(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131207
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム、および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20240920BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240920BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240920BHJP
H01L 21/318 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/31 B
C23C16/455
H01L21/318 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041326
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】野原 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】石橋 清久
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA03
4K030AA04
4K030AA06
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA40
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA10
4K030GA02
4K030GA06
4K030HA01
4K030JA05
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA11
4K030LA02
4K030LA15
5F045AA06
5F045AA15
5F045AB32
5F045AB33
5F045AC00
5F045AC01
5F045AC02
5F045AC05
5F045AC07
5F045AC12
5F045AC14
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045AD12
5F045AD13
5F045BB19
5F045DP19
5F045DP28
5F045EE17
5F045EF03
5F045EF08
5F045EK06
5F058BA09
5F058BC02
5F058BC08
5F058BD04
5F058BD10
5F058BF04
5F058BF23
5F058BF24
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF37
5F058BJ05
5F058BJ06
(57)【要約】
【課題】基板上に形成される膜のステップカバレッジを向上させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】(a)表面に凹部が形成された基板に対して、第1ハロゲン元素を含有する第1改質剤を供給する工程と、(b)前記基板に対して、前記第1改質剤とは分子構造が異なる、第2ハロゲン元素を含有する第2改質剤を供給する工程と、(c)(a)および(b)を開始した後、前記基板に対して、前記第1改質剤および前記第2改質剤とは分子構造が異なる、所定元素を含有する原料を供給することで、前記凹部の内表面上に前記所定元素を含有する堆積層を形成する工程と、(d)(c)の後、前記基板に対して、前記堆積層と反応する反応体を供給する工程と、を含むサイクルを所定回数実行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表面に凹部が形成された基板に対して、第1ハロゲン元素を含有する第1改質剤を供給する工程と、
(b)前記基板に対して、前記第1改質剤とは分子構造が異なる、第2ハロゲン元素を含有する第2改質剤を供給する工程と、
(c)(a)および(b)を開始した後、前記基板に対して、前記第1改質剤および前記第2改質剤とは分子構造が異なる、所定元素を含有する原料を供給することで、前記凹部の内表面上に前記所定元素を含有する堆積層を形成する工程と、
(d)(c)の後、前記基板に対して、前記堆積層と反応する反応体を供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数実行することにより、前記凹部の内表面上に前記所定元素を含有する膜を形成する、
基板処理方法。
【請求項2】
前記第1改質剤は、前記所定元素を非含有とする改質剤であり、
前記第2改質剤は、前記所定元素を含有する改質剤である、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第1改質剤は、前記第2改質剤よりも前記基板の表面への吸着速度が小さい、
請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記サイクルのそれぞれにおいて、(a)は(b)よりも短い時間行われる、
請求項2または3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
(a)では、前記基板上に、前記第1ハロゲン元素により終端される第1終端を形成する、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項6】
(b)では、前記基板上に前記第2ハロゲン元素により終端される第2終端を形成する。
請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第1終端は、前記第2終端よりも前記原料に対して大きい吸着抑制作用を有している、
請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
(b)では、前記第2終端が形成された前記基板上の領域の少なくとも一部が、前記第1終端が形成された前記基板上の領域と重複するように、前記基板上に前記第2終端を形成する、
請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記第2改質剤は、前記所定元素を含有する改質剤であり、
(b)では、前記基板上に前記所定元素を含む前記第2終端を形成する、
請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項10】
(b)では、前記第1終端が形成されていない前記基板上の領域に比べて前記第1終端が形成されている領域への前記第2終端の形成が相対的に抑制されるように、前記第1終端が形成された前記基板上に前記第2終端を形成する、
請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項11】
(c)では、前記第1終端を構成する前記第1ハロゲン元素、および前記第2終端を構成する前記第2ハロゲン元素が、前記原料から生成された未結合手を有する前記所定元素の原子とそれぞれ反応することで脱離する、
請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項12】
(c)では、前記第1終端および前記第2終端のいずれもが形成されていない前記基板上の領域に比べて前記第1終端および前記第2終端の少なくともいずれか一方が形成されている前記基板上の領域への前記所定元素の吸着が相対的に抑制されるように、前記基板上に前記堆積層を形成する、
請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記第2改質剤は、前記所定元素を含み、且つ1分子中において前記所定元素同士の結合を非含有とするガスであり、前記原料は、1分子中に前記所定元素同士の結合を含むガスである、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記原料は、第3ハロゲン元素を含有するガスである、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記サイクルのそれぞれにおいて、(a)は(b)よりも先に開始される、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記サイクルのそれぞれにおいて、(a)および(b)は、少なくとも一部の期間が重複するように行われる、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記サイクルのそれぞれにおいて、(b)および(c)は、少なくとも一部の期間が重複するように行われる、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項18】
(a)表面に凹部が形成された基板に対して、第1ハロゲン元素を含有する第1改質剤を供給する工程と、
(b)前記基板に対して、前記第1改質剤とは分子構造が異なる、所定元素および第2ハロゲン元素を含有する第2改質剤を供給する工程と、
(c)(a)および(b)を開始した後、前記基板に対して、前記第1改質剤および前記第2改質剤とは組成が異なる、前記所定元素を含有する原料を供給することで、前記凹部の内表面上に前記所定元素を含有する堆積層を形成する工程と、
(d)(c)の後、前記基板に対して、前記堆積層と反応する反応体を供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数実行することにより、前記凹部の内表面上に前記所定元素を含有する膜を形成する、
