(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131203
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】戸枠材及び戸枠
(51)【国際特許分類】
E06B 1/52 20060101AFI20240920BHJP
E06B 1/56 20060101ALI20240920BHJP
E05D 5/02 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
E06B1/52
E06B1/56 Z
E05D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041320
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米重 英明
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 裕一
【テーマコード(参考)】
2E011
2E030
【Fターム(参考)】
2E011EA01
2E011EA03
2E011EA04
2E011EB03
2E011ED01
2E011JA03
2E011KB01
2E011KB04
2E011KB05
2E011KC02
2E011KC03
2E011KC04
2E011KC07
2E030BB03
2E030EA02
(57)【要約】
【課題】スリム枠用の戸枠材の製造及び施工を、製造コストを増大させることなく容易に行えるようにする。
【解決手段】戸枠材10は、一対の壁下地材C,C間に収まる見込方向長さを有する本体部21と、該本体部21の内端部から見込方向両側に突出する2つの見付部22,22とを有する芯材20と、薄板状の基材31と該基材31の片面を覆う化粧層32とを有する化粧材30とを備えている。化粧材30は、化粧層32が露出するように折り曲げられ、本体部21の内面と2つの見付部22,22の内面と見込方向の端面と外面の露出部とを覆う。各見付部22の外面には、露出部を覆う化粧材30の一部が嵌まる溝23が形成され、溝23は、見込方向長さL1が、見付部22の見込方向長さL2の1/2以下になるように形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の壁の開口部に内端部が露出するように取り付けられる戸枠材であって、
上記開口部を構成する躯体の前後に設けられる一対の壁下地材間に収まる見込方向長さを有する本体部と、該本体部の内端部から見込方向両側に内面が上記本体部の内面と面一になるように突出する2つの見付部とを有する芯材と、
薄板状の基材と該基材の片面を覆う化粧層とを有し、該化粧層が露出するように折り曲げられ、上記本体部の内面と上記2つの見付部の内面と上記2つの見付部の見込方向の端面と上記2つの見付部の外面の上記壁下地材の端面によって覆われない露出部とを覆う化粧材とを備え、
上記各見付部の上記外面には、上記露出部を覆う上記化粧材の一部が嵌まる溝が形成され、
上記溝は、見込方向長さが、上記見付部の見込方向長さの1/2以下になるように形成されている
ことを特徴とする戸枠材。
【請求項2】
請求項1に記載の戸枠材において、
上記化粧材は、上記2つの見付部の見込方向の端面との間に空隙が形成されるように折り曲げられている
ことを特徴とする戸枠材。
【請求項3】
請求項2に記載の戸枠材において、
上記各空隙には、該空隙を充填するスペーサが設けられている
ことを特徴とする戸枠材。
【請求項4】
請求項1に記載の戸枠材において、
上記化粧材の上記各溝に嵌まる部分は、他の部分よりも薄く形成されている
ことを特徴とする戸枠材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の戸枠材において、
上記各見付部において、上記溝は、該溝に嵌まる上記化粧材の一部の外面が、上記見付部の上記外面の上記溝以外の部分と面一になる深さに形成されている
ことを特徴とする戸枠材。
【請求項6】
室内の壁の開口部に内端部が露出するように取り付けられる戸枠材であって、
上記開口部を構成する躯体の前後に設けられる一対の壁下地材間に収まる見込方向長さを有する本体部と、該本体部の内端部から見込方向の両側に内面が上記本体部の内面と面一になるように突出する2つの見付部とを有する芯材と、
薄板状の基材と該基材の片面を覆う化粧層とを有し、該化粧層が露出するように折り曲げられ、上記本体部の内面と上記2つの見付部の内面と上記2つの見付部の見込方向の端面と上記2つの見付部の外面の上記壁下地材の端面によって覆われない露出部とを覆う化粧材とを備え、
上記化粧材の上記各露出部を覆う部分は、他の部分よりも薄く形成されている
ことを特徴とする戸枠材。
【請求項7】
請求項1又は6に記載の戸枠材において、
