PST1Aを介して搭載されている。一方、半導体チップCHP2は、例えば、ダイパッドDP2A上に導電性接着材PST2Aを介して搭載されている。また、半導体チップCHP3は、例えば、ダイパッドDP3A上に導電性接着材PST3Aを介して搭載されている。
【0063】
ここで、ダイパッドDP1A、ダイパッドDP2AおよびダイパッドDP3Aは、例えば、銅材から構成されている。また、導電性接着材PST1A、導電性接着材PST2Aおよび導電性接着材PST3Aは、例えば、銀ペーストや半田から構成されている。
【0064】
半導体チップCHP1には、
図3に示す送信回路TX1や受信回路RX2が形成されている。この半導体チップCHP1は、
図4に示すように、半導体基板SUB1Aと、半導体基板SUB1A上に形成された多層配線層MWL1Aを有している。
【0065】
半導体基板SUB1Aには、複数のトランジスタQAが形成されている。複数のトランジスタQAが形成された半導体基板SUB1Aの上方に多層配線層MWL1Aが形成されている。多層配線層MWL1Aは、複数の配線層と複数のプラグ層から構成されており、配線層と配線層との間には、プラグ層が介在している。そして、多層配線層MWL1Aのそれぞれの配線層には、配線が形成されている。この配線は、トランジスタQAと電気的に接続されている。互いに電気的に接続されたトランジスタQAと配線によって、送信回路TX1Aや受信回路RX2Aが構成されている。
【0066】
続いて、
図4に示すように、半導体チップCHP1においては、多層配線層MWL1Aの最上層内に配線および絶縁膜IF1Aが形成されている。多層配線層MWL1Aの最上層内に形成された配線は、パッドを含んでいる。そして、多層配線層MWL1Aの最上層内に形成されている配線上および絶縁膜IF1A上には、無機絶縁膜40aが形成されている。この無機絶縁膜40a上に有機絶縁膜50aが形成されている。ここで、無機絶縁膜40aは、窒化シリコン膜から構成されている。一方、有機絶縁膜50aは、ポリイミド樹脂膜から構成されている。
【0067】
次に、半導体チップCHP2には、
図3に示す送信回路TX2と受信回路RX1と駆動回路DRが形成されている。
【0068】
この半導体チップCHP2は、
図4に示すように、半導体基板SUB2Aと、半導体基板SUB2A上に形成された多層配線層MWL2Aを有している。
【0069】
半導体基板SUB2Aには、複数のトランジスタQBが形成されている。複数のトランジスタQBが形成された半導体基板SUB2Aの上方に多層配線層MWL2Aが形成されている。多層配線層MWL2Aは、複数の配線層と複数のプラグ層から構成されており、配線層と配線層との間には、プラグ層が介在している。そして、多層配線層MWL2Aのそれぞれの配線層には、配線が形成されている。この配線は、トランジスタQBと電気的に接続されている。互いに電気的に接続されたトランジスタQBと配線によって、送信回路TX2Aと受信回路RX1Aと駆動回路DRが構成されている。
【0070】
続いて、
図4に示すように、半導体チップCHP2においては、多層配線層MWL2Aの最上層内に配線および絶縁膜IF2Aが形成されている。多層配線層MWL2Aの最上層内に形成された配線は、パッドを含んでいる。そして、多層配線層MWL2Aの最上層内に形成されている配線上および絶縁膜IF2A上には、無機絶縁膜40bが形成されている。この無機絶縁膜40b上に有機絶縁膜50bが形成されている。ここで、無機絶縁膜40bは、窒化シリコン膜から構成されている。一方、有機絶縁膜50bは、ポリイミド樹脂膜から構成されている。
【0071】
次に、半導体チップCHP3(「トランスチップ」)には、
図3に示すトランスフォーマTR1やトランスフォーマTR2が形成されている。この半導体チップCHP3は、
図4に示すように、半導体基板SUB3Aと、半導体基板SUB3A上に形成された多層配線層MWL3Aを有している。多層配線層MWL3Aの最下層は、半導体基板SUB3Aと接している。多層配線層MWL3Aには、配線だけでなく、トランスフォーマTR1の構成要素である下層インダクタBL1Aが形成されている。下層インダクタBL1Aは、例えば、渦巻き状の配線からなる。