半導体装置の製造方法。
【請求項19】
(a)表面に凹部が形成された基板に対して、第1ハロゲン元素を含有する第1改質剤を供給する手順と、
(b)前記基板に対して、前記第1改質剤とは分子構造が異なる、第2ハロゲン元素を含有する第2改質剤を供給する手順と、
(c)(a)および(b)を開始した後、前記基板に対して、前記第1改質剤および前記第2改質剤とは分子構造が異なる、所定元素を含有する原料を供給することで、前記凹部の内表面上に前記所定元素を含有する堆積層を形成する手順と、
(d)(c)の後、前記基板に対して、前記堆積層と反応する反応体を供給する手順と、
を含むサイクルを所定回数実行することにより、前記凹部の内表面上に前記所定元素を含有する膜を形成する手順と、
をコンピュータにより基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項20】
表面に凹部が形成された基板に対して、第1ハロゲン元素を含有する第1改質剤を供給する第1改質剤供給系と、
前記基板に対して、前記第1改質剤とは分子構造が異なる、第2ハロゲン元素を含有する第2改質剤を供給する第2改質剤供給系と、
前記基板に対して、前記第1改質剤および前記第2改質剤とは分子構造が異なる、所定元素を含有する原料を供給する原料供給系と、
前記基板に対して、反応体を供給する反応体供給系と、
(a)前記基板に対して前記第1改質剤を供給する処理と、
(b)前記基板に対して前記第2改質剤を供給する処理と、
(c)(a)および(b)を開始した後、前記基板に対して前記原料を供給することで、前記凹部の内表面上に前記所定元素を含有する堆積層を形成する処理と、
(d)(c)の後、前記基板に対して、前記堆積層と反応する前記反応体を供給する処理と、
を含むサイクルを所定回数実行することにより、前記凹部の内表面上に前記所定元素を含有する膜を形成する処理を実行するように前記第1改質剤供給系、前記第2改質剤供給系、前記原料供給系、および前記反応体供給系を制御することが可能なよう構成された制御部と、
を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム、および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、凹部を有する基板上に膜を形成する処理が行われることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板上に形成される膜の段差被覆性(ステップカバレッジ)を向上させることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a)表面に凹部が形成された基板に対して、第1ハロゲン元素を含有する第1改質剤を供給する工程と、
(b)前記基板に対して、前記第1改質剤とは分子構造が異なる、第2ハロゲン元素を含有する第2改質剤を供給する工程と、
(c)(a)および(b)を開始した後、前記基板に対して、前記第1改質剤および前記第2改質剤とは分子構造が異なる、所定元素を含有する原料を供給することで、前記凹部の内表面上に前記所定元素を含有する堆積層を形成する工程と、
(d)(c)の後、前記基板に対して、前記堆積層と反応する反応体を供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数実行することにより、前記凹部の内表面上に前記所定元素を含有する膜を形成する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板上に形成される膜のステップカバレッジを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を
図1のA-A線断面図で示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラ121の概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の一態様における処理シーケンスを示す図である。
【
図5】
図5(a)は、ウエハに対して供給された第1改質剤のウエハの凹部における吸着箇所を示す図である。
図5(b)は、第1改質剤の供給開始後にウエハに対して供給された第2改質剤のウエハの凹部における吸着箇所を示す図である。
図5(c)は、第2改質剤の供給開始後にウエハに対して供給された原料のウエハの凹部における吸着箇所を示す図である。
図5(d)は、第1改質剤供給ステップ、第2改質剤供給ステップ、原料供給ステップ、反応体供給ステップを含むサイクルを所定回数実行することにより、ウエハの凹部に形成された膜を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の変形例1における処理シーケンスを示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の変形例2における処理シーケンスを示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の変形例3における処理シーケンスを示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の変形例4における処理シーケンスを示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の変形例5における処理シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、
図1~
図4、
図5(a)~
図5(d)を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整部(加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状にマニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0011】
処理室201内には、第1供給部、第2供給部としてのノズル249a,249bが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bを、それぞれ第1ノズル、第2ノズルとも称する。ノズル249a,249bは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a,249bは、それぞれ、複数種のガスの供給に用いられる共用ノズルとして構成されている。
【0012】
ノズル249a,249bには、第1配管、第2配管としてのガス供給管232a,232bがそれぞれ接続されている。ガス供給管232a,232bは、それぞれ、複数種のガスの供給に用いられる共用配管として構成されている。ガス供給管232a,232bには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232eが接続されている。ガス供給管232eには、ガス流の上流側から順に、MFC241e、バルブ243eが設けられている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232c,232d,232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232c,232d,232fには、ガス流の上流側から順に、MFC241c,241d,241f、バルブ243c,243d,243fがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a~232fは、例えばSUS等の金属材料により構成されている。
【0013】
図2に示すように、ノズル249a,249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、それぞれが、平面視においてウエハ200の中心に向かって開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、前処理剤および成膜剤としての反応体が、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0015】
ガス供給管232bからは、第1改質剤が、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ガス供給管232cからは、第2改質剤が、MFC241c、バルブ243c、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0017】
ガス供給管232dからは、成膜剤としての原料が、MFC241d、バルブ243d、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0018】
ガス供給管232e,232fからは、不活性ガスが、それぞれMFC241e,241f、バルブ243e,243f、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0019】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、反応体供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、第1改質剤供給系が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、第2改質剤供給系が構成される。主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、原料供給系が構成される。主に、ガス供給管232e,232f、MFC241e,241f、バルブ243e,243fにより、不活性ガス供給系が構成される。上述の各種供給系を構成するガス供給管に接続されるノズルを、その供給系にそれぞれ含めてもよい。
