(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131217
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】化粧料用酸化鉄顔料分散液
(51)【国際特許分類】
A61K 8/88 20060101AFI20240920BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240920BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240920BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20240920BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20240920BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61K8/88
A61K8/19
A61K8/86
A61K8/04
A61Q1/10
A61Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041339
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】古川 良宗
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB231
4C083AB232
4C083AC122
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC482
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD092
4C083BB04
4C083BB05
4C083CC14
4C083DD11
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE03
(57)【要約】
【課題】長期間の経時後でも、隠蔽性が良好で、穂筆や多孔質塗布体の内部での濃度差の起きにくい酸化鉄顔料を含む化粧料用酸化鉄顔料分散液、及び、この顔料分散液を用いたアイシャドウ、アイライナー、アイブロー、マスカラなどのメークアップ化粧料などに好適な化粧料が提供される。
【解決手段】 本発明の化粧料用酸化鉄顔料分散液は、少なくとも、酸化鉄顔料と、アニオン系界面活性剤と、ノ二オン系界面活性剤と、水とを含み、該分散液中の酸化鉄顔料のアスペクト比が3.0以上で、かつ、平均粒子径が250nm以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、酸化鉄顔料と、アニオン系界面活性剤と、ノ二オン系界面活性剤と、水とを含む化粧料用酸化鉄顔料分散液からなり、該分散液中の酸化鉄顔料のアスペクト比が3.0以上で、かつ、平均粒子径が250nm以上であることを特徴とする化粧料用酸化鉄顔料分散液。
【請求項2】
前記酸化鉄顔料が、黄酸化鉄顔料又は赤酸化鉄顔料(べんがら)であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料用酸化鉄顔料分散液。
【請求項3】
前記アニオン系界面活性剤がポリアミノ酸又はポリアミノ酸塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧料用酸化鉄顔料分散液。
【請求項4】
前記ノ二オン系界面活性剤がポリオキシエチレン脂肪酸エーテルであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料用酸化鉄顔料分散液。
【請求項5】
前記ポリオキシエチレン脂肪酸エーテルがポリオキシエチレン(20)セチルエーテルであることを特徴とする請求項4に記載の化粧料用酸化鉄顔料分散液。
【請求項6】
請求項1記載の化粧料用酸化鉄顔料分散液を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項7】
穂筆及び/又は多孔質塗布体の貯留部を持つ容器に収容されることを特徴とする請求項6に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間の経時後でも、隠蔽性が良好で、穂筆や多孔質塗布体の内部での濃度差の起きにくい酸化鉄顔料を含む化粧料用酸化鉄顔料分散液、及び、この顔料分散液を用いたアイシャドウ、アイライナー、アイブロー、マスカラなどのメークアップ化粧料などに好適な化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、顔料は、染料に比べて耐候性が良好であるため化粧料などの色材として用いられてきたが、染料と異なり液体に溶解するわけではなく、比重も通常使用する液体に比べて重いため、液体に分散させた場合、常に沈降が起きてしまうことが避けられなかった。その結果、単独の顔料を用いた場合、色0相の上下差(濃淡)が生じてしまい、複数の色相の異なる顔料を用いた場合、顔料の沈降速度の差によって色相差が生じてしまっていた。