【0072】
そして、
図4に示すように、半導体チップCHP3においては、多層配線層MWL3Aの最上層内に配線および絶縁膜IF3Aが形成されている。さらに、多層配線層MWL3Aの最上層内にトランスフォーマTR1の構成要素である上層インダクタTL1Aが設けられている。
【0073】
さらに、多層配線層MWL3Aの最上層内に形成された配線は、パッドを含んでいる。多層配線層MWL3Aの最上層内に形成されている配線上、上層インダクタTL1A上および絶縁膜IF3A上には、無機絶縁膜40eが形成されている。この無機絶縁膜40e上に有機絶縁膜50eが形成されている。ここで、無機絶縁膜40eは、窒化シリコン膜から構成されている。一方、有機絶縁膜50eは、ポリイミド樹脂膜から構成されている。
【0074】
図4に示すように、半導体チップCHP3には、異電位間の非接触通信を行うためのトランスフォーマの構成要素である上層インダクタTL1Aと下層インダクタBL1Aとが設けられている。このとき、上層インダクタTL1Aは、半導体チップCHP2に設けられている多層配線層MWL2A内の配線と電気的に接続されている。上層インダクタTL1Aには、約800V程度の基準電位である第2電位が印加される。具体的に、具現化態様における半導体装置SA1は、上層インダクタTL1Aに第2電位を印加する回路(第2回路部)を有する半導体チップCHP2を含んでいる。半導体チップCHP3に設けられた上層インダクタTL1Aは、導電性部材の一例であるボンディングワイヤW2Aを介して、半導体チップCHP2に設けられた回路と電気的に接続されている。これにより、上層インダクタTL1Aには、半導体チップCHP2に設けられた回路から出力された第2電位が印加される。
【0075】
下層インダクタBL1Aは、半導体チップCHP1に設けられている多層配線層MWL1A内の配線と電気的に接続されている。下層インダクタBL1Aには、約0V程度の基準電位である第1電位が印加される。具体的に、具現化態様における半導体装置SA1は、下層インダクタBL1Aに第1電位を印加する回路(第1回路部)を有する半導体チップCHP1を含んでいる。半導体チップCHP3に設けられた下層インダクタBL1Aは、導電性部材の一例であるボンディングワイヤW1Aを介して、半導体チップCHP1に設けられた回路と電気的に接続されている。これにより、下層インダクタBL1Aには、半導体チップCHP1に設けられた回路から出力された第1電位が印加される。
【0076】
このように、半導体装置SA1は、半導体チップCHP1と、半導体チップCHP2と、半導体チップCHP3を有する。このとき、第1回路部は、半導体チップCHP1に形成されている。第2回路部は、半導体チップCHP2に形成されている。トランスフォーマTR1は、半導体チップCHP3に形成されている。
【0077】
上層インダクタTL1Aは、半導体基板SUB3Aから有機絶縁膜50eに向かう方向において、第2電位とは異なる第1電位が印加される下層インダクタBL1Aと磁気結合可能に設けられている。具体的に、上層インダクタTL1Aが多層配線層MWL3Aの最上層内に設けられている一方、下層インダクタBL1Aが多層配線層MWL3A内に設けられている。これにより、上層インダクタTL1Aと下層インダクタBL1Aは、磁気結合可能に構成される。
【0078】
以上のように構成されている半導体チップCHP1、半導体チップCHP2および半導体チップCHP3は、
図4に示すように、例えば、エポキシ樹脂から構成されるモールド樹脂MR1で封止される。言い換えれば、半導体チップCHP1、半導体チップCHP2および半導体チップCHP3は、モールド樹脂MR1で覆われる。このようにして、3チップ構成の半導体装置SA1が構成されている。
【0079】
<<半導体チップCHP3の平面構成>>
次に、「トランスチップ」である半導体チップCHP3の平面構成を説明する。