【0020】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243fやMFC241a~241f等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232fのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232f内への各種物質(各種ガス)の供給動作、すなわち、バルブ243a~243fの開閉動作やMFC241a~241fによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232f等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0021】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。
図2に示すように、排気口231aは、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル249a,249b(ガス供給孔250a,250b)と対向(対面)する位置に設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、さらに、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めてもよい。
【0022】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0023】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0024】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0025】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0026】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。また、コントローラ121には、外部記憶装置123を接続することが可能となっている。なお、基板処理装置は、制御部を1つ備えるように構成されていてもよく、制御部を複数備えるように構成されていてもよい。すなわち、後述する処理シーケンスを行うための制御を、1つの制御部を用いて行うようにしてもよく、複数の制御部を用いて行うようにしてもよい。また、複数の制御部は、有線または無線の通信ネットワークにより互いに接続された制御系として構成されていてもよく、後述する処理シーケンスを行うための制御を制御系全体により行うようにしてもよい。本明細書において制御部という言葉を用いた場合は、1つの制御部を含む場合の他、複数の制御部を含む場合や、複数の制御部によって構成される制御系を含む場合がある。
【0027】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に記録され、格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121によって、基板処理装置に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0028】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241f、バルブ243a~243f、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0029】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241fによる各種物質(各種ガス)の流量調整動作、バルブ243a~243fの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0030】
コントローラ121は、外部記憶装置123に記録され、格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行うようにしてもよい。
【0031】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板を処理する方法、すなわち、表面に三次元構造であるトレンチや溝、ホール等の凹部300が形成された基板としてのウエハ200上に膜を形成する処理シーケンス例について、主に、
図4、
図5(a)~
図5(d)を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0032】
本態様における処理シーケンスでは、
(a)表面に三次元構造である凹部300が形成されたウエハ200に対して、第1ハロゲン元素を含有する第1改質剤を供給するステップAと、
(b)ウエハ200に対して、第1改質剤とは分子構造が異なる、第2ハロゲン元素を含有する第2改質剤を供給するステップBと、
(c)(a)および(b)を開始した後、ウエハ200に対して、第1改質剤および第2改質剤とは分子構造が異なる、所定元素を含有する原料を供給することで、凹部300の内表面上に所定元素を含有する堆積層を形成するステップCと、
(d)(c)の後、ウエハ200に対して、堆積層と反応する反応体を供給するステップDと、
を含むサイクルを所定回数(n回、nは1または2以上の整数)実行することにより、凹部300の内表面上に所定元素を含有する膜を形成する。
【0033】
本態様において、原料に含有される所定元素は、ウエハ200上に形成される堆積層および膜を構成する主元素である。以下、一例として、所定元素がシリコン(Si)であり、ウエハ200の表面に下地としてSi膜が形成されている場合について説明する。
【0034】
本態様における処理シーケンスでは、
図4に示すように、
膜形成を行う前に、ウエハ200に対して反応体を供給するステップ(プリフロー)をさらに行う。
【0035】
本明細書では、上述の処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の態様等の説明においても、同様の表記を用いる。
【0036】
前処理反応体(プリフロー)→(第1改質剤→パージ→第2改質剤→パージ→原料→パージ→反応体→パージ)×n
【0037】
本明細書において用いる「ウエハ」という用語は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において用いる「ウエハの表面」という言葉は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0038】
本明細書において用いる「剤」という用語は、ガス状物質および液体状物質のうち少なくともいずれかを含む。液体状物質はミスト状物質を含む。すなわち、第1改質剤、第2改質剤、原料、反応体のそれぞれは、ガス状物質を含んでいてもよく、ミスト状物質等の液体状物質を含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。
【0039】
本明細書において用いる「層」という用語は、連続層および不連続層のうち少なくともいずれかを含む。例えば、堆積層は、連続層を含んでいてもよく、不連続層を含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。
【0040】
本明細書において、第1改質剤、第2改質剤、原料および反応体がそれぞれウエハの表面に対して吸着することや反応することについて述べる場合、それらが未分解のままウエハ表面に対して吸着や反応を起こす態様だけではなく、それらが分解することや、その配位子(リガンド)が脱離することにより生成される中間体がウエハ表面に対して吸着や反応を起こす態様をも含むことがある。
【0041】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。このようにして、ウエハ200は、処理室201内に準備(提供)されることとなる。
【0042】
(圧力調整および温度調整)
ボートロードが終了した後、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。このとき、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。このとき、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0043】
(成膜処理)
その後、プリフロー、膜形成をこの順に実行する。
【0044】
[プリフロー(前処理)]
本ステップでは、処理室201内のウエハ200に対して前処理剤としての前処理反応体を供給する。本態様では、後述するステップDにおいて用いられる反応体を前処理反応体としても用いる。
【0045】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ前処理反応体としての反応体を流す。反応体は、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して反応体が供給される(前処理反応体供給)。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0046】
