(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131205
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 3/04 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A47C3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041324
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】河合 春樹
(72)【発明者】
【氏名】井澤 晶一
【テーマコード(参考)】
3B091
【Fターム(参考)】
3B091BA04
(57)【要約】
【課題】座の姿勢を切り替える複雑な機構を設けることなくネスティング可能とされた椅子を提供する。
【解決手段】椅子1は、前後方向にネスティング可能な椅子であって、椅子1同士がネスティングされた状態で、椅子1同士で互いに左右方向に重ね合わされる脚部材10と、前後方向前側に向かうに従って下方へ傾斜した姿勢で、脚部材10に変位不能に固定された座40と、を備える。座40は、椅子1同士がネスティングされた状態で前方の椅子1の座40の下方に進入する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向にネスティング可能な椅子であって、
前記椅子同士がネスティングされた状態で、前記椅子同士で互いに左右方向に重ね合わされる脚部材と、
前後方向前側に向かうに従って下方へ傾斜した姿勢で、前記脚部材に変位不能に固定された座と、を備え、
前記座は、前記椅子同士がネスティングされた状態で、前方の椅子の前記座の下方に進入する、
椅子。
【請求項2】
前記座は、
前記脚部材に固定された左右一対の座側部フレームと、
前記一対の座側部フレームの間に架設されて着座面を形成するシート部材と、
を有し、
前記シート部材は、側面視で前記一対の座側部フレームよりも下方に突出しない、
請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記座は、前記脚部材に片持ち支持されており、自由端とされた後端を有する、
請求項1または請求項2に記載の椅子。
【請求項4】
前記脚部材は、接地部、および前記接地部から前上方に延びる脚杆を備え、
前記脚杆は、前記接地部よりも前上方で前記座を支持する、
請求項3に記載の椅子。
【請求項5】
前記脚部材は、
幅方向に離間する一対の前脚と、
前記一対の前脚よりも後方で接地するとともに、前記幅方向に離間する一対の後脚と、
を備え、
前記一対の後脚は、前後方向から見て前記一対の前脚と左右方向に位置をずらして配置されている、
請求項1または請求項2に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の格納スペースを縮小するために、複数の椅子を、互いの椅子における脚体の少なくとも一部同士が左右に重ね合った状態で、前後方向に重ね合わせる(いわゆるネスティング)構成が知られている。例えば、複数の椅子は、後方の椅子の座が前方の椅子の座の下方の空間に挿入された状態でネスティングされる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
下記特許文献1には、着座部が略水平方向に支持されるとともに上方へ開き可能にヒンジ結合されており、前後方向に移動させることにより着座部が他の着座部の上面へ乗り上げつつ上方へ開き、前後方向の寸法を縮めるように複数の椅子を重ね可能な椅子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のネスティング可能な椅子においては、ネスティングに際して椅子同士を深く重ね合わせるために座の姿勢を切り替える構造が設けられており、椅子の構造が複雑になるという課題がある。
【0006】
そこで本発明は、座の姿勢を切り替える複雑な機構を設けることなくネスティング可能とされた椅子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る椅子は、前後方向にネスティング可能な椅子であって、前記椅子同士がネスティングされた状態で、前記椅子同士で互いに左右方向に重ね合わされる脚部材と、前後方向前側に向かうに従って下方へ傾斜した姿勢で、前記脚部材に変位不能に固定された座と、を備え、前記座は、前記椅子同士がネスティングされた状態で、前方の椅子の前記座の下方に進入する。
【0008】