【0003】
そこで、前記するような色相差を減じさせるための技術としては、例えば、1)複数の顔料を用いる場合、顔料粒子の比重を揃え、有機顔料同士で黒色顔料を含有する化粧品組成物として、前記黒色混合物は、該混合物の重量に対して5~20重量%の少なくとも1種の赤の有機顔料、前記混合物の重量に対して30~55重量%の少なくとも1種の青の有機顔料、及び前記混合物の重量に対して35~55重量%の少なくとも1種の黄の有機顔料からなる、化粧品組成物(例えば、特許文献1参照)、2)無機顔料(酸化鉄顔料)同士で組成する化粧料用顔料分散液として、少なくとも黒酸化鉄と重量平均分子量1000~20000であるアニオン性分散剤と水を含有し、且つ、べんがら及び/又は黄酸化鉄のうちいずれか一つ以上を含む化粧料用顔料分散液(例えば、特許文献2参照)など知られており、可能な限り色相差を減じさせる試みが行われている。
しかしながら、上記特許文献1及び2のような処置を講じても、顔料粒子の比重差、表面状態の差などから、沈降速度が異なってきてしまい、結局のところ色相差が生じてしまうなどの欠点があるのが現状である。
【0004】
また、単独の顔料を用いた(単色の)顔料分散液、化粧料として、本出願人は、1)無機顔料(酸化鉄顔料)を極めて小さく粉砕・分散させて沈降の速度を可能な限り遅くしようとしたりする液体化粧料組成物を提案、すなわち、アニオン系高分子分散剤と、分子量300以下の酸と、酸化鉄粒子とを含み、化粧料の粘度が15mPa・s以下であり、化粧料中の酸化鉄粒子の平均粒子径が100nm以下であることを特徴とする化粧料組成物(例えば、特許文献3参照)、2)分散媒に結晶セルロース等のいわゆる増粘剤を添加して顔料の沈降の速度を遅くしようとするものとして、アクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマーから選ばれるモノマー同士を重合することにより得られるガラス転移点20℃以下のアクリル酸系ポリマーの水性エマルジョンと、結晶セルロースと、無機顔料と、水とを少なくとも含むことを特徴とする液体化粧料組成物(例えば、特許文献4参照)を提案している。
【0005】
しかしながら、上記特許文献3及び4の液体化粧料組成物等は今までに無い優れたものであるが、やはり長期の経時後には、穂筆や多孔質塗布体の内部での濃度差は避けられないものであった。また、無機顔料を極めて小さく粉砕・分散させると発色は良好になるものの、透明性が増大し下地が透けやすくなってしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-214472号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2005-330222号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2015-164912号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2017-114824号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の課題、現状等に鑑み、これを解消するものであり、長期間の経時後でも、隠蔽性が良好で、穂筆や多孔質塗布体の内部での濃度差の起きにくい酸化鉄顔料を含む化粧料用酸化鉄顔料分散液、及び、この顔料分散液を用いたアイシャドウ、アイライナー、アイブロー、マスカラなどのメークアップ化粧料などに好適な化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記従来の課題等に鑑み、鋭意検討した結果、驚くべきことに、黄酸化鉄顔料などの酸化鉄顔料を含有する化粧料用顔料分散液において、平均粒子径を極めて小さくしたり、また、いわゆる増粘剤を添加することなく、特定の界面活性剤種を併用すると共に、分散液中の酸化鉄顔料のアスペクト比、平均粒子径を特定値以上などとすることにより、色相濃度の上下差の発生しにくい、上記目的の化粧料用顔料分散液、並びに、この顔料分散液を用いたアイシャドウ、アイライナー、アイブロー、マスカラなどのメークアップ化粧料などに好適な水系液体化粧料などを得ることに成功し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明の化粧料用酸化鉄顔料分散液は、少なくとも、酸化鉄顔料と、アニオン系界面活性剤と、ノ二オン系界面活性剤と、水とを含む化粧料用酸化鉄顔料分散液からなり、該分散液中の酸化鉄顔料のアスペクト比が3.0以上で、かつ、平均粒子径が250nm以上であることを特徴とする。
前記酸化鉄顔料が、黄酸化鉄顔料又は赤酸化鉄顔料(べんがら)であることが好ましい。
前記アニオン系界面活性剤がポリアミノ酸又はポリアミノ酸塩であることが好ましい。
前記ノ二オン系界面活性剤がポリオキシエチレン脂肪酸エーテルであることが好ましい。
前記ポリオキシエチレン脂肪酸エーテルがポリオキシエチレン(20)セチルエーテルであることが好ましい。