上記芯材は、合板又は単板積層材で構成されている
ことを特徴とする戸枠材。
【請求項8】
左右一対の縦枠を備え、室内の壁の開口部に取り付けられる戸枠であって、
上記縦枠は、請求項1又は6の戸枠材である
ことを特徴とする戸枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の壁の開口部に取り付けられる戸枠材及び戸枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、室内の戸枠材は、芯材の表面を化粧シートで覆う(ラッピング加工を施す)ラッピング仕上げとすることがあるが、ラッピング加工は、加工機にシートを設置する手間が大きく、生産量が少ない場合、製造コストが高くなる。また、ラッピング加工の開始直後や終了時には、化粧シートのロスが生じるため、生産量が少ない場合、無駄になるシートの割合が多くなり、さらに製造コストを増大させてしまう。そのため、生産量の多くない戸枠材には、ラッピング仕上げを採用せず、基材に化粧シートを貼着した化粧材で芯材の表面を覆う化粧材仕上げを採用している(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、室内用の建具では、戸枠を目立たせずにすっきりと開口部に収めたいという要望が多い。そこで、戸枠材の中には、開口部を構成する一対の壁下地材間に収まる見込方向長さを有する本体部と、本体部の内端部から見込方向両側に突出する2つの見付部とを有するように構成し、本体部の2つの見付部よりも外側の部分を、開口部を構成する一対の壁下地材間に挿入した状態で開口部に取り付けることにより、薄い戸枠が施工されているように見せるスリム枠と呼ばれるものがある(例えば、下記の特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-155995号公報
【特許文献2】特開2008-38419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のスリム枠用の戸枠材に、上記化粧材仕上げを採用すると、元々薄い芯材の見付部の厚さを、化粧材の厚さ分さらに薄くする必要が生じ、仕上げ加工や施工の際に見付部が折れるおそれがあり、戸枠材の製造及び施工を容易に行えないという問題があった。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、スリム枠用の戸枠材の製造及び施工を、製造コストを増大させることなく容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、芯材の見付部において化粧材によって薄く形成せざるを得ない部分が見込方向に長く形成されない又は無くなるようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明は、室内の壁の開口部に内端部が露出するように取り付けられる戸枠材であって、上記開口部を構成する躯体の前後に設けられる一対の壁下地材間に収まる見込方向長さを有する本体部と、該本体部の内端部から見込方向両側に内面が上記本体部の内面と面一になるように突出する2つの見付部とを有する芯材と、薄板状の基材と該基材の片面を覆う化粧層とを有し、該化粧層が露出するように折り曲げられ、上記本体部の内面と上記2つの見付部の内面と上記2つの見付部の見込方向の端面と上記2つの見付部の外面の上記壁下地材の端面によって覆われない露出部とを覆う化粧材とを備え、上記各見付部の上記外面には、上記露出部を覆う上記化粧材の一部が嵌まる溝が形成され、上記溝は、見込方向長さが、上記見付部の見込方向長さの1/2以下になるように形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
なお、上記「2つの見付部の内面が本体部の内面と面一になる」には、2つの見付部の内面と本体部の内面との間に多少(1mm未満)の段差が生じている場合も含まれる。
【0010】
第1の発明では、スリム枠用の戸枠材に化粧材仕上げを採用し、化粧材によって芯材の本体部の内面と2つの見付部の内面と2つの見付部の見込方向の端面と2つの見付部の外面の上記壁下地材の端面によって覆われない露出部とを覆うこととしている。また、第1の発明では、芯材の2つの見付部の外面に、壁下地材の端面によって覆われない露出部を覆う化粧材の一部が嵌まる溝を形成すると共に、各溝を、見込方向長さが見付部の見込方向長さの1/2以下になるように形成している。このように芯材の見付部の外面全体を化粧材で覆うのではなく、見付部の外面の化粧材で覆われる部分が見付部の見込方向長さの1/2以下の長さの範囲に限ることにより、スリム枠用の戸枠材に化粧材仕上げを採用しても、芯材の見付部において化粧材によって薄く形成せざるを得ない部分が長く形成されないため、仕上げ加工や施工の際に、芯材の見付部が折れにくくなる。従って、第1の発明によれば、スリム枠用の戸枠材の製造及び施工を、製造コストを増大させることなく容易に行うことができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記化粧材は、上記2つの見付部の見込方向の端面との間に空隙が形成されるように折り曲げられていることを特徴とするものである。
