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特開2024-131206電力変換装置、異常判断器および異常判断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131206
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電力変換装置、異常判断器および異常判断方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240920BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041325
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA29
5H770CA02
5H770DA03
5H770HA02W
5H770HA02Y
5H770KA01Z
5H770LB05
5H770LB10
(57)【要約】
【課題】電流検出器の異常を適切に検出できるようにする。
【解決手段】原異常度計算部516と、第1の電流推定部517-1と、複数相の第1の電流推定値IU1,IV1,IW1に基づいて、複数の電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す第1の異常度推定値AU1,AV1,AW1を生成する第1の異常度計算部518-1と、原異常度計算値AU0,AV0,AW0と、前記第1の異常度推定値AU1,AV1,AW1と、に基づいて、複数の前記電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す第1の予測異常度AU1C,AV1C,AW1Cを生成する第1の異常度補正部519-1と、を異常判断器51bに設けた。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源と負荷装置との間に設けられる電力変換装置であって、
前記交流電源と前記電力変換装置との間、または、前記電力変換装置と前記負荷装置との間に流れる複数相の交流電流を、相毎に検出する複数の電流検出器と、
前記電流検出器の異常を判断する異常判断器と、を備え、
前記異常判断器は、
前記電流検出器が検出した複数相の電流検出値に基づいて複数の前記電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す原異常度計算値を生成する原異常度計算部と、
前記原異常度計算値と、複数相の前記電流検出値と、に基づいて複数相の第1の電流推定値を演算する第1の電流推定部と、
複数相の前記第1の電流推定値に基づいて、複数の前記電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す第1の異常度推定値を生成する第1の異常度計算部と、
前記原異常度計算値と、前記第1の異常度推定値と、に基づいて、複数の前記電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す第1の予測異常度を生成する第1の異常度補正部と、を備える
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記原異常度計算部は、異常度算出処理部を含むものであり、
前記異常度算出処理部は、
複数相の入力電流値の総和である第1の総和値を計算する第1の加算部と、
前記第1の総和値と各々の前記入力電流値との積である第1の積を、複数相の各々について計算する第1の乗算部と、
複数の前記第1の積の各々に対してフィルタ処理を行った結果である第1のフィルタ結果を出力する第1のフィルタと、
異なる2つの相の組合せ毎の、前記入力電流値の積である第2の積をそれぞれ計算する第2の乗算部と、
複数の前記第2の積の総和である第2の総和値を計算する第2の加算部と、
前記第2の総和値に対してフィルタ処理を行った結果である第2のフィルタ結果を出力する第2のフィルタと、
各々の前記入力電流値の二乗値を相毎に計算する第3の乗算部と、
複数の前記二乗値の総和である第3の総和値を計算する第3の加算部と、
前記第3の総和値に対してフィルタ処理を行った結果である第3のフィルタ結果を出力する第3のフィルタと、
前記第1のフィルタ結果と、前記第2のフィルタ結果と、前記第3のフィルタ結果と、に基づいて複数の前記電流検出器に対応する異常度計算結果を算出する演算部と、を備えるものであり、
前記原異常度計算部は、複数相の前記入力電流値として前記電流検出値を適用し、前記異常度計算結果を前記原異常度計算値として出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1の異常度計算部は、前記異常度算出処理部を含むものであり、複数相の前記入力電流値として前記第1の電流推定値を適用し、前記異常度計算結果を前記第1の異常度推定値として出力する
ことを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記演算部は、複数の前記異常度計算結果の総和を「0」にする
ことを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1の予測異常度に基づいて何れかの前記電流検出器の異常の有無を判断する異常判断部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記異常判断部は、各々の前記第1の予測異常度の絶対値のうち最大のものが所定の異常判定閾値を超える場合に、複数の前記電流検出器のうち少なくとも一つが異常であると判断する機能を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記異常判断部は、前記第1の予測異常度の各要素が、類似度の高い二つの要素と、他の一つの要素と、に分類できるか否かの類似判定を行い、前記類似判定の結果が肯定である場合には複数の前記電流検出器のうち一つのみが異常であると判定し、前記類似判定の結果が否定である場合には複数の前記電流検出器のうち二つ以上が異常であると判定する機能をさらに備える
ことを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記異常判断部は、各々の前記第1の予測異常度の絶対値のうち最大のものに対応する前記電流検出器が異常であると判定する機能をさらに備える
ことを特徴とする請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
2以上の任意の自然数を追加処理部段数Nとし、第2ないし第Nの電流推定部と、
第2ないし第Nの異常度計算部と、
第2ないし第Nの異常度補正部と、をさらに備え、
2≦K≦Nとなる任意の自然数をKとし、第Kの電流推定部は、複数相の前記電流検出値と、第(K-1)の予測相対異常度と、に基づいて複数相の第Kの電流推定値を演算するものであり、
第Kの異常度計算部は、複数相の前記第Kの電流推定値に基づいて、複数の前記電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す第Kの異常度推定値を生成するものであり、
第Kの異常度補正部は、
前記原異常度計算値と、第1ないし第Kの異常度推定値と、に基づいて、複数の前記電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す第Kの予測異常度を生成するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記第Kの異常度推定値の各要素の合計が所定の異常度推定値合計閾値未満になると、現在の自然数Kを前記追加処理部段数Nとする機能をさらに備える
ことを特徴とする請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記第Kの電流推定値の総和が所定の振幅閾値未満になると、現在の自然数Kを前記追加処理部段数Nとする機能をさらに備える
ことを特徴とする請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項12】
複数の前記電流検出値のうち1相に異常が生じたと判定した場合に、他の2相の前記電流検出値に基づいて、異常が生じたと判定した前記電流検出値の推定値を出力する出力推定器をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記異常判断部が何れかの前記電流検出器に異常が生じた旨を判定すると、異常が生じたと判定した前記電流検出器を特定する異常情報を提示する情報提示部をさらに備え、
前記異常判断部は、前記電流検出器の複数回に渡る異常度合いの履歴に基づいて、前記電流検出器に所定の異常状態が発生するまでの期間を予測し、予測した前記期間を前記情報提示部に提示させる機能をさらに備える
ことを特徴とする請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項14】
電流検出器が検出した複数相の電流検出値に基づいて複数の前記電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す原異常度計算値を生成する原異常度計算部と、
前記原異常度計算値と、複数相の前記電流検出値と、に基づいて複数相の第1の電流推定値を演算する第1の電流推定部と、
複数相の前記第1の電流推定値に基づいて、複数の前記電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す第1の異常度推定値を生成する第1の異常度計算部と、
前記原異常度計算値と、前記第1の異常度推定値と、に基づいて、複数の前記電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す第1の予測異常度を生成する第1の異常度補正部と、を備える
ことを特徴とする異常判断器。
【請求項15】
電流検出器が検出した複数相の電流検出値に基づいて複数の前記電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す原異常度計算値を生成する原異常度計算過程と、
前記原異常度計算値と、複数相の前記電流検出値と、に基づいて複数相の第1の電流推定値を演算する第1の電流推定過程と、
複数相の前記第1の電流推定値に基づいて、複数の前記電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す第1の異常度推定値を生成する第1の異常度計算過程と、
前記原異常度計算値と、前記第1の異常度推定値と、に基づいて、複数の前記電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す第1の予測異常度を生成する第1の異常度補正過程と、を備える
ことを特徴とする異常判断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、異常判断器および異常判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1~3には、電流検出器の異常を検出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3737370号公報
【特許文献2】特開2005-94912号公報
【特許文献3】特開2006-50702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した技術において、一層適切に電流検出器の異常を検出したいという要望がある。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、電流検出器の異常を適切に検出できる電力変換装置、異常判断器および異常判断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の電力変換装置は、交流電源と負荷装置との間に設けられる電力変換装置であって、前記交流電源と前記電力変換装置との間、または、前記電力変換装置と前記負荷装置との間に流れる複数相の交流電流を、相毎に検出する複数の電流検出器と、前記電流検出器の異常を判断する異常判断器と、を備え、前記異常判断器は、前記電流検出器が検出した複数相の電流検出値に基づいて複数の前記電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す原異常度計算値を生成する原異常度計算部と、前記原異常度計算値と、複数相の前記電流検出値と、に基づいて複数相の第1の電流推定値を演算する第1の電流推定部と、複数相の前記第1の電流推定値に基づいて、複数の前記電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す第1の異常度推定値を生成する第1の異常度計算部と、前記原異常度計算値と、前記第1の異常度推定値と、に基づいて、複数の前記電流検出器のそれぞれの異常度合いを表す第1の予測異常度を生成する第1の異常度補正部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電流検出器の異常を適切に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態による電力変換装置の構成の一例を示す図である。
図2】電力変換装置の詳細構成の一例を示す図である。
図3】AC/DC変換装置のブロック図である。
図4】DC/AC変換装置のブロック図である。
図5】第1実施形態におけるインバータ側異常判断部のブロック図である。
図6】原異常度計算部の詳細を示すブロック図である。
図7】コンピュータのブロック図である。
図8】インバータ側異常判断部における異常判断処理の一例を示すフローチャートである。
図9】シミュレーションに適用した負荷装置等の回路図である。
図10】シミュレーション結果の一例を示す図である。
図11】シミュレーション結果の他の例を示す図である。
図12】第2実施形態におけるインバータ側異常判断部のブロック図である。
図13】第3実施形態におけるインバータ側異常判断部のブロック図である。
図14】第3実施形態におけるシミュレーション結果の一例を示す図である。
図15】第3実施形態によるシミュレーション結果の他の例を示す図である。
図16】第4実施形態による電力変換装置の構成の一例を示す図である。
図17】第4実施形態におけるコンバータ側出力推定器およびインバータ側出力推定器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
電力変換装置と負荷装置との間に流れる電流を検出する電流検出器の健全性を確認するための技術として、次のような方法が考えられる。
例えば、特許文献1に記載された技術を応用すると、電力変換装置と負荷装置との間に流れる各相の電流を検出し、各相の電流実効値を他相の電流実効値と比較することにより異常が発生した相を判定できると考えられる。すなわち、当該技術によれば、三相3線出力に平衡3相負荷が接続された場合に異常が発生した電流検出器の相を判定可能である。
【0009】
しかし、三相3線出力に不平衡3相負荷が接続された場合、負荷が小さい相に多くの電流が流れて3相電流実効値が不一致となる。あるいは三相3線出力に少なくとも一つの単相接続負荷が接続された場合、負荷が小さい相に多くの電流が流れて3相電流実効値が不一致となる。例えば、無停電電源装置(UPS)の用途で少なくとも一つの単相接続負荷が接続され3相電流実効値が不一致となる場合、電流検出器が正常であったとしても、これが異常であるとの誤検出が生じるおそれがある。
【0010】
また、特許文献2、特許文献3に記載された技術を応用すると、3相電流検出値の総和がゼロであるか否かを判定し、この判定結果において3相電流の総和がゼロではない場合に、各相の電流値比較あるいは符号判定により電流検出器の異常が発生した相を判定できると考えられる。しかし、特許文献2および特許文献3には、三相3線出力に接続された負荷が不平衡である場合に電流検出器の異常の度合いを定量的に検出する技術は特に示されていない。そこで、後述する実施形態は、負荷が不平衡である場合においても、電流検出器の異常を適切に検出しようとするものである。
【0011】
[第1実施形態]
〈第1実施形態の構成〉
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。実施の形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。また、実施の形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが、発明の解決手段に必須であるとは限らない。同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0012】
図1は、第1実施形態による電力変換装置100の構成の一例を示す図である。
図1において電力変換装置100は、電力変換ユニット3と、交流配線11,12,13と、交流配線21,22,23と、電流検出器14,15,16と、電流検出器24,25,26と、制御装置41と、パルス生成器42と、異常判断器51と、表示器52(情報提示部)と、を備えている。
【0013】
電力変換装置100は、交流配線11,12,13を介して交流電源1から交流電力を受電し、電力変換ユニット3によって電力変換を行い、交流配線21,22,23を介して、変換された交流電力を負荷装置2に出力する。すなわち、電力変換装置100は、交流電源1から入力された交流電圧を、電圧および周波数が異なる他の交流電圧に変換して負荷装置2に印加する。電流検出器14,15,16は、それぞれ交流配線11,12,13の電流、すなわちR相、S相、T相の電流を検出し、その結果である電流検出値IR,IS,ITを、制御装置41および異常判断器51に供給する。
【0014】
電流検出器24,25,26は、それぞれ交流配線21,22,23の電流、すなわちU相,V相,W相の電流を検出し、その結果である電流検出値IU,IV,IWを、制御装置41および異常判断器51に供給する。制御装置41は、電力変換ユニット3の出力電圧に対する交流電圧指令値をパルス生成器42に出力する。パルス生成器42は、この交流電圧指令値に基づいて、電力変換ユニット3における各スイッチング素子等(図示略)をオン・オフ制御するためのパルス信号を生成し、生成したパルス信号を電力変換ユニット3に出力する。
【0015】
図2は、電力変換装置100の詳細構成の一例を示す図である。
図2において、電力変換ユニット3は、コンバータユニット3aと、インバータユニット3bと、を備えている。コンバータユニット3aは、入力された交流電圧を直流電圧に変換し直流配線31,32を介して出力する。インバータユニット3bは、直流配線31,32を介して入力された直流電圧を交流電圧に変換する。
【0016】
但し、図示の電力変換ユニット3の構成は一例であり、図示の構成に限定されるわけではない。例えば直流配線31,32の本数は2本とは限らず、3レベル変換器の場合は直流配線は3本となる。また、電力変換ユニット3は、例えばサイクロコンバータのように、直流電圧を介することなく、交流電圧を他の交流電圧に変換するものであってもよい。
【0017】
また、制御装置41は、コンバータ制御部41aと、インバータ制御部41bと、を備えている。また、パルス生成器42は、コンバータ側パルス生成部42aと、インバータ側パルス生成部42bと、を備えている。また、異常判断器51は、コンバータ側異常判断部51aと、インバータ側異常判断部51bと、を備えている。また、表示器52は、コンバータ側表示部52aと、インバータ側表示部52bと、を備えている。
【0018】
電流検出器14,15,16で検出された電流検出値IR,IS,ITは、コンバータ制御部41aおよびコンバータ側異常判断部51aに入力される。コンバータ制御部41aは、コンバータユニット3aが出力すべき直流電圧を指令する直流電圧指令値をコンバータ側パルス生成部42aに出力する。コンバータ側パルス生成部42aは、この直流電圧指令値に基づいて、コンバータユニット3a内の各スイッチング素子等(図示略)をオン・オフ制御するためのパルス信号を生成し、生成したパルス信号をコンバータユニット3aに出力する。
【0019】
同様に、電流検出器24,25,26で検出された電流検出値IU,IV,IWは、インバータ制御部41bおよびインバータ側異常判断部51bに入力される。インバータ制御部41bは、インバータユニット3bが出力すべき交流電圧を指令する交流電圧指令値をインバータ側パルス生成部42bに出力する。インバータ側パルス生成部42bは、この交流電圧指令値に基づいて、インバータユニット3b内の各スイッチング素子等(図示略)をオン・オフ制御するためのパルス信号を生成し、生成したパルス信号をインバータユニット3bに出力する。
【0020】
コンバータ側異常判断部51aは、電流検出値IR,IS,ITに基づいて、電流検出器14,15,16の何れかに異常が生じているか否かを判定し、その結果をコンバータ側表示部52aに表示させる。同様に、インバータ側異常判断部51bは、電流検出値IU,IV,IWに基づいて、電流検出器24,25,26の何れかに異常が生じているか否かを判定し、その結果をコンバータ側異常判断部51aに表示させる。これら電流検出器の異常の有無を判定するため、交流電源1および負荷装置2は、中性点が接地されていないものが望ましい。
【0021】
上述したように、電力変換装置100は、交流電源1から入力された交流電圧を、電圧および周波数が異なる他の交流電圧に変換して負荷装置2に印加するものである。ここで、図2に示した例のように、電力変換ユニット3がコンバータユニット3aと、インバータユニット3bと、直流配線31,32と、を備える場合、電力変換装置100は、AC/DC変換装置100a(図3参照)と、DC/AC変換装置100b(図4参照)と、に分離することができる。
【0022】
図3は、AC/DC変換装置100aのブロック図である。
図示のように、AC/DC変換装置100aは、コンバータユニット3aと、交流配線11,12,13と、電流検出器14,15,16と、コンバータ制御部41aと、コンバータ側パルス生成部42aと、コンバータ側異常判断部51aと、コンバータ側表示部52aと、を備えている。
【0023】
図4は、DC/AC変換装置100bのブロック図である。
図示のように、DC/AC変換装置100bは、インバータユニット3bと、交流配線21,22,23と、電流検出器24,25,26と、インバータ制御部41bと、インバータ側パルス生成部42bと、インバータ側異常判断部51bと、インバータ側表示部52bと、を備えている。
【0024】
図3および図4における各要素は、図2に示したものと同様である。図3および図4に示したように、AC/DC変換装置100aと、DC/AC変換装置100bと、は相互に独立した装置とすることができる。従って、用途に応じて、AC/DC変換装置100aのみを設けてもよく、DC/AC変換装置100bのみを設けてもよい。
【0025】
なお、以下の説明では、主としてDC/AC変換装置100bにおけるインバータ側異常判断部51b等の構成や動作について説明するが、AC/DC変換装置100aにおけるコンバータ側異常判断部51aの構成や動作も、インバータ側異常判断部51bのものと同様である。
【0026】
〈各種パラメータ等〉
(検出ゲインGU,GV,GW
次に、本実施形態における各種パラメータ等について説明する。
電流検出器24、25、26の電流検出値IU,IV,IWと電流真値IUT,IVT,IWTとの関係は、次式(1)~(3)で表せる。なお、GU、GV、GWは電流検出器24、25、26における検出ゲインを表す。