第1の態様によれば、ネスティングに際して前側に向かうに従って下方へ傾斜した姿勢で脚部材に固定された前方の椅子の座の下方に後方の椅子の座が後方から進入するので、座同士が接触することを抑制できる。これにより、ネスティング状態および着座状態で座の姿勢を切り替える機構を省略できる。したがって、座の姿勢を切り替える複雑な機構を設けることなくネスティング可能とされた椅子を提供することができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る椅子は、上記第1の態様に係る椅子において、前記座は、前記脚部材に固定された左右一対の座側部フレームと、前記一対の座側部フレームの間に架設されて着座面を形成するシート部材と、を有し、前記シート部材は、側面視で前記一対の座側部フレームよりも下方に突出しないようにされていてもよい。
【0010】
第2の態様によれば、後方の椅子の座が前方の椅子の座の下方に進入する際に、後方の椅子の座が前方の椅子のシート部材に接触しにくい。したがって、シート部材の破損を抑制できる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る椅子は、上記第1の態様または第2の態様に係る椅子において、前記座は、前記脚部材に片持ち支持されており、自由端とされた後端を有していてもよい。
【0012】
第3の態様によれば、座の後端の下方に座を支持する部材が配置されることを避けて、座の下方の空間を後方に開口させることができる。したがって、ネスティングに際して後方の椅子を差し入れやすくすることができる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る椅子は、上記第1の態様から第3の態様のいずれかの態様に係る椅子において、前記脚部材は、接地部、および前記接地部から前上方に延びる脚杆を備え、前記脚杆は、前記接地部よりも前上方で前記座を支持していてもよい。
【0014】
第4の態様によれば、脚杆の後方に、脚部材が配置されない空間を上下方向に大きく形成できる。したがって、ネスティングに際して後方の椅子をより差し入れやすくすることができる。
【0015】
本発明の第5の態様に係る椅子は、上記第1の態様から第4の態様のいずれかの態様に係る椅子において、前記脚部材は、幅方向に離間する一対の前脚と、前記一対の前脚よりも後方で接地するとともに、前記幅方向に離間する一対の後脚と、を備え、前記一対の後脚は、前後方向から見て前記一対の前脚と左右方向に位置をずらして配置されていてもよい。
【0016】
第5の態様によれば、一対の椅子を前後方向に接近させた際に、前方の椅子の後脚と後方の椅子の前脚とが干渉することを避けることができる。したがって、ネスティング状態で重ね合わせることが可能な脚部材とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、座の姿勢を切り替える複雑な機構を設けることなくネスティング可能とされた椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】実施形態の椅子が分解された状態を示す斜視図である。
【
図6】実施形態の椅子の断面図であって、
図3のVI-VI線に相当する箇所を示す。
【
図7】実施形態の椅子の断面図であって、
図2のVII-VII線に相当する箇所を示す。
【
図9】実施形態の椅子がネスティングされた状態を示す左側面図である。
【
図10】実施形態の椅子がネスティングされた状態を示す斜視図である。
【
図11】ネスティングされた実施形態の椅子の一部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。また、以下の説明において、前後上下左右等の向きは、椅子1に正規姿勢で着座した人(着座者)の向きと同一とする。さらに、各図中において、矢印UPは上方、矢印FRは前方、矢印LHは左方をそれぞれ示している。
【0020】
図1は、実施形態の椅子を示す斜視図である。
図1に示すように、椅子1は、脚部材10と、座40と、背凭れ60と、一対の肘掛け70と、を備える。
【0021】
図2は、実施形態の椅子を示す正面図である。なお
図2では、後述するシート部材46の図示を省略している。
図1および
図2に示すように、脚部材10は、左右対称に形成されている。脚部材10は、一対の前脚11と、一対の後脚12と、一対の連結部材13と、連結杆14,15と、を備える。一対の前脚11、一対の後脚12、および一対の連結部材13は、それぞれ左右方向(椅子1の幅方向)に離間している。
【0022】
図3は、実施形態の椅子を示す左側面図である。なお