本発明の化粧料は、上記構成の化粧料用酸化鉄顔料分散液を含有することを特徴とする。
前記化粧料は、穂筆及び/又は多孔質塗布体の貯留部を持つ容器に収容されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長期間の経時後でも、隠蔽性が良好で、穂筆や多孔質塗布体の内部での濃度差の起きにくい酸化鉄顔料を含む化粧料用酸化鉄顔料分散液、及び、この顔料分散液を用いたアイシャドウ、アイライナー、アイブロー、マスカラなどのメークアップ化粧料などに好適な化粧料が提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の化粧料を収容する化粧料塗布具の一例を示すものであって、使用前の状態を示す縦断面図である。
【
図2】
図1の化粧料塗布具の使用開始状態を示す縦断面図である。
【
図3】本発明の化粧料を収容する化粧料塗布具の他例を示す部分縦断面図である。
【
図4】本発明の化粧料を収容する化粧料塗布具の他例を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述するそれぞれの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。また、本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識(設計事項、自明事項を含む)に基づいて実施することができる。
【0013】
本発明の化粧料用酸化鉄顔料分散液は、少なくとも、酸化鉄顔料と、アニオン系界面活性剤と、ノ二オン系界面活性剤と、水とを含む化粧料用酸化鉄顔料分散液からなり、該分散液中の酸化鉄顔料のアスペクト比が3.0以上で、かつ、平均粒子径が250nm以上であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明において、酸化鉄顔料は、後述するように、分散液中(分散後)のアスペクト比が3.0以上で、かつ、平均粒子径が250nm以上であることが必要であるので、用いる分散前の酸化鉄顔料のアスペクト比や平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは、分散処理や作業性の効率化の点、隠ぺい性確保の点から、アスペクト比が3.0以上で、かつ、平均粒子径が250nm以上のものを用いることが好ましい。酸化鉄顔料については分散を行うため、さらに好ましいものとしては、分散前の平均粒子径として300nm以上、アスペクト比が5.0以上のものが望ましい。
【0015】
用いる酸化鉄顔料としては、赤酸化鉄(べんがら)、黒酸化鉄、黄酸化鉄などが挙げられ、これらは各単独で、または2種以上を混合して用いることができる。また、その粒子形状も球状、粒状、棒状、針状、板状、不定形など特に制限されず、いずれの形状も用いることができる。
本発明では、色相・発色の点、粒子径制御の点から、赤酸化鉄(べんがら)、または、黄酸化鉄の使用が好ましい。更に、粒子形状としては特に針状のものが好ましい。
【0016】
更に、上記酸化鉄顔料は、シリコーン系表面処理剤、フッ素系表面処理剤、シリカ表面処理剤などにより、表面を加工処理したものであってもよい。
なお、本発明(後述する実施例を含む)において、上記分散前又は分散後の酸化鉄顔料の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置、例えば、マイクロトラックII(日機装(株)製)により算出した。また、分散前又は分散後のアスペクト比は、酸化鉄顔料の平均厚さを、電子顕微鏡によるランダムに抽出した酸化鉄顔料粒子10個測定の単純平均により求め、(平均)アスペクト比は、上記平均粒子径の値を上記平均厚さ値で除することにより、算出したものである。
【0017】
これらの酸化鉄顔料の含有量は、化粧料用酸化鉄顔料分散液全量(以下、単に「分散液全量」という)に対して、好ましくは、10~40質量%、更に好ましくは、15~35質量%が好ましく、特に好ましくは、20~30質量%が望ましい。
この酸化鉄粒子の含有量が10質量%未満では、発色が不十分で、また、隠ぺい力も不足し、一方、40質量%を超えて含有すると、粘度が高くなり、好ましくない。
【0018】
本発明に用いるアニオン系界面活性剤は、色材となる酸化鉄顔料の分散性を向上させるものであり、例えば、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸などのポリアミノ酸、およびそのハーフエステル等が挙げられ、の中から選ばれる一種以上、もしくはこれらの塩のうち一種以上のいずれかを少なくとも含んでいればよい。これらの塩の種類としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ塩、アンモニウム塩や、モノ、ジ-、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。