U=IUT×GU …(1)
V=IVT×GV …(2)
W=IWT×GW …(3)
そこで、本実施形態では、これら検出ゲインGU,GV,GWの異常を検出することにより、電流検出器24,25,26等の異常を検出する。
また、実際に流れている電流真値IUT,IVT,IWTに関しては、キルヒホッフ電流則より次式(4)が成り立つ。
UT+IVT+IWT=0 …(4)
【0027】
(絶対異常度AU,AV,AW
ここで、電流検出器24、25、26の絶対的な異常度合いを示す情報として、絶対異常度AU,AV,AWを導入する。
絶対異常度AU,AV,AWは、検出ゲインGU,GV,GWに対して、次式(5)~(7)が成立するように定義される。

U=1+AU …(5)
V=1+AV …(6)
W=1+AW …(7)
【0028】
絶対異常度AU,AV,AWが0の場合は、対応する検出ゲインGU,GV,GWが「1」となり、電流検出器24、25、26が正常であることを表している。一方、絶対異常度AU,AV,AWが0以外の値の場合は、対応する検出ゲインGU,GV,GWが「1」以外の値となり、電流検出器24、25、26が異常であることを表している。従って、絶対異常度AU,AV,AWは、それらの値が「0」から離れるほど異常の影響が大きいという、異常度合いを表す情報である。
【0029】
絶対異常度AU,AV,AWを用いると、上述した式(1)~(3)で示した電流検出値IU,IV,IWは、次式(8)~(10)で表される。

U=IUT×(1+AU) …(8)
V=IVT×(1+AV) …(9)
W=IWT×(1+AW) …(10)
【0030】
ここで、U相,V相,W相の電流検出器24,25,26の全てが正常である場合には「GU=GV=GW=1」であるので、次式(11)が成立する。
U+GV+GW=3 …(11)
一方、電流検出器24,25,26のうち1つが異常である場合、「GU≠1かつGV=GW=1」、「GV≠1かつGU=GW=1」および「GW≠1かつGU=GV=1」の何れかが成立するため、式(11)が成立せず、「GU+GV+GW≠3」となる。
【0031】
また、電流検出器24,25,26のうち2つまたは3つが異常である場合、「GU+GV+GW=3」または「GU+GV+GW≠3」の何れかが成立する。なお、「GU+GV+GW=3」は、異常な電流検出器の検出ゲインについて、「1」からのズレが打ち消しあった場合に成り立つものである。ズレが打ち消しあわない場合には、「GU+GV+GW≠3」となる。
【0032】
(相対検出ゲインGU0,GV0,GW0
ここで、ゲインの和が常に3になるような相対検出ゲインGU0,GV0,GW0および変数BIを新たに導入する。
相対検出ゲインGU0,GV0,GW0および変数BIは、次式(12),(13)~(15)が成立するように設定される量である。

U0+GV0+GW0=3 …(12)
U=IUT×BI×GU0 …(13)
V=IVT×BI×GV0 …(14)
W=IWT×BI×GW0 …(15)
【0033】
式(1)~(3)および式(13)~(15)の比較より、検出ゲインGU,GV,GWと相対検出ゲインGU0,GV0,GW0との間には、次式(16)~(18)が成立する。

U=BI×GU0 …(16)
V=BI×GV0 …(17)
W=BI×GW0 …(18)
【0034】
式(16)~(18)の和より、次式(19)が成立する。
U+GV+GW=BI×(GU0+GV0+GW0) …(19)
式(19)の右辺に式(12)を代入して整理すると、次式(20)が成立する。
I=(GU+GV+GW)/3 …(20)
すなわち、変数BIとは、絶対ゲインGU、GV、GWの平均値である。
【0035】
(相対異常度AUR,AVR,AWR
ここで、下式(21)~(23)が成立するAUR,AVR,AWRを「相対異常度」と呼ぶ。

U0=1+AUR …(21)
V0=1+AVR …(22)
W0=1+AWR …(23)
この相対異常度AUR,AVR,AWRを用いると、前述した式(16)~(18)は次式(24)~(26)で表される。