【0012】
第2の発明では、化粧材は、2つの見付部の見込方向の端面との間に空隙が形成されるように折り曲げられている。このような構成によれば、2つの見付部の外面に形成される溝の見込方向長さをより短くすることができ、2つの見付部において化粧材によって薄くなる部分をより短くすることができる。よって、第2の発明によれば、仕上げ加工や施工の際に、芯材の見付部がより折れにくくなるので、スリム枠用の戸枠材の製造及び施工を、製造コストを増大させることなくより容易に行うことができる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、上記各空隙には、該空隙を充填するスペーサが設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
第3の発明では、各空隙にスペーサを充填することにより、戸枠材の見込方向の両端部の強度を向上することができる。
【0015】
第4の発明は、第1の発明において、上記化粧材の上記各溝に嵌まる部分は、他の部分よりも薄く形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
第4の発明では、化粧材の各溝に嵌まる部分を他の部分よりも薄く形成することにより、各溝を浅く形成することができ、その分、芯材の見付部の溝形成部分を分厚く形成することができる。よって、第4の発明によれば、仕上げ加工や施工の際に、芯材の見付部がより折れにくくなるので、スリム枠用の戸枠材の製造及び施工を、製造コストを増大させることなくより容易に行うことができる。
【0017】
第5の発明は、第1~第4のいずれか1つの発明において、上記各見付部において、上記溝は、該溝に嵌まる上記化粧材の一部の外面が、上記見付部の上記外面の上記溝以外の部分と面一になる深さに形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
なお、上記「溝に嵌まる化粧材の一部の外面が、見付部の外面の溝以外の部分と面一になる」には、溝に嵌まる化粧材の一部の外面と、見付部の外面の溝以外の部分との間に多少(2mm未満)の段差が生じている場合も含まれる。
【0019】
第5の発明では、各見付部において、溝の深さを、該溝に嵌まる化粧材の一部が、見付部の外面の溝以外の部分と面一になる深さにしている。このような構成により、各見付部において、外面が略平坦面に形成されるため、外面の露出部(壁下地材の端面によって覆われない部分)を化粧材で覆うこととしても、戸枠材を施工する際に、壁下地材の端面との間に隙間を生じない。よって、第5の発明によれば、スリム枠としての意匠性を損なうことなく戸枠材を施工することができる。
【0020】
第6の発明は、室内の壁の開口部に内端部が露出するように取り付けられる戸枠材であって、上記開口部を構成する躯体の前後に設けられる一対の壁下地材間に収まる見込方向長さを有する本体部と、該本体部の内端部から見込方向の両側に内面が上記本体部の内面と面一になるように突出する2つの見付部とを有する芯材と、薄板状の基材と該基材の片面を覆う化粧層とを有し、該化粧層が露出するように折り曲げられ、上記本体部の内面と上記2つの見付部の内面と上記2つの見付部の見込方向の端面と上記2つの見付部の外面の上記壁下地材の端面によって覆われない露出部とを覆う化粧材とを備え、上記化粧材の上記各露出部を覆う部分は、他の部分よりも薄く形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
なお、上記「2つの見付部の内面が本体部の内面と面一になる」には、2つの見付部が本体部と別体に構成されて本体部に固定されるものであり、2つの見付部の内面と本体部の内面との間に多少(1mm未満)の段差が生じている場合も含まれる。
【0022】
第6の発明では、スリム枠用の戸枠材に化粧材仕上げを採用し、化粧材によって芯材の本体部の内面と2つの見付部の内面と2つの見付部の見込方向の端面と2つの見付部の外面の上記壁下地材の端面によって覆われない露出部とを覆うこととしている。また、第6の発明では、化粧材の上記各露出部を覆う部分を、他の部分よりも薄く形成することとしている。このように、芯材の見付部の外面側に設けられる化粧材の一部を他の部分よりも薄く形成することにより、スリム枠用の戸枠材に化粧材仕上げを採用しても、芯材の見付部の内外両面が化粧材で覆われる部分を薄く形成する必要がなくなる。つまり、見付部において化粧材によって薄くなる部分がなくなるので、仕上げ加工や施工の際に、芯材の見付部が折れにくくなる。従って、第6の発明によれば、スリム枠用の戸枠材の製造及び施工を、製造コストを増大させることなく容易に行うことができる。