本ステップにて反応体を供給する際における処理条件としては、
処理温度:400~900℃、好ましくは500~900℃、より好ましくは600~750℃
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは20~1333Pa
反応体供給流量:0.1~10slm
反応体供給時間:5~1800秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
が例示される。
【0047】
なお、本明細書における「400~900℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「400~900℃」とは「400℃以上900℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、処理時間とは、その処理を継続する時間を意味する。また、供給流量に0slmが含まれる場合、0slmとは、その物質(ガス)を供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0048】
成膜処理を実施する前のウエハ200の表面には、自然酸化膜などが形成されている場合がある。上述の処理条件下でウエハ200に対して前処理反応体として、例えば、窒素(N)及び水素(H)を含む窒化水素系ガスを供給することにより、自然酸化膜などが形成されたウエハ200の表面に、NH終端(Hによる吸着サイト)を形成することが可能となる。これにより、後述するステップA~Dにおいて、ウエハ200上で所望の成膜反応を効率的に進行させることが可能となる。
【0049】
前処理反応体である反応体としては、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、アンモニア(NH3)ガス、N3H5ガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。反応体としては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述するステップDで用いる成膜剤としての反応体においても同様である。
【0050】
不活性ガスとしては、窒素(N2)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0051】
ウエハ200の凹部300の内表面にNH終端(吸着サイト)を形成させた後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への反応体の供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。ノズル249a,249bより供給される不活性ガスは、パージガスとして作用し、これにより、処理室201内がパージされる(パージ)。
【0052】
[膜形成]
プリフローが終了した後、膜形成を行う。本ステップでは、ステップA、ステップB、ステップC、ステップDをこの順に行う。
【0053】
[ステップA]
本ステップでは、処理室201内のウエハ200、すなわち、凹部300の内表面に吸着サイトが形成された後のウエハ200に対して、第1ハロゲン元素を含有する第1改質剤を供給する。
【0054】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へ第1改質剤を流す。第1改質剤は、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して第1改質剤が供給される(第1改質剤供給)。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0055】
本ステップにて第1改質剤を供給する際における処理条件としては、
処理温度:400~900℃、好ましくは500~800℃、より好ましくは600~750℃
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは10~1333Pa
第1改質剤供給流量:0.001~3slm、好ましくは0.01~1slm
第1改質剤供給時間:1~120秒、好ましくは10~60秒
が例示される。ただし、第1改質剤供給時間は、ステップBにおける第2改質剤供給時間よりも短いことが好ましい。他の処理条件は、プリフローにて前処理反応体を供給する際における処理条件と同様とすることができる。なお、処理速度向上の観点から、特に処理温度は、ステップA~Dのいずれにおいても実質的に同じ温度であることが好ましい。
【0056】
上述の処理条件下でウエハ200に対して第1ハロゲン元素を含有する第1改質剤を供給することにより、ウエハ200の表面に第1改質剤を吸着させ、第1ハロゲン元素により表面が終端された第1終端を形成することができる(
図5(a)参照)。第1終端が形成されたウエハ200の表面上の領域(すなわち、第1改質剤の吸着層が形成された領域)を第1終端領域とも称する。具体的には、これにより、凹部300の上面および内表面(具体的には凹部300内側の側壁面及び底面)の少なくとも一部に、不連続に第1ハロゲン元素の終端(第1終端)が形成された第1終端領域を形成することができる。より具体的には、これにより、凹部300の開口部側301に優先的に第1改質剤を吸着させ、第1終端を形成することができる(
図5(a)参照)。換言すると、凹部300の深部側302から開口部側301に向かって近づくほど第1終端の密度(すなわち、第1改質剤の吸着層の密度)が大きくなるように、凹部300の上面および内表面の少なくとも一部に、第1終端領域が形成される。なお、第1終端領域は、凹部300の内表面の全体に亘って、不連続に第1終端(すなわち、第1改質剤の吸着層)が形成されるように形成されてもよい。
【0057】
第1終端領域では、第1終端によって、後述するステップB,Cにおいて供給される第2改質剤や原料の吸着が抑制される。第1終端は、ステップBで形成される第2終端よりも、ステップCで供給される原料に対して大きい吸着抑制作用を有している。
【0058】
本態様では、第1改質剤として、所定元素であるSiを非含有とするガスを用いる。第1改質剤として所定元素を非含有とするガスを用いる一方、第2改質剤として所定元素を含有するガスを用いることにより、第1終端がステップCで供給される原料に対して持つ吸着抑制作用を、第2終端が持つ同作用よりも大きくすることが容易となる。一方で、第1改質剤として所定元素を非含有とするガスを用いる一方、第2改質剤として所定元素を含有するガスを用いることにより、第1改質剤は、第2改質剤よりもウエハ200表面への吸着速度が小さい性質を持つ傾向となる。すなわち、本態様では、第1改質剤として、第2改質剤よりもウエハ200表面への吸着速度が小さいガスが用いられる。
【0059】
第1改質剤としては、第1ハロゲン元素としての塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)のうち、少なくともいずれかを含むガスを用いることができる。第1改質剤としては、例えば、フッ素(F2)ガス、塩素(Cl2)ガス、臭素(Br2)ガス、ヨウ素(I2)ガス等のハロゲン元素の単体ガス、フッ化塩素(ClF3)ガス、塩化臭素(BrCl)ガス、塩化ヨウ素(ICl)ガス、フッ化ヨウ素(IF5)ガス、フッ化臭素(BrF3)ガス、臭化ヨウ素(IBr)ガス等のハロゲン間化合物ガス、塩化水素(HCl)ガス、フッ化水素(HF)ガス、臭化水素(HBr)ガス、ヨウ化水素(HI)ガス等のハロゲン化水素化合物ガス、またはこれらのガスを組み合わせたガスを用いることができる。また、これらのガスをプラズマ励起等によって活性化させることにより生成される、ハロゲン元素を含むラジカル(Cl*,F*,Br*,I*等)を用いることができる。第1改質剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。なお、第1改質剤として上述のようなハロゲン元素のみを含むガス又はハロゲン元素と水素のみを含むガスを用いる場合、これらのガスは、マニホールド209や排気管231等の金属材料で形成されることのある部材を腐食させる作用が顕著となる傾向がある。そのため、上述のように、第1改質剤供給時間は、第2改質剤供給時間よりも短くすることにより、装置部材へのダメージを最小限に抑えることが好ましい。
【0060】
ウエハ200の表面(凹部300の上面及び内表面)に第1終端を形成した後、バルブ243bを閉じ、処理室201内への第1改質剤の供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。ノズル249a,249bより供給される不活性ガスは、パージガスとして作用し、これにより、ウエハ200が存在する空間、すなわち、処理室201内がパージされる(パージ)。
【0061】
[ステップB]
ステップAが終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、凹部300の内表面に第1終端領域を形成させた後のウエハ200に対して、第2ハロゲン元素を含有する第2改質剤を供給する。
【0062】
具体的には、バルブ243cを開き、ガス供給管232c内へ第2改質剤を流す。第2改質剤は、MFC241cにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して第2改質剤が供給される(第2改質剤供給)。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0063】