U=IUT×BI×(1+AUR) …(24)
V=IVT×BI×(1+AVR) …(25)
W=IWT×BI×(1+AWR) …(26)
【0036】
また、式(12)および式(21)~(23)より、相対異常度AUR,AVR,AWRの和に関して次式(27)が成立する。

UR+AVR+AWR=0 …(27)
従って、相対異常度AUR,AVR,AWRとは、異常度合いを表す絶対異常度AU,AV,AWを式(27)が成立するように規格化したものであるといえる。
一方、絶対異常度AU,AV,AWに関しては、電流検出器24,25,26の全てが正常である場合(すなわち「GU=GV=GW=1」が成立する場合)は、式(5)~(7)および式(11)より「AU+AV+AW=0」となる。一方、電流検出器24,25,26のうち1つ以上が異常である場合は、「AU+AV+AW=0」または「AU+AV+AW≠0」のいずれかとなる。
【0037】
〈各種要素の詳細〉
(インバータ側異常判断部51bの概要)
図5は、第1実施形態におけるインバータ側異常判断部51bのブロック図である。
図5において、インバータ側異常判断部51bは、原異常度計算部516(原異常度計算過程)と、電流推定部517-1(第1の電流推定部、第1の電流推定過程)と、異常度計算部518-1(第1の異常度計算部、第1の異常度計算過程)と、異常度補正部519-1(第1の異常度補正部、第1の異常度補正過程)と、異常判断部514と、を備えている。
【0038】
(原異常度計算部516)
原異常度計算部516は、電流検出値IU,IV,IWに基づいて、前述した式(24)~(26)における相対異常度AUR,AVR,AWRの推定値である原異常度計算値AU0,AV0,AW0を算出する。この算出方法についての詳細は後述する。
【0039】
(電流推定部517-1)
電流推定部517-1は、原異常度計算部516において算出された原異常度計算値AU0,AV0,AW0と、電流検出値IU,IV,IWと、に基づいて、電流真値IUT,IVT,IWTの推定値である電流推定値IU1,IV1,IW1(第1の電流推定値)を算出する。例えば、電流推定部517-1は、次式(28)~(30)で電流推定値IU1,IV1,IW1を計算する。

U1=IU/(1+AU0) …(28)
V1=IV/(1+AV0) …(29)
W1=IW/(1+AW0) …(30)
【0040】
ところで、原異常度計算値AU0,AV0,AW0が真の相対異常度AUR,AVR,AWRと等しい場合(AU0=AUR、AV0=AVR、かつAW0=AWR)、次式(31)~(33)が成立する。

U1=IUT×BI …(31)
V1=IVT×BI …(32)
W1=IWT×BI …(33)
すなわち、原異常度計算値AU0,AV0,AW0と真の相対異常度AUR,AVR,AWRと、が等しい場合には、式(4)および式(31)~(33)により、電流の真値の計算結果(IU1、IV1、IW1)に関しても、キルヒホッフの電流則に相当する下式(34)が成立する。

U1+IV1+IW1=0 …(34)
一方、原異常度計算値AU0,AV0,AW0が真の相対異常度AUR,AVR,AWRとは異なる場合(例えば、三相負荷不平衡などに起因する計算誤差が発生した場合)、上述の式(34)が成立しなくなる。
【0041】
(異常度計算部518-1)
異常度計算部518-1は、電流推定値IU1,IV1,IW1に基づいて、前述した式(24)~(26)における相対異常度AUR,AVR,AWRの推定結果である異常度推定値AU1,AV1,AW1(第1の異常度推定値)を出力する。
【0042】
上述した原異常度計算部516で計算した原異常度計算値AU0,AV0,AW0が真の相対異常度AUR,AVR,AWRと等しい場合、異常度計算部518-1で計算される異常度推定値AU1,AV1,AW1には、「AU1=AV1=AW1=0」が成立する。これにより、下式(35)が成立する。

|AU0|+|AV0|+|AW0| > |AU1|+|AV1|+|AW1| …(35)
【0043】
原異常度計算値AU0,AV0,AW0が真の相対異常度AUR,AVR,AWRと異なる場合、異常度推定値AU1,AV1,AW1は、電流推定値IU1,IV1,IW1における補正誤差に対して相対異常度を計算したものと考えることができる。従って、異常度推定値AU1,AV1、AW1のうち少なくとも1つが「0」以外となる。
【0044】
しかし、原異常度計算部516の計算結果が妥当であれば、原異常度計算部516に入力される電流検出値IU,IV,IWよりも、異常度計算部518-1に入力される電流推定値IU1,IV1,IW1の方が、電流真値IUT,IVT,IWTに近づいていると考えられるため、上述の式(35)が成立する。
【0045】
(異常度補正部519-1)
異常度補正部519-1は、原異常度計算値AU0,AV0,AW0と、異常度推定値AU1,AV1,AW1と、を用いて、例えば下式(36)~(38)に基づいて、予測相対異常度AU1C,AV1C,AW1C(第1の予測異常度)を算出する。

U1C=AU0+AU1 …(36)
V1C=AV0+AV1 …(37)
W1C=AW0+AW1 …(38)
【0046】
上述の式(36)~(38)においては、原異常度計算値AU0,AV0,AW0と、異常度推定値AU1,AV1,AW1と、を単純に加算したが、両者に重み付け定数を乗算し、その結果を加算する積和演算を行ってもよい。
【0047】
(異常判断部514)
異常判断部514は、予測相対異常度AU1C,AV1C,AW1Cに基づいて、電流検出器24,25,26の異常の有無を判定し、異常が生じたと判定した電流検出器を特定する異常情報をインバータ側表示部52bに表示させる。
また、異常判断部514は、電流検出器24,25,26の複数回に渡る異常度合いの履歴に基づいて、電流検出器24,25,26に所定の異常状態が発生するまでの期間を予測し、予測した当該期間をインバータ側表示部52bに表示させる。
【0048】
例えば、電流検出器24,25,26が正常であるとみなす予測相対異常度AU1C,AV1C,AW1Cの許容値がAth(図示せず)であったとする。異常判断部514は、過去の予測相対異常度の推移に基づいて、各予測相対異常度AU1C,AV1C,AW1Cが許容値Athを超えると予測されるまでの期間をインバータ側表示部52bに表示させる。なお、異常判断部514における、さらなる処理の詳細については後述する。
【0049】
(インバータ側異常判断部51bの詳細)
<<原異常度計算部516>>
以下、上述したインバータ側異常判断部51bの各部の詳細を説明する。
図6は、原異常度計算部516の詳細を示すブロック図である。
原異常度計算部516は、異常度算出処理部511を備えている。但し、図示の例では、原異常度計算部516は、異常度算出処理部511に等しい。
【0050】
異常度算出処理部511は、入力された入力電流値IUX,IVX,IWXに基づいて、異常度計算結果AUX,AVX,AWXを出力するものである。そして、原異常度計算部516は、電流検出値IU,IV,IWとして、入力電流値IUX,IVX,IWXを適用し、異常度計算結果AUX,AVX,AWXを原異常度計算値AU0,AV0,AW0として出力するものである。
【0051】
図6において、異常度算出処理部511、すなわち原異常度計算部516は、加算器5111(第1の加算部)と、乗算器5112U,5112V,5112W(第1の乗算部)と、フィルタ5113U,5113V,5113W(第1のフィルタ)と、乗算器5114U,5114V,5114W(第3の乗算部)と、加算器5115(第3の加算部)と、フィルタ5116(第3のフィルタ)と、乗算器5114CU,5114CV,5114CW(第2の乗算部)と、加算器5115C(第2の加算部)と、フィルタ5116C(第2のフィルタ)と、演算部5117と、を備えている。
【0052】
U相の電流検出器24(図1参照)で検出された電流検出値IUは、U相の入力電流値IUXとして、加算器5111と、乗算器5112U,5114U,5114CV,5114CWと、に供給される。V相の電流検出器25で検出された電流検出値IVは、V相の入力電流値IVXとして、加算器5111と、乗算器5112V,5114V,5114CW,5114CUと、に供給される。W相の電流検出器26で検出された電流検出値IWは、W相の入力電流値IWXとして、加算器5111と、乗算器5112W,5114W,5114CU,5114CVと、に供給される。
【0053】
加算器5111は、入力電流値IUX,IVX,IWXの総和を入力総和値II0(=IUX+IVX+IWX)として出力する。算出された入力総和値II0は、乗算器5112U,5112V,5112Wのそれぞれに入力される。ところで、原異常度計算部516は、キルヒホッフ電流則を活用した判断方法を採ることが望ましい。
【0054】
すなわち、キルヒホッフ電流則により、電流真値IUT,IVT,IWTの合計は0であるため、入力総和値II0が「0」であれば電流検出器24,25,26(図2参照)は正常であると推定できる。一方、入力総和値II0が「0」でなければ何れかの電流検出器24,25,26が異常であると推定できる。また、電流検出器の相対的な異常度を定量的に算出できる方法が望ましい。
【0055】
乗算器5112Uは、U相の入力電流値IUXと入力総和値II0との積DUを算出する。乗算器5112Vは、V相の入力電流値IVXと入力総和値II0との積DVを算出する。乗算器5112Wは、W相の入力電流値IWXと入力総和値II0との積DWを算出する。フィルタ5113U,5113V,5113Wは、それぞれ、積DU,DV,DW(第1の積)から交流成分を低減または除去する処理を行うことにより、演算部5117に対して、直流成分FU,FV,FW(第1のフィルタ結果)を出力する。フィルタ5113U,5113V,5113Wは、例えば所定の時間範囲の入力に対して平均値を出力するフィルタまたはローパスフィルタである。フィルタ5113U,5113V,5113Wは、入力信号に含まれる交流成分を低減または除去するものであるが、以下では単に「除去する」と記載する。
【0056】
乗算器5114U,5114V,5114Wは、それぞれ、入力電流値IUX,IVX,IWXの二乗値であるIUX 2,IVX 2,IWX 2を出力する。加算器5115は、これら二乗値IUX 2,IVX 2,IWX 2の合計値SHI(第3の総和値)を出力し、フィルタ5116は、該合計値SHIから交流成分を除去した結果を直流成分HI(第3のフィルタ結果)として出力する。
【0057】
乗算器5114CU,5114CV,5114CWは、入力電流値IUX,IVX,IWXに基づいて、それぞれ、乗算結果IVXWX,IWXUX,IUXVXを出力する。加算器5115Cは、これら二乗値IUX 2,IVX 2,IWX 2合計値SKI(第2の総和値)を出力し、フィルタ5116Cは、該合計値に高周波成分を除去または低減させるフィルタ処理を施した結果を直流成分KI(第2のフィルタ結果)として出力する。
【0058】
演算部5117は、入力された直流成分FU,FV,FW,HI,KIに基づいて、異常度計算結果AUX,AVX,AWXを算出する。以下、異常度計算結果AUX,AVX,AWXを算出する方法について詳述する。
【0059】
U相,V相,W相の電流真値IUT,IVT,IWTは、例えば、電流真値の波形が正弦波であって、電流真値の振幅が3相ともにIIAであり、各相の電流真値の正弦波波形の位相差が2π/3(ラジアン)である場合には、次式(39)~(41)で表される。