【0023】
第7の発明は、第1又は第6の発明において、上記芯材は、合板又は単板積層材で構成されていることを特徴とするものである。
【0024】
第7の発明では、芯材が強度の高い合板又は単板積層材で構成されているため、薄い見付部が形成されるスリム枠でも、開き戸用の蝶番に対し、戸枠材の片側からビス等を打ち込むだけで、蝶番を強固に戸枠材に留め付けることができる。
【0025】
第8の発明は、左右一対の縦枠を備え、室内の壁の開口部に取り付けられる戸枠であって、上記縦枠は、第1又は第6の発明に係る戸枠材であることを特徴とするものである。
【0026】
第8の発明では、スリム枠を、製造コストを増大させることなく容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した如く、本発明によると、芯材の見付部において化粧材によって薄く形成せざるを得ない部分が見込方向に長く形成されない又は無くなるようにしたため、スリム枠用の戸枠材及びスリム枠を、製造コストを増大させることなく容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る戸枠に取り付けられた建具の正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態1に係る戸枠材の横断面図である。
【
図5】
図5は、芯材に化粧材を折り曲げながら固定する過程を示す説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態2に係る戸枠材の横断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態3に係る戸枠材の横断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態4に係る戸枠材の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0030】
《発明の実施形態1》
-建具の概略構成-
図1は、室内の壁Wの開口部Oに取り付けられた本発明の実施形態1に係る戸枠1に取り付けられた建具Dの正面図であり、
図2は建具Dの水平方向の断面図であり、
図3は建具Dの鉛直方向の断面図である。
図4は、戸枠1を構成する戸枠材10の横断面図である。以下では、説明の便宜上、
図1の左側、右側、上側、下側を、それぞれ「左」、「右」、「上」、「下」として説明する。また、
図1の紙面直交方向において手前側を「前」、奥側を「後」として説明する。
【0031】
図1~
図4に示すように、壁Wは、大壁構造の壁であり、開口部Oには、壁W内に設けられる左右の柱A,A(躯体)と、左右の柱A,A間に横架されたまぐさB(躯体)と、左右の柱A,A及びまぐさBの前後に設けられる一対の壁下地材C,Cとが設けられている。本実施形態1では、柱A,A及びまぐさBの内側に飼い木Eが設けられている。建具Dは、本実施形態1では、戸枠1に蝶番F,Fによって回動可能に取り付けられる開き戸によって構成されている。なお、
図1では、一対の壁下地材C,Cの表面にクロス等の化粧材が貼られた状態を示している。また、
図1中、符号「G」は、幅木を指している。
【0032】
-戸枠の詳細構成-
戸枠1は、一対の縦枠2,2と、該一対の縦枠2,2の上端を連結する上枠3とを門型に枠組みした三方枠である。戸枠1は、開口部Oに取り付けられている。一対の縦枠2,2及び上枠3は、同様に構成された戸枠材10によって構成されている。一対の縦枠2,2は、上下方向に延び、開口部Oの下端から上端に至る長さに形成されている。上枠3は、左右方向に延び、左側の縦枠2の内面から右側の縦枠2の内面に至る長さに形成されている。一対の縦枠2,2は、左右対称に配置されている。
【0033】
〔戸枠材の構成〕
図2~
図4に示すように、戸枠材10は、室内の壁Wの開口部Oに内端部のみが露出するように取り付けられるものである。戸枠材10は、木質材料によって構成された上下方向に延びる長尺の木質板状部材であり、芯材20と、化粧材30とを備えている。戸枠材10は、見付方向の全長が18~35mm(本実施形態1では25mm)、見込方向の全長が90~200mm(本実施形態1では140mm)となるように形成されている。また、戸枠材10は、内端部の見付方向長さが7~15mm(本実施形態1では8mm)、内端部において後述する芯材20の本体部21よりも見込方向に出っ張った部分(見付部)の見込方向長さが10~30mm(本実施形態1では24mm)となるように形成されている。
【0034】
(芯材の構成)