【0080】
図5は、「トランスチップ」に形成されている多層配線層の各層を示す平面図である。特に、
図5(a)は、第1配線層を示す平面図であり、
図5(b)は、第1配線層の上方に配置された第2配線層を示す平面図である。
【0081】
また、
図5(c)は、第2配線層の上方に配置された第3配線層および第3配線層の上方に配置された第4配線層の各層を示す平面図であり、
図5(d)は、第4配線層の上方に配置された第5配線層を示す平面図である。
【0082】
1.第1配線層WL1の平面レイアウト
まず、多層配線層の第1配線層WL1の平面レイアウトを説明する。
【0083】
図5(a)において、第1配線層WL1には、下層インダクタBL1Aが設けられている。この下層インダクタBL1Aは、引出配線20と電気的に接続されている。そして、
図5(a)において、下層インダクタBL1Aを連続して囲むようにシールリングSRが設けられている。このとき、具現化態様では、シールリングSRと下層インダクタBL1Aの間に導体パターンCP1が設けられている。導体パターンCP1は、シールリングSRと接続されておらず、シールリングSRと離間して設けられている。
【0084】
2.第2配線層WL2の平面レイアウト
次に、多層配線層の第2配線層WL2の平面レイアウトを説明する。
【0085】
図5(b)において、第2配線層WL2には、下層インダクタBL1Aが設けられている。この下層インダクタBL1Aは、引出配線20と電気的に接続されている。そして、
図5(b)において、下層インダクタBL1Aを連続して囲むようにシールリングSRが設けられている。このとき、具現化態様では、シールリングSRと下層インダクタBL1Aの間に導体パターンCP2が設けられている。導体パターンCP2は、シールリングSRと接続されておらず、シールリングSRと離間して設けられている。
【0086】
以上のことから、下層インダクタBL1Aは、第1配線層WL1と第2配線層WL2に形成されている。そして、第1配線層WL1に形成されている下層インダクタBL1Aと第2配線層WL2に形成されている下層インダクタBL1Aは、互いに接続されている。
【0087】
3.第3配線層WL3および第4配線層WL4の平面レイアウト
続いて、多層配線層の第3配線層WL3および第4配線層WL4の平面レイアウトを説明する。以下では、第3配線層WL3の平面レイアウトを説明する。ここで、第3配線層WL3の平面レイアウトと、第4配線層WL4の平面レイアウトとは同様であるため、第4配線層WL4の平面レイアウトの説明を省略する。
【0088】
図5(c)において、第3配線層WL3には、導体パターンCP3とシールリングSRとが設けられている。このとき、導体パターンCP3は、第1境界線10Aと第2境界線10Bを有している。第2境界線10Bは、第1境界線10Aを連続して囲んでいる。そして、導体パターンCP3は、第1境界線10Aと第2境界線10Bで囲まれた導体膜から構成されている。このとき、少なくとも、第1境界線10Aは、曲線を含む。
【0089】
さらに、第3配線層WL3において、第2境界線10Bを連続して囲むようにシールリングSRが設けられている。導体パターンCP3は、シールリングSRと接続されておらず、シールリングSRと離間して設けられている。また、第2境界線10BとシールリングSRとの間には、引出配線20が設けられている。
【0090】
4.第5配線層WL5の平面レイアウト
次に、多層配線層の第5配線層WL5の平面レイアウトを説明する。
【0091】
図5(d)において、第5配線層WL5には、上層インダクタTL1Aが設けられている。そして、
図5(d)において、上層インダクタTL1Aを連続して囲むように導体パターンCP5が設けられている。さらに、導体パターンCP5を連続して囲むようにシールリングSRが設けられている。導体パターンCP5は、シールリングSRと接続されておらず、シールリングSRと離間して設けられている。
【0092】
導体パターンCP5とシールリングSRとの間には、引出配線20と電気的に接続された引出パッド20Aも設けられている。