UT=IIA×cos(ωt) …(39)
VT=IIA×cos(ωt-2π/3) …(40)
WT=IIA×cos(ωt-4π/3) …(41)
但し、IIAは前述したように電流振幅、tは時間、ω=2πfは角周波数(fは周波数)である。
【0060】
また、式(21)~(26)および式(39)~(41)より、U相,V相,W相の電流検出値IU,IV,IWは式(42)~式(44)で表される。

U=(1+AUR)×BI×cos(ωt) …(42)
V=(1+AVR)×BI×cos(ωt-2π/3) …(43)
W=(1+AWR)×BI×cos(ωt-4π/3) …(44)
【0061】
前述した式(39)~(41)に示す電流が流れている場合について、原異常度計算部516における入力総和値II0、積DU,DV,DW、直流成分FU,FV,FW、直流成分HI、直流成分KI等の意義を説明する。
【0062】
図6の加算器5111から出力される入力総和値II0は、次式(45)で表される。

I0=IUX+IVX+IWX
=IU+IV+IW
=BI×(AUR×cos(ωt)+AVR×cos(ωt-2π/3)
+AWR×cos(ωt-4π/3)) …(45)
【0063】
また、乗算器5112U,5112V,5112Wの出力である積DU,DV,DWは、次式(46)~(48)で表される。なお、式(46)~(48)において、記号√(X)はX1/2を表しており、以下、同様である。

U=(IUX+IVX+IWX)×IUX
=(IU+IV+IW)×IU
=1/2×BI 2UR×(1+AUR)×(1+cos(2ωt))
-1/4×BI 2VR×(1+AUR)×(1+cos(2ωt)-√(3)×sin(2ωt))
-1/4×BI 2WR×(1+AUR)×(1+cos(2ωt)+√(3)×sin(2ωt))
…(46)
【0064】
V=(IUX+IVX+IWX)×IVX
=(IU+IV+IW)×IV
=-1/4×BI 2UR×(1+AVR)×(1+cos(2ωt)-√(3)×sin(2ωt))
+1/2×BI 2VR×(1+AVR)×(1+cos(2ωt-4π/3))
-1/4×BI 2WR×(1+AVR)×(1-2×cos(2ωt))
…(47)
【0065】
W=(IUX+IVX+IWX)×IWX
=(IU+IV+IW)×IW
=-1/4×BI 2UR×(1+AWR)×(1+cos(2ωt)+√(3)×sin(2ωt))
-1/4×BI 2VR×(1+AWR)×(1-2×cos(2ωt))
+1/2×BI 2WR×(1+AWR)×(1+cos(2ωt-8π/3))
…(48)
【0066】
フィルタ5113U,5113V,5113Wが出力する直流成分FU,FV,FWは、積DU,DV,DWから三角関数による周期変化成分を除去したものであり、次式(49)~(51)で表される。

U=1/4×BI 2×(2AUR-AVR-AWR)×(1+AUR) …(49)
V=1/4×BI 2×(2AVR-AWR-AUR)×(1+AVR) …(50)
W=1/4×BI 2×(2AWR-AUR-AVR)×(1+AWR) …(51)
【0067】
さらに,式(49)~(51)に前述した式(27)を代入して整理すると、直流成分FU,FV,FWは、次式(52)~式(54)で表される。

U=3/4×BI 2UR×(1+AUR) …(52)
V=3/4×BI 2VR×(1+AVR) …(53)
W=3/4×BI 2WR×(1+AWR) …(54)
【0068】
また、加算器5115が出力する合計値SHIは、次式(55)の通りとなる。

SHI=IUX 2+IVX 2+IWX 2
=IU 2+IV 2+IW 2
=BI 2×(1+AUR)2×(1+cos(2ωt))/2
+BI 2×(1+AVR)2×(1+cos(2ωt-4π/3))/2
+BI 2×(1+AWR)2×(1+cos(2ωt-8π/3))/2
…(55)
【0069】
フィルタ5116が出力する直流成分HIは、合計値SHIから三角関数による周期変化成分を除去したものであり、次式(56)で表される。なお、計算過程において前述の式(27)を用いた。

I=3/2×BI 2+1/2×BI 2×(AUR 2+AVR 2+AWR 2) …(56)
【0070】
加算器5115Cが出力する合計値SKIは、次式(57)で表される。

SKI=IUXVX+IVXWX+IWXUX
=IUV+IVW+IWU
=-1/4×BI 2×(1+AUR)×(1+AVR)×(1+cos(2ωt)-√(3)×sin(2ωt))
-1/4×BI 2×(1+AVR)×(1+AWR)×(1+2×cos(2ωt))
-1/4×BI 2×(1+AWR)×(1+AUR)×(1+cos(2ωt)+√(3)×sin(2ωt))
…(57)
【0071】
フィルタ5116Cは、入力される合計値SKIに対して、それぞれ含まれる交流成分を除去するフィルタ処理を行い、合計値SKIの直流成分であるKIを出力する。
前記の式(57)で表される合計値SKIに対して、交流成分を除去するフィルタ処理を行うと、すなわち、三角関数の周期変化分を除去すると、フィルタ5116Cが出力する直流成分KI は、次式(58)で表される。なお、計算過程において前述の式(27)を用いた。

I=-3/4×BI 2-1/4×BI 2×(AURVR+AVRWR+AWRUR) …(58)
【0072】
演算部5117は、フィルタ5113U,5113V,5113W,5116,5116Cから出力される直流成分FU,FV,FW,HI,KIに基づいて、異常度計算結果AUX,AVX,AWX、(原異常度計算部516においては原異常度計算値AU0,AV0,AW0)を算出する。異常度計算結果AUX,AVX,AWXは、後述する式(61)および式(65)~(67)および式(69)~(71)により計算する。
【0073】
前述のHIに関する式(56)およびKIに関する式(58)のそれぞれを前述した式(27)を用いて整理すると、次式(59),(60)が得られる。

2×HI=3×BI 2+2×BI 2×(AVR 2+AWR 2+AVRWR) …(59)
8×KI=-6×BI 2+2×BI 2×(AVR 2+AWR 2+AVRWR) …(60)
【0074】
式(59),式(60)より,相対異常度AUR,AVR,AWRを消去すると次式(61)が成立する。

I 2=(2HI-8KI)/9 …(61)

前述の式(52)~(54)のそれぞれを整理すると、次式(62)~(64)に示すように相対異常度AUR,AVR,AWRに関する2次方程式がそれぞれ得られる。

3BI 2UR 2+3BI 2UR-4FU=0 …(62)
3BI 2VR 2+3BI 2VR-4FV=0 …(63)
3BI 2WR 2+3BI 2WR-4FW=0 …(64)
【0075】
式(62)~(64)のそれぞれに2次方程式の解の公式を適用して求めた相対異常度AUR,AVR,AWRの解を、以下、異常度計算結果AU0C,AV0C,AW0Cと呼ぶ。すなわち、異常度計算結果AU0C,AV0C,AW0Cは、次式(65)~(67)で与えられる。

U0C=(-3BI 2+√(9BI 4+48BI 2U))/(6BI 2) …(65)
V0C=(-3BI 2+√(9BI 4+48BI 2V))/(6BI 2) …(66)
W0C=(-3BI 2+√(9BI 4+48BI 2W))/(6BI 2) …(67)
【0076】
上述した式(39)~(41)で示したように、電流真値IUT,IVT,IWTは正弦波電流であることを前提としている。従って、式(65)~(67)で計算される異常度計算結果AU0C,AV0C,AW0Cは、電流脈動が無い理想状態におけるU相,V相,W相の異常度を表している。
【0077】
なお、2次方程式の解の公式において√の直前の符号は「±」であるが、式(65)~(67)においては「+」とした。この場合、異常度計算結果AU0Cが「0」であるとすると、式(65)の右辺における「(-3BI 2+√(9BI 4+48BI 2U))」が「0」になるため、これは、直流成分FUが「0」であることを意味する。一方、√の直前の符号を「-」とした場合、式(65)の右辺における「(-3BI 2-√(9BI 4+48BI 2U))」が「0」にならない。従って、√の直前の符号は「+」であることが正しい。
【0078】
異常度計算結果AU0C,AV0C,AW0Cは、電流脈動が無い理想状態におけるU相,V相,W相の異常度を表しているので、電流波形に脈動成分が含まれない場合には、異常度計算結果AU0C,AV0C,AW0Cの和は、相対異常度AUR,AVR,AWRの場合と同様に「0」となる。すなわち、電流波形に脈動成分が含まれない場合は「AU0C+AV0C+AW0C=0」となる。一方、電流波形に脈動成分が含まれる場合は「AU0C+AV0C+AW0C>0」となる。
【0079】
そこで、上述した異常度計算結果AUX,AVX,AWXを導入する。異常度計算結果AUX,AVX,AWX、すなわち異常度計算結果AU0C,AV0C,AW0Cは、次式(68)~(71)が成立するように設定される量である、と定義する。

UX+AVX+AWX=0 …(68)
UX=AU0C-(AU0C+AV0C+AW0C)/3 …(69)
VX=AV0C-(AU0C+AV0C+AW0C)/3 …(70)
WX=AW0C-(AU0C+AV0C+AW0C)/3 …(71)
【0080】
各式(69)~(71)の右辺第2項は、式(68)を満たすようにするための異常度計算結果AU0C,AV0C,AW0Cに対する補正項と考えることができる。電流波形に脈動成分が含まれ「AU0C+AV0C+AW0C>0」である場合であっても、異常度計算結果AUX,AVX,AWXについては、「AUX+AVX+AWX=0」が成立する。
そして、上述したように、原異常度計算部516においては、異常度計算結果AUX,AVX,AWXを、原異常度計算値AU0,AV0,AW0として出力する。
【0081】
<<コンピュータ>>
図7は、コンピュータ980のブロック図である。図1に示した制御装置41および異常判断器51は、何れも図7に示すコンピュータ980を、1台または複数台備えている。
図7において、コンピュータ980は、CPU981と、記憶部982と、通信I/F(インタフェース)983と、入出力I/F984と、メディアI/F985と、を備える。ここで、記憶部982は、RAM982aと、ROM982bと、HDD982cと、を備える。通信I/F983は、通信回路986に接続される。入出力I/F984は、入出力装置987に接続される。メディアI/F985は、記録媒体988からデータを読み書きする。
【0082】
ROM982bには、CPUによって実行されるIPL(Initial Program Loader)等が格納されている。HDD982cには、制御プログラムや各種データ等が記憶されている。CPU981は、HDD982cからRAM982aに読み込んだ制御プログラム等を実行することにより、各種機能を実現する。先に図5図6に示したインバータ側異常判断部51b等の内部は、制御プログラム等によって実現される機能をブロックとして示したものである。
【0083】
<<異常度計算部518-1>>
図5に示す異常度計算部518-1の内部構成は原異常度計算部516(図6参照)のものと同様である。但し、原異常度計算部516に入力される電流検出値IU,IV,IWに代えて、異常度計算部518-1には、電流推定値IU1,IV1,IW1が、入力電流値IUX,IVX,IWXとして入力される。また、異常度計算部518-1でこれら電流推定値IU1,IV1,IW1に基づいて、計算される異常度計算結果AUX,AVX,AWXを、異常度推定値AU1,AV1,AW1として出力する。
【0084】
〈第1実施形態の動作〉
次に、本実施形態の動作を説明する。
図8は、インバータ側異常判断部51b(図5参照)における異常判断処理の一例を示すフローチャートである。
図8において処理がステップS101に進むと、異常度補正部519-1は、上述の式(36)~(38)に基づいて、予測相対異常度AU1C,AV1C,AW1Cを算出する。
【0085】
次に、処理がステップS102に進むと、異常判断部514は、次式(72)が成立するか否かを判定する。ここで、MAX(a,b,c)は値a,b,cの内で最大のものを表す。すなわち、ステップS102において、異常判断部514は、予測相対異常度AU1C,AV1C,AW1Cの各絶対値のうち最大のものが所定値J1(異常判定閾値)を超えるか否かを判定する。