芯材20は、合板で構成されている。なお、芯材20は、合板の他、単板積層材(LVL)、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード、集成材等の木質材料を用いてもよく、これらの複合材料を用いてもよい。芯材20は、本体部21と、2つの見付部22,22とを有している。
【0035】
本体部21は、開口部Oを構成する躯体(柱A,まぐさB)の前後に設けられる一対の壁下地材C,C間に収まる見込方向長さ(前後方向の長さ)を有している。本実施形態1では、本体部21は、矩形状の断面を有するように形成されている。本体部21は、戸枠材10の施工後には、内端部以外の部分が開口部Oを構成する一対の壁下地材C,C間に挿入され、内端部は一対の壁下地材C,Cの内端面よりも内側に設けられる。
【0036】
2つの見付部22,22は、戸枠材10の施工後に一対の壁下地材C,Cの内端面よりも内側に設けられる本体部21の内端部から見込方向両側に突出する板状片部である。2つの見付部22,22は、本体部21の内端部の見付面(前面又は後面)から見込方向に、内面が本体部21の内面と面一になるように、壁下地材Cの厚さよりも長く突出している。2つの見付部22,22は、前後方向に対称な形状に形成されている。なお、上記「2つの見付部22,22の内面が本体部21の内面と面一になる」には、2つの見付部22,22の内面と本体部21の内面との間に多少(1mm未満)の段差が生じている場合も含まれる。
【0037】
各見付部22の外面の本体部21側は、戸枠材10の施工の際に、壁下地材Cの端面(木口面)に突き当てられ、壁下地材Cの端面によって覆われる。一方、各見付部22の外面の壁下地材Cの端面によって覆われない露出部は、化粧材30の一部によって覆われている。各見付部22の外面には、上記露出部を覆う化粧材30の一部が嵌まる溝23が形成されている。
【0038】
溝23は、各見付部22の外面の見込方向の端部を内面側に凹ませることによって形成されている。溝23は、戸枠材10の長手方向の一端から他端に亘るように形成されている。溝23は、各見付部22の下面と端面(見付面)に開口するように形成されている。溝23は、戸枠材10の長手方向に直交する横断面において矩形状となるように形成されている。これにより、各見付部22は、戸枠材10の長手方向に直交する横断面においてL字形状となるように形成されている。
【0039】
溝23は、化粧材30の一部が嵌め込まれたときに、溝23に嵌まる化粧材30の一部の外面と見付部22の外面の溝23以外の部分とが面一になるように、化粧材30の厚さに等しい溝深さに形成されている。なお、上記「溝23に嵌まる化粧材30の一部の外面が、見付部22の外面の溝23以外の部分と面一になる」には、溝23に嵌まる化粧材30の一部の外面と、見付部22の外面の溝23以外の部分との間に多少(2mm未満)の段差が生じている場合も含まれる。
【0040】
また、溝23は、各見付部22において溝23を形成することによって厚さが薄くなる部分が見込方向に長く形成されて見付部22が折れ易くならないように、見込方向長さL1が見付部22の見込方向長さL2の1/2以下(L1≦1/2×L2)になるように形成している。一方、溝23は、各見付部22の外面の露出部が確実に化粧材30の一部によって覆われるように、見付部22の見込方向長さL2から溝23の見込方向長さL1を減じた長さが、壁下地材Cの厚さT1未満(T1>L2-L1)になるように形成されている。実施形態1では、見付部22の見込方向長さL2は、17mmに設定され、溝23の見込方向長さL1は、8mmに設定されている。
【0041】
(化粧材の構成)
化粧材30は、基材31と、化粧層32とを有している。基材31は、厚さが2~3mm(本実施形態1では、2.5mm)の合板によって構成されている。なお、基材31は、合板の他、単板積層材(LVL)、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード、集成材等の木質材料を用いてもよく、これらの複合材料を用いてもよい。化粧層32は、オレフィンシートで構成されている。なお、化粧層32は、オレフィンシートの他、塩ビシート等の化粧シート、突板、塗装層等で構成されていてもよい。化粧層32が化粧シートや突板で構成されている場合、化粧層32は、基材31の片面に接着剤で接着される。一方、化粧層32が塗装層である場合、基材31の片面を塗装することによって化粧層32を形成する。
【0042】
図4及び
図5に示すように、化粧材30の基材31には、化粧材30を折り曲げるための溝v1,v1,v2,v2が形成されている。溝v1,v1,v2,v2は、化粧材30を、戸枠材10の長手方向に直交する横断面において略90度折り曲げるために、上記横断面においてV字形状に形成されている。溝v1,v1,v2,v2は、化粧材30の長手方向の一端から他端に亘るように形成されている。化粧材30は、各溝v1,v1,v2,v2の2つの側面を重ね合わせて接着剤等で貼り合わせることにより、芯材20の外形に沿うように折り曲げられる。化粧材30は、このように折り曲げられ、化粧層32が露出するように、基材31を芯材20に当接させて該芯材20に接着剤等で固定されている。