図3では、シート部材46の図示を省略している。
図1および
図3に示すように、各前脚11は、強度部材として設けられた前脚杆20と、接地部として前脚11の下端に設けられた前キャスター27と、を備える。前脚杆20は、後方の箇所ほど上方に位置するように延びている。前脚杆20の全体は、単一の金属管により形成されている。前脚杆20は、前キャスター27が結合した前キャスター結合部21を備える。前キャスター結合部21は、前脚杆20の下端部に設けられ、上下方向に沿って延びている。前脚杆20のうち前キャスター結合部21を除く主要部22は、前キャスター結合部21の上端から後上方に延びている。主要部22は、直線状に延びている。
【0023】
一対の後脚12は、一対の前脚11よりも後方で接地している。一対の後脚12は、正面視で一対の前脚11に対して左右方向に位置をずらして配置されている(
図2参照)。各後脚12は、強度部材として設けられた後脚杆30と、接地部として後脚12の下端に設けられた後キャスター37と、を備える。後脚杆30の全体は、単一の金属管により一体に形成されている。後脚杆30は、前方の箇所ほど上方に位置するように延びる下部31と、後方の箇所ほど上方に位置するように延びる上部34と、を備える。下部31は、後キャスター37が結合した後キャスター結合部32を備える。後キャスター結合部32は、後脚杆30の下端部に設けられ、上下方向に沿って延びている。後脚杆30の下部31のうち後キャスター結合部32を除く主要部33は、後キャスター結合部32の上端から前上がりに延びている。主要部33は、直線状に延びている。主要部33の上端は、屈曲部35を介して上部34に接続している。下部31の主要部33および上部34は、側面視で後方に開放されたV字状に形成されている。上部34は、屈曲部35から後上方に延びている。上部34は、屈曲部35から直線状に延びている。上部34の後端は、下部31の後端よりも前方に位置する。後脚杆30は、側面視で屈曲部35が前脚杆20の主要部22の前方に位置し、かつ下部31および上部34が前脚杆20の主要部22と交差するように配置されている。
【0024】
図2に示すように、前脚杆20の主要部22は、上方の箇所ほど左右方向の内側に位置するように傾斜して延びている。後脚杆30の全体は、正面視で上下方向に延びている。後脚杆30は、正面視で前脚杆20に重ならないように前脚杆20よりも左右方向の内側に配置されている。
【0025】
図4は、実施形態の椅子の背面図である。なお
図4では、シート部材46の図示を省略している。
図1および
図4に示すように、一対の連結部材13は、それぞれ前脚11および後脚12を1対1で連結している。すなわち、一対の連結部材13は、左側の前脚11および後脚12を連結する左側の連結部材13と、右側の前脚11および後脚12を連結する右側の連結部材13と、である。連結部材13は、前脚杆20および後脚杆30に結合することで、前脚杆20および後脚杆30を連結している。連結部材13は、側面視で前脚杆20および後脚杆30が重なり合う箇所に配置されている。連結部材13の全体は、側面視で前脚杆20に重なっている(
図3を併せて参照)。連結部材13は、金属により形成されている。連結部材13は、前脚杆20の主要部22の延在方向に沿って延びている。連結部材13は、側面視で前脚杆20の主要部22の幅方向に厚みを有する板状に形成されている。連結部材13は、その全長にわたって前脚杆20の主要部22に接合されている。連結部材13は、側面視で後脚杆30の下部31の主要部33および上部34に重なるそれぞれの箇所で後脚杆30に接合されている。本実施形態では、連結部材13と前脚杆20および後脚杆30との接合方法は、溶接である。
【0026】
図1に示すように、連結杆14,15は、左右方向に延びて一対の後脚杆30を相互に連結している。連結杆14,15は、金属管により形成されている。連結杆14,15は、後脚杆30に溶接等により接合している。連結杆14,15は、一対の後脚杆30の屈曲部35同士を連結する上部連結杆14と、一対の後脚杆30の下部31の主要部33同士を連結する下部連結杆15と、である。下部連結杆15は、後脚杆30の主要部33のうち連結部材13との接合部よりも後方に位置する箇所に接合している。
【0027】
図1および