MAX(|AU1C|,|AV1C|,|AW1C|) > J1 …(72)
【0086】
ステップS102において「No」と判定されると、処理はステップS111に進む。ここでは、異常判断部514は、全ての電流検出器24,25,26が正常であると判定し、本ルーチンの処理が終了する。
【0087】
一方、ステップS102において「Yes」と判定されると、処理はステップS103に進み、異常判断部514は、次式(73)が成立するか否かを判定する。ここで、[MAX]は「MAX(|AU1C|,|AV1C|,|AW1C|)」を表し、[MIN]は「MIN(|AU1C|,|AV1C|,|AW1C|)」を表す。また、MIN(a,b,c)は値a,b,cの内で最小のものを表す。所定値J2は、例えば「50%」である。なお、式(73)は、電流検出器24,25,26(図1参照)のうち複数のものが異常であるか否かを判定する式である。

([MAX]-2×[MIN])/[MAX] > J2 …(73)
【0088】
ステップS103において「Yes」と判定されると、処理はステップS104に進む。ここでは、異常判断部514は、複数の電流検出器が異常である旨、例えば、「複数電流検出器異常」というメッセージをインバータ側表示部52b(図2参照)に表示させる。次に、処理がステップS112に進むと、異常判断部514は、インバータ側表示部52bに対して、異常点検情報を表示させ、本ルーチンの処理が終了する。なお、異常点検情報とは、例えば、「異常箇所を点検および交換してください」というメッセージである。
【0089】
なお、上述した所定値J1,J2は、一定または可変の何れであってもよい。例えば、原理上、電流検出値IU,IV,IWが全て「0」付近である場合は、電流検出器24,25,26の異常度合いが見えにくくなり、異常診断が困難になる。このように電流値が小さい場合に誤判断が生じないように、電流検出値IU,IV,IWの大きさに応じて所定値J1,J2を設定してもよい。
【0090】
ところで、複数の電流検出器24,25,26に対する真の相対異常度AUR,AVR,AWRの平均値すなわち「(AUR+AVR+AWR)/3」が「0」であると仮定すると、式(69)~(71)から、「AU0=AU0C、AV0=AV0C、AW0=AW0C」が成立する。すなわち、原異常度計算値AU0,AV0,AW0は、異常度計算結果AU0C,AV0C,AW0Cに等しくなる。
【0091】
上述のステップS103において「No」と判定されると、処理はステップS105に進む。ここでは、異常判断部514は、次式(74)が成立するか否かを判定する。

MAX(|AU1C|,|AV1C|,|AW1C|)=|AU1C| …(74)
【0092】
ここで「Yes」と判定されると、処理はステップS106に進み、異常判断部514は、U相の電流検出器24が異常であると判定し、その旨を示す情報、例えば「U相電流検出器異常」というメッセージをインバータ側表示部52bに表示させる。次に、ステップS112において、異常判断部514はインバータ側表示部52bに異常点検情報を表示させ、本ルーチンの処理が終了する。
【0093】
ところで、V相の電流検出器25およびW相の電流検出器26の原異常度計算値AV0,AW0が共に「0」であると仮定すると、U相の電流検出器24の原異常度計算値AU0は、次式(75)で計算することができる。

U0=(3×AU0C)/(2-AU0C) …(75)
【0094】
式(75)は、例えば、以下のようにして推定することができる。
前述した式(21)、(24)から次式(76)が得られる。

U=GU0×(GU+GV+GW)/3 …(76)
【0095】
式(76)は、絶対異常度AU,AV,AWおよび相対異常度AURを用いて表すと次式(77)となる。

1+AU=(1+AUR)×(AU+AV+AW+3)/3 …(77)
【0096】
V=AW=0であると仮定した場合、次式(78)が得られる。

1+AU=(1+AUR)×(AU+3)/3
U=(3×AUR)/(2-AUR) …(78)

式(78)の右辺の相対異常度AURの代わりに異常度計算結果AU0Cを用いたものが絶対異常度AU推定値であるとすれば、上述した式(75)が得られる。
【0097】
上述した式(73)は、3つの要素(|AU1C|,|AV1C|,|AW1C|)を類似度の高い2つの要素と、それら2つの要素とは類似度が低い1つの要素とに分類できるか否かを判定する式である。式(73)は判定方法の一例であって、式(73)を用いる代わりに、例えば、任意のクラスタリング分析手法を用いて同様の判定を行うようにしてもよい。
【0098】
上述のステップS105において「No」と判定されると、処理はステップS107に進む。ここでは、異常判断部514は、次式(79)が成立するか否かを判定する。

MAX(|AU1C|,|AV1C|,|AW1C|)=|AV1C| …(79)
【0099】
ここで「Yes」と判定されると、処理はステップS108に進み、異常判断部514は、V相の電流検出器25が異常であると判定し、その旨を示す情報、例えば「V相電流検出器異常」というメッセージをインバータ側表示部52bに表示させる。次に、ステップS112において、異常判断部514はインバータ側表示部52bに異常点検情報を表示させ、本ルーチンの処理が終了する。
【0100】
ところで、U相の電流検出器24およびW相の電流検出器26の原異常度計算値AU0,AW0が共に「0」であると仮定すると、V相の電流検出器25の原異常度計算値AV0は、次式(80)で計算することができる。この式(80)は、上述の式(75)と同様にして得られる。

V0=(3×AV0C)/(2-AV0C) …(80)
【0101】
上述のステップS107において「No」と判定されると、処理はステップS109に進む。ここでは、異常判断部514は、次式(81)が成立するか否かを判定する。

MAX(|AU1C|,|AV1C|,|AW1C|)=|AW1C| …(81)
【0102】
ここで「Yes」と判定されると、処理はステップS110に進み、異常判断部514は、W相の電流検出器26が異常であると判定し、その旨を示す情報、例えば「W相電流検出器異常」というメッセージをインバータ側表示部52bに表示させる。次に、ステップS112において、異常判断部514はインバータ側表示部52bに異常点検情報を表示させ、本ルーチンの処理が終了する。
【0103】
ところで、U相の電流検出器24およびV相の電流検出器25の原異常度計算値AU0,AV0が共に「0」であると仮定すると、W相の電流検出器26の原異常度計算値AW0は、次式(82)で計算することができる。この式(82)は、上述の式(75)と同様にして得られる。

W0=(3×AW0C)/(2-AW0C) …(82)
【0104】
上述のステップS109において「No」と判定されると、処理はステップS111に進む。上述したように、ステップS111において、異常判断部514は、全ての電流検出器24,25,26が正常であると判定し、本ルーチンの処理が終了する。なお、この場合は、全ての電流検出器24,25,26が正常であることをインバータ側表示部52bに表示する必要は必ずしも無いが、もちろん表示しても構わない。
【0105】
〈第1実施形態のシミュレーション結果〉
次に、第1実施形態のシミュレーション結果を説明する。
図9は、シミュレーションに適用した負荷装置2等の回路図である。
図9において、負荷装置2は、抵抗器6U,6V,6Wと、コイル7U,7V,7Wと、を備えている。抵抗器6U,6V,6Wの各一端は交流配線21,22,23に接続され、抵抗器6U,6V,6Wの各他端はコイル7U,7V,7Wの各一端に接続されている。そして、コイル7U,7V,7Wの各他端は中性点2Nに接続されている。
【0106】
抵抗器6U,6V,6Wの抵抗値は、それぞれ(1-β)R,R,Rであり、コイル7U,7V,7Wのインダクタンスは、それぞれ、(1-β)L,L,Lである。なお、βは所定の不平衡定数である。不平衡定数βが「0」であれば、負荷装置2は三相平衡負荷になり、不平衡定数βが「1」に近づくほど三相相不平衡の度合いが大きくなる。電力変換装置100の構成は、図1に示したものと同様である。
【0107】
図10は、シミュレーション結果の一例を示す図である。
図10においては、不平衡定数βを「0.1」とし、U相,W相の電流検出器24,26は正常(ゲイン100%)とし、V相の電流検出器25にはゲイン異常(ゲイン96.1%)が生じていることとした。すなわち、上述した絶対異常度は、AU=0%、AV=-5.9%、AW=0%になる。これら絶対異常度を、式(5)~(10)、(20)、(24)~(26)に基づき相対異常度に換算するとAUR=+2%、AVR=-4%、AWR=+2%になる。
【0108】
図10の上段のグラフには、電流検出値IU,IV,IWと、これらの総和である入力総和値II0と、を示す。また、中段のグラフには、原異常度計算部516における入力総和値II0と、異常度計算部518-1における入力総和値II0と、を示す。異常度計算部518-1における入力総和値II0は、電流推定値IU1,IV1,IW1の和に等しい。
【0109】
また、下段のグラフには、原異常度計算値AU0,AV0,AW0と、予測相対異常度AU1C,AV1C,AW1Cと、を示す。上段、中段のグラフの横軸は時刻であり、縦軸は電流瞬時値(アンペア)である。また、下段のグラフの縦軸は各種異常度の計算結果(%)である。
【0110】
全ての電流検出器24,25,26が正常であれば、キルヒホッフ電流則により、原異常度計算部516における入力総和値II0は常に「0」になるべきである。しかし、上述のように、V相の電流検出器25にゲイン異常が生じているため、図10の上段および中段のグラフに示すように、入力総和値II0は常に「0」になっているわけではない。
【0111】
上述したように、原異常度計算部516における入力総和値II0は、単純に電流検出値IU,IV,IWから算出したものであり、入力総和値II0は、原異常度計算部516における診断結果を反映した電流推定値IU1,IV1,IW1に基づく値である。そして、下段のグラフに示すように、原異常度計算値AU0,AV0,AW0よりも、予測相対異常度AU1C,AV1C,AW1Cの方が、シミュレーション条件における真の相対異常度AUR,AVR,AWR(=+2%,-4%,+2%)との誤差が小さくなっていることが解る。
【0112】
図11は、シミュレーション結果の他の例を示す図である。
図11において、不平衡定数βは「0.5」とし、他の条件は図10のものと同一であることとした。また、図11における上段、中段、下段のグラフの意味も、図10のものと同様である。図11の下段のグラフに示すように、不平衡定数βを「0.5」とした場合においても、原異常度計算値AU0,AV0,AW0よりも、予測相対異常度AU1C,AV1C,AW1Cの方が、シミュレーション条件における真の相対異常度AUR,AVR,AWR(=+2%,-4%,+2%)との誤差が小さくなっていることが解る。
【0113】
負荷装置2に3相不平衡が生じた場合であっても、3相平衡である場合に対するIU,IV,IW,II0の位相変化量は比較的小さい。このため、図10および図11に示すように、原異常度計算部516による原異常度計算値AU0,AV0,AW0のみによっても、シミュレーション条件における真の相対異常度AUR,AVR,AWR(=+2%,-4%,+2%)との誤差を比較的小さくすることができる。
【0114】
そして、図5に示すように、原異常度計算部516に加えて、電流推定部517-1と、異常度計算部518-1と、異常度補正部519-1と、を設けることにより、真の相対異常度AUR,AVR,AWRにより近い異常度推定値AU1,AV1,AW1を得ることができる。
【0115】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
第2実施形態の全体構成は、第1実施形態のもの(図1図4参照)と同様である。但し、本実施形態においては、第1実施形態のインバータ側異常判断部51b(図5参照)に代えて、例えば図12に示すインバータ側異常判断部56が適用される。
【0116】
図12は、第2実施形態におけるインバータ側異常判断部56のブロック図である。
インバータ側異常判断部56は、第1実施形態のインバータ側異常判断部51b(図5参照)と同様に、原異常度計算部516と、電流推定部517-1と、異常度計算部518-1と、異常度補正部519-1と、を備えている。
【0117】
また、インバータ側異常判断部56は、上述した構成に加えて、電流推定部517-2と、異常度計算部518-2と、異常度補正部519-2と、を備えている。電流推定部517-2および異常度計算部518-2は、それぞれ、電流推定部517-1および異常度計算部518-1と同一構成である。
【0118】
(電流推定部517-2)
但し、電流推定部517-2には、異常度補正部519-1が出力した予測相対異常度AU1C,AV1C,AW1Cが入力される。これにより、電流推定部517-2は、電流検出器24,25,26の電流検出値IU,IV,IWと、予測相対異常度AU1C,AV1C,AW1Cと、に基づいて、電流真値IUT,IVT,IWTを推定し、その結果を、例えば次式(83)~(85)に示す電流推定値IU2,IV2,IW2として出力する。