本ステップにて第2改質剤を供給する際における処理条件としては、
処理温度:400~900℃、好ましくは500~800℃、より好ましくは600~750℃
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは10~1333Pa
第2改質剤供給流量:0.001~3slm、好ましくは0.01~1slm
第2改質剤供給時間:10~300秒、好ましくは30~120秒
が例示される。ただし、第2改質剤供給時間は、ステップAにおける第1改質剤供給時間よりも長いことが好ましい。他の処理条件は、プリフローにて前処理反応体を供給する際における処理条件と同様とすることができる。
【0064】
上述の処理条件下でウエハ200に対して第2ハロゲン元素を含有する第2改質剤を供給することにより、凹部300の上面および内表面の少なくとも一部のうち、第1改質剤が吸着していない吸着サイト、すなわち、第1終端が形成されていない箇所に第2改質剤を吸着させ、第2ハロゲン元素により終端される第2終端(第2改質剤の吸着層が形成された領域)を形成することができる(
図5(b)参照)。第2終端が形成されたウエハ200の表面上の領域(すなわち、第2改質剤の吸着層が形成された領域)を第2終端領域とも称する。
【0065】
具体的には、これにより、凹部300の上面および内表面の少なくとも一部のうち、第1改質剤が吸着していない吸着サイト(第1終端が形成されていない箇所)に第2改質剤を吸着させ、不連続に第2ハロゲン元素の終端(第2終端)が形成された第2終端領域を形成することができる(
図5(b)参照)。第2終端領域では、第2終端によって、後述するステップCにおいて供給される原料の吸着が抑制される。
【0066】
本態様においては、凹部300の底面を含む深部側302の表面上では、第2終端領域における第2終端の密度(すなわち、第2改質剤の吸着層の密度)を、第1終端領域における第1終端の密度(すなわち、第1改質剤の吸着層の密度)よりも大きくする。また、ステップAにおいて、第1終端(すなわち、第1改質剤の吸着層)が不連続に形成されている第1終端領域が凹部300の内表面の全体に亘って形成された場合には、凹部300の内表面の全体に亘って、第2終端領域における第2終端の密度が第1終端領域のものよりも大きくなるように、ステップBを行ってもよい。
【0067】
なお、
図5(b)に示すように、第1ハロゲン元素により終端された第1終端領域(第1改質剤の吸着層が形成された領域)と第2ハロゲン元素により終端された第2終端領域(第1改質剤の吸着層が形成された領域)は、凹部300の内表面においてその少なくとも一部が重複することがある。換言すると、不連続に形成された第1終端の隙間に残存する吸着サイトの少なくとも一部に対して第2終端が形成されることがある。
【0068】
第2改質剤としては、第2ハロゲン元素としてのCl、F、Br、Iのうち、少なくともいずれかを含むガスを用いることができる。第2改質剤が有する第2ハロゲン元素と、第1改質剤が有する第1ハロゲン元素とは、同一の元素であってもよいし、異なる元素であってもよい。第1ハロゲン元素と第2ハロゲン元素を異なる元素とすることにより、例えば、膜中への単一のハロゲン元素の残留量を低減することができる。第2改質剤としては、ステップAにおいて例示したガスのうちの1以上を用いることができる。ただし、第2改質剤は、第1改質剤とは分子構造が異なるガスである。また、第2改質剤は、第1改質剤よりもウエハ200表面への吸着速度が大きいガスを用いることができる。
【0069】
また、第2改質剤としては、第2ハロゲン元素と所定元素を含有するハロゲン含有ガスを用いることができる。より具体的には、第2改質剤として、テトラクロロシラン(SiCl4)ガス、モノクロロシラン(SiH3Cl)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3)ガス、テトラフルオロシラン(SiF4)ガス、トリフルオロシラン(SiHF3)ガス、ジフルオロシラン(SiH2F2)ガス、テトラブロモシラン(SiBr4)ガス、トリブロモシラン(SiHBr3)ガス、ジブロモシラン(SiH2Br2)ガス、テトラヨードシラン(SiI4)ガス、トリヨードシラン(SiHI3)ガス、ジヨードシラン(SiH2I2)ガス等の、第2ハロゲン元素とSiとを含有するハロシラン系ガスであって、1分子中においてSi同士の結合(すなわち所定元素同士の結合)を非含有とするガス、またはこれらのガスを組み合わせたガスを用いることができる。第2改質剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。なお、第2改質剤として、これらのガスを用いる場合には、所定元素としてのSiを含み、且つ第2ハロゲン元素により構成される第2終端(例えばSi-Cl終端やSi-F終端、等)が形成される。
【0070】
ウエハ200の表面(凹部300の内表面)に第2終端を形成した後、バルブ243cを閉じ、処理室201内への第2改質剤の供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。ノズル249a,249bより供給される不活性ガスは、パージガスとして作用し、これにより、ウエハ200が存在する空間、すなわち、処理室201内がパージされる(パージ)。
【0071】
[ステップC]
ステップBが終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、凹部300の内表面に第2終端を形成させた後のウエハ200に対して、所定元素としてのSiを含有する原料を供給する。
【0072】
具体的には、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へ原料を流す。原料は、MFC241dにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して原料が供給される(原料供給)。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0073】
本ステップにて原料を供給する際における処理条件としては、
処理温度:400~900℃、好ましくは500~800℃、より好ましくは600~750℃
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは10~1333Pa
原料供給流量:0.001~2slm、好ましくは0.1~1slm
原料供給時間:0.5~60秒、好ましくは1~30秒
が例示される。他の処理条件は、プリフローにて前処理反応体を供給する際における処理条件と同様とすることができる。
【0074】
上述の処理条件下でウエハ200に対してSiを含有する原料を供給することにより、ウエハ200の表面のうち、第1終端と第2終端の少なくともいずれかが形成されていない箇所(換言すると、第1終端領域と第2終端領域のいずれもが形成されていない箇所、すなわち、第1ハロゲン元素、および第2ハロゲン元素の何れによっても終端されていない、ウエハ200の表面に残存する吸着サイト)に原料を主に吸着させ、所定元素(Si)を含有する堆積層(以下、「第1層」と称する場合がある)を形成することができる(
図5(c)参照)。このとき、第1終端を構成する第1ハロゲン元素、および第2終端を構成する第2ハロゲン元素は、原料から生成された未結合手を有するSiとそれぞれ反応することにより、その少なくとも一部がウエハ200の表面から脱離する。
【0075】
なお、以下では、堆積層である第1層は、吸着サイトに吸着した所定元素のほかに、第1終端を構成する第1ハロゲン元素や、第2終端を構成する第2ハロゲン元素を含む、所定元素を含有する層を意味することがある。また、第1層には、原料に含まれる所定元素以外の他の元素(例えば炭素(C)や窒素(N)、後述する第3ハロゲン元素、その他の不純物、等)が更に含まれることがある。
【0076】
原料としては、モノシラン(SiH4)ガス、ジシラン(Si2H6)ガス、トリシラン(Si3H8)ガス等のシラン系ガスを用いることができる。
【0077】
また、原料としては、所定元素に加えてさらに第3ハロゲン元素を含有するガスを用いることができる。すなわち、所定元素がSiである場合には、原料としてハロシランガスを用いることができる。第3ハロゲン元素としては、Cl、F、Br、Iのうち、少なくともいずれかの元素を用いることができる。原料が有する第3ハロゲン元素と、第2改質剤が有する第2ハロゲン元素と、第1改質剤が有する第1ハロゲン元素とは、同一の元素であってもよいし、いずれも互いに異なる元素であってもよいし、いずれか1つのみが異なっていてもよい。ただし、原料は、第1改質剤および第2改質剤とは分子構造が異なるガスである。また、第3ハロゲン元素を含有する原料としては、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)ガスや、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8)ガス、モノクロロジシラン(Si2H5Cl)ガス、ジクロロジシラン(Si2H4Cl2)ガス、トリクロロジシラン(Si2H3Cl3)ガス、テトラクロロジシラン(Si2H2Cl4)ガス、モノクロロトリシラン(Si3H5Cl)ガス、ジクロロトリシラン(Si3H4Cl2)ガス等のクロロシラン系ガスであって、1分子中においてSi同士の結合(すなわち、所定元素同士の結合)を含有するガス、またはこれらのクロロシラン系ガスの分子構造におけるCl原子を他のハロゲン元素の原子と置換した分子構造を有する他のハロシラン系ガスであることが好ましい。また、原料としては、ジクロロシラン(SiH2Cl2)ガス等のクロロシラン系ガスであって、1分子中においてSi同士の結合を非含有とするガスや、これらのクロロシラン系ガスの分子構造においてCl原子を他のハロゲン元素の原子と置換した他のハロシラン系ガスを用いることができる。なお、第3ハロゲン元素を含有する原料としては、上述した原料としてのハロシラン系ガスを組み合わせたガスを用いることができる。