【0043】
化粧材30は、基材31に形成された溝v1,v1,v2,v2により、5つの部分30a,30b,30b,30c,30cに区切られており、本体部21及び2つの見付部22,22の内面と、2つの見付部22,22の見込方向の端面と、2つの見付部22,22の外面の露出部とを覆っている。
【0044】
具体的には、化粧材30の溝v1,v1間の内面部30aは、芯材20の本体部21の内面を覆う芯材内面部30dと、芯材内面部30dの見込方向の両端に連続して形成され、2つの見付部22,22の内面に当接して該内面を覆う見付内面部30eとで構成されている。
【0045】
化粧材30の各溝v1,v2間の見付面部30b,30bは、芯材20の2つの見付部22,22の見込方向の端面から所定距離(実施形態1では4mm)離れた位置において2つの見付部22,22の見込方向の端面に略平行に配置され、該端面を覆っている。
【0046】
化粧材30の2つの見付面部30b,30bと、芯材20の2つの見付部22,22の見込方向の端面との間には、空隙S,Sが形成されている。つまり、化粧材30は、芯材20の2つの見付部22,22の見込方向の端面との間に空隙S,Sが形成されるように折り曲げられている。
【0047】
化粧材30の各溝v2と化粧材30の幅方向の端までの間の外面部30c,30cは、芯材20の2つの見付部22,22の外面に形成された溝23,23に嵌め込まれ、溝23,23の底面に当接して該溝23,23の底面を覆う。なお、2つの見付部22,22の外面の露出部は、溝23,23の底面に含まれている。そのため、化粧材30の外面部30c,30cが、溝23,23の底面を覆うことにより、2つの見付部22,22の外面の露出部が覆われることとなる。
【0048】
(戸当たりの構成)
本実施形態1の戸枠1は、開き戸用の戸枠1であるため、各戸枠材10には、溝40,40が形成されている。溝40,40は、戸当たり41を設けるための溝であり、戸枠材10の内面に形成されている。本実施形態1では、溝40,40は、戸当たり41の支持脚部43,43の個数(2つ)に合わせて2本形成されている。溝40,40は、戸枠材10の長手方向の一端から他端に亘るように形成されている。各溝40は、化粧材30を内外方向に貫き、溝底が芯材20の本体部21の内面よりもさらに外側に位置するように形成されている。なお、溝40,40は、芯材20の表面に化粧材30を折り曲げながら接着した後(
図5に示す芯材20に化粧材30を折り曲げながら固定する過程の後)、切削等により形成される。
【0049】
一方、戸当たり41は、例えば、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂等の樹脂材料や木質材料によって構成され、戸枠材10の長手方向に延びる長尺部材であり、戸枠材10の長さと同じ長さに形成されている。戸当たり41は、本体部分42と、2つの支持脚部43,43とを有している。本体部分42は、コ字状の断面を有している。2つの支持脚部43,43は、本体部分42の2つの端部からそれぞれ外側へ突出する板状片部からなり、見込方向(前後方向)に対向している。2つの支持脚部43,43の見込方向の両面(前面及び後面)には、戸枠材10の溝40の内面と係合する係合突起が形成されている。戸当たり41は、2つの支持脚部43,43が戸枠材10の内面に形成された溝40,40内に挿入された状態で、戸枠材10に接着剤等で固定されている。
【0050】
(蝶番Fの取付構造)
蝶番F,Fは、戸枠材10に埋め込まれる枠側部分F1と、建具Dに埋め込まれる戸側部分F2とを有している。蝶番F,Fは、スリム枠に適用可能に構成されたものであり、枠側部分F1の厚さが、戸枠材10の露出した内端部の見付方向長さ(本実施形態1では8mm)以下になるように形成されている。本実施形態1では、枠側部分F1の厚さは、戸枠材10の内端部の見付方向長さと等しく、8mmに形成されている。
【0051】
なお、本実施形態1では、戸枠材10の芯材20が強度の高い合板で構成されている。そのため、内端部の見込方向端部に薄い見付部が形成されるスリム枠用の戸枠材10であっても、蝶番Fの枠側部分F1に対し、戸枠材10の内面側からビス等のねじ部材を打ち込むだけで、蝶番Fの枠側部分F1を強固に戸枠材10に留め付けることができる。
【0052】
以上のように構成された戸枠材10は、内端部のみが露出するように室内の壁Wの開口部Oに取り付けられる(躯体に固定される)。なお、戸枠材10は、壁下地材C,Cの施工前に開口部Oに取り付けられてもよく、壁下地材C,Cの施工後に開口部Oに取り付けられてもよい。また、三方枠である戸枠1の3つの戸枠材10,10,10を枠組みしてから開口部Oに取り付けてもよく、それぞれ別個に開口部Oに取り付けることとしてもよい。