U2=IU/(1+AU1C) …(83)
V2=IV/(1+AV1C) …(84)
W2=IW/(1+AW1C) …(85)
【0119】
(異常度計算部518-2)
また、異常度計算部518-2は、異常度算出処理部511(図6参照)における入力電流値IUX,IVX,IWXとして電流推定値IU2,IV2,IW2を適用し、計算結果である異常度計算結果AUX,AVX,AWXを異常度推定値AU2,AV2,AW2として出力する。
【0120】
(異常度補正部519-2)
また、異常度補正部519-2は、原異常度計算値AU0,AV0,AW0と、異常度推定値AU1,AV1,AW1と、異常度推定値AU2,AV2,AW2と、例えば、下式(86)~(88)と、に基づいて、予測相対異常度AU2C,AV2C,AW2Cを演算する。

U2C=AU0+AU1+AU2 …(86)
V2C=AV0+AV1+AV2 …(87)
W2C=AW0+AW1+AW2 …(88)
【0121】
(異常判断部514)
インバータ側異常判断部56における異常判断部514は、予測相対異常度AU1C,AV1C,AW1Cに代えて、予測相対異常度AU2C,AV2C,AW2Cを適用して、第1実施形態における異常判断部514と同様の処理を実行する。
【0122】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
第3実施形態の全体構成は、第1実施形態のもの(図1図4参照)と同様である。但し、本実施形態においては、第1実施形態のインバータ側異常判断部51b(図5参照)に代えて、例えば図13に示すインバータ側異常判断部58が適用される。
【0123】
図13は、第3実施形態におけるインバータ側異常判断部58のブロック図である。
インバータ側異常判断部58は、第2実施形態のインバータ側異常判断部56(図12参照)と同様に、原異常度計算部516と、電流推定部517-1,517-2と、異常度計算部518-1,518-2と、異常度補正部519-1,519-2と、異常判断部514と、を備えている。
【0124】
また、インバータ側異常判断部58は、上述した構成に加えて、電流推定部517-3と、異常度計算部518-3と、異常度補正部519-3と、を備えている。電流推定部517-3および異常度計算部518-3は、それぞれ、電流推定部517-1および異常度計算部518-1と同一構成である。
【0125】
(電流推定部517-3)
但し、電流推定部517-3には、異常度補正部519-2が出力した予測相対異常度AU2C,AV2C,AW2Cが入力される。これにより、電流推定部517-3は、電流検出器24,25,26の検出値IU、IV、IWと、予測相対異常度AU2C,AV2C,AW2Cと、に基づいて、電流真値IUT,IVT,IWTを推定し、その結果を、例えば次式(89)~(91)に示す電流推定値IU3,IV3,IW3として出力する。

U3=IU/(1+AU2C) …(89)
V3=IV/(1+AV2C) …(90)
W3=IW/(1+AW2C) …(91)
【0126】
(異常度計算部518-3)
また、異常度計算部518-3は、異常度算出処理部511(図6参照)における入力電流値IUX,IVX,IWXとして電流推定値IU3,IV3,IW3を適用し、計算結果である異常度計算結果AUX,AVX,AWXを異常度推定値AU3,AV3,AW3として出力する。
【0127】
(異常度補正部519-3)
また、異常度補正部519-3は、原異常度計算値AU0,AV0,AW0と、異常度推定値AU1,AV1,AW1と、異常度推定値AU2,AV2,AW2と、異常度推定値AU3,AV3,AW3と、例えば下式(92)~(94)と、に基づいて、予測相対異常度AU3C,AV3C,AW3Cを演算する。

U3C=AU0+AU1+AU2+AU3 …(92)
V3C=AV0+AV1+AV2+AV3 …(93)
W3C=AW0+AW1+AW2+AW3 …(94)
【0128】
〈任意の追加処理部段数Nに対応する構成〉
図13の例では、3段の電流推定部517-1~517-3と、異常度計算部518-1~518-3と、異常度補正部519-1~519-3と、を設けた。しかし、「2」以上の任意の自然数を「追加処理部段数N」として、N段の電流推定部517-1~517-Nと、異常度計算部518-1~518-Nと、異常度補正部519-1~519-Nと、を設けてもよい。すなわち、インバータ側異常判断部58は、「2≦K≦N」の自然数Kについて、以下に述べる電流推定部517-K(第Kの電流推定部)と、異常度計算部518-K(第Kの異常度計算部)と、異常度補正部519-K(第Kの異常度補正部)と、を備える。
【0129】
(電流推定部517-K)
電流推定部517-K(例えば電流推定部517-3)は、異常度補正部519-(K-1)(同、異常度補正部519-2)が出力した予測相対異常度AU(K-1)C,AV(K-1)C,AW(K-1)C(同、予測相対異常度AU2C,AV2C,AW2C)が入力される。これにより、電流推定部517-Kは、電流検出器24,25,26の検出値IU、IV、IWと、予測相対異常度AU(K-1)C,AV(K-1)C,AW(K-1)Cと、に基づいて、電流真値IUT,IVT,IWTを推定し、その推定結果を、例えば次式(95)~(97)に示す電流推定値IUK,IVK,IWK(第Kの電流推定値)(同、式(89)~(91)に示した電流推定値IU3,IV3,IW3)として出力する。

UK=IU/(1+AU(K-1)C) …(95)
VK=IV/(1+AV(K-1)C) …(96)
WK=IW/(1+AW(K-1)C) …(97)
【0130】
(異常度計算部518-K)
また、異常度計算部518-K(K=3の場合には、異常度計算部518-3)は、異常度算出処理部511(図6参照)における入力電流値IUX,IVX,IWXとして電流推定値IUK,IVK,IWKを適用し、計算結果である異常度計算結果AUX,AVX,AWXを異常度推定値AUK,AVK,AWK(第Kの異常度推定値)(同、異常度推定値AU3,AV3,AW3)として出力する。
【0131】
(異常度補正部519-K)
また、異常度補正部519-K(K=3の場合には、異常度補正部519-3)は、原異常度計算値AU0,AV0,AW0と、異常度推定値AU1,AV1,AW1~AUK,AVK,AWKと、例えば下式(98)~(100)と、に基づいて、予測相対異常度AUKC,AVKC,AWKC(第Kの予測異常度)(同、予測相対異常度AU3C,AV3C,AW3C)を演算する。