【0078】
また、原料としては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]4)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]3H)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C2H5)2]2H2)ガス、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH2[NH(C4H9)]2)ガス、(ジイソプロピルアミノ)シラン(SiH3[N(C3H7)2])ガス等のアミノシラン系ガス、またはこれらのガスを組合せたガスを用いることができる。
【0079】
第2改質剤として所定元素を含むガスを用いる場合、原料としては、第2改質剤よりも熱分解温度が相対的に低いガス(すなわち、第2改質剤よりも分子の分解に必要なエネルギーが相対的に小さいガス)を用いることができる。原料として熱分解温度の低いガスを用いることにより、ステップCにおいて、所定元素を含有する層の形成速度を高めることができる。また、所定元素を含む第2改質剤として熱分解温度の高いガスを用いることにより、第2改質剤が過剰に熱分解することにより生じる凹部300の内表面への所定元素の多重吸着を抑制し、ステップカバレッジの悪化を防ぐことができる。このような熱分解温度の関係を有する組合せとしては、例えば、第2改質剤として1分子中においてSi同士の結合を非含有とするガスを用い、原料として1分子中においてSi同士の結合を含有とするガスを用いることができる。この場合、原料に含まれるSi同士の結合が熱分解によって切断され、反応性の大きい未結合手を有するSiが生成されることにより、ステップCにおけるSiを含有する層の形成速度を高めることができる。
【0080】
第2改質剤と原料としてこのようなガスの組合せを用いる場合、ステップBにおける処理温度は第2改質剤が実質的に熱分解しない温度とし、ステップCにおける処理温度は原料が実質的に熱分解する温度とすることが好ましい。
【0081】
原料としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0082】
ウエハ200の表面(凹部300の内表面)に第1層を形成した後、バルブ243dを閉じ、処理室201内への原料の供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。ノズル249a,249bより供給される不活性ガスは、パージガスとして作用し、これにより、ウエハ200が存在する空間、すなわち、処理室201内がパージされる(パージ)。
【0083】
[ステップD]
ステップCが終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、凹部300の内表面に第1層を形成させた後のウエハ200に対して、第1層と反応する成膜剤としての反応体を供給する。
【0084】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ反応体を流す。反応体は、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して反応体が供給される(反応体供給)。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0085】
本ステップにて反応体を供給する際における処理条件としては、
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは10~1000Pa
反応体供給流量:0.1~10slm、好ましくは1~5slm
反応体供給時間:1~120秒、好ましくは10~60秒
が例示される。他の処理条件は、プリフローにて前処理反応体を供給する際における処理条件と同様とすることができる。
【0086】
上述の処理条件下でウエハ200に対して反応体を供給することにより、凹部300の内表面に形成された第1層の少なくとも一部が反応体と反応し、改質される。結果として、凹部300の内表面に、第1層の改質層である第2層が形成される。第2層は所定元素含有層(Si含有層)である。第2層を形成する際、第1層に含まれていたハロゲン元素等の不純物(例えば、第1終端を構成する第1ハロゲン元素、第2終端を構成する第2ハロゲン元素、原料に含まれる第3ハロゲン元素、等)の少なくとも一部は、第1層の改質反応の過程においてガス状物質として第1層から脱離し、処理室201内から排出される。これにより、第2層は、ステップCで形成された第1層に比べて、ハロゲン元素等の不純物が少ない層となる。
【0087】
ただし、本ステップにおいても、第1層に含まれていた第1終端を構成する第1ハロゲン元素、および第2終端を構成する第2ハロゲン元素を完全には脱離させることなく、次の成膜サイクルのステップAにおいて処理される凹部300の上面および内表面の少なくとも一部に、第1終端および第2終端の少なくとも何れか一方が残存するようにしてもよい。このように、本ステップにおいて第1終端および第2終端の少なくとも何れか一方を残存させることにより、次の成膜サイクルのステップCにおける原料の吸着抑制作用をより高めることができる。このように第1終端および第2終端を残存させることにより、後述するように、凹部300内表面に形成される膜のステップカバレッジがさらに向上することがある。
【0088】
本ステップにおいて用いられる反応体としては、窒素(N)含有ガス(N含有物質)を用いることができる。本態様では、プリフローにおいて用いられる窒化水素系ガスと同じガスを用いる。例えば、原料として上述のシラン系ガスを用い、反応体としてN含有ガスを用いる場合、ウエハ200の表面上には第2層としてシリコン窒化層(SiN層)が形成される。この場合、反応体は窒化源(窒素ソース)として作用する。
【0089】
また、反応体としては、例えば、酸素(O)及びH含有ガス(O及びH含有物質)を用いることができる。O及びH含有ガスとしては、水蒸気(H2Oガス)、過酸化水素(H2O2)ガス、水素(H2)ガス+酸素(O2)ガス、H2ガス+オゾン(O3)ガス等を用いることができる。すなわち、O及びH含有ガスとしては、O含有ガス+H含有ガスを用いることもできる。この場合において、H含有ガスとして、H2ガスの代わりに重水素(2H2)ガスを用いることもできる。
【0090】
なお、本明細書において「H2ガス+O2ガス」というような2つのガスの併記記載は、H2ガスとO2ガスとの混合ガスを意味している。混合ガスを供給する場合は、2つのガスを供給管内で混合(プリミックス)させた後、処理室201内へ供給するようにしてもよいし、2つのガスを異なる供給管より別々に処理室201内へ供給し、処理室201内で混合(ポストミックス)させるようにしてもよい。
【0091】
また、反応体としては、O含有ガス(O含有物質)を用いることができる。O含有ガスとしては、O2ガス、オゾン(O3)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等を用いることができる。例えば、原料として上述のシラン系ガスを用い、反応体としてO及びH含有ガスまたはO含有ガスを用いる場合、ウエハ200の表面上には第2層としてシリコン酸化層(SiO層)が形成される。この場合、反応体は酸化源(酸素ソース)として作用する。
【0092】
また、反応体としては、H含有ガス(H含有物質)を用いることができる。H含有ガスとしては、上述した窒化水素系ガスやO及びH含有ガスのほかに、H2ガス等を用いることができる。反応体としてH含有ガスを用いることにより、第1層中に残留するハロゲン元素等の不純物を、より効率的に層中から脱離させ、除去することができる。また、例えば反応体としてH2ガスを用いることにより、第1層を、NやOを非含有とする第2層に改質するようにしてもよい。
【0093】
反応体としては、これらのうち1以上を用いることができる。なお、本態様では、ステップAにおいて用いる前処理反応体と、ステップDにおいて用いる反応体とが、同じガスである場合について説明したが、本開示技術はこれに限定されず、両社は互いに異なるガスであってもよい。例えば、両者が互いに異なるN含有ガスであってもよく、また、両者が互いに異なるO及びH含有ガスや、O含有ガスであってもよい。
【0094】
ウエハ200の表面(凹部300の内表面)に形成した第1層を第2層へ変化させた後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への反応体の供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。ノズル249a,249bより供給される不活性ガスは、パージガスとして作用し、これにより、ウエハ200が存在する空間、すなわち、処理室201内がパージされる(パージ)。
【0095】
[所定回数実施]
上述のステップA~Dを、非同時に、すなわち、同期させることなくこの順に行うサイクルをn回(nは1または2以上の整数)行うことにより、ウエハ200の表面(凹部300の内表面)上に、所望の組成を有する膜を形成することが可能となる(