【0053】
-実施形態1の効果-
本実施形態1では、スリム枠用の戸枠材10に化粧材仕上げを採用し、化粧材30によって芯材20の本体部21の内面と2つの見付部22,22の内面と2つの見付部22,22の見込方向の端面と2つの見付部22,22の外面の壁下地材C,Cの端面によって覆われない露出部とを覆うこととしている。また、本実施形態1では、芯材20の2つの見付部22,22の外面に、壁下地材C,Cの端面によって覆われない露出部を覆う化粧材30の一部が嵌まる溝23,23を形成すると共に、各溝23を、見込方向長さL1が見付部22の見込方向長さL2の1/2以下になるように形成している。このように芯材20の見付部22の外面全体を化粧材30で覆うのではなく、見付部22の外面の化粧材30で覆われる部分が見付部22の見込方向長さの1/2以下の長さの範囲に限ることにより、スリム枠用の戸枠材10に化粧材仕上げを採用しても、芯材20の見付部22において化粧材30によって薄く形成せざるを得ない部分が長く形成されないため、仕上げ加工や施工の際に、芯材20の見付部22が折れにくくなる。従って本実施形態1によれば、スリム枠用の戸枠材10の製造及び施工を、製造コストを増大させることなく容易に行うことができる。
【0054】
また、本実施形態1では、化粧材30を、2つの見付部22,22の見込方向の端面との間に空隙S,Sが形成されるように折り曲げることとしている。このような構成によれば、2つの見付部22,22の外面に形成される溝23,23の見込方向長さL1をより短くすることができ、2つの見付部22,22において化粧材30によって薄くなる部分をより短くすることができる。よって、本実施形態1によれば、仕上げ加工の際に、芯材20の見付部22,22がより折れにくくなるので、スリム枠用の戸枠材10を、製造コストを増大させることなくより容易に製造することができる。
【0055】
また、本実施形態1では、芯材20の各見付部22において、溝23の深さを、該溝23に嵌まる化粧材30の一部が、見付部22の外面の溝23以外の部分と面一になる深さにしている。このような構成により、各見付部22において、外面が略平坦面に形成されるため、見付部22の外面の露出部(壁下地材Cの端面によって覆われない部分)を化粧材30で覆うこととしても、戸枠材10を施工する際に、壁下地材Cの端面との間に隙間を生じない。よって、本実施形態1によれば、スリム枠としての意匠性を損なうことなく戸枠材10を施工することができる。
【0056】
また、本実施形態1では、芯材20が強度の高い合板で構成されているため、薄い見付部22が形成されるスリム枠でも、開き戸用の蝶番F(枠側部分F1)に対し、戸枠材10の片側(内面側)からビス等を打ち込むだけで、蝶番F(枠側部分F1)を強固に戸枠材10に留め付けることができる。
【0057】
また、本実施形態1では、戸枠1の一対の縦枠2,2と、上枠3とを、スリム枠用の上記戸枠材10で構成することとしている。そのため、本実施形態1によれば、スリム枠を、製造コストを増大させることなく容易に製造することができる。
【0058】
《発明の実施形態2》
実施形態2は、実施形態1の戸枠材10に変更を加えたものである。
【0059】
図6に示すように、実施形態2では、芯材20の2つの見付部22,22の見込方向の端面と化粧材30との間に形成される2つの空隙S,Sにスペーサ24が設けられている。スペーサ24は、芯材20の見付部22の溝23が形成された部分と見付方向長さが等しく、長手方向(縦枠2では上下方向又は上枠3では左右方向)の長さも等しい横断面が矩形状の部材によって構成されている。スペーサ24は、芯材20と同じ木質材料で構成されていてもよく、異なる木質材料、樹脂材料、金属材料等で構成されていてもよい。
【0060】
実施形態2の戸枠材10及び戸枠1によっても、実施形態1の戸枠材10及び戸枠1と同様の効果を奏することができる。
【0061】
また、実施形態2によれば、戸枠材10の各空隙Sにスペーサ24を充填することにより、戸枠材10の見込方向の両端部の強度を向上することができる。
【0062】
《発明の実施形態3》
実施形態3は、実施形態1の戸枠材10に変更を加えたものである。
【0063】
図7に示すように、実施形態3では、化粧材30の一部が他の部分よりも薄く形成されている。具体的には、芯材20の2つの見付部22,22の外面に形成された溝23,23に嵌まる化粧材30の両端部が、他の部分よりも薄く形成されている。化粧材30の両端部では、基材31の厚さが0.3~2.0mmに形成され、その他の部分の厚さ(2.5mm)に比べて薄く形成されている。
【0064】