【0093】
半導体装置は、トランジスタが形成されていない「トランスチップ」を含む。ここで、「トランスチップ」は、半導体基板と、半導体基板上に設けられた、少なくとも第1層および第1層の上方に配置された第2層を有する多層配線層と、を有する。また、「トランスチップ」は、多層配線層の第1層に設けられた下層インダクタと、多層配線層の第2層に設けられた、平面視において下層インダクタと重なる上層インダクタと、多層配線層の少なくとも1層に設けられた導体パターンと、を有する。なお、この多層配線層の少なくとも1層は、第1層、第2層および第1層と第2層の間に設けられた層を含む。このとき、導体パターンは、平面視において下層インダクタおよび上層インダクタを連続的に囲んでいる。
【0094】
ここで、例えば、
図5(c)に示す第3配線層WL3に着目した場合、「平面視において下層インダクタBL1Aおよび上層インダクタTL1Aを連続的に囲むように導体パターンを形成する」という文章は、「下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとの間には、絶縁膜(層間絶縁膜)が設けられ、導体パターンCP3は、絶縁膜のうち、平面視において、下層インダクタBL1Aおよび上層インダクタTL1Aと重なる部分を連続的に囲んでいる」という意味も含んでいる。
【0095】
このようにして、半導体チップCHP3が構成されている。
【0096】
<<半導体チップCHP3の断面構成>>
続いて、「トランスチップ」である半導体チップCHP3の断面構成について説明する。
【0097】
【0098】
図6において、半導体基板SUB3A上には、多層配線層が形成されている。具体的に、半導体基板SUB3A上にプラグ層を構成する層間絶縁膜IL1を介して第1配線層WL1が設けられている。この第1配線層WL1上にプラグ層を構成する層間絶縁膜IL2を介して第2配線層WL2が設けられている。そして、第2配線層WL2上には、プラグ層を構成する層間絶縁膜IL3を介して第3配線層WL3が設けられている。この第3配線層WL3上にプラグ層を構成する層間絶縁膜IL4を介して第4配線層WL4が設けられている。さらに、第4配線層WL4上にプラグ層を構成する層間絶縁膜IL5を介して第5配線層WL5が設けられている。
【0099】
図6に示すように、多層配線層にシールリングSRが形成されている。一方、第1配線層WL1と第2配線層WL2にわたって下層インダクタBL1Aが形成されている。第1配線層WL1に形成されている下層インダクタと第2配線層WL2に形成されている下層インダクタは、層間絶縁膜IL2を貫通する複数のプラグで電気的に接続されている。これにより、第1配線層WL1と第2配線層WL2にわたって下層インダクタBL1Aが設けられている。そして、下層インダクタBL1Aの上方には、平面視において下層インダクタBL1Aと重なる上層インダクタTL1Aが設けられている。具体的に、上層インダクタTL1Aは、層間絶縁膜IL5上に設けられた第5配線層WL5に形成されている。
【0100】
次に、
図6に示すように、上層インダクタTL1Aおよび下層インダクタBL1AからなるトランスフォーマとシールリングSRとの間に導体パターンが設けられている。具体的に、導体パターンは、第1配線層WL1に設けられた導体パターンCP1と、第2配線層WL2に設けられた導体パターンCP2と、第3配線層WL3に設けられた導体パターンCP3と、第4配線層WL4に設けられた導体パターンCP4と、第5配線層WL5に設けられた導体パターンCP5を含んでいる。
【0101】
ここで、導体パターンCP1は、プラグ層を構成する複数のプラグPLG1を介して半導体基板SUBと電気的に接続されている。また、導体パターンCP1と導体パターンCP2とは、プラグ層を構成する複数のプラグPLG2を介して互いに電気的に接続されている。さらに、導体パターンCP2と導体パターンCP3とは、プラグ層を構成する複数のプラグPLG3を介して互いに電気的に接続されている。