UKC=AU0+AU1+ … +AUK …(98)
VKC=AV0+AV1+ … +AVK …(99)
WKC=AW0+AW1+ … +AWK …(100)
【0132】
上述の式(98)~(100)においては、原異常度計算値AU0,AV0,AW0と、異常度推定値AU1,AV1,AW1~AUK,AVK,AWKと、を単純に加算したが、各要素に重み付け定数を乗算し、その結果を加算する積和演算を行ってもよい。そして、異常判断部514は、予測相対異常度AU1C,AV1C,AW1Cに代えて、予測相対異常度AUKC,AVKC,AWKCを適用して、第1実施形態における異常判断部514と同様の処理を実行する。
【0133】
〈第3実施形態のシミュレーション結果〉
図14は、第3実施形態におけるシミュレーション結果の一例を示す図である。
シミュレーションの条件は、図10に示したものと同一である。すなわち、シミュレーションには図9に示した回路を適用し、絶対異常度はAU=0%、AV=-5.9%、AW=0%であり、相対異常度に換算するとAUR=+2%、AVR=-4%、AWR=+2%であり、不平衡定数βは「0.1」とした。また、図14における上段、中段、下段のグラフの意味も、図10のものと同様である。
【0134】
但し、図14の中段のグラフには、原異常度計算部516および異常度計算部518-1における入力総和値II0に加えて、異常度計算部518-2および異常度計算部518-3における入力総和値II0も記載した。また、図14の下段のグラフには、原異常度計算値AU0,AV0,AW0と、予測相対異常度AU1C,AV1C,AW1Cと、に加えて、予測相対異常度AU2C,AV2C,AW2Cおよび予測相対異常度AU3C,AV3C,AW3Cも記載した。
【0135】
図14の中段のグラフに示すように、異常度計算部518-2および異常度計算部518-3における入力総和値II0は、図示の全期間においてほぼ「0」である。すなわち、異常度補正部519-1(図12参照)において計算される予測相対異常度AU1C,AV1C,AW1Cを用いて計算した電流推定値IU2,IV2,IW2は、キルヒホッフの電流則(IU2+IV2+IV2=0)を満たす程度に電流検出器24,25,26の異常度合いを正確に表していると言える。
【0136】
また、図14の下段のグラスに示すように、AU1C≒AU2C≒AU3C、AV1C≒AV2C≒AV3C、AW1C≒AW2C≒AW3Cとなっている。従って、原異常度計算部516による原異常度計算値AU0,AV0,AW0と比較して、異常度補正部519-1~519-3では、予測相対異常度は収束していることが解る。
【0137】
なお、図14および上述した各数式からも明らかなように、異常度計算部518-K(K=3の場合には、異常度計算部518-3)における入力総和値II0がほぼ「0」である場合(例えば電流検出値IU,IV,IWの1%未満である場合)には、異常度補正部519-(K-1)および519-Kにおける予測相対異常度AU(K-1)C,AV(K-1)C,AW(K-1)Cおよび予測相対異常度AUKC,AVKC,AWKC(同、予測相対異常度AU3C,AV3C,AW3Cおよび予測相対異常度AU2C,AV2C,AW2C)と、がほぼ等しくなり、計算結果が収束したと判断できる。
【0138】
図15は、第3実施形態によるシミュレーション結果の他の例を示す図である。
図15において、不平衡定数βは「0.5」とし、他の条件は図14のものと同一であることとした。また、図15における上段、中段、下段のグラフの意味も、図14のものと同様である。図15の中段のグラフによれば、原異常度計算部516、異常度計算部518-1~518-3へと段数を経るごとに入力総和値II0が小さくなっている。そして、最終段の異常度計算部518-3における入力総和値II0がほぼ「0」(例えば電流検出値IU,IV,IWの1%未満)になっている。
【0139】
すなわち、異常度補正部519-3で計算される予測相対異常度AU3C,AV3C,AW3Cを用いて電流検出値IU,IV,IWを補正した電流推定値(図示は省略するが、式(95)~(97)においてK=4とした場合のIU4,IV4,IW4)は、キルヒホッフの電流測を満たす程度に電流検出器の相対異常度を正確に反映できているといえる。
【0140】
図15の下段のグラフにより、異常度補正部519-1~519-3による補正回数の増加に伴い、予測相対異常度(AU2C,AV2C,AW2C等)のシミュレーション条件との誤差が小さくなっていることがわかる。
【0141】
追加処理部段数Nは、固定的に定めておく必要ななく、自然数Kを「2」から「1」ずつインクリメントしてゆき、その過程で以下に列挙する収束条件QA,QB,QCの何れかの条件が満たされた場合に、その時点における自然数Kを追加処理部段数Nとし、計算を終了させてもよい。
【0142】
・収束条件QA:異常度補正部519-Kが計算する予測相対異常度AUKC,AVKC,AWKCと、前段の異常度補正部519-(K-1)が計算する予測相対異常度AU(K-1)C,AV(K-1)C,AW(K-1)Cと、における各要素の差が所定の異常度偏差閾値(例えば1%)未満になると、現在のKを追加処理部段数Nとして、演算を終了する。
【0143】
・収束条件QB:異常度計算部518-Kが計算する異常度推定値AUK,AVK,AWKの合計が、「0」に近い所定の異常度推定値合計閾値(例えば1%)未満になると、現在のKを追加処理部段数Nとして、演算を終了する。
【0144】
・収束条件QC:電流推定部517-Kが出力する電流推定値IUK,IVK,IWKの総和、すなわち異常度計算部518-Kにおける入力総和値II0の振幅が、電流推定値IUK,IVK,IWKの振幅のうち最大のものに対して、所定の振幅閾値(例えば1%)未満になると、現在のKを追加処理部段数Nとして、演算を終了する。
【0145】
[第4実施形態]
図16は、第4実施形態による電力変換装置101の構成の一例を示す図である。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図16において電力変換装置101は、第1実施形態における電力変換装置100(図2参照)と同様の要素を備え、さらにコンバータ側出力推定器53a(出力推定器)と、インバータ側出力推定器53b(出力推定器)と、を備えている。
【0146】
上述のように、コンバータ側異常判断部51aは、電流検出値IR,IS,ITに基づいて、電流検出器14,15,16の何れかに異常が生じているか否かを判定する。同様に、インバータ側異常判断部51bは、電流検出値IU,IV,IWに基づいて、電流検出器24,25,26の何れかに異常が生じているか否かを判定する。
【0147】
コンバータ側出力推定器53aは、コンバータ側異常判断部51aの判定結果に基づいて、R相、S相、T相の電流真値IRT,IST,ITTを推定するものである。同様に、インバータ側出力推定器53bは、インバータ側異常判断部51bの判定結果に基づいて、U相,V相,W相の電流真値IUT,IVT,IWTを推定するものである。
【0148】
図17はコンバータ側出力推定器53aおよびインバータ側出力推定器53bのブロック図である。
図17は、T相の電流検出器16およびW相の電流検出器26に異常が生じた場合を想定している。すなわち、図17は、その際におけるコンバータ側異常判断部51aとコンバータ側出力推定器53aとの関係、並びにインバータ側異常判断部51bとインバータ側出力推定器53bとの関係を示している。コンバータ側異常判断部51aは、T相の電流検出器16が異常であることを示すIT異常情報を出力する。
【0149】
コンバータ側出力推定器53aは、IT異常情報が入力されている場合は、R相の電流検出値IRとS相の電流検出値ISとの和を「0」から減算することにより、T相の電流推定値ITHを算出する。そして、コンバータ側出力推定器53aは、算出されたT相の電流推定値ITHを、コンバータ側出力推定器53aの選択部53a1に入力する。
【0150】
選択部53a1には、T相の電流検出値ITと、T相の電流推定値ITHと、が入力され、IT異常情報が入力されている場合には、T相の電流推定値ITHを選択して出力し、T相の電流推定値ITHが入力されていない場合には、T相の電流検出値ITを出力する。
【0151】
そして、コンバータ側出力推定器53aは、IT異常情報が入力されている場合には、図17に示すように、R相,S相の電流検出値IR,ISおよびT相の電流推定値ITHをコンバータ制御部41aに出力する。一方、IT異常情報が入力されていない場合には、コンバータ側出力推定器53aは、電流検出値IR,IS,ITをコンバータ制御装置5へ出力する。
【0152】
このような構成により、T相の電流検出器16に異常があった場合においても、T相の電流検出値ITに代えて、適切なT相の電流推定値ITHを出力することができる。その結果、出力されるR相,S相の電流検出値IR,ISおよびT相の電流推定値ITHを用いて、例えば、次の定期点検時までの期間、電力変換装置101を継続して運転させる「しのぎ運転」(詳細は後述する)を実行できる。
【0153】
また、コンバータ側出力推定器53aは、R相の電流検出器14またはS相の電流検出器15に異常がある場合においても、上述した処理と同様の処理を行う。すなわち、コンバータ側出力推定器53aは、R相の電流検出値IRに代えて、より適切なR相の電流推定値IRHを適用し、または、S相の電流推定値ISHに代えて、より適切なS相の電流推定値ISHを適用する。
【0154】
また、インバータ側出力推定器53bも、コンバータ側出力推定器53aと同様に構成されている。すなわち、インバータ側出力推定器53bは、コンバータ側出力推定器53aについての説明において、R相、S相、T相をそれぞれU相,V相,W相に読み替えた構成とすればよい。インバータ側出力推定器53bは、U相,V相,W相に対応する電流検出器24,25,26の電流検出値IU,IV,IWのうち何れか一相に異常が生じた場合は、他の二相に基づいて当該一相の電流推定値を算出する。当該一相の電流推定値を算出する方法は、コンバータ側出力推定器53aのものと同様である。
【0155】
すなわち、インバータ側出力推定器53bは、電流検出器24,25によるU相,V相の電流検出値IU,IVの和を「0」から減算することにより、W相の電流推定値IWHを算出できる。選択部53b1は、IW異常情報が入力された場合には、W相の電流推定値IWHを選択して出力し、IW異常情報が入力されない場合には電流検出値IWを選択して出力する。
【0156】
このように、本実施形態による電力変換装置101によれば、電流検出器14,15,16,24,25,26のうち何れかに異常が検出された場合に、それ以外の電流検出器の電流検出値に基づいて、異常がある電流検出器が正常な場合の電流検出値に代わる推定値を算出するようにした。このような構成とすることにより、異常がある電流検出器を交換することなく、電力変換装置101の運転を継続することができる。例えば、次の定期点検時までの所定期間、負荷装置2を継続して運転させることができる。なお、このような運転方法を「しのぎ運転」と呼称する。この「しのぎ運転」を行うことにより、電流検出器の異常による電力変換装置101の「計画外停止」を避けることができる。
【0157】
[実施形態の効果]
以上のように上述した実施形態によれば、異常判断器51は、電流検出器24~26が検出した複数相の電流検出値IU,IV,IWに基づいて複数の電流検出器24~26のそれぞれの異常度合いを表す原異常度計算値AU0,AV0,AW0を生成する原異常度計算部516と、原異常度計算値AU0,AV0,AW0と、複数相の電流検出値IU,IV,IWと、に基づいて複数相の第1の電流推定値(IU1,IV1,IW1)を演算する第1の電流推定部(517-1)と、複数相の第1の電流推定値(IU1,IV1,IW1)に基づいて、複数の電流検出器24~26のそれぞれの異常度合いを表す第1の異常度推定値(AU1,AV1,AW1)を生成する第1の異常度計算部(518-1)と、原異常度計算値AU0,AV0,AW0と、第1の異常度推定値(AU1,AV1,AW1)と、に基づいて、複数の電流検出器24~26のそれぞれの異常度合いを表す第1の予測異常度(AU1C,AV1C,AW1C)を生成する第1の異常度補正部(519-1)と、を備える。これにより、特に負荷装置2に不平衡が生じている場合であっても、電流検出器の異常を適切に検出できる。