これらのアニオン系界面活性剤の中で、特に、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸などのポリアミノ酸、およびそのハーフエステル等、並びに、これらの塩のうち少なくとも1種以上(各単独又は2種以上、以下同様)を用いるのが、分散安定性が優れており、特に好ましくは、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸などのポリアミノ酸、または、これらのポリアミノ酸塩(Naなど)が望ましい。
【0019】
これらのアニオン系界面活性剤の含有量は、分散液全量に対して、0.5~7.5質量%が好ましく、更に好ましくは、1~3質量%が望ましい。
このアニオン系界面活性剤の含有量が0.5質量%以上とすることにより、より安定した分散体を得ることができ、一方、7.5質量%以下とすることにより、塗布に好適な表面張力を調整することとなり好ましい。
【0020】
本発明に用いるノニオン系界面活性剤は、作業効率性、分散処理性を向上させる成分となるものであり、特に限定されないが、例えば、炭素数が10~20で、エチレンオキサイド(EO)の平均付加モル数が10~30モルのポリオキシエチレン脂肪酸エーテル類、ポリオキシエチレンステリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグリコシドなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0021】
用いることができるノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(5)ベヘニルエーテル(EOの平均付加モル数が5モル、以下同様に表記)、ポリオキシエチレン(10)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(5)オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(15)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(11)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテルなどのポリオキシエチレン脂肪酸エーテル類、などの少なくとも1種が挙げられる。
これらのノニオン系界面活性剤中で、分散処理の点、作業効率性の点から、好ましくは、ポリオキシエチレン脂肪酸エーテル類の使用が望ましく、更に好ましくは、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(15)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテルの使用が望ましい。
【0022】
これらのノニオン系界面活性剤の含有量は、分散液全量に対して、0.01~1質量%が好ましく、更に好ましくは、0.05~0.2質量%である。
このノニオン系界面活性剤の含有量が0.01~1質量%で、塗布に好適な表面張力を調整することができ、一方、1質量%以下とすることにより、耐水性を保持し、十分な固着力を得ることができ、好ましい。
【0023】
本発明の化粧料用酸化鉄顔料分散液は、上記各成分の他、分散媒となる水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等を含む)、カーボンブラックなどの他の色材、皮膜形成樹脂などを含有せしめることができる。なお、水の含有量は、上記各成分、後述する任意成分を含有した残部となる。
【0024】
用いるカーボンブラックは、色材として用いるものであり、上記酸化鉄顔料のべんがらとの併用により茶色系に調色することができる。用いることができるカーボンブラックは、化粧料に用いられているカーボンブラックであれば、特に限定されず、各種のカーボンブラックを用いることができる。
このカーボンブラックの含有量は、分散液全量に対して、0~5質量%が好ましく、上記酸化鉄顔料のべんがらとの併用により茶色系に調色する場合などには、0.1~2質量%程度である。
【0025】
用いることができる皮膜形成樹脂としては、その種類が限られるものではないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸あるいはそれらのアルキルエステル又は誘導体、スチレン、酢酸ビニルの中の1種又は2種以上のモノマーから選択されてなる共重合体のエマルション樹脂が挙げられ、例えば、エマポリー-CE119N(株式会社岐阜セラツク製造所)、ヨドゾールGH34F(ヌーリオン・ジャパン株式会社)、ヨドゾールGH800F(ヌーリオン・ジャパン株式会社)、ダイトゾール5000SJ(大東化成工業株式会社)
などが挙げられる。
この皮膜形成樹脂(エマルション樹脂)の含有量は、耐水性能、塗布性能などの点から、固形分(樹脂分)換算で分散液全量に対して、2~15質量が好ましく、更に好ましくは、2~10質量%とすることが望ましい。
【0026】