また、実施形態3では、化粧材30の両端部の厚さに合わせて、芯材20の2つの見付部22,22の外面に形成される溝23,23の深さも浅く形成されている。実施形態3では、溝23は、化粧材30の薄い端部が嵌め込まれたときに、溝23に嵌まる化粧材30の端部の外面と見付部22の外面の溝23以外の部分とが面一になるように、化粧材30の端部の厚さに等しい溝深さ(1mm)に形成されている。なお、上記「溝23に嵌まる化粧材30の端部の外面が、見付部22の外面の溝23以外の部分と面一になる」には、溝23に嵌まる化粧材30の端部の外面と、見付部22の外面の溝23以外の部分との間に多少(2mm未満)の段差が生じている場合も含まれる。
【0065】
実施形態3の戸枠材10及び戸枠1によっても、実施形態1の戸枠材10及び戸枠1と同様の効果を奏することができる。
【0066】
また、実施形態3によれば、化粧材30の各溝23に嵌まる端部を他の部分よりも薄く形成することにより、各溝23を浅く形成することができ、その分、芯材20の見付部22の溝23が形成された部分を分厚く形成することができる。よって、実施形態3によれば、仕上げ加工や施工の際に、芯材20の見付部22がより折れにくくなるので、スリム枠用の戸枠材10の製造及び施工を、製造コストを増大させることなくより容易に行うことができる。
【0067】
《発明の実施形態4》
実施形態4は、実施形態1の戸枠材10に変更を加えたものである。
【0068】
図8に示すように、実施形態4では、実施形態3と同様に、化粧材30の一部が他の部分よりも薄く形成されている。具体的には、芯材20の2つの見付部22,22の外面の露出部を覆う化粧材30の両端部が、他の部分よりも薄く形成されている。化粧材30の両端部では、基材31の厚さが0.3~2.0mmに形成され、その他の部分の厚さ(2.5mm)に比べて薄く形成されている。
【0069】
また、実施形態4では、化粧材30の両端部が薄く形成されているため、芯材20の2つの見付部22,22の外面に溝23,23を形成していない。実施形態4では、各見付部22の外面では、露出部を覆う化粧材30の両端部により、段差が生じるが、0.3~2.0mmと微小な段差しか生じないため、戸枠材を施工する際に、壁下地材Cの端面との間に隙間が生じたとしても微小な隙間となり、スリム枠の意匠性を損なわない。
【0070】
このように、実施形態4では、スリム枠用の戸枠材10に化粧材仕上げを採用し、化粧材30によって芯材20の本体部21の内面と2つの見付部22,22の内面と2つの見付部22,22の見込方向の端面と2つの見付部22,22の外面の壁下地材C,Cの端面によって覆われない露出部とを覆うこととしている。また、実施形態4では、化粧材30の各露出部を覆う両端部を、他の部分よりも薄く形成することとしている。このように、芯材20の見付部22,22の外面側に設けられる化粧材30の一部(両端部)を他の部分よりも薄く形成することにより、スリム枠用の戸枠材10に化粧材仕上げを採用しても、芯材20の見付部22,22の内外両面が化粧材30で覆われる部分を薄く形成する必要がなくなる。つまり、見付部22において化粧材30によって薄くなる部分がなくなるので、仕上げ加工や施工の際に、芯材20の見付部22が折れにくくなる。従って、実施形態4によっても、スリム枠用の戸枠材10の製造及び施工を、製造コストを増大させることなく容易に行うことができる。
【0071】
《その他の実施形態》
上記実施形態1~4では、三方枠からなる戸枠1について説明したが、本発明に係る戸枠1は、戸枠材10からなる一対の縦枠2,2を備えた二方枠であってもよく、戸枠材10からなる下枠をさらに備えた四方枠であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態1~4では、芯材20の本体部21と2つの見付部22,22とは、合板等の木質材料に切削加工を施すことにより、一体に形成されていた。しかしながら、本体部21と2つの見付部22,22とは別体に形成されて、2つの見付部22,22が、内面が本体部21の内面と面一になるように本体部21に固定されたものであってもよい。その場合、上記「2つの見付部22,22の内面が本体部21の内面と面一になる」には、2つの見付部22,22の内面と本体部21の内面との間に多少(1mm未満)の段差が生じている場合も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、室内の壁の開口部に取り付けられる戸枠材及び戸枠に有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 戸枠
2 縦枠
10 戸枠材
20 芯材
21 本体部
22 見付部
23 溝
24 スペーサ
30 化粧材
30d 芯材内面部
30X 見付部
31 基材
32 化粧層
W 壁
O 開口部
C 壁下地材
F 蝶番
F1 枠側部分