図3に示すように、座40は、前側に向かうに従い下方へ傾斜した姿勢で、脚部材10に支持されている。座40は、脚部材10に変位不能に固定されている。すなわち、座40は、後述するネスティング状態だけでなく、着座状態でもネスティング状態と同じ前側に向かうに従い下方へ傾斜した姿勢で脚部材10に支持されている。座40の姿勢は、座40の前端40fが後端40rよりも下方に位置し、かつ座40が側面視で後端40rから前端40fに向けて、少なくとも前後方向の中心よりも前方の箇所まで前下方に延びる姿勢である。本実施形態では、座40は、側面視で後端40rから前端40fまで前下方に延びている。座40の後端40rと設置面との上下方向の間隔は、座40の前端40fの上縁の高さよりも大きい。座40は、脚部材10に変位不能に連結された座フレーム41と、着座面40aを形成するシート部材46と、を有する。
【0028】
図1および
図2に示すように、座フレーム41は、金属管により形成され、上方から見た平面視で後方に開放されたU字状に形成されている。座フレーム41は、左右対称に形成されている。座フレーム41は、単体でも上述した座40の姿勢を呈している(
図3参照)。座フレーム41は、平面視で前後方向に沿って延びるとともに左右方向に間隔をあけて配置された左右一対の座側部フレーム42と、一対の座側部フレーム42の前端同士を接続する座接続フレーム43と、を備える。
【0029】
図3に示すように、各座側部フレーム42は、後方の箇所ほど上方に位置するように延びる傾斜部42aを有する。傾斜部42aは、座フレーム41の前後方向の中心を前後方向に跨ぐように配置されている。本実施形態では、傾斜部42aは、各座側部フレーム42の全長にわたって設けられている。傾斜部42aは、側面視で直線状に延びる直線部42bを有する。直線部42bは、水平方向に対して10°以上20°以下の傾斜角度で延びている。図示の例では、直線部42bは、水平方向に対して15°の傾斜角度で延びている。一対の座側部フレーム42の直線部42bは、互いに平行に配置されている。直線部42bは、傾斜部42aのうちその前端部42cを除く部分の全体に配置されている。傾斜部42aの前端部42cは、側面視で直線部42bの前端から下方に屈曲しながら前方に延びている。
【0030】
図1および
図2に示すように、座接続フレーム43は、左右方向に沿って延びている。座接続フレーム43の両端は、座側部フレーム42の前端に1対1で接続している。座接続フレーム43は、座側部フレーム42の前端に連続するように屈曲して接続している。座接続フレーム43は、その左右方向の中心が僅かに前方かつ下方に凸となるように湾曲している。
【0031】
本実施形態では、座フレーム41が前後に分割可能に形成されている。具体的に、各座側部フレーム42は、その中途部42dにおいてインロー構造により分割可能とされている。これにより、各座側部フレーム42の後半部がそれぞれ単一の金属管により形成されているとともに、一対の座側部フレーム42の前半部および座接続フレーム43が単一の金属管により連続している。そして、これら3本の金属管が互いに結合することで、座フレーム41が1本の金属管として延びている。
【0032】
座フレーム41には、シート部材46を面で支持する支持パッチ44が接合されている。支持パッチ44は、金属板により形成されている。支持パッチ44は、左右方向に延びて一対の座側部フレーム42の傾斜部42aの前端部42c(
図3参照)同士を接続しているとともに、座接続フレーム43にその全長にわたって接続している。すなわち支持パッチ44は、平面視で座フレーム41の内側の空間の前端部を埋めるように配置されている。支持パッチ44の前縁部および左右方向の両側縁部は、座フレーム41に溶接により接合されている。支持パッチ44は、座フレーム41に対して前上方から接合されている。支持パッチ44は、側面視で座フレーム41よりも下方に突出しないように形成されている(
図3参照)。支持パッチ44には、左右方向に沿って延びる貫通孔が形成されている。ただし、支持パッチ44に貫通孔が形成されていなくてもよい。支持パッチ44は、その上面をシート部材46に当接させることによって、シート部材46の前端部が下方に垂れ下がることを防止するとともに、着座者が座40に着座するときに、着座者の膝の裏面に当接することで、着座者の膝を下方から支える部材である。
【0033】
なお支持パッチは上記構成に限定されず、例えば合成樹脂等の金属以外の材料により形成されていてもよい。また、支持パッチは、溶接に代えて、ボルト等の固定手段を介することにより座フレーム41に接合されていてもよい。また、支持パッチは、その左右両側縁部が座フレーム41に接合されず、前縁部のみが座フレーム41に接合されていてもよい。さらに、支持パッチは、その前縁部が座フレーム41に接合されず、左右両側縁部が座フレーム41に接合されていてもよい。
【0034】
図5は、実施形態の椅子が分解された状態を示す斜視図である。