更に、本発明の化粧料用酸化鉄顔料分散液には、前記各成分の他に、通常の化粧料に用いられる任意成分などを含有せしめることができる。具体的には、防腐剤、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、キレート剤、1,3-ブチレングリコールなどの保湿剤、美容成分、香料、増粘剤(粘度・粘性調整剤)、ポリエチレングリコールアルキルエーテルなどの他の分散剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で適宜量含有せしめることができる。
【0027】
本発明の化粧料用酸化鉄顔料分散液は、粘度を15mPa・s以下とするものであり、好ましくは、10mPa・s以下、更に好ましくは、2~8mPa・sとすることが望ましい。
この粘度が15mPa・sを超えると、組成物の流出性が著しく低下するため、好ましくない。
上記粘度範囲の調整は、用いる酸化鉄顔料種及びその平均粒子径等、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などの各原料を好適に組み合せると共に、各含有量を好適な範囲に組み合わせること、好適な分散方法などにより行うことができる。
なお、本発明において粘度測定条件(後述する実施例等も含む)は、具体的には、得られた化粧料組成物を東機産業社製、ELD型粘度計、標準ローター:50rpm(ずり速度:192〔s-1〕)、温度25℃で測定した。
【0028】
本発明の化粧料用酸化鉄顔料分散液は、上述の如く、少なくとも、酸化鉄顔料と、アニオン系界面活性剤と、ノ二オン系界面活性剤と、水とを含む化粧料用酸化鉄顔料分散液からなるものであり、該分散液中の酸化鉄顔料のアスペクト比が3.0以上で、かつ、平均粒子径が250nm以上であることを特徴とするものである。
本発明では、本発明の効果を発揮せしめる点、化粧料としての色目を発揮する点から、上記酸化鉄顔料は、赤酸化鉄(べんがら)、または、黄酸化鉄が好ましく、更に、粒子形状は球状、針状のものが好ましい。
また、用いる酸化鉄顔料は、沈降抑制の点、隠ぺい性確保の点から、分散液中(分散後)のアスペクト比が3.0以上で、かつ、平均粒子径が250nm以上とするものであり、好ましくは、アスペクト比が3.5~8.0で、また、平均粒子径は300~270nmとなるものが望ましい。
【0029】
この分散後の酸化鉄顔料のアスペクト比が3.0未満では、本発明の効果を奏することができず、顔料沈降が生じてしまう。
また、分散後の酸化鉄顔料の平均粒子径が250nm未満では、本発明の効果を奏することができず、隠ぺい性不足となり、一方、350nm以下であると、安定した吐出が可能となり、好ましい形態となる。
本発明では、上記酸化鉄顔料の中でも、高比重であり、茶色系のアイライナーなどの目元化粧料等に有用な色材となる赤酸化鉄(べんがら)や、黄酸化鉄を用いても、分散性に優れ、色別れもない目的の効果を奏するものとなる。
【0030】
本発明の水系メイクアップ化粧料又は水系メイクアップ化粧料用顔料分散液の調製方法は限定されないが、例えば、上記の各成分を配合し、公知のボールミル、サンドミル、ロールミル、ホモミキサー、アトライターなど分散機を使用して、好適な分散条件で分散せしめ、分散液中(分散後)の酸化鉄顔料のアスペクト比を3.0以上、かつ、平均粒子径を250nm以上に調製することにより顔料分散液を得ることができるものとなる。
ただし、本発明における化粧料用顔料分散液の製造については、分散機によらず、実施できる。
【0031】
このように構成される本発明の化粧料用酸化鉄顔料分散液は、少なくとも、酸化鉄顔料と、アニオン系界面活性剤と、ノ二オン系界面活性剤と、水とを含むものであり、分散液中(分散後)の酸化鉄顔料のアスペクト比を3.0以上、かつ、平均粒子径を250nm以上とすることにより、均一に分散された状態を保ち、かつ、穂筆及び/又は多孔質塗布体の貯留部と顔料との間で、ひっかかるような構造をとることができ、これにより、長期間の経時後でも、隠蔽性が良好で、穂筆や多孔質塗布体の内部での濃度差の起きにくい酸化鉄顔料を含む化粧料用酸化鉄顔料分散液が得られることとなる。
得られる化粧料用酸化鉄顔料分散液には、増粘剤を添加することなく得られるので、化粧料に諸々の化粧料用の添加剤(例えば、保湿剤、pH調整剤、消泡剤)を更に添加(含有)できる余地ができ、また、酸化鉄顔料を分散させる工程を短縮することができるなどの種々の利点を有するものとなる。
【0032】
本発明の化粧料は、上記特性の化粧料用酸化鉄顔料分散液を含むことを特徴とするものであり、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、マスカラなどのメークアップ化粧料などの水系化粧料として好適な使用することができる。
本発明において、「水系」というのは、水及び/又は水溶性有機溶剤を主溶剤とする単一系(W/Oエマルション、O/Wエマルション等ではない)の組成である。
【0033】
本発明の化粧料は、塗布手段として筆穂及び/又はペン芯などの多孔質塗布体の貯留部を持つ液体化粧料塗布具(容器)に充填して使用に供することができる。