【0102】
同様に、導体パターンCP3と導体パターンCP4とは、プラグ層を構成する複数のプラグPLG4を介して互いに電気的に接続されている。また、導体パターンCP4と導体パターンCP5とは、プラグ層を構成する複数のプラグPLG5を介して互いに電気的に接続されている。
【0103】
例えば、上下の導体パターンを電気的に接続するプラグは、ビアホールにタングステン膜を埋め込むことにより形成することができる。
図7に示すように、導体パターンCP4は、導体パターンCP3の上方に設けられ、導体パターンCP4と複数のプラグPLG4は、同一の膜から構成されてもよい。すなわち、
図7に示すように、導体パターンCP4は、プラグPLG4が形成されるビアホールの幅を大きくして、導体パターンCP4を構成するアルミニウム膜をビアホール内に埋め込んで形成してもよい。
【0104】
続いて、
図6において、導体パターンと上層インダクタTL1Aとの最短距離Aは、下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとの間の距離B以上である。また、
図6に示すように、導体パターンの上方または下方には、導体パターンと接する層間絶縁膜が設けられ、導体パターンの厚さは、層間絶縁膜の厚さ以上である。例えば、
図6において、導体パターンCP3の上方には、導体パターンCP3と接する層間絶縁膜IL4が設けられ、導体パターンCP3の厚さは、層間絶縁膜IL4の厚さ以上である。同様に、導体パターンCP3の下方には、導体パターンCP3と接する層間絶縁膜IL3が設けられ、導体パターンCP3の厚さは、層間絶縁膜IL3の厚さ以上である。
【0105】
以上のようにして、半導体チップCHP3が構成されている。
【0106】
<<具現化態様における特徴>>
次に、具現化態様における特徴について説明する。
【0107】
具現化態様における第1特徴は、「トランスチップ」に形成されている多層配線層の少なくとも1層にシールリングで囲まれる導体パターンを設けることである。これにより、第1特徴によれば、導体パターンによって、「トランスチップ」におけるパターン占有率を向上できるため、半導体ウェハの反りを抑制することができる。この結果、第1特徴によれば、半導体ウェハのハンドリングを容易にすることができる。また、第1特徴によれば、パターンを形成するエッチングにおいて、エッチング面積を少なくできることから、エッチング残渣の発生を低減できる。これにより、第1特徴によれば、残渣に起因する異物の発生を抑制でき、半導体装置の製造歩留まりを向上することができる。
【0108】
さらに、第1特徴では、多層配線層の少なくとも1層に導体パターンを設けることを前提として、平面視において下層インダクタおよび上層インダクタを連続的に囲むように導体パターンを形成している。これにより、第1特徴によれば、平面視において導体パターンが下層インダクタおよび上層インダクタを連続的に囲むように形成されており、この導体パターンが多層配線層からなる構造を補強する「梁」として機能する。
【0109】
つまり、第1特徴は、多層配線層の少なくとも1層に導体パターンを設けることにより、パターン占有率を向上させるという技術的意義を有しているだけでなく、導体パターンを多層配線層からなる構造を補強するための「梁」として機能させるという技術的意義を有している。言い換えれば、第1特徴は、パターン占有率を大きくすることによって半導体ウェハの反りを抑制するという技術的意義を有しているだけでなく、たとえ、半導体ウェハに反りが発生したとしても、多層配線層からなる構造を壊れにくくするという技術的意義も有している。この結果、第1特徴によれば、半導体装置に含まれる「トランスチップ」の信頼性を向上することができる。
【0110】