図5に示すように、座フレーム41は、左右一対の連結部50を介して脚部材10に変位不能に支持されている。一対の連結部50は、左右対称に配置されている。各連結部50は、座フレーム41に固定された連結筒51と、脚部材10に固定された挿入部52と、を備える。
【0035】
連結筒51は、座側部フレーム42に接合されている。連結筒51は、金属管により形成され、例えば溶接により座側部フレーム42に接合されている。本実施形態では、連結筒51は、座側部フレーム42のうち分割箇所の中途部42dを境にした後半部に接合されている。連結筒51は、座側部フレーム42に左右方向の外側かつ下方で隣接している(
図3参照)。連結筒51は、座側部フレーム42と略平行に配置されている。連結筒51の前端は、座側部フレーム42の中途部42dよりも後方に位置する。連結筒51は、脚部材10の後脚杆30の上部34と略同径に形成されている。連結筒51は、後述するネスティング状態で後方の椅子1に接触しないように配置されている。
【0036】
挿入部52は、後脚杆30の上部34の後端から、後脚杆30の上部34と平行に後方かつ上方に突出している。挿入部52は、連結筒51の前端開口に挿入可能に形成されている。例えば、挿入部52は、円筒状に形成されている。ただし、挿入部52は、中実に形成されていてもよい。挿入部52は、連結筒51とともにインロー構造を形成している。連結筒51および挿入部52は、下方から組み付けられたネジによって互いに締結されている(
図3および
図4参照)。座フレーム41は、連結筒51および挿入部52が相互に固定されることで、連結部50を介して脚部材10に固定される。これにより、座40は、その後端40rを自由端として、脚部材10に片持ち支持される。
【0037】
シート部材46の説明に先立って、背凭れ60について説明する。
図1および
図2に示すように、背凭れ60は、シート部材46が架設される背凭れフレーム61を備える。背凭れフレーム61は、金属管により形成され、正面視で下方に開放されたU字状に形成されている。背凭れフレーム61は、左右対称に形成されている。背凭れフレーム61は、平面視で上下方向に沿って延びるとともに左右方向に間隔をあけて配置された左右一対の背凭れ側部フレーム62と、一対の背凭れ側部フレーム62の上端同士を接続する背凭れ接続フレーム63と、を備える。
【0038】
図2および
図3に示すように、背凭れ側部フレーム62は、座側部フレーム42の後端に1対1で接続している。各背凭れ側部フレーム62は、座側部フレーム42の後端から上方に屈曲して、座側部フレーム42よりも急傾斜で後上方に延びている。背凭れ接続フレーム63は、左右方向に沿って延びている。背凭れ接続フレーム63の両端は、背凭れ側部フレーム62の上端に1対1で接続している。背凭れ接続フレーム63は、背凭れ側部フレーム62の上端に連続するように屈曲して接続している。背凭れ接続フレーム63は、その左右方向の中心が後方に凸となるように湾曲している。
【0039】
本実施形態では、一対の背凭れ側部フレーム62および背凭れ接続フレーム63が単一の金属管により連続しているとともに、互いに接続された背凭れ側部フレーム62および座側部フレーム42が単一の金属管により形成されている。これにより、一対の座側部フレーム42および背凭れフレーム61が単一の金属管により形成されている。
【0040】
図1に示すように、シート部材46は、座フレーム41および背凭れフレーム61からなるフレーム部材の内側に架設されている。すなわち、シート部材46は、一対の座側部フレーム42の間、および一対の背凭れ側部フレーム62の間を左右方向に架設されているとともに、座接続フレーム43と背凭れ接続フレーム63との間を後上がり(前下がり)に架設されている。シート部材46は、一対の座側部フレーム42の間に架設されて着座面40aを形成し、一対の背凭れ側部フレーム62の間に架設されて背支持面60aを形成している。これにより、シート部材46の下半部が座40の一部を形成しているとともに、シート部材46の上半部が背凭れ60の一部を形成している。以下では、座フレーム41および背凭れフレーム61からなるフレーム部材をフレーム枠体5と称する。
【0041】
シート部材46は、伸縮性を有するニット生地により形成されている。シート部材46は、おおよそ矩形状に形成されている。シート部材46のうち座40の前半部を形成する箇所は、座40の後半部を形成する箇所よりも伸びにくく形成されている。
【0042】