用いることができる液体化粧料塗布具としては、例えば、アイライナー用又はアイブロウ用などの筆穂及び/又はペン芯などの多孔質塗布体を備えた液体化粧料塗布具であれば、特に限定されない。
好ましくは、塗布手段としてアイライナー用又はアイブロウ用である筆穂(筆ペン)や、ペン芯や、並びに、ゴム、エラストマー、または復元性を有する独立気泡体から構成される塗布手段となる多孔質塗布体を具備し、液体化粧料を充填する貯留部を持つ塗布具が挙げられる。
本発明において、好適な液体化粧料塗布具としては、目元周りなどのポイントメイクに適したアイライナー、アイシャドウ、アイブロウ、または、皮膚に化粧料を好適に塗布することができる構造となる塗布部に筆穂及び/又はペン芯などの多孔質塗布体を備えた液体化粧料塗布具であれば、特に限定されないが、好ましくは、使用性、簡便性、塗布性に優れる、中綿に液体化粧料を保持させる中綿式容器又は枚葉体に液体化粧料を保持させるコレクター式容器を有するものや、液体化粧料組成物が直接塗布液貯蔵部に貯蔵され、塗布液となる化粧料の吐出機構がノック式、回転(回動)式の液体化粧料塗布具などが挙げられる。
【0034】
本発明において、好ましい液体化粧料塗布具としては、少なくとも塗布部と塗布液となる化粧料貯蔵部を備え、該塗布部は穂筆からなり、該筆穂の繊維は断面が円形以外のものを含み、前記化粧料貯蔵部に本発明の化粧料が貯蔵された液体化粧料塗布具が好ましい。
この形態の液体化粧料塗布具としては、
図1~
図2に示す、液体化粧料塗布具Aが挙げられる。
この実施形態の液体化粧料塗布具Aは、
図1に示すように、塗布具本体となる軸本体10の前方内部に設けられた上記構成となる本発明の化粧料である塗布液の貯留部(収容部)11と、前記軸本体10の前端部に装着され、使用開始前は貯留部(収容部)11を密閉する栓体12と、前記栓体12に装着され、前記貯留部(収容部)11の密閉状態を維持し、前記栓体12から取り外されることにより、前記貯留部(収容部)11の密閉状態を開放し、塗布液を貯留部(収容部)11から吐出状態になすシールボール13を備えている。
【0035】
また、この液体化粧料塗布具Aは、前記軸本体10の前端部の外周面に取り外し可能に装着されたストッパー14と、使用開始時に前記ストッパー14が取り外されることによって、そのストッパー14の長さ分、軸方向に移動して軸本体10に直に接合する先軸20とを備えている。
この先軸20には、先軸本体21と、前記先軸本体21に装着された、貯留部11から筆穂(塗布部)23への塗布液の供給を可能とするパイプ継手22と、前記パイプ継手22と穂筆(塗布部)23とを繋ぐ塗布液導通管24とを備えている。
【0036】
このように構成されているため、
図1に示す状態(使用開始前の状態)にあっては、ストッパー14が軸本体10に装着されているため、先軸20は移動することなく、貯留部(収容部)11を密閉する栓体12(シールボール13)によって、前記貯留部(収容部)11の密閉状態が維持される。
そして、
図2に示すように、使用開始時にストッパー14が取り外されることによって、先軸20は、ストッパー14の長さ分、軸方向に移動して、軸本体10に当接する。即ち、先軸20のパイプ継手22と前記栓体12とが接合し、パイプ継手22の先端部によって栓体12に装着されているシールボール13が取り外される。
その結果、貯留部(収容部)11の密閉状態が開放され、貯留部11から筆穂(塗布部)23への塗布液の供給が可能な状態になされる。
【0037】
また、前記軸筒本体10の後端部には、塗布液吐出機構30が設けられている。この塗布液吐出機構30は、天蓋31を回転することによって、ピストン32を所定距離前進させ、塗布液を所定量導出するように構成されている。また、筆穂23は、キャップ40によって覆われている。
なお、
図1、2において、符号15は、塗布液を撹拌する撹拌ボールである。また前記塗布液吐出機構30については、本出願人が先に提案した特開2012-157611号公報に開示されている。前記塗布液吐出機構30は、天蓋31を回転させることにより、塗布液を導出する回転式のみならず、天蓋31を押圧することにより、塗布液を導出するノック式であっても良い。
【0038】
このように構成された液体化粧料塗布具Aにあっては、まずストッパー14を取り外し、キャップ40(先軸本体21)を軸筒本体10の後方側へ押す(移動させる)。これにより、前記パイプ継ぎ手22の端部がシールボール13に当接し、前記シールボール13をシール受け12から取り外し、塗布液となる化粧料の供給可能な状態となす。
その後、キャップ40を取り外し、天蓋31を回転させ、ピストン31を所定距離前進させることにより、塗布液となる化粧料を筆穂23に対して所定量導出し、使用者の被塗布部位に対して塗布液を塗布する。
用いる穂筆23の形状、構造、材質などは、アイライナー、アイシャドウ、アイブロウ、または、皮膚に好適に塗布できるものであれば、特に限定されない。本実施形態では、