図5(d)参照)。例えば、原料として上述のSi含有ガスを用い、反応体として上述のNを含むガスを用いる場合、ウエハ200の表面上に、シリコン窒化膜(SiN膜)が形成される。また、原料として上述のSi含有ガスを用い、反応体として上述のOを含むガスを用いる場合、ウエハ200の表面上に、シリコン酸化膜(SiO膜)が形成される。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成される第2層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、第2層を積層することで形成される膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0096】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
成膜処理が完了した後、ノズル249a,249bのそれぞれからパージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0097】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0098】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0099】
(a)ウエハ200に対して、第1ハロゲン元素を含有する第1改質剤を供給するステップAと、第1改質剤とは分子構造が異なる、第2ハロゲン元素を含有する第2改質剤を供給するステップBと、を行うことにより、単一のハロゲン元素含有改質剤を用いる場合に比べて、凹部300の内表面に形成される膜のステップカバレッジを向上させることができる。
【0100】
(b)さらに、ウエハ200に対して、第1ハロゲン元素を含有する第1改質剤を供給するステップAと、第1改質剤とは分子構造が異なる、第2ハロゲン元素を含有する第2改質剤を供給するステップBと、を行うことにより、単一のハロゲン元素含有改質剤を用いる場合に比べて、改質剤の供給時間の増大を抑制しながら、凹部300の内表面に形成される膜のステップカバレッジを向上させることができる。
【0101】
凹部300を有するウエハ200に対して供給されたガスは、開口部側301に到達しやすく、深部側302に到達しにくい傾向にある。この傾向は、ガスの供給時間が比較的短いときに顕著になる。本態様では、ステップAにおいて、ステップBで供給する第2改質剤よりもウエハ200表面への吸着速度が小さい第1改質剤を供給し、第1改質剤の供給時間を、ステップBにおける第2改質剤の供給時間よりも短くしている。これにより、ステップAでは、第1改質剤を、凹部300の開口部側301により容易に吸着させ、第1終端を形成させることができる(
図5(a)参照)。
【0102】
一方、ステップBでは、ステップAで供給する第1改質剤よりもウエハ200表面への吸着速度が大きい第2改質剤、すなわち、第2終端の形成に必要な時間が相対的に短い第2改質剤を供給している。凹部300を有するウエハ200に対して供給された吸着速度が大きいガスは、開口部側301における吸着が発生しやすく、深部側302に到達しにくい傾向にある。しかし、第1終端が有する第2改質剤吸着抑制作用により、ステップBでは、第2改質剤は、第1終端が形成されている開口部側301を通過して、深部側302に優先的に吸着し、第2終端を形成する(
図5(b)参照)。これにより、ステップBでは、第2改質剤の供給時間を比較的短くしたとしても、第2改質剤を、凹部300の深部側302に吸着させ、第2終端を形成することが容易となる。
【0103】
また、上記のように、凹部300を有するウエハ200に対して供給されたガスは、開口部側301に到達しやすく、深部側302に到達しにくい傾向にあるが、ガスの供給時間を比較的長くしたときには、深部側302にもガスを到達しやすくできる。本態様では、ステップBにおいて、第2改質剤の供給時間を、ステップAにおける第1改質剤の供給時間よりも長くしている。これにより、ステップBでは、第2改質剤を、凹部300の深部側302に吸着させ、第2終端を形成することがさらに容易となる。
【0104】
以上のように、ステップA,Bを行うことにより、凹部300の開口部側301に第1終端を形成し、深部側302に第2終端を形成することができる。
【0105】
その後のステップCでは、第1終端と第2終端とが有する原料吸着抑制作用により、原料は、第1終端と第2終端の少なくともいずれかが形成されていない箇所に吸着し、Siを含有する堆積層(第1層)を形成する。このとき供給される原料も開口部側301に到達しやすく、深部側302に到達しにくい傾向にあるため、第1層が開口部側301に偏って形成されるおそれがある。しかしながら、本態様において開口部側301に形成される第1終端は、深部側302に形成される第2終端領域よりも原料に対して大きい吸着抑制作用を有しているため、開口部側301に到達する比較的多量の原料の吸着を充分に抑制することができる。一方、深部側302に形成される第2終端は、原料に対して第1終端よりも小さい吸着抑制作用しか有していないものの、深部側302に到達される原料が比較的少量であるため、原料の吸着を充分に抑制することができる。このように、本態様では、第1改質剤と第2改質剤とを供給し、原料吸着抑制作用が相対的に大きい第1終端を開口部側301に形成し、原料吸着抑制作用が相対的に小さい第2終端を深部側302に形成することにより、原料を凹部300の内表面全体に均一に到達させることができる。これにより、ステップカバレッジの優れた膜を形成することができる。
【0106】
(c)また、第2改質剤よりもウエハ200表面への吸着速度が小さい第1改質剤、すなわち、第1終端の形成に必要な時間が相対的に長い第1改質剤の供給時間を、第2改質剤の供給時間よりも短くすることにより、改質剤の供給時間(第1改質剤と第2改質剤の合計供給時間)の増大を最小化することができる。
【0107】
(d)ステップAにおいて、所定元素(Si)非含有の第1改質剤を供給することにより、原料に対して大きい吸着抑制作用を有する第1終端を形成することができる。ステップBにおいて、所定元素含有の第2改質剤を供給することにより、原料に対して吸着抑制作用を有する、所定元素含有の第2終端を形成することができる。
【0108】
(e)ステップBでは、第2改質剤として、Siを含み、且つ1分子中に所定元素(Si)同士の結合を非含有とするガスを供給し、ステップCでは、原料として、1分子中に所定元素同士の結合を含むガスを供給している。このように、ステップCにおいて、第2改質剤よりも熱分解等しやすく、未結合手を有する所定元素を生成しやすい原料を供給することにより、第2改質剤のみを供給して所定元素含有層(第1層)を形成する場合よりも、堆積速度を向上させることができる。
【0109】
(f)ステップCにおいて、第1終端を構成する第1ハロゲン元素と、第2終端を構成する第2ハロゲン元素とを、原料から生成された未結合手を有する所定元素(Si)と反応させ脱離させることにより、膜のステップカバレッジの低下を抑制することができる。以下、これについて説明する。一例として、第1ハロゲン元素と第2ハロゲン元素のいずれもClとし、原料をSi2Cl6ガスとした場合、ステップCでは、これらClは、Si2Cl6ガスが熱分解して生成されたSiCl2中の(未結合手を有する)Siに結合してそれぞれの領域から脱離する。これにより、反応性の高い(多重吸着しやすい)SiCl2を、反応性の低い(多重吸着しにくい)SiCl4に変化させることができる。その結果、処理室201内のSiCl2を適正な量に減少させることができ、SiCl2の多重吸着によるステップカバレッジの低下を抑制することができる。
【0110】
(g)ステップCにおいて、原料として、第3ハロゲン元素を含有するガスを供給することにより、サイクルタイムを短縮させて成膜処理の生産性を向上させることができる。以下、これについて説明する。ステップCにおいて、原料として、第3ハロゲン元素を含有するガスを供給することにより、凹部300の内表面に第3ハロゲン元素を含む堆積層(第1層)を形成することができる。ステップDでは、第1層を改質させ、第3ハロゲン元素を第1層から脱離させる。第1層から脱離した第3ハロゲン元素は、凹部300の内表面に再吸着して、次の成膜サイクルにおける第1終端の一部を形成することができる。結果として、サイクルタイムを短縮させて成膜処理の生産性を向上させることができる。
【0111】
(h)ステップCで供給される原料と、ステップA,Bでそれぞれ供給される第1改質剤と第2改質剤とが同一のノズル(ノズル249b)を介してウエハ200に供給されることにより、ノズル249b内における原料の付着・堆積を抑制することができる。
【0112】
(i)上述の効果は、上述の各種改質剤、各種原料、各種反応体、各種不活性ガスから、所定の物質(ガス状物質、液体状物質)を任意に選択して用いる場合においても、同様に得ることができる。
【0113】
(4)変形例
本態様における処理シーケンスは、以下に示す変形例のように変更することができる。これらの変形例は、任意に組み合わせることができる。特に説明がない限り、各変形例の各ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の処理シーケンスの各ステップにおける処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0114】
(変形例1)
図6および以下に示す処理シーケンスのように、ステップAの実施期間とステップBの実施期間の少なくとも一部の実施期間を重複させつつ、ステップA,B,C,Dの工程を、この順に行うようにしてもよい。