特に、第1特徴において、多層配線層からなる構造を補強する「梁」として導体パターンを機能させるためには、平面視において下層インダクタおよび上層インダクタを連続的に囲むように導体パターンを形成することが重要である。すなわち、「閉パターン」から導体パターンを構成することが、導体パターンを「梁」として機能させるために重要である。なぜなら、導体パターンに応力が加わった場合、「閉パターン」の方が「開パターン」よりも変形しにくいからである。つまり、「閉パターン」から導体パターンを構成することにより、導体パターンが応力によって変形しにくくすることができる。このことは、導体パターンを「閉パターン」から構成することにより、多層配線層からなる構造を補強するための「梁」として導体パターンを充分に機能させることができることを意味する。したがって、第1特徴は、パターン占有率を大きくすることによって反りの発生を抑制するという技術的意義だけでなく、たとえ、反りが発生したとしても、反りに起因する応力に耐え得る構造を提供するという技術的意義も有している。
【0111】
続いて、具現化態様における第2特徴は、多層配線層のうちの2以上の配線層のそれぞれに導体パターンが設けられていることを前提として、複数の導体パターンが複数のプラグで接続されていることである。例えば、第1配線層に第1導体パターンが設けられ、第1配線層の上方に配置された第2配線層に第2導体パターンが設けられている場合に、第1導体パターンと第2導体パターンとが、第1配線層と第2配線層の間に設けられている層間絶縁膜を貫通する複数のプラグで互いに接続されている。
【0112】
これにより、第2特徴によれば、複数の導体パターンが複数層に設けられていることから、「トランスチップ」におけるパターン占有率をさらに大きくすることができる。また、複数の導体パターンが存在することによって、多層配線層からなる構造を補強する「梁」として機能する導体パターンの数を増加させることができる。このことから、反りによって、多層配線層からなる構造がさらに壊れにくくなる。さらには、第2特徴によれば、異なる層に設けられた導体パターンを複数のプラグで互いに接続しているため、これらの複数のプラグが多層配線層からなる構造を補強する「柱」として機能する。この結果、第2特徴によれば、多層配線層からなる構造を補強する「梁」と「柱」が設けられるため、反りが発生したとしても、反りに起因する応力に耐え得る構造を提供できる。
【0113】
また、第2特徴によれば、複数のプラグを層間絶縁膜に形成することから、層間絶縁膜の体積が減少する結果、層間絶縁膜に起因する半導体ウェハの反りを抑制できる。特に、層間絶縁膜の体積を減少させて層間絶縁膜に起因する半導体ウェハの反りを抑制するために、複数のプラグの個数を増加させるとともに、複数のプラグのそれそれの幅を大きくする(
図7参照)ことが望ましい。
【0114】
以上のことから、第2特徴は、パターン占有率を向上させるという技術的意義を有しているだけでなく、複数のプラグのそれぞれを多層配線層からなる構造を補強するための「柱」として機能させるという技術的意義も有している。
【0115】
次に、具現化態様における第3特徴は、例えば、
図6に示すように、導体パターンの厚さを層間絶縁膜の厚さ以上とすることである。つまり、導体パターンの上方または下方に導体パターンと接する層間絶縁膜が設けられていることを前提として、導体パターンの厚さが層間絶縁膜の厚さ以上である。
【0116】
これにより、層間絶縁膜の応力とは逆の応力を発生させる導体パターンの体積が大きくなるため、層間絶縁膜に起因する応力が逆の応力によって減じられる。この結果、層間絶縁膜に基づいて発生する応力に起因する半導体ウェハの反りを抑制できる。
【0117】
続いて、具現化態様における第4特徴は、平面視において内周境界線と外周境界線とで囲まれた導体膜から構成される導体パターンの内周境界線が曲線を含む点である。具体的には、例えば、
図5(c)において、導体パターンCP3が、第1境界線10Aと、平面視において第1境界線10Aを連続的に囲む第2境界線10Bとで囲まれた導体膜から構成されていることを前提として、第1境界線10Aが曲線を含むように構成される。
【0118】