先端がテーパ加工された直線状の合成繊維からなり、かつ断面が非円形状の異形断面の繊維(筆毛)の集合体から構成されると共に、断面形状が異なる複数の種類の筆毛から構成されている。異形断面の筆毛とは、筆毛の軸方向に垂直な面の形状が円形以外のものをいい、例えば、断面形状が略星型、略まゆ型、略十字状、略三角形状、略Y字状、略半円状、略矩形状等のものを挙げることができ、少なくとも1つ以上の突部を有する形状のものなどが挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート共縮合重合体等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフイン、ナイロン6、ナイロン610、ナイロン612等のポリアミド等の熱可塑性ポリマーを溶融紡糸して得られた合成樹脂製繊維を挙げることができる。
【0039】
このように構成される液体化粧料塗布具Aでは、塗布部となる穂筆に断面形状が異なる異形断面の複数種類の筆毛を用いた場合には、筆毛問の空隙(隙間)の減少が抑制され、筆の腰の強さを与えることができ、しかも、上記本発明の化粧料は皮膚上に塗布しても皮膚の上で掠れず、タレ落ち(ボタ落ち)の少ない低粘度で酸化鉄顔料を含むので濃く描ける特性のものであるので、該化粧料の特性と、塗布具の構造特性との相乗作用により、塗布液となる化粧料を穂筆に十分に含ませることができ、快適に塗布することができる。しかも、本発明では、少なくとも、酸化鉄顔料と、アニオン系界面活性剤と、ノ二オン系界面活性剤と、水とを含む化粧料用酸化鉄顔料分散液を含む化粧料からなり、該化粧料中の酸化鉄顔料のアスペクト比が3.0以上で、かつ、平均粒子径が250nm以上であるので、長期間の経時後でも、隠蔽性が良好で、穂筆や多孔質塗布体の内部での濃度差の起きにくい、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、マスカラなどのメークアップ化粧料などに好適な化粧料を得ることができる。
【0040】
図3は、本発明の化粧料を収容したコレクタータイプの直液式の液体化粧料塗布具を示すものである。
この液体化粧料塗布具Bは、例えば、
図3に示すように、本発明の化粧料50を中綿等に吸蔵させないで直接貯溜する軸体となるタンク部51に充填してなるものが挙げられる。このタンク部51の前部には、タンク部51内の空気が温度上昇等によって膨張した場合にタンク部51から押し出される液体化粧料50をペン先や空気孔からボタ落ちさせないために一時的に保溜する枚葉体(インキ保溜体、コレクター部材)52が内蔵され、コレクター部材52の先端部には塗布体となる筆型のペン先(筆穂)53が設けられた構成となっている。筆型のペン先(穂筆)53としては、上記液体化粧料塗布具Aで用いた異形断面の穂筆23などを用いることができる。
【0041】
タンク部51からペン先53への液体化粧料の導出は、コレクター部材52の中心孔に付設された塗布液流路54を設けた中継芯55を介してタンク部51から液体化粧料50を塗布部となるペン先53に導出することにより行われる。
なお、
図3中の56,57はホルダー部材であり、58はタンク部51の後部に固着される後部軸体であり、59はインナーキャップを有するキャップである。また、中継芯55を介在させることなく、ペン先53の後部をタンク部51内に直接配置して液体化粧料の導出を行ってもよいものである。
この形態の液体化粧料塗布具Bでは、キャップ59を取り外すことにより、上記液体化粧料塗布具Aと同様に使用に供されることとなる。
【0042】
図4は、本発明の化粧料を中綿式タイプの液体化粧料塗布具に用いたものである。
この形態の液体化粧料塗布具Cは、例えば、
図4に示すように、化粧具本体60内に内軸61を有し、該内軸61内には本発明の液化粧料組成物を含浸した中綿等からなる含浸体62が収容され、該含浸体62の先端側には、液体化粧料を塗布するための上記液体化粧料塗布具Aで用いた異形断面の筆穂からなる塗布体63が設けられており、内軸61の後端に尾栓64が固着される構造が挙げられる。なお、65は、内キャップ部66を有するキャップ体である。この形態の液体化粧料塗布具Cでは、キャップ65を取り外すことにより使用に供されることとなる。
【0043】
このように構成される
図3又は
図4に示す液体化粧料塗布具においても、塗布液となる本発明の化粧料を穂筆に十分に含ませることができ、快適に塗布することができる液体化粧料塗布具を得ることができる。
なお、上記実施形態の液体化粧料塗布具A~Cでは、穂の繊維が断面が円形以外の異形断面の筆穂を用いたが、本発明の水系液体化粧料は上述の如く、長期間の経時後でも、隠蔽性が良好で、穂筆や多孔質塗布体の内部での濃度差の起きにくい酸化鉄顔料を含む化粧料用酸化鉄顔料分散液を含むので、皮膚上に塗布しても皮膚の上で掠れず、タレ落ち(ボタ落ち)の少ない低粘度で濃く描ける特性を有するので、上記各実施形態A~Cの穂筆として、先端がテーパ加工された直線状の合成繊維からなり、かつ断面が円形状の断面であってもよいものである。
【0044】
上記形態の液体化粧料塗布具では、本発明の化粧料となるリキッドアイライナーやリキッドアイシャドウの液体化粧料塗布具を例にして説明したが、これに限られるものではなく、眉毛にラインを描くアイブロー塗布具、肌にラインを描くことにも適用することができる。