【0158】
また、原異常度計算部516は、異常度算出処理部511を含むものであり、異常度算出処理部511は、複数相の入力電流値IUX,IVX,IWXの総和である第1の総和値(II0)を計算する第1の加算部(5111)と、第1の総和値(II0)と各々の入力電流値IUX,IVX,IWXとの積である第1の積(DU,DV,DW)を、複数相の各々について計算する第1の乗算部(5112U,5112V,5112W)と、複数の第1の積(DU,DV,DW)の各々に対してフィルタ処理を行った結果である第1のフィルタ結果(FU,FV,FW)を出力する第1のフィルタ(5113U,5113V,5113W)と、異なる2つの相の組合せ毎の、入力電流値IUX,IVX,IWXの積である第2の積(IVXWX,IWXUX,IUXVX)をそれぞれ計算する第2の乗算部(5114CW,5114CU,5114CV)と、複数の第2の積(IVW,IWU,IUV)の総和である第2の総和値(SKI)を計算する第2の加算部(5115C)と、第2の総和値(SKI)に対してフィルタ処理を行った結果である第2のフィルタ結果(KI)を出力する第2のフィルタ(5116C)と、各々の入力電流値IUX,IVX,IWXの二乗値IUX 2,IVX 2,IWX 2を相毎に計算する第3の乗算部(5114U,5114V,5114W)と、複数の二乗値IUX 2,IVX 2,IWX 2の総和である第3の総和値(SHI)を計算する第3の加算部(5115)と、第3の総和値(SHI)に対してフィルタ処理を行った結果である第3のフィルタ結果(HI)を出力する第3のフィルタ(5116)と、第1のフィルタ結果(FU,FV,FW)と、第2のフィルタ結果(HI)と、第3のフィルタ結果(KI)と、に基づいて複数の電流検出器24~26に対応する異常度計算結果AUX,AVX,AWXを算出する演算部5117と、を備えるものであり、原異常度計算部516は、複数相の入力電流値IUX,IVX,IWXとして電流検出値IU,IV,IWを適用し、異常度計算結果AUX,AVX,AWXを原異常度計算値AU0,AV0,AW0として出力すると一層好ましい。
【0159】
これにより、第1のフィルタ結果(FU,FV,FW)と、第2のフィルタ結果(HI)と、第3のフィルタ結果(KI)と、に基づいて、より適切な異常度計算結果AUX,AVX,AWX、すなわち原異常度計算値AU0,AV0,AW0を算出できる。
【0160】
また、第1の異常度計算部(518-1)は、異常度算出処理部511を含むものであり、複数相の入力電流値IUX,IVX,IWXとして第1の電流推定値(IU1,IV1,IW1)を適用し、異常度計算結果AUX,AVX,AWXを第1の異常度推定値(AU1,AV1,AW1)として出力すると一層好ましい。これにより、さらに適切な第1の異常度推定値(AU1,AV1,AW1)を出力することができる。
【0161】
また、演算部5117は、複数の異常度計算結果AUX,AVX,AWXの総和を「0」にすると一層好ましい。これにより、一層適切な異常度計算結果AUX,AVX,AWXを出力することができる。
【0162】
また、第1の予測異常度(AU1C,AV1C,AW1C)に基づいて何れかの電流検出器24~26の異常の有無を判断する異常判断部514をさらに備えると一層好ましい。これにより、何れかの電流検出器24~26の異常の有無を適切に判断できる。
【0163】
また、異常判断部514は、各々の第1の予測異常度(AU1C,AV1C,AW1C)の絶対値のうち最大のものが所定の異常判定閾値(J1)を超える場合に、複数の電流検出器24~26のうち少なくとも一つが異常であると判断する機能を備えると一層好ましい。これにより、何れかの電流検出器24~26の異常の有無を一層適切に判断できる。
【0164】
また、異常判断部514は、第1の予測異常度(AU1C,AV1C,AW1C)の各要素が、類似度の高い二つの要素と、他の一つの要素と、に分類できるか否かの類似判定を行い、類似判定の結果が肯定である場合には複数の電流検出器24~26のうち一つのみが異常であると判定し、類似判定の結果が否定である場合には複数の電流検出器24~26のうち二つ以上が異常であると判定する機能をさらに備えると一層好ましい。これにより、複数の電流検出器24~26のうち一つのみが異常であるのか、二つ以上が異常であるのかを一層適切に判定できる。
【0165】
また、異常判断部514は、各々の第1の予測異常度(AU1C,AV1C,AW1C)の絶対値のうち最大のものに対応する電流検出器24~26が異常であると判定する機能をさらに備えると一層好ましい。これにより、電流検出器24~26の異常を一層適切に判定できる。
【0166】
また、2以上の任意の自然数を追加処理部段数Nとし、第2ないし第Nの電流推定部(517-2~N)と、第2ないし第Nの異常度計算部(518-2~N)と、第2ないし第Nの異常度補正部(519-2~N)と、をさらに備え、2≦K≦Nとなる任意の自然数をKとし、第Kの電流推定部(517-K)は、複数相の電流検出値IU,IV,IWと、第(K-1)の予測相対異常度(AU(K-1)C,AV(K-1)C,AW(K-1)C)と、に基づいて複数相の第Kの電流推定値(IUK,IVK,IWK)を演算するものであり、第Kの異常度計算部(518-K)は、複数相の第Kの電流推定値(IUK,IVK,IWK)に基づいて、複数の電流検出器24~26のそれぞれの異常度合いを表す第Kの異常度推定値(AUK,AVK,AWK)を生成するものであり、第Kの異常度補正部(519-K)は、原異常度計算値AU0,AV0,AW0と、第1ないし第Kの異常度推定値(AU1~AUK,AV1~AVK,AW1~AWK)と、に基づいて、複数の電流検出器24~26のそれぞれの異常度合いを表す第Kの予測異常度(AUKC,AVKC,AWKC)を生成するものであると一層好ましい。これにより、複数段階に渡って第Kの予測異常度(AUKC,AVKC,AWKC)を計算できるため、電流検出器24~26の異常を一層適切に判定できる。
【0167】
また、第Kの異常度推定値(AUK,AVK,AWK)の各要素の合計が所定の異常度推定値合計閾値未満になると、現在の自然数Kを追加処理部段数Nとする機能をさらに備えると一層好ましい。これにより、第Kの異常度推定値(AUK,AVK,AWK)に基づいて、適切な追加処理部段数Nを定めることができ、計算速度を短くすることができる。
【0168】
また、第Kの電流推定値(IUK,IVK,IWK)の総和が所定の振幅閾値(例えば1%)未満になると、現在の自然数Kを追加処理部段数Nとする機能をさらに備えると一層好ましい。これにより、第Kの電流推定値(IUK,IVK,IWK)に基づいて、適切な追加処理部段数Nを定めることができ、計算速度を短くすることができる。
【0169】
また、複数の電流検出値IU,IV,IWのうち1相に異常が生じたと判定した場合に、他の2相の電流検出値IU,IV,IWに基づいて、異常が生じたと判定した電流検出値IU,IV,IWの推定値を出力する出力推定器(53a,53b)をさらに備えると一層好ましい。これにより、複数の電流検出値IU,IV,IWのうち1相に異常が生じた場合においても、適切な推定値を出力することができる。
【0170】
また、異常判断部514が何れかの電流検出器24~26に異常が生じた旨を判定すると、異常が生じたと判定した電流検出器24~26を特定する異常情報を提示する情報提示部(52)をさらに備え、異常判断部514は、電流検出器24~26の複数回に渡る異常度合いの履歴に基づいて、電流検出器24~26に所定の異常状態が発生するまでの期間を予測し、予測した期間を情報提示部(52)に提示させる機能をさらに備えると一層好ましい。これにより、電流検出器24~26に異常が生じる時期を予測できるため、適切なメンテナンス計画を立案でき、ユーザは、異常が生じたと判定された電流検出器24~26を容易に認識できる。
【0171】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0172】
(1)上記各実施形態においては、交流電源1と負荷装置2との間に介在する電力変換ユニット3における電流検出器14,15,16,24,25,26の異常の有無を判定した。しかし、上述した構成に限らず、例えば、交流を交流に電圧変換する交流変換器(例えば変圧器)を、交流電源1とAC/DC変換装置100aとの間に設けてもよい。同様に、交流を交流に電圧変換する交流変換器(例えば変圧器)を、DC/AC変換装置100bと負荷装置2との間に設けてもよい。本発明は、以上の様々な構成における、交流電源1と電力変換ユニット3との間、および電力変換ユニット3と負荷装置2との間における全ての相(例えば、3相)に配置された電流検出器の、異常判断にも適用できる。
【0173】
(2)上記実施形態における異常判断器51のハードウエアは一般的なコンピュータによって実現できるため、上述した各ブロック図、各フローチャートに対応する処理、その他上述した各種処理を実行するプログラム等を記憶媒体(プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
【0174】
(3)上述した各ブロック図、各フローチャートに対応する処理、その他上述した各種処理を実行するプログラム等は、上記実施形態ではプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、その一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたハードウエア的な処理に置き換えてもよい。
【0175】
(4)上記実施形態において実行される各種処理は、図示せぬネットワーク経由でサーバコンピュータが実行してもよく、上記実施形態において記憶される各種データも該サーバコンピュータに記憶させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0176】
1 交流電源
2 負荷装置
3 電力変換ユニット
14,15,16,24,25,26 電流検出器
51 異常判断器
52 表示器(情報提示部)
53a コンバータ側出力推定器(出力推定器)
53b インバータ側出力推定器(出力推定器)
100,101 電力変換装置
511 異常度算出処理部
514 異常判断部
516 原異常度計算部(原異常度計算過程)
517-1 電流推定部(第1の電流推定部、第1の電流推定過程)
517-K 電流推定部(第Kの電流推定部)
518-1 異常度計算部(第1の異常度計算部、第1の異常度計算過程)
518-K 異常度計算部(第Kの異常度計算部)
519-1 異常度補正部(第1の異常度補正部、第1の異常度補正過程)
519-K 異常度補正部(第Kの異常度補正部)
5111 加算器(第1の加算部)
5112U,5112V,5112W 乗算器(第1の乗算部)
5113U,5113V,5113W フィルタ(第1のフィルタ)
5114U,5114V,5114W 乗算器(第3の乗算部)
5114CW,5114CU,5114CV 乗算器(第2の乗算部)
5115 加算器(第3の加算部)
5115C 加算器(第2の加算部)
5116 フィルタ(第3のフィルタ)
5116C フィルタ(第2のフィルタ)
5117 演算部
J1 所定値(異常判定閾値)
U,DV,DW 積(第1の積)
U,FV,FW 直流成分(第1のフィルタ結果)
I 直流成分(第3のフィルタ結果)
I 直流成分(第2のフィルタ結果)
U0,AV0,AW0 原異常度計算値
U1,AV1,AW1 異常度推定値(第1の異常度推定値)
UK,AVK,AWK 異常度推定値(第Kの異常度推定値)
UX,AVX,AWX 異常度計算結果
U1C,AV1C,AW1C 予測相対異常度(第1の予測異常度)
UKC,AVKC,AWKC 予測相対異常度(第Kの予測異常度)
U,IV,IW 電流検出値
I0 入力総和値(第1の総和値)
U1,IV1,IW1 電流推定値(第1の電流推定値)
UK,IVK,IWK 電流推定値(第Kの電流推定値)
UX,IVX,IWX 入力電流値
VW,IWU,IUV 乗算結果(第2の積)
UX 2,IVX 2,IWX 2 二乗値
SKI 合計値(第2の総和値)
SHI 合計値(第3の総和値)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17