シート部材46は、その外周部分にフレーム枠体5が挿通される袋部47を有する。袋部47は、シート部材46の外周全体にわたって形成されている。シート部材46には、袋部47の開口48が形成されている。開口48は、フレーム枠体5の分割箇所(座側部フレーム42の中途部42d)に対応する位置に形成されている。袋部47には、分割されたフレーム枠体5の各部材が開口48を通じて挿入される。なおフレーム枠体5の分割された両部材は、袋部47に挿入された状態で互いに結合される。
【0043】
図5に示すように、袋部47には、連結部50の各連結筒51が挿入される。連結筒51は、その前端を袋部47の外側に配置することで、フレーム枠体5が袋部47に挿入された状態で、挿入部52と結合可能とされている。袋部47のうち連結筒51が挿入される箇所は、座40の前半部に位置し、上記の延びにくく形成された箇所である。
【0044】
図6は、実施形態の椅子の断面図であって、
図3のVI-VI線に相当する箇所を示す。
図7は、実施形態の椅子の断面図であって、
図2のVII-VII線に相当する箇所を示す。なお
図7では、シート部材46について
図2のVII-VII線に相当する箇所のみ示している。
図6および
図7に示すように、シート部材46は、張力以外の負荷が掛かっていない無負荷状態において、側面視でフレーム枠体5から下方に突出しないようにフレーム枠体5に架設されている。なおシート部材46のうちフレーム枠体5を覆う箇所の厚みは無視してもよい。すなわち、シート部材46のうちフレーム枠体5の内側に位置する箇所が側面視でフレーム枠体5から下方に突出しない。本実施形態では、シート部材46は、座40の後部から背凭れ60にわたる箇所が左右方向の中心に向かうに従い前方に位置するように、前上方に膨出している。なおシート部材46は、フレーム枠体5に架設される前の状態で平面状に形成され、フレーム枠体5に架設された状態でシート部材46に作用する張力によって上記形状を呈する。シート部材46は、座側部フレーム42の間で沈み込んで着座者の臀部を支持する。
【0045】
図1に示すように、一対の肘掛け70は、左右方向に間隔をあけて配置されている。一対の肘掛け70は、互いに左右対称に設けられている。一対の肘掛け70は、平面視で座40を左右方向で挟むように設けられている。各肘掛け70は、肘掛け杆71と、肘掛け杆71に支持されたパッド76と、を備える。
【0046】
肘掛け杆71は、強度部材として設けられている。肘掛け杆71は、脚部材10に1対1で結合している。肘掛け杆71は、前脚杆20に結合している。肘掛け杆71は、水平方向に沿って延びている。厳密には、肘掛け杆71は、その後端から前下方、かつ左右方向の内側に直線状に延びている(
図3および
図4参照)。肘掛け杆71の前端は、屈曲部を介して前脚杆20の上端に結合している。肘掛け杆71および前脚杆20は、単一の金属管により一体に形成されている。
【0047】
図8は、実施形態の肘掛け杆を示す左側面図である。
図8に示すように、パッド76は、肘掛け70の上面70aを形成している。パッド76は、樹脂により形成されている。ただし、パッド76を形成する材料は特に限定されない。パッド76は、肘掛け杆71に沿って肘掛け杆71の上方に配置されたパッド本体77と、パッド本体77から下方に突出して肘掛け杆71の後端開口を閉塞する閉塞部78と、を備える。
【0048】
パッド本体77は、肘掛け杆71の略全長に沿って配置されている。パッド本体77は、肘掛け杆71の略全長にわたって肘掛け杆71の上半部を覆うように配置されている。肘掛け杆71の上半部とは、肘掛け杆71の中心軸線を含み、かつ中心軸線の軸線方向に直交する水平の一方向に延びる仮想平面で肘掛け杆71を分割した場合に、仮想平面よりも上方に位置する部分である。パッド本体77は、平面視で肘掛け杆71の延在方向を長手方向とする長円形状に形成されている(
図1参照)。パッド本体77は、平面視で肘掛け杆71よりも後方に突出しているとともに、肘掛け杆71よりも幅広に形成されている。パッド本体77の上面は、肘掛け杆71の延在方向から見て上方に凸となるように湾曲している(
図2参照)。
【0049】
閉塞部78は、パッド本体77の後部から下方に突出している。閉塞部78は、パッド本体77の後端よりも前方、かつ肘掛け杆71の後端の後方に配置されている。閉塞部78は、肘掛け杆71の後端開口のうち、パッド本体77よりも下方に位置する半円状の部分を閉塞している。閉塞部78は、肘掛け杆71の後端と略同じ外径を有する1/4球状に形成されている。閉塞部78は、側面視で肘掛け杆71の後端縁の下端から後方かつ上方に湾曲して延びている。閉塞部78は、肘掛け杆71の延在方向から見て肘掛け杆71のうちパッド本体77から下方に突出する部分に略一致する半円状に形成されている(