【0115】
反応体(プリフロー)→(第1改質剤→第1改質剤+第2改質剤→第2改質剤→パージ→原料→パージ→反応体→パージ)×n
【0116】
変形例1においては、上述の効果に加えて、サイクルタイムを短縮させて成膜処理の生産性を向上させることができる。
【0117】
(変形例2)
図7および以下に示す処理シーケンスのように、ステップBの実施期間とステップCの実施期間の少なくとも一部の実施期間を重複させつつ、ステップA,B,C,Dの工程を、この順に行うようにしてもよい。
【0118】
反応体(プリフロー)→(第1改質剤→第2改質剤→第2改質剤+原料→原料→パージ→反応体→パージ)×n
【0119】
変形例2においては、上述の効果に加えて、サイクルタイムを短縮させて成膜処理の生産性を向上させることができる。
【0120】
(変形例3)
図8および以下に示す処理シーケンスのように、ステップAの実施期間とステップBの実施期間とステップCの実施期間の少なくとも一部の実施期間を重複させつつ、ステップA,B,C,Dの工程を、この順に行うようにしてもよい。
【0121】
反応体(プリフロー)→(第1改質剤→第1改質剤+第2改質剤→第1改質剤+第2改質剤+原料→第2改質剤+原料→原料→パージ→反応体→パージ)×n
【0122】
なお、本変形例では、ステップAを開始しステップCが終了するまでの間において、ステップCが終了するまでに、ステップAとステップBが終了していれば、ステップA,B,Cの実施期間はどのように重複させてもよい。
【0123】
変形例3においては、上述の効果に加えて、サイクルタイムをさらに短縮させて成膜処理の生産性をさらに向上させることができる。
【0124】
(変形例4)
図9および以下に示す処理シーケンスのように、ステップA~Dの各工程を、ステップB,A,C,Dの順に非同時に行うようにしてもよい。
【0125】
反応体(プリフロー)→(第2改質剤→パージ→第1改質剤→パージ→原料→パージ→反応体→パージ)×n
【0126】
変形例4においては、上述の効果の少なくとも一部を得ることができる。
【0127】
(変形例5)
図10および以下に示す処理シーケンスのように、ステップA,B,Dの各工程の後に行われるパージを省略してもよい。
【0128】
反応体(プリフロー)→(第1改質剤→第2改質剤→原料→パージ→反応体)×n
【0129】
変形例5においては、ステップCとステップDとの間のパージを実施しているので、原料と反応体との反応によるパーティクルの発生を抑制して膜質の低下を回避しつつ、上述の効果に加えて、サイクルタイムを短縮させて成膜処理の生産性を向上させることができる。
【0130】
(変形例6)
以下に示す処理シーケンスのように、ステップA(第1改質剤の供給)を省略したサイクルAを所定回数(m回、mは1または2以上の整数)実行するごとに、ステップA(第1改質剤の供給)を行うサイクルBを実行するようにしてもよい。サイクルAとサイクルBを含むスーパーサイクルCは、ウエハ200上に形成される膜の厚さが所定の厚さとなるまで、所定回数(n回、nは1または2以上の整数)実行される。
【0131】
反応体(プリフロー)→[(第1改質剤→パージ→第2改質剤→パージ→原料→パージ→反応体→パージ)→(第2改質剤→パージ→原料→パージ→反応体→パージ)×m]×n
【0132】
変形例6においては、ステップAにおいて形成される第1終端が有する原料の吸着抑制作用が、ステップAが省略されたサイクルAがm回実行される間、維持され得る場合において有効である。このように、ステップAを省略するサイクルAを含むサイクルによって膜を形成することにより、上述の効果に加えて、ステップAを一部省略することによる更なるサイクルタイムの短縮を実現することができる。
【0133】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0134】
例えば、上述の態様では、ステップA,Bをノンプラズマの雰囲気下で行う場合について説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、第1改質剤、第2改質剤として例示したハロゲン元素含有ガスをプラズマ励起させたプラズマ雰囲気下で行ってもよい。この場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。第2改質剤として所定元素含有ガスを用いる場合には、第1改質剤をプラズマ励起させる一方、第2改質剤はプラズマ励起させない状態(ノンプラズマ状態)で用いることができる。所定元素含有ガスである第2改質剤をノンプラズマ状態で用いることで、プラズマ励起によって分解した第2改質剤がウエハ200上に多重堆積してステップカバレッジ等の膜特性を低下させることを抑制することができる。
【0135】
例えば、上述の態様では、第2改質剤や原料に含まれる所定元素がSiである場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、所定元素は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ゲルマニウム(Ge)等の金属元素であってもよい。これらの場合には、第2改質剤や原料として、これらの金属元素を含むハロゲン化合物ガスを用いることができる。特に、第2改質剤として、Ti、Zr、Hf等の4族元素、またはGe等の14族元素を含有するガスを用いる場合には、チタニウムテトラクロライド(TiCl4)ガス、ジルコニウムテトラクロライド(ZrCl4)ガス、ハフニウムテトラクロライド(HfCl4)ガス、ゲルマニウムテトラクロライド(GeCl4)ガス等のように所定元素に対してハロゲン元素が3個以上結合する化合物ガスを用いることが好ましい。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0136】
例えば、上述の態様では、膜形成において、主に、ステップAを最初に行う場合について説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、ステップAの実施期間とステップDの実施期間とが重複しなければ、ステップAをいつ行ってもよい。この場合においても、上述の効果の少なくとも一部を得ることができる。
【0137】
例えば、上述の態様では、原料と、第1改質剤および第2改質剤が同一のノズル(ノズル249b)を介してウエハ200に供給される場合について説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、原料と、第1改質剤または第2改質剤のうちのいずれか一方のガスが、ノズル249bを介してウエハ200に供給されてもよい。この場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0138】
例えば、上述の態様では、ウエハ200の表面に下地としてSi膜が形成されている場合について説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、下地としてSiO膜等の酸化膜やSiN膜等の窒化膜がウエハ200の表面に形成されていてもよい。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0139】
なお、凹部300の内表面に形成される所定元素を含有する膜のステップカバレッジとしては、一例として、凹部300内の上部(縁)に形成された膜の厚みTTOPと、凹部300内の底面に形成された膜の厚みTBOTとを用い、これらを下記式(1)に代入することで求めることができる。
式(1) : ステップカバレッジ(%)=[TBOT/TTOP]×100
ただし、本開示におけるステップカバレッジは、この算出方法に限定されるものではなく、凹部300等の三次元構造の段差に形成される膜の厚さの均一性に関する他の特性やそれを示す他の指標を含むことがある。
また、ステップカバレッジの向上とは、段差に形成される膜厚が均一に近づく場合に限らず、凹部内におけるボトムアップ成膜のように、凹部内の上部から底部に向かって膜厚が大きくなるような成膜を行う際に、所望の膜厚の分布に近づく場合(例えば式(1)で算出されるステップカバレッジが100%を超える範囲における所望の値に近づく場合)を含むことがある。
【0140】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に記録し、格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に記録され、格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0141】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意するようにしてもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールするようにしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0142】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0143】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0144】
上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【符号の説明】
【0145】
200 ウエハ(基板)