また、上記形態の液体化粧料塗布具の液押圧機構として、
図1に示す、回転式繰出タイプとなる塗布具を用いたが、ノック式繰出タイプとなる液体化粧料塗布具を用いても良いものである。
【0045】
このように構成される本発明の化粧料では、塗布部に筆穂及び/又はペン芯などの多孔質塗布体の塗布具(貯留部を持つ容器)に収容される化粧料であって、少なくとも、酸化鉄顔料と、アニオン系界面活性剤と、ノ二オン系界面活性剤と、水とを含む化粧料用酸化鉄顔料分散液からなり、該分散液中の酸化鉄顔料のアスペクト比が3.0以上で、かつ、平均粒子径が250nm以上である化粧料用酸化鉄顔料分散液を含有する化粧料を搭載しているので、長期間の経時後でも、隠蔽性が良好で、穂筆や多孔質塗布体の内部での濃度差の起きにくい、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、マスカラなどのメークアップ化粧料などに好適な化粧料が提供されることとなる。
【実施例0046】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例等により限定されるものではない。
【0047】
〔実施例1~4及び比較例1~4〕
下記表1に示す配合処方の化粧料用酸化鉄顔料分散液(配合単位:質量%、全量100質量%)を下記方法により調製し、下記測定方法により、各分散液(化粧料組成物)中の酸化鉄顔料のアスペクト比、分散液の粘度値、下記評価方法により、経時後の上下濃度差、色目、隠蔽性について評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0048】
(化粧料用酸化鉄顔料分散液の調製方法)
下記表1に示す配合処方の化粧料用酸化鉄顔料分散液を従来用いられてきた手順、即ち、ベヒクルである精製水に、色材である各種酸化鉄顔料、アニオン系界面活性剤(ポリアスパラギン酸ナトリウム)、ノ二オン系界面活性剤(ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル)、水溶性のアクリル系コポリマーと、水溶性溶剤、分散機としてラボスター(アシザワ・ファインテック社製)を用いて分散させた後にその他の成分(防腐剤等)を添加して、混合することにより調製した。
【0049】
(分散液中の酸化鉄顔料のアスペクト比、分散液の粘度の各測定方法)
得られた各化粧料用酸化鉄顔料分散液を電子顕微鏡によるランダムに抽出した酸化鉄顔料粒子10個測定の単純平均により求め、(平均)アスペクト比は、平均粒子径の値を上記平均厚さ値で除することにより、算出したものである。
(粘度の測定方法)
上記方法で得られた各水系液体化粧料について、温度25℃でコーンプレート型粘度計(TV-30型粘度計の内、ELD粘度計、標準コーンプレート、トキメック社製)を用い所定のずり速度(50rpm:192〔s-1〕)における粘度を測定した。
【0050】
(経時後の上下濃度差の評価方法及び色目の評価方法)
図1~
図2の塗布部に穂筆を有するペンタイプの塗布具を用いて肌に塗り広げて下記試験方法で、上下差の光輝感、色目について評価した。
図1、2の各実施例等に用いる穂筆は、φ0.05~0.3mmのポリブチレンテレフタレート製樹脂繊維を束ねものから構成される先細の筆体穂筆である。この塗布部に穂筆を有するペンタイプの塗布具に上記で得られた各化粧料用酸化鉄顔料分散液を収容して、肌に塗布し、目視で観察して下記評価基準で酸化鉄顔料の上下濃度差、色目について官能評価した。
【0051】
上下濃度差については、ペンタイプの塗布具内に収容し、上下向きに静置したのち、1月以上経過した際の状態について下記評価基準で評価し、色目については上記経時後、および初期の状態での色について評価を行った。
上下濃度差の評価基準:
〇:初期の状態から変化無し
△:濃度差が生じているが、10筆以内に復元
×:濃度差が生じ、復元に10筆以上必要
【0052】
(隠蔽性の評価方法)
上記評価方法と同様に、ペンタイプの塗布具に上記で得られた各水系液液体化粧料を収容して、充填後初期の状態にて黒紙に塗布し、目視で観察して下記評価基準で隠ぺい性について官能評価した。
隠蔽性の評価基準:
〇:十分に下地を隠し、色を認識することができる
△:下地が透けて見えるが、色を認識することができる
×:下地が透けて見え、描線を認識することができない
【0053】
【0054】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1~4の化粧料用酸化鉄顔料分散液は、本発明の範囲外となる比較例1~4の化粧料用酸化鉄顔料分散液に較べ、長期間の経時後でも、隠蔽性が良好で、穂筆や多孔質塗布体の内部での濃度差の起きにくい酸化鉄顔料を含む化粧料用酸化鉄顔料分散液となることが確認された。また、実施例1~4の化粧料用酸化鉄顔料分散液の色目は、実施例1,2は明確な黄色を、実施例3、4では明確な赤色を表示できたのに対して、実施例1,2対比の比較例1,2では黄褐色となり、また、実施例3,4対比の比較例3,4では臙脂色(黒みをおびた赤色)となっていた。