図4参照)。以上により、閉塞部78は、下方かつ後方に凸となる球面状の湾曲面を有している。
【0050】
図9は、実施形態の椅子がネスティングされた状態を示す左側面図である。
図10は、実施形態の椅子がネスティングされた状態を示す斜視図である。
図9および
図10に示すように、本実施形態の椅子1は、前後方向にネスティング可能とされている。ネスティングとは、脚部材10の全ての接地部(前キャスター27および後キャスター37)を接地させた状態で前後一対の椅子1を互いに接近させて、前方の椅子1の座40の下方に後方の椅子1の座40を配置することである。本実施形態では、前後一対の椅子1同士がネスティングされた状態を単にネスティング状態という。ネスティング状態の前後一対の椅子1において、前方の椅子1の脚部材10と後方の椅子1の脚部材10とが左右方向に重ね合わされる。本実施形態では、前方の椅子1の一対の後脚12が後方の椅子1の一対の前脚11の間に挿入されることで、前方の椅子1の脚部材10と後方の椅子1の脚部材10とが側面視で重なり合う。ネスティング状態で、前方の椅子1における後脚杆30の下部31は、側面視で後方の椅子1における前脚杆20に交差し、かつ側面視で後方の椅子1における後脚杆30の下部31の下方に位置する。ネスティングに際して後方の椅子1が前方の椅子1に接近する際に、後方の椅子1の座40は、前方の椅子1の座40の下方に進入する。この際、前方の椅子1の座40、および後方の椅子1の座40は、互いに接触しない。さらに、ネスティング状態において前方の椅子1の座40、および後方の椅子1の座40は、互いに接触しない。
【0051】
図10に示すように、椅子1は、ネスティング状態で前後の椅子1に対する前後方向の接近を規制する規制部80をさらに備える。規制部80は、樹脂により形成されたストッパ部材81,82を備える。ストッパ部材81,82は、各後脚杆30に1つずつ固定された第1部材81と、各前脚杆20に1つずつ固定された第2部材82と、である。ストッパ部材81,82は、それぞれネジにより脚部材10に固定されている。ただし、ストッパ部材81,82の固定方法は特に限定されない。例えば、ストッパ部材81,82は、樹脂により形成されている。
【0052】
第1部材81は、後脚杆30のうちネスティング状態で後方の椅子1の前脚杆20と重なる箇所に配置されている。本実施形態では、第1部材81は、後脚杆30の下部31に固定されている。第1部材81は、後脚杆30の左右方向外側に配置されている。第1部材81は、左右方向の外側を向くとともに後側に向かうに従い左右方向の外側に延びる第1摺接面81aを有する。
【0053】
第2部材82は、前脚杆20のうちネスティング状態で前方の椅子1の後脚杆30と重なる箇所に配置されている。本実施形態では、第2部材82は、前脚杆20の主要部22に固定されている。第2部材82は、前脚杆20の左右方向内側に配置されている。第2部材82は、左右方向の内側を向くとともに下方に向かうに従い左右方向の内側に延びる第2摺接面82aを有する。
【0054】
図11は、ネスティングされた実施形態の椅子の一部を拡大して示す斜視図である。
図10および
図11に示すように、ネスティング状態の前後一対の椅子1において、後方の椅子1の第2部材82は、前方の椅子1の第1部材81のうち僅かに後方を向くように傾斜した第1摺接面81aに接触することで、第1部材81に対する所定の位置から前方への変位を規制される。これにより、規制部80は、ネスティング状態の前後一対の椅子1において、座40同士が接触しないように後方の椅子1が前方の椅子1に対して前方へ移動することを規制する。また、前方の椅子1の第1部材81は、後方の椅子1の第2部材82のうち僅かに上方を向く第2摺接面82aに接触することで、第2部材82に対する所定の位置から下方への変位を規制される。これにより、規制部80は、ネスティング状態の前後一対の椅子1において、後方の椅子1が前方の椅子1に対して上方へ移動することを規制する。
【0055】
さらに、ネスティング状態で、前方の椅子1の第1部材81と後方の椅子1の第2部材82とは、互いに左右方向の接近を規制するように接触し合う。これにより規制部80は、ネスティング状態で前方の椅子1の後脚12および後方の椅子1の前脚11を左右方向において相対的に位置決めする。
【0056】
なお肘掛け70が規制部80の少なくとも一部を構成してもよい。この場合、ネスティング状態の前後一対の椅子1において、前方の椅子1の肘掛け70が後方の椅子1の肘掛け70に接触する。具体的に、前方の椅子1の肘掛け70の閉塞部78が、後方の椅子1の肘掛け70のパッド本体77の前端部における左右方向外側部に接触する。これにより肘掛け70は、後方の椅子1が前方の椅子1に対して前方へ移動することを規制する。