これにより、平面視において上層インダクタTL1Aおよび下層インダクタBL1Aを連続的に囲む第1境界線10Aに、絶縁耐圧を低下させる要因となる角部を形成しないようにすることができる。この結果、第4特徴によれば、「トランスチップ」の絶縁耐圧を向上することができる。一方、外周境界線である第2境界線10Bについては、第1境界線10Aのような制約はなく、第2境界線10Bの設計自由度は高い。このことから、例えば、
図5(c)に示すように、第2境界線10Bに切り欠き部を設けて、引出配線20を配置する領域を確保することができる。
【0119】
次に、具現化態様における第5特徴は、例えば、
図6に示すように、導体パターンと上層インダクタとの最短距離(
図6では、導体パターンCP4と上層インダクタTL1Aとの距離)を、下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとの間の距離以上とすることである。これにより、「トランスチップ」の絶縁耐圧を確保することができる。
【0120】
例えば、「トランスチップ」に形成されているトランスフォーマの絶縁耐圧は、下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとの間の距離Bを適切に設計することにより決定される。したがって、導体パターンと上層インダクタTL1Aとの最短距離Aが上述した距離Bよりも小さいと、トランスフォーマの絶縁耐圧を確保するように距離Bを設計したとしても、距離Bよりも小さな最短距離Aの存在によって、トランスフォーマの設計値通りの絶縁耐圧を確保することが困難となる。
【0121】
この点に関し、第5特徴によれば、最短距離Aは、距離B以上とすることができる。この場合、最短距離Aは、距離B以上であることから、形成されたトランスフォーマの絶縁耐圧が、距離Bに基づいて設計された絶縁耐圧よりも低くなることを回避できる。このように、第5特徴によれば、「トランスチップ」に新たな導体パターンを追加したとしても、下層インダクタBL1Aと上層インダクタTL1Aとの間の距離Bを適切に設計することにより決定された絶縁耐圧を確保することができる。
【0122】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0123】
10A 第1境界線
10B 第2境界線
20 引出配線
20A 引出パッド
40a 無機絶縁膜
40b 無機絶縁膜
40e 無機絶縁膜
50a 有機絶縁膜
50b 有機絶縁膜
50e 有機絶縁膜
A 最短距離
B 距離
BL1A 下層インダクタ
CC 制御回路
CHP1 半導体チップ
CHP2 半導体チップ
CHP3 半導体チップ
CL1a コイル
CL1b コイル
CL2a コイル
CL2b コイル
CP1 導体パターン
CP2 導体パターン
CP3 導体パターン
CP4 導体パターン
CP5 導体パターン
DP1A ダイパッド
DP2A ダイパッド
DP3A ダイパッド
DR 駆動回路
GND1 接地電位
GND2 接地電位
IF1A 絶縁膜
IF2A 絶縁膜
IF3A 絶縁膜
INV インバータ
IL1 層間絶縁膜
IL2 層間絶縁膜
IL3 層間絶縁膜
IL4 層間絶縁膜
IL5 層間絶縁膜
LOD 負荷回路
MR1 モールド樹脂
MWL1A 多層配線層
MWL2A 多層配線層
MWL3A 多層配線層
PLG1 プラグ
PLG2 プラグ
PLG3 プラグ
PLG4 プラグ
PLG5 プラグ
PST1A 導電性接着材
PST2A 導電性接着材
PST3A 導電性接着材
QA トランジスタ
QB トランジスタ
RX1 受信回路
RX2 受信回路
SA1 半導体装置
SG1 信号
SG2 信号
SG3 信号
SG4 信号
SR シールリング
SUB1A 半導体基板
SUB2A 半導体基板
SUB3A 半導体基板
TL1A 上層インダクタ
TR1 トランスフォーマ
TR2 トランスフォーマ
TX1 送信回路
TX2 送信回路
VCC1 電源電位
VCC2 電源電位
WL1 第1配線層
WL2 第2配線層
WL3 第3配線層
WL4 第4配線層
WL5 第5配線層
W1A ボンディングワイヤ
W2A ボンディングワイヤ