【0057】
以上に説明したように、本実施形態の椅子1は、前側に向かうに従って下方へ傾斜した姿勢で脚部材10に変位不能に固定された座40を備える。座40は、ネスティングに際して前方の椅子1の座40の下方に進入する。この構成によれば、ネスティングに際して前側に向かうに従って下方へ傾斜した姿勢で脚部材10に支持された前方の椅子1の座40の下方に後方の椅子1の座40が後方から進入するので、座40同士が接触することを抑制できる。これにより、ネスティング状態および着座状態で座40の姿勢を切り替える機構を省略できる。したがって、座40の姿勢を切り替える複雑な機構を設けることなくネスティング可能とされた椅子1を提供することができる。
【0058】
また、座40は、一対の座側部フレーム42の間に架設されて着座面40aを形成するシート部材46を備える。シート部材46は、側面視で一対の座側部フレーム42よりも下方に突出しない。この構成によれば、後方の椅子1の座40が前方の椅子1の座40の下方に進入する際に、後方の椅子1の座40が前方の椅子1のシート部材46に接触しにくい。したがって、シート部材46の破損を抑制できる。
【0059】
座40は、脚部材10に片持ち支持されており、自由端とされた後端40rを有する。この構成によれば、座40の後端40rの下方に座40を支持する部材が配置されることを避けて、座40の下方の空間を後方に開口させることができる。したがって、ネスティングに際して後方の椅子1を差し入れやすくすることができる。
【0060】
後脚杆30は、後キャスター37から前上方に延び、後キャスター37よりも前上方で座40を支持している。この構成によれば、後脚杆30の後方に、脚部材10が配置されない空間を上下方向に大きく形成できる。したがって、ネスティングに際して後方の椅子1をより差し入れやすくすることができる。
【0061】
一対の後脚12は、前後方向から見て一対の前脚11と左右方向に位置をずらして配置されている。この構成によれば、一対の椅子1を前後方向に接近させた際に、前方の椅子1の後脚12と後方の椅子1の前脚11とが干渉することを避けることができる。したがって、ネスティングで重ね合わせることが可能な脚部材10とすることができる。
【0062】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、シート部材46がニット生地により形成されているが、この構成に限定されない。例えばシート部材がメッシュ状の張地であってもよい。さらに、座がウレタン等のクッション材を有していてもよいし、座の全体が硬質な材料により形成されていてもよい。
【0063】
上記実施形態では、シート部材46が側面視でフレーム枠体5から下方に突出しないようにフレーム枠体5に架設されている。しかし、シート部材46は、少なくとも座フレーム41から下方に突出していなければよい。
【0064】
上記実施形態では、シート部材46が座フレーム41から下方に突出していないことで、ネスティングに際して後方の椅子1の座40が前方の椅子1のシート部材46に接触しにくくしている。しかし、シート部材が座フレームから上方に突出しないように構成することで、ネスティングに際して後方の椅子1のシート部材が前方の椅子1の座に接触しにくくしてもよい。
【0065】
上記実施形態では、座40が後脚12に固定されているが、この構成に限定されない。すなわち、座は前脚の上部に固定されていてもよい。
【0066】
上記実施形態では、座フレーム41が脚部材10とは別部材として設けられているが、この構成に限定されない。例えば、座フレームは、後脚杆の上部を後上方に延長させることにより形成されていてもよい。
【0067】
上記実施形態では、単一のシート部材46が座40の座面40aおよび背凭れ60の背支持面60aを形成しているが、この構成に限定されない。すなわち、座面を形成するシート部材と、背支持面を形成するシート部材と、が互いに区分けされていてもよい。
【0068】
さらに、上記実施形態では、座40および背凭れ60を有する椅子1に本発明を適用しているが、背凭れを有しない椅子に本発明を適用してもよい。
【0069】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…椅子 10…脚部材 11…前脚 12…後脚 30…後脚杆(脚杆) 37…後キャスター(接地部) 40…座 40a…着座面 40r…後端 42…座側部フレーム 46